説明

液晶配向剤、液晶配向膜および液晶表示素子

【課題】電圧保持率を維持しつつ蓄積電荷を低減させる液晶配向膜を与え、さらに優れた印刷性を備えた液晶配向剤を提供する。
【解決手段】下記式(I):


(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、R〜R12はそれぞれ独立して、水素原子、芳香族基、脂肪族基またはエポキシ基で置換された脂肪族基であり、Aは水素原子、脂肪族基またはエポキシ基で置換された脂肪族基であり、nは1〜100の整数である。)
で表される化合物を含有する液晶配向剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、電気的特性が良好であり、かつ印刷性の良好な液晶配向膜を与える液晶配向剤、当該液晶配向膜およびそれを含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示素子としては、透明導電膜が設けられている基板表面にポリアミック酸、ポリイミドなどからなる液晶配向膜を形成して液晶表示素子用基板とし、その2枚を対向配置してその間隙内に正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにした、いわゆるTN(Twisted Nematic)型液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。また、TN型液晶表示素子に比してコントラストが高くて、その視角依存性の少ないSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子や、垂直配向型液晶表示素子が開発されている。このSTN型液晶表示素子は、ネマチック型液晶に光学活性物質であるカイラル剤をブレンドしたものを液晶として用い、液晶分子の長軸が基板間で180度以上にわたって連続的に捻れる状態となることにより生じる複屈折効果を利用するものである。これらに対し、非特許文献1および特許文献1に記載されているように、ITO上に突起を形成して液晶の配向方向を制御する、MVA方式と呼ばれる垂直配向型液晶表示素子が提案されている。MVA方式の液晶表示素子は、視野角、コントラストなどに優れ、液晶配向膜の形成においてラビング処理を行わなくて良いなど、製造工程の面でも優れている。TN、STN、MVA方式に好適な液晶配向膜としては、液晶表示素子の残像消去時間が短いなどの性能が要求されている。また、それら液晶配向膜の形成に用いられる配向剤としては、オフセット印刷において優れた印刷性が要求される。
【非特許文献1】“液晶”Vol.3 No.2 117(1999年)
【特許文献1】特開平11−258605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、電圧保持率を維持しつつ、かつ蓄積電荷を低減させる。液晶配向膜を与え、さらに優れた印刷性を備えた液晶配向剤、当該液晶配向膜およびそれを用いた液晶表示素子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第一に、
下記式(I):
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、R〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、芳香族基、脂肪族基またはエポキシ基で置換された脂肪族基であり、Aは水素原子、脂肪族基またはエポキシ基で置換された脂肪族基であり、nは1〜100の整数である。)
で表される化合物(以下、特定化合物ということがある)を含有することを特徴とする液晶配向剤により達成される。
【0007】
上記式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、R〜R12はいずれも水素原子であり、Aは水素原子であり、nが1〜100の整数である化合物が好ましい化合物である。
上記式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、RおよびR11が芳香族であり、R10およびR12が水素原子または脂肪族基であり、Aは水素原子または脂肪族基であり、nが1〜100の整数である化合物が他の好ましい化合物である。
また、上記式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、RおよびR11が芳香族であり、R10およびR12が水素原子またはエポキシ基で置換された脂肪族基であり、Aが水素原子またはエポキシ基で置換された脂肪族基であり、nが1〜100の整数である化合物がさらに好ましい化合物である。
【0008】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第二に、
上記式(I)中、のR〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、R〜R12がいずれも水素原子であり、Aは水素原子であり、nが1〜100の整数である上記好ましい化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応により得られるポリアミック酸ポリマー(以下特定ポリアミック酸ポリマーということがある)を含有することを特徴とする液晶配向剤によって達成される。
【0009】
また、本発明の液晶配向剤は、上記特定化合物および上記特定ポリアミック酸ポリマーの内少なくとも1種と、下記式(I−1)で示される繰返し単位からなるポリアミック酸および(I−2)で示される繰返し単位からなるポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体とを含有することができる。
【0010】
【化2】

【0011】
(ここで、Pは4価の有機基でありそしてQは2価の有機基である)
【0012】
【化3】

【0013】
(ここで、Pは4価の有機基でありそしてQは2価の有機基である)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶配向剤は、好ましくは特定化合物および特定ポリアミック酸ポリマーの少なくとも1種ならびにポリアミック酸およびポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体とを有機溶媒に溶解されて構成される。
[特定化合物]
式(I)において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基である。アルキル基、アルコキシル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基である。かかるアルキル基およびアルコキシ基に含まれるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−メチル−プロピル基、3−メチル−プロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。R〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、芳香族基、脂肪族基またはエポキシ基で置換された脂肪族基である。水素原子、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜4の脂肪族基またはエポキシ基で置換された脂肪族基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、グリシジル基を挙げることができる。Aは水素原子または炭素数1〜4の脂肪族基またはエポキシ基で置換された脂肪族基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、グリシジル基を挙げることができる。また、nは1〜100の整数である。
この中で特に好ましくは、R〜Rが水素であり、R〜R12が、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、グリシジル基であり、Aは水素原子またはグリシジル基である。
特定化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
上記の特定化合物において、R〜R12がいずれも水素原子である場合、酸二無水物と反応させて特定ポリアミック酸ポリマーを得ることができる。この特定ポリアミック酸のポリマーを合成するにあたり、酸二無水物としては、好ましいものとして、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ「5.3.1.02,6」ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、ピロメリット酸二無水物などを挙げることができる。これら酸二無水物は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
また、この際、ジアミン構造を持つ上記特定化合物の他に、他のジアミン化合物を併用しても良い。好ましい他のジアミン化合物として、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ジ(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ジ(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチル−ベンジジンなどを挙げることができる。これら他のジアミン化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
[ポリアミック酸]
<テトラカルボン酸二無水物>
本発明において、上記特定ポリアミック酸ポリマー以外の、上記ポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましい。脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ「5.3.1.02,6」ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、下記式(II)および(III)で表される化合物、
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、RおよびRは、芳香環を有する2価の有機基を示し、RおよびRは、水素原子またはアルキル基を示し、複数存在するRおよびRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
その他、ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(1)〜(4)で表される化合物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0022】
【化7】

【0023】
上記テトラカルボン酸二無水物のうち、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ「5.3.1.02,6」ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、上記式(II)で表される化合物のうち下記式(5)〜(7)で表される化合物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物および上記式(III)で表される化合物のうち下記式(8)で表される化合物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物が、良好な液晶配向性を発現させることができる観点から好ましい。特に好ましいものとして、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ「5.3.1.02,6」ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、および下記式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0024】
【化8】

【0025】
脂環式テトラカルボン酸二無水物以外のその他のテトラカルボン酸二無水物の中で好ましいものとしては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
これらテトラカルボン酸二無水物のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が全テトラカルボン酸二無水物に対して50モル%以上であることが好ましい。
【0026】
<ジアミン>
特定ポリアミック酸ポリマー以外の上記ポリアミック酸の合成に用いられるジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂肪族および脂環式ジアミン;
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ジ(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ジ(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチル−ベンジジンなどの、分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;下記式(IV)で表されるジアミノオルガノシロキサンなどが挙げられる。これらのジアミンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
【化9】

【0028】
(式中、Rは炭素数1〜12の炭化水素基を示し、複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、pは1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。)
【0029】
これらのうちp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ジメチル−2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ジ(4−アミノフェニル)−ベンジジンなどが好ましい。
【0030】
本発明の液晶配向剤にプレチルト角発現性を持たせる場合には、前記式(I−1)および(I−2)におけるQ,Qの一部または全部が下記式(Q−1)および下記式(Q−2)で表される少なくとも一種の基であることが好ましい。すなわち、下記式(Q−1)または下記式(Q−2)で表される基を有するジアミン(以下、「特定ジアミン」ともいう)が用いられる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0031】
【化10】

【0032】
(式中、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−またはアリーレン基であり、Rは、炭素数10〜20のアルキル基、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基または炭素数6〜20のフッ素原子を有する1価の有機基である。)
【0033】
【化11】

【0034】
(式中、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−またはアリーレン基であり、Rは、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基である。)
【0035】
上記式(Q−1)において、Rで表される炭素数10〜20のアルキル基としては、例えば、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基などが挙げられる。また、上記式(Q−1)におけるRおよび上記式(Q−2)におけるRで表される炭素数4〜40の脂環式骨格を有する有機基としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカンなどのシクロアルカン由来の脂環式骨格を有する基;コレステロール、コレスタノールなどのステロイド骨格を有する基;ノルボルネン、アダマンタンなどの有橋脂環式骨格を有する基などが挙げられる。これらの中で、特に好ましくはステロイド骨格を有する基である。上記脂環式骨格を有する有機基は、ハロゲン原子好ましくはフッ素原子や、フルオロアルキル基好ましくはトリフルオロメチル基で置換された基であってもよい。
さらに、上記式(Q−1)におけるRで表される炭素数6〜20のフッ素原子を有する基としては、例えば、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素数6以上の直鎖状アルキル基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素数6以上の脂環式炭化水素基;フェニル基、ビフェニル基などの炭素数6以上の芳香族炭化水素基などの有機基における水素原子の一部または全部を、フッ素原子またはトリフルオロメチル基などのフルオロアルキル基で置換した基が挙げられる。
【0036】
また、上記式(Q−1)および上記式(Q−2)におけるXは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−またはアリーレン基であり、アリーレン基としては、例えばフェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。これらのうち、特に好ましくは、−O−、−COO−、−OCO−で表される基である。上記式(Q−1)で表される基を有するジアミンの具体例としては、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、下記式(9)〜(13)で表される化合物を好ましいものとして挙げることができる。
【0037】
【化12】

【0038】
また、上記式(Q−2)で表される基を有するジアミンの具体例としては、下記式(14)〜(16)で表されるジアミンを好ましいものとして挙げることができる。
【0039】
【化13】

【0040】
これらのうち、特に好ましいものとしては、上記式(9)、(11)、(13)、(14)のそれぞれで表される化合物が挙げられる。
【0041】
特定ジアミンの全ジアミン量に対する使用割合は、発現させたいプレチルト角の大きさによっても異なるが、TN型、STN型液晶表示素子の場合には0〜5モル%、垂直配向型液晶表示素子の場合には5〜100モル%が好ましい。
【0042】
<ポリアミック酸の合成>
ポリアミック酸(特定ポリアミック酸ポリマーを含む)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。
【0043】
ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ヘキシルオキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドなどのアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を例示することができる。また、有機溶媒の使用量(α)は、通常、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(β)が、反応溶液の全量(α+β)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0044】
なお、上記有機溶媒には、ポリアミック酸の貧溶媒であるアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを、生成するポリアミック酸が析出しない範囲で併用することができる。かかる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル などを挙げることができる。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。そして、この反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する、または、反応溶液をエバポレーターで減圧留去することによりポリアミック酸を得ることができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出させる工程を1回または数回行うことにより、ポリアミック酸を精製することができる。
【0045】
<脱水閉環反応>
本発明の液晶配向剤を構成するポリイミドは、上記ポリアミック酸の一部または全部を脱水閉環することにより合成することができる。本発明に用いられるポリイミドは、全繰り返し単位におけるイミド環を有する繰り返し単位の割合(以下、「イミド化率」ともいう)が40モル%以上、好ましくは50モル%以上である。イミド化率が40モル%以上の重合体を用いることによって、残像消去時間の短い液晶配向膜が形成可能な液晶配向剤が得られる。イミド化率は下記方法によって求めることができる。
【0046】
イミド化重合体のイミド化率測定方法
イミド化重合体を室温で減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定し、下記式(ii)で示される式により求めることができる。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 −−−−−−(ii)
:NH基のプロトン由来のピーク面積(10ppm)
:その他のプロトン由来のピーク面積
α:重合体の前駆体(ポリアミック酸)における、NH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合
【0047】
ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下することがある。
【0048】
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、所望するイミド化率によるが、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。イミド化率は上記の脱水剤、脱水閉環剤の使用量が多いほど高くすることができる。なお、脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。そして、脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。また、このようにして得られる反応溶液に対し、ポリアミック酸の精製方法におけると同様の操作を行うことにより、得られた特定重合体を精製することができる。
【0049】
<末端修飾型の重合体>
本発明で用いられるポリアミック酸およびポリイミドは、分子量が調節された末端修飾型のものであってもよい。この末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型の重合体は、ポリアミック酸を合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを反応系に添加することにより合成することができる。ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。また、モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。また、モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
【0050】
溶液粘度
本発明の配向剤に使用する重合体は、10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの粘度を持つものであることがより好ましい。
なお、重合体の溶液粘度(mPa・s)は、所定の溶媒を用い、所定の固形分濃度に希釈した溶液ついてE型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
【0051】
[液晶配向剤]
本発明の液晶配向剤は、特定化合物または特定ポリアミック酸ポリマーが好ましくは上記重合体、および任意的に添加されるその他の成分が、通常、有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
本発明の液晶配向剤には、目的の物性を損なわない範囲内で、基板表面に対する接着性を向上させる観点から、エポキシ化合物、官能性シラン含有化合物が含有されていてもよい。かかるエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3−(N−アリルーNーグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N,−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。また、エポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンなどを好ましいものとして挙げることができる。これらエポキシ基含有化合物の配合割合は、重合体100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは0.1〜30重量部である。
【0052】
かかる官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。官能性シラン含有化合物の配合割合は、重合体100重量部に対して、好ましくは4重量部以下である。
【0053】
本発明の液晶配向剤を構成する有機溶媒としては、例えば、1−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ヘキシルオキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができる。これらの内、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ヘキシルオキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドが良好な印刷性を示すことから特に好ましい。
【0054】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度は、粘性、揮発性などを考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲にある。すなわち、本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
【0055】
なお、特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えば、スピンナー法による場合には1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは0℃〜200℃であり、より好ましくは20℃〜60℃である。
【0056】
<液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤をオフセット印刷法、スピンコート法、あるいはインクジェット印刷法により塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィンなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法が用いられる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板の該表面に、官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。液晶配向剤塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止等の目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。その後、溶剤を完全に除去し、ポリアミック酸を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。この焼成(ポストベーク)温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポリアミック酸を含有する本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜を形成するが、さらに加熱することによって脱水閉環を進行させ、よりイミド化された塗膜とすることもできる。形成される塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0057】
(2)形成された塗膜面を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行う。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。また、本発明の液晶配向剤により形成された液晶配向膜に、例えば特開平6−222366号公報や特開平6−281937号公報に示されているような、紫外線を部分的に照射することによってプレチルト角を変化させるような処理、あるいは特開平5−107544号公報に示されているような、ラビング処理を施した液晶配向膜表面にレジスト膜を部分的に形成し、先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去して、液晶配向膜の液晶配向能を変化させるような処理を行うことによって、液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0058】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向が直交または逆平行となるように、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子が得られる。
【0059】
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0060】
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができ、その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
[印刷性評価]
片面全面にITO膜が形成された127mm(D)×127mm(W)×1.1mm(H)のガラス基板を用意し、このガラス基板に液晶配向膜塗布用印刷機(日本写真印刷(株)製 オングストローマー S−40L)を用いて上記実験で得られた液晶配向剤を孔径0.2μmのマイクロフィルターで濾過した後、透明電極面に塗布した。80℃に設定したホットプレート密着式予備乾燥機で乾燥し、200℃で60分間焼成してITO膜付きガラス基板上に液晶配向膜を形成した。得られた配向膜のムラを目視にて下記基準で評価した。
○:ムラが全く観察されない。
△:ムラが若干観察される。
×:ムラが明らかに観察される。
【0062】
[電圧保持率]
液晶表示素子に60℃下5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。
【0063】
[焼き付き試験]
図1に示したようなITO電極を持つセルを作製した。電極Aに直流電圧6.0V、電極Bに直流電圧0.5Vを室温にて24時間印加した。ストレス解放後、電極A、Bに直流電圧0.1〜5.0Vを0.1V刻みに印加した。それぞれの電圧での電極A,Bの輝度差により焼き付き特性を判断した。輝度差が大きい場合、焼き付き特性悪いと判断した。
○:輝度差が殆んどわからない。
△:輝度差が若干存在する。
【0064】
<特定化合物の合成1>
【0065】
【化14】

【0066】
本反応に使用するニッケル触媒は、大気中の酸素および水蒸気との反応により容易に失活する。そのため、反応に使用した溶剤および試薬は、予め蒸留および再結晶処理により不純物を取り除いて使用した。重合反応は窒素雰囲気下で行った。
【0067】
重合反応は文献法(T.Kanbara,J.Polym.Sci.Part−A,Polym.Chem.,38,4194(2000))に従い行った。内部を窒素ガス置換した四つ口フラスコに、4,4’−ジクロロビフェニル(1mmol)およびベンジジン(1mmol)およびトルエン15mlを入れ数分間攪拌した後、ナトリウム−tert−ブトキシド288mg(3mmol)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(cod))28mg(0.1mmol)、および1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン(DPPF)166mg(0.3mmol)を室温下で加えた。この反応液を窒素雰囲気下、攪拌しながら60℃に加熱し反応を開始した。60℃で24時間反応させた後、極少量のベンジジン(0.05mmol)を加え、ポリマーの末端をベンジジンで封止して重合を停止させた。室温に冷却後、反応溶液をアンモニア水とメタノールの混合液200ml中に注ぎ、得られた沈殿物をろ別し、回収された沈殿物をメタノールとエーテルでさらに洗浄を行い、特定化合物A−1を得た。
【0068】
<特定化合物の合成2>
【0069】
【化15】

【0070】
特定化合物A−2は上記のように複数の構造を含む。
三口フラスコに特定化合物A−1のTHF溶液と過剰量のナトリウムアミドを混合した。この溶液を2時間加熱還流させた後に反応溶液を冷却し、過剰量のエピブロモヒドリンを滴下した。80℃に加熱し、引き続き6時間撹拌した。反応溶液をろ過し、ろ液をクロロホルム/10%塩酸水溶液、飽和食塩水の順で分液洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物をメタノール再沈殿を行うことで特定化合物A−2を得た。
【0071】
ポリイミド合成例1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン157g(0.50モル)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン96g(0.89モル)、3,3’−(テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(プロピルアミン)25g(0.10モル)、および3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン13g(0.020モル)、モノアミンとしてn−オクタデシルアミン8.1g(0.030モル)をN−メチル−2−ピロリドン960gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。 得られたポリアミック酸溶液を小量分取し、NMPを加えて固形分濃度10重量%の溶液で粘度を測定したところ、60mPa・sであった。次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン2,700gを追加し、ピリジン396gおよび無水酢酸409gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶剤を新たなγ−ブチロラクトンで溶剤置換し(本操作にてイミド化反応に使用したピリジン、無水酢酸を系外に除去した)、固形分濃度15重量%、固形分濃度10重量%時(γ−ブチロラクトン溶液)の溶液粘度70mPa・s、イミド化率約95%のイミド化重合体(これを「ポリイミド(ア−1)」とする。)溶液約2,000gを得た。
【0072】
ポリイミド合成例2
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0モル)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン108g(1・0モル)、およびコレスタリル−3,5−ジアミノベンゾエート7.8g(0.015モル)をN−メチル−2−ピロリドン3,039gに溶解させ、60℃で6時間反応させることにより溶液粘度約260mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン2,700gを追加し、ピリジン396gおよび無水酢酸306gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶剤を新たなγ−ブチロラクトンで溶剤置換し(本操作にてイミド化反応に使用したピリジン、無水酢酸を系外に除去した)、固形分濃度約9.0重量%、固形分濃度10重量%時(γ−ブチロラクトン溶液)の溶液粘度250mPa・s、イミド化率約51%のイミド化重合体(これを「イミド化重合体(ア−2)」とする。)溶液約3,000gを得た。
【0073】
ポリアミック酸合成例1
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0モル)、ジアミン化合物として2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル212g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン370g、γ−ブチロラクトン3,300gに溶解させ、40℃で3時間反応させた溶液粘度160mPa・sのポリアミック酸(これを「ポリアミック酸(イ−1)」とする)溶液約3,700gを得た。
【0074】
ポリアミック酸合成例2
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物95g(0.50モル)、ピロメリット酸二無水物109g(0.50モル)、ジアミン化合物として2,7−ジアミノフルオレン196g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン230g、γ−ブチロラクトン2,060gに溶解させ、40℃で3時間反応させた後、γ−ブチロラクトン1,350gを追加し、固形分濃度10重量%での溶液粘度125mPa・sのポリアミック酸(これを「ポリアミック酸(イ−2)」とする。)溶液約3,600gを得た。
【0075】
実施例1
ポリイミド合成例1で得られたポリイミド(ア−1)およびポリアミック酸合成例1で得られたポリアミック酸(イ−1)を、ポリイミド:ポリアミック酸=20:80(重量比)になるように、γ−ブチロラクトン/N−メチル−2−ピロリドン/ブチルセロソルブ混合溶剤(重量比71/17/12)に溶解させた。この溶液に対し、それぞれN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを上記重合体100重量部に対して2重量部加え、さらに特定化合物A−1を上記重合体100重量部に対して10重量部加え、固形分濃度3.5重量%の溶液および、6.0重量%の溶液を作成した。それぞれの溶液を十分な攪拌後、孔径1μmのフィルターを用いて濾過し、本発明の液晶配向剤を調製した。
上記液晶配向剤の内、固形分濃度3.5重量%の溶液を、厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、スピンナーを用いて塗布(回転数:2,500rpm,塗布時間:1分間)し、200℃で1時間乾燥することにより乾燥膜厚0.08μmの被膜を形成した。この被膜にレーヨン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロールの回転数400rpm、ステージの移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行った。上記液晶配向膜塗布基板を、超純水中で1分間の超音波洗浄し、100℃クリーンオーブンで10分間乾燥した。次に、一対の透明電極/透明電極基板の上記液晶配向膜塗布基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間に、ネマティック型液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を張り合わせ、TN液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子の電圧保持率評価および焼きつき評価は、上記記載の方法に従い行った。
また、固形分濃度6.0重量%の溶液を用い、上記記載の方法に従って印刷性評価を行った。
【0076】
実施例2〜4
ポリイミド、ポリアミック酸、特定化合物は表1に記した物を使用した他は実施例1と同じ手順で行った。
【0077】
実施例5
ポリイミド合成例2で得られたポリイミド(ア−2)を、N−メチル−2−ピロリドン/ブチルセロソルブ混合溶剤(重量比50/50)に溶解させて、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを重合体100重量部に対して2重量部加え、特定化合物A−1を重合体100重量部に対して10重量部加え、固形分濃度3.5重量%の溶液および6.0重量%の溶液を作成した。それぞれの溶液を十分な攪拌後、孔径1μmのフィルターを用いて濾過し、本発明の液晶配向剤を調製した。液晶表示素子の作成方法、液晶表示素子の評価方法および配向剤印刷性評価方法は実施例1と同じ方法で行った。
【0078】
実施例6
特定化合物として表1に記した物を使用した他は実施例5と同じ手順で行った。
【0079】
比較例1〜2
ポリイミド、ポリアミック酸は表1に記した物を使用し、特定化合物を加えなかった他は実施例1と同じ手順で行った。
【0080】
比較例3
特定化合物を加えなかった他は実施例5と同じ手順で行った。
【0081】
比較例4〜5
ポリイミド、ポリアミック酸は表1に記した物を使用し、特定化合物に代えて下記構造の化合物(化合物X)を使用した他は実施例1と同じ手順で行った。化合物Xは特開2000−44683号に記載の方法に従って合成した。
【0082】
【化16】

【0083】
比較例6
特定化合物に代えて化合物Xを加えた他は実施例5と同じ手順で行った。
【0084】
比較例7〜8
ポリイミド、ポリアミック酸は表1に記した物を使用し、特定化合物に代えて下記構造の化合物(化合物Y)を使用した他は実施例1と同じ手順で行った。化合物YはWO2002/100949に記載の方法に従って合成した。その分子量はMn=15,000,Mw=30,000であった。
【0085】
比較例9
特定化合物に代えて化合物Yを加えた他は実施例5と同じ手順で行った。
【0086】
【化17】

【0087】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】焼き付き試験の評価のために作成したITO電極付きセル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、R〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、芳香族基、脂肪族基またはエポキシ基で置換された脂肪族基であり、Aは水素原子、脂肪族基またはエポキシ基で置換された脂肪族基であり、nは1〜100の整数である。)
で表される化合物を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【請求項2】
式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、R〜R12はいずれも水素原子であり、Aは水素原子でありそしてnが1〜100の整数である請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、RおよびR11は芳香族であり、R10およびR12が水素原子または脂肪族基であり、Aは水素原子または脂肪族基であり、nが1〜100の整数である請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、RおよびR11は芳香族基であり、R10およびR12が水素原子またはエポキシ基で置換された脂肪族基であり、Aが水素原子またはエポキシ基で置換された脂肪族基であり、nが1〜100の整数である請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
請求項2に記載の化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応により得られるポリアミック酸ポリマーを含有することを特徴とする液晶配向剤。
【請求項6】
下記式(I−1)で示される繰返し単位からなるポリアミック酸および下記式(I−2)で示される繰返し単位からなるポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体をさらに含有する請求項1〜5のいずれかに記載の液晶配向剤。
【化2】

(ここで、Pは4価の有機基でありそしてQは2価の有機基である)
【化3】

(ここで、Pは4価の有機基でありそしてQは2価の有機基である)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の液晶配向剤を用いて得られる液晶配向膜を具備することを特徴とする液晶表示素子。

【図1】
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【公開番号】特開2008−107814(P2008−107814A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248427(P2007−248427)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】