説明

液滴アクチュエータ及びそれを用いた液滴駆動制御方法

【課題】構造体表面の液滴の形成、消失、液滴量の増減を制御しうる液滴アクチュエータを提供する。また、生物培養の培地や薬剤スクリーニング試験として良好な環境を提供しうる液滴アクチュエータを提供する。
【解決手段】電解質体の外側にポーラス状の主電極部及び副電極部を電気的に離間して設け、前記主電極部の一部における分子もしくはイオン透過性を主電極部のその他の部分と異なるようにする液滴制御部を設けた構造体であって、前記両電極部に電圧を印加して該液滴制御部上の液滴の形成、消失、もしくは液滴量の増減を制御しうる液滴アクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液滴アクチュエータに関する。詳しくは、構造体表面の液滴の形成、消失、もしくは液滴量の増減を制御しうる液滴アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物質表面の親・疎水性を用途や目的に応じて調節しうる技術の必要性が高まっている。例えば、バイオチップの1つ、セルアレイとよばれる分野においては、ガラス基板上にマトリックス状の微小領域を配し、この微小領域において、細胞の培養および薬液のスクリーニングが行われる。このとき、より小さなスペースで多くのスクリーニングが行えるよう、微小培地をアレイ化するために、基材表面を親水性と疎水性部分の独立した微小領域にパターニングすることが必要である。また、ゲノム解析、食品検査、テーラーメイド医療などへの応用も進められており、細胞液の定着のみではなく、様々なものに対応できる表面濡れ性の制御が求められている。さらには、マイクロTAS、マイクロリアクター、Lab−on−a−chipなどの研究も進んでおり、これらマイクロTAS、マイクロリアクター、Lab−on−a−chipのマイクロ化に伴い多種、多様な流体の流動性の制御技術が必要となっている。
【0003】
これまで、基板等の表面に親・疎水性を付与するために、親・疎水剤などをコーティングする方法が一般的に採用されてきた。しかしこの方法では、その性質を動的に変化させることはできない。その性質は基本的にコーティング剤によるため、親水性又は疎水性のいずれかに限定されてしまう。
【0004】
このような問題に対して、より機能的に基板などの表面濡れ性を制御することが試みられている(特許文献1〜4参照、非特許文献1及び2参照)。しかし、実用的な濡れ性制御技術はいまだなく、液滴を効率的に制御しうる技術を開示したものはない。
【特許文献1】特開平11−90217号公報
【特許文献2】特開2003−155357号公報
【特許文献3】特開2000−119551号公報
【特許文献4】特開2001−347218号公報
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・マイクロエレクトロメカニカル・システム(Journal of Microelectromechanical System),Vol.12,No.1,2003
【非特許文献2】平成17年4月8日検索、インターネット<URL:http://www.cellseed.com/technology.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記状況に鑑み、本発明者等は、効果的に濡れ性を切り換えうる機能面を備えた液体アクチュエータを考案した(国際特許出願PCT/JP2006/306705号明細書参照)。そこに開示された濡れ性切り換え機能を通じ、条件によっては、液滴のサイズが変化したり移動したりしうるが、その効率的な制御はできない。さらに、液滴が超微細化し蒸発乾燥性が著しく高くなる条件下では、液滴の制御以前に、液滴を維持することさえ難しく、また液滴を長期間保持することは考慮されていない。そして、その濡れ性切換面の有するポーラス孔を介して、アクチュエータ内部の高分子電解質が制御液滴内のイオンを吸着したり、その高分子電解質から制御液滴へイオンが放出したりもする。これでは液滴の精密制御、ましてその良好な反応場としては機能しえない。
そこで、本発明は、構造体表面の液滴の形成、消失、液滴量の増減を制御しうる液滴アクチュエータの提供を目的とする。また、生物培養の培地や薬剤スクリーニング試験として良好な環境を提供しうる液滴アクチュエータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記を用いて上記課題を解決するものである。
(1)電解質体の外側にポーラス状の主電極部及び副電極部を電気的に離間して設け、前記主電極部の一部における分子もしくはイオン透過性を主電極部のその他の部分と異なるようにする液滴制御部設けた構造体であって、前記両電極部に電圧を印加して該液滴制御部上の液滴の形成、消失、もしくは液滴量の増減を制御しうることを特徴とする液滴アクチュエータ。
(2)前記主電極部の外側に分子もしくはイオン透過防止性の膜を設けて、該膜部分を液滴制御部とすることを特徴とする(1)記載の液滴アクチュエータ。
(3)前記主電極部の外側にポーラス構造層を設け、該ポーラス構造層の一部のポーラス量を異ならせた液滴制御部とすることを特徴とする(1)記載の液滴アクチュエータ。
(4)前記主電極部の外側にポーラス構造層を設け、該ポーラス構造層の下面、内部、もしくはその両方に、分子もしくはイオン透過防止性の膜を設けて液滴制御部としたことを特徴とする(1)記載の液滴アクチュエータ。
(5)前記分子もしくはイオン透過防止性の膜が、ケイ素もしくはチタンの酸化物、窒化物、または炭化物、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ふっ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ガラス、金、銀、白金、銅、ニッケル、アルミニウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、セルロース誘導体、及びアルギン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の材料からなる膜であることを特徴とする請求項2または4記載の液滴アクチュエータ。
(6)前記主電極部の少なくとも一部の分子もしくはイオンの透過性を主電極部のその他の部分より低下させて前記液滴制御部としたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の液滴アクチュエータ。
(7)前記液滴制御部の外側に機能性層を設けることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の液滴アクチュエータ。
(8)前記機能性層が細胞培養の培地であることを特徴とする(7)記載の液滴アクチュエータ。
(8)電解質体の外側にポーラス状の主電極部及び副電極部を電気的に離間して設け、前記主電極部の一部につき分子もしくはイオン透過性を主電極部のその他の部分と異なるようにする液滴制御部を設け、前記両電極部に印加する電圧を調節して該液滴制御部上の液滴の形成、消失、もしくは液滴量の増減を制御することを特徴とする液滴駆動制御方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液滴アクチュエータは、液滴の形成、消失、液滴量の増減の制御を可能とし、液滴が微細化して安定に維持しえない条件下であっても、液滴を維持し、効率的な制御を実現しうる。また、本発明の液滴アクチュエータは、生物培養の培地、薬剤スクリーニング反応場といった、精密制御を要する液滴反応場を提供しうるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の液滴アクチュエータを、その好ましい実施態様について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の液滴アクチュエータの一実施態様を模式的に示す断面図である。
本実施態様の液滴アクチュエータにおいては、電解質体4の外側に主電極部3a及び副電極部3bが設けられている。
電解質体4の材料は特に限定されず、陽イオン電解質であっても、陰イオン電解質であってもよい。また、有機電解質、無機電解質、それらを組み合わせた電解質などのいずれであってもよい。
有機電界質としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、4級アンモニウム基、3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基などを有する有機電解質が挙げられ、それらの基の1つまたは複数を有する高分子電解質が好ましい。なかでもスルホン基、カルボキシル基を有する高分子電解質が好ましく、具体的には例えば、パーフルオロスルホン膜(例えば、ナフィオン(商品名)デュポン社製)などの固体高分子電解質が挙げられる。
【0009】
無機電解質としては、例えば、イオン性電解質、リチウム、リン、硫黄などで構成された電解質、無機プロトン導電性酸化物粒子(例えば、水和酸化アンチモン(Sb・nHO))からなる電解質、またはそれと無機マトリックス(例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、アルミナ(Al))成分とからなる電解質などが挙げられる。
【0010】
さらに無機系と有機系の混合電解質としては、例えば、有機電解質層と無機電解質層との間を、イオン交換体からなるバインダで結合した有機無機混合電解質、多環式芳香族スルホン酸でできた無定形のカーボン材料で芳香族炭化水素を熱濃硫酸で処理した後炭化することによって得られる固体酸を用いた電解質などが挙げられる。またイオン液体と高分子とを配合した電解質などが挙げられる。
【0011】
また、電解質として特開2005−224027号公報、特開2004−335231号公報、特開2004−281147号公報、特開2004−247286号公報、特開2003−190962号公報、特開2003−151580号公報、特開2002−329524号公報、Solid State Ionics5(1981)663−666、電気化学65,No.11(1997)914−919、特開2001−250580号公報、J.Am.Cream.Soc,84[2]477−79(2001)、特公平5−48582号公報、特開平4−231346号公報、第26回固体イオニクス討論会講演要旨集(2000)174−175、米国特許6025094号公報、米国特許5314765号公報、特開2002−56857号公報、特開2001−357879号公報、特開2000−103899号公報、ワイ.エム.リ(Y.M.Li)ら,ソリッド・ステート・イオニクス(Solid State Ionics),134,271−278頁,2000などに開示されたものを用いてもよい。
【0012】
電解質体の大きさや形状は特に限定されず、平板状電解質膜を用いるときには縦横100mm程度のものが好ましく、厚さは200μm以下のものが好ましい。平板状以外の形状のものとして、例えば、円筒状、目的の形状にあわせた型取り形状のものなどを用いてもよい。
【0013】
本実施態様の液滴アクチュエータ10において主電極部3a及び副電極部3bはポーラス状である。本発明においてポーラス状(もしくはポーラス構造)とは、制御する液体分子、そのイオン、及び/又は電極周辺で発生する気体分子が通過可能であり、かつ電極部については導電性を確保できる状態(もしくは構造)をいう。主電極部3a及び副電極部3bの大きさや形状は特に限定されない。
主電極部3a及び副電極部3bに用いることができる電極材料は、必要な導電性が得られればどのようなものでもよい。金、白金、銅、その他の金属、カーボンなどを用いることができ、それらを単独でまたは複数を組み合わせて用いてもよい。具体的な電極部の状態は、電解質膜の面形状に沿って被覆された状態であっても、ポーラス状の薄層膜であってもよい。このような態様の得られる形成方法であれば、その方法はとくに限定されないが、電極の接合には、金属、カーボン等の蒸着法、スパッタ法、無電解メッキ法、塗布法、プレス法、印刷法等の方法を用いることが可能である。これらのうち、簡便で有効なものとして、スパッタ法による貴金属の接合が挙げられる。電極部の厚さに特に制限はないが、10μm以下が好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。また、ポーラス加工は、金属薄膜作製時に行うことも、金属薄膜作製後に行うことも可能とされる。さらに詳しく言えば、例えば、ポーラス加工にはナノインプリント加工やマスキング加工がある。また、カーボンナノ構造体やカーボンナノ繊維を分散させたゲル電極とすることが好ましい。
【0014】
本実施態様の液滴アクチュエータ10は、電解質体4の外側に主電極部3aと副電極部3bとが、電極非設置部9を介して、電気的に離間して設けられている。本発明において、「電気的に離間」とは乾燥状態における電解質体の抵抗値で定められる。通常、高分子電解質上に形成された電極部間の抵抗値は湿潤状態で、幅1cm長さ1cmあたり、数Ωから数十Ωである。本発明において、電気的に離間とは、例えば湿潤状態で数kΩ以上の抵抗値となることをいい、数MΩ以上であることが好ましい。例えば高分子電解質をナフィオン(商品名、デュポン社製)として、化学的処理で白金粒子をナフィオン(商品名、デュポン社製)内に還元して生成させる場合、白金粒子は表面から数マイクロメートル程度の深さに多数存在する(通常ほぼ20マイクロメートル以内に収まる。)。そのため、電気的な離間状態は、表面から数十マイクロメートルの深さの溝を形成することで作製することができる。例えばレーザを用いて表面のみを焼ききることで実現される。このとき抵抗値が目的の値にまで増大すればよく、幅は例えば数マイクロメートルでよい。
【0015】
複数の電極部は別々に形成しても、1つの電極層を形成した後に分割してもよい。具体的な分割の方法としては、電解質層の片側表面に電極層を配置した後、例えば、ガラスナイフで電解質の表面とともに削る方法がある。あるいは、レーザ加工法や、フォトマスク法を用いて、任意の形状に分割しもよい。電極数は特に限定されず、用途に応じて多数構成することも好ましい。また電極部の構造は図1に示したものに限られず、例えば電極を裏面に設けても、側面に設けてもよい。また、国際特許出願第PCT/JP2006/306705号明細書に記載された装置構造や材料等を参考にして作製することができる。なお、電極部と配線とは一体に接続することが好ましい。
【0016】
本実施態様の液滴アクチュエータ10においては、上記電極部の外側に多孔質層7(以下、「ポーラス構造層」もしくは「撥水層」ともいう。)が設けられている。多孔質層7はポーラス状であることが好ましい。多孔質層7を設けることにより、液体等の電解質体への浸入量を抑え、調節することができる。多孔質層は、例えば、フッ素系、パラフィン系、シリコン系などの物質を例えば粒子状にして溶媒(例えば、液状接着剤)中に分散させ、塗布、乾燥、固化することで形成することができる。さらに具体的に、多孔質層は通常の撥水剤により形成することができ、撥水剤としては、例えば、パラフィン系撥水剤、フッ素(樹脂)系撥水剤、シリコン(樹脂)系撥水剤、ビニル重合(樹脂)系撥水剤、ウレタン(樹脂)系撥水剤、ポリエチレン(樹脂)系撥水剤、アルキル尿素系撥水剤(アルキルエチレン尿素型撥水剤などを含む)、脂肪酸アミド(樹脂)系撥水剤、エポキシ(樹脂)系撥水剤、フェノール(樹脂)系撥水剤、ブチラール(樹脂)系撥水剤、アクリル(樹脂)系撥水剤、金属錯塩系撥水剤、ワックス系撥水剤(ワックスエマルジョン型撥水剤、アクリル樹脂パラフィンワックス併用型撥水剤、パラフィンワックス系エマルジョン型の撥水剤などを含む)を用いた撥水剤などが挙げられ、なかでもフッ素系撥水剤、パラフィン系撥水剤、またはシリコン系撥水剤が好ましい。
多孔質層7の厚さに特に制限はないが、数μm程度であることが好ましい。多孔質層7は電極部と同様に内部にポーラス構造を有し、所定イオンや分子の透過性を有するものであることが好ましく、例えば直径10〜100μmの微細な穴が多数存在し、穴は各々独立していることが好ましい。
【0017】
図1に示した実施態様の液滴アクチュエータ10においては、主電極部3aの上部の一部を覆うように分子もしくはイオン透過防止性の膜1(単に「透過防止膜」ということもある。)を設け、透過防止膜1及び多孔質層7により液滴制御部5を構成し、透過防止膜1の下部において主電極部3aの分子もしくはイオン透過性を低下させ、領域8とその状態を異ならせた液滴制御領域6内で液滴2を保持制御している。この透過防止膜からなる液滴制御部は、化学反応場や細胞培地としての利用に適している。例えば下記のとおりである。化学反応に寄与する反応薬や培養に必要な養分には、イオンの形態をとることも多い。ここで、本発明の液滴アクチュエータには電解質体が用いられるが、電解質体に溶液が長期にわたって接しているとイオン交換が生じる場合がる。すなわち、電解質体中のイオンと溶液中のイオンとが入れ替わることがある。すると溶液が意図した濃度と異なってしまうため、目的の反応や養分の供給などが行えなくなってしまう。これに対し、溶液と電解質体との間にイオン透過防止性の膜を配設することにより、不用意なイオン交換を防ぐことができる。
【0018】
透過防止膜は、所定の分子やイオンに対する透過防止性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ケイ素もしくはチタンの酸化物、窒化物、炭化物、またはその混合物、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ふっ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の疎水性樹脂やガラス、金、銀、白金、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、セルロース誘導体、アルギン酸等の親水性樹脂を少なくとも1種以上必要に応じて適宜組み合わせて用いることができるが、特に、透過防止膜としては、親水性樹脂よりは、酸化物、窒化物、炭化物、またはその混合物や、疎水性樹脂、ガラス、金属が好ましく、親水性樹脂を用いる場合は、前記酸化物、窒化物、炭化物、またはその混合物や、疎水性樹脂、ガラス、金属等と組み合わせて用いることが好ましい。透過防止膜として、2種の材料を組み合わせて用いる場合には、たとえばガラス上に、親水性高分子を塗布して2層にして用いることができる。
【0019】
透過防止膜の形成方法は特に限定されないが、有機溶剤に樹脂を溶解させてから塗布及び乾燥させるキャスト法あるいは、粘着性を有する樹脂フィルムを貼り付ける接着法が好ましい。透過防止性膜の材料としては市販製品を利用することができ、その場合、ガラス膜、金属膜、ポリマー膜などが挙げられ、特に生化学用途の場合にはガラス膜やポリイミド皮膜が好ましい。透過防止膜の厚さは特に限定されないが10〜1000μmであることが好ましく、100〜500μmであることがより好ましい。
【0020】
本実施態様の液滴アクチュエータ10においては、多孔質層7の上に透過防止膜1を設けているが、多孔質層7を用いずに透過防止膜1を主電極部3a上に直接設けてもよく、また多孔質層7と透過防止膜1との間に別の層を設けるなどしてもよい。
【0021】
本実施態様の液滴アクチュエータ10において、電極部及び透過防止膜の形状及び配置態様(以下、単に「配置態様」ともいう。)は特に限定されないが、例えば図2−1に示した配置態様1が挙げられる。この配置態様1では、電解質体の上に矩形の主電極部3a及び副電極部3bが設けられ、両者は電極非設置部9を介して電気的に離間されている。そして、主電極部3aの上に多孔質層7が設けられ、さらにその上に透過防止膜1が設けられている。透過防止膜1の上には液滴2が形成されている。この配置態様1のアクチュエータをI−I線断面図として示したものが、図1に示したものに相当する。
【0022】
本実施態様の液滴アクチュエータ10の別の配置態様2として図2−2に示したものが挙げられる。配置態様2においては、透過防止膜1として矩形のものではなく円形のものを用い、その円形透過防止膜1を3つ設け、その上部を液滴制御部としている。このようにすることで、所望の形状の液滴を複数、同時に制御することが可能である。
【0023】
電極部、液滴制御部、及び電極非設置部の面積は特に限定されず、目的に応じて適宜定めることができる。蒸発乾燥の著しい微細領域の液滴の制御のための微細素子とするためには、例えば、電極部の合計面積を10〜1000mmとすることが好ましく、100〜500mmとすることがより好ましい。このとき、液滴制御部の面積は5〜500mmとすることが好ましく、10〜25mmとすることがより好ましい。また、電極非設置部の面積は、0.1〜100mmとすることが好ましく、1〜5mmとすることがより好ましい。
【0024】
次に、本発明の液滴アクチュエータの別の好ましい実施態様について、それを模式的示す断面図(図3)を参照して説明する。本実施態様のアクチュエータ20においては、電極部3aの上部の多孔質層7の厚さを領域8と異ならせて液滴制御領域6内においてのみ厚くし、その部分を疎ポーラス構造としている。すなわち多孔質層7自身が液滴制御部となっている。したがって、液滴制御領域6内においては液滴2の分子やイオン等の透過性が抑えられ、液滴2が保持制御されている。このように多孔質層7の厚さを変化させる態様のほか、例えば、異なる種類の多孔質層を組み合わせて用いて疎ポーラス構造部を設けて液滴制御部としてもよい。本実施態様の液滴アクチュエータ20においては、先に説明した多孔質層の材料を用いることができ、その種類や厚さの好ましい範囲も先に説明したものと同様である。なお、多孔質層7の厚さの差により、その下の主電極部3aの分子もしくはイオン透過性を異ならせるとき、その厚さの差は20μm〜200μmであることが好ましく、50μm〜100μmであることがより好ましい。
【0025】
図4は、本発明の液滴アクチュエータのさらに別の好ましい実施態様を模式的示す断面図である。この実施態様の液滴アクチュエータ30は、主電極部3aの分子もしくはイオンの透過性を異ならせるために、主電極部3aと多孔質層7との間に(詳しくは、多孔質層7の下面から内部の一部にかけて)透過防止製膜1を設けている。このようにすることで透過防止製膜1と多孔質層7とを組み合わせた液滴制御部5としている。領域8とは異ならせて、液滴制御領域8内において電極部3aの分子・イオン透過性を低下させ、非ポーラス構造とし、その領域8において液滴2を保持制御している。本実施態様の液滴アクチュエータ30においては、先に説明した透過防止膜と同じ材料を用いることができ、その種類や厚さの好ましい範囲も先に説明したものと同様である。
【0026】
さらに具体的な態様として、機能性層を設けた液滴アクチュエータが挙げられる。図3は図1に示した態様の液滴アクチュエータ10の透過防止膜1の上部に、機能性層として細胞培養の培地膜51を設け、多孔質層7、透過防止膜1、及び培地膜51を組み合わせた液滴制御部5を有する液滴アクチュエータ100である。このように機能性層を設けることで、例えば、液滴制御部を形成するための透過防止膜1が制御液滴2との組み合わせにおいて相性がよくないような場合でも、より相性のよい材料の機能性層を設けることで良好な液滴制御をすることができる。例えば、動物細胞の培養においては、その細胞が固体表面に接着することによりはじめて細胞が増殖しさまざまな活性を示すことがある。このような場合に、その動物細胞と相性のよい固体表面を形成することが好ましく、例えば、コラーゲンやフィブロネクチンなどのタンパク質をはじめとする細胞外マトリックスをコーティングした培地を設けることが好ましい。コーティング方法は、マイクロコンタクトプリンティングなどの通常の方法によればよい。
【0027】
本発明の液滴アクチュエータにおいては、保液層を必要に応じて設けることができ、電極部(3a、3b)を設けたのとは電解質体を挟んで反対側に設けることが好ましい。保液層は液体を保持し電解質体に供給できればどのようなものでもよいが、例えば、ゲル、多孔質、不織布などが挙げられる。不織布などの平板状のものを用いる場合、その大きさは電解質層と同様であり、その好ましい範囲も同義である。
保液層に保持される液体は特に限定されず、水性媒体(例えば、水、水に金属イオン、アンモニウムイオンなどを溶解したもの)、メタノール水溶液、エタノール水溶液などが挙げられ、またイオン液体のようにIPMC(Ion polymer and metal composite)等に浸透可能な液体が利用される。保液層は電解質体に接着されていることが好ましく、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤などにより接着固定することができる。
【0028】
本発明の液滴アクチュエータにおいては、少なくとも2つの電極部(3a、3b)間に電圧が印加される。電圧の印加はどのような方法によってもよいが、通常は、電極部に端子を設け(例えば、銅、金、白金など)、両端子を電源(例えば、変圧可能な定電圧源など)の正極、負極に接続してもよい。
【0029】
本発明の液滴アクチュエータにおいては少なくとも両電極部(3a、3b)に電圧を印加して、液滴制御部1上の液滴2の形成、消失、及び/又は液滴量の増減の制御を行うことができる(本発明においてはこれらの制御を総称して、単に「液滴の制御」ということもある。)本発明の液滴アクチュエータにより制御される液滴の形状は特に限定されず、粒状の液体だけではなく、面状もしくは線状に広がっていてもよく、制御が可能な独立した状態であればよい。制御する液滴の大きさは特に限定されないが、蒸発乾燥が急激に進行する微小液滴領域の制御という観点からは、液滴量にして、サブnL(ナノリットル)〜10μL(マイクロリットル)であることが好ましく、1nL〜100nLであることがより好ましい。
【0030】
本発明の液滴アクチュエータにおいては、液体の揮発及び凝縮を利用して液滴の制御を行うことができ、例えば電解質体の高分子ポンプ機能を利用したり、電極部近傍における液体の電気分解による気体の生成を利用したりしてもよい。ここで、高分子ポンプ機能とは、例えばポリマー電解質において、主鎖に拘束されない正もしくは負に帯電したイオンが電界に応じて移動するとき、そのイオンと親和している液体(例えば、水)がそれに伴って移動する機能である。本発明の液滴駆動構造体及び液滴駆動システムによって制御される液滴の液体は特に限定されないが、水性媒体(例えば、水、水に金属イオン、アンモニウムイオンなどを溶解したもの)、メタノール水溶液、エタノール水溶液などが挙げられ、なかでも水に金属イオンや塩化物イオンを溶解させたものが好ましい。
【0031】
本発明の液滴アクチュエータにおいては、主電極部の面積と副電極部の面積とを異ならせることが好ましく、主電極部の面積より副電極部の面積の方が大きいことがより好ましい。上述した配置態様1及び2においては、いずれもそのような関係に電極部が構成されている。副電極部の面積をより大きくすることにより液体分子のポンピング速度を向上させ、電気分解速度を高めることができる。このように大きな副電極部において助長されたポンピングや電気分解反応が、それと平衡するように、より小さな主電極部で集中して生じる。そのため、上記のように副電極部の面積比を大きくすることで、主電極部の少なくとも一部に設けた液滴制御部上における液滴の制御効率を向上させることができる。これにより微細液滴を利用した各種の化学合成反応や細胞培養を効率化することができる。なお、陽極を主電極とするか、陰極を主電極とするかの選択は、用途や電解質の極性等により適宜定めればよい。
【0032】
本発明の液滴アクチュエータは、液滴を外部から導入して(例えば液滴制御部に滴下して)制御してもよく、アクチュエータの状態(温度等)及び/又はその外部状態(外部液量や温度等)を調節して液滴制御を行う駆動制御システムとしてもよい。例えば、下記の手段のいずれか、またはそれらを組み合わせて備えることが好ましい。ただし、下記の各手段はアクチュエータとは別に設けてシステムとしても、アクチュエータに直接設けてもよい。
(A)アクチュエータ周辺雰囲気の蒸気圧、温度、もしくはその両者を調整する雰囲気調整手段:
アクチュエータ周辺雰囲気調整手段としては、通常の湿度調節機能を備えた恒温槽、スチーム式加湿器が挙げられる。また、温度調節機能のついたバブラーを用いて、一定温度、一定湿度の空気を基板上に吹き付ける局所的な雰囲気調整手段(例えば、霧状雰囲気形成手段(a))であってもよい。霧状雰囲気形成手段(a)としては霧吹き器、超音波式加湿器、又は静電噴霧器が挙げられる。
【0033】
(B)アクチュエータの温度を調整する手段:
アクチュエータ温度調整手段としては、通常のペルチェ恒温器などを利用することができる。あるいは、空冷式もしくは水冷式の循環冷却手段を基板の下に配置してもよい。温度は、一定温度を保つものでも、雰囲気温度に対して一定の温度差を保つものでもよい。アプリケーションにもよるが、生化学用途の場合、アクチュエータ温度を35℃付近とし、上記手段(A)により雰囲気温度をアクチュエータ温度より5℃程度高めにすることが好ましい。また雰囲気湿度は80%以上であることが好ましい。
【0034】
(C)アクチュエータの両電極部もしくはそのいずれかに発生する過剰凝縮液を解除する手段:
高湿度雰囲気中にその雰囲気温度より低温のアクチュエータを配置するとき、アクチュエータ表面に結露が生じる場合がある。場所によってはアクチュエータ表面の濡れ性を切換えて高分子ポンピングや電気分解によって適宜液滴を除去することができる。しかしながら、電極特性等により場所によっては凝縮液を除去する手段が必要となる。さらに、主電極部より副電極部を大きくしたとき、副電極部において過剰な液体の凝縮が生じやすい。そのようなときにはとくに、その過剰な凝縮液を取り除く手段を設けることが好ましい。具体的には、その過剰液を蓄える液だめと流路とを設けることが好ましい。そのほか適宜、加熱蒸発手段など過剰液の除去手段を設けてもよい。流路としては不織布など毛細管現象を用いた流路が好ましい。具体的には、副電極部の上面に不織布を貼り付け、その不織布の先に液だめを設けることが好ましい。さらにカーボンペーパなど導電性のメッシュ材の利用が好ましい。このようなメッシュ材は過剰凝縮液を除去する手段として機能する上に、電極としても機能するためである。例えば、白金などを用いて電極を構成した場合には、カーボンペーパが白金の電極を補助する補助的な電極として機能することとなる。
【0035】
本発明の液滴アクチュエータによれば、各種デバイスの小型化も可能である。液滴は微細化するほどその制御が困難となるが、本発明の液滴アクチュエータはその問題を解決し、微細液滴を効率的かつ実用的に制御することができる。
【0036】
一般に液滴が小さくなるとその内部で行われる反応に必要な時間は短くなる。例えば1cmが100μmになるといった100分の1のスケールダウンを行った場合、2液が面で接していると仮定すると空間内での分子拡散に要する時間は10000分の1になる。そのため、拡散に律速がある場合に、1時間かかる反応は0.36秒で終了する。しかしながら、液滴が小さくなることで反応が早まるのは拡散に律速がある場合であり、反応そのものに律速がある場合には、液滴のサイズを小さくしても全体の時間は短くならない。さらに、反応が2種以上の物質の相互作用からなり各々の物質の添加などに順序が決まっている場合には、全体の反応時間には各薬剤の添加時間や各反応の終了確認時間などが加わるため、液滴を小さくしても必ずしも全ての反応時間が短くなるわけではない。実際に、創薬分野や細胞に対する薬剤のスクリーニング試験などの複雑な化学分野や生化学分野では、数時間から数日のオーダーで微少液滴量の保持が望まれている。
【0037】
しかし、先にも述べたように、長期間開放空間で微少な液滴を保持することは容易ではない。その大きな要因は、液量制御を、湿度と温度との調整により乾燥と凝縮との収支を合わせることのみで実現しようとすることにある。一般に湿度と温度の調整は、いずれも空間あるいは面において分布が生じるため、容易ではない。このことから、乾燥と凝縮との収支を合わせることで面基板での液量制御を実現することは容易ではない。本発明は、適切に濡れ性や形状を制御しうる面構造と電気分解機能とを組み合わせることによって、より容易に液滴量を制御することができる。すなわち、微少な液量制御を電気化学的に制御することができ、アプリケーションを広げることもできる。また、制御液滴が溶液であるとき、その溶媒よりも電圧に反応しやすいプロトンやイオンを添加することにより制御性を変化させることができ、アプリケーションの幅を一層広げることができる。
【0038】
本発明のアクチュエータは、マイクロケミカルの分野に広く用いることができ、例えば、マイクロTAS、マイクロリアクター、燃料電池の燃料供給、Lab−on−a−chip、バイオチップ、ヘルスケアチップ、PDMSチップ、バイオセンサ、Bio−MEMSなどの制御素子として好適に利用することができる(米国特許出願公開第2004/0134854号明細書、国際公開第WO02/066992号パンフレット、米国特許出願公開第2005/0064423号明細書、国際公開第WO03/057875号パンフレット、アール.ジェフリ(R.JEFFREY)ら,ネイチャー・マテリアルス(Nature materials),Vol.4,2005年1月,98−102頁、エム.ジー.ポラック(M.G.Pollak)ら,アプライド・フィジクス・レターズ(Applied physics letters),Vol.77,No.11,2000年9月,1725―1726頁、テイ.ビー.ジョーンズ(T.B.Jones)ら,ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Journal of applied physics),Vol.89,No.2,2001年1月,1441−1445頁等参照。)。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
(実施例1)
以下のようにして図6に示した本発明の液滴アクチュエータを作製した。
縦40mm、横15mm、厚さ178μmのナフィオン117(含フッ素イオン交換膜、デュポン社製)製電界質体64の片面に白金電極層63a及び63bとなる層を厚さ3μm程度になるように化学めっきして付与した。得られた複合材料を16時間撥水剤(FS−1010:フロロテクノロジー社製)に含浸させた後、同撥水剤の乾燥と塗布とを5回繰り返し、多孔質の撥水層67a及び67bを形成した。
保水層65には、縦40mm、横15mm、厚さ100μmのアクリル製の不織布を利用し、両面テープ(NW−R15S:ニチバン社製)を用いて固定した。さらに保水層65を、縦50mm、横20mm、厚さ2mmのガラス板66上に(SU接着剤:コニシ社製)により接着固定した。撥水層側の露出した電極層面にレーザを照射して、表面から約30μmを溶解し電極非接触部69を設け、電極層面を分断し、陽極とする積層部(63a、67a)と陰極とする積層部(63b、67b)とを構成した。露出させた陽極部(主電極部)63aと陰極部(副電極部)63bとに端子を介して電源(PA10−3A:ケンウッド社製)を接続した。
【0040】
次いで、陽極側積層部(63a、67a)の一部にポリイミドフィルム(透過防止膜)61を貼り付けて、液滴制御部5を形成し非ポーラス部Sを構成した。貼り付けたポリイミドフィルムは、0.5mm角とした(住友スリーエム社製、カプトンテープ7414、ノンシリコーン耐熱マスキングテープ、膜厚0.047mm、アクリル系接着樹脂)。このようにして作製した液滴アクチュエータ60を試験体1とした。
【0041】
(実施例2)
上記のポリイミドフィルムに代えてアルミホイル(日本製箔社製、製品名M50)を貼り付けて非ポーラス部Sとした以外、実施例1と同様にして液滴アクチュエータを作製し、これを試験体2とした。
【0042】
(実施例3)
試験体1及び2のそれぞれについて、非ポーラス部Sとポーラス部Tとに直径600μmの大きさの液滴(図示せず)をそれぞれ配置し、電源(PA10−3A:ケンウッド社製)から正極及び負極にそれぞれ電圧を印加した。6Vの電圧を5分程度印加したところ、試験体1及び2のいずれにおいても、ポーラス部Tの液滴は全て電気分解によって消失し、非ポーラス部Sにのみ直径600μmの大きさの液滴が制御して維持された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の液滴アクチュエータの一実施態様を模式的に示す断面図である。
【図2−1】本発明の液滴アクチュエータの電極部等の配置態様を模式的に示す平面図である。
【図2−2】本発明の液滴アクチュエータの電極部等の別の配置態様を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の液滴アクチュエータの別の実施態様を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の液滴アクチュエータのさらに別の実施態様を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の液滴アクチュエータにおいて機能性層(培地膜)を有する態様を模式的に示す断面図である。
【図6】実施例で作製した本発明の液滴アクチュエータを模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10、20、30、60、100 液滴アクチュエータ
1、61 透過防止膜
2 液滴
3a、63a 主電極部
3b、63b 副電極部
4、64 電解質体
5 液滴制御部
6 液滴制御領域
7、67a、67b 多孔質層(撥水層)
8 主電極の液滴制御領域以外の領域
9、69 電極非設置部(電極の電気的離間部)
61a、61b 多孔質層
63a、63b 電極層
65 保液層
66 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質体の外側にポーラス状の主電極部及び副電極部を電気的に離間して設け、前記主電極部の一部における分子もしくはイオン透過性を主電極部のその他の部分と異なるようにする液滴制御部を設けた構造体であって、前記両電極部に電圧を印加して該液滴制御部上の液滴の形成、消失、もしくは液滴量の増減を制御しうることを特徴とする液滴アクチュエータ。
【請求項2】
前記主電極部の外側に分子もしくはイオン透過防止性の膜を設けて、該膜部分を液滴制御部とすることを特徴とする請求項1記載の液滴アクチュエータ。
【請求項3】
前記主電極部の外側にポーラス構造層を設け、該ポーラス構造層の一部のポーラス量を異ならせた液滴制御部とすることを特徴とする請求項1記載の液滴アクチュエータ。
【請求項4】
前記主電極部の外側にポーラス構造層を設け、該ポーラス構造層の下面、内部、もしくはその両方に、分子もしくはイオン透過防止性の膜を設けて液滴制御部としたことを特徴とする請求項1記載の液滴アクチュエータ。
【請求項5】
前記分子もしくはイオン透過防止性の膜が、ケイ素もしくはチタンの酸化物、窒化物、または炭化物、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ふっ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ガラス、金、銀、白金、銅、ニッケル、アルミニウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、セルロース誘導体、及びアルギン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の材料からなる膜であることを特徴とする請求項2または4記載の液滴アクチュエータ。
【請求項6】
前記主電極部の少なくとも一部の分子もしくはイオンの透過性を主電極部のその他の部分より低下させて前記液滴制御部としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液滴アクチュエータ。
【請求項7】
前記液滴制御部の外側に機能性層を設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液滴アクチュエータ。
【請求項8】
前記機能性層が細胞培養の培地であることを特徴とする請求項7記載の液滴アクチュエータ。
【請求項9】
電解質体の外側にポーラス状の主電極部及び副電極部を電気的に離間して設け、前記主電極部の一部につき分子もしくはイオン透過性を主電極部のその他の部分と異なるようにする液滴制御部を設け、前記両電極部に印加する電圧を調節して該液滴制御部上の液滴の形成、消失、もしくは液滴量の増減を制御することを特徴とする液滴駆動制御方法。

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−93566(P2008−93566A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278155(P2006−278155)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】