説明

液滴吐出ヘッド、インクジェットプリンタ、液滴吐出ヘッドの製造方法およびインクジェットプリンタの製造方法

【課題】液滴吐出ヘッドの特性を向上させる。また、生産性の高い液滴吐出ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る液滴吐出ヘッドは、振動板〔13〕の第1面上に配置された圧電素子〔Pi〕と、前記振動板の前記第1面と逆側の面である第2面と対向して配置された平板部材〔21〕と、前記振動板および前記平板部材との間に位置し、キャビティ〔Ca〕およびリザーバ〔R〕を区画する側壁部材〔11、31〕と、を有し、前記リザーバ〔R〕に吐出液を供給する供給孔〔21a〕を前記平板部材〔21〕に設ける。かかる構成によれば、供給孔を、振動板側と逆側に位置する平板部材に設けたので、供給孔の加工が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド、インクジェットプリンタ、液滴吐出ヘッドの製造方法およびインクジェットプリンタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッドは、キャビティ(圧力室)を圧電素子により加圧し、その内部のインク(吐出液)をキャビティ底部のノズル孔から吐出する部材である。このような、インクジェットヘッドは、インクジェットプリンタ等に利用され、ノズル孔から吐出されるインクによって印刷がなされる。
【0003】
インクジェットヘッドは、例えば、下記特許文献1の図5に記載のように、インク室基板52に、複数のキャビティ521、リザーバ523および連通孔531を設けている。この連通孔531を介して、インクカートリッジからリザーバ523へのインクの供給がなされる。
【特許文献1】特開2005−328006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、液滴吐出ヘッド、特に、インクジェットプリンタに用いるヘッド部に関する研究・開発を行っている。
【0005】
例えば、上記特許文献1記載のインクジェットヘッドの製造工程においては、追って詳細に説明するように、圧電素子、キャビティやリザーバなどを形成した後、インクカートリッジからリザーバへのインクの供給孔を形成しなければならない。そのため、基板の加工工程が複数工程におよび工程の煩雑化の要因となる。また、圧電素子、キャビティやリザーバなどを形成した後においては、基板自身を加工し難く、加工精度の低下や、既に形成されている部位の変形や破損など、特性の劣化を生じやすい。
【0006】
そこで、本発明に係る具体的態様は、液滴吐出ヘッドの構成を工夫することで、その特性を向上させることを目的とする。また、生産性の高い液滴吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、振動板の第1面上に配置された圧電素子と、前記振動板の前記第1面と逆側の面である第2面と対向して配置された平板部材と、前記振動板および前記平板部材との間に位置し、キャビティおよびリザーバを区画する側壁部材と、を有し、前記リザーバに吐出液を供給する供給孔を前記平板部材に設けたことを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、供給孔を、振動板側ではなく、振動板側と逆側に位置する平板部材に設けたので、供給孔の加工が容易となり、供給孔や他の部位を精度良く形成することができる。よって、ヘッドの特性を向上させることができる。
【0009】
前記側壁部材は、少なくとも前記キャビティの前記吐出液の吐出方向を開口した第1側壁材と、前記吐出液の吐出孔を有する第2側壁材とを有する。かかる構成によれば、吐出孔が供給孔と異なる方向(面)に形成されるため、液滴吐出の対象物(例えば、紙など)の移動方向に対し、供給孔へ吐出液を供給するための各種部材(例えば、パイプやインクタンクなど)が障害とならない。よって、ヘッドの液滴吐出特性をさらに向上させることができる。
【0010】
前記キャビティを複数有し、前記第1側壁材は、前記複数のキャビティ間および前記キャビティとリザーバとの間の分離壁を有する。このように、複数のキャビティ間やキャビティとリザーバ間を第1側壁材で分離してもよい。
【0011】
前記第1側壁材と前記振動板とは異なる材料で構成されている。かかる構成によれば、第1側壁材を、振動板をエッチングストッパーとしてエッチング工程により形成することができる。
【0012】
前記吐出孔における吐出液の吐出方向は、前記吐出液の吐出時における前記振動板の変位方向と交差する方向である。前記供給孔における前記吐出液の供給方向は、前記吐出液の吐出時における前記振動板の変位方向と逆向きである。
【0013】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インク吐出ヘッドとして上記液滴吐出ヘッドを有する。かかる構成によれば、インクジェットプリンタの特性の向上を図ることができる。
【0014】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インク吐出ヘッドとして上記液滴吐出ヘッドを有するインクジェットプリンタであって、印刷対象面は、前記第2側壁材と対向して配置される。かかる構成によれば、印刷対象面が配置し易くなる。
【0015】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第1基板の第1面上に振動板および圧電素子を形成する工程と、前記第1基板の前記第1面と逆側の面である第2面側から前記振動板が露出するまで前記第1基板を選択的に除去することにより、キャビティおよびリザーバを形成し、前記第2面側および前記第2面と交差する第3面側に開口を有する第1側壁材を形成する工程と、前記第1側壁材に、前記第2面側の開口を覆い、前記リザーバに吐出液を供給する供給孔を有する平板部材を接合する工程と、を有する。
【0016】
かかる方法によれば、前記リザーバに吐出液を供給する供給孔を有する平板部材を接合するため、振動板側への供給孔の加工が不要となり、供給孔や他の部位を精度良く形成することができる。
【0017】
前記第1側壁材に、前記第3面側の開口を覆い、前記キャビティから吐出液を吐出する吐出孔を有する第2側壁材を接合する工程、を有する。かかる方法によれば、供給孔と異なる方向(面)に、吐出孔を配置することができる。
【0018】
本発明に係るインクジェットプリンタの製造方法は、上記液滴吐出ヘッドの製造方法を有する。かかる方法によれば、インクジェットプリンタの生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の機能を
有するものには同一もしくは関連の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0020】
<液滴吐出ヘッド構成>
図1は、本実施の形態の液滴吐出ヘッドの構成を示す要部断面図である。図1に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッドは、振動板13の表面(第1面)上に配置された圧電素子Piと、振動板13の裏面(第2面)と第1基板11を介して対向して配置された第2基板21と、振動板13と第2基板21の間(側面)に配置された第3基板31と、を有する。言い換えれば、キャビティCaやリザーバRの上面は、振動板13で構成され、下面は、第2基板21で構成され、側面は、第1基板11および第3基板31で構成されている。
【0021】
第2基板21には、インク供給孔21aが設けられ、第3基板31には、吐出孔31aが設けられている。また、振動板13には、インク供給孔21aが設けられていない。白抜きの矢印は、吐出液(液滴、インク)の吐出方向を示し、51は、紙等の印刷対象物である。また、61は、インクタンク(図示せず)とインク供給孔21aとを接続するパイプ(管、インク供給管)である。
<液滴吐出ヘッドの製造工程>
図2〜図8は、本実施の形態の液滴吐出ヘッド(液体吐出ヘッド、インクジェットヘッド)の製造方法を示す工程断面図又は平面図である。図2〜図8を参照しながら、本実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造方法について説明するとともに、その構成をより明確にする。
【0022】
図2(A)に示すように、第1基板(流路形成用基板、加工基板、第1側壁材)として、例えば面方位(110)のシリコン基板11を準備する。次いで、図2(B)および(C)に示すように、シリコン基板11の表面(第1面)上に、振動板(振動膜、弾性板、弾性膜、アクチュエータ板)13として、酸化シリコン(SiO2)膜13aおよび酸化ジルコニウム(ZrO2)膜13bの積層膜を形成する。例えば、シリコン基板11の表面を熱酸化することにより膜厚1000nm程度の酸化シリコン膜13aを形成する(図2(B))。次いで、例えば、酸化シリコン膜13a上にスパッタリング法によりジルコニウム膜を堆積し、このジルコニウム膜を熱酸化することにより膜厚500nm程度の酸化ジルコニウム膜13bを形成する(図2(C))。なお、他の絶縁膜を用いて振動板13を構成してもよい。また、単一の絶縁膜(例えば、SiO2)で振動板13を構成してもよい。
【0023】
次いで、図3(A)に示すように、振動板13上に、下部電極15として、例えば、イリジウム(Ir)膜および白金(Pt)の積層膜を形成する。例えば、Ir膜をスパッタリング法で膜厚10nm程度堆積した後、Pt膜をスパッタリング法で膜厚150nm程度堆積する。次いで、上記積層膜上にフォトレジスト膜を形成し、露光・現像(フォトリソグラフィ)することにより所望の形状(例えば、略矩形状(図4(C)参照))のフォトレジスト膜を形成する。次いで、フォトレジスト膜をマスクに、上記積層膜をエッチングすることにより下部電極15を形成する(図3(B))。次いで、残存するフォトレジスト膜を除去する。このフォトレジスト膜の形成から除去までの一連の工程をパターニングという。
【0024】
次いで、図3(B)に示すように、下部電極15上に圧電体膜として、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛、Pb(Zr1-xTix)O3)膜17を形成する。PZT膜は、例えば、膜の構成する金属の有機金属化合物溶液を下部電極15上に塗布した後、乾燥・焼成する、いわゆる、ゾル・ゲル法により形成する。焼成温度は、例えば700℃程度とし、ZrとTiの構成比が、それぞれ約50%(x=0.5)で、膜厚1.0μm程度のPZT膜を形成する。このPZT膜17は、(100)に優先配向した、モノシリック構造であり、分極方向は、膜の面に垂直な方向に対して傾いているエンジニアード・ドメイン配置である。
【0025】
次いで、図3(C)に示すように、PZT膜17上に上部電極19として、例えば、Ir膜を形成する。Ir膜は、スパッタリング法を用いて、膜厚200nm程度堆積する。
【0026】
次いで、図4(A)に示すように、PZT膜17および上部電極19を所望の形状、例えば、複数の略矩形状(例えば、20μm×600μmの矩形、図4(C)参照)のパターンにパターニングする。なお、後述するように各パターンが、キャビティCaと対応する。図4(C)は、平面図であり、図4(A)は、図4(C)のA−A断面に、図4(B)は、図4(C)のB−B断面に対応する。
【0027】
以上の工程により、振動板13上に、下部電極15、圧電体膜17および上部電極19よりなる圧電素子Piが形成される。
【0028】
次いで、図5(A)および(B)に示すように、シリコン基板11を選択的に除去することにより圧電体膜17の下部にキャビティ(圧力室、空間)Caおよびリザーバ(流路)Rを形成する。
【0029】
即ち、シリコン基板11の裏面(第2面)上に、フォトレジスト膜を形成し、露光・現像することにより、上記キャビティCaおよびリザーバRに対応する位置に開口を有するフォトレジスト膜を形成する。次いで、当該膜をマスクに、シリコン基板11を振動板(酸化シリコン膜13a)13が露出するまでエッチングする。エッチング液としては、例えば、水酸化カリウム(KOH)溶液を用いる。この際、振動板13を構成する酸化シリコン膜13aは、エッチングストッパーとしての役割を果たす。図5(C)中の斜線部が、シリコン基板11の残存部分である。即ち、シリコン基板11は、下面(第2面)と図中左側の面(第3面、吐出方向の面)に開口を有する。なお、キャビティCaとリザーバRとの間には、キャビティCa部のY方向の幅より幅の狭い接続流路(しぼり)Cbが形成される。言い換えれば、他の部分は、キャビティCa間およびキャビティCaとリザーバRとの間の分離壁となる。例えば、リザーバRの幅は200μm程度、キャビティCaの幅は35μm、長さは1000μm、高さは40μm程度である。なお、シリコン基板11のエッチング用のマスクとして酸化シリコン膜を用いてもよい。
【0030】
次いで、図6(A)および(B)に示すように、キャビティCaの下側に、第2基板(接合基板、支持基板、平板部材)として、インク供給孔(供給孔)21aを有するシリコン基板21を接合する。シリコン基板21の厚さは、例えば、300μm程度である。図6(C)は、シリコン基板21の裏面側から見た平面図である。
【0031】
このシリコン基板21のインク供給孔21aは、シリコン基板21のエッチングにより形成し、その直径は、例えば100μm程度である。エッチング液としては、例えば、KOH溶液を用い、エッチング用のマスクとしては、例えば酸化シリコン膜を用いる。
【0032】
このインク供給孔21aが、シリコン基板11のリザーバRに対応するよう位置あわせし、例えば熱圧着によりシリコン基板11と21を接合する。
【0033】
次いで、必要に応じて、上記工程で形成されたシリコン基板11、21の接合体において、第3基板を接合する予定である側面を、研磨工程により平坦化する。例えば、キャビティCaをウエットエッチングで形成する場合、シリコン基板の面方位等の影響によりエッチングにより露出した面(キャビティCa側面など)がテーパー形状となる場合がある(図示せず)。この際、第3基板を接合する予定である側面もテーパー形状となり得るため、必要に応じて上記研磨を行う。なお、イオンリミングによりキャビティCaを加工する場合には、加工面を垂直とすることができ、上記研磨工程の省略や研磨時間の低減を図ることができる。
【0034】
次いで、図7および図8に示すように、キャビティCaの側面に、第3基板(接合基板、ノズルプレート、第2側壁材)として、吐出孔(インク吐出孔、ノズル孔)31aを有するシリコン基板31を接合する。シリコン基板31の厚さは、例えば、100μm程度である。図8(A)は、シリコン基板31の側面側から見た平面図である。図8(B)は、シリコン基板21の裏面側から見た平面図である。
【0035】
このシリコン基板31の吐出孔31aは、シリコン基板31のエッチングにより形成し、その直径は、例えば20μm程度である。エッチング液としては、例えば、KOH溶液を用い、エッチング用のマスクとしては、例えば酸化シリコン膜を用いる。
【0036】
この吐出孔31aが、シリコン基板11の各キャビティCaに対応するよう位置あわせし、例えば熱圧着によりシリコン基板11と31を接合する。
【0037】
以上の工程により、本実施の形態の液滴吐出ヘッドが略完成する。圧電素子Piへの印加電圧は、例えば20V程、振動板13の変位量は例えば300nm程度である。また、液滴(インク)の吐出量は、例えば2ピコリットル程度であり、その吐出速度は、8m/sec程度である。図9は、本実施の形態の液滴吐出ヘッドの分解斜視図である。図示するように、必要に応じて、振動板13上に、コンプライアンス基板41を配置してもよい。コンプライアンス基板41には、例えば、圧電素子保持部41aと外部接続孔41bが設けられている。外部接続孔41bからは、リード電極Eが露出し、このリード電極Eは、図示しない駆動ICなどに接続される。なお、図1等において、リード電極Eは省略されている。
【0038】
また、振動板13の変位方向は、図7(A)中の下方向であり、吐出方向は、図中左方向(変位方向と交差する方向)である。また、供給孔21aにおける吐出液の供給方向は図7(A)中の上方向(振動板13の変位方向と逆向き)である。
【0039】
このように、本実施の形態の液滴吐出ヘッドにおいては、インク供給孔21aを、キャビティCaの振動板13側ではなく、振動板13側と逆側に位置するシリコン基板21に設けたので、インク供給孔21aの加工が容易となる。また、インク供給孔21aを精度良く形成することができる。
【0040】
図10は、本実施の形態の液滴吐出ヘッドの効果を説明するための第1比較例を示す断面図である。
【0041】
例えば、図10に示す第1比較例においては、圧電素子PiやキャビティCaの形成後(例えば、図5に示す工程の後)に、振動板13にインク供給孔13cを形成する必要がある。この際、パンチ加工などを行うと、振動板13や圧電素子Piに物理的応力が加わり、その特性が劣化する。また、パンチ加工では、装置(ヘッド)の微細化に対応し難い。また、エッチングにより、振動板13に開口(インク供給孔13c)を設けることも可能であるが、圧電素子Piなどを保護しつつ、また、これらに影響を与えないエッチャントを選択しなければならない。よって、エッチング条件が制限され、また、製造工程が複雑となる。
【0042】
これに対し本実施の形態によれば、インク供給孔21aが形成されたシリコン基板21を接合するだけで、容易に液滴吐出ヘッドを形成することができる。また、シリコン基板21のエッチングは容易であり、また、微細化にも対応し得る。
【0043】
このように、本実施の形態の液滴吐出ヘッドによれば、ヘッド特性を向上させることができる。
【0044】
さらに、本実施の形態の液滴吐出ヘッドによれば、吐出孔31aをインク供給孔21aと異なる面に形成したので、紙等の印刷対象物(液滴吐出の対象物、印刷媒体)51の移動方向に対し、インク供給孔21aへインクを供給するためのパイプ(インク供給パイプ)61やインクタンク(図示せず)などが障害とならない。言い換えれば、第3基板(吐出孔31a)31と紙等の印刷対象物を容易に対向して配置できる。よって、吐出孔31aと印刷対象物51との間を最適化(例えば、1.5mm程度と)することができ、印刷特性を向上させることができる。
【0045】
図11は、本実施の形態の液滴吐出ヘッドの効果を説明するための第2比較例を示す断面図である。例えば、図11に示す第2比較例においては、紙等の印刷対象物51の移動方向(図中の黒矢印)に対し、パイプ61などが障害となる。よって、吐出孔31aと印刷対象物51との間を大きくする、又は、印刷対象物51を曲げながら印刷するなどの工夫が必要となる。
【0046】
これに対し本実施の形態によれば、吐出孔31aをインク供給孔21aと異なる面に形成したので、印刷が容易となり、印刷特性を向上させることができる。なお、図11に示すヘッド構造においても、インク供給孔21aをシリコン基板21に設けたことによる効果を奏するため、本発明は、図11に記載の構成を排除するものではない。また、上記実施の形態においては、基板としてシリコン基板を用いたが、他の材料基板を用いてもよい。但し、シリコン基板は、高精度な加工(エッチング)が可能であるため、微細化に適する。また、第1〜第3基板を異なる材料基板で構成してもよい。但し、同材料であれば、接合強度の向上が図れ、好適である。
【0047】
図12は、本実施の形態の液滴吐出ヘッドが適用されるインクジェットプリンタの一例を示す斜視図である。
【0048】
例えば、インクジェットプリンタ600は、装置本体620を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ621を有し、下部前方に記録用紙Pを排出する排出口622を有し、上部面に操作パネル670を有する。
【0049】
装置本体620の内部には、主に、往復動するヘッドユニット630を備えた印刷装置640と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置640に送り込む給紙装置650と、印刷装置640および給紙装置650を制御する制御部660とが設けられている。
【0050】
制御部660の制御により、給紙装置650は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りするようになっている。間欠送りされる記録用紙Pは、ヘッドユニット630の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット630が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動し、記録用紙Pへの印刷を行うようになっている。すなわち、ヘッドユニット630の往復動と、記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となり、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
【0051】
印刷装置640は、ヘッドユニット630と、ヘッドユニット630の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット630を往復動させる往復動機構642とを備えている。
【0052】
ヘッドユニット630は、その下部に、上述の多数の吐出孔(ノズル孔)31aを備えるインクジェット式記録ヘッド50と、このインクジェット式記録ヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ631と、インクジェット式記録ヘッド50およびインクカートリッジ631を搭載したキャリッジ632とを有する。
【0053】
インクカートリッジ631として、例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、ヘッドユニット630には、各色にそれぞれ対応したインクジェット式記録ヘッド50が設けられることになる。
【0054】
往復動機構642は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸643と、キャリッジガイド軸643と平行に延在するタイミングベルト644とを有する。キャリッジ632は、キャリッジガイド軸643に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト644の一部に固定されている。キャリッジモータ641の作動により、プーリを介してタイミングベルト644を正逆走行させると、キャリッジガイド軸643に案内されて、ヘッドユニット630が往復動する。この往復動の際に、インクジェット式記録ヘッド50から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0055】
給紙装置650は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により回転する給紙ローラ652とを有する。給紙ローラ652は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ652aと、駆動ローラ652bとで構成されており、駆動ローラ652bは、給紙モータ651に連結されている。このような構成によって給紙ローラ652は、トレイ621に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置640に向かって1枚ずつ送り込むことができる。なお、トレイ621に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成とすることもできる。
【0056】
制御部660は、たとえばパーソナルコンピュータやディジタルカメラなどのホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置640や給紙装置650などを制御することにより印刷を行うものである。
【0057】
制御部660には、いずれも図示しないものの、主に各部を制御する制御プログラムなどを記憶するメモリ、圧電素子(振動源)を駆動してインクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置640(キャリッジモータ641)を駆動する駆動回路、給紙装置650(給紙モータ651)を駆動する駆動回路、およびホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとが備えられている。
【0058】
CPUには、たとえば、インクカートリッジ631のインク残量、ヘッドユニット630の位置、温度、湿度などの印刷環境などを検出可能な各種センサが、それぞれ電気的に接続されている。制御部660は、通信回路を介して印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理し、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づき、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により圧電素子、印刷装置640および給紙装置650は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに所望の印刷がなされる。
【0059】
本実施の形態にかかるインクジェットプリンタ600によれば、前述したように、液滴吐出特性が良好なヘッドを備えているので、高密度印刷や高速印刷が可能となる。また、前述のヘッドを当該インクジェットプリンタ600に組み込むことで、その生産性を向上させることができる。
【0060】
なお、本発明のインクジェットプリンタ600は、工業的に用いられる液滴吐出装置として用いることもできる。その場合に、吐出するインク(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整して使用することができる。
【0061】
なお、上記実施の形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの構成を示す要部断面図である。
【図2】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造方法を示す工程断面図である。
【図3】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造方法を示す工程断面図である。
【図4】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造方法を示す工程断面図および平面図である。
【図5】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造方法を示す工程断面図および平面図である。
【図6】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造方法を示す工程断面図および平面図である。
【図7】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造方法を示す工程断面図である。
【図8】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの製造方法を示す平面図である。
【図9】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの分解斜視図である。
【図10】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの効果を説明するための第1比較例を示す断面図である。
【図11】本実施の形態の液滴吐出ヘッドの効果を説明するための第2比較例を示す断面図である。
【図12】本実施の形態の液滴吐出ヘッドが適用されるインクジェットプリンタの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
11…シリコン基板、13…振動板、13a…酸化シリコン膜、13b…酸化ジルコニウム膜、13c…インク供給孔、15…下部電極、17…PZT膜、19…上部電極、21…シリコン基板、21a…インク供給孔、31…シリコン基板、31a…吐出孔、41…コンプライアンス基板、41a…圧電素子保持部、41b…外部接続孔、51…印刷対象物、61…パイプ、600…インクジェットプリンタ、620…装置本体、621…トレイ、622…排出口、630…ヘッドユニット、631…インクカートリッジ、632…キャリッジ、640…印刷装置、641…キャリッジモータ、642…往復動機構、643…キャリッジガイド軸、644…タイミングベルト、650…給紙装置、651…給紙モータ、652…給紙ローラ、660…制御部、670…操作パネル、Ca…キャビティ、Cb…接続流路、E…リード電極、P…記録用紙、Pi…圧電素子、R…リザーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板の第1面上に配置された圧電素子と、
前記振動板の前記第1面と逆側の面である第2面と対向して配置された平板部材と、
前記振動板および前記平板部材との間に位置し、キャビティおよびリザーバを区画する側壁部材と、を有し、
前記リザーバに吐出液を供給する供給孔を前記平板部材に設けたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記側壁部材は、少なくとも前記キャビティの前記吐出液の吐出方向を開口した第1側壁材と、前記吐出液の吐出孔を有する第2側壁材とを有することを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記キャビティを複数有し、
前記第1側壁材は、前記複数のキャビティ間および前記キャビティとリザーバとの間の分離壁を有することを特徴とする請求項2記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1側壁材と前記振動板とは異なる材料で構成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記吐出孔における吐出液の吐出方向は、前記吐出液の吐出時における前記振動板の変位方向と交差する方向であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記供給孔における前記吐出液の供給方向は、前記吐出液の吐出時における前記振動板の変位方向と逆向きであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
インク吐出ヘッドとして請求項1乃至6のいずれか一項記載の液滴吐出ヘッドを有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項8】
インク吐出ヘッドとして請求項2乃至5のいずれか一項記載の液滴吐出ヘッドを有するインクジェットプリンタであって、
印刷対象面は、前記第2側壁材と対向して配置されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項9】
第1基板の第1面上に振動板および圧電素子を形成する工程と、
前記第1基板の前記第1面と逆側の面である第2面側から前記振動板が露出するまで前記第1基板を選択的に除去することにより、キャビティおよびリザーバを形成し、前記第2面側および前記第2面と交差する第3面側に開口を有する第1側壁材を形成する工程と、
前記第1側壁材に、前記第2面側の開口を覆い、前記リザーバに吐出液を供給する供給孔を有する平板部材を接合する工程と、
を有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記第1側壁材に、前記第3面側の開口を覆い、前記キャビティから吐出液を吐出する吐出孔を有する第2側壁材を接合する工程、
を有することを特徴とする請求項9記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を有することを特徴とするインクジェットプリンタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−149021(P2009−149021A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330359(P2007−330359)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】