説明

液滴吐出ヘッドのクリーニング方法

【課題】液滴吐出ヘッドの耐久性を向上させた上で、ノズル内に形成された固化物を除去することができる液滴吐出ヘッドのクリーニング方法を提供する。
【解決手段】複数のノズルNが配列されたノズル面21aに当接可能なキャップ本体67を、複数のノズルNを覆った状態でノズル面21aに当接させるキャッピング工程と、ノズル面21aとキャップ本体67との間に形成される内側空間S内に連通する吸引ポンプ50によって、内側空間S内を負圧吸引するクリーニング工程とを有し、クリーニング工程では、内側空間S内を負圧吸引しつつ、液滴吐出ヘッド5内の機能液Lに対して間欠的に振動を印加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドのクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式で機能液の微小な液滴を吐出可能な液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置や有機EL装置等のカラーフィルターに代表される各種の電気光学装置(フラットパネルディスプレイ:FPD)を製造する液滴吐出装置が知られている。この液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドに設けられたノズルから記録媒体に向けて液滴が吐出される構成になっている。
【0003】
ところで、上述した液滴吐出装置では、液滴吐出ヘッドのノズル面が外気に晒された状態にあるため、機能液の溶媒や分散媒の蒸発により、ノズル内の開口縁近傍に機能液の固化物が形成される虞がある。この場合、固化物の付着によってノズル径が狭まりノズルから吐出される液滴の量が減少したり、ノズルの開口形状が歪むことで液滴の飛び散りや飛行曲がりが生じ、液滴が所望の位置に着弾しなかったりするという問題がある。
【0004】
そこで、上述の不具合を解決するために、例えば特許文献1に示されるように、圧電素子に電圧を印加し、振動板を振動させることで液滴吐出ヘッド内の機能液に振動を印加する第1工程と、液滴吐出ヘッドから吐出された機能液の液滴の着弾状態の検出を行う第2工程と、第2工程の検出結果に基づき再度機能液に振動を印加する第3工程とを有する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−230091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の構成にあっては、液滴吐出ヘッドに対して高周波の微振動を連続的に付与するため、液滴吐出ヘッドの耐久性が低下するという問題がある。具体的に、機能液に振動を付与する圧電素子は、各ノズルに対応して振動板上に配置されているが、上述した第1,3工程時に圧電素子を連続的に駆動させることで圧電素子が自己発熱し、この熱により圧電素子が振動板から剥がれてしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、液滴吐出ヘッドの耐久性を向上させた上で、ノズル内に形成された固化物を除去することができる液滴吐出ヘッドのクリーニング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出ヘッドのクリーニング方法は、複数のノズルから機能液の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドのクリーニング方法であって、前記複数のノズルが配列されたノズル面に当接可能なキャップ部材を、前記複数のノズルを覆った状態で前記ノズル面に当接させるキャッピング工程と、前記ノズル面と前記キャップ部材との間に形成される内側空間内に連通する吸引手段によって、前記内側空間内を負圧吸引するクリーニング工程とを有し、前記クリーニング工程では、前記内側空間内を負圧吸引しつつ、前記液滴吐出ヘッド内の前記機能液に対して間欠的に振動を印加することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、機能液に対して間欠的に振動を印加することで、振動の休止状態において駆動素子の振動により発熱した液滴吐出ヘッドの温度を低下させることができる。これにより、駆動素子の発熱により駆動素子が振動板から剥離すること等を防止することができるので、液滴吐出ヘッドの耐久性を向上させ、液滴吐出ヘッドの長寿命化を図ることができる。
【0010】
さらに、機能液を振動させることで、液滴吐出ヘッド内の機能液にキャビテーションが発生し、このキャビテーションで生じた気泡の衝撃力により、液滴吐出ヘッド内の固化物を破壊または剥離させることができる。そして、これら固化物をノズル内の機能液とともに吸引することで、ノズル内の開口縁近傍に形成された固化物を除去することができる。
特に、本発明によれば、上述したように機能液に間欠的に振動を印加するため、従来の振動の振幅と同等の振幅を確保するためには、電圧の立ち上がりや立ち下がりの傾きを比較的急峻にしなければならない。そのため、機能液に付与される振動を大きくすることができ、ノズル内に付着した固化物をより速やかに除去することができる。
したがって、クリーニングの作業効率を向上させるとともに、ノズルの吐出精度を高精度に維持することができ、信頼性の高い液滴吐出ヘッドを提供することができる。その結果、製品不良を発生させず、不良率を低下させることができるので、製品のコストダウンを図ることができる。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出ヘッドのクリーニング方法は、前記クリーニング工程では、前記機能液に対して第1所定時間振動を印加する振動状態と、前記第1所定時間の経過後、第2所定時間振動を休止する休止状態との振動サイクルを複数回実施し、前記休止状態における前記第2所定時間は、前記振動状態後における前記液滴吐出ヘッドの温度を、前記振動状態前の前記液滴吐出ヘッドの温度まで低下させるために要する時間に設定することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、各振動状態前後の液滴吐出ヘッドの温度を同等に保持することができるので、クリーニング工程において駆動素子の発熱による液滴吐出ヘッドの大幅な温度上昇を抑制することができる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出ヘッドのクリーニング方法は、前記ノズルから記録媒体に向けて前記液滴を吐出する描画工程に先立って、前記液滴吐出ヘッドの液滴の着弾位置と基準着弾位置との距離を検出する着弾位置検出工程を有し、前記着弾位置と前記基準着弾位置との距離が規定値以上と判断された場合に、前記クリーニング工程を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、記録媒体への描画を行う前に着弾検出工程を行うことで、描画工程においてノズルの吐出精度をより高精度に維持した状態で描画を行うことができるので、製品の不良率をより低下させ、信頼性の高い製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】クリーニング部の概略構成を示す図であり、(a)はクリーニング部の平面構成図、(b)はクリーニング部の斜視構成図、(c)はクリーニング部の要部の概略断面構成を示す図である。
【図3】検出部の概略構成図である。
【図4】液滴吐出ヘッドの概略構成図であり、(a)は液滴吐出ヘッドをワークステージ側から見た平面図、(b)は液滴吐出ヘッドの部分斜視図、(c)は液滴吐出ヘッドの1ノズル分の部分断面図である。
【図5】液滴吐出ヘッドの動作方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】着弾位置、基準位置及び距離についての説明図である
【図7】特別クリーニング工程を説明するための図であり、液滴吐出ヘッド及びクリーニング部の概略断面図である。
【図8】吸引・振動処理において、圧電素子の駆動波形の一例である。
【図9】吸引・振動処理時における振動サイクルに対する液滴吐出ヘッドの温度変化の関係を示したグラフである。
【図10】第2実施形態における液滴吐出ヘッドの動作方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】第3実施形態における検出部の概略構成図である。
【図12】検出部のその他の構成を示す概略構成図である。
【図13】検出部のその他の構成を示す概略構成図である。
【図14】吸引・振動処理において、圧電素子の駆動波形の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、部材毎に縮尺を適宜変更している。
【0017】
(第1実施形態)
(液滴吐出装置)
図1は、本実施形態に係る液滴吐出装置の概略構成図である。
この液滴吐出装置は、液滴吐出法により機能液Lの液滴L1(ともに図3(c)参照)を被処理基板に配置するものである。配置される機能液Lは、膜材料等の固形分を含有しており、乾燥させると固形分が残留するものである。すなわち、ここでいう機能液Lは、固形分を分散媒に分散させた分散液や、固形分を溶媒に溶解させた溶液等を含むものである。機能液Lの具体例としては、顔料や染料等を含んだカラーフィルター材料や、UVインク、金属配線等の導電膜パターンの形成材料である金属粒子を含んだコロイド溶液等が挙げられる。
【0018】
本実施形態では、前記のような機能液Lを膜材料に用いる液滴吐出装置として、カラーフィルター基板(記録媒体)の所定領域上に機能液L(カラーフィルター材料)の液滴L1を吐出してカラーフィルター層を形成する装置を説明する。なお、以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。図1におけるXYZ直交座標系は、X軸及びY軸がワークステージ2に対して平行となるよう設定され、Z軸がワークステージ2に対して直交する方向に設定されている。図1中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。
【0019】
図1に示すように、液滴吐出装置IJは、装置架台1、ワークステージ2、ステージ移動装置3、キャリッジ4、液滴吐出ヘッド5、キャリッジ移動装置6、チューブ7、第1タンク8、第2タンク9、第3タンク10、制御装置11、クリーニング部15、及び検出部16を備えている。
【0020】
装置架台1は、ワークステージ2及びステージ移動装置3の支持台である。ワークステージ2は、装置架台1上においてステージ移動装置3によってX軸方向に移動可能に設置されており、上流側の搬送装置(図示せず)から搬送されるカラーフィルター基板P(以下、基板Pという)を、真空吸着機構によりXY平面上に保持する。ステージ移動装置3は、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備え、制御装置11から入力される、ワークステージ2のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ2をX軸方向に移動させる。
【0021】
キャリッジ4は、液滴吐出ヘッド5を搭載するものであり、キャリッジ移動装置6によってY軸方向及びZ軸方向に移動可能に設けられている。液滴吐出ヘッド5は、後述する複数のノズルN(図3参照)を備えており、制御装置11から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、機能液Lの液滴L1を吐出する。この液滴吐出ヘッド5は、機能液LのR(赤)、G(緑)、B(青)に対応して設けられており、それぞれの液滴吐出ヘッド5はキャリッジ4を介してチューブ7と連結されている。そして、R(赤)に対応する液滴吐出ヘッド5はチューブ7を介して第1タンク8からR(赤)用の機能液Lの供給を受け、G(緑)に対応する液滴吐出ヘッド5はチューブ7を介して第2タンク9からG(緑)用の機能液Lの供給を受け、また、B(青)に対応する液滴吐出ヘッド5はチューブ7を介して第3タンク10からB(青)用の機能液Lの供給を受けるようになっている。
【0022】
キャリッジ移動装置6は、例えば装置架台1を跨ぐ橋梁構造をしており、Y軸方向及びZ軸方向に対してボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備え、制御装置11から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいて、キャリッジ4をY軸方向及びZ軸方向に移動させる。
【0023】
チューブ7は、第1タンク8、第2タンク9及び第3タンク10とキャリッジ4(液滴吐出ヘッド5)とを連結する機能液Lの供給用チューブである。第1タンク8は、R(赤)用の機能液Lを貯蔵するとともに、チューブ7を介してR(赤)に対応する液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給する。第2タンク9は、G(緑)用の機能液Lを貯蔵するとともに、チューブ7を介してG(緑)に対応する液滴吐出ヘッド5に機能液Lを供給する。第3タンク10は、B(青)用の機能液Lを貯蔵するとともに、チューブ7を介してB(青)に対応する液滴吐出ヘッド5に機能液Lを供給する。
【0024】
制御装置11は、ステージ移動装置3にステージ位置制御信号を出力し、キャリッジ移動装置6にキャリッジ位置制御信号を出力するとともに、液滴吐出ヘッド5の駆動回路基板(不図示)に描画データ及び駆動制御信号を出力して、液滴吐出ヘッド5による液滴吐出動作、ワークステージ2の移動による基板Pの位置決め動作、キャリッジ4の移動による液滴吐出ヘッド5の位置決め動作の同期制御を行うことにより、基板P上の所定の位置に機能液Lの液滴L1(図3(c)参照)を吐出する。
【0025】
クリーニング部15は、キャリッジ4に搭載された液滴吐出ヘッド5に対する種々のクリーニングを行うためのものである。クリーニング部15は、液滴吐出ヘッド5におけるホームポジションに配設されている。このホームポジションは、非吐出動作時又は保管時等、液滴吐出装置IJが吐出動作休止状態にあるときにキャリッジ4が配置される領域である。これに対して、液滴吐出ヘッド5から基板P上に液滴を吐出する際のキャリッジ4の位置を吐出ポジションと呼ぶ。すなわち、吐出ポジションにおいて、キャリッジ4はワークステージ2の上方に位置する。
【0026】
(クリーニング部)
ここで、クリーニング部15について具体的に説明する。図2はクリーニング部15の概略構成を示す図である。具体的に、図2(a)はクリーニング部15の平面構成図、図2(b)はクリーニング部15の斜視構成図、図2(c)はクリーニング部15の要部の概略断面構成を示す図である。なお、クリーニング部15は、制御装置11からの制御信号により駆動されるようになっている。
【0027】
図2(a),(b)に示すように、クリーニング部15は、キャップ本体67と、キャップ本体67の上面に枠状に設けられ、ノズルプレート21(図3参照)の表面(ノズル面21a)に当接されるシール部材62と、液滴吐出ヘッド5のノズルプレート21のノズル面21aを払拭するワイピング工程時に用いられるワイプ部材63と、これらキャップ本体67及びワイプ部材63を一体的に保持する筐体部64と、を備えている。ワイプ部材63は例えばエラストマー等の弾性部材から構成されるものである。また、キャップ本体67は後述する各種クリーニングにおいて、液滴吐出ヘッド5から吐出される機能液Lの廃液を受ける受け部材として機能する。
なお,ワイプ部材63は、エラストマー等の弾性部材に限らず、ポリエステル等、布状の材料を押し付ける等して使用してもよい。この場合は、特許第4058969号にあるような機構にて、布をロール状にして、機能液Lを拭き取りつつ、順次、新しい布の面がノズル面21aに当接するようすることが好ましい。
【0028】
図2(c)に示すように、キャップ本体67の内側には、液滴吐出ヘッド5のノズルNから排出された機能液Lを吸収する機能液吸収体65が、キャップ本体67の底部に沿って配置されている。機能液吸収体65はスポンジ等の多孔質部材から構成されている。なお、機能液吸収体65は単一のスポンジから構成してもよく、複数のスポンジを組み合わせることで形成してもよい。
【0029】
キャップ本体67の底部の中央部には、底部を厚さ方向に貫通するように吸引口40が設けられている。吸引口40には、チューブ42の一端が接続されており、チューブ42の他端には廃液タンク61が接続されている。チューブ42の途中にはチューブ42内に負圧を発生させる吸引ポンプ(吸引手段)50が設けられている。廃液タンク61は、チューブ42及び吸引ポンプ50を介してキャップ本体67に連通し、液滴吐出ヘッド5から排出された廃液を回収するためのものである。
【0030】
そして、キャップ本体67は、図示しない駆動手段によってZ軸方向に沿って上下動可能とされており、液滴吐出ヘッド5がホームポジション側に配されている場合に、シール部材62を介してノズル面21aに当接し、ノズルプレート21をキャッピングするようになっている。このキャッピング状態において、キャップ本体67の内側とノズルプレート21との間には、キャップ本体67によってノズル面21aが封止された内側空間S(図4参照)が形成される。そして、この状態で機能液Lの初期充填や後述する特別クリーニング工程及びフラッシング工程が、液滴吐出ヘッド5に対して行われるようになっている。なお、本実施形態のクリーニング部15は、ワイプ部材63も図示しない駆動手段によってZ方向に沿って上下動可能とされており、液滴吐出ヘッド5がホームポジション側に配されている場合に、ノズル面21aにワイプ部材63の先端が接触するようになっている。
【0031】
(検出部)
図3は、検出部16の概略構成図である。
図3に示すように、検出部16は、カメラユニット46と、フィルム送り機構70とを備えている。
カメラユニット46は、撮像部47と、照明部48と、半透過ミラー49と、光ファイバケーブル51と、鏡筒52とを備え、上述した制御装置11に接続された構成となっている。
【0032】
撮像部47は、CCDやCMOSセンサ等からなるカメラである。照明部48は、ハロゲンランプ、タングステンランプ、LEDランプ等からなるものである。半透過ミラー49は、照明部48の照明を鏡筒52の出射口52a側に反射させるとともに、撮像対象の像を透過させて撮像部47に受像させるものである。光ファイバケーブル51は、鏡筒52に入射する撮像対象の像を撮像部47に伝達するものである。鏡筒52は、不図示のレンズを備えた構成となっている。照明部48の照明量や、レンズ(図示せず)の光学倍率は、制御装置11の働きにより、撮像対象に合わせて制御されるようになっている。
【0033】
カメラユニット46は、液滴吐出ヘッド5から後述するフィルム送り機構70のフィルム71に向けて吐出された液滴L1の着弾痕D(図6参照)を撮像対象としている。そして、撮像はフィルム71の液滴吐出を受けた面を表面とすると、裏面側から行われる。なお、フィルム71は透明である。
【0034】
撮像部47は、制御装置11の働きにより、撮像対象をモノクロ画像もしくはカラー画像として受像したり、撮像対象を所定の倍率で撮像することが可能となっており、撮像対象の詳細部分を拡大撮像したり、撮像対象の全体を見るように縮小撮像したりすることができる。例えば、複数の着弾痕Dのうち、倍率を調整することにより、10個〜20個程度の着弾痕Dを見たり、1個〜5個の着弾痕Dを見たりすることができる。また、撮像部47が撮像した画像データは、制御装置11に送られる。
【0035】
フィルム送り機構70は、フィルム送りローラ72a,72bと、ローラ駆動モータ74と、を備え、カメラユニット46の真上に配置されている。
フィルム送りローラ72a,72bは、円柱形であって水平方向に平行に設置されたものであり、フィルム71が円周方向に重ねて巻きつけられる。そして、フィルム送りローラ72aには、未だ液滴L1の吐出を受けていないフィルム71が巻きつけられており、フィルム送りローラ72bには、液滴L1の吐出を受けたフィルム71が巻きつけられる構成となっている。
【0036】
フィルム送りローラ72a,72bは、撮像終了後のフィルム巻き取り時以外には静止しており、フィルム71をたわみのない状態で張り渡している。そして、フィルム送りローラ72a,72bは、ローラ駆動モータ74によって回動が可能であって、その回動によって、液滴L1の吐出を受けたフィルム71がフィルム送りローラ72bに巻き取られる構成となっている。
【0037】
また、ローラ駆動モータ74は制御装置11によって、その駆動が制御されている。
吐出を受けたフィルム71は、撮像後に、フィルム送りローラ72bによって、直ちに巻き取られるように制御されている。そのため、検出処理時に吐出された液滴L1は、常に未使用のフィルム71が受けることになる。
【0038】
フィルム76は、上述したように透明であって、液滴吐出ヘッド5が備える全てのノズルNの液滴L1を受けられる面積を有した状態で、フィルム送りローラ72a,72bによってたわみのない状態で張り渡されており、カメラユニット46と近接する。
【0039】
(液滴吐出ヘッド)
図4は液滴吐出ヘッド5の概略構成図である。図4(a)は液滴吐出ヘッド5をワークステージ2側から見た平面図、図4(b)は液滴吐出ヘッド5の部分斜視図、図4(c)は液滴吐出ヘッド5の1ノズル分の部分断面図である。
【0040】
図4(a)に示すように、液滴吐出ヘッド5は、Y軸方向に配列された複数(例えば180個)のノズルNを備えている。そして、複数のノズルNによってノズル列NAが形成されている。図4(a)では1列分のノズルを示したが、液滴吐出ヘッド5に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能であり、Y軸方向に配列した1列分ノズルをX軸方向に複数列設けても良い。また、キャリッジ4内に配置する液滴吐出ヘッド5の数も任意に変更可能である。さらに、キャリッジ4をサブキャリッジ単位で複数設ける構成としても良い。
【0041】
図4(b)に示すように、液滴吐出ヘッド5は、チューブ7と連結される材料供給孔20aが設けられた振動板20と、ノズルNが設けられたノズルプレート21と、振動板20とノズルプレート21との間に設けられたリザーバ22と、複数の隔壁23と、複数のキャビティ24とを備えている。ノズルプレート21は、例えばSUSから構成されるものであり、吐出ポジションにおいて、ノズル面21aと基板Pとが対向するようになっている。振動板20上には、各ノズルNに対応して圧電素子(駆動素子)PZが配置されている。圧電素子PZは、例えばピエゾ素子である。
【0042】
リザーバ22には、材料供給孔20aを介して供給される液状の機能液Lが充填されるようになっている。キャビティ24は、振動板20と、ノズルプレート21と、1対の隔壁23とによって囲まれるようにして形成されおり、各ノズルNに1対1に対応して設けられている。また、各キャビティ24には、一対の隔壁23の間に設けられた供給口24aを介して、リザーバ22から機能液Lが導入されるようになっている。
【0043】
図4(c)に示すように、圧電素子PZは、圧電材料25を一対の電極26で挟持したものであり、一対の電極26に駆動信号を印加すると圧電材料25が収縮するよう構成されたものである。そして、このような圧電素子PZが配置されている振動板20は、圧電素子PZと一体になって同時に外側(キャビティ24の反対側)へ撓曲するようになっており、これによってキャビティ24の容積が増大するようになっている。したがって、キャビティ24内に増大した容積分に相当する機能液Lが、リザーバ22から供給口24aを介して流入する。また、このような状態から圧電素子PZへの駆動信号の印加を停止すると、圧電素子PZと振動板20はともに元の形状に戻り、キャビティ24も元の容積に戻ることから、キャビティ24内の機能液Lの圧力が上昇し、ノズルNから基板Pに向けて機能液Lの液滴L1が吐出される。
【0044】
(液滴吐出ヘッドの動作方法)
続いて、上述した液滴吐出装置IJ(液滴吐出ヘッド5)の動作方法について説明する。
図5は、本発明に係る液滴吐出ヘッド5の動作方法を説明するためのフローチャートである。
まず、図3,図5に示すように、ステップS1において、液滴吐出ヘッド5の着弾位置の検出工程を行う。具体的には、キャリッジ4を駆動させて液滴吐出ヘッド5をホームポジションのカメラユニット46の上方に配置する。そして、図示しない昇降機構により検出部16を上昇させ、フィルム71とノズル面21aとの間の距離を約0.5mmまで接近させる。
その後、液滴吐出ヘッド5から液滴L1を吐出し、カメラユニット46により、着弾痕D(図6参照)を撮像する。そして、撮像した画像データは制御装置11に送信され、制御装置11が画像処理を行うことにより、液滴L1の着弾痕Dの重心(着弾位置)が検出される。
【0045】
そして、制御装置11は、着弾位置と基準位置との距離Qを求め、距離Qと設定した閾値(規定値)とを比較することで特別クリーニング工程(S6)を行うか否かを判断する(ステップS2)。
【0046】
ここで、上述した着弾位置、基準位置及び距離Qについて図6を用いて説明する。
まず、図6に示すように、各ノズルNの基準位置Z1,Z2・ZN・ZPを予め設定しておく。本実施形態において、基準位置Z1,Z2・ZN・ZPは、機能液Lの初期充填後に吐出された液滴L1の着弾位置の重心位置である。つまり、上述した基準位置Z1,Z2・ZN・ZPを設定するためには、液滴吐出ヘッド5に機能液L1を初期充填した後に、フィルム71に液滴L1を吐出する。そして、フィルム71上に形成された着弾痕D01,D02・D0N・D0Pの重心の位置データを検出することにより、基準位置Z1,Z2・ZN・ZPを設定することができる。そして、この検出した基準位置Z1,Z2・ZN・ZPのデータを、制御装置11内のメモリに保存しておく。このように、本実施形態の着弾位置検出では、ノズルNの開口縁近傍に固化物が全く発生していないときの着弾痕Dの重心を基準位置Z1,Z2・ZN・ZPとしているため、後述する特別クリーニング工程(ステップS6)により、液滴吐出ヘッド5の吐出精度を液滴L1充填後(初期状態)にまで高めることができる。
【0047】
そして、基準位置Z1,Z2・ZN・ZPを設定した後、各ノズルNからフィルム71に向けて液滴L1を吐出する。吐出された液滴L1がフィルム71に着弾すると、フィルム71上に着弾痕D11,D12・D1N・D1Pが形成される。この各ノズルNの着弾痕D11,D12・D1N・D1Pは、カメラユニット46によって撮像され、その画像データが制御装置11に送信される。ここで、着弾痕D11,D12・D1N・D1Pの重心G11,G12・G1N・G1Pが、各ノズルNの着弾位置となる。なお、重心G11,G12・G1N・G1Pは、着弾痕D11,D12・D1N・D1Pに基づいて制御装置11によって検出される。
そして、制御装置11は、上述した各ノズルNの基準位置Z1,Z2・ZN・ZPと重心G11,G12・G1N・G1Pとの距離Q1,Q2・QN・QPを算出する。
【0048】
図5に戻り、ステップS2において、着弾位置と基準位置との距離Qが規定値以下であった場合(ステップS2における判断結果が「NO」の場合)には、液滴L1の吐出精度が良好であると判断し、ステップS3に進み描画(吐出)工程を行う。
描画(吐出)工程では、外部装置から制御装置11に向けて印刷データが送信されると、制御装置11は、ドットパターンに対応した吐出データに展開して液滴吐出ヘッド5に送信する。そして、液滴吐出ヘッド5では、受信した吐出データに基づいて、基板Pに対する液滴L1の吐出を実行する(ステップS3)。
【0049】
次いで、ステップS4において、記録処理中に、予め設定されている規定時間(特別クリーニング時間間隔:例えば、8時間)が経過したか否かを判断する。
ステップS4における判断結果が「NO」の場合、すなわち規定時間経過していない場合、液滴L1の吐出精度が良好に維持されていると判断して描画を継続する。
その後、ステップS5において、描画終了の判断を行い、ステップS5における判断結果が「NO」の場合には、描画を継続する。一方、ステップS5における判断結果が「YES」の場合には、描画が終了したと判断し、液滴吐出ヘッド5を停止させ、フローが終了する。
【0050】
(特別クリーニング工程)
ここで、上述したステップS2にける判断結果が「YES」の場合(着弾位置と基準位置の距離Qが規定値以上であった場合)、またはステップS4における判断結果が「YES」の場合(特別クリーニング時間間隔を超えた場合)には、ステップS6に進み特別クリーニング工程を行う。
【0051】
図7は特別クリーニング工程を説明するための図であり、液滴吐出ヘッド及びクリーニング部の概略断面図である。
図5,図7(a)に示すように、特別クリーニング工程(ステップS6)は、ノズルN内に形成された固化物を除去して、液滴L1の吐出精度を回復させるためのものである。特別クリーニング工程(ステップS6)では、まずキャップ本体67をノズル面21aに当接させるキャッピング工程を行う(ステップS6A)。具体的には、基板P(ワークステージ2)上、すなわち吐出ポジションに位置するキャリッジ4をクリーニング部15側(同図、−Y方向)、すなわちホームポジションまで移動させる。そして、クリーニング部15の駆動手段を駆動し、液滴吐出ヘッド5に向けて(Z軸方向上方)キャップ本体67を上昇させる。これにより、キャップ本体67がシール部材62を介して液滴吐出ヘッド5のノズル面21aに密着し、ノズルプレート21のノズル列NAがキャップ本体67に覆われたキャッピング状態となる。このキャッピング状態において、キャップ本体67とノズルプレート21との間には、ノズル列NAが封止された内側空間Sが形成される。
【0052】
ここで、図7(b)に示すように、キャップ本体67のキャッピング状態において、ノズルN内の機能液Lを吸引するとともに、ノズルN内の機能液Lを振動させる吸引・振動処理(クリーニング工程:ステップS6B)を行う。
具体的には、まず吸引ポンプ50を駆動させると、内側空間S内の空気が、吸引口40からチューブ42を介して吸引ポンプ50により吸引される。これにより、内側空間S内が減圧され、所定時間経過後には内側空間Sが所定の負圧の負圧室となる。
同時に、制御装置11から液滴吐出ヘッド5の圧電素子PZに駆動信号を供給して、圧電素子PZを振動させることで、ノズルN内の機能液Lに高周波の微振動を間欠的に印加する。すなわち、本実施形態の振動処理は、機能液Lに対して時間(第1所定時間)TA(例えば、1sec)振動を印加する振動状態と、時間TAの経過後、時間TB(第2所定時間)(例えば、2sec)振動を休止する休止状態とからなる振動サイクルを複数回(例えば、20回)実施するようになっている。
【0053】
図8は、振動処理における圧電素子PZの駆動波形を示す図である。
図8に示すように、振動状態の圧電素子PZの基本波形W1は、電圧値が基準電位Vlから最高電圧Vh(例えば、15V)まで一定の傾きで上昇する電圧上昇部W1aと、最高定電圧部W1bと、最高定電圧部W1bから基準電位Vlまで一定の傾きで下降する電圧下降部W1cと、最低定電圧部W1dとにより形成されている。また、電圧上昇部W1a、最高定電圧部W1b、電圧下降部W1c及び最低定電圧部W1dの時間T1a〜T1dは、それぞれ2μsecに設定されている。すなわち、基本波形W1は、周波数10kHzで振幅が15Vの台形波である。なお、振幅が大きすぎると(例えば、20V程度)、液滴吐出ヘッド5にかかる負荷が増加して液滴吐出ヘッド5の耐久性が低下するため好ましくない。
【0054】
本実施形態では、このような基本波形W1の台形波を時間TA印加し続ける。すると、液滴吐出ヘッド5内の機能液Lにキャビテーションが発生し、このキャビテーションで生じた気泡の衝撃力により、液滴吐出ヘッド5内の固化物が破壊または剥離する。この場合、図7(b)に示すように、内側空間S内に印加された負圧P1が、ノズルNからキャビティ24まで印加されているため、上述した固化物はノズルN内の機能液Lとともに、ノズルNから内側空間Sへと排出される。そして、内側空間Sに排出された機能液Lは、機能液吸収体65に吸収された後、吸引ポンプ50によって負圧状態となったチューブ42内に引き込まれる。そして、チューブ42内に引き込まれた機能液Lは、チューブ42の他端側に接続されている廃液タンク61で回収される。なお、液滴吐出ヘッド5に対する微振動付与に際して、ノズルNから機能液Lが飛び散ることがあるが、液滴吐出ヘッド5がキャッピング状態にあるので、ノズルNから飛び散った機能液Lはキャップ本体67に速やかに受け止められ、周囲に飛散することを防止できる。
【0055】
図9は、吸引・振動処理時における振動サイクルに対する液滴吐出ヘッドの温度変化の関係を示したグラフである。
ところで、図9に示すように、圧電素子PZを時間TAだけ振動させると、液滴吐出ヘッド5の温度がt1からt2まで上昇する。この際、従来のように液滴吐出ヘッド5に対して高周波の微振動を連続的に付与し続けると、圧電素子PZが発熱し続け、圧電素子PZが振動板20から剥がれてしまう虞がある。
【0056】
そこで、図9に示すように、本実施形態では、時間TAの経過後、圧電素子PZへの駆動信号の供給を停止して、圧電素子PZの振動を時間TBだけ休止させる。休止状態は、上述した振動状態で圧電素子PZの振動によって発熱した液滴吐出ヘッド5を冷却するために設けるためのものである。そのため、休止状態の時間TBは、液滴吐出ヘッド5の温度が振動前(前回の休止状態)の液滴吐出ヘッド5の温度と同等の温度に低下するために要する最短時間に設定することが好ましく、本実施形態ではTB=2secに設定されている。これにより、時間TB経過後(休止状態経過後)には、液滴吐出ヘッド5の温度をt2からt1まで冷却することができる。このような振動サイクルを繰り返すことで、各振動状態前後の液滴吐出ヘッド5の温度を常に一定に保持することができるので、特別クリーニング工程において液滴吐出ヘッド5の大幅な温度上昇を抑制することができる。
【0057】
そして、このような振動状態と休止状態との振動サイクルを20サイクル(60sec)行うことで、液滴吐出ヘッド5の耐久性を向上させた上で、ノズルN内(ノズルNの開口縁近傍)に形成された固化物を除去することができる。なお、吸引・振動処理における振動サイクルのサイクル数や振動状態の基本波形、振動の印加時間及び休止時間等は、予め制御装置11のメモリに保存しておく。
【0058】
そして、図7(c)に示すように、ステップS3の終了後、駆動手段を駆動させ、キャップ本体67を下降させる。これにより、キャップ本体67をノズル面21aから離間させる。
【0059】
吸引・振動処理(ステップS6B)の終了後、ノズル面21a上には、吸引処理で吸引しきれなかった機能液Lが付着して残存していることがある。そこで、ノズル面21a上に残存した機能液Lを除去するためのワイピング工程(ステップS6C)を行う。具体的には、まずワイプ部材63を不図示の駆動機構により上昇させることで、ノズルプレート21とワイプ部材63とが接触する位置までワイプ部材63を移動させる。その後、液滴吐出ヘッド5をホームポジションから吐出ポジションへ移動させると(図7(c)中矢印参照)、液滴吐出ヘッド5がワイプ部材63の上方を通過する際に、ワイプ部材63の先端によりノズル面21aが払拭される。これにより、吸引処理後にノズル面21aに残存する機能液Lを除去することができる。なお、ワイプ部材63により払拭された機能液Lは、キャップ本体67に受け止められるようになっている。
【0060】
そして、特別クリーニング工程(ステップS6)の終了後、液滴吐出ヘッド5の吐出機能を維持するために、増粘した液滴L1を捨て吐出(予備吐出)するフラッシング工程(ステップS7)を行う。
フラッシング工程(ステップS7)では、まず上述した特別クリーニング工程(ステップS6)と同様に、ノズル面21aにシール部材62を介してキャップ本体67を密着させたキャッピング状態とする。
続いて、キャップ本体67のキャッピング状態において、まず吸引ポンプ50を駆動させ、内側空間S内を減圧する。
【0061】
そして、この状態で圧電素子PZに駆動信号を供給してノズルNから機能液Lの液滴L1を吐出させる。これにより、ノズルN内の気泡や増粘した機能液Lが除去される。なお、内側空間S内に吐出された液滴L1は、機能液吸収体65に吸収された後、吸引ポンプ50によって負圧状態となったチューブ42内に引き込まれる。そして、チューブ42内に引き込まれた機能液Lは、チューブ42の他端側に接続されている廃液タンク61で回収される。その後、駆動手段を駆動させ、キャップ本体67を下降させることで、キャップ本体67をノズル面21aから離間させる。
【0062】
次に、上述した特別クリーニング工程(ステップS6)と同様に、ノズル面21a上に付着した機能液Lを除去するワイピング工程を行う。
その後、ステップS3に戻り、描画処理を行うようになっている。
【0063】
このように、本実施形態では、特別クリーニング工程(ステップS6)において、内側空間S内を負圧吸引しつつ、液滴吐出ヘッド5内の機能液Lに対して間欠的に振動を印加する吸引・振動処理(ステップS6B)を行う構成とした。
この構成によれば、吸引・振動処理(ステップS6B)において、各振動状態との間に振動の休止状態を設けることで、圧電素子PZの振動により発熱した液滴吐出ヘッド5の温度を低下させることができる。これにより、圧電素子PZの発熱により圧電素子PZが振動板20から剥離することを防止することができるので、液滴吐出ヘッド5の耐久性を向上させ、長寿命化を図ることができる。
【0064】
さらに、吸引・振動処理(ステップS6B)において、機能液Lを振動させることで、液滴吐出ヘッド5内の機能液Lにキャビテーションが発生し、このキャビテーションで生じた気泡の衝撃力により、液滴吐出ヘッド5内の固化物を破壊または剥離させることができる。そして、これら固化物をノズルN内の機能液Lとともに吸引することで、ノズルN内の開口縁近傍に形成された固化物を除去することができる。
特に、本実施形態では、上述したように各振動状態の間に休止状態を設けているため、従来の微振動の振幅と同等の振幅を確保するためには、電圧上昇部W1a、電圧下降部W1cの傾きを比較的急峻にしなければならない。そのため、機能液L1に付与される振動を大きくすることができ、ノズルN内に付着した固化物をより速やかに除去することができる。
したがって、クリーニングの作業効率を向上させるとともに、ノズルNの吐出精度を高精度に維持することができ、信頼性の高い液滴吐出ヘッドを提供することができる。その結果、製品不良を発生させず、不良率を低下させることができるので、製品のコストダウンを図ることができる。なお、上述した特別クリーニング工程(ステップS6)を行うことで、ノズルN全体の平均曲がり量(着弾位置と基準位置との距離Q)を、特別クリーニング工程(ステップS6)前の3〜4μmから0.7〜1μmまで向上させることができた。
【0065】
また、本実施形態の特別クリーニング工程(ステップS6)は、特別クリーニング時間間隔経過後に加えて、描画処理(ステップS3)に先立って着弾位置検出を行い、着弾位置と基準位置との距離Qが規定値以上の場合に行う構成とした。
この構成によれば、基板Pへの描画を行う前に着弾検出を行うことで、描画工程においてノズルNの吐出精度をより高精度に維持した状態で描画を行うことができるので、製品の不良率をより低下させ、信頼性の高い製品を製造することができる。さらに、液滴吐出ヘッド5のメンテナンス性を向上させることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、液滴吐出装置IJの動作時において、上述した特別クリーニングに加えて規定時間毎に通常クリーニングを行う点で上述した第1実施形態と相違している。なお、本実施形態の液滴吐出装置IJの構成は、第1実施形態の液滴吐出装置IJの構成と同一であるため、液滴吐出装置IJの構成の説明は省略する。
図10は、第2実施形態の液滴吐出ヘッド5の動作方法を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様のフローには、同一の符号を付し、説明を省略する。
まず、図3,図10に示すように、ステップS1において、上述した第1実施形態と同様に液滴吐出ヘッド5の着弾位置の検出工程を行う。具体的には、液滴吐出ヘッド5からフィルム71に向けて液滴L1を吐出し(ステップS1A:着弾測定用描画)、カメラユニット46により、着弾痕D(図6参照)を撮像する(ステップS1B:カメラユニット46にて撮像)。そして、制御装置11は、着弾位置と基準位置との距離Qを求める(ステップS1C:ズレ量の計算)。
【0067】
次に、図10に示すように、ステップS2において、着弾位置と基準位置との距離Qが規定値以下であるか否かを判断する。
ステップS2における判断結果が「YES」の場合(着弾位置と基準位置との距離Qが規定値以下であった場合)には、液滴L1の吐出精度が良好であると判断し、ステップS3に進み描画(吐出)工程を行う。
そして、ステップS4において、記録処理中に、予め設定されている規定時間(例えば、8時間)が経過したか否かを判断する。
ステップS4における判断結果が「NO」の場合、すなわち規定時間経過していない場合、液滴L1の吐出精度が良好に維持されていると判断して、上述したステップS3に戻り描画を続ける。
【0068】
次に、ステップS4における判断結果が「YES」の場合(規定時間経過した場合)には、ステップS16に進み通常クリーニング工程を行う。
通常クリーニング工程(ステップS16)は、上述した特別クリーニング工程(ステップS6)に比べて簡易的なクリーニングであり、ノズルN内の増粘した機能液L等を除去して、液滴L1の吐出精度を回復させるためのものである。具体的に、通常クリーニング工程では、上述した特別クリーニング工程と同様に、まずキャップ本体67をノズル面21aに当接させるキャッピング工程を行う(ステップS6A)。その後、キャップ本体67のキャッピング状態において、ノズルN内の機能液Lを吸引する吸引処理(ステップS6D)を行った後、ノズル面21a上に残存した機能液Lを除去するためのワイピング工程(ステップS6C)を行う。すなわち、上述した特別クリーニング工程(ステップS6)では、ノズルN内の機能液Lに対して吸引・振動処理を行うのに対して、通常クリーニング工程(ステップS16)では、ノズルN内の機能液Lに対して吸引処理のみを行う。
【0069】
そして、通常クリーニング工程(ステップS16)の終了後、液滴吐出ヘッド5の吐出機能を維持するために、ノズルNの開口縁近傍に存在する増粘した液滴L1を捨て吐出(予備吐出)するフラッシング工程(ステップS17)を行う。
【0070】
その後、ステップS15において、次の描画対象である基板Pがあるか否かの判断を行い、ステップS5における判断結果が「YES」の場合には、ステップS1に戻り、上述したフローを繰り返す。これにより、ワークステージ2によって順次搬送される基板Pに対して連続的に描画を行うことが可能となる。これに対して、ステップS5における判断結果が「NO」の場合には、次に搬送される基板Pはないと判断し、液滴吐出ヘッド5を停止させ、フローが終了する。
【0071】
一方、ステップS2における判断結果が「NO」の場合には、着弾位置と基準位置の距離Qが規定値以上であると判断して、ステップS20に進む。
そして、ステップS20において、前回の特別クリーニング工程(ステップS6)から規定時間経過したか否かを判断する。ステップS20における判断結果が「YES」の場合には、特別クリーニング工程の直後であるにも関わらず、何らかの理由により吐出精度が回復していないと判断してステップS21に進む。
ステップS21において、制御装置11は、液滴吐出ヘッド5の吐出精度が回復していない旨をユーザに向けて通知し、液滴吐出装置IJの動作を停止する。
【0072】
これに対して、ステップS20における判断結果が「NO」の場合には、ステップS22に進む。ステップS22では、上述したステップS1における着弾位置検出をさらに所定回数(例えば、5回)繰り返して行い、これら検出結果のうち着弾位置と基準位置の距離Qが規定値以上であった場合が検出回数以下であるか否かを判断する。
ステップS22における判断結果が「YES」の場合には、特別クリーニング工程の必要はないと判断し、上述したステップS1に戻り、通常の描画工程を行う。
ステップS22における判断結果が「NO」の場合、すなわち着弾位置の各検出結果のうち、何れの検出結果も距離Qが規定値以上の場合には、特別クリーニング工程の必要があると判断し、ステップS6に進む。
【0073】
そして、ステップS6では、上述した第1実施形態と同様の特別クリーニング工程(ステップS6)を行った後、ステップS7においてフラッシング工程(ステップS7)を行う。
その後、ステップS1に戻り、通常の描画工程を行う。
【0074】
このように、本実施形態では、第1実施形態の特別クリーニング工程に加え、通常のクリーニング工程を行う構成とした。
この構成によれば、着弾位置の検出結果が連続して規定値以上であった場合に、特別クリーニング工程が必要であると判断することで、それ以外の場合には通常クリーニング工程によって吐出精度を回復させることになる。そのため、各クリーニング工程の度に圧電素子PZを振動させることがないので、液滴吐出ヘッド5に対して短時間で効率的なクリーニングを行うことが可能になり、作業効率を向上させることができる。また、各クリーニング工程を行う度に圧電素子PZを振動させることがないので、圧電素子PZにかかる負荷を低減し、液滴吐出ヘッド5の耐久性を向上させ、長寿命化を図ることができる。
【0075】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、検出部の構成が上述した第1実施形態と相違している。図11は、検出部116(液滴吐出ヘッド5及びカメラユニット46)の概略構成図である。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。
図11に示すように、検出部116のカメラユニット46は、固定アーム100を介して液滴吐出ヘッド5と同じ側(フィルム71の表面側)に設置されている。具体的に、カメラユニット46は、フィルム71の搬送方向において、液滴吐出ヘッド5よりも下流側であって、フィルムローラ72b近傍のフィルム71の上方に配置されている。この場合、フィルムローラ72bにより巻き取られるフィルム71に対して、フィルム71における液滴L1の吐出を受けた面側(表面側)から撮像することで、液滴L1の着弾位置の検出が行われるようになっている。すなわち、フィルム71は、第1実施形態のような透明フィルムでなく、市販されている印画用フィルムを用いる。
【0076】
なお、検出部は、上述した第3実施形態の他に以下に示すような構成を採用することも可能である。
図12に示すように、キャリッジ移動装置6の移動軸にカメラユニット46を液滴吐出ヘッド5とともに取り付け、液滴吐出ヘッド5による液滴L1吐出が終わった後、フィルム71の上方(着弾が行われた箇所)までカメラユニット46を移動させ(図12中矢印K1参照)、着弾位置を撮像してもよい。さらには、図13に示すように、カメラユニット46をフィルム71の上方から離れた位置に配置し、着弾位置の検出工程においてカメラユニット46の代わりに、フィルム送り機構70全体をカメラユニット46の設置場所まで移動させる構成にしても構わない(図13中矢印K2参照)。このように、検出部の構成は液滴吐出装置IJにあわせたさまざまな方式が考えられる。
【0077】
なお、上述した特別クリーニング工程(ステップS6)によってもノズルN内の固化物が除去できない場合には、例えば図14に示すような基本波形W2にするとともに、振動サイクルを増加してもよい。
具体的に、図14に示すように、基本波形W2は、電圧値が基準電位Vlから最高電圧Vh(例えば、16V)まで一定の傾きで上昇する電圧上昇部W2aと、最高定電圧部W2bと、最高定電圧部W2bから基準電位Vlまで一定の傾きで下降する電圧下降部W2cと、最低定電圧部W2dとにより形成されている。また、電圧上昇部W2a及び電圧下降部W2cの時間T2a,T2cはそれぞれ3μsecに設定される一方、最高定電圧部W2b及び最低定電圧部W2dの時間T2b,T2dは、それぞれ0.5μsecに設定されている。すなわち、基本波形W2は、周波数10kHzで振幅が16Vの台形波である。
そして、このような基本波形W2からなる振動サイクルを上述した実施形態より多く(例えば、80回)行うことで、ノズルN内の固化物をより除去しやすくなる。但し、液滴吐出ヘッド5の耐久性を維持するためには、上述した実施形態に比べて特別クリーニング間隔を長く確保することが好ましい(例えば、3日毎)。
【0078】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。
吸引・振動処理における振動サイクルのサイクル数や振動状態の基本波形、振動の印加時間及び休止時間等は、機能液Lの種類(乾燥特性)に応じて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
5…液滴吐出ヘッド 21…ノズル面 50・吸引ポンプ(吸引手段) 67…キャップ本体(キャップ部材) L…機能液 L1…液滴 N…ノズル S…内側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルから機能液の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドのクリーニング方法であって、
前記複数のノズルが配列されたノズル面に当接可能なキャップ部材を、前記複数のノズルを覆った状態で前記ノズル面に当接させるキャッピング工程と、
前記ノズル面と前記キャップ部材との間に形成される内側空間内に連通する吸引手段によって、前記内側空間内を負圧吸引するクリーニング工程とを有し、
前記クリーニング工程では、前記内側空間内を負圧吸引しつつ、前記液滴吐出ヘッド内の前記機能液に対して間欠的に振動を印加することを特徴とする液滴吐出ヘッドのクリーニング方法。
【請求項2】
前記クリーニング工程では、前記機能液に対して第1所定時間振動を印加する振動状態と、
前記第1所定時間の経過後、第2所定時間振動を休止する休止状態との振動サイクルを複数回実施し、
前記休止状態における前記第2所定時間は、前記振動状態後における前記液滴吐出ヘッドの温度を、前記振動状態前の前記液滴吐出ヘッドの温度まで低下させるために要する時間に設定することを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッドのクリーニング方法。
【請求項3】
前記ノズルから記録媒体に向けて前記液滴を吐出する描画工程に先立って、前記液滴吐出ヘッドの液滴の着弾位置と基準着弾位置との距離を検出する着弾位置検出工程を有し、
前記着弾位置と前記基準着弾位置との距離が規定値以上と判断された場合に、前記クリーニング工程を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の液滴吐出ヘッドのクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−240590(P2010−240590A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92718(P2009−92718)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】