説明

液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置

【課題】圧電素子を用いた液滴吐出アクチュエータにおいて、効率的に振動板の変位を大きくすることが可能な液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置を提供することを目的としている。
【解決手段】液滴が貯蔵される液室の一部を成す振動板を変形させて液室内の液滴をノズル孔から吐出させる液滴吐出ヘッドであって、振動板において前記液室側と反対面側に形成された圧電素子と、圧電素子において振動板側の面に形成された下部電極と、圧電素子において下部電極が形成された面と反対側の面に形成された上部電極と、を含む板状部材と、板状部材の上部電極側の一端に形成されており、板状部材が振動板との間に挟まれるように上部電極側に形成される基板と板状部材とを固定する固定壁と、板状部材の下部電極側の他端に形成されており、振動板を押圧する押圧壁と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク液滴が貯蔵されるインク液室の一部を成す振動板を変形させて前記インク液滴をノズル孔から吐出させる液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置に要求される高速印字、高画質のニーズは年々高まっている。この要求に対して、例えばインクジェット記録装置に搭載される液滴吐出アクチュエータにおける液滴を吐出する周期を短くする等の対応が採られている。またさらに、液滴吐出アクチュエータの高集積化が進められている。
【0003】
液滴吐出アクチュエータの駆動力としては、電気−熱変換素子、圧電素子、静電素子等が使用される。以下に図1を参照して薄膜圧電素子(以下、単に圧電素子と呼ぶ。)を用いた液滴吐出アクチュエータについて説明する。
【0004】
図1は、従来の液滴吐出アクチュエータを説明する図である。図1(A)は、液滴吐出アクチュエータ10の概略を説明する斜視図、図1(B)は、液滴吐出アクチュエータ10のA−A断面図、図1(C)は、液滴吐出アクチュエータ10の振動板11が変位した場合のA−A断面図である。
【0005】
液滴吐出アクチュエータ10は、図1(A)、(B)に示すように、振動板11と薄膜PZTで形成された圧電素子12とを有し、振動板11に対して下部電極14、圧電素子12、上部電極13が積層されて構成されている。液滴吐出アクチュエータ10は、振動板11と圧電素子12でユニモルフ構造を形成し、両電極に電圧を印加することで、図1(C)に示すように、圧電素子12の面内方向に伸縮を生じさせ、振動板11を面外方向に撓ませるというものである。
【0006】
圧電素子12を用いた液滴吐出アクチュエータ10において高集積化を進めるためには、振動板11の短辺方向長さが短くすれば良い。しかしながら振動板11の短辺方向長さを短くすると、振動板11は撓み難くなり、液滴吐出アクチュエータ10に要求される振動板の変位量が得られなくなる。
【0007】
そこで、振動板11の変位量を大きくするために、様々な工夫がなされている。例えば特許文献1及び特許文献2には、圧電素子を用いて効率的に振動板の変位量を増大させる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の液滴吐出アクチュエータ10の高集積化を進めるに当たり、振動板11の変位量を増大させるためには、例えば振動板11の厚みを薄くして、要求される変位量を得る方法がある。しかしながら、振動板11を薄くし過ぎるとバラツキの制御が困難になると共に、機械的な耐久性が得られなくなるため、この対応のみでは限界が生じる。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてこれを解決すべく成されたものであり、圧電素子を用いた液滴吐出アクチュエータにおいて、効率的に振動板の変位を大きくすることが可能な液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の如き構成を採用した。
【0011】
本発明は、液滴が貯蔵される液室の一部を成す振動板を変形させて前記液室内の前記液滴をノズル孔から吐出させる液滴吐出ヘッドであって、前記振動板において前記液室側と反対面側に形成された圧電素子と、前記圧電素子において前記振動板側の面に形成された下部電極と、前記圧電素子において前記下部電極が形成された面と反対側の面に形成された上部電極と、を含む板状部材と、前記板状部材の前記上部電極側の一端に形成されており、前記板状部材が前記振動板との間に挟まれるように前記上部電極側に形成される基板と前記板状部材とを固定する固定壁と、前記板状部材の前記下部電極側の他端に形成されており、前記振動板を押圧する押圧壁と、を有する構成とした。
【0012】
また本発明の液滴吐出ヘッドにおいて、前記押圧壁は、前記液室の一部を成す前記振動板の短辺方向の中央部分を押圧する構成とした。
【0013】
また本発明の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ノズル孔は、前記液室の一部を成す前記振動板の短辺方向の中央部分と対向する位置に形成されおり、前記押圧壁は、前記振動板を押圧する面が前記ノズル孔と重なる位置に形成される構成とした。
【0014】
また本発明の液滴吐出ヘッドにおいて、前記板状部材の短辺方向の幅は、前記液室の一部を成す振動板の幅と略同じである構成とした。
【0015】
また本発明の液滴吐出ヘッドにおいて、前記押圧壁の短辺方向の幅は、前記固定壁の短辺方向の幅よりも狭い構成とした。
【0016】
本発明は、液滴が貯蔵される液室の一部を成す振動板を変形させて前記液室内の前記液滴をノズル孔から吐出させる液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置であって、前記液滴吐出ヘッドは、前記振動板において前記液室側と反対面側に形成された圧電素子と、前記圧電素子において前記振動板側の面に形成された下部電極と、前記圧電素子において前記下部電極が形成された面と反対側の面に形成された上部電極と、を含む板状部材と、前記板状部材の前記上部電極側の一端に形成されており、前記板状部材が前記振動板との間に挟まれるように前記上部電極側に形成される基板と前記板状部材とを固定する固定壁と、前記板状部材の前記下部電極側の他端に形成されており、前記振動板を押圧する押圧壁と、を有する構成とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、効率的に振動板の変位を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の液滴吐出アクチュエータを説明する図である。
【図2】第一の実施形態の液滴吐出ヘッド100の斜視図である。
【図3】液滴吐出ヘッド100のB−B断面図である。
【図4】液滴吐出ヘッドの上面図を示す図である。
【図5】振動板の変位量を説明する図である。
【図6】板状部材の変位形状を説明する図である。
【図7】液滴吐出ヘッドの作製方法を説明する第一の図である。
【図8】液滴吐出ヘッドの作製方法を説明する第二の図である。
【図9】液滴吐出ヘッドの作製方法を説明する第三の図である。
【図10】液滴吐出ヘッドの作製方法を説明する第四の図である。
【図11】第二の実施形態のインクジェット記録装置300を説明する斜視図である。
【図12】第二の実施形態のインクジェット記録装置300の機構部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
従来の液滴吐出アクチュエータでは、振動板11の変位形状は図1(C)のようになるが、その表面の伸縮は位置により異なる。つまり、振動板11の下側の表面を見ると、短辺方向中央部では表面が伸び、端部では縮んでいる。この特性のため、振動板11の全面に圧電素子を形成すると振動板11の変位量が小さくなる。よって従来の液滴吐出アクチュエータでは、通常は圧電素子12は振動板11の略1/2程度の領域に形成され、振動板11の短辺方向両端部には圧電素子12が形成されない。
【0020】
そこで本発明では、この圧電素子が形成されない領域を有効に利用して、振動板の変位量を増大させることで、液滴吐出アクチュエータの高集積化に対応する。
【0021】
(第一の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第一の実施形態について説明する。図2は、第一の実施形態の液滴吐出ヘッド100の斜視図である。
【0022】
本実施形態の液滴吐出ヘッド100は、基板110、板状部材120、振動板130、セラミック層140、ステンレス層150を有する。
【0023】
振動板130は、隔壁141に支持されており、セラミック層140に形成されたインク液室142の一部を成している。ステンレス層150には、インクが吐出されるノズル孔151が形成されている。
【0024】
板状部材120は、後述する上部電極121、下部電極122、圧電素子123、圧電素子形成用部材124が積層されて形成されており(図3参照)、基板110と振動板130との間に配置されている。尚板状部材120は、剛性が振動板の剛性よりも高いものとした。本実施形態における剛性とは、矩形板の場合(ヤング率×厚み^3/短辺長さ^4)を意味する。本実施形態では、例えば板状部材120の剛性は、振動板130の剛性の1〜2倍程度とした。
【0025】
本実施形態では、板状部材120の変形により振動板130を撓ませて、インク液室142内のインクをノズル孔151から吐出させる。
【0026】
図3は、液滴吐出ヘッド100のB−B断面図である。
【0027】
本実施形態の液滴吐出ヘッド100において、板状部材120は、振動板130と基板110との間で、複数に分割されて配置されている(図4参照)。
【0028】
板状部材120は、振動板130から基板110に向かって、圧電素子形成用部材124、下部電極122、圧電素子123、上部電極121の順に積層されて形成されている。そして板状部材120は、固定壁126により一端が基板110へ固定され他端は、振動板130を振動板130を押圧するための押圧壁127により支えられている。本実施形態では、板状部材120と振動板130とは、略平行となるように形成される。
【0029】
本実施形態において振動板130は、幅Wの領域内で変形し、インク液室142内のインク液をノズル孔151から吐出させる。本実施形態において下部電極122、圧電素子123、上部電極121は、板状部材120の短辺方向において、圧電素子形成用部材124の幅W1と同程度の幅となるように形成される。
【0030】
本実施形態において押圧壁127は、振動板130の幅Wにおける中央部分を押圧するように形成される。例えば図3において、振動板130の幅Wの中点と、押圧壁127の幅W3の中点とがX−Y方向において重なる位置であっても良い。また本実施形態の押圧壁127は、図3において液滴吐出ヘッド100を紙面上方から見たとき、ノズル孔151と重なる位置となるように形成される。ノズル孔151は、振動板130の幅Wの中央部分に形成されている。例えば図3の例では、ノズル孔151の振動板130の短辺方向における幅W2の中点と、押圧壁127の振動板130の短辺方向における幅W3の中点とがX−Y方向において重なるように、押圧壁127が形成されていても良い。
【0031】
本実施形態の固定壁126は、板状部材120を基板110に固定する。本実施形態では、固定壁126の振動板130の短辺方向における幅W4は、押圧壁127の幅W3よりも広い幅とした。例えば固定壁126の幅W4が60ミクロンであった場合、押圧壁127の幅W3は5ミクロン程度であることが好ましい。
【0032】
また本実施形態の板状部材120の幅W1は、インク液室142の一部となる振動板130の幅Wと同程度であることが好ましい。
【0033】
すなわち本実施形態では、圧電素子123の一端は固定壁126により上部電極121側の基板110に固定されおり、他端は押圧壁127により下部電極122側の振動板130を押圧するように形成されている。
【0034】
図4は、液滴吐出ヘッドの上面図を示す図である。尚図4では、ノズル孔151の位置と板状部材120の位置とを説明するため、振動板130を省略している。図4(A)
は、板状部材120が形成される前の上面図であり、図4(B)は、板状部材120が形成された後の上面図である。板状部材120は、振動板130の上に複数形成されていることがわかる。
【0035】
本実施形態では、図4(A)、(B)に示すように複数のインク液室142に形成されたノズル孔151に押圧壁127が重なるように、板状部材120が形成される。
【0036】
本実施形態の液滴吐出ヘッド100では、上記構成により、従来と比較して広い領域に圧電素子123を形成させ、効率良く振動板130の変位量を増大させることができる。
【0037】
以下に、本実施形態の構成により振動板130の変動量が増大する理由について説明する。
【0038】
図5は、振動板の変位量を説明する図である。図5では、矩形状の板を用いて振動板130の変位量について説明する。図5(A)は、矩形状の板の短辺方向の全面に一様の荷重を受けた場合の変位量を説明する図であり、図5(B)は矩形状の板の振短辺方向中央部分に集中的に荷重を受けた場合の変位量を見た図である。
【0039】
図5(A)に示す板の短辺方向aの中央部の変位量δ1は、以下の式1で与えられる。また図5(B)の短辺方向aの中央部の変位量δ2は、以下の式2で与えられる。尚式(1)、式(2)において、aは図5に示す板の短辺方向の長さであり、νは板のポアソン比であり、Eは板のヤング率であり、tは板の厚みであり、Pは板に加えられる一様圧力であり、Sは板の面積である。またFは、図5(B)に示す板に与えられた力である。
【0040】
【数1】

【0041】
【数2】

上記2つの式から分かるように、与えられる力(荷重)の総和が同じであれば、一様に荷重を受ける場合よりも、集中的に荷重を受ける場合の方が板の変位量は2倍大きくなる。したがって、同様のことが振動板130にも起こり得る。すなわち振動板130は、一様に荷重を受けるよりも、集中的に荷重を受けた方が変位量は大きくなる。
【0042】
一方で、圧電素子123に電圧を印加されて発生する力は、圧電素子123の厚み、面積、印加電圧が一定であれば、圧電素子123の配置を変えても同じである。この圧力を効率良く振動板130の変位量に繋げる必要がある。
【0043】
尚、図5(A)において矩形状の板が変位する前の形状である初期の形状と、変位した後の形状との間に形成される面積S1は、S1=(16/30)×δ1×aであり、図5(B)において形成される面積S2はS2=(15/30)×δ2×aである。尚面積S1、S2を求める式のパラメータ(15、16、30)は、材料力学から与えられる値である。したがって、δ1とδ2が同じ場合において両者の流体を移動させる能力はほぼ同じである。すなわち、図5(B)のように短辺方向中央部に集中的に荷重を加えることが出来れば変位量は2倍となるので、インク液を吐出させる能力はほぼ2倍になる。
【0044】
そこで本実施形態では、板状部材120を片持ち梁状に変形させて振動板130の幅Wにおける中央部に集中的に荷重を加える。本実施形態の板状部材120を片持ち梁状に変形させることができれば、押圧壁127により、振動板130の幅Wにおける中央部を集中的に押圧することができ、振動板130の変位量を大きくする。
【0045】
本実施形態の板状部材120では、圧電素子形成用部材124と同程度の幅に圧電素子123を形成し、一端を固定壁126により基板110に固定し、他端の押圧壁127により振動板130を押圧する構成とした。尚本実施形態の板状部材120は、振動板130よりも剛性が大きい。
【0046】
本実施形態の板状部材120において、上部電極121と下部電極122とに電圧を印加して圧電素子123を駆動した場合、板状部材120の変位形状は、図6に示すような片持ち梁のようになる。図6は、板状部材の変位形状を説明する図である。
【0047】
図6に示すように、本実施形態の板状部材120は、上側表面(上部電極121の基板110側の面)の全体が同じ方向に伸び、板状部材120の下側表面(上部電極122の振動板130側の面)では、全体が同じ方向に縮むようになって、片持ち梁の形状になる。本実施形態では、板状部材120をこのように変形させることで、振動板130の変位量を大きくすることができる。
【0048】
さらに本実施形態では、板状部材120の幅W1とほぼ同程度の幅に圧電素子123を形成することで、振動板130の変位をより大きくすることができる。
【0049】
尚本実施形態において、押圧壁127は、振動板130に固定されていても良い。押圧壁127が振動板130に固定されていれば、押圧壁127が固定されていない場合に比べて液滴吐出ヘッド100の強度が大きくなる。本実施形態の押圧壁127は、圧電素子123が駆動した際に、振動板130の幅Wの中央部を押圧できる構成であれば良い。
【0050】
以下に図7〜図10を参照して本実施形態の液滴吐出ヘッド100の作製方法を説明する。図7は、液滴吐出ヘッドの作製方法を説明する第一の図であり、図8は、液滴吐出ヘッドの作製方法を説明する第二の図であり、図9は、液滴吐出ヘッドの作製方法を説明する第三の図であり、図10は、液滴吐出ヘッドの作製方法を説明する第四の図である。
【0051】
始めに、SOI(Silicon on Insulator)基板200を部分的にマスクし(図7(A))、水酸化カリウム(KOH)を用いて酸化膜210のエッチストップ層までウェットエッチングして、掘り込み部211を形成する(図7(B))。この掘り込み部211はインク液室142となり、振動板130が形成される。その後、全体に熱酸化膜212を形成する(図7(C))。次に、ポリシリコン(poly Si)層213を0.6um成膜し(図7(D))する。
【0052】
次に振動板130の短辺方向中央部のみ部分的にドライエッチングを行った後、高温酸化膜(HTO)層214を1um成膜する(図8(A))。次に、ポリシリコン(poly Si)層213を部分的にエッチングした後、Si層215を0.4um形成し(図8(B))、これも部分的にエッチングを行う。その後、高温酸化膜(HTO)層216を1um成膜する(図8(C))。
【0053】
高温酸化膜(HTO)層216を部分的にエッチングすることで、圧電素子123を形成するための圧電素子形成用部材124が出来る(図8(D))。尚圧電素子形成用部材124として3層構造を採ったのは、引張内部応力を有するSiと圧縮内部応力を有する温酸化膜(HTO)を組み合わせることで、応力緩和を行うためである。
【0054】
同様の手法で、下部電極122となるPt(platinum)層217、圧電材料層219、上部電極121となるPt層219を形成し、その上にSi層220を形成する(図9(A))。ここまでで、圧電素子123と圧電素子形成用部材124とが形成される。次にポリシリコン層222を形成し(図9(B))、Si層220の表面が表れるまでポリシリコン層222をエッチングする(図9(C))。
【0055】
この上にシリコン(Si)基板110を接合する(図10(A))。尚基板110としては、十分な厚みを有する高剛性の材料が必要であるため、本実施形態ではシリコン基板を採用した。尚この後にポリシリコン層213及び221のエッチングを行うために、基板110には部分的に長孔が空いている(図示せず)。
【0056】
最後に、ICP(Inductively coupled plasma)を用いたドライエッチングにより、ポリシリコン層213及び221のエッチングを行い(図10(B))、ノズル孔151が形成されたステンレス層150(図示せず)を接合すれば、本実施形態の液滴吐出ヘッド100が出来る。尚ここでは図示していないが、下部電極122となるPt層217は、液滴吐出ヘッド100の長辺方向端部で繋がっており、共通電極となっている。
【0057】
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態では、第一の実施形態の液滴吐出ヘッド100が搭載された液滴吐出装置として、インクジェット記録装置を例とした場合について説明する。以下の第二の実施形態の説明において、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには、第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0058】
図11は、第二の実施形態のインクジェット記録装置300を説明する斜視図であり、図12は、第二の実施形態のインクジェット記録装置300の機構部の側面図である。
【0059】
インクジェット記録装置300は、インクジェット記録装置300の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ360、キャリッジに搭載したカートリッジ305からなる記録ヘッド307、記録ヘッド307を駆動、制御する駆動装置、記録ヘッド307を有する印字機構部310等が収納されている。記録ヘッド307において、カートリッジ305の下方には、キャリッジ360に保持された液滴吐出ヘッド100が配置されている。
【0060】
またインクジェット記録装置300の下方部には、前方側から多数枚の記録媒体(用紙)40を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)320を抜き差し自在に装着することができる。
【0061】
またインクジェット記録装置300は、用紙40を手差しで給紙するための手差しトレイ330を開倒することができる。インクジェット記録装置300は、給紙カセット320或いは手差しトレイ330から給送される用紙40を取り込み、印字機構部320によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ350に排紙する。
【0062】
またインクジェット記録装置300は、記録時には、キャリッジ360を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド307を駆動することにより、停止している用紙40にインクを吐出して1行分を記録し、用紙40を所定量搬送後次の行の記録を行う。インクジェット記録装置300は、記録終了信号又は用紙40の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙40を排紙する。
【0063】
尚本実施形態の液滴吐出ヘッド100が適用される液滴吐出装置は、インクジェット記録装置300に限定されない。本実施形態の液滴吐出装置は、何らかの液体を吐出させて画像形成を行う装置を示している。ここで言う液体は、インクに限定されない。本実施形態における液体は、記録液、定着処理液等、画像形成を行うことができる液体の総称であり、例えばDNA(Deoxyribo Nucleic Acid)試料、レジスト、パターン材料等も含まれる。
【0064】
また本実施形態では、記録媒体を紙としたが、これに限定されない。例えば記録媒体は、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等であっても良い。
【0065】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0066】
100 液滴吐出ヘッド
110 基板
120 板状部材
121 上部電極
122 下部電極
123 圧電素子
124 圧電素子形成用部材
126 固定壁
127 押圧壁
130 振動板
140 セラミック層
141 隔壁
142 インク液室
150 ステンレス層
151 ノズル孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2008−12855号公報
【特許文献2】特開平3−293142号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴が貯蔵される液室の一部を成す振動板を変形させて前記液室内の前記液滴をノズル孔から吐出させる液滴吐出ヘッドであって、
前記振動板において前記液室側と反対面側に形成された圧電素子と、
前記圧電素子において前記振動板側の面に形成された下部電極と、
前記圧電素子において前記下部電極が形成された面と反対側の面に形成された上部電極と、を含む板状部材と、
前記板状部材の前記上部電極側の一端に形成されており、前記板状部材が前記振動板との間に挟まれるように前記上部電極側に形成される基板と前記板状部材とを固定する固定壁と、
前記板状部材の前記下部電極側の他端に形成されており、前記振動板を押圧する押圧壁と、を有する液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記押圧壁は、前記液室の一部を成す前記振動板の短辺方向の中央部分を押圧する請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記ノズル孔は、前記液室の一部を成す前記振動板の短辺方向の中央部分と対向する位置に形成されおり、
前記押圧壁は、前記振動板を押圧する面が前記ノズル孔と重なる位置に形成される請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記板状部材の短辺方向の幅は、前記液室の一部を成す振動板の幅と略同じである請求項1ないし3の何れか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記押圧壁の短辺方向の幅は、前記固定壁の短辺方向の幅よりも狭い請求項1ないし4の何れか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
液滴が貯蔵される液室の一部を成す振動板を変形させて前記液室内の前記液滴をノズル孔から吐出させる液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置であって、
前記液滴吐出ヘッドは、
前記振動板において前記液室側と反対面側に形成された圧電素子と、
前記圧電素子において前記振動板側の面に形成された下部電極と、
前記圧電素子において前記下部電極が形成された面と反対側の面に形成された上部電極と、を含む板状部材と、
前記板状部材の前記上部電極側の一端に形成されており、前記板状部材が前記振動板との間に挟まれるように前記上部電極側に形成される基板と前記板状部材とを固定する固定壁と、
前記板状部材の前記下部電極側の他端に形成されており、前記振動板を押圧する押圧壁と、を有する液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−116008(P2011−116008A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274709(P2009−274709)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】