説明

液滴吐出装置およびインクセット

【課題】顔料インクおよび染料インクが混合された場合であっても、吐出安定性が良好な液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る液滴吐出装置は、ヘッド部材を有する液滴吐出装置であって、前記ヘッド部材は、ノズル面を備え、前記ノズル面には、第1ノズル列および第2ノズル列を含む複数のノズル列が配列されており、前記ノズル列は、所定のパターンで配列された複数のノズル孔からなり、前記第1ノズル列は、水および顔料を含有する顔料インクを吐出し、前記第2ノズル列は、水および染料を含有する染料インクを吐出し、前記顔料インクの導電率[E(mS/cm)]と、前記染料インクの導電率[E(mS/cm)]と、の関係は、 0<(E−E)≦3 である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置およびインクセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、色材として顔料または染料を含有するインクが知られている。色材として顔料を含有する顔料インクは、滲みが少なく、耐水性や耐光性が良好であるという点から、特に、文字等の記録に好ましく用いられる。また、色材として染料を含有する染料インクは、光沢性および発色性が良好であり、色彩が鮮明であるという点から、特に、画像等の記録に好ましく用いられる。
【0003】
上記のような特性を備えた顔料インクおよび染料インクを併用すると、被記録媒体に記録される文字および画像の両方の記録品質が優れたものとなる。このような理由から、近年、顔料インクおよび染料インクの両方を備えた液滴吐出装置が広く用いられている。
【0004】
ところで、顔料インクおよび染料インクを備えた液滴吐出装置を用いて画像の記録を行う際に、インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面において、顔料インクおよび染料インクが混合される場合がある。このような場合、顔料インク中の顔料の分散性が染料インクによって破壊され、顔料が凝集する場合がある。特に、ノズル面をクリーニングするために設けられたワイプ部材によってノズル面をクリーニングした際に、顔料の凝集物によってノズル孔が塞がれて、インクの吐出安定性を低下させてしまう場合があった。また、ノズル面に付着した顔料の凝集物が記録媒体上に落下してしまうという不具合が発生することがあった。
【0005】
このような顔料の凝集を低減させるために、特許文献1には、染料インクにラクタム構造を有するポリマーを添加することが記載されている。また、特許文献2には、顔料インクおよび染料インクに含まれるカウンターイオン(対イオン)の量を規定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−84136号公報
【特許文献2】特開2006−2094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術では、顔料インク及び染料インクが混合された際に、顔料の分散破壊を十分に抑制することができず、ノズル面において顔料の凝集が起こり、吐出不良が発生する場合があった。
【0008】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の1つは、顔料インクおよび染料インクが混合された場合であっても、吐出安定性が良好な液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係る液滴吐出装置の一態様は、
ヘッド部材を有する液滴吐出装置であって、
前記ヘッド部材は、ノズル面を備え、
前記ノズル面には、第1ノズル列および第2ノズル列を含む複数のノズル列が配列されており、
前記ノズル列は、所定のパターンで配列された複数のノズル孔からなり、
前記第1ノズル列は、水および顔料を含有する顔料インクを吐出し、
前記第2ノズル列は、水および染料を含有する染料インクを吐出し、
前記顔料インクの導電率[E(mS/cm)]と、前記染料インクの導電率[E(mS/cm)]と、の関係は、 0<(E−E)≦3 である。
【0011】
適用例1の液滴吐出装置によれば、顔料インクおよび染料インクが混合された場合であっても、顔料インクに含まれる顔料の分散性が良好であり、吐出安定性が良好である。
【0012】
[適用例2]
適用例1において、
さらに、前記ノズル面を払拭するためのワイプ部材を有することができる。
【0013】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記第1ノズル列は、前記ノズル面に配列された前記複数のノズル列のうち、最も端に配列されることができる。
【0014】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記第2ノズル列は、互いに色相の異なる染料インクを異なるノズル列から吐出させるために、複数備えられ、
複数の前記第2ノズル列は、吐出させる染料インクの導電率の低い順に、前記第1ノズル列に近接するように配列されることができる。
【0015】
[適用例5]
適用例2ないし適用例4のいずれか1例において、
前記ワイプ部材は、前記複数のノズル列の配列された方向に沿って、前記第1ノズル列から順に前記ノズル面を払拭することができる。
【0016】
[適用例6]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
第2ノズル列は、互いに色相の異なる染料インクを吐出するために、ノズル孔の配列された方向に沿って、所定数のノズル孔を含む群毎に分割して用いられ、
前記群は、吐出させる染料インクの導電率の低い順に、前記ノズル孔の配列された方向に沿って配列されることができる。
【0017】
[適用例7]
適用例6において、
前記ワイプ部材は、前記ノズル孔の配列された方向に沿って、導電率の低い染料インクを吐出する前記群から順に前記ノズル面を払拭することができる。
【0018】
[適用例8]
本発明に係るインクセットの一態様は、
水および顔料を含有する顔料インクと、
水および染料を含有する染料インクと、
を有し、
前記顔料インクの導電率[E(mS/cm)]と、前記染料インクの導電率[E(mS/cm)]と、の関係は、 0<(E−E)≦3 である。
【0019】
適用例8のインクセットによれば、顔料インクおよび染料インクが混合された場合であっても、顔料インクに含まれる顔料の分散性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態および第2実施形態におけるプリンターの構成を示す斜視図。
【図2】第1実施形態におけるインクジェットヘッドに設けられたノズルの配列を示す概略図。
【図3】第1実施形態および第2実施形態におけるインクジェットヘッドの内部構成を示す部分断面図。
【図4】第2実施形態におけるインクジェットヘッドに設けられたノズルの配列を示す概略図。
【図5】実施例1および比較例1におけるインクジェットヘッドに設けられたノズルの配列を示す概略図。
【図6】実施例2および比較例2におけるインクジェットヘッドに設けられたノズルの配列を示す概略図。
【図7】実施例3および比較例3におけるインクジェットヘッドに設けられたノズルの配列を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0022】
1.インクセット
本発明の一実施形態に係るインクセットは、顔料インクおよび染料インクを有する。本実施形態に係るインクセットは、後述する液滴吐出装置に適用することができる。以下、本実施形態に係るインクセットに使用可能な顔料インクおよび染料インクについて、詳細に説明する。
【0023】
本実施形態に係るインクセットに使用可能な顔料インク(以下、単に「顔料インク」ともいう。)は、水および顔料を含有し、本実施形態に係るインクセットに使用可能な染料インク(以下、単に「染料インク」ともいう。)は、水および染料を含有する。なお、以下、単に「インク」という場合には、顔料インクおよび染料インクの両者を含めたものを指す。
【0024】
顔料インクの導電率[E(mS/cm)]と染料インクの導電率[E(mS/cm)]との関係は、0<(E−E)≦3である。顔料インクの導電率[E(mS/cm)]および染料インクの導電率[E(mS/cm)]が、0<(E−E)≦3、の関係を満たすと、顔料インクと染料インクとが混合された際に、顔料インクに含有されている顔料の分散性が低下しにくくなる。これにより、ノズルの詰まり等による吐出不良の発生を低減することができる。一方、顔料インクおよび染料インクの導電率の関係が、上記範囲を超えると、顔料インクおよび染料インクが混合された際に、顔料インクに含まれる顔料の分散性が低下して、顔料の凝集等が発生する場合がある。また、顔料インクおよび染料インクの導電率の関係が上記範囲未満であると、染料の水に対する溶解性が低下して、吐出不良が発生したり、記録される画像の発色濃度が低下したりする場合がある。
【0025】
顔料インクと染料インクとの導電率の関係が顔料の凝集に影響する理由については、詳細は明らかになっていないが、以下のメカニズムによるものと考えられる。
【0026】
インクの導電率は、インク中の電離したイオン量の増加にともない高くなる傾向にある。つまり、染料インクの導電率が高いということは、染料インク中で電離しているイオンの量が多いことを示す。
【0027】
例えば、顔料インクに比べて導電率が比較的高い染料インクを用いた際に、顔料インクおよび染料インクの混合が起こると、顔料粒子の周囲の導電率が高くなる。その結果、顔料周囲の電気二重層が収縮することにより、顔料粒子の粒子間距離が縮まり、顔料の凝集が発生すると考えられる。一方、導電率が比較的低い染料インクを用いると、染料インクに由来するイオンの量が少なくなる。そのため、顔料インクおよび染料インクの混合が起こっても、顔料粒子の周囲の導電率が上昇しにくい。このような理由から、顔料の凝集が発生しにくくなると考えられる。
【0028】
顔料インクの導電率[E(mS/cm)]は、好ましくは0.5〜2.5であり、より好ましくは1.0〜2.0である。顔料インクの導電率が上記範囲内にあると、顔料インク中の顔料の分散性が良好となり、顔料インクの吐出安定性が良好となる。
【0029】
染料インクの導電率[E(mS/cm)]は、好ましくは2.0〜5.0であり、より好ましくは3.0〜4.0である。染料インクの導電率が上記範囲内にあると、染料インク中における染料の溶解性が良好となり、染料インクの吐出安定性が良好となる。
【0030】
インクの導電率は、インクの温度を20℃に設定したものを、電気伝導率計によって測定したものである。電気伝導率計は、具体的には、DS−52(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いることができる。
【0031】
顔料インクに使用される顔料は、後述するように、金属塩構造を有していることが好ましい。これにより、顔料の分散性が改善し、顔料の凝集が発生しにくくなる。
【0032】
染料インクに使用される染料は、後述するように、金属塩構造を有していることが好ましい。これにより、染料の溶解性が改善する。
【0033】
顔料から生じる金属イオンの平均の極限当量伝導率(S・cm/eq)は、染料から生じる金属イオンの極限当量伝導率(S・cm/eq)よりも高いことが好ましい。これにより、顔料インクおよび染料インクが混合された際に、顔料の凝集をより一層低減させることができる。
【0034】
極限当量伝導率の関係が顔料の凝集に影響する理由については、詳細は明らかになっていないが、以下のメカニズムによるものと考えられる。
【0035】
例えば、顔料から生じる金属イオンの平均の極限当量伝導率に比べて、染料から生じる金属イオンの極限当量伝導率が高いと、顔料インクおよび染料インクが混合された際に、顔料粒子の周囲の導電率が高くなる。つまり、顔料粒子は、極限当量伝導率の高い金属イオンと出会いやすくなる。その結果、顔料周囲の電気二重層が収縮することにより、顔料粒子の粒子間距離が縮まり、顔料の凝集が発生すると考えられる。
【0036】
一方、顔料から生じる金属イオンの極限当量伝導率に比べて、染料から生じる金属イオンの極限当量伝導率が低いと、顔料粒子の周囲の導電率は上昇しにくい。このような理由から、顔料の凝集が発生しにくくなると考えられる。
【0037】
金属イオンの極限当量伝導率(Limiting equivalent conductivity;S・cm/eq)とは、無限希釈状態における固有値であり、イオン独立移動の法則で定義される値として知られている。即ち、イオン独立移動の法則において、無限希釈状態における電解質の極限モル伝導率は、陽イオン及び陰イオンの極限モル伝導率の和として表される。無限希釈状態とは、電解質(イオン)が存在しないことを意味するのではなく、溶液中での陽イオン−陰イオン間距離が無限大であり、陽イオンと陰イオンとが相互に影響を及ぼさないことを意味している。なお、金属イオンの当量伝導率(S・cm/eq)とは、当該金属イオンの極限モル伝導率(S・cm/mol)を当該金属イオンの価数で割ったものをいう。
【0038】
金属イオンの極限当量伝導率は、既知のものが多く、具体的には、25℃における極限当量伝導率(S・cm/eq)は、カリウムイオン(K)で73.5、ナトリウムイオン(Na)で50.1、リチウムイオン(Li)で38.7、である(電気化学協会「電気化学便覧 第4版」)。また、金属イオンの極限当量伝導率は、実験的に求めることも可能であり、当量伝導率の濃度変化を測定し、適当な方法を用いて濃度ゼロへの外挿を行うことによって決定することができる。
【0039】
また、顔料から生じる金属イオンが2種以上である場合には、金属イオンの極限当量伝導率を平均の極限当量伝導率とする。平均の極限当量伝導率とは、顔料から生じる金属イオンの極限当量伝導率の平均値を示すものである。例えば、m個のXイオンと、n個のYイオンと、の平均の極限当量伝導率は、[(Xイオンの極限当量伝導率)×m+(Yイオンの極限当量伝導率)×n]/(m+n)、により求められる。なお、染料から生じる金属イオンが2種以上である場合にも、顔料から生じる金属イオンと同様にして、平均の極限当量伝導率を求めることができる。
【0040】
1.1.顔料インク
顔料インクは、水および顔料を含有する。以下、顔料インクに含まれる成分について説明する。
【0041】
(1)顔料
顔料としては、公知の顔料を用いることができるが、自己分散型の顔料であることが好ましい。自己分散型の顔料とは、分散剤なしに水性媒体中に分散および/または溶解することが可能な顔料である。ここで、「分散剤なしに水性媒体中に分散および/または溶解」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても、その表面の親水基により、水性媒体中に安定に存在している状態をいう。自己分散型の顔料を用いると、顔料を分散させるための分散剤の使用量を低減できるので、分散剤に起因するインクの発泡を低減でき、吐出安定性の良好なインクが調製しやすい。
【0042】
自己分散型の顔料は、その顔料表面に親水基を有することができる。顔料表面の親水基は、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SOM、−SONH、−RSOM、−POHM、−PO、−SONHCOR、−NH、および−NR(式中のMは、水素原子、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、置換基を有していてもよいフェニル基、または有機アンモニウムを表し、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す)からなる群から選択される一以上の親水基であることが好ましい。
【0043】
本実施形態に係る顔料インクに用いる顔料は、金属塩構造を有することが好ましい。上述したように、顔料インクが金属塩構造を有していると、顔料の分散性が改善し、顔料の凝集が発生しにくくなる。
【0044】
顔料から生じる金属イオンとしては、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。これにより、顔料インク中における顔料の分散性を向上させることができる。
【0045】
顔料は、例えば、物理的処理または化学的処理を施すことで、前記親水基を顔料の表面に結合(グラフト)させることにより製造される。前記物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理等が例示できる。また前記化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
【0046】
顔料インクをブラック色のインク(以下、「顔料ブラックインク」ともいう。)として用いる場合には、顔料は、次亜ハロゲン酸および/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、オゾンによる酸化処理、または過硫酸および/または過硫酸塩による酸化処理により表面処理されたものであることが、高発色という点で好ましい。
【0047】
顔料インクをブラック色以外のカラーのインク(以下、「顔料カラーインク」ともいう。)として用いる場合には、顔料は、その表面にフェニル基を介して上記親水基を有するものであることが、高発色という点で好ましい。顔料表面にフェニル基を介して親水基を結合させる表面処理手段としては、種々の公知の表面処理手段を適用することができ、スルファニル酸、p−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸等を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介して親水基を結合させる方法等が例示できる。
【0048】
顔料ブラックインクに用いられる顔料は、特に限定されないが、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックの好ましい具体例としては、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B(以上三菱化学(株)製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250(以上デグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700(以上コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12(キャボット社製)等が挙げられる。これらのカーボンブラックは一種または二種以上の混合物として用いても良い。
【0049】
また、顔料カラーインクに用いられる顔料としては、特に限定されないが、カラーインデックスに記載されているピグメントイエロー、ピグメントレッド、ピグメントバイオレット、ピグメントブルー等の顔料の他、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、縮合環系等の顔料が例示できる。また、橙色228号、405号、青色1号、404号等の有機顔料や酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クローム等の無機顔料が挙げられ、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド1,3,5,8,9,16,17,19,22,38,57:1,90,112,122,123,127、146,184、C.I.ピグメントバイオレッド1,3,5:1,16,19,23,38、C.I.ピグメントブルー1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,16が挙げられる。
【0050】
また、顔料として市販品を利用することも可能であり、例えば、マイクロジェットCW1(オリヱント化学工業株式会社製)、CAB−O−JET250C、CAB−O−JET260M(以上キャボット社製)等が挙げられる。
【0051】
顔料の含有量は、顔料インクの全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0052】
また、顔料は、インクの保存安定性やノズルの目詰まり防止等の観点から、その平均粒径が50nm以上250nm以下の範囲であることが好ましい。
【0053】
(2)水
顔料インクは、水を含有する。水は、上述した顔料を分散もしくは溶解させる主溶媒として機能する。
【0054】
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0055】
本実施形態に係る顔料インクに含有される水は、顔料インクの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましい。
【0056】
(3)その他の成分
本実施形態に係る顔料インクは、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0057】
これらの中でも、ノニオン系界面活性剤は、インクの被記録媒体に対する浸透性および定着性を向上できるとともに、インクジェット記録方法によって被記録媒体上に付着させたインクの液滴の形状を真円に近いものとすることができるので、好ましく用いることができる。
【0058】
また、ノニオン系界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、表面張力および界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する点から、より好ましく用いることができる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、または3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0059】
界面活性剤を含有する場合には、その含有量は、顔料インクの全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0060】
本実施形態に係る顔料インクは、浸透促進剤を含有することができる。浸透促進剤は、被記録媒体に対するインクの濡れ性をさらに向上させて均一に塗らす作用を備える。これにより、形成された画像のインクの濃淡ムラや滲みをさらに低減させることができ、画像の発色濃度を一層向上させることができる。浸透促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0061】
浸透促進剤としては、例えば、グリコールエーテル類が挙げられる。グリコールエーテル類は、浸透促進剤としての効果に特に優れる。グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る顔料インクに含まれる成分との相溶性に優れている点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを好ましく用いることができる。
【0062】
浸透促進剤を含有する場合には、その含有量は、顔料インクの全質量に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0063】
本実施形態に係る顔料インクは、保湿剤を含有することができる。保湿剤としては、例えば、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、ピロリドン誘導体、尿素類等が挙げられる。保湿剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0064】
1,2−アルカンジオール類は、被記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、被記録媒体上に優れた画像を形成することができる。1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類を含有する場合には、その含有量は、顔料インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0065】
多価アルコール類は、インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類を含有する場合には、その含有量は、顔料インクの全質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0066】
ピロリドン誘導体は、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。ピロリドン誘導体を含有する場合には、その含有量は、顔料インクの全質量に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0067】
尿素類は、顔料インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。尿素類としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等が挙げられる。尿素類を含有する場合には、その含有量は、顔料インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0068】
本実施形態に係る顔料インクは、pH調整剤を含有することができる。pH調整剤は、顔料インクのpH値の調整を容易にすることができる。pH調製剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0069】
pH調整剤としては、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸等)等が挙げられる。
【0070】
pH調整剤としては、上記の中でも、有機酸および有機塩基の少なくとも一方を用いることが好ましい。特に、有機酸と有機塩基とを組み合わせて使用する場合には、無機酸と無機塩基、無機酸と有機塩基、有機酸と無機塩基の組み合わせよりもpH緩衝能力が高い。そのため、有機酸と有機塩基とを組み合わせて使用した場合には、pH値の変動を抑制する効果が一層向上して、所望のpHに設定しやすいという効果を奏する。
【0071】
本実施形態に係る顔料インクは、さらに、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有することができる。本実施形態に係る顔料インクは、これらの化合物を含有していると、その特性がさらに向上する場合がある。
【0072】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0073】
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0074】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0075】
1.2.染料インク
本実施形態に係る染料インクは、水および染料を含有する。
【0076】
本実施形態に係る液滴吐出装置では、後述するように、1種類の染料インクを使用することに限られず、複数種の染料インクを使用することができる。複数種の染料インクを使用する場合に、複数種の染料インクとしては、特に限定されず、例えば、互いに色相の異なるもの、互いに彩度又は明度の異なるもの等を用いることができる。互いに色相の異なる染料インクとしては、例えば、シアンインクとマゼンタインクのように、互いに含まれる染料の種類が異なるものが挙げられる。互いに彩度又は明度の異なるものとしては、例えば、シアンインクとライトシアンインクのように、互いに含まれる染料の色相が同一だが染料の含有率が異なるものが挙げられる。
【0077】
以下、染料インクに含まれる成分について説明する。なお、染料インクには、前述した顔料インクに含まれる成分のうち、顔料以外の成分を同様に含有させることができる。そのため、染料インクおよび顔料インクにおいて、共通して使用できる成分については、その説明を省略する。
【0078】
(1)染料
本実施形態に係る染料としては、従来公知の染料が挙げられ、例えば、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料等の通常インクジェット記録に使用する各種染料が挙げられる。
【0079】
イエロー系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー1、3、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、59、61、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、127、131、135、142、162、164、165、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、110、132、142、144、C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42、C.I.フードイエロー3、4、C.I.ソルベントイエロー15、19、21、30、109等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0080】
マゼンタ系染料としては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321、322、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、C.I.ソルビライズレッド1、C.I.フードレッド7、9、14等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0081】
シアン系染料としては、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、199、203、204、205、229、234、236、249、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249、C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、C.I.ソルビライズバットブルー1、5、41、C.I.バットブルー4、29、60、C.I.フードブルー1、2、C.I.ベイシックブルー9、25、28、29、44等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0082】
また、マゼンタ、シアンおよびイエロー以外の染料としては、例えば、C.I.アシッドグリーン7、12、25、27、35、36、40、43、44、65、79、C.I.ダイレクトグリーン1、6、8、26、28、30、31、37、59、63、64、C.I.リアクティブグリーン6、7、C.I.アシッドバイオレット15、43、66、78、106、C.I.ダイレクトバイオレット2、48、63、90、C.I.リアクティブバイオレット1、5、9、10、C.I.ダイレクトブラック154等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0083】
本実施形態に係る染料は、分子内のスルホ基、カルボキシ基およびホスホノ基等の官能基を利用して塩を形成できるものであることが好ましい。塩を形成するとき、分子内のスルホ基、カルボキシ基およびホスホノ基等は、金属、アンモニアまたは有機塩基等の各カチオンと塩を形成することが好ましい。
【0084】
金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
【0085】
有機塩基としては、特に有機アミンが挙げられ、例えばメチルアミン、エチルアミン等のC1−C3アルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノノールアミン等のモノ−、ジ−又はトリ−C1−C4アルカノールアミン類が挙げられる。
【0086】
本実施形態に係る染料は、金属塩構造を有することが好ましい。上述したように、染料が金属塩構造を備えていると、染料の溶解性が改善する。
【0087】
また、染料インクの導電率は、金属イオンと塩を形成する染料中の官能基の数をコントロールすることでも、容易に設定することができる。
【0088】
染料から生じる金属イオンとしては、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。これにより、染料インク中における染料の溶解性を向上させることができる。
【0089】
染料の含有量は、染料インクの全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0090】
1.3.インクの物性
顔料インクおよび染料インクの20℃における粘度は、それぞれ、2mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。20℃におけるインクの粘度が上記範囲内にあると、ノズルから適量吐出され、飛行曲がりを起こすことや飛散することを一層低減できるので、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。各インクの粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定できる。
【0091】
2.液滴吐出装置
2.1.第1実施形態
本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置は、ヘッド部材を有する。以下、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置について、図1〜図3を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る液滴吐出装置として、インクジェットプリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例示する。
【0092】
2.1.1.装置構成
図1は、本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。なお、このプリンター1は、シリアルプリンターを表している。
【0093】
図1に示すように、プリンター1は、インクジェットヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、インクジェットヘッド2の下方に配設され被記録媒体6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を被記録媒体6の媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、被記録媒体6を媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、を有するものである。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御装置CONTを有している。なお、上記媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。請求項における「ヘッド部材」は、本実施形態の「インクジェットヘッド2」に相当する。
【0094】
本実施形態に係るインクカートリッジ3は、独立したインクカートリッジ3a、3b、3c、3dからなる。インクカートリッジ3a〜3dには、それぞれ、上述した顔料インクおよび染料インクが充填される。本実施形態では、インクカートリッジ3aには顔料インク、インクカートリッジ3bには第1染料インク、インクカートリッジ3cには第2染料インク、インクカートリッジ3dには第3染料インク、が充填されている。
【0095】
インクカートリッジ3の配列順は、特に限定されず、所望の順序に配列することができる。例えば、図1の例では、インクカートリッジ3a〜3dは、主走査方向の一方の側(以下、「S1」ともいう)から主走査方向の他方の側(以下、「S2」ともいう。)に向かって、インクカートリッジ3a、3d、3c、3dの順に配列されている。なお、第1染料インク、第2染料インク、および第3染料インクは、上述した染料インクに相当し、互いに色相の異なるものである。
【0096】
本実施形態では、インクカートリッジの数が4つであるが、これに限定されず、所望の数のインクカートリッジを搭載することができる。
【0097】
なお、インクカートリッジ3は、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものに限らず、これに替えて例えば、プリンター1の筐体側に装着しインク供給チューブを介してインクジェットヘッド2に供給するタイプのものであってもよい。
【0098】
キャリッジ4は、主走査方向に架設された支持部材であるガイドロッド9に支持された状態で取り付けられたものである。また、キャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するものである。
【0099】
リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上における位置を信号で検出するものである。この検出された信号は、位置情報として制御装置CONTに送信されるようになっている。制御装置CONTは、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいてインクジェットヘッド2の走査位置を認識し、インクジェットヘッド2による記録動作(吐出動作)などを制御するようになっている。また、制御装置CONTは、キャリッジ4の移動速度を可変制御可能な構成となっている。
【0100】
図2は、本実施形態に係るインクジェットヘッド2におけるノズル面21Aを示す概略図である。図2に示すように、インクジェットヘッド2は、ノズル面21Aを備える。インクの吐出面でもあるノズル面21Aには、複数のノズル列16が配列されている。複数のノズル列16は、ノズル列毎に、インクを吐出するための複数のノズル孔17からなる。
【0101】
複数のノズル列16は、ノズル列毎に、例えば異なる組成のインクを吐出可能になっている。図2の例では、ノズル列がインクの組成に対応して4列設けられており、各ノズル列が主走査方向に沿って配列されている。具体的には、顔料インクを吐出可能なノズル列16A、第1染料インクを吐出可能なノズル列16B、第2染料インクを吐出可能なノズル列16C、第3染料インクを吐出可能なノズル列16Dからなる。
【0102】
図2の例では、ノズル列16A〜16Dは、それぞれ、ノズル面21上で主走査方向に対して直交する方向に延びているが、これに限定されず、ノズル面21内で主走査方向に対して直交する方向に角度を与えられて配置されていてもよい。
【0103】
吐出されるインクの種類をノズル列毎に変更するためには、例えば、インクカートリッジ3a〜3dの配列順序を入れ替えることによって行うことができる。
【0104】
ノズル孔17は、所定のパターンで複数配列されることにより、ノズル列を形成する。本実施形態では、ノズル孔17は、ノズル面21Aにおける主走査方向と直交する方向に沿って並列に配置されているが、これに限定されず、例えばノズル面21Aにおける主走査方向と直交する方向に沿ってジグザグ状に配置されていてもよい。なお、ノズル列を構成するノズル孔17の数は、特に限定されるものではい。
【0105】
図3は、本実施形態におけるインクジェットヘッド2の内部構成を示す部分断面図である。
【0106】
図3に示すように、インクジェットヘッド2は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22と、を備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21と、を備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31と、を形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33と、を備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28と、が形成される。
【0107】
上記構成、即ちピエゾ式のインクジェットヘッド2によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル孔17から、インクが吐出される。
【0108】
なお、本実施形態のプリンター1では、ピエゾ式のインクジェットヘッド2を備えたものを例として説明したが、これに限られず、例えばバブルジェット(登録商標)式のインクジェットヘッド等を備えたものを用いてもよい。
【0109】
図1に戻り、インクジェットヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、インクジェットヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、キャップ部材12およびワイピング部材13を含むメンテナンスユニット11が設けられている。
【0110】
メンテナンスユニット11は、印字動作以外でインクジェットヘッド2をキャップ部材12でキャッピングしてインクの蒸発を抑制する保湿動作と、インクジェットヘッド2の各ノズル孔17からインクをキャップ部材12に予備吐出させることで増粘インクによるノズル孔17の目詰まり防止やノズル孔17のメニスカスを調整してインクジェットヘッド2から正常にインクを吐出させるフラッシング動作と、キャップ部材12でインクジェットヘッド2をキャッピングした後に不図示の吸引ポンプを駆動させて各ノズル孔17から粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を強制吸引してメニスカスを調整し、インクジェットヘッド2から正常にインクを吐出させる吸引動作(ヘッドクリーニング)と、インクジェットヘッド2のノズル面21A(図2参照)をワイプ部材13で払拭(ワイピング)することでノズル孔17近傍に付着したインクや増粘したインク等を除去したり、ノズル孔17のメニスカスを破壊してメニスカスを再調整させるパージ処理を行うワイピング動作と、を実行する構成となっている。
【0111】
図1の例では、ワイプ部材13は、メンテナンスユニット11が設けられた領域のうち、印刷領域側に設置されている。また、図2に示すように、ワイプ部材13は、ノズル面21Aにおけるノズル列16A〜16Dと並列に配置されている。
【0112】
本実施形態における液滴吐出装置で用いる顔料インクおよび染料インクは、上述したような導電率の関係にある。そのため、染料インクおよび顔料インクがワイピング等によりノズル面21Aで混合されても、顔料の凝集が生じにくくなるので、顔料の凝集物によるノズル孔17の詰まり等を低減できる。その結果、本実施形態に係る液滴吐出装置は、吐出安定性に良好なものとなる。
【0113】
2.1.2.ワイピング方法
本実施形態に係るノズル面21Aのワイピング方法について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0114】
まず、インクジェットヘッド2は、ワイピング命令等の指令に従い、主走査方向のS1側に移動を開始する。インクジェットヘッド2がメンテナンスユニット11の印刷領域側に到達した際に、インクジェットヘッド2のノズル面21Aとワイプ部材13とが接触する。そして、インクジェットヘッド2が主走査方向のS1側に移動するにつれて、ノズル列16A、ノズル列16B、ノズル列16C、ノズル列16Dの順に、払拭される。このようにして、ノズル面21Aは、ワイプ部材によって払拭される。
【0115】
なお、インクジェットヘッド2が移動することにより、ワイプ部材13によってノズル面21Aを払拭する方法を示したが、これに限定されず、例えば、ワイプ部材13が移動することによって、ノズル面21Aを払拭してもよい。
【0116】
本実施形態において、ノズル列16A(顔料インクを吐出するためのノズル列)が、各ノズル列のうち最初に払拭される位置に配列されていると、顔料インクを吐出するためのノズル孔17内には、ワイピングによる染料インクの混入が少なくなる。その結果、ノズル列16Aを構成するノズル孔17では、顔料の凝集が少なくなるので、吐出安定性に優れた液滴吐出装置が得られる。
【0117】
また、ノズル列16B、16Cおよび16Dは、第1〜第3染料を吐出するためのノズル列であり、吐出させる染料インクの導電率の低い順に、ノズル列16Aに近接するように配列されることが好ましい。このようにすると、顔料インクの飛沫がノズル面21Aに付着するような場合に、導電率の最も高い染料インクを吐出するノズル列には、顔料インクの飛沫が到達しにくくなる。また、染料インクの飛沫がノズル面21Aに付着するような場合に、顔料インクを吐出するノズル列には、導電率の最も高い染料インクの飛沫が到達しにくくなる。これにより、ノズル面21Aでは、顔料インクと導電率の最も高い染料インクとが混合されにくくなるので、顔料の凝集の発生がより一層少なくなる。
【0118】
また、ノズル列16B〜16Dが吐出させる染料インクの導電率の低い順にノズル列16Aに近接するように配列されている場合に、ノズル面21Aのワイピングは、ノズル列の配列された方向(主走査方向)に沿って、ノズル列16Aから順に行われることが好ましい。このとき、顔料インクと導電率の最も高い染料インクとの混合は、ワイピングの最後に行われる。そのため、仮に当該混合によって凝集物が生じても、既にワイピングの終了したノズル列への凝集物の付着は著しく低減される。その結果、本実施形態に係る液滴吐出装置は、より一層吐出安定性に優れたものとなる。
【0119】
2.2.第2実施形態
本実施形態に係る液滴吐出装置は、ノズル列の配列、ワイピング部材の設置位置、およびノズル面のワイピング方法以外は、第1実施形態と同様である。以下、本実施形態に係る液滴吐出装置について、第1実施形態と同様の構成についてはその説明を省略し、第1実施形態との主要な相違点について説明する。
【0120】
2.2.1.装置構成
図4は、本実施形態に係るインクジェットヘッド2のノズル面121Aを示す概略図である。ノズル面121Aには、複数のノズル列116が配列されている。図4の例では、複数のノズル列116は、顔料インクを吐出するためのノズル列116Aと、染料インクを吐出するためのノズル列116Bと、からなる。なお、ノズル列は2列に限らず、さらに設けられていてもよい。
【0121】
ノズル列116Bは、互いに異なる色相の染料インクを吐出するために、ノズル孔117の配列された方向(以下、「B方向」ともいう。)に沿って、所定数のノズル孔117を含む複数の群に分割して用いられる。なお、B方向は、ノズル面121Aにおける主走査方向と直交する方向ともいえる。
【0122】
図4の例では、ノズル列116Bは、6個のノズル孔117を一つの群として分割されており、第1群116a、第2群116bおよび第3群116cからなる。なお、1つの群を構成するノズル孔117の数は、特に限定されるものではない。また、群を構成するノズル孔117の数は、群毎に同一であっても、異なっていてもよい。
【0123】
図示しないが、インクカートリッジは、第1群116aから第1染料、第2群116bから第2染料、第3群116cから第3染料がそれぞれ吐出できるように配置されている。
【0124】
図4の例では、ノズル列116Aおよび116Bは、それぞれ、ノズル面121A上で主走査方向に対して直交する方向に延びているが、これに限定されず、ノズル面121A内で主走査方向に対して直交する方向に角度を与えられて配置されていてもよい。
【0125】
本実施形態では、ワイプ部材113は、メンテナンスユニットが設けられた領域(ホームポジション)のうち、副走査方向の上流側に配置されている(図1参照)。また、図4に示すように、ワイプ部材113は、ノズル面121Aにおけるノズル列116Aおよび116Bの配列方向(ノズル面121Aにおける主走査方向)に沿って配置されている。
【0126】
本実施形態の液滴吐出装置において用いる顔料インクおよび染料インクは、上述した導電率の関係にある。そのため、染料インクおよび顔料インクがワイピング等によりノズル面121Aで混合されても、顔料の凝集が生じにくくなるので、顔料の凝集物によるノズル孔117の詰まり等を低減できる。その結果、本実施形態に係る液滴吐出装置は、吐出安定性に良好なものとなる。
【0127】
2.2.2.ワイピング方法
本実施形態に係るノズル面121Aのワイピング方法について、図1および図4を参照しながら説明する。
【0128】
まず、インクジェットヘッド2は、ワイピング命令等の指令に従い、ホームポジションへの移動を開始する。インクジェットヘッド2がホームポジションまで到達すると、ワイプ部材113は、B方向(副走査方向)に沿って移動してノズル面121Aを払拭する。このとき、ノズル列116Aおよび116Bは、ワイプ部材113によって同時に払拭される。なお、ノズル列116Bでは、第1群116a、第2群116b、第3群116cの順に払拭される。
【0129】
なお、ワイプ部材113が移動することによってノズル面121Aを払拭する方法を示したが、これに限定されない。例えば、ノズル面121Aの払拭は、インクジェットヘッド2を副走査方向に移動できるように設計しておき、インクジェットヘッド2を副走査方向に移動させることによって行われてもよい。
【0130】
ここで、顔料を吐出するためのノズル列116Aと、染料を吐出するためのノズル列116Bと、が近接して設けられていると、ノズル列116Aおよび116Bをノズル孔の配列方向に沿って払拭した際に、顔料インクおよび染料インクが混合される場合がある。このような場合に、顔料インクと染料インクとの導電率が離れていると、顔料インク中に含まれる顔料がノズル孔117内で凝集して、ノズルの吐出不良等を引き起こす場合がある。
【0131】
上記不具合を低減させるために、第1群116a、第2群116bおよび第3群116cは、吐出させる染料インクの導電率の低い順に、ワイプ部材113に払拭されるように配列されていることが好ましい。こうすると、顔料インクと導電率の最も高い染料インクとの混合は、ワイピングの最後に行われる。そのため、仮に当該混合によって凝集物が生じても、既にワイピングの終了したノズル列への凝集物の付着は著しく低減される。その結果、本実施形態に係る液滴吐出装置は、より一層吐出安定性に優れたものとなる。
【0132】
3.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0133】
3.1.インクの調製
3.1.1.顔料インクの調製
(1)顔料分散液の調製
色材としてブラック顔料20質量部、およびイオン交換水80質量部を加えて、混合攪拌した後、サンドミル(安川製作所株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータで分離することにより、顔料分散液を得た。
【0134】
(2)顔料インクの調製
次に、表1に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径10μmのメンブレンフィルターで加圧濾過を行って、ブラック顔料インク(K)を得た。なお、表1に記載されている単位は、質量%である。
【0135】
3.1.2.染料インクの調製
表1に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径1.0μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過を行って、シアン染料インク(C)、マゼンタ染料インク(M)、第1イエロー染料インク(Y1)、第2イエロー染料インク(Y2)を得た。
【0136】
【表1】

【0137】
表1中の各成分は、以下の通りである。
(色材)
・ブラック顔料(エボニックデグザ株式会社製、商品名PrinteX 30をカリウム塩としたもの)
・シアン染料(C.I.ダイレクトブルー108のリチウム塩)
・マゼンタ染料(C.I.アシッドレッド57のリチウム塩)
・第1イエロー染料(C.I.ダイレクトイエロー12のリチウム塩)
・第2イエロー染料(C.I.ダイレクトイエロー142のリチウム塩)
なお、上記の金属塩はいずれも常法により処理することで得た。
(浸透促進剤)
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル
(保湿剤)
・1,2−ヘキサンジオール
・グリセリン
・トリエチレングリコール
・トリメチロールプロパン
・2−ピロリドン
(界面活性剤)
・アセチレングリコール系界面活性剤A(商品名「オルフィン E1010」、日信化学工業株式会社製)
・アセチレングリコール系界面活性剤B(商品名「サーフィノール 104」、Air Products and Chemicals. Inc.社製)
(pH調整剤)
・トリエタノールアミン
・水酸化カリウム
(水)
・イオン交換水
【0138】
3.2.評価試験
3.2.1.導電率の測定
顔料インクおよび各染料インクの20℃における導電率を、導電率計DS−52(商品名、株式会社堀場製作所)によって測定した。測定結果を表1に併せて示す。
【0139】
3.2.2.吐出安定性の評価
(1)実施例1
図1で示したプリンター1と同様の構成となるように、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、商品名「PX−B500」)を改造したものを用いて、顔料インク(K)、シアン染料インク(C)、マゼンタ染料インク(M)および第1イエロー染料インク(Y1)をそれぞれ、専用インクカートリッジに充填した。
【0140】
そして、(a)顔料インクおよび全ての染料インクを用いたチェック印字、(b)ノズル面の吸引動作(ヘッドクリーニング)およびノズル面のワイピング、(c)顔料インクおよび全ての染料インクを用いたチェック印字、(d)インクジェットプリンターの24時間放置、という(a)〜(d)の各操作をこの順に10サイクル行った。
【0141】
なお、インクを吐出するためのノズル列の配列、およびノズル面のワイピング方向は、図5に示す通りである。図5は、実施例1および比較例1(後述)で用いるインクジェットヘッドのノズル面を示す概略図である。
【0142】
その後、顔料インクおよび全ての染料インクをノズルから吐出させて、チェック印字を行い、ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりの有無を確認することにより、吐出安定性の評価を行った。評価結果を表2に示す。また、評価基準の分類については、以下のとおりであり、A以上の評価で実用上の使用に問題ない程度の吐出安定性を備えているといえる。
「AA」:ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりがない。
「A」:ノズル抜けはないが、インクの飛行曲がりが僅かに認められる。
「B」:ノズル抜けが僅かに認められ、インクの飛行曲がりが認められる。
「C」:ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりが認められる。
【0143】
(2)実施例2
実施例2では、インクを吐出するためのノズル列の配列、およびノズル面のワイピング方向を図6に示すようにした以外は、実施例1と同様にした。図6は、実施例2および比較例5(後述)で用いるインクジェットヘッドのノズル面を示す概略図である。
【0144】
(3)実施例3
実施例3では、インクを吐出するためのノズル列の配列、およびノズル面のワイピング方向を図7に示すようにした以外は、実施例1と同様にした。図7は、実施例3および比較例6(後述)で用いるインクジェットヘッドのノズル面を示す概略図である。
【0145】
(4)比較例1
比較例1では、第1イエロー染料インク(Y1)に代えて第2イエロー染料インク(Y2)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0146】
(5)比較例2
比較例2では、第1イエロー染料インク(Y1)に代えて第2イエロー染料インク(Y2)を用いた以外は、実施例2と同様にした。
【0147】
(6)比較例3
比較例3では、第1イエロー染料インク(Y1)に代えて第2イエロー染料インク(Y2)を用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0148】
3.3.評価結果
以上の評価試験の結果を表2に示す。
【0149】
【表2】

【0150】
表2の実施例1〜3の液滴吐出装置は、いずれも顔料インクの導電率[E(mS/cm)]と染料インクの導電率[E(mS/cm)]との関係が0<(E−E)≦3の関係を満たす。そのため、実施例1〜実施例3の液滴吐出装置は、吐出安定性試験の結果から、吐出安定性が良好であることが示された。これにより、顔料インクおよび染料インクが混合されても、顔料の凝集が生じにくいことが示された。
【0151】
特に、実施例1および実施例3のように、吐出される染料インクの導電率の低い順にノズル面のワイピングが行われると、吐出安定性に特に優れることが示された。
【0152】
一方、表2の比較例1〜3の液滴吐出装置は、いずれも顔料インクの導電率[E(mS/cm)]と染料インクの導電率[E(mS/cm)]との関係が0<(E−E)≦3の関係を満たさない。そのため、吐出安定性試験において、ノズル抜けや飛行曲がりが発生した。これにより、顔料インクおよび染料インクの混合により、顔料の凝集が生じていることが示された。
【0153】
特に、比較例2のように、導電率差の大きい顔料インクおよび染料インクを吐出するノズル列が隣接していると、吐出安定性が著しく低下することが示された。
【0154】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0155】
1…プリンター、2…インクジェットヘッド、3(3a,3b,3c,3d)…インクカートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、6…被記録媒体、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、9…ガイドロッド、10…リニアエンコーダ、11…メンテナンスユニット、12…キャップ部材、13,113…ワイプ部材、16,116…複数のノズル列、16A,16B,16C,16D,116A,116B…ノズル列、17,117…ノズル孔、18…ヘッド本体、19…振動板、20…流路基板、21…ノズル基板、21A,121A…ノズル面、22…流路形成ユニット、23…収容空間、24…駆動ユニット、25…圧電素子、26…固定部材、27…ケーブル、28…内部流路、29…共通インク室、30…インク供給口、31…圧力室、32…島部、33…コンプライアンス部、116a…第1群、116b…第2群、116c…第3群、CONT…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部材を有する液滴吐出装置であって、
前記ヘッド部材は、ノズル面を備え、
前記ノズル面には、第1ノズル列および第2ノズル列を含む複数のノズル列が配列されており、
前記ノズル列は、所定のパターンで配列された複数のノズル孔からなり、
前記第1ノズル列は、水および顔料を含有する顔料インクを吐出し、
前記第2ノズル列は、水および染料を含有する染料インクを吐出し、
前記顔料インクの導電率[E(mS/cm)]と、前記染料インクの導電率[E(mS/cm)]と、の関係は、 0<(E−E)≦3 である、液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、前記ノズル面を払拭するためのワイプ部材を有する、液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1ノズル列は、前記ノズル面に配列された前記複数のノズル列のうち、最も端に配列される、液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第2ノズル列は、複数種の染料インクを異なるノズル列から吐出させるために、複数備えられ、
複数の前記第2ノズル列は、吐出させる染料インクの導電率の低い順に、前記第1ノズル列に近接するように配列される、液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項において、
前記ワイプ部材は、前記複数のノズル列の配列された方向に沿って、前記第1ノズル列から順に前記ノズル面を払拭する、液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
第2ノズル列は、複数種の染料インクを吐出するために、ノズル孔の配列された方向に沿って、所定数のノズル孔を含む群毎に分割して用いられ、
前記群は、吐出させる染料インクの導電率の低い順に、前記ノズル孔の配列された方向に沿って配列される、液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記ワイプ部材は、前記ノズル孔の配列された方向に沿って、導電率の低い染料インクを吐出する前記群から順に前記ノズル面を払拭する、液滴吐出装置。
【請求項8】
水および顔料を含有する顔料インクと、
水および染料を含有する染料インクと、
を有し、
前記顔料インクの導電率[E(mS/cm)]と、前記染料インクの導電率[E(mS/cm)]と、の関係は、 0<(E−E)≦3 である、インクセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−10197(P2013−10197A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142926(P2011−142926)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】