説明

液滴生成技術

本発明は、一般に液滴を生成するシステムおよび方法に関連する。上記液滴は、例えば、ライブラリとして使用するために様々なスピーシーズを含んでいてもよい。いくつかの場合では、フローフォーカシング技術のような技術を使用して、少なくとも1つの液滴が複数の液滴を生成するために使用される。一実施形態では、様々なスピーシーズを含む複数の液滴は、分割され、様々なスピーシーズを液滴中に含む液滴の集合体を生成しうる。特定の実施形態では、液滴の集合体は、すべてそこに同じスピーシーズを含む液滴の様々な部分母集団を含んでいてもよい。液滴のそのような集合体は、いくつかの場合では、ライブラリとして使用されてもよく、あるいは、他の目的に使用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、ウェイツらによって「液滴生成技術」という発明の名称で2009年10月27日に出願された米国仮特許出願第61/255,239号の利益を主張する。この米国仮特許出願は、参照によって本出願に組み込まれている。
【政府の支援】
【0002】
本発明は、米国国立科学財団によって授与されたDMR−0820484の下、米国政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明について一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本発明は、一般的に、液滴を生成するためのシステムおよび方法に関する。上記液滴は、例えばライブラリとして使用するための様々なスピーシーズ(species)を含んでいてもよい。
【0004】
多くのマイクロ流体プロセスの1つのコンポーネントは、複数の単分散液滴である。従来技術により複数の液滴を生成するために、ブルートフォース(brute force)アプローチが一般に使用される。例えば、いくつかのプロセスでは、試薬のそれぞれの所望の組み合わせは、単一の単分散液滴メーカを使用して、それぞれ乳化されるに違いない。そして、すべての乳化は、単一のエマルションライブラリ(emulsion library)を生成するためにプール(pool)される。これは、小さなライブラリでさえ、長く、退屈で、高価なプロセスだろう。さらに、各要素の連続した手動の乳化のために、液滴の大きさについて高い均一性を維持するのは非常に難しいだろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一般的に、液滴を生成するシステムおよび方法に関する。上記液滴は、例えばライブラリの生成のための様々なスピーシーズを含んでいてもよい。本発明の内容は、いくつかの場合では、相互関係があった生成物、特有問題の代替解決案、および/または、1以上のシステムおよび/または製品の複数の異なる用途を含む。
【0006】
1つの局面では、本発明は、方法に向けられる。一実施形態では、複数の液滴を生成する方法は、第2の流体によって実質的に囲まれている第1の流体を有する少なくとも1つの液滴を供給することと、上記少なくとも1つの液滴をマイクロ流体チャネルに通して複数の分割液滴を生成することとを含む。
【0007】
別の局面では、本発明は製品に向けられる。一実施形態では、上記製品は、複数の液滴を含む流体を備え、液滴の少なくともいくつかは、区別可能な組成物を有している。また、上記製品は、上記流体内に含まれた複数の液滴を使用して分割液滴を生成できるフローフォーカシング(flow-focusing)デバイスを備え、生成された分割液滴は、上記液滴の約5%以内が上記液滴の平均直径の約10%よりも大きい直径を有するような直径の分布を有する。
【0008】
本発明の他の利点および新たな特徴は、添付図面と共に考慮されたとき、発明の様々な非限定的な実施例についての以下の詳細な説明から明白になるだろう。本明細書および参照によって組み込まれた文書が、対立するおよび/または一貫しない開示を含んでいるとき、本明細書がコントロールするものとする。参照によって組み込まれた2以上の文書が、互いに関して対立するおよび/または一貫しない開示を含んでいるとき、その後の有効なデータを有する文書がコントロールするものとする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の非限定的な実施形態は、概要であって一定の比率で描かれるように意図されていない添付の図面に関する一例によって記載される。上記図では、それぞれ、説明された同一か、ほとんど同一のコンポーネントが、単一の数で通例表わされている。明確さの目的のために、すべての図の中で、すべてのコンポーネントに符号が付されているとは限らず、また、本発明の各実施形態のすべてのコンポーネントは、当業者が本発明を理解するのに図示が必要ではないところで示されていない。
【0010】
【図1】本発明の非限定的な実施形態に係る液滴の集合体の組成物を示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る実質的に区別不能な液滴の2つのグループを有する液滴の集合体のイメージを示す図である。
【図3A】本発明のさらに別の実施形態に係る、実質的に区別不能な液滴の2つのグループを有する大きな多分散液滴の集合体のイメージを示す図である。
【図3B】本発明の非限定的な実施形態に係る、マイクロ流体フィルタのイメージを示す図である。
【図4A】本発明の非限定的な実施形態に係る、複数の液滴の緑色および赤色チャネルイメージをそれぞれ示す図である。
【図4B】本発明の非限定的な実施形態に係る、複数の液滴の緑色および赤色チャネルイメージをそれぞれ示す図である。
【図5A】図4A−4Bにそれぞれ示す緑色および赤色チャネルイメージの強度ヒストグラムを示す図である。
【図5B】図4A−4Bにそれぞれ示す緑色および赤色チャネルイメージの強度ヒストグラムを示す図である。
【図5C】図5Aからの緑色強度対図5Bからの赤色強度のプロットを示す図である。
【図6A】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を示す図である。
【図6B】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を示す図である。
【図6C】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を示す図である。
【図6D】マイクロ流体フィルタ中に存在する可能性があるポスト形状の非限定的な実施例を説明する図である。
【図7A】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を説明する図である。
【図7B】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を説明する図である。
【図7C】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を説明する図である。
【図7D】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を説明する図である。
【図7E】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を説明する図である。
【図7F】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を説明する図である。
【図7G】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を説明する図である。
【図7H】マイクロ流体フィルタの非限定的な実施例を説明する図である。
【図8】膜乳化の非限定的な実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、一般的に、液滴を生成するためのシステムおよび方法に関する。上記液滴は、例えばライブラリ(library)として使用するための様々なスピーシーズを含んでいてもよい。いくつかの場合では、少なくとも1つの液滴は、フローフォーカシング技術のような技術を使用して、複数の液滴を作成するために使用される。一実施形態では、様々なスピーシーズを含む複数の液滴は、分割されて、様々なスピーシーズを液滴中に含む液滴の集合体(collection)を生成しうる。液滴の集合体は、特定の実施形態によれば、全てがその中に同じスピーシーズのものを含む液滴の様々な部分母集団を含んでいてもよい。液滴のそのような集合体は、いくつかの場合ではライブラリとして使用されてもよく、あるいは他の目的に使用されてもよい。
【0012】
1つの局面では、本発明は、複数の液滴を生成するために技術を提供する。少なくともいくつかの液滴は、核酸プローブまたはセルのように、少なくとも1つのスピーシーズを液滴中に含んでいてもよい。一実施形態において、第2の流体に実質的に囲まれている第1の流体を有する少なくとも1つの液滴が供給される。いくつかの場合では、第1の流体と第2の流体とは、実質的に混合しない。例えば、液滴は、水を基剤とする液体を含んでいてもよいし、油を基剤とする液体によって実質的に囲まれていてもよい。他の構成は、以下に詳述する。上記液滴は、複数の液滴に分割されてもよい。例えば、以下に述べるように、上記液滴をマイクロ流体チャネルに通すことにより、およびフローフォーカシング技術または他の技術を使用することにより、上記液滴がより小さな複数の液滴を生成する。これは、複数の流入液滴のために繰り返されてもよいし、いくつかの場合では、いくつかの液滴あるいはすべての液滴が様々なスピーシーズを含んでいてもよい。特定の例では、そのように生成された液滴が一緒に集められて、例えばエマルションを生成してもよい。様々なスピーシーズを含む異なる液滴が使用されれば、もたらされた集合体は、複数のグループの液滴を有してもよい。各グループ内の上記液滴は、実質的に区別不能であるが、液滴の各グループは、例えば液滴の各グループ内に含まれる異なるスピーシーズにより、液滴の他のグループと区別可能である。いくつかの場合では、そのような集合体が様々なスピーシーズを含む液滴のライブラリを生成するのに使用されてもよい。
【0013】
実質的に区別不能な液滴の複数のグループを含むエマルションの生成に向けられた非限定的な実施例が、図1に示される。図1では、6つの区別可能な流体(例えば6つの区別可能なスピーシーズを含んでいる流体)が与えられ、各流体は、コンテナ16のうちの1つに収容される。(そのような6つの流体およびコンテナは、実施例のような方法のみによりここで供給される。以下に述べるように、コンテナまたは流体の他の数は、本発明の他の実施例の中で使用されうる)。例えば、異なる組成物、および/または同じ組成物だが流体中に異なるスピーシーズが含まれるもの、および/または同じスピーシーズだが異なる濃度のものを有するとして、上記流体は区別可能であってもよい。例えば、コンテナ161は、第1の流体、およびこの第1の流体に含まれる第1のスピーシーズを含んでいてもよい。一方、コンテナ162は、第1の流体、およびこの第1の流体に含まれる第2のスピーシーズを含んでいてもよい。あるいは、コンテナ162は、第1のスピーシーズまたは異なるスピーシーズを含む第2の流体を含んでいてもよい。あるいは、コンテナ162は、コンテナ161と異なる濃度で、第1の流体および第1のスピーシーズを含んでいるなどでもよい。上記コンテナは、任意の適切な技術(例えば自動ピペットで移す技術、ロボットなどのような自動技術)も使用して、満たされてもよい。あるいは、上記流体は、コンテナ16あるいはアプローチの任意の適切な組み合わせに、手動で加えられてもよい。
【0014】
その後、コンテナ16内の流体は、コンテナ16からの流体と実質的に混合しない運搬流体24で満たされた共通コンテナ4に注がれる。コンテナ16からの流体は、共通コンテナ4に任意の適切な順番、例えば、連続して、同時に、などで加えられてもよい。したがって、共通コンテナ4は、この例において、様々なコンテナ16からの流体を含む複数の液滴を含む。いくつかの場合では、共通コンテナ4内の液滴がエマルションを生成してもよい。注目すべきは、いくつかの実施形態では、以下に述べられるように、エマルション2は、この実施例では共通コンテナ4への流体の追加によって生成されるが、他の方法がエマルション2を生成するために使用されてもよい。
【0015】
さらに、図1に示される実施例を参照して、共通コンテナ4からの液滴12は、その後、チャネル18を通り抜け、複数の液滴14は、液滴メーカ10を使用して、液滴12から生成される。そのような液滴メーカの例は、以下で詳述される。図1に示すように、液滴メーカ10は、チャネル18とそれぞれ交差するチャネル20および22を含む。チャネル20および22は、それぞれ外部の流体を含む。チャネル18内の流体のまわりの外部の流体のフロー10は、流体を複数の液滴14を生成するために分割させる。しかしながら、液滴メーカ10は、本明細書では、ほんの一例として示される。つまり、本発明の他の実施例では、異なるチャネルを含む他の液滴メーカ構成を使用できる。いくつかの実例では、液滴14は、実質的に単分散か、あるいはそうでなければ、平均直径または平均体積の狭い範囲を有していてもよい。その後、液滴14は、集合体チャンバー8に流れ込む。
【0016】
その後、これは、集合体チャンバー4内の他の液滴を使用して繰り返されうる。例えば、第1の液滴30は、分割されて、第1の複数の分割液滴を生成してもよいし、第2の液滴32は、分割されて、第2の複数の分割液滴を生成してもよい。異なる複数の液滴からの液滴は、お互いに区別可能かもしれないが、複数の分割されたそれぞれの液滴中のそれぞれの液滴は、実質的に区別不能かもしれない。分割後の液滴はすべて、図1に示されるように、液滴6(例えばエマルション)の集合体を生成するために任意に混合されて、集合体チャンバー8内に集められてもよい。いくつかの場合では、液滴6の集合体が、それぞれが複数の液滴内に含まれるスピーシーズのライブラリを明確にしてもよい。また、液滴6の集合体は核酸、セルなどの分析に使用されてもよい。
【0017】
上記のように、分割の前の液滴のグループ(および/または第1の複数の分割液滴および第2の複数の分割液滴)は、例えば、液滴および/または液滴を生成する流体内に含まれるスピーシーズの組成物および/または濃度に基づいて、いくつかの方法で区別されてもよい。例えば、第1の液滴は、第1の流体から構成されて、第1のスピーシーズを含んでいてもよい。また、第2の液滴は、同じ第1の流体を含み、第1のスピーシーズおよび第2のスピーシーズがお互いに関して区別可能な第2のスピーシーズを含んでいてもよい。あるいは、第2の液滴は、第1のスピーシーズを、第1の液滴等と実質的に異なる濃度で含んでいてもよい。本発明の液滴内に組み込まれうるスピーシーズの非限定的な例は、核酸(例えばsiRNA、RNAi、DNAなど)、タンパク質、ペプチド、酵素、ナノ粒子、量子ドット、香料、タンパク質、指示薬、染料、蛍光試料、化学薬品、細胞、粒子、製剤粒子、薬品、後述する強化のための前駆体スピーシーズなどを含むが、これらに限定されない。スピーシーズは、液滴を含む流体および/または実質的に液滴を取り巻く流体中に実質的に可溶または可溶ではない。
【0018】
いくつかの場合では、第1の液滴および第2の液滴(例えば、液滴および/または分割の前の第1の液滴および第2の液滴から生成された、第1の分割液滴および第2の分割液滴)は、同じ組成物を実質的に有していてもよい。本明細書で使用されているように、「実質的に同じ組成物」は、例えば、同じ濃度で同じ組成物(例えば、流体、ポリマー、ゲルなど)を本質的に有する少なくとも2つの液滴のことをいい、実質的に区別不能なスピーシーズの組成物および/または濃度を有する液滴内に含まれる任意のスピーシーズも含む。上記液滴は、同一のまたは異なる直径を有していてもよい。いくつかの場合では、実質的に同じ組成物を有している2つの液滴は、液滴の平均的な組成物に対して、約0.5%以内、約1%以内、約2%以内、約3%以内、約4%以内、約5%以内、約10%以内、約20%以内等の異なる組成物を有していてもよい。
【0019】
いくつかの場合では、液滴は、1以上のタイプのスピーシーズを含んでいてもよい。例えば、液滴は、少なくとも約2つのタイプ、少なくとも約3つのタイプ、少なくとも約4つのタイプ、少なくとも約5つのタイプ、少なくとも約6つのタイプ、少なくとも約8つのタイプ、少なくとも約10のタイプ、少なくとも約15のタイプ、少なくとも約20のタイプ等のスピーシーズを含んでいてもよい。液滴内に含まれる各タイプのスピーシーズの総数は、必ず等しい、あるいは等しくないかもしれない。例えば、いくつかの場合では、2つのタイプのスピーシーズが液滴内に含まれているとき、上記液滴内に含まれる略等しい数の第1のタイプのスピーシーズおよび第2のタイプのスピーシーズがあってもよい。他の場合では、第1のタイプのスピーシーズは、第2のタイプのスピーシーズよりも多量、または少量存在してもよい。例えば、1つのスピーシーズの別のスピーシーズに対する比率は、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:10、約1:20、約1:100等であってもよい。液滴の各グループにおける各タイプのスピーシーズの数は、等しい、あるいは等しくない。例えば、グループの第1の液滴は、第1のタイプのスピーシーズのうちの1つ、および第2のタイプのスピーシーズのうちの1つを含んでいてもよい。また、上記グループの第2の液滴は、1以上の第1のタイプのスピーシーズおよび1以上の第2のタイプのスピーシーズを含んでいてもよい。いくつかの場合では、複数の液滴が少なくとも4つの区別可能なスピーシーズを含むように、上記液滴の約1%以内、約2%以内、約3%以内、約5%以内、約10%以内などが、少なくとも4つの区別可能なスピーシーズのうちの2スピーシーズ以上を液滴に含むように、上記液滴は生成されてもよい。本明細書に記載されているように、上記区別可能なスピーシーズは、4つの区別可能な核酸、同定要素あるいはタンパク質だろう。いくつかの場合では、液滴は、一種類以上のタイプのスピーシーズを含んでいてもよい。例えば、液滴は、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約50、少なくとも約100等の数の単一のスピーシーズを有していてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、液滴の集合体が、少なくとも約2、少なくとも約4、少なくとも約10、少なくとも約30、少なくとも約50、少なくとも約64、少なくとも約128、少なくとも約1024、少なくとも約4096、あるいは少なくとも約10,000以上の区別可能な液滴のグループを有し、この液滴の各グループは、1つ以上の区別不能な液滴を含んでいる。各グループにおける液滴の数は、ほぼ等しい、あるいは、等しくない。
【0021】
上記液滴(例えば分割前後)は、多分散、単分散、または実質的に単分散(例えば、均一な直径分布を有する)であってもよい。複数の液滴は、実施例において実質的には単分散である。この実施例では、液滴の約10%以内,約5%以内,約4%以内,約3%以内,約2%以内,約1%以内あるいはそれ以下は、全ての液滴の平均直径の約20%,約30%,約50%,約75%,約80%,約90%,約95%,約99%、またはそれ以上より大きい、または小さい直径となるような直径分布を有する。本明細書で使用されるように、液滴の母集団の「平均直径」は、上記液滴の直径の算術平均である。当業者は、例えばレーザー光散乱あるいは他の既知の技術を使用して、液滴の母集団の平均直径を決定することができる。いくつかの実施形態では、分割後の複数の液滴は、実質的に単分散、あるいは、分割前の液滴が多分散であるのに対して単分散である。理論によって拘束されるつもりはないが、本発明の或る実施例における技術の1つの利点は、分割後の液滴の実質的に単分散の集合体が、多分散の複数の液滴から生成されてもよいということである。いくつかの場合では、分割後の液滴から生成される液滴の数が多ければ多いほど、上記液滴が多分散である実施例においてさえ、分割後の全液滴が実質的に単分散になる可能性が大きくなる。
【0022】
当業者は、本出願により、液滴などから生成される、分割液滴の所望の直径および/または数のような要因によって、液滴の適切なサイズを決定することができるだろう。いくつかの場合では、分割前の液滴は、約500マイクロメートルよりも大きい、約750マイクロメートルよりも大きい、約1ミリメートルよりも大きい、約1.5ミリメートルよりも大きい、約2ミリメートルよりも大きい、約3ミリメートルよりも大きい、約5ミリメートルよりも大きい、またはそれよりも大きい平均直径を有し、また、複数の分割液滴は、約1000マイクロメートル未満、約750マイクロメートル未満、約500マイクロメートル未満、約400マイクロメートル未満、約300マイクロメートル未満、約200マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約50マイクロメートル未満、約25マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、あるいはそれよりも小さい平均直径を有している。いくつかの実施例では、少なくとも約5,少なくとも約10,少なくとも約20,少なくとも約25,少なくとも約50,少なくとも約75,少なくとも約100,あるいはそれ以上の分割液滴が、液滴から生成される。いくつかの場合では、約5と約100との間で、約10と約100との間で、約10と約50との間で、あるいは約50と約100との間等で、液滴が単一の液滴を分割することにより生成される。
【0023】
複数の液滴(例えば分割前)は、任意の適切な技術を使用して生成されてもよい。例えば、液滴は、個々の液滴を生成するために液体を振るか混ぜるかすることにより、個々の液滴を含むサスペンションまたはエマルションを生成すること、または、ピペット技術、あるいは針等によって液滴を生成することにより、生成されてもよい。液滴の生成についての他の非限定的な例は、「流体分散のための方法および装置」という発明の名称で、ストーンらによって2004年12月28日に出願された米国特許出願第11/024,228号に開示され、2005年8月11日に発行された米国特許出願公開公報第2005/0172476号に記載されたもの;「流体のスピーシーズの生成および制御」という発明の名称で、リンクらによって2005年10月7日に出願された米国特許出願第11/246,911号に開示され、2006年7月27日に発行された米国特許出願公開公報第2006/0163385号に記載されたもの;「流体のスピーシーズの電子制御」という発明の名称で、リンクらによって2006年2月23日に出願された米国特許出願第11/360,845号に開示され、2007年1月4日に発行された米国特許出願公開公報第2007/0003442号に記載されたもの;あるいは、「流体のスピーシーズの操作のための方法および装置」という発明の名称で、2008年6月26日に出願された国際特許出願第PCT/US2008/007941号に開示され、2009年1月8日に発行された国際特許公開公報第WO2009/005680号に記載されたものが、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれている。
【0024】
上記のように、いくつかの場合では、複数の分割液滴が、液滴メーカに関連したマイクロ流体チャネルを通過することにより、液滴から生成されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の液滴が、マイクロ流体チャネルへの入り口を有するか、あるいはマイクロ流体チャネルと流体連通している貯留部に供給されてもよい。第1の流体を有するとともに実質的に運搬流体によって囲まれる液滴は、マイクロ流体チャネルに入ってもよい。液滴が、マイクロ流体チャネルよりも直径に関して十分に大きい実施例では、上記液滴は、例えばマイクロ流体チャネル内の液体の流れを生成するために圧縮されてもよい。複数の液滴は、上記液滴メーカによって、マイクロ流体チャネル内の流入流体(例えば流体の流れとして)から生成されてもよい。これは、液滴メーカに入る流体が本質的に連続的であるシステムにおけるのと同様のプロセスであってもよい。したがって、第1の複数の液滴は、第1の液滴(例えば、流体の流れとしてマイクロ流体チャネル内に存在する)から生成されてもよい。その後、第2の液滴は、マイクロ流体チャネルに入ってもよく、また、このプロセスは繰り返されてもよい。それによって、第2の液滴から第2の複数の液滴を生成し、第2の複数の液滴は、第1の複数の液滴から区別可能であってもよい。これは、液滴の任意の数で繰り返されてもよく、この液滴は、他の液滴から区別可能、あるいは区別不能であってもよい。
【0025】
いくつかの場合では、分割液滴の生成が並列処理されてもよい。例えば、複数の液滴を有する1以上の貯留部は、液滴メーカを有する1以上のマイクロ流体チャネルに関連していてもよく、それによって、一度に1以上の液滴から、分割液滴を生成することができる。いくつかの場合では、貯留部は、それぞれ、1,2,3,4,5,10,20あるいはそれ以上のマイクロ流体チャネルおよび/または液滴メーカに関連していてもよい。そのようなシステムの1つの例は、「マイクロ流体デバイスのスケールアップ」という発明の名称でM.ロマノフスキーらによって2009年3月13日に出願された米国仮特許出願第61/160,184号に開示されており、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0026】
当業者は、マイクロ流体チャネル内の流体の流れから(例えば液滴から)液滴を生成することに適した他のシステムおよび方法に気づくだろう。例えば、実施形態の1セットでは、流体の液滴は、個々の液滴を生成するために流体を導入することができる態様で、チャネル寸法を変更することにより、チャネル内の運搬流体によって囲まれている流体から生成されうる。例えば、上記チャネルは、流れの方向に対して拡大するチャネルであってもよく、例えば、上記流体は、チャネル壁に付着せず、その代わりに個々の液滴を生成する。また、上記チャネルは、流れの方向に対して狭くするチャネルであってもよく、例えば、上記流体は、個々の液滴内に合体させられるチャネルであってもよい。他の実施形態では、内部障害物も液滴の生成をさせるために使用されてもよい。例えば、バッフル(baffles)、リッジ(ridges)、ポスト(posts)などは、上記流体が流体液滴内に合体するような態様で、運搬流体の流れを妨げるために使用されてもよい。マイクロ流体システムと共に使用される他の液滴メーカは、当業者に知られており、T字状ジャンクション液滴メーカ、ミクロの毛状の液滴メーカ(例えば、共同流れ、あるいはフローフォーカス)、あるいは3次元の液滴メーカなどを含むが、これらに限られない。
【0027】
いくつかの場合では、複数の液滴は、ミリ,マイクロ,ナノ流体システムを含むが、これらに非限定的な乳化システム、例えば均質化、膜乳化、シェアセル乳化(shear cell emulsification)、流体乳化などを使用して、生成されてもよい。すなわち、複数の液滴は、デバイスおよび/またはマイクロ流体以外の技術を使用して分割されてもよい。当業者は、そのようなシステムに精通しているだろう。
【0028】
いくつかの場合では、複数の液滴が膜乳化を使用して分割されてもよい。膜乳化は、当業者に知られ、膜(例えば、複数の気孔を有する)によってエマルションが生成されるようになっている第1の流体の通過を一般に含む。実質的に混合できない第2の流体は、膜プレートの外面(例えば、第1の流体が上記膜を出る表面)を通って流出され、図8に示されるように、第1の流体を有する複数の液滴を生成する(例えば、液滴は、膜表面を通る連続相によって分離される)。一般に、第1の流体の流れは、圧力によってコントロールされる。膜乳化が本発明と共に使用される実施形態では、複数の液滴を含む流体は、上記膜を通過してもよい。その後、各液滴は、膜の外面を通過する連続相のフローによって、複数のより小さな液滴に分割される。
【0029】
別の実施形態のセットでは、電荷は、運搬流体によって囲まれている流体について作成されてもよい。それは、上記流体を運搬流体内の個々の液滴に分離させてもよい。したがって、一連の個々の充電および/または運搬流体内の電気的な誘導液滴として存在しうる。適切な技術を使用して、例えば電場(AC、DCなどでもよい)内に上記流体を位置させることによって、および/または上記流体が電荷を有するようにさせる反応、例えば、化学反応、イオン反応、光触媒反応等を生じさせることによって、運搬流体内の流体に電荷が生成されてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態の中では、電場は、電場発生器、つまり上記流体に適用可能な電場を生成できるデバイスまたはシステムから生成される。上記電場発生器は、AC場、DC場(つまり時間に関して一定のもの)、パルス電場などを発生させてもよい。上記電場発生器は、チャネルまたはマイクロ流体チャネルの中に含まれる流体の中で電場を生成するように構築および配置されてもよい。上記電場発生器は、いくつかの実施形態によって、チャネルまたはマイクロ流体チャネルを含む流体システムに統合されてもよく、またはこのシステムから分離されてもよい。本明細書で使用される場合、「統合」とは、互いに対して統合されているコンポーネントの一部が、そのコンポーネントの少なくとも1つを切断または破壊しなければ、上記コンポーネントが手動で分離できないように結合されることを意味する。
【0031】
適切な電場(AC、DCなどでもよい)を生じるための技術は、当業者に公知である。例えば、一実施形態では、電場は、電極の対を横切って電圧をかけることによって生じ、これらの電極は、電場の少なくとも一部が上記流体と相互作用するように、上記流体システム内(例えば、上記チャネルを画定する基質内)に配置もしくは埋め込まれてもよく、および/または上記流体に近接して配置されてもよい。上記電極は、当業者に公知である任意の適切な電極材料から構築することができ、この材料には、銀、金、銅、炭素、白金、銅、タングステン、錫、カドミウム、ニッケル、インジウムスズ酸化物(「ITO」)など、またこれらの合成物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの場合では、透明か、実質的に透明な電極を使用できる。
【0032】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、上記デバイス内に含まれる流体から、例えば、本明細書に記載されているように、複数の液滴を生成する分割に先立って、マイクロ流体チャネル内に含まれる液滴から、少なくとも任意の望まれない粒子状物質の一部を取り除くことを助ける1以上のフィルタを有していてもよい。粒子状物質(例えば、ダスト、粒子、汚れ、残骸、セル残留物、タンパク質凝集体、リポソーム、コロイド粒子、不溶性物質、その他未確認の微粒子など)の除去は、重要かもしれない。なぜなら、マイクロ流体デバイスが比較的狭いチャネルを含むかもしれないし、上記粒子状物質がチャネルを詰まらせたり、閉鎖したりするかもしれないからである。上記粒子状物質は、上記チャネルより大きい、および/または、上記チャネルを通る粒子状物質の輸送が、少なくとも多少妨げられるような形状を有していてもよい。例えば、上記粒子状物質は、チャネルの側面上で「妨げる」あるいはこする部分を有する非均一あるいは非球状の形状を有し、上記粒子状物質のまわりの流体の流れを少なくとも部分的に妨害する形状を有している。いくつかの場合では、複数の粒子状物質は、上記チャネル内のフローの少なくともいくつかの妨げをともに引き起こしてもよい。例えば、上記粒子状物質は、流体の流れを妨げるために上記チャネル内にともに集合してもよい。
【0033】
一般に、本発明の一局面によれば、マイクロ流体フィルタは、複数のポストを有する。いくつかの実施形態では、上記ポストは、チャネル内に配置されてもよい。上記ポストは、流体が上記ポストのまわりを流れるのを許容する一方、任意の望まれない粒子状物質も、ろ過してよい。例えば、図6Aに示すように、マイクロ流体チャネル50は、マイクロ流体チャネルの壁52の間に配置された複数のポスト56を有する。矢印60によって示されるように、流体が残りのギャップの間を流れることができる一方、粒子状物質58は、ポスト56によって捕捉される。(任意に、上記流体は、本明細書に記載されたもののような液滴を含んでもよい。)その後、上記流体は、液滴メーカに入り、および/または、そうでなければマイクロ流体デバイス内で使用されてもよい。
【0034】
いくつかの局面では、図6Aに記載されたフィルタは、液滴(図6Aに図示しない)を含む流体から粒子状物質をろ過するために使用されてもよい。例えば、上記液滴は、上記ポスト間を通過する一方、58のような粒子状物質は、フィルタ内で詰まって、フィルタを通って通過することが妨げられる。特に注目すべきは、図6A中の粒子状物質58のようないくつかの粒子状物質がたとえ存在しても、例えば、図6A中の矢印60によって識別されるように、流体が流れるフィルタを通るいくつかの通過物が存在する限り、上記フィルタは、流体を通過させ、さらなる粒子をろ過することに対して依然として有効であるということである。
【0035】
しかしながら、いくつかの実施形態では、液滴を含む流体をろ過するために使用される図6Aに記載されているようなフィルタは、上記液滴が上記フィルタを通過するとき、大きな液滴を複数の小さな液滴へ分割させてもよい。いくつかの場合では、小さな液滴が多分散であってもよい。例えば、上記液滴は、この液滴がポスト54の間を通過するとき、様々な態様で変形され、または破壊されてもよい。
【0036】
本発明の他の実施形態は、図6Bを参照して示される。この実施形態では、チャネル62は、複数のポスト64を有するフィルタ61を含む。上記フィルタおよびポストは、この実施形態では、チャネル62に関して対称的に配置されなくてもよい。代わりに、この実施形態では、上記ポストがチャネルの一方に実質的に位置するように、上記フィルタが配置される。したがって、例えば、ポストの少なくとも50%、少なくとも70%、あるいは少なくとも90%は、上記チャネルの他方側に対して上記チャネルの一方側に位置している。図6A中に示されるように、いくつかの実施形態では、上記チャネルは、上記ポストを収容するために上記フィルタの周りで広くなってもよい。しかしながら、ポストがチャネルの一方に本質的に置かれる或る配置では、上記チャネルは、非対称の態様で広くなり、つまり、上記チャネルは、上記チャネルの他方側に対して上記チャネルの一方側でより広くなる。フィルタからの出口は、フィルタへの入口に対して実質的に同一直線上に位置することも注目されるべきである。しかしながら、他の実施形態では、上記出口は、上記フィルタの中心、あるいは他方側に位置してもよい。そして/または、上記出口は、上記入口と同じ方向ではない方向に位置してもよい。上記フィルタの形状は、四角形、三角形、長方形、円形等を含む、しかし、これらに非限定的な任意の適切な形状であってもよい。フィルタの形状および構成の非限定的な実施例は、図7A−7Hに示される。
【0037】
いくつかの実施形態では、フィルタは、複数のポストおよび上記ポスト間の複数のギャップを有する。このフィルタでは、各ギャップは、上記フィルタの入口からフィルタの出口への異なる経路長を有する。したがって、任意の理論によって拘束されずに、フィルタの入口からフィルタの出口へのギャップの間を通過する他の経路に対し、各ギャップの間を流れる流体は、異なる流体抵抗を有すると信じられている。そのような配置の結果によって、上記流体が最小の流体比率を有するギャップを通って主に流れる。上記粒子状物質が上記フィルタに入るとき、上記粒子状物質は、このギャップにつかまり、また、上記流体の流れは、流体の流れの最小の抵抗の次の利用可能な経路になる次のギャップの周りに迂回されるだろう。驚いたことに、そのような配置は、さらに上記チャネル内の流体の液滴を正常に維持する間、粒子状物質が除去されることを許容してもよい。そのような配置は、チャネル内の一連のポストを単に生成することにより、予測されたり、期待されたりしなかっただろう。
【0038】
従って、実施形態の1つのセットは、入口と出口との間の複数の異なる経路長を有するフィルタに、一般に向けられている。いくつかの場合では、そのような異なる経路長は、複数のポストおよびこれらのポストの間の複数のギャップを使用して生成されてもよい。上記のように、上記流体の入口および出口は、上記フィルタの片面に位置してもよい。例えば、図6Bの実施例に示されるように、流体62は、ポスト64を含むフィルタ61を通って流れる。上記流体の大半は、最小の流体抵抗を有するギャップ66を通って流れる。図6Cに示されるように、ギャップ66は、粒子状物質72で実質的に閉鎖されるようになるとき、上記流体の大半は、ギャップ74、つまり、次に最小の流体抵抗を有するギャップを通って流れるだろう。一例のフィルタのイメージは、図3Bにも示される。
【0039】
上記フィルタの出口の大きさ、あるいは上記流体が上記フィルタを出てから流れるチャネルの距離の大きさの約20%,約30%,約40%,約50%,約60%,約70%,約80%あるいは約90%であるように、上記ポスト間のギャップの大きさが選択されてもよい。上記大きさは、上記フィルタ中の分離した隣接するポスト間の最小距離として決定されてもよい。いくつかの場合では、ポスト間のギャップの大きさは、上記チャネルの幅の約50%である。上記ポストは、任意の適切な大きさ、形状、および/または数であり、上記フィルタ内の任意の適切な位置に配置されてもよい。形状の非限定的な例は、図6Dに記載され、長方形、正方形、円形、楕円形、台形、涙滴形(例えば正方形と円弧状の底縁の両方を備えたもの)および三角形を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポストの長さは、ポストの幅より実質的に大きくてもよく、あるいは、ポストの幅は、ポストの長さより実質的に大きくてもよい。例えば、上記ポストの長さあるいは幅は、それぞれ、上記ポストの幅あるいは長さの約2倍,約3倍,約4倍,約5倍,約10倍,約15倍,約20倍またはそれ以上であってもよい。いくつかの場合では、上記ポストの長さが上記ポストの幅より実質的に大きいとき、2つのポスト間のギャップは、チャネルを形成してもよい。上記フィルタ内の上記ポストは、同じ大きさ、形状および/または配置でもよいし、そうでなくてもよい。例えば、いくつかの場合では、上記ポストの実質的にすべてが、同じ大きさ、形状および配置を有していてもよいし、その一方で、他の場合では、上記ポストは様々な大きさ、形状および/または配置を有していてもよい。
【0040】
上記フィルタは、約5,約6,約7,約8,約9,約10,約11,約12,約15,約20,あるいはそれ以上のポストを有していてもよい。上記ポストの幅は、上記ポスト間のギャップの大きさとほぼ同じ大きさ、約1.5倍,約2倍,約3倍,約4倍,約5倍,約7倍あるいは約10倍の大きさであってもよい。上記ポストは、例えば図6Bに示されるような直線的配置、および/または、ポストの複数列配置(矩形状、ジグザグ状など)、あるいはポストのランダム配置を含む他の配置がなされてもよい。いくつかの場合では、上記ポストは、チャネルの任意の適切な表面(例えば、チャネルの底、上面および/または壁)に関連していてもよい。いくつかの場合では、上記ポストは、3次元配置がなされていてもよい。いくつかの場合では、マイクロ流体チャネルの高さが変わってもよく、および/または、ポストの高さが変わってもよい。ポストのラインが存在するとき、それらは、上記フィルタの入口および出口に対して約90°あるいは90°以外の角度で配置されてもよい。いくつかの場合では、流体内に存在する粒子状物質の少なくとも約50%,約60%,約70%,約80%,約90%,約95%,約98%あるいはそれ以上が、上記フィルタによって上記流体から除去されてもよい。
【0041】
上記フィルタは、本明細書に記載されたような液滴メーカに関連して記載されているが、上記フィルタは、そのような適用だけに制限されないことが理解されるに違いない。他のマイクロ流体の適用におけるフィルタの使用が粒子状物質の除去が望まれるあらゆる適用(液滴がチャネル内の流体内に存在するかどうか)を含めて検討される。そのような適用の限定しない例は、マイクロ流体適用(例えば「ラボオンチップ(lab-on-a-chip)」の適用),クロマトグラフィー適用(例えばHPLC、アフィニティー・クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除(size exclusion)クロマトグラフィーなどのような液体クロマトグラフィー),半導体生産技術,飲用水適用,インクジェット印刷の適用,酵素の分析,DNA分析などを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、上記フィルタに先立つマイクロ流体チャネルの高さは、急速に減少してもよい(例えば、上記チャネルの高さの急激な短縮)。これにより、少なくともダストの一部あるいは他の粒子状物質が、減少した高さを有するトンネルに入る前に安定する。
【0043】
いくつかの場合では、1以上のチャネルが上記フィルタと交差してもよい。上記チャネルは、上記ポストに先立つ、隣接する、あるいは続く位置で上記フィルタと交差してもよい。いくつかの場合では、上記チャネルは、1セット以上のポスト間に位置してもよい。上記フィルタとのチャネルの関連は、上記フィルタに入る流体からの連続相の追加あるいは抽出を許容してもよい。いくつかの場合では、上記チャネルは、上記フィルタに入る上記流体中に存在する連続相と異なる連続相を導入するために使用されてもよい。いくつかの場合では、上記チャネルは、コンデンサチャネルであってもよい。ここでコンデンサチャネルは、行き止まりのチャネルである。コンデンサチャネルは、液滴メーカ中の圧力を等しくするのを援助し、および/または、高度に単分散した複数の液滴を生成することを援助してもよい。
【0044】
いくつかの場合では、コンポーネントが、泡を縮小することを援助するためにフィルタ(あるいはマイクロ流体システムの他の部分)に関連していてもよい。上記「泡」という用語は、その技術の属する分野における通常の意味が与えられる。上記フィルタあるいはマイクロ流体システム(例えば液滴メーカ)の他の部分における泡の存在は、流体の流れを妨げ、および/または他の障害をもたらす(例えば、上記液滴メーカで生成された液滴の多分散性を増加させる)だろう。いくつかの場合では、上記泡は、ウェッティングパッチ(wetting patch)、電場および/または界面活性剤(例えば、1以上の流体中に存在する)を使用して、減少され、あるいは除去されてもよい。
【0045】
本明細書に記載されているような構成および方法は、様々な適用、例えば、飲食物、健康および化粧品、絵の具およびコーティング、薬およびドラッグデリバリーのような分野と関係のある技術の中で使用されうる。液滴またはエマルションは、例えば、化学反応のコントロール、あるいは例えば進化技術に向けられたインビトロ転写および翻訳といった特定の場合における反応槽としても役立ちうる。さらに、本発明の液滴は、付加反応コンポーネント、例えば、触媒、酵素、抑制剤などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、スピーシーズを含む、複数の分割液滴が、被分析物を決定するのに役立ってもよい。
【0046】
本明細書で使用されるように、「決定」という用語は、一般的には、例えば、定量的、または定性的な標的分析物分子の分析あるいは測定、あるいは標的分析物分子の存在の有無の検知のことをいう。また、「決定」は、例えば、定量的に、または質的に、あるいは相互作用の存在の有無の検知による、少なくとも1つのスピーシーズと1つの標的分析物分子との間の相互作用の分析または測定のことをいってもよい。実施例の技術は、赤外線、吸収、蛍光、UV/可視、FTIR(「フーリエ変換赤外分光」)、またはラマンなどのスペクトル測定;重量測定技術;偏光解析法;圧電測定;免疫測定;電気化学的測定;光学密度測定などの光学測定;偏光分析法;屈折分析;または濁度測定を含むが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの場合では、組成物と方法が標的核酸の配列に役立ってもよい。例えば、標的分析物分子は、核酸でもよい。また、複数の分割液滴内に含まれるスピーシーズは、例えば以下の国際特許出願で開示されたような技術を使用して、上記核酸のシーケンスが決定されるように、核酸プローブのライブラリから選択されてもよい。上記国際特許出願は、「核酸配列用のシステムおよび方法」という発明の名称でウィーツらによって2008年12月19日に出願された国際特許出願第PCT/US2008/013912号、あるいは、「液滴および関連スピーシーズのライブラリの生成」という発明の名称でウィーツらによって2008年9月19日に出願された米国仮特許出願第61/098,674号である。これらは、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示された技術は、複数のグループの液滴を有するエマルションの生成のために使用されてもよく、液滴のそれぞれ異なるグループは、区別可能な核酸プローブを有している。例えば、スピーシーズが核酸プローブを区別するために使用される場合、分割液滴の各グループは、1以上の追加のスピーシーズを有してもよい。いくつかの場合では、液滴のライブラリは、例えば核酸のシークエンシングのために使用されてもよい。例えば、少なくともいくつかの液滴の集合体は、標的核酸を有する液滴と融合され、複数の融合された液滴を生成してもよい。複数の融合された液滴は、当業者に知られている技術(例えば、シークエンシング・バイ・ハイブリダイゼーション(sequencing by hybridization)技術)を使用して、核酸のシーケンスを決定するように分析されてもよい。
【0049】
一実施形態では、複数の区別可能な同定要素は、複数の分割液滴、あるいは核酸プローブ、あるいは他の適切なサンプルを区別するために使用される。本明細書で使用されるように、「同定要素」は、いくつかの態様で、例えば、この同定要素が液滴内に含まれるときに区別されるように決定されうるコンポーネントを含むスピーシーズである。例えば、蛍光性の粒子が使用されるとき、例えば、少なくとも5つの区別可能粒子、少なくとも約10の区別可能粒子、少なくとも約20の区別可能粒子、少なくとも約30の区別可能粒子、少なくとも約40の区別可能粒子、少なくとも約50の区別可能粒子、少なくとも約75の区別可能粒子、あるいは少なくとも約100以上の区別可能粒子を有する1セットの区別可能粒子が最初に決定される。そのようなセットの非限定的な実施例は、Luminex(登録商標)法から利用可能である。区別可能な同定要素は、複数のグループ(例えば2、3、4、5、6あるいは7以上)に分割されてもよい。ここで、各グループは、少なくとも2つの区別可能な同定要素のセットを含んでいる。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明の液滴は、前駆体物質を有し、この前駆体物質は、相変化、例えば、固体化した液滴または流動化した液滴を生成することができる。例えば、液滴は、ゲル前駆体、および/または、ゲルおよび/またはポリマーを有する固体化した液滴を生成するように固体化されうるポリマー前駆体を含んでいてもよい。したがって、上記方法およびプロセスは、いくつかの場合では、複数のグループの粒子(他のグループの粒子から区別可能な各グループの粒子)を含む粒子の集合体を生成するために使用することができる。いくつかの場合では、固体化された液滴は、ゲルまたはポリマー内に流体を含んでいてもよい。液滴は、いずれかの適切な技術を使用して、相変化をさせてもよい。例えば、固体化された液滴は、環境の変化にさらされることにより流体化された液滴を生成してもよい。液滴は、液滴のまわりの環境の変化、例えば、温度の変化、pHレベルの変化、イオン強度の変化、電磁放射(例えば紫外線)の被爆、化学薬品(例えばポリマー中の架橋剤を開裂する化学薬品)の追加などによって流体化または固体化されてもよい。
【0051】
本発明の様々な局面の理解に役立つ様々な定義が与えられる。以下は、これらの定義が組み込まれた、より完全に本発明を記載するさらなる開示である。
【0052】
一実施形態では、キットは、上記組成物の1以上を含有して、提供されてもよい。「キット」は、本明細書で使用されるように、本発明の組成物の、および/または、例えば上記のような本発明に関連する他の組成物の1つ以上を含むパッケージまたはアッセンブリを通例定義する。上記キットの各組成物は、液体形式(例えば溶液)、固体形式(例えば硬化した液滴の乾燥粉末または集合体)などで提供されてもよい。いくつかの場合では、本発明のキットは、説明書が本発明の組成物と関連していることを当業者が認識するような態様で、本発明の組成物と関連して提供される任意の形式の説明書を含み得る。例えば、上記説明書は、組成物および/または上記キットに関連する他の組成物の使用、組み換え、混合、希釈、保存、投与、構築、貯蔵、包装、および/または調製のための説明書を含んでもよい。上記説明書は、任意の態様で提供されるこのような説明を含有する好適な媒体、たとえば記載または印刷、言葉、音声(例えば、電話)、デジタル、光学、視覚(例えばビデオテープ、DVDなど)、あるいは電子通信(インターネットあるいはウェブ・ベースのコミュニケーションを含む)として、当業者によって認識可能な任意のフォームで与えられてもよい。
【0053】
本明細書で使用されるように、「液滴」は、第2の流体によって完全に囲まれる第1の流体の分離された部分である。液滴は、必ずしも球状ではないが、例えば、外的環境に依存して、同様に他の形を仮定してもよいことが注目される。非球状の液滴における液滴の直径は、非球状の液滴と同じ体積を有する完全に数学的な球体の直径である。上記のように、上記液滴は、任意の適切な技術を使用して生成されてもよい。
【0054】
本明細書で使用されるように、「流体」は、その通常の意味が与えられる、つまり液体またはガスである。流体は、定義された形状を維持できず、流体が入れられるコンテナを満たす観測可能な時間枠の間、流れるだろう。したがって、上記流体は、流れを許容するあらゆる適切な粘性を有していてもよい。2以上の流体が存在するとき、各流体は、当業者によって、本質的に任意の流体(液体、ガスなど)から独立して選択されてもよい。
【0055】
本発明の特定の実施形態は、複数の液滴を作成する。いくつかの実施形態では、複数の液滴が第1の流体から生成され、第2の流体によって実質的に囲まれてもよい。本明細書で使用されるように、上記流体だけを通して上記液滴のまわりで閉ループが描かれるとき、液滴は流体によって「囲まれる」。上記流体だけを通す閉ループは、方向にかかわらず上記液滴のまわりで描かれる場合、液滴は「完全に囲まれる」。上記流体だけを通す上記ループが、上記方向に基づく上記液滴の周りに描かれうるとき、液滴は、「実質的に囲まれる」(例えば、いくつかの場合では、上記液滴の周りのループは、第2の流体、あるいは第2の液滴等を含む上記流体のほとんどを含む。)。
【0056】
すべての実施形態ではないが、ほとんどの実施形態では、上記液滴とこの液滴を含む上記流体とは実質的に混合しない。しかしながら、いくつかの場合では、混合してもよい。いくつかの場合では、親水性の液体が、疎水性の液体の中で懸濁されてもよく、疎水性の液体は、親水性の液体の中で懸濁されてもよく、気泡は、液体などの中で懸濁されてもよい。通例、疎水性の液体および親水性の液体は、互いに対して実質的に混合せず、親水性の液体は、疎水性の液体よりも水に対するより大きな親和性を有する。親水性の液体の例は、セルまたは生体媒質、エタノール、食塩水などの水および水を有する他の水溶液を含むが、これらに限定されない。疎水性の液体の例は、炭化水素、シリコーン油、フルオロカーボン油、有機溶媒などのような油を含むが、これらに限られない。いくつかの場合では、2つの流体は、流体の流れの生成についての時間枠の中で実質的に混合しないように選択されうる。当業者は、本発明の技術を実行するために、接触角測定などを使用して、実質的に混合する、または、実質的に混合しない適切な流体を選択することができる。
【0057】
すべての実施形態ではないが、いくつかの実施形態では、本明細書でより多く述べられたように、上記複数の液滴は、マイクロ流体技術を使用して生成されてもよい。本明細書で使用されるように、「マイクロ流体」は、横断面寸法が1mm未満であるとともに、最大の横断面寸法に対する長さの比率が少なくとも約3:1である、少なくとも1つの流体チャネルを含むデバイス、装置またはシステムに言及する。本明細書で使用されるように、「マイクロ流体チャネル」は、これらの基準を満たすチャネルである。チャネルの「横断面寸法」は、流体の流れの方向に対して直交して測定される。いくつかの実施形態では、上記流体チャネルは、単一コンポーネントによって一部が形成されてもよい(例えば、エッチングされた基質あるいは成型されたユニット)。もちろん、大きなチャネル,チューブ,チャンバー,貯留部などは、大量に流体を格納し、かつ本発明のコンポーネントに流体を送るために使用されうる。実施形態の1セットでは、本発明の実施形態を含むチャネルの最大の横断面寸法は、1mm未満、500ミクロン未満、200ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満あるいは25ミクロン未満である。いくつかの場合では、流体が製品または基質を自由に流れることができるように、チャネルの寸法が選択されてもよい。チャネルの寸法は、例えば、チャネルの流体のある容積測定または線形流量を許容するために選択されてもよい。もちろん、チャネルの数およびチャネルの形状は、当業者に既知の任意の方法によって変えることができる。いくつかの場合では、1以上のチャネルまたは毛細管が使用されてもよい。例えば、2以上のチャネルが、お互いの内側に位置し、互いに隣接して位置し、互いに交差して位置するなどして、2以上のチャネルが使用されてもよい。
【0058】
本明細書で使用されるように、「チャネル」は、少なくとも部分的に流体の上記流れに向かわせる製品(基質)上、あるいはその製品(基質)内での特徴を意味する。上記チャネルは、任意の断面形状(円形,楕円形,三角形,不規則,正方形,あるいは長方形など)を有しうるし、カバーされるか、あるいはカバーされないようにすることができる。上記チャネルが完全にカバーされる実施形態では、チャネルの少なくとも一部分は、完全に囲まれる横断面を有しうる。あるいは、全チャネルは、その全長に沿って、その入口と出口を除いて、完全に閉じられてもよい。チャネルは、また、少なくとも約3:1、少なくとも約5:1、あるいは少なくとも約10:1あるいはそれ以上の縦横比(平均横断面寸法に対する長さ)を有していてもよい。開いたチャネルは、液体輸送、例えば構造特性(長方形の刻み付け)および/または物理的あるいは化学的特性(疎水性対親水性)に対する制御を促進する特徴、あるいは流体上の力(例えばコンテイニングフォース(containing force))を作用させることができる他の特徴を一般的に含む。上記チャネル内の流体は、部分的に、あるいは完全に上記チャネルを満たしてもよい。開いたチャネルが使用されるいくつかの場合では、上記流体は、例えば表面張力(つまり凹型か凸型のメニスカス)を使用して、上記チャネル内に保持されてもよい。
【0059】
本発明で使用されるマイクロ流体システムの非限定的な実施例は、以下の特許出願の公開公報に開示されている。すなわち、「流体のスピーシーズの生成および制御」という発明の名称で2005年10月7日に出願された米国特許出願第11/246,911号であって、2006年7月27日に発行された米国特許出願公報第2006/0163385号;「流体分散のための方法および装置」という発明の名称で2004年12月28日にファイルされた米国特許出願第11/024,228号であって、2005年8月11日に発行された米国特許出願公報第2005/0172476号;「流体のスピーシーズの電子制御」という発明の名称で2006年2月23日に出願された米国特許出願第11/360,845号であって、2007年1月4日に発行された米国特許出願公報第2007/000342号;「複数のエマルションを生成する方法および装置」という発明の名称で2006年3月3日に出願された国際特許出願第PCT/US2006/007772号であって、2006年9月14日に発行された国際公開公報第WO2006/096571号;「粒子を生成するシステムおよび方法」という発明の名称で2006年3月3日に出願された米国特許出願第11/368,263号であって、2007年3月8日に発行された米国特許出願公報第2007/0054119号;「複数のエマルションおよび生成のための技術」という発明の名称で2008年3月28日に出願された米国特許出願第12/058,628号であって、2009年1月8日に発行された米国特許出願公報第2009/0012187号;そして、「コロイド粒子のような粒子中にカプセル化された流体の液滴を生成するためのシステムおよび方法」という発明の名称で2006年1月20日に出願された国際特許出願第PCT/US2006/001938号であって、2006年7月27日に発行された国際公開公報第WO2006/078841号である。これらの出願は、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれている。
【0060】
いくつかの実施形態では、作成されるマイクロ流体システムは、液滴を操作するために使用されてもよい。例えば、いくつかの場合では、複数の液滴がスクリーンされる(screened)か、ソートされて(sorted)もよい。例えば、複数の液滴がスピーシーズを含む液滴のためにスクリーンされるかソートされてもよい。また、いくつかの場合では、上記液滴は、特有の数あるいは範囲の興味のあるスピーシーズのエンティティを含む液滴のためにスクリーンされるかソートされてもよい。液滴をスクリーンするおよび/またはソートするためのシステムおよび方法は、例えば上記したような以下の公報で、当業者に公知である。上記公報は、「流体のスピーシーズの電子制御」という発明の名称で、リンクらによって2006年2月23日に出願された米国特許出願第11/360,845号に開示され、2007年1月4日に発行された米国特許出願公開公報2007/0003442号である。これらの公報は、参照によって本明細書に組み込まれている。限定しない例として、デバイス(あるいはデバイスの一部)に第1の電場を適用する(あるいは除去する)ことによって、液滴が第1の領域あるいはチャネルに向けられてもよく; デバイス(あるいはデバイスの一部)に第2の電場を適用する(あるいは除去する)ことによって、液滴が第2の領域あるいはチャネルに向けられてもよく;デバイス(あるいはデバイスの一部)に第3の電場を適用することによって、上記液滴が第3の領域あるいはチャネルに向けられてもよいなど、上記電場は、例えば、強度、方向、周波数、デュレーション(duration)など、どこか異なっていてもよい。
【0061】
別の局面では、液滴は、さらに分離され、または2以上の液滴に分割されてもよい。液滴を分離するための方法、システム、および技術は、例えば以下の特許出願で、当業者に公知である。上記特許出願は、2004年4月9日にリンクらによって出願された国際特許出願第PCT/US2004/010903号;2003年8月27日にリンクらによって出願された米国仮特許出願第60/498,091号;2003年6月30日にストーンらによって出願された国際特許出願第PCT/US03/20542号であって、2004年1月8日に国際公開公報第WO2004/002627号に記載されたものである。これらの特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれている。例えば、分割液滴は、適用された電場を使用して、分割されうる。上記電場は、AC場、DC場などでもよい。
【0062】
いくつかの場合では、第1の液滴(例えば分割液滴)は、第2の液滴と融合され、あるいは合体されてもよい。例えば、1組の実施形態では、界面活性剤の組成物、表面張力、液滴直径、存在あるいは欠如などにより、2以上の液滴が通常融合し、結合できない場合、2以上の液滴(例えば、流体の不連続の流れから発生して)を1の液滴に融合させるか結合させることができるようなシステムおよび方法が供給される。他の実施形態では、液滴は流体の流れと融合されてもよい。例えば、チャネル内の流体の流れは、同じチャネルの1以上の液滴と融合されてもよい。特定のマイクロ流体システムでは、上記液滴の表面張力は、液滴の大きさに対して、いくつかの場合では、液滴の融合あるいは結合が生じるのを防いでもよい。当業者に知られている方法、システム、および/または技術、例えば以下の特許出願に開示されているものを使用して、2以上の液滴が融合あるいは結合されてもよい。上記特許出願は、「流体分散のための方法および装置」という発明の名称で、ストーンらによって2004年12月28日に出願された米国特許出願第11/024,228号であり、2005年8月11日に発行された米国特許出願公開公報2005/0172476号に記載されたもの;「流体のスピーシーズの生成および制御」という発明の名称で、リンクらによって2005年10月7日に出願された米国特許出願第11/246,911号であり、2006年7月27日に発行された米国特許出願公開公報2006/0163385号に記載されたもの;「複数のエマルションを生成する方法および装置」という発明の名称で、ウェイツらによって2007年8月29日に出願された米国特許出願第11/885,306号に開示され、2009年3月21日に発行された米国特許出願公開公報2009/0131543号に記載されたもの;「流体のスピーシーズの電子制御」という発明の名称で、リンクらによって2006年2月23日に出願された米国特許出願第11/360,845号に開示され、2007年1月4日に発行された米国特許出願公開公報2007/0003442号に記載されたものである。これらの特許出願は、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれている。いくつかの場合では、第2の流体は、分割液滴内に注入されてもよい。これは、例えば、「流体注入」という発明の名称で、ウェイツらによって2009年6月26日に出願された米国仮特許出願第61/220,847号に記載されており、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0063】
本発明の特定の局面によれば、様々な材料および方法は、本発明のシステムおよびデバイスの上記コンポーネントのうちのいずれかを形成するために使用できる。いくつかの場合では、上記選択された様々な材料は、様々な方法に向けられる。例えば、本発明の様々なコンポーネントは、固形物から形成することができる。この固形物において、上記チャネルは、マイクロマシニング(micromachining)、スピン・コーティング(spin coating)および化学蒸着のような膜蒸着プロセス、レーザーファブリケーション(laser fabrication)、フォトリソグラフィー技術(photolithographic techniques)、湿式化学プロセスおよびプラズマプロセスを含むエッチング法などにより、形成されうる。例えば、サイエンティフィックアメリカン、248:44−55、1983年(エーンジェルら)を参照のこと。一実施形態では、少なくとも流体システムの一部は、シリコーンチップ中のエッチングフィーチャー(etching features)によってシリコーンから形成される。本発明の様々な流体システムおよびデバイスのシリコーンからの正確で効率的な組立てについての技術は、知られている。他の実施形態では、本発明のシステムおよびデバイスの様々なコンポーネントは、ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)のようなエラストマーポリマー(elastomeric polymer)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」あるいはテフロン(登録商標))などから形成されうる。
【0064】
異なるコンポーネントは、異なる材料で作られうる。例えば、底壁および側壁を含むベース部は、シリコーンまたはPDMSのような不透明な材料から作られ、トップ部は、流体プロセスの観察および/または制御のため、ガラスあるいは透明なポリマーのような透明な、あるいは少なくとも部分的に透明な材料から作られうる。コンポーネントは、所望の化学機能性を内部のチャネル壁に接触する流体にさらすために覆うことができる。基礎の支持材料は、正確で所望の機能性を有しない。例えば、内部のチャネル壁が別の材料で覆われて、上記のようにコンポーネントが作られうる。本発明のシステムおよびデバイスの様々なコンポーネントを作るために使用される材料、例えば流体チャネルの内部の壁を覆うために使用される材料は、上記流体システムを流れる流体によって悪影響を与えない、または影響されない材料、例えば上記デバイス内で使用される流体の存在下で化学的に不活性な材料の中から望ましいように選択されてもよい。
【0065】
本発明の種々のコンポーネントは、ポリマー性および/または柔軟性および/またはエラストマー性の材料から形成され、硬化可能な流体で便利に形成され得、成型(例えば、レプリカ成型、注入成型、キャスト成型など)を介する形成を容易にする。硬化可能な流体は、流体ネットワークにおける、およびこれを伴う使用のために意図される流体を含み、および/またはそれを輸送することが可能である固体に、固化するように誘導可能であるかまたはそれに自発的に固化する、本質的に任意の流体であり得る。一実施形態では、硬化可能な流体は、ポリマー液体または液体ポリマー前駆体(すなわち、「プレポリマー」)を含む。適切なポリマー液体には、例えば、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、またはそれらの融点より上に加熱したかかるポリマーの混合物を含めることができる。別の例として、適切なポリマー液体は、適切な溶媒中に1種以上のポリマーの溶液を含んでもよく、この溶液は、例えば、蒸発による溶媒の除去の際に、固体ポリマー材料を形成する。例えば、融解状態から、または溶媒蒸発によって固化することができるかかるポリマー材料は当業者に周知である。その多くがエラストマー性である種々のポリマー材料もまた、型マスターの一方または両方がエラストマー材料から構成される実施形態のために、型または型マスターを形成するために適切である。かかるポリマーの例の非限定的なリストには、シリコーンポリマー、エポキシポリマー、およびアクリル酸ポリマーの一般的クラスのポリマーが含まれる。エポキシポリマーは、一般的にエポキシ基、1,2−エポキサイド、またはオキシランと呼ばれる3員環状エーテル基の存在によって特徴付けられる。例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルは、芳香族アミン、トリアジン、および脂環式バックボーンに基づく化合物に加えて、使用することができる。別の例には、周知のNovolacポリマーが挙げられる。本発明に従う使用のために適切なシリコーンエラストマーの非限定的な例には、メチルクロロシラン、エチルクロロシラン、フェニルクロロシランなどのようなクロロシランを含む前駆体から形成されるものが含まれる。
【0066】
シリコーンポリマー、例えば、シリコーンエラストマー、ポリジメチルシロキサンが好ましい。PDMSポリマーの非限定的な例には、Dow Chemical Co.,Midland,MIによって商標シルガード(Sylgard)、および特に、
シルガード182、シルガード184、およびシルガード186で販売されているものが含まれる。PDMSを含むシリコーンポリマーには、本発明のマイクロ流体構造の形成を単純化するいくつかの有益な特性を有する。例えば、かかる材料は安価であり、容易に利用可能であり、そして熱を用いる硬化を介してプレポリマー液体から固化することができる。例えば、PDMSは、通例、例えば、約65℃〜約75℃の温度に、例えば、約1時間の曝露時間で、プレポリマー液体を曝露することによって硬化可能である。また、PDMSなどのシリコーンポリマーは、エラストマー性でありえ、従って、本発明の特定の実施形態において必要である、比較的高いアスペクト比を有する非常に小さな特徴を形成するために有用であり得る。柔軟な(例えば、エラストマー性)成型またはマスターは、この点において有利であり得る。
【0067】
PDMSなどのシリコーンポリマーから本発明のマイクロ流体構造などの構造を形成する1つの利点は、例えば、空気プラズマなどの酸素含有プラズマへの曝露によってかかるポリマーを酸化させる能力であり、その結果、酸化された構造は、それらの表面において、他の酸化されたシリコーンポリマー表面に、または種々の他のポリマー材料および非ポリマー材料の酸化された表面に架橋可能である化学基を含む。従って、コンポーネントは、別々の接着剤または他のシール手段の必要性なしで、他のシリコーンポリマー表面、または酸化されたシリコーンポリマー表面と反応性である他の基材の表面に、形成可能であり、次いで酸化可能であり、そして本質的に不可逆的にシール可能である。多くの場合では、シーリングは、シールを形成するために補助的な圧力を適用する必要性なく、単に酸化シリコーンを別の表面に接触させることによって、達成することができる。すなわち、あらかじめ酸化したシリコーン表面が、適切な接合表面に対する接触接着剤として働く。具体的には、それ自体に対して不可逆的にシール可能であることに加えて、酸化PDMSなどの酸化シリコーンもまた、それ自体以外の一連の酸化材料に不可逆的にシールすることができ、この材料には、例えば、PDMS表面へと同様の様式で(例えば、酸素含有プラズマへの曝露を介して)酸化されている、ガラス、ケイ素、酸化ケイ素、石英、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、ガラス状炭素、およびエポキシポリマーが含まれる。本発明の状況において有用である酸化方法およびシーリング方法は、全体の成型技術と同様に、当該分野において、例えば、参照により援用される、「Rapid Prototyping of Microfluidic Systems and Pol
ydimethylsiloxane」という標題の論文、Anal.Chem.,70:474−480,1998(ダフィら)において記載されている。
【0068】
酸化シリコーンポリマーからの本発明のマイクロ流体構造(例えば、内部の、流動接触表面)を形成することに対する別の利点は、これらの表面が、典型的なエラストマーポリマーの表面(ここでは親水性の内部表面が所望される)よりもはるかに親水性であり得ることである。従って、かかる親水性チャネル表面は、典型的な、酸化されていないエラストマーポリマーまたは他の疎水性材料から構成される構造よりも、水溶液でより容易に満たし、かつ濡らすことができる。
【0069】
一実施形態において、底壁は、1以上の側壁もしくは上面壁、または他のコンポーネントとは異なる材料から形成される。例えば、底壁の内部表面は、シリコンウェハもしくはマイクロチップの表面、または他の基材を含み得る。他のコンポーネントは、上記のように、かかる代替的な基材にシールすることができる。異なる材料の基材(底壁)にシリコンポリマー(例えば、PDMS)を含むコンポーネントをシールすることが所望される場合、上記基材は、酸化シリコーンポリマーが不可逆的にシール可能である材料群(例えば、ガラス、ケイ素、酸化ケイ素、石英、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、エポキシポリマー、およびガラス状カーボンの酸化されている表面)から選択されてもよい。代わりに、当業者には明らかであるように、別個の接着剤、熱結合、溶剤結合、超音波溶接などの使用を含むがこれらに限定されない、他のシーリング技術を使用できる。
【0070】
ウェイツらによって「液滴生成技術」という発明の名称で2009年10月27日に出願された米国仮特許出願第61/255,239号は、そっくりそのまま参照によって本出願に組み込まれている。
【0071】
以下の実施例は、本発明の或る特定の実施の形態の或る特定の態様を説明しようとするものであり、本発明の技術的範囲の全体を例示するものではない。
【0072】
実施例1
以下の実施例は、1つの非限定的な実施形態による、複数の液滴の生成について記載する。特に、この実施例は、大きいエマルションライブラリを生成する制御され、拡張可能な方法を示す。この方法は、自動化され、ユーザによる介入をほとんど必要としない。また、並列処理され、ライブラリの迅速な作成を許容する。
【0073】
この実施例では、上記方法は、図1に示すように3つのステップを有する。さらに、ライブラリは、特にこの実施例のために6つの識別可能な流体(あるいは6つの識別可能なスピーシーズを含む流体)を含む液滴を有する。ライブラリを生成するための異なる流体は、図1に示すように、個別のコンテナ16に入れられる;これは、自動化されたピペット操作技術,ロボット,あるいは他の適切な技術を使用して行うことができる。
【0074】
その後、各コンテナの溶液は、コンテナ16から、6つの識別可能な流体と実質的に混合しない運搬流体24で満たされた共通コンテナ4へ進む。このプロセスは、共通コンテナ4内で区別不能な液滴の6つのグループを生成する。ここで、上記グループ自体は、識別可能だが、各グループ内では、液滴の組成物は区別不能である。この例では、複数の液滴2が、この実施形態において、大きく、かつ多分散(そして必ずしもマイクロ流体液滴でない)であるように生成され、かつ、ほんの数分間で生成される。異なる液滴が実質的に混合することなく、液滴が共通のコンテナ4内に一緒に溜められることを可能にして、液滴間の流体の変換がなくてもよい。さらに、液滴が大きくなるように生成されるので、いくつかの場合では、標準の並列ピペッター(pipetters)、あるいは他の一般的に知られた技術を使用して、大量の液滴が、並列で、ほんの数秒間で生成されうる。
【0075】
少なくとも複数の液滴2の一部は、液滴メーカ10(例えばチャネル20および22を含む)に結合したマイクロ流体チャネル18に一度に1つの液滴ずつ流れ込んでもよい。例えば、液滴12は、マイクロ流体チャネル18に入り、複数の分割液滴14は、液滴12からの流体の流れとして生成され、上記液滴メーカ10を通過する。このプロセスは、任意の数の液滴(例えば液滴30および32)で繰り返されてもよいし、それによって、実質的に区別不能な実質的に単分散の複数の液滴6を生成する。分割前の液滴は、大きい、および/または多分散であってもよく、したがって、プラグ(例えば、流体の流れ)としてマイクロ流体チャネルを通って上記液滴メーカへ向けて流れてもよい。
【0076】
液滴メーカ10は、上記液滴を分割して、実質的に区別不能な複数の実質的に単分散の液滴を生成してもよい。したがって、様々な液滴は、各々が実質的に単分散および/または区別不能な複数の液滴を生成するために、上記液滴メーカを通ってもよい。これにより、分割液滴の複数のグループ(例えば、実質的に区別不能な組成物を有する、例えば、同じスピーシーズを運搬する液滴の分割によって生成された各グループ)を含む集合体6を生成する。いくつかの実施形態では、液滴メーカによって生成された分割液滴は、実質的に単分散で(例えば1%以内で)生成されてもよい。いくつかの場合では、実質的に単分散の液滴を生成するために、最初の複数の液滴が、分割液滴の所望の大きさより、はるかに大きくてもよい(例えば、少なくとも約5倍)。
【0077】
さらに、この方法は、いくつかの場合では拡張可能である。分割前の複数の液滴は、標準の並列ピペッター、あるいは他の一般的に知られた技術を使用して、高度に並列化された態様で生成することができる。これは、ロボットを用いて、さらに速く遂行することができる。複数の液滴から分割液滴の生成も、例えば、一連のマイクロ流体液滴メーカあるいは分岐チャネルなどの中に複数の液滴を通すことにより並列化されうる。
【0078】
実施例2
この実施例は、2つの液滴のグループの集合体を示し、各グループは、組成物によって区別できるが、各グループ自体の液滴は、組成的に区別不能である。
【0079】
この限定しない実施例において、2つの水溶液が準備され、一方は、5mMのブロモフェノール・ブルーを有する溶液を含み、他方が蒸留水を有する溶液を含む。上記溶液は、界面活性剤を有するHFE−7500において予め乳化された。プレ−エマルション滴(pre-emulsion droplet)は、PE/5管材に取り付けられた幅広の針を有する注射器に充填された。より具体的には、プレ−エマルション滴を充填するため、管材は、大型クリップで圧着され、ピストンが注射器から取り除かれる。上記プレ−エマルションは、上記注射器の後部へ注ぎ込まれ、ピストンが再挿入されて、針が上を向くように、注射器が反対向きにされる。上記大型クリップは取り除かれ、注射器中のどのような空気も押し出される。ここまで、注射器は、澄んだ(例えば、水を有する)または青い(例えば、ブロモフェノール・ブルーを含む溶液を有する)液滴の集合体を含んでいた。上記液滴は、およそ2mmの平均直径を有していた。その後、上記注射器は、注射器ポンプの上に置かれた。この注射器ポンプは、上記プレ−エマルションをマイクロ流体フローフォーカス液滴メーカに送り込み、追加の油が加えられた。上記プレ−エマルションおよび上記油の流量は、それぞれ700uL/hrおよび1100uL/hrであった。このプロセスは、個々の大きな液滴から複数の分割液滴を生成した。次に、分割液滴は、FC40フルオロカーボン油を1mL入れた3mLの注射器内に集められた。分割液滴は、上記注射器内に点滴注入され、トップまで上昇するクリームを生成した。大きな液滴の全てが分割液滴に分割された後、上記集合体注射器は、約30秒間回転され、上記コンテナ内の分割液滴を均一に分配した。その後、分割液滴の小標本は、スライド・ガラス上に置かれ、明視野顕微鏡で撮像された(図2)。この画像では、液滴の2つの個体群、すなわち、澄んだ水を有する液滴と染料を有する液滴とがはっきり見える。上記液滴は、すべて、平均してほぼ同じ直径を有する。
【0080】
実施例3
この実施例は、複数の液滴のグループを有する集合体を示し、各グループは、組成物によって区別できるが、各グループ自体の液滴は、組成的に区別不能である。
【0081】
この実施例では、あらかじめ溶液を乳化するため、各溶液は、それぞれ、キャリアオイル(HFE−7500フルオロカーボン油)および界面活性剤(ペルフルオロ・ジ−ブロック・テイル(perfluorinated di-block tail)に付けられた親水性のPEGヘッドグループ(head group)を有するE0665)で満たされたバイアル(vial)へピペットで移された。上記油へ溶液をピペットで移すプロセスは、界面活性剤により、合体に対して安定した大きな液滴を生成する。このプロセスは、各溶液から生成された液滴の区別可能なグループを有する大きな多分散の液滴の集合体を生成した。大きな液滴の集合体から、より小さな液滴(例えば分割液滴)の単分散の集合体を生成するために、大きな液滴は、マイクロ流体液滴メーカを使用して、さらに乳化された。そうするために、液滴メーカ・ノズルの横断面寸法が25×25um(マイクロメートル)であるフローフォーカス液滴メーカが使用された。上記液滴メーカは、ソフトリソグラフィー(soft lithography)を使用して、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)の中で作り上げられる。フルオロカーボン油にデバイス表面を湿らせさせ、かつ水溶液をカプセルに入れさせるために、上記チャネルは、それらを疎水性にするために化学処理された。上記チャネルは、アクアペル(Aquapel)で満たされるとともに30秒間その状態が維持されて、その後、超過したアクアペルを取り除くためにチャネルを通って空気が流された。それから、上記デバイスは、使用される前の5分間、65℃にセットされたオーブン・セット内で加熱された。
【0082】
大きな液滴の体積は、マイクロ流体液滴メーカの体積よりもはるかに大きかった。その結果、上記液滴メーカを流れたとき、大きな液滴は、流体の長く連続した流れ、つまり、プラグを生成した。上記流体の長いプラグは、実施例2に記載された方法と似た方法を使用して、単分散の複数の分割液滴を生成した。いくつかの場合では、理論によって拘束されずに、分割液滴が適度に多分散した集合体は、上記プラグの有限のサイズにより発生してもよい。例えば、プラグの端部で、所望の大きさに分割液滴を生成するのに十分な流体がなくてもよい。しかしながら、大きな液滴の体積が、分割液滴の少なくとも約5倍以上(例えば100倍)の大きさである例では、生成された分割液滴は、単分散、あるいは実質的には単分散でありうる。例えば、約2mmの直径を有する大きな液滴については、生成された分割液滴が約20umの直径を有しているとき、大きな液滴は、分割液滴より約100万倍大きく、したがって、そのような結果は多分散性にほとんど寄与しない。
【0083】
複数の分割液滴は、FC40フルオロカーボン油を有する集合体チャンバーへ集められ、したがって全ての分割液滴を一緒に集める。この例では、FC40油の存在は、液滴の表面張力を増加させ、液滴をより固くするとともにせん断に対して強くし、また、連続相の中への溶質の分割を減らして、カプセル化を促進した。分割液滴がすべて集められた後、上記集合体チャンバーは、チャンバー内の液滴を均等に分配するために、約30秒間軽く回転された。
【0084】
いくつかの場合では、大きな液滴の生成のために使用される油および界面活性剤の合成物は、結合に対して液滴が安定するように選択されることを保証するのが重要かもしれない。この実施例では、図3Aに示すように、PEG−ペルフルオロ−ジブロック(diblock)界面活性剤を有するHFE−7500の使用は、大きな液滴の非常に安定した集合体を生成することがわかった。この図3Aは、蒸留水(透明)およびブロモフェノール・ブルーに染められた(濃い藍色)液滴から成る、パックされたプレ−エマルション(pre-emulsion)のイメージを示している。しかしながら、当然のことながら、液滴の安定した集合体は、様々な他のフルオロカーボン、炭化水素、シリコーン油および界面活性剤で作られうる。さらに、異なる油が異なる比重をしばしば有するので、プレ−エマルションに使用される上記油および界面活性剤は、マイクロ乳化ステップに使用されるものと同じである必要はない。これは、望まれない相が遠心分離で分離されることを許容する。これは、油と界面活性剤の選択に関して上記方法を非常に柔軟にする。
【0085】
いくつかの場合では、液滴が上記マイクロ流体液滴メーカに入るちょうど前に、大きな液滴の集合体から望まれない微粒子を取り除くことがさらに重要である。これは、上記マイクロ流体液滴メーカが狭いチャネルを含み、フィルタの欠如が上記デバイスの詰まりにつながるかもしれないからである。典型的なマイクロ流体フィルタは、ずらりと並んだポストを備え、これらのポストは、ポストの間に狭いギャップを有する。;このポストは、望まれない粒子をろ過しつつも、流体がまわりに流れることを許容し、上記液滴メーカへ流す。そのようなフィルタは、液滴が上記フィルタを通過するとき、大きな液滴を小さな多分散の液滴に分割するだろう。その後、小さな多分散の液滴は、上記マイクロ流体液滴メーカに入り、分割液滴の多分散のライブラリが形成されることとなる。大きな液滴が上記フィルタによって分割されるのを回避するために、大きな液滴が分割されるのを防ぐ一方で、任意の粒子も取り除く専用のフィルタが生成された。このフィルタは、ポスト間に、液滴メーカへの異なる経路の長さを有し、したがって、異なる流体抵抗を有するギャップを備えている。上記フィルタのイメージは、図3Bに示される。より具体的には、図の最も左側のギャップは、最短経路長および最小の流体抵抗を有する。一方、図の最も右側のギャップは、最長経路長および最大の流体抵抗を有する。結果として、大きな液滴が上記フィルタに入るとき、それは最初のギャップのみを通って流れて、連続的なプラグのままである。粒子がフィルタに入ると、この粒子は上記最初のギャップに捕まって、最小の流体抵抗である次の経路になる次のギャップに流れを迂回させる。このフィルタは、大きな液滴をそのままにしておく一方、粒子を取り除くことができる。
【0086】
この方法の有効性およびこの方法により、大きな液滴の集合体から生成される複数の分割液滴の生成が容易になされることのデモンストレーションとして、8つの異なる組成物を有する液滴の集合体が生成された。異なる組成物を生成するために、異なる濃度の2つの蛍光染料(緑色色素(fluorocien)および赤色色素(Alexafluor 680(登録商標)))から成る水溶液が使用された。8つの異なる液滴タイプは、2つの異なる濃度の緑色色素および4つの濃度の赤色色素を有していた。上記溶液は、上記のような大きな液滴内に形成され、その後、大きな液滴は、上記のような複数の分割液滴(平均直径35um)に分割された。生成された分割液滴は、FC40を含む注射器内に集められ、液滴を均等に分配するために30秒間回転し、次に2分間クリーム状になることを許容され、2分を超えると、より軽い水の液滴が注射器の上部へ浮かび、一方で、より重いフルオロカーボン油は沈む。その後、ぎっしり詰まった分割液滴は、幅1000um、高さ25umのマイクロ流体チャネルに再注入された。平均液滴直径が上記チャネルの高さを超過したので、上記分割液滴は、単分子層として流れ、各液滴が個々に撮像されることを許容する。
【0087】
上記液滴中の蛍光染料を励起するため、ダブルバンド励起フィルタ(double band excitation filter)とダイクロックイミラー(dichroic mirror)とを備えた落射蛍光顕微鏡(epi-fluorescence microscope)が使用された。;上記光学コンポーネントは、波長480+/−10nmおよび660+/−10nm(それぞれ、緑色色素および赤色色素の励起バンド)をサンプル内へ反射させ、一方で、上記サンプルから発せられた光が通過出来るようにしている。発せられた光は、逆方向における対象によって捕らえられ、2台のCCDカメラによって撮像された。上記カメラに達する前に、上記光は、緑色光を反射するとともに赤色光を通すハイパスのダイクロイックミラー(560nm)にぶつかった。上記緑色光は、1台のカメラに到達する前に540+/−10nmの吸収フィルタを通過するとともに、上記赤色光は、第2のカメラに到達する前に690+/−10nmの吸収フィルタを通過した。カメラおよびこの光学セットアップ(optical setup)で、上記分割液滴中の緑色および赤色の蛍光は、同時に撮像された。図4Aおよび図4Bは、上記分割液滴の緑色および赤色のチャネルイメージ(channel images)をそれぞれ示している。
【0088】
液滴の強度を測定するために、画像解析技術が、上記液滴の特定にまず使用され、次に、上記緑色および赤色の両者のイメージ中の各液滴の強度を測定する。緑色および赤色の強度値は、各液滴用にデータ・ファイルに格納された。上記緑色および赤色のチャネル用の強度ヒストグラムは、図5Aおよび図5B中にそれぞれ示される。デザインされたように、各染料の異なる濃度に対応して、緑色のチャネルは、2つのピークを示し、赤色のチャネルは、4つのピークを有する。8つの組み合わせが上記液滴用の光学ラベルとして使用されうることを実証するために、図5C中の各液滴について、緑色の強度は、赤色の強度に対比してプロットされた。8つの異なる領域へ分けられたポイントの各々は、ユニークなカラーコードに相当する。
【0089】
本発明の複数の実施形態を本明細書で記載および例証したが、当業者は、機能を実施するためのおよび/または本明細書に記載した結果および/または利点の1つ以上を得るための、多種多様の他の手段および/または構造を想定するであろうし、このような変更形態または修飾形態は、それぞれ本発明の範囲内であると見なされる。さらに一般的には、本明細書中で説明したすべてのパラメータ、寸法、物質、および構成は例を示すためのものであり、実際のパラメータ、寸法、物質および構成が本発明の教示を使用する特定の用途に依存することは当業者には自明であろう。単なる慣用的な実験操作を用いて、当業者は本明細書中に説明した本発明の特定の実施形態に等価な多くのものを認識し、あるいは確かめることができよう。したがって、これまでに説明した実施形態は、例を示すためにだけ提示したものであり、本発明は添付の請求項および請求項への等価物の範囲内で、具体的に説明したものおよび/または請求項に記載したものとは異なった方法で実施されることがあることが理解される。本発明は本明細書中で説明した個々の機能、システム、物質および/または方法を目的とする。さらに、そのような機能、システム、製品、物質および/または方法の二つの以上の任意の組み合せは、そのような機能、システム、製品、物質および/または方法が相互に矛盾しないなら、本発明の範囲に含まれる。
【0090】
本明細書にて使用するようなすべての定義は、本開示の目的のためだけである。これらの定義は、この開示に関連する、または関連しないにかかわらず、同一出願人による他の特許および/または特許出願に、必ずしも帰属させるべきではない。本明細書にて定義され使用されるすべての定義は、辞書による定義、言及によって本明細書に組み込まれた文献における定義、および/または定義された用語の通常の意味に優先することを理解すべきである。
【0091】
また、明らかにそれとは反対に指摘されない限り、ここに請求する1以上の行為を含む方法について、上記方法における行為の順序が、必ずしも上記方法の行為についての記載の順序に限定されないことも理解されるべきである。
【0092】
特許請求の範囲、ならびに本明細書では、「を備える、有する、含む(comprising)」、「を含む、有する(including)」、「を運搬する(carrying)」、「を有する(having)」、「を包含する(involving)」、「を保持する(holding)」などのようなすべての移行句は開放形すなわち、含むが限定されない、を意味すると理解される。米国特許庁特許審査基準の2111.03節に示されているように、移行句のうち「からなる(consisting of)」および「基本的にからなる(consisting essentially of)」だけを、それぞれ閉鎖形または半閉鎖形の移行句とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液滴を生成する方法であって、
第2の流体によって実質的に囲まれている第1の流体を有する少なくとも1つの液滴を供給し、
上記少なくとも1つの液滴をマイクロ流体チャネルに通して複数の分割液滴を生成することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
上記第1の流体と上記第2の流体とは、実質的に混合可能でないことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
上記複数の分割液滴は、上記第2の流体によって実質的に囲まれていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
それぞれが上記第2の流体によって実質的に囲まれた複数の液滴を供給し、
上記マイクロ流体チャネルを通過する液滴のそれぞれが分割されて、2以上の分割液滴を生成するように、上記液滴の少なくともいくつかを上記マイクロ流体チャネルに通すことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
それぞれが上記第2の流体によって実質的に囲まれた複数の液滴を供給し、
上記マイクロ流体チャネルを通過する液滴のそれぞれが分割されて、略同じ数の分割液滴を生成するように、上記液滴の少なくともいくつかを上記マイクロ流体チャネルに通すことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、
上記マイクロ流体チャネルを通るそれぞれの液滴について、
上記それぞれの液滴から生成された2以上の分割液滴は、上記分割液滴の約5%以内が、生成された全ての上記分割液滴の平均直径の約10%よりも大きい直径を有するような直径の分布を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、
上記複数の分割液滴は、上記液滴の約5%以内が上記液滴の平均直径の約10%よりも大きい直径を有するような直径の分布を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法において、
上記複数の液滴は、少なくとも4つの区別可能なスピーシーズを含み、上記液滴の約5%以内が上記少なくとも4つの区別可能なスピーシーズのうちの2以上を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
上記少なくとも4つの区別可能なスピーシーズは、少なくとも4つの区別可能な核酸を有することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、
上記少なくとも4つの区別可能なスピーシーズは、少なくとも4つの区別可能な同定要素を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法において、
上記少なくとも4つの区別可能なスピーシーズは、少なくとも4つの区別可能なタンパク質を有することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
上記少なくとも1つの液滴は、約500ミクロンより大きい平均直径を有し、上記複数の分割液滴は、約500ミクロンより小さい平均直径を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
少なくとも約10の分割液滴は、少なくとも1つの第1の液滴から生成されていることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、
少なくとも約50の分割液滴は、少なくとも1つの第1の液滴から生成されていることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
複数の第2の分割液滴の平均直径は、約1000ミクロンより小さく、上記液滴は、実質的に単分散であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、
少なくとも1つの第1のスピーシーズを有する第1の液滴と、
上記第1のスピーシーズから区別可能な少なくとも1つの第2のスピーシーズを有する第2の液滴と
を供給することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
複数の分割液滴を有するエマルションを生成し、
各分割液滴は、上記第1の液滴の一部または上記第2の液滴の一部を有し、
上記エマルション中の上記分割液滴の平均直径は、約1000ミクロンより小さいことを特徴とする方法。
【請求項18】
複数の液滴を含む流体を備え、上記複数の液滴の少なくともいくつかは、区別可能な組成物を有し、
上記流体内に含まれる上記複数の液滴を使用して分割液滴を生成できるフローフォーカシングデバイスを備え、
生成された分割液滴は、上記液滴の約5%以内が上記液滴の平均直径の約10%よりも大きい直径を有するような直径の分布を有することを特徴とする製品。
【請求項19】
請求項18に記載の製品において、
上記流体は、少なくとも5つの区別可能な液滴を含むことを特徴とする製品。
【請求項20】
請求項18に記載の製品において、
少なくとも10の分割液滴は、各液滴から生成されることを特徴とする製品。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−508156(P2013−508156A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536941(P2012−536941)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/054050
【国際公開番号】WO2011/056546
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】