説明

液状体配置方法および電気光学装置の製造方法、並びに電気光学装置、電子機器

【課題】高いノズルの利用効率の下で少ないムラで液状体を配置することができる液状体配置方法、および当該液状体配置方法を用いた電気光学装置の製造方法、並びに当該製造方法により製造された電気光学装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】各走査では、一の区画領域41Rに対して、互いに隣接する二つのノズルにより、第1の電気パルスによる液滴(Aで図示)の吐出が先ず行われ、続いて第2の電気パルスによる液滴(Bで図示)の吐出が行われる。両液滴は、同一のノズルから吐出されながらも、他のノズルと比較した吐出量のばらつきに関して互いに異なる性質を示すため、擬似的に異なるノズルで吐出されたものとみなすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出法を用いた液状体配置方法、電気光学装置とその製造方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液滴吐出法を用いて多様な機能性膜を形成する手法が注目されており、例えば、特許文献1には、液滴吐出法を用いた液晶表示装置のカラーフィルタの製造方法が示されている。具体的には、基板に対して走査する液滴吐出ヘッド(以下、ヘッドとする)の微細ノズルから色材を含む液状体(液滴)を吐出させて、当該基板上に形成された区画領域内に液状体を配置(描画)し、さらに配置された液状体を乾燥等により固化させて着色膜を形成するようになっている。
【0003】
ところで、吐出される液状体の量(吐出量)にはノズル間で僅かながらもばらつきが存在するため、基板内の領域と使用するノズルとの関係によって、配置される液状体の量にムラ(描画ムラ)が生じてしまうという問題がある。このような描画ムラを低減するため、特許文献1では、構造的に吐出量のばらつきを生じ易いノズルについて、描画における使用を禁止するようにしている。
【0004】
また、特許文献1では、一の区画領域内に液状体を配置するにあたり、複数回の走査に分けて、使用するノズルを走査毎に違えながら液状体の配置を行うようにしている。これは、一区画領域あたりに使用するノズルの数を増やすことにより、ノズル間の特性差を統計的に分散させることをねらったものである。
【0005】
【特許文献1】特開2003−159787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一区画領域あたりに使用するノズルの数を増やすという方法は、ノズルの有効利用という点で不利であり、描画時間の長大化をもたらす原因となる。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、高いノズルの利用効率の下で少ないムラで液状体を配置することができる液状体配置方法、および当該液状体配置方法を用いた電気光学装置の製造方法、並びに当該製造方法により製造された電気光学装置、電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のノズルからなるノズル群を有するヘッドの基板に対する走査の下、前記ノズルと連通する液室の圧力を制御する圧力制御手段に電気パルスを供給して、当該ノズルから液状体を吐出することにより、前記基板に当該液状体を配置する液状体配置方法であって、第1の前記電気パルスを用いて、前記基板の一の領域内に対して前記液状体の吐出を行う第1吐出ステップと、前記第1吐出ステップと同一の前記走査、同一の前記ノズルにより、第2の前記電気パルスを用いて、前記一の領域内に対して前記液状体の吐出を行う第2吐出ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
また好ましくは、前記液状体配置方法において、前記第1の電気パルスを用いて吐出を行った際の前記ノズル群内の吐出量の分布幅をa1、前記第2の電気パルスを用いて吐出を行った際の前記ノズル群内の吐出量の分布幅をa2、前記第1および第2の電気パルスの両方を用いて吐出を行った際の前記ノズル群内の総和の吐出量の分布幅をbとしたときに、b<a1+a2を満たすことを特徴とする。
【0010】
これらの発明の液状体配置方法によれば、基板の一の領域内に対して、第1の電気パルスにより吐出された液滴(液状体)と第2の電気パルスにより吐出された液滴(液状体)とが、同一の走査で配置される。これらの両液滴は、同一のノズルから吐出されながらも、他のノズルと比較した特性ばらつきに関して互いに異なる性質を示すこととなり、擬似的に異なるノズルで吐出されたものとみなすことができる。このため、上記の走査におけるノズル間の吐出量のばらつきは実質的に分散され、少ないムラで液状体を配置することができる。
【0011】
また好ましくは、前記第1および第2の電気パルスが、前記液室を減圧するための第1サブパルスと、前記第1サブパルスの終点の電位を保持する第2サブパルスと、前記第2サブパルスに続いて前記液室を加圧して前記液状体を前記ノズルから吐出させるための第3サブパルスを有している前記液状体配置方法において、少なくとも前記第2サブパルスの時間成分が、前記第1の電気パルスと前記第2の電気パルスとで違えられていることを特徴とする。
【0012】
この発明の液状体配置方法によれば、吐出量のばらつき分布に対する依存性の高い第2サブパルスを第1および第2電気パルス間で違えるようにしているので、上述の効果を好適に得ることができる。
【0013】
本発明の機能性膜を備える電気光学装置は、前記液状体配置方法を用いて前記液状体を前記基板に配置する工程と、当該配置された液状体を固化して機能性膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
この発明の電気光学装置の製造方法によれば、上記の液状体配置方法を用いて電気光学装置の構成要素である機能性膜を形成しているので、基板上の領域間におけるムラの少ない機能性膜を備えた電気光学装置を効率的に製造することができる。
【0014】
本発明は、複数のノズルからなるノズル群を有するヘッドの基板に対する走査の下、前記ノズルと連通する液室の圧力を制御する圧力制御手段に電気パルスを供給して、当該ノズルから前記基板の一の領域に対して液状体が吐出され、当該吐出された液状体の固化により形成された機能性膜を構成要素として備える電気光学装置であって、前記一の領域内に対する前記液状体の吐出は、第1および第2の電気パルスをそれぞれ用いて行われており、前記第1の電気パルスを用いた吐出と前記第2の電気パルスを用いた吐出とは、同一の前記走査、同一の前記ノズルにより行われていることを特徴とする。
【0015】
この発明の電気光学装置を構成する機能性膜の形成にあたっては、基板の一の領域内に対して、第1の電気パルスにより吐出された液滴(液状体)と第2の電気パルスにより吐出された液滴(液状体)とが、同一の走査で配置される。これらの両液滴は、同一のノズルから吐出されながらも、他のノズルと比較した特性ばらつきに関して互いに異なる性質を示すこととなり、擬似的に異なるノズルで吐出されたものとみなすことができる。このため、上記の走査におけるノズル間の吐出量のばらつきは実質的に分散され、少ないムラで液状体を配置することができる。すなわち、この発明の電気光学装置は、膜厚ムラの少ない機能性膜を備えているため高品質である。
【0016】
本発明の電子機器は、前記電気光学装置を備えることを特徴とする。
この発明の電子機器は、上記電気光学装置を備えているので、高品質であると共に製造効率が高いという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、以下の説明で参照する図では、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0018】
(液滴吐出装置)
まずは、図1、図2、図3を参照して、本発明に係る液滴吐出装置の機械的構成について説明する。
図1は、液滴吐出装置の全体構成を示す概略図である。図2は、ヘッドの吐出面を示す平面図である。図3は、ヘッドモジュールの内部構造の一例を示す要部断面図である。
【0019】
図1において、液滴吐出装置100は、基板101を載置するための載置台102と、液状体の吐出を行うヘッド103と、ヘッド103に液状体を供給する液状体供給手段106と、を備えている。ヘッド103は、載置台102に対してX軸方向に往復動(主走査)可能なように、主走査手段104を介して本体部(図示せず)に取り付けられている。また、載置台102は、ヘッド103に対してY軸方向に往復動(副走査)可能なように、副走査手段105を介して本体部(図示せず)に取り付けられている。
【0020】
液状体供給手段106は、複数種の液状体をヘッド103に供給可能なように構成されている。使用される液状体としては、水や有機溶媒、およびこれらの溶液のほか、液体中に固体微粒子を分散させたものなどを採用することもできる。
【0021】
ヘッド103の載置台102に対する対向面(吐出面)には、図2に示すように、複数のヘッドモジュール11a,11b,11cが取り付けられており、ヘッドモジュール11a〜11cにはノズル17が形成されている。このノズル17は、主走査方向に直交する方向(Y軸方向)にライン状に配列されて、ノズル群としてのノズル列16a〜16fを構成している。
【0022】
本実施形態のノズル列16a〜16fはそれぞれ160個のノズルで構成されている。また、ノズル列16a〜16fの両端側には網掛け部を重ねて図示するノズルが存在するが、これらは使用しないダミーノズルとなっている。ノズル列16a〜16fは、それぞれ142μmのノズルピッチ構成となっており、ヘッド103がX軸方向に主走査された場合において、互いに補完し合って連続した71μmピッチの走査軌跡を描くような位置関係とされている。
【0023】
ヘッドモジュール11a(11b,11cについても同様)の内部構造は、図3に示すようになっている。すなわち、ヘッドモジュール11aは、ノズル17の個々と連通する液室であるキャビティ22と、各キャビティ22と連通するノズル列16a,16b単位の共通室であるリザーバ23とを備えている。キャビティ22の天蓋部24は可撓性膜25により可動するようになっており、天蓋部24と接合された圧力制御手段としての圧電素子26の駆動によってキャビティ22内の圧力が制御されるようになっている。
【0024】
キャビティ22の圧力制御は、より具体的には、圧電素子26に供給される電気パルスを用いて行われ、この圧力制御によってキャビティ22内の液状体をノズル17から吐出させることができる(詳しくは後述する)。かくして、ヘッド103の走査に同期して発信される電気パルスの供給/非供給の制御をノズル17毎に行うことにより、基板101上の任意の領域に液状体を配置(描画)することが可能となっている。
【0025】
ヘッド103には、ヘッドモジュール11a〜11c以外にも、図示を省略した他のヘッドモジュールが取り付けられている。当該他のヘッドモジュールは、ヘッドモジュール11a〜11cとは異なる種類の液状体に対応して設けられたものである。
【0026】
また、液滴吐出装置の構成は上述の態様に限定されるものではなく、例えば、ヘッド103の固定の下、載置台102がXY方向に往復動するような構成とすることもできるし、載置台102の固定の下、ヘッド103がXY方向に往復動するような構成とすることもできる。また、ノズル列16a〜16fのノズルピッチを変更したり、ノズル列16a〜16fの伸長方向をY軸方向に対して傾けた構成とすることもできる。
【0027】
次に、図4、図5、図6、図7を参照して、液滴吐出装置の電気的構成と電気パルスによる液滴の吐出について説明する。
図4は、液滴吐出装置の電気的構成を示すブロック図である。図5は、駆動信号の一例を示すタイミング図である。図6は、圧力制御の過程におけるヘッドモジュールの内部構造を示す要部断面図である。図7は、吐出量のノズル列内の分布の一例を示す図である。
【0028】
図4において、液滴吐出装置100は、走査制御および、各ノズル列16a〜16f(図2参照)毎の吐出制御を行う制御部120を備えている。制御部120は、外部インターフェース(I/F)121を介してホストコンピュータ107と接続され、また内部I/F122を介して、各ノズル列16a〜16fごとに設けられたヘッド駆動回路131および主走査手段104、副走査手段105と接続されている。
【0029】
制御部120は、CPU123と、CPU123のワークメモリやバッファメモリとして機能するRAM124と、各種制御情報を記憶するROM125と、クロック信号(CK)を生成する発信回路126と、電気パルスPS_A,PS_B(図5参照)を含んでなる駆動信号(COM)を生成する駆動信号生成回路127とを備えている。また、ヘッド駆動回路131は、各ノズル毎の圧電素子26に対応して、シフトレジスタ132、ラッチ回路133、レベルシフタ134、スイッチ135を備えている。
【0030】
ホストコンピュータ107は、描画対象面における液滴の配置を表したいわゆるビットマップ形式の描画パターンデータを制御部120に伝送する。そして、CPU123は、描画パターンデータをデコードしてノズル毎のON/OFF情報であるノズルデータを生成する。ノズルデータは、シリアル信号(SI)化されて、クロック信号(CK)に同期して各シフトレジスタ132に伝送される。
【0031】
シフトレジスタ132に伝送されたノズルデータは、ラッチ信号(LAT(図5参照))がラッチ回路133に入力されるタイミングでラッチされ、さらにレベルシフタ134でスイッチ135用のゲート信号に変換される。かくして、ノズルデータが「ON」の場合にはスイッチ135が開いて圧電素子26に駆動信号(COM(図5参照))が供給され、ノズルデータが「OFF」の場合には、スイッチ135が閉じられる。
【0032】
駆動信号(COM)は、図5に示すように、主走査と同期したタイミングで設定される一描画周期内に、中間電位で接続された第1の電気パルスPS_Aと第2の電気パルスPS_Bとを有している。「ON」とされたノズルの圧電素子26には第1および第2の電気パルスPS_A,PS_Bが連続して供給され、対応するキャビティ22の圧力制御が行われる。
【0033】
第1の電気パルスPS_Aは、中間電位からの充電を行う第1サブパルスp1Aと、第1サブパルスの終点の電位を維持する第2サブパルスp2Aと、第2サブパルスの維持電位からの放電を行う第3サブパルスp3Aと、第3サブパルスの終点の電位を維持する第4サブパルスp4Aと、第4サブパルスの維持電位からの中間電位への充電を行う第5サブパルスp5Aを有している。
【0034】
第1サブパルスp1Aが圧電素子26に供給されると、図6(a)に示すように、キャビティ22の容量が拡張されて内部の圧力が低下し(減圧過程)、液状体LのメニスカスMeがノズル17の内方に引き込まれる。また、第1サブパルスp1Aにより、キャビティ22を含む流路系にはヘルムホルツ共振が誘起され、第2サブパルスp2Aが圧電素子26に供給されている間において、キャビティ22の容量および内圧はこのヘルムホルツ共振に従って振動する。次いで、第3サブパルスp3Aが圧電素子26に供給されると、図6(b)に示すように、キャビティ22の容量が縮小されて内部の圧力が上昇し(加圧過程)、ノズル17から液状体Lが押し出される。押し出された液状体Lはその後液滴として飛行し、基板101(図1参照)上に配置される。
【0035】
第3サブパルスp3Aによって低下した電位レベルは、第4サブパルスp4Aを経て第5サブパルスp5Aによって中間電位まで回復される。第5サブパルスp5Aは、電位レベルの回復に加え、第3サブパルスp3Aによって誘起されたヘルムホルツ共振を強制的に打ち消す役割も担っている。
【0036】
第2サブパルスp2Aの時間成分:t2_Aは、第1サブパルスp1Aによって誘起されるヘルムホルツ共振と、第3サブパルスp3Aによって誘起されるヘルムホルツ共振との位相差のタイミングを規定する役割を果たしている。両者の共振の位相差によって、第3サブパルスp3Aによりノズル17から押し出される液状体の挙動は変わってくるため、この時間成分:t2_Aは、液滴の量(吐出量)や速度に関わる重要な要素の一つとなっている。
【0037】
また、吐出量は、キャビティ22周りの構造上のばらつきやリザーバ23とキャビティ22との位置関係などによっても影響されるため、吐出に係るノズル17によってばらつきを有する。図7は、あるノズル列について、ノズル17の配列方向を横軸にして吐出量の分布を示したものであり、この例では、第1の電気パルスPS_Aに対応する吐出量は、a1の分布幅(最小値と最大値の差)で、ノズル列の端部付近で相対的に多くなるような分布を示している。尚、図7は、ノズル列内の全てのノズル17から同時に液滴を吐出させたときの吐出量を示すものである。
【0038】
第1の電気パルスPS_Aに続いて圧電素子26に供給される第2の電気パルスPS_Bは、第1の電気パルスPS_Aと同様の構成を有している。すなわち、中間電位からの充電を行う第1サブパルスp1Bと、第1サブパルスの終点の電位を維持する第2サブパルスp2Bと、第2サブパルスの維持電位からの放電を行う第3サブパルスp3Bと、第3サブパルスの終点の電位を維持する第4サブパルスp4Bと、第4サブパルスの維持電位からの中間電位への充電を行う第5サブパルスp5Bを有している。
【0039】
サブパルスp1B〜p5Bの役割は、第1電気パルスPS_Aにおけるサブパルスp1A〜p5Aと同じであるが、サブパルスp1A〜p5Aとサブパルスp1B〜p5Bとでは、電圧、時間の成分に関して部分的に違えられている。とりわけ、第2サブパルスp2Aの時間成分:t2_Aと第2サブパルスp2Bの時間成分:t2_Bとが異なっており、これに起因して、ノズル列内における吐出量の分布にも違いが見られる(図7参照)。すなわち、この例では、第2の電気パルスPS_Bによる吐出量は、a2の分布幅(最小値と最大値の差)で、ノズル列の端部付近で相対的に少なくなるような分布を示している。
【0040】
図7に示されるように、ノズル列内における吐出量の分布の傾向は、第1の電気パルスPS_Aに係る液滴と第2の電気パルスPS_Bに係る液滴とで明らかな差があり、あたかも異なるノズル列であるかのような性質を示している。このため、両液滴の総和としての吐出量に着目すると、単独の電気パルスに係るノズル間のばらつきは統計的に分散され、当該ばらつきは実質的に縮小されていると考えることができる。これにより、両液滴の総和に係る吐出量の分布幅b(最小値と最大値の幅)は、単独の電気パルスに係る吐出量の分布幅a1,a2の単純和:a1+a2よりも小さくなっている。
【0041】
このように、本実施形態の液滴吐出装置100(図1参照)は、一描画周期内において複数種の電気パルスによる液滴をペアとして吐出するようになっており、ノズル間の吐出量のばらつきについて実質的な低減を図るようになっている。
【0042】
吐出量のばらつき分布の傾向は、特に、第2サブパルスp2A,p2Bの時間成分:t2_A,t2_Bに対して強い依存性を有する。但し、当該成分の調整により全く自由な制御が可能であるというわけではなく、本実施形態にあっても、ヘッドモジュール単位で個々にt2_A,t2_Bおよび他の成分の適正化を図ることで、分布幅bを小さくするような工夫が行われている。尚、いうまでもないが、サブパルスの成分の最適化においては、ノズル列内の平均吐出量や液滴の平均速度、吐出安定性などにも十分配慮する必要がある。
【0043】
(液晶表示装置)
次に、図8を参照して、本発明に係る電気光学装置の一例としての液晶表示装置について説明する。
図8は、液晶表示装置の要部構造を示す概略断面図である。
【0044】
図8に示すように、電気光学装置としての液晶表示装置250は、パッシブマトリクス型液晶表示装置であって、複数の着色膜264を有するカラーフィルタ基板(CF基板)261と、複数の電極268を有する対向基板271と、CF基板261と対向基板271との間に狭持された液晶270とを備えた液晶表示パネル260を有している。このような液晶表示装置250は、受光型の表示装置であるため、例えば対向基板271の背面側にLED素子、EL、冷陰極管などの光源を有する照明装置(図示を省略)を備えている。尚、本実施形態の液晶表示装置250は、これに限定されず、例えば対向基板271にTFTやTFDなどのスイッチング素子を備えたアクティブマトリクス型液晶表示装置であってもよい。
【0045】
対向基板271には、例えば透明な樹脂またはガラス基板が用いられており、CF基板261との対向面側にITOからなる透明な複数の電極268を有している。電極268は、対向するCF基板261に設けられたITOからなる透明な電極266と直交してY方向に延在している。すなわち、液晶表示パネル260は、互いに対向すると共に直交して格子状に配置された電極266と電極268とを有している。そして電極266と電極268とが直交して重なった部分が表示用の画素領域となっている。
【0046】
CF基板261は、例えば透明な樹脂またはガラス基板を用いており、所定のパターンで形成された遮光膜262と、遮光膜262の上に形成されたバンク263とを備えている。また、遮光膜262およびバンク263によって区画された区画領域にR(赤色)、G(緑色)、B(青色)に対応する着色膜264と、着色膜264とバンク263を覆う平坦化層としてのOC(オーバーコート)膜265とを備えている。電極266はOC膜265上に形成されている。尚、電極266との密着性を確保するために、OC膜265の上にさらにSiO2などの薄膜を形成するようにしてもよい。
【0047】
液晶表示パネル260は、このようなCF基板261と対向基板271とをギャップ材272を介して所定の間隔で対向配置させ、両基板261,271の間に図示しないシール材により液晶270を封止したものである。基板261,271における液晶270の封入面側には、液晶270の分子を所定の方向に配向させる配向膜267,269が設けられている。
【0048】
尚、液晶表示パネル260の前面側と背面側の表面には、通常、入射あるいは出射する光を偏向させる偏光板や、視角等を改善するための光学機能性フィルムとしての位相差フィルム等が配設されるが、これらは省略している。
【0049】
遮光膜262は、CF基板261上に、Cr、Ni、Al等の不透明な金属、あるいはこれらの金属の酸化物等の化合物を材料として、気相法とフォトリソグラフィー法を用いて製造することができる。
【0050】
バンク263は、遮光膜262が形成されたCF基板261上に、ロールコート法やスピンコート法により厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成した後、フォトリソグラフィー法によりパターニングを施して得ることができる。
【0051】
機能性膜としての着色膜264B,264G,264Rは、上述した液滴吐出装置を用いて、それぞれB,G,Rに対応する三色の色材(有機顔料)を含む液状体(着色液)をバンク263による区画領域内に配置し、配置された液状体を乾燥等により固化(膜化)すること(液滴吐出法)により形成することができる。尚、液状体の配置に関する詳しい工程については後述する。
【0052】
機能性膜としてのOC膜265は、透明なアクリル系樹脂を含む液状体を用いて、スピンコート法、オフセット印刷により形成することができるほか、液滴吐出法により形成することもできる。
【0053】
機能性膜としての電極266,268は、気相法およびフォトリソグラフィー法を用いて形成することができるほか、Au,Ag,Pt等の金属微粒子の分散液を用いて液滴吐出法により形成することもできる。
【0054】
機能性膜としての配向膜267,269は、上述した液滴吐出装置100を用いてポリイミド樹脂等を含む液状体をパターン配置して樹脂膜を形成した後、ラビング処理により配向性を付与して形成することができる。
【0055】
(電子機器)
次に、図9を参照して、本発明に係る電子機器の一例としての携帯型情報処理装置について説明する。
図9は、携帯型情報処理装置を示す概略斜視図である。
【0056】
図9に示すように、電子機器としての携帯型情報処理装置300は、入力用のキーボード301を有する情報処理装置本体303と、表示部302とを備えている。表示部302には、上述した液晶表示装置250が用いられている。尚、液晶表示装置250を搭載する電子機器の他の例としては、携帯電話、腕時計等がある。
【0057】
(液状体配置方法)
次に、図5、図10、図11を参照して、本発明に係る液状体配置方法について、CF基板上における着色膜の形成に係る例を挙げて説明する。
図10(a),(b)はそれぞれ、第1走査および第2走査における基板に対するヘッドモジュールの走査位置を示す平面図である。図11(a),(b)はそれぞれ、第1走査および第2走査における区画領域に対する液状体の配置位置を模式的に示す平面図である。
【0058】
図10において、CF基板261上への液状体の配置(描画)は、液滴吐出装置100(図1参照)を用い、ヘッドモジュール11a〜11cの主走査とCF基板261の所定量の移動(副走査)とを交互に繰り返すことで行われる。例えば、CF基板261上の領域40に対しては、第1走査(図10(a))においてはヘッドモジュール11cのノズルから、第2走査(図10(b))においてはヘッドモジュール11bのノズルから、それぞれ液滴(液状体)の吐出が行われることになる。
【0059】
CF基板261上には、図11に示すように、バンク263により区画された一の領域としての区画領域41R,41G,41Bが、走査方向(XY軸方向)に規則的に設けられている。ここで、区画領域41R,41G,41Bはそれぞれ、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の着色膜264(図8参照)を形成するための区画領域であり、液晶表示装置250(図8参照)とされた状態においていわゆるストライプ型の画素配列を構成するようになっている。
【0060】
液滴(液状体)の吐出は、ノズル列の走査位置に同期して行われるようになっており、本実施形態では、区画領域41R,41G,41Bの主走査方向(X軸方向)の配列のピッチPに対応して駆動信号(図5)の描画周期が設定されるようになっている。R(赤色)に対応する液滴(液状体)の配置位置を表す図11の例では、区画領域41R上の走査位置に対応する描画周期では液滴が吐出され、区画領域41G,41B上の走査位置に対応する描画周期では液滴が吐出されない(非駆動)ようになっている。また、バンク263にかかる位置のノズルについては、描画周期に関係なく液滴が吐出されない(非駆動)ようになっている。
【0061】
第1走査(図11(a))では、一の区画領域41Rに対して、互いに隣接する二つのノズルにより、第1の電気パルスPS_A(図5)による液滴(Aで図示)の吐出が先ず行われ(第1吐出ステップ)、続いて第2の電気パルスPS_B(図5)による液滴(Bで図示)の吐出が行われる(第2吐出ステップ)。さらに、第2走査(図11(b))では、上記一の区画領域41Rに対して、第1走査とは異なる別の二つのノズルにより、第1の電気パルスPS_A(図5)による液滴(Aで図示)の吐出が先ず行われ(第1吐出ステップ)、続いて第2の電気パルスPS_B(図5)による液滴(Bで図示)の吐出が行われる(第2吐出ステップ)。
【0062】
CF基板261の表面には、O2プラズマ処理等による親液化処理があらかじめ施されており、第1走査および第2走査で吐出(配置)された液滴は区画領域41R,41G,41B内に濡れ広がる。この際、液滴が区画領域41R,41G,41B内に均一に濡れ広がるように、第1走査による液滴の配置位置と第2走査による液滴の配置位置とは、Y軸方向にノズルの走査ピッチの約半分の距離だけオフセットされるようになっている。
【0063】
上述のように、第1の電気パルスPS_A(図5)により吐出される液滴(Aで図示)と第2の電気パルスPS_B(図5)により吐出される液滴(Bで図示)とは、一の区画領域内に対して、同一走査で配置されるようになっている。これらの両液滴(A,Bで図示)は、同一のノズルから吐出されながらも、他のノズルと比較した吐出量のばらつきに関して互いに異なる性質を示しており(図7参照)、擬似的に異なるノズルで吐出されたものとみなすことができる。このため、ノズル間の吐出量のばらつきは実質的に分散され、少ないムラで液状体を配置することができる。
【0064】
また、第1走査と第2走査とで、一の区画領域に対して互いに異なるノズルにより液滴が吐出されるようになっていることから、ノズル間の吐出量のばらつきはより一層分散され、より一層少ないムラで液状体を配置することができる。
【0065】
かくして、このような過程を経て形成された着色膜264R,264G,264B(図8参照)を備える液晶表示装置、および当該液晶表示装置を備える携帯型情報処理装置は、高品質である。
【0066】
(変形例1)
次に、実施形態の変形例1について、先の実施形態との相違点を中心に、図12を参照しながら説明する。
図12は、変形例1に係る駆動信号の構成を示すタイミング図である。
【0067】
この変形例1の駆動信号(COM)においては、第1の電気パルスPS_Aと第2の電気パルスPS_Bとが異なる描画周期とされ、互いに交互に並んで配置されている。このように、第1の電気パルスPS_Aと第2の電気パルスPS_Bとは、必ずしも同一描画周期とされていなくてもよい。尚、この駆動信号(COM)を用いてCF基板上への液状体の配置を行う場合は、一の区画領域に対して二描画周期分の液滴の吐出が行われることになるので、それに対応した描画パターンデータを用意する必要がある。
【0068】
(変形例2)
次に、実施形態の変形例2について、先の実施形態との相違点を中心に、図13を参照しながら説明する。
図13は、変形例2に係る駆動信号の構成を示すタイミング図である。
【0069】
この変形例2の駆動信号(COM)は、一描画周期内に、連続する二つの第1の電気パルスPS_A,PS_Aと、連続する二つの第2の電気パルスPS_B,PS_Bとを含んでいる。このように、第1の電気パルスPS_Aと第2の電気パルスPS_Bとは、必ずしも交互に並んで配置されていなくてもよい。尚、この駆動信号(COM)を用いてCF基板上への液状体配置を行う場合は、一の区画領域に対して1ノズルあたり4つの液滴(一描画周期分)が吐出されることになるので、一度の走査で当該一の区画領域内への液状体の配置は完了することになる。
【0070】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
例えば、上述した描画方法を用いて形成される機能性膜の別の例として、例えば、有機EL表示装置における発光膜、プラズマディスプレイ装置における蛍光膜、あるいは、電気回路部分において利用される導電膜(導電配線)や高抵抗膜(抵抗素子)などが挙げられる。
また、上述の実施形態では、2種類の電気パルスにより吐出される液滴をCF基板上の区画領域内に配置するようにしていたが、より多種類の電気パルスを組み合わせた態様とすることもできる。
また、各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略したり、図示しない他の構成と組み合わせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】液滴吐出装置の全体構成を示す概略図。
【図2】ヘッドの吐出面を示す平面図。
【図3】ヘッドモジュールの内部構造の一例を示す要部断面図。
【図4】液滴吐出装置の電気的構成を示すブロック図。
【図5】駆動信号の一例を示すタイミング図。
【図6】(a),(b)は、圧力制御の過程におけるヘッドモジュールの内部構造を示す要部断面図。
【図7】吐出量のノズル列内の分布の一例を示す図。
【図8】液晶表示装置の要部構造を示す概略断面図。
【図9】携帯型情報処理装置を示す概略斜視図。
【図10】(a)は、第1走査における基板に対するヘッドモジュールの走査位置を示す平面図。(b)は、第2走査における基板に対するヘッドモジュールの走査位置を示す平面図。
【図11】(a)は、第1走査における区画領域に対する液状体の配置位置を模式的に示す平面図。(b)は、第2走査における区画領域に対する液状体の配置位置を模式的に示す平面図。
【図12】変形例1に係る駆動信号の構成を示すタイミング図。
【図13】変形例2に係る駆動信号の構成を示すタイミング図。
【符号の説明】
【0072】
11a〜11c…ヘッドモジュール、16a〜16f…ノズル群としてのノズル列、17…ノズル、22…ノズルと連通する液室としてのキャビティ、26…圧力制御手段としての圧電素子、41R,41G,41B…基板の一の領域としての区画領域、100…液滴吐出装置、101…基板、103…ヘッド、250…電気光学装置としての液晶表示装置、261…基板としてのカラーフィルタ(CF)基板、263…バンク、264R,264G,264B…機能性膜としての着色膜、265…機能性膜としてのオーバーコート(OC)膜、266,268…機能性膜としての電極、300…電子機器としての携帯型情報処理装置、L…液状体、PS_A…第1の電気パルス、PS_B…第2の電気パルス、p1A,p1B…第1サブパルス、p2A,p2B…第2サブパルス、p3A,p3B…第3サブパルス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルからなるノズル群を有するヘッドの基板に対する走査の下、前記ノズルと連通する液室の圧力を制御する圧力制御手段に電気パルスを供給して、当該ノズルから液状体を吐出することにより、前記基板に当該液状体を配置する液状体配置方法であって、
第1の前記電気パルスを用いて、前記基板の一の領域内に対して前記液状体の吐出を行う第1吐出ステップと、
前記第1吐出ステップと同一の前記走査、同一の前記ノズルにより、第2の前記電気パルスを用いて、前記一の領域内に対して前記液状体の吐出を行う第2吐出ステップと、を有することを特徴とする液状体配置方法。
【請求項2】
前記第1の電気パルスを用いて吐出を行った際の前記ノズル群内の吐出量の分布幅をa1、前記第2の電気パルスを用いて吐出を行った際の前記ノズル群内の吐出量の分布幅をa2、前記第1および第2の電気パルスの両方を用いて吐出を行った際の前記ノズル群内の総和の吐出量の分布幅をbとしたときに、
b<a1+a2を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液状体配置方法。
【請求項3】
前記第1および第2の電気パルスが、前記液室を減圧するための第1サブパルスと、前記第1サブパルスの終点の電位を保持する第2サブパルスと、前記第2サブパルスに続いて前記液室を加圧して前記液状体を前記ノズルから吐出させるための第3サブパルスを有している請求項1または2に記載の液状体配置方法であって、
少なくとも前記第2サブパルスの時間成分が、前記第1の電気パルスと前記第2の電気パルスとで違えられていることを特徴とする液状体配置方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液状体配置方法を用いて前記液状体を前記基板に配置する工程と、
当該配置された液状体を固化して機能性膜を形成する工程と、を有することを特徴とする前記機能性膜を構成要素として備える電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
複数のノズルからなるノズル群を有するヘッドの基板に対する走査の下、前記ノズルと連通する液室の圧力を制御する圧力制御手段に電気パルスを供給して、当該ノズルから前記基板の一の領域に対して液状体が吐出され、当該吐出された液状体の固化により形成された機能性膜を構成要素として備える電気光学装置であって、
前記一の領域内に対する前記液状体の吐出は、第1および第2の電気パルスをそれぞれ用いて行われており、
前記第1の電気パルスを用いた吐出と前記第2の電気パルスを用いた吐出とは、同一の前記走査、同一の前記ノズルにより行われていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−244977(P2007−244977A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70697(P2006−70697)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】