説明

液状接着剤

【課題】 接着剤の厚みを薄くすることができ、ハンドリング性や作業性を向上させることのできる液状接着剤を提供する。
【解決手段】 未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とを備え、色素増感型太陽電池1を構成する一対の透明板2・2Aにおける一方の対向面周縁部に未硬化液状接着剤(A)を、他方の対向面周縁部に未硬化液状接着剤(B)をそれぞれ塗布し、各溶媒の揮発後に貼着することにより、一対の透明板2・2Aを強固に硬化接着する。未硬化時にも定型の二成分定型接着剤ではなく、貼着までは硬化しない未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とからなる液状接着剤を使用するので、接着厚を薄くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存性と高い接着力とを有するシリコーンゴム等からなる液状接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接着剤は宇宙、航空、車両、船舶、電気、電子、土木等、幅広い分野で用いられ、特にシリコーン系の接着剤は、耐熱性、耐寒性、耐候性、電気絶縁性等に優れていることから、通常のタイプでは利用できない用途にも好適に使用されている。しかしながら、従来のシリコーン系接着剤は、液状あるいはペースト状であり、被着体の貼着時に食み出して必要ない部分まで汚染したり、仕上げが汚かったり、接触に伴い手や指がべとつく等の問題がある。
【0003】
このような問題を解消する接着剤として、シリコーンゴム定型未硬化接着剤が提案されている。このシリコーンゴム定型未硬化接着剤としては、1成分のシリコーン付加型定型接着剤が知られている(特許文献1、2、3参照)が、1成分型なので、長期の常温保存には、安定性に欠けるおそれが少なくない。
【0004】
また、付加硬化型シリコーン未硬化成形物を硬化させる方法として、硬化成分の一部を除いた組成で成形物を作成し、後に除外した成分をシートに接触あるいは移行させることにより硬化を図る例として、ハイドロジェンシロキサンを未硬化シートに塗布、あるいは硬化したシートにハイドロジェンポリシロキサンを含浸させ、未硬化シートに硬化シートを接触させることにより、未硬化シートを硬化させる技術が知られている(特許文献4参照)。また、未硬化成形体にヒドロシリル化触媒である白金化合物を塗布することにより、硬化させる技術も知られている(特許文献5参照)。
【0005】
しかし、従来においては、保存性が十分でなかったり、未硬化成形体に液体を塗布したり、あるいは硬化成形体と一体化する必要がある等、接着剤として用いる場合には問題が少なくなかった。このような問題を解消する接着剤として、二成分定型接着剤が提案されている(特許文献6参照)。
【特許文献1】特開平01‐197587号公報
【特許文献2】特開平06‐108608号公報
【特許文献3】特開平10‐017828号公報
【特許文献4】特開昭59‐059725号公報
【特許文献5】特開平11‐050038号公報
【特許文献6】特開2005‐60549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の二成分定型接着剤は、未硬化でも定型であるため、キャリアフィルムを用いたとしても、ハンドリングの観点から100μm以上の厚みが必要とされる。だが近年、電気電子等の分野においては、接着厚を薄くすることを要求されることが多い。例えば色素増感太陽電池等においては、接着厚が50μm以下とされる場合が少なくない。また、従来の二成分定型接着剤では、接着形状が複雑になると、ハンドリングが困難となり、作業性の著しい低下を招くという大きな問題がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、接着剤の厚みを薄くしたり、ハンドリング性や作業性を向上させることのできる液状接着剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とを含むものであって、
未硬化液状接着剤(A)は、
1)少なくとも2個のアルケニル基を有し、25℃における粘度が100,000mPa・s以上のオルガノポリシロキサン 100重量部
2)ヒドロシリル化触媒 (A)及び(B)を硬化させるのに十分な量
4)充 填 剤 1〜2,000重量部
5)接着賦与剤 0〜10重量部
6)溶 媒 10〜2,000重量部
とを含有する組成物からなり、
未硬化液状接着剤(B)は、
1)少なくとも2個のアルケニル基を有し、25℃における粘度が100,000mPa・s以上のオルガノポリシロキサン 100重量部
3)少なくとも2個のヒドロシリル基を有し、粘度が10〜1,000mPa・s以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサン (A)及び(B)成分由来のアルケニル基の
合計に対してケイ素原子結合水素原子の量が
モル比で0.01〜20.0となる量
4)充 填 剤 1〜2,000重量部
5)接着賦与剤 0〜10重量部
6)溶 媒 10〜2,000重量部
とを含有する組成物からなり、
5)の総量を1)の総量200重量部に対して0.1〜20重量部としたことを特徴としている。
【0009】
なお、相対向する一対の被着体の一方に未硬化液状接着剤(A)を、他方に未硬化液状接着剤(B)をそれぞれ塗布し、溶媒を揮発させた後に貼り合わせて硬化接着することが好ましい。
また、溶媒を揮発させた後の未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の可塑度を、ウイリアムス可塑度計で測定した場合にそれぞれ30〜500の範囲とすることが好ましい。
また、溶媒を揮発させた後の未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の厚みをそれぞれ1mm以下とすることが好ましい。
【0010】
また、溶媒を揮発させた後の未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の表面における粘着性を、JISZ 0237に基づく試験法で測定した場合にそれぞれボールナンバーが4〜21の範囲とすることができる。
また、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の少なくともいずれか一方に、スペーサを充填することができる。
【0011】
さらに、50μm以下の隙間をおいて相対向する一対の被着体の一方に未硬化液状接着剤(A)を、他方に未硬化液状接着剤(B)をそれぞれ塗布し、溶媒を揮発させた後に貼り合わせて硬化接着することもできる。
さらにまた、50μm以下の隙間をおいて相対向する色素増感型太陽電池の一対の透明板の一方の周縁部に未硬化液状接着剤(A)を、他方の周縁部に未硬化液状接着剤(B)をそれぞれスクリーン印刷し、各溶媒を揮発させた後に貼り合わせて硬化接着することもできる。
【0012】
ここで特許請求の範囲における被着体に未硬化液状接着剤(A)や未硬化液状接着剤(B)を塗布する手段としては、例えばスクリーン印刷法や刷毛の使用等があげられる。溶媒は、シリコーンに溶解するものが好ましいが、特に限定されるものではない。また、一対の被着体の間には、ボール形等のスペーサを複数介在し、この複数のスペーサにより一対の被着体の間に隙間を形成することができる。被着体は、例えば対向するガラス板、基板、シート、フィルム等があげられ、単数複数、可撓性、透過性の有無を特に問うものではない。さらに、液状接着剤は、少なくとも宇宙、航空、車両、船舶、液晶、精密機器、通信、電気、電子、土木、放熱等の分野で用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接着剤の厚みを薄くすることができるとともに、ハンドリング性や作業性を向上させることができるという効果がある。また、貼り合わせるまで硬化しないので、優れた長期保存性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における液状接着剤は、図1に示すように、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とを備え、例えば建築物用の色素増感型太陽電池1を構成する一対の透明板2・2Aにおける一方の対向面周縁部に未硬化液状接着剤(A)が、他方の対向面周縁部に未硬化液状接着剤(B)がそれぞれ刷毛等によりエンドレスの枠形に薄く塗布され、溶剤揮発後の乾燥した未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とが貼着されることにより、一対の透明板2・2Aを強固に硬化接着するよう機能する。
【0015】
未硬化液状接着剤(A)は、1)少なくとも2個のアルケニル基を有し、25℃における粘度が100,000mPa・s以上のオルガノポリシロキサンを100重量部、2)ヒドロシリル化触媒を(A)及び(B)を硬化させるのに十分な量、4)充填剤を1〜2,000重量部、5)接着賦与剤を0〜10重量部、6)溶媒を10〜2,000重量部含有する組成物からなる。
【0016】
また、未硬化液状接着剤(B)は1)少なくとも2個のアルケニル基を有し、25℃における粘度が100,000mPa・s以上のオルガノポリシロキサンを100重量部、3)少なくとも2個のヒドロシリル基を有し、粘度が10〜1,000mPa・s以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを(A)及び(B)成分由来のアルケニル基の合計に対してケイ素原子結合水素原子の量がモル比で0.01〜20.0となる量、4)充填剤を1〜2,000重量部、5)接着賦与剤を0〜10重量部、6)溶媒を10〜2,000重量部含有する組成物からなり、5)の接着賦与剤の総量は1)のオルガノポリシロキサンの総量200重量部に対して0.1〜20重量部とされる。
【0017】
1)オルガノポリシロキサンは、液状接着剤の主成分であり、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)のそれぞれに含有される。このオルガノポリシロキサンは1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有することを特徴とし、このアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等があげられ、これらの中ではビニル基が好ましい。
【0018】
オルガノポリシロキサン中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基があげられ、これらの中ではメチル基が好ましい。
【0019】
オルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝鎖状等の構造があげられる。また、オルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、100,000mPa・s以上、好ましくは10,000,000mPa・s以上が良い。
【0020】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、式:(CH33SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:(CH32(CH2=CH)SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるポリオルガノシロキサン、これらのポリオルガノシロキサンのメチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等のアルキル基及び又はフェニル基、トリル基等のアリール基及び又は3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換したポリオルガノシロキサン、これらのポリオルガノシロキサンのビニル基の一部又は全部をアリル基、プロペニル基等のアルケニル基で置換したポリオルガノシロキサン、及びこれらのポリオルガノシロキサンの二種以上の混合物が例示される。
【0021】
2)ヒドロシリル化触媒としては、白金系触媒が好適に使用される。この白金系触媒としては、具体的に白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とジケトンの錯体、塩化白金酸とオレフィン類の錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体、及びこれらをアルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に担持させたものが例示される。これらの中でも、塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体がヒドロシリル化反応触媒としての触媒活性が高いので好ましく、特に特公昭42−22924号公報に開示されているような塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が最適である。
【0022】
ヒドロシリル化触媒の量は、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)を硬化させるのに十分な量、具体的には未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)に含まれるオルガノポリシロキサンの総量1,000,000重量部に対して白金金属原子として1〜1000重量部、好ましくは1〜100重量部が良い。
【0023】
3)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、液状接着剤の硬化剤として作用するものであり、少なくとも2個のヒドロシリル基を有することを特徴とし、ケイ素原子に結合する結合基を有する。ケイ素原子に結合する結合基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基があげられ、これらの中ではメチル基が最適である。
【0024】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造としては、例えば直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝鎖状等の構造があげられる。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、特に限定されるものではないが、1〜1,000,000mPa・s以上、好ましくは10〜1,000mPa・s以上が良い。
【0025】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、環状ポリメチルハイドロジェンシロキサン、式:(CH32SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるポリオルガノシロキサン、これらのポリオルガノシロキサンのメチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換したポリオルガノシロキサン、及びこれらのポリオルガノシロキサンの二種以上の混合物が例示される。これらの中では、得られる硬化物の機械的特性、特には伸びが向上することから、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンの混合物であることが好ましい。
【0026】
未硬化液状接着剤(B)に含有されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)に含まれるオルガノポリシロキサン中のアルケニル基に対するオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20となる量、好ましくは0.1〜10となる量、より好ましくは0.1〜5となる量が良い。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、上記範囲の下限以上とすることにより、得られる液状接着剤に良好な硬化性を付与することができる。また、上記範囲の上限以下とすることにより、得られる接着剤硬化物の機械的特性を向上させることができる。
【0027】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、分子鎖量末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンと分子鎖側鎖にケイ素原子結合を有するポリオルガノシロキサンの混合物を用いる場合には、前者の分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンの含有量は、1)オルガノポリシロキサン中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜10となる量、好ましくは0.1〜10となる量、より好ましくは0.1〜5となる量であるのが良い。
【0028】
後者の分子鎖側鎖にケイ素原子結合を有するポリオルガノシロキサンの含有量は、1)オルガノポリシロキサン中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜20となる量が最適である。
【0029】
4)充填剤は、液状接着剤を構成する組成物の形状保持性、機械的強度を向上させるため、あるいは導電性、熱伝導性、難燃性等の機能付与のために添加される。この充填剤としては、通常、シリコーンゴムの配合に用いられる化合物が使用される。形状保持性、機械的強度を向上させる充填剤としては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、焼成シリカ、粉砕石英、及びこれらのシリカ粉末をオルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物で表面処理した粉末等のシリカ系充填剤;炭酸カルシウム等が使用される。
【0030】
炭酸カルシウムとしては、重質、軽質あるいはコロイダル炭酸カルシウムの何れをも用いることができる。これらの中では、得られる接着剤硬化物の機械的強度を十分に向上させるため、BET比表面積が50m2/g以上のシリカ粉末が最適である。
【0031】
導電性、熱伝導性、難燃性等の機能付与のために添加される充填剤としては、例えばヒュームド酸化チタン、カーボンブラック、珪藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、窒化硼素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、金属粉体、これらの表面を上記有機ケイ素化合物で処理した充填剤等が使用される。
【0032】
充填剤は、未硬化液状接着剤(A)、未硬化液状接着剤(B)において、それぞれオルガノポリシロキサンの100重量部に対して1〜2000重量部用いられる。この充填剤として、シリカ系充填剤や炭酸カルシウム系充填剤のみを用いる場合には、未硬化液状接着剤(A)、未硬化液状接着剤(B)において、それぞれオルガノポリシロキサンの100重量部に対して1〜1000重量部、好ましくは1〜400重量部用いるのが良い。
【0033】
これは、1重量部未満の場合には、接着剤の形状保持が不十分となり、硬化後の機械的強度の向上が期待できないからである。逆に、1000重量部を超える場合には、接着剤が硬くなり、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とを貼着したときに、各表面の凹凸が押圧力により形状変化することができずに凹凸が残り、貼着面に気泡が残存して接着強度が低下するからである。
【0034】
導電性、熱伝導性、難燃性等の機能付与のために充填剤を添加する場合には、未硬化液状接着剤(A)、未硬化液状接着剤(B)において、それぞれオルガノポリシロキサンの100重量部に対して10〜2000重量部用いるのが好ましく、10重量部以上使用すれば、シリカ系充填剤や炭酸カルシウム系充填剤を用いずとも形状保持性を付与することができる。
【0035】
これは、10重量部未満の場合には、目的とする機能付与が不十分となり、逆に2000重量部を超える場合には、接着剤が硬くなり、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とを貼着した際、貼着面に気泡が残存して接着強度が低下するからである。
【0036】
勿論、シリカ系充填剤や炭酸カルシウム系充填剤と導電性、熱伝導性、難燃性等の機能付与のための充填剤を併用することもできる。この場合、充填剤全体として未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)において、それぞれオルガノポリシロキサンの100重量部に対して1〜2000重量部の範囲で用いるが、シリカ系充填剤や炭酸カルシウム系充填剤を上限目一杯使用することなく、接着剤の硬さを勘案して適宜減量して用いると良い。
【0037】
また、導電性、熱伝導性、難燃性等の機能付与のための充填剤もある程度の機械的強度向上効果や形状保持効果を発揮するので、併用の際には、シリカ系充填剤や炭酸カルシウム系充填剤の1重量部以外の使用に限定する必要はない。
【0038】
5)接着賦与剤は、接着性を付与して接着剤として機能させる。この接着賦与剤は、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N―(2−アミノエチル)―3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等のシランカップリング剤、及びこれらの部分加水分解物;エポキシ基、酸無水物基、α―シアノアクリル基を有する有機化合物、及びこれらの基を含有するシロキサン化合物、あるいはこれらの基とアルコキシシリル基、あるいはヒドロシリル基を併有する有機化合物若しくはシロキサン化合物;テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンエチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート等のチタン化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウム化合物;ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテー等のジルコニウム化合物を含有しても良い。
【0039】
これら接着賦与剤の含有量は、未硬化液状接着剤(A)、未硬化液状接着剤(B)それぞれに含まれなくても良い任意の量であり、1)オルガノポリシロキサンの100重量部に対して0〜10重量部であるが、1)オルガノポリシロキサンの総量200重量部に対して0.1〜20重量部となる量であるとともに、未硬化液状接着剤(A)、未硬化液状接着剤(B)それぞれにおいて、1)オルガノポリシロキサンの100重量部に対して0.01〜10重量部である必要がある。
【0040】
シリコーン組成物には、硬化性を調整するため、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−フェニル−1−ブチン−3−オール等のアセチレン系化合物;3−メチル−1−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7―テトラメチル―1,3,5,7―テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7―テトラメチル―1,3,5,7―テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等の1分子中にビニル基を5質量%以上持つオルガノシロキサン化合物;ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、ヒドラジン類等の硬化抑制剤を含有しても良い。これらの硬化抑制剤の含有量は、限定されるものではないが、1)オルガノポリシロキサンの100重量部に対して0.001〜5重量部であるのが好適である。
【0041】
6)溶媒については、特に限定されるものではなく、有機高分子を溶解する有機溶媒を使用すれば良い。この有機高分子を溶解する有機溶媒としては、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素系、n−ヘキサン、リグロイン、ケロシン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素系、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環式炭化水素系、メタノール、エタノール、n−プロピルアアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル等の酢酸エステル類やマロン類エステル類、コハク酸エステル類、アジピン酸エステル類、フタル酸エステル類等のエステル系の溶媒があげられる。
【0042】
溶媒の配合量については、1)オルガノポリシロキサンの100重量部に対して10〜2000重量部が良い。これは、溶媒の配合量が10重量部未満の場合には、未硬化液状接着剤(A)、未硬化液状接着剤(B)の粘度が高くなり、塗工が不可能になるという理由に基づく。逆に、2000重量部を超える場合には、未硬化液状接着剤(A)、未硬化液状接着剤(B)の粘度が低くなり、溶媒の揮発時間に長時間を要することから、塗工物が流れてしまい、作業性の低下を招くという理由に基づく。
【0043】
本組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、必要に応じて任意の成分を2本ロール、ニーダーミキサー、ロスミキサー等の混練装置を使用して混合し、本組成物を調製することができるが、1)オルガノポリシロキサンと4)充填剤とを加熱混合して調製したベースコンパウンドに、残りの成分を添加することが好ましい。この残りの成分を添加する場合、ベースコンパウンドを調製する際に添加しても良い。
【0044】
また、この添加成分が加熱混合により変質するおそれがある場合には、2)ヒドロシリル化触媒、3)オルガノハイドロジェンポリシロキサンを添加する際に添加するのが良い。ベースコンパウンドを調製する際、有機ケイ素化合物を添加して5)接着賦与剤の表面をin−situ処理しても良い。
【0045】
各溶媒揮発後の未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の可塑度は、ウイリアムス可塑度計で測定された場合にそれぞれ30〜500の範囲、好ましくは100〜500の範囲とされる。これは、可塑度が30未満の場合には、溶媒揮発後の未硬化液状接着剤(A)、未硬化液状接着剤(B)の形状保持性に支障を来たすという理由に基づく。逆に、可塑度が500を超える場合には、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の貼り合わせの際、界面に残留した気泡を除去することが困難であり、残留した気泡により接触面積が低下して接着力の低下を招くという理由に基づく。
【0046】
また、各溶媒揮発後の未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の厚みは、それぞれ1mm以下、合計2mm以下とされる。これは、2mmを超える場合には、貼り合わせ面から2mmを超える部分で未硬化の生じるおそれがあるからである。
【0047】
また、各溶媒揮発後の未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の表面における粘着性、換言すれば、表面タックは、JISZ 0237(球転法)に基づく試験法で測定された場合にそれぞれボールナンバーが4〜21の範囲とされる。これは、ボールナンバーが4未満の場合には、透明板2・2Aに対する粘着性を十分に維持することができなくなるからである。また、ボールナンバーが21を超える場合には、貼り合わせの際に空気を抜くことが困難になるからである。
【0048】
未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とを色素増感型太陽電池1の透明板2・2Aに接着する場合には、透明板2・2Aにプライマーを塗布して接着性を高めることができる。プライマーは表面処理剤を溶媒又は分散媒に溶解したものであり、この表面処理剤はシランカップリング剤であるのが好ましい。このシランカップリング剤としては、エポキシ基含有シラン又はそれらの部分加水分解縮合物、(メタ)アクリル基含有シラン又はそれらの部分加水分解縮合物、ビニル基含有シラン又はそれらの部分加水分解縮合物、環状シロキサン、鎖状シロキサン、及びシアヌル環含有有機ケイ素化合物からなる群から選択される1又は2以上の物質を用いると良い。
【0049】
エポキシ基含有シランの例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシラン等があげられる。
【0050】
(メタ)アクリル基含有シランとしては、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン等があげられる。また、ビニル基含有シランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等があげられる。
【0051】
環状シロキサンとしては、3−グリシドキシプロピル基含有メチルハイドロジェン環状テトラシロキサン、3−メタクリロオキシプロピル基含有メチルハイドロジェン環状テトラシロキサン、3−グリシドキシプロピル基含有メチルメトキシ環状シロキサン、3−グリシドキシプロピル基と2−(トリメトキシシリル)エチル基を有するメチルハイドロジェン環状シロキサン、2−[(3−トリメトキシシリル)プロピルオキシカルボニル]プロピル基含有メチルハイドロジェン環状テトラシロキサン等が例示される。
【0052】
鎖状シロキサンとしては、3−グリシドキシプロピル基含有メチルメトキシシロキサン、3−グリシドキシ基とビニル基を有するメチルハイドロジェンシロキサン、3−グリシドキシ基と2−(トリメトキシシリル)エチル基を有するメチルシロキサン等が例示される。また、シアヌル環含有有機ケイ素化合物の例としては、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等があげられる。
【0053】
係るシランカップリング剤は、溶媒あるいは分散媒100重量部に対して1〜50重量部配合するのが好ましい。これは、配合量が1重量部未満の場合には、接着に支障を来たすおそれがあり、逆に50重量部を超える場合には、加工性の低下を招くからである。これらのプライマーは、色素増感型太陽電池1の透明板2・2Aに刷毛等を用いて塗布しても良いが、スプレーコーターやロールコーター等からなるコーティング機により塗布したり、プライマー溶液中に透明板2・2Aをディッピングしても良い。
【0054】
色素増感型太陽電池1は、10〜50μm以下の狭い間隔をおいて相互に対向する一対の透明板2・2Aと、この一対の透明板2・2A間の隙間に封入される電子授受用の電解質溶液5とを備えて構成される。一対の透明板2・2Aは、例えば導電性のガラス板からなり、500℃程度の熱に対する耐熱性を有しており、一方の透明板2が陽極として機能するとともに、他方の透明板2Aが陰極として機能する。一対の透明板2・2Aの対向面には、電極である透明導電膜3がそれぞれ積層形成される。
【0055】
透明板2Aの対向面には、酸化チタン粒子の塗布・加熱により半導体の多孔質膜4が積層形成され、この多孔質膜4には、太陽光を効率的に吸収する増感色素が化学吸着、物理吸着、堆積法等の方法により付着されており、この増感色素が積層した多孔質膜4が電解質溶液5で光を吸収して電子を放出し、この電子が素早く移動して電極に伝わることとなる。
【0056】
増感色素としては、例えば金属錯体や有機色素が用いられる。また、電解質溶液5としては、例えばI/I3系、Br/Br3系、キレン/ハイドロキノン系等のレドックス電解質をアセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等の電気化学的に不活性な溶媒(及びこれらの混合溶媒)に溶かした着色可能な溶液が使用される。
【0057】
上記によれば、未硬化時にもシート等の定型の二成分定型接着剤ではなく、貼着までは硬化しない未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とからなる液状接着剤を使用するので、接着厚をきわめて薄くすることができる。したがって、50μm以下の接着厚を要求される色素増感太陽電池1等にも好適に使用することができる。また、ハンドリングが困難になり、作業性の低下を招くという問題を有効に解消することができる。
【0058】
また、液状接着剤の使用量を調整することにより、一対の透明板2・2Aの貼着時に接着剤の食み出し等を減少させることができるので、接着部以外の汚染を抑制防止することができ、しかも、貼着まで硬化しないので、優れた長期保存性を得ることが可能になる。さらに、接着形状を自由に変更することができるし、空気の侵入のおそれも実に少ない。
【0059】
さらにまた、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とをそれぞれ印圧の小さいスクリーン印刷するようにすれば、粗面や曲面にも容易に印刷することができるとともに、接着層の厚さ調整が実に容易化し、しかも、接着剤を高精度に塗布することが可能になる。
【0060】
次に、図2は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とを備え、例えばLCDパネル10を構成する一対の基板11・11Aにおける一方の対向面周縁部に未硬化液状接着剤(A)が、他方の対向面周縁部に未硬化液状接着剤(B)がそれぞれ刷毛等によりエンドレスの枠形に薄く塗布され、溶剤揮発後の乾燥した未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とが貼着されることにより、一対の基板11・11Aを強固に硬化接着するよう機能する。
【0061】
一対の基板11・11Aは、狭い隙間を介して相互に対向し、その狭い隙間が粒子形を呈する複数のスペーサ12により維持されており、この隙間に液晶組成物13が充填される。一方の基板11は、その対向面である表面に、配線電極14と配向膜15とが重ねて積層され、裏面には偏光板16が積層される。また、他方の基板11Aは、その対向面である表面に複数の配線電極14が並設され、裏面には偏光板16が積層される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0062】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、簡易な構成のスペーサ12により、未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とが貼着時に必要以上に潰れるのを抑制防止するので、一対の基板11・11A間の距離を長期にわたり維持することができるのは明らかである。
【実施例】
【0063】
以下、本発明に係る液状接着剤の実施例を比較例と共に説明する。なお、粘度は25℃における値であり、表面タックはJIS Z 0237に基づく数値である。
実施例1
【0064】
先ず、粘度1,000,000mPa・s以上の生ゴム状の側鎖にメチルビニル基を有する分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリメチルビニルシロキサン100重量部、BET比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ10重量部、シリカの表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン1.5重量部、及び水1重量部を均一に混合した後、減圧下170℃で2時間加熱混合してベースコンパウンドを調製した。
【0065】
次いで、調製したベースコンパウンド100重量部に、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(上記ベースコンパウンド中のポリジメチルシロキサン100万重量部に対して本触媒中の白金金属が30重量部となる量)とビニルトリエトキシシラン1.0重量部とトルエン100重量部とを混合して組成物A)を調製した。
【0066】
次いで、上記ベースコンパウンド100重量部に粘度10mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン(上記ベースコンパウンドに含まれているポリジメチルシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2となる量)、一分子中に平均3個のケイ素原子結合水素原子を有する粘度6mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(上記ベースコンパウンドに含まれているポリジメチルシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子水素原子のモル比が2.8となる量)とビニルトリエトキシシラン1.0重量部とトルエン100重量部を混合して組成物B)を調製した。
【0067】
次いで、ウイリアムス可塑度:JIS K6249:1997「未硬化及び硬化シリコーンゴムの試験方法」に規定する可塑度試験に準じて測定した。具体的には、上記組成物A)、B)の溶媒であるトルエンを加熱して完全に揮発させ、各々2gを球状の試験片とした。
【0068】
こうして試験片を製造したら、この試験片をセロハン紙に挟んでダイヤルゲージの付いた平行板可塑度計(上島製作所製;ウイリアムスプラストメータ)中にセットし、49Nの荷重を加えて3分間放置し、ダイヤルゲージの目盛りをミリメートルの1/100まで読み取り、その後、試験片の厚さを記録してその数値を100倍して可塑度としたところ、表1に示す通りの結果が得られた。
【0069】
次いで、上記組成物A)、B)を乾燥後の厚さが1.0mmとなるように、厚さ125μmPETフィルム上にアプリケーターで塗工し、100℃で30分間乾燥して溶媒であるトルエンを全て揮発させ、15×400×1.0mmの試料片を作製した。試料片を作製したら、組成物A)、B)の試料片を用い、表面タックを測定したところ、表1に示す通りの結果が得られた。
【0070】
【表1】

【0071】
また、上記組成物A)、B)の試料片を端部から順に重ね合わせたところ、A)、B)間には気泡が混入しなかった。さらに、上記貼着試料片を室温で放置してその硬化状態を調べたところ、表2に示す通りの結果が得られた。
【0072】
【表2】

実施例2
【0073】
先ず、100×25×8mmのフロートガラスを2枚用意し、このフロートガラスの端部より25mmまでの部分に実施例1の組成物A)、B)を刷毛で均一に塗布し、100℃15分間乾燥機を使用して溶媒であるトルエンを揮発させた。乾燥後の組成物A)、B)の厚みは、いずれも20μmであった。
【0074】
次いで、JIS K 6850引張剪断接着強さ試験方法に準じ、フロートガラス上の乾燥させた組成物A)と、もう一方のフロートガラス上の乾燥させた組成物B)とを重ね合わせ、室温で1日間放置した。こうして1日間放置したら、これを引張試験機に固定して10mm/minの速度で引張ったところ、1.8N/mm2の重ね合わせ剪断強さが得られ、破壊状態は組成物A)、又はB)の破壊であった。
【0075】
さらに、使用したフロートガラス上で乾燥させた組成物A)、及びB)を23℃50%RH、及び40℃50%RH雰囲気中で6ヶ月間放置した。こうして6ヶ月間放置したら、両者を貼着して室温で1日間放置し、上記と同様の引張せん断接着強さを測定した。その結果、23℃50%RH6ヶ月経過後の組成物A)、B)では2.1N/mm2であり、40℃50%RH6ヶ月経過の組成物A)、B)では1.9N/mm2であり、いずれも接着強度の低下は認められなかった。
比較例1
【0076】
先ず、粘度1,000,000mPa・s以上の生ゴム状の側鎖にメチルビニル基を有する分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリメチルビニルシロキサン100重量部、BET比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ45重量部、シリカの表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン6.5重量部、及び水1重量部を均一に混合した後、減圧下170℃で2時間加熱混合してベースコンパウンドを調製した。
【0077】
次いで、調製したベースコンパウンド100重量部に、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(上記ベースコンパウンド中のポリジメチルシロキサン100万重量部に対して本触媒中の白金金属が30重量部と)なる量とビニルトリエトキシシラン1.0重量部とトルエン200重量部を混合して組成物C)を調製した。
【0078】
次いで、上記ベースコンパウンド100重量部に粘度10mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン(上記ベースコンパウンドに含まれているポリジメチルシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2となる量)、一分子中に平均3個のケイ素原子結合水素原子を有する粘度6mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(上記ベースコンパウンドに含まれているポリジメチルシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子水素原子のモル比が2.8となる量)とトルエン200重量部を混合して組成物D)を調製した。
【0079】
次いで、ウイリアムス可塑度:JIS K6249:1997「未硬化及び硬化シリコーンゴムの試験方法」に規定する可塑度試験に準じて測定した。具体的には、上記組成物C)、D)の溶媒であるトルエンを加熱して完全に揮発させ、2gを球状の試験片とした。
【0080】
試験片を製造したら、この試験片をセロハン紙に挟んでダイヤルゲージの付いた平行板可塑度計(上島製作所製;ウイリアムスプラストメータ)中にセットし、49Nの荷重を加えて3分間放置し、ダイヤルゲージの目盛りをミリメートルの1/100まで読み取り、その後、試験片の厚さを記録してその数値を100倍して可塑度としたところ、表3に示す通りの結果が得られた。
【0081】
次いで、上記組成物C)、D)を乾燥後の厚さが1.0mmとなるように厚さ125μmPETフィルム上にアプリケーターで塗工し、100℃で30分間乾燥して溶媒であるトルエンを全て揮発させ、15×400×1.0mmの試料片を作製した。試料片を作製したら、上記組成物C)、D)の試料片を用いて表面タックを測定した。その結果、表3に示す通りの結果を得た。
【0082】
【表3】

【0083】
さらに、上記組成物C)、D)の試料片を端部から順に重ね合わせたところ、C)、D)間には、貼り合せた際に発生した気泡が多数見られたため、気泡を押し出そうとシートを圧着したが、シートの可塑度が高く、気泡を取り除くことが不可能だった。さらに、上記貼り合わせ試料片を室温に放置し、その硬化状態を調べたところ、表4に示す通りの結果だった。
【0084】
【表4】

比較例2
【0085】
先ず、粘度1,000,000mPa・s以上の生ゴム状の側鎖にメチルビニル基を有する分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリメチルビニルシロキサン100重量部、BET比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ7重量部、シリカの表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン1.0重量部、及び水1重量部を均一に混合した後、減圧下170℃で2時間加熱混合してベースコンパウンドを調製した。
【0086】
ベースコンパウンドを調製したら、ベースコンパウンド100重量部に、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(上記ベースコンパウンド中のポリジメチルシロキサン100万重量部に対して本触媒中の白金金属が30重量部となる量)とビニルトリエトキシシラン1.0重量部とトルエン200重量部を混合して組成物E)を調製した。
【0087】
次いで、上記ベースコンパウンド100重量部に粘度10mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン(上記ベースコンパウンドに含まれているポリジメチルシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2となる量)、一分子中に平均3個のケイ素原子結合水素原子を有する粘度6mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(上記ベースコンパウンドに含まれているポリジメチルシロキサン中のビニル基に対する本成分中のケイ素原子水素原子のモル比が2.8となる量)とビニルトリエトキシシラン1.0重量部とトルエン200重量部を混合して組成物F)を調製した。
【0088】
次いで、ウイリアムス可塑度:JIS K6249:1997「未硬化及び硬化シリコーンゴムの試験方法」に規定する可塑度試験に準じて測定した。具体的には、上記組成物E)、F)の溶媒であるトルエンを加熱して完全に揮発させ、2gを球状の試験片とした。
そして、試験片をセロハン紙に挟んでダイヤルゲージの付いた平行板可塑度計(上島製作所製;ウイリアムスプラストメータ)中にセットし、49Nの荷重を加えて3分間放置し、ダイヤルゲージの目盛りをミリメートルの1/100まで読み取り、その後、試験片の厚さを記録してその数値を100倍して可塑度としたところ、表5に示す結果が得られた。
【0089】
次いで、上記組成物E)、F)を乾燥後の厚さが1.0mmとなるように厚さ125μmPETフィルム上にアプリケーターで塗工し、100℃で30分間乾燥して溶媒であるトルエンを全て揮発させ、15×400×1.0mmの試料片を作製した。そして、試験片を貼着したところ、貼り合せ端部より上記組成物E)、F)が食み出してしまい、周囲を激しく汚してしまった。
【0090】
【表5】

比較例3
【0091】
先ず、実施例1で使用した組成物A)、B)を乾燥後の厚さが1.2mmとなるように
厚さ125μmPETフィルム上にアプリケーターで塗工し、100℃で30分間乾燥して溶媒であるトルエンを全て揮発させ、15×400×1.2mmの試料片を作製した。こうして試料片を作製したら、組成物A)、B)の試料片を端部から順に重ね合わせた。
その結果、A)、B)間に気泡の混入を確認しなかった。また、貼り合わせた試料片を室温で放置してその硬化状態を調べたところ、表6に示す結果を得た。
【0092】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る液状接着剤の実施形態を示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る液状接着剤の第2の実施形態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0094】
1 色素増感型太陽電池
2 透明板(被着体)
2A 透明板(被着体)
5 電解質溶液
10 LCDパネル
11 基板(被着体)
11A 基板(被着体)
12 スペーサ
13 液晶組成物
14 配線電極
15 配向膜
16 偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)とを含む液状接着剤であって、
未硬化液状接着剤(A)は、
1)少なくとも2個のアルケニル基を有し、25℃における粘度が100,000mPa・s以上のオルガノポリシロキサン 100重量部
2)ヒドロシリル化触媒 (A)及び(B)を硬化させるのに十分な量
4)充 填 剤 1〜2,000重量部
5)接着賦与剤 0〜10重量部
6)溶 媒 10〜2,000重量部
とを含有する組成物からなり、
未硬化液状接着剤(B)は、
1)少なくとも2個のアルケニル基を有し、25℃における粘度が100,000mPa・s以上のオルガノポリシロキサン 100重量部
3)少なくとも2個のヒドロシリル基を有し、粘度が10〜1,000mPa・s以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサン (A)及び(B)成分由来のアルケニル基の
合計に対してケイ素原子結合水素原子の量が
モル比で0.01〜20.0となる量
4)充 填 剤 1〜2,000重量部
5)接着賦与剤 0〜10重量部
6)溶 媒 10〜2,000重量部
とを含有する組成物からなり、
5)の総量を1)の総量200重量部に対して0.1〜20重量部としたことを特徴とする液状接着剤。
【請求項2】
相対向する一対の被着体の一方に未硬化液状接着剤(A)を、他方に未硬化液状接着剤(B)をそれぞれ塗布し、溶媒を揮発させた後に貼り合わせて硬化接着するようにした請求項1記載の液状接着剤。
【請求項3】
溶媒を揮発させた後の未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の可塑度を、ウイリアムス可塑度計で測定した場合にそれぞれ30〜500の範囲とした請求項1又は2記載の液状接着剤。
【請求項4】
溶媒を揮発させた後の未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の厚みをそれぞれ1mm以下とした請求項1、2、又は3記載の液状接着剤。
【請求項5】
溶媒を揮発させた後の未硬化液状接着剤(A)と未硬化液状接着剤(B)の表面における粘着性を、JISZ 0237に基づく試験法で測定した場合にそれぞれボールナンバーが4〜21の範囲とした請求項1ないし4いずれかに記載の液状接着剤。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−31669(P2007−31669A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221080(P2005−221080)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】