説明

液相拡散法の相分離を利用した高温超伝導接合素子の製造方法

【課題】超伝導接合の製造方法において、高温超伝導薄膜を、希土類常伝導相を含む三層構造薄膜にする。そして、三層構造薄膜を部分溶融することより相分離させ、超伝導薄膜に常伝導層を形成し接合を作製する。
【解決手段】常伝導/超伝導/常伝導の三層構造薄膜を堆積する。エッチング等により傾斜を持つようにパターニングする。超伝導薄膜を部分溶融し、常伝導層を形成する。エッチングにより常伝導層の厚さを制御する。超伝導薄膜を堆積し上部電極とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超伝導体において、液相拡散法の相分離を利用した超伝導接合素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高感度の磁束計や高速・低消費電力の集積回路を目指し、様々な超伝導接合が作製されている。
しかし超伝導接合の製作には高度の加工技術が要求され、これが普及遅延の原因になっている。
【特許文献1】特開2001−274471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記目的を解決するため、超伝導接合の製造方法において、高温超伝導薄膜を、希土類常伝導相を含む三層構造薄膜にする。そして、三層構造薄膜を部分溶融することより相分離させ、超伝導薄膜に常伝導層を形成し接合を作製する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
常伝導/超伝導/常伝導の三層構造薄膜を堆積する。エッチング等により傾斜を持つようにパターニングする。超伝導薄膜を部分溶融し、常伝導層を形成する。エッチングにより常伝導層の厚さを制御する。超伝導薄膜を堆積し上部電極とする。
【発明の効果】
【0005】
脳から発生している微小磁束などを、本センサーで検出することや、高速・低消費電力の集積回路用素子となる。
【実施例】
【0006】
【0007】
次いで、本実施形態による超伝導接合素子の製造方法について図1から図4を用いて説明する。
【0008】
まず、図1のように、MgO基板上(1)に、例えばスパッタ法により、膜厚約100nmのGd211(2)膜、膜厚約200nmのY123膜(3)、膜厚約100nmのGd211(2)膜を連続堆積する。
【0009】
次いで、Gd211(2)膜上に、通常のリソグラフィー技術によりレジストパターンを形成する。
【0010】
次いで、レジストパターンをマスクとして、例えば燐酸水溶液かArイオンミリングにより、Gd211(2)膜、Y123膜(3)及びGd211(2)膜を傾斜45°でエッチングする。
【0011】
次いで、レジストパターンを除去した後、部分溶融温度まで基板加熱し、Y123膜(3)表面にY211(4)と液相を相分離させる。
【0012】
このとき、Y123より相分離した液相は包昌反応により、図2のように、Gd211(2)とY211(4)に接している面にGd123(5)が形成される。
【0013】
次いで、図3のように上部Y123(3)膜を堆積する前処理として、例えばECRプラズマによるクリーニングを行い、Y123膜表面のY211膜厚(4)を制御する。
【0014】
このクリーニング処理により、YBCO膜のエッジには、Y211膜厚(4)が制御できる。
【0015】
なお、本実施形態による超伝導接合素子の製造方法では、Y123膜のエッジに形成されるバリア層の膜厚は、Y211膜の膜厚に依存する。したがって、Y211膜の膜厚を予め部分溶融時間で制御しておくことで、所望の厚さのバリア層を形成することができる(図3)。
【0016】
次いで、例えばレーザーアブレーション法により、図3のように膜厚200nmのY123(3)膜を堆積してパターニングし、Y123(3)よりなる超伝導層を形成する(図4)。
【0017】
このようにして、超伝導層Y123より延在するバリア層Y211を介して超伝導層Y123(3)が接合された平面型ジョセフソン接合を有する超伝導接合素子を形成する。
【0018】
このように、本実施形態によれば、超伝導層と超伝導層との間に形成されるバリア層の膜厚を、Y211膜の膜厚により制御するので、バリア層の厚さが均一な接合を形成することができる。これにより、素子のばらつきを抑えることができる。
【0019】
なお、上記実施形態では、接合部の傾斜角度を45°とした平面型ジョセフソン接合を有する超伝導接合素子を示したが、接合部の傾斜角度を例えば60°としたランプエッジ型ジョセフソン接合を有する超伝導接合素子においても同様に適用することができる。
【0020】
さらに、従来のNb系超伝導接合作製技術を用いて、超伝導層Y123上部に相分離したY211をバリア層とする超伝導接合素子も作製可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の高温超伝導接合素子の製造方法の一例を示す概略断面図
【図2】本発明の高温超伝導接合素子の製造方法の一例を示す概略断面図
【図3】本発明の高温超伝導接合素子の製造方法の一例を示す概略断面図
【図4】本発明の高温超伝導接合素子の製造方法の一例を示す概略断面図
【符号の説明】
【0022】
1 MgO基板
2 Gd2BaCuO膜
3 YBa2Cu3O膜
4 Y2BaCuO膜
5 GdBa2Cu3O膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類酸化物高温超伝導薄膜(RE123)において、希土類常伝導薄膜(RE211)を層状にRE123内に相分離させて製造したことを特徴とする超伝導接合素子の製造方法。
【請求項2】
イットリウム酸化物高温超伝導薄膜(Y123)において、イットリウム常伝導薄膜(Y211)を層状にY123内に相分離させて製造したことを特徴とする超伝導接合素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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