説明

液移送用治具及び該液移送用治具を用いた液移送方法

【課題】液体収納容器の形状、大きさに関らず取り付けることができ、液体の移送を簡単に行うことができる液移送用治具、及び該液移送用治具を用いた液移送方法を提供すること。
【解決手段】密封性を有する容器20の蓋部22の上面部22bに予め形成した孔部24に密封装着可能な栓体12と、該栓体12に密閉状態で挿通された前記容器20内への加圧空気注入用の空気注入管14と、前記栓体12に同じく密閉状態で挿通された前記容器20の底部まで伸長した容器内端部16aと液体の移送先まで伸長した容器外端部18aとを有する液移送管16と、を有することを特徴とする液移送用治具10を用いることで、液体収納容器の形状、大きさに関らず取り付けることができるという汎用性のある液移送用治具、及び該液移送用治具を用いた液移送方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液移送用治具及び液移送用治具を用いた液移送方法に関し、特に容器内部を加圧して容器内の液体を押出して移送するための液移送用治具及び該液移送用治具を用いた液移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内の液体を容器外へ移送する方法の一つとして、加圧された空気を容器内に注入し、その圧力により容器内の液体を容器外へ押出して移送する方法が知られている。
【0003】
この加圧された空気を容器内に注入し、容器内の液体を容器外へ押出して移送するためには、空気ポンプから容器内に加圧空気を注入する配管等の注気手段、容器内から容器外へ液体を送り出す配管等の送液手段、及び加圧空気が容器外へ漏れないように容器を上記注気手段部分、送液手段部分を除いて隙間なく密閉する手段が必要であり、様々な方策が取られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、円柱状の胴部、その胴部から連結して上方に位置する円錐状の肩部、及びその肩部から突出して上方に位置する凸状の抽出口を有するボトルに着脱自在に取り付けて使用するボトル用サーバーが提案されている。
【0005】
このボトル用サーバーは、円錐状のボトル肩部面に定着する密着部材からなる下端を有し、この下端からボトル注出口を覆うように上方に延在する円柱状部材であるサーバー保持部を有する。そして、このサーバー保持部と接続する底面を有し、このサーバー保持部及びボトルと協働してボトル注出口上部空間及びボトル内を密閉する円柱状の蛇腹式加圧部材を有している。
【0006】
蛇腹式加圧部材が圧縮されて加圧空気がボトル内に注入され、この加圧空気より押圧されたボトル内の液体が、ボトル用サーバーの液注出管を介してボトル外部へ押し出され、移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−081204
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載されているボトル用サーバーによれば、このボトル用サーバーの密着部材と適合する傾斜角度を持つ肩部面を有するボトルでなければ密閉状態を形成することができない。すなわち、そのようなボトル以外の容器では加圧した空気を密閉する構成をとることができず、汎用性に欠けるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、有蓋容器の形状、大きさに関らず汎用的に取り付けることができ、通常の動作で液体の移送を行うことができる液移送用治具、及び該液移送用治具を用いた液移送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するための請求項1に記載の発明は、容器内部を加圧して容器内の液体を押出して移送するための液移送用治具において、密封性を有する容器の蓋部の上面部に予め貫通形成した孔部に密封装着可能な栓体と、該栓体に密閉状態で挿通された前記容器内への加圧空気注入用の空気注入管と、前記栓体に同じく密閉状態で挿通された前記容器の底部まで伸長した容器内端部と液体の移送先まで伸長した容器外端部とを有する液移送管と、を有することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、どのような形状、大きさを有する容器であっても、容器の蓋部を利用することで、比較的簡単な作業で容器内の液体を他の容器へ押出し移送することができる。すなわち、栓体に適合する孔部を蓋部に形成することのみによって、本発明に係る液移送用治具を用いることができるものであり、容器の形状や種類に関らず蓋部に所定サイズの孔を開けることができれば、本発明に係る液移送用治具を用いて汎用性のある液移送作業を行うことが可能である。
【0012】
更に、共通の蓋部を有する同種の容器から液体を移送する場合、二つ目以降の容器は、既に、液移送用治具の取りつけられた最初の容器の蓋部に取り替えるという簡易な作業のみで液押出し移送に必要な構成を新たに形成することができる。すなわち、同種の容器から連続的に液を移送する作業をより簡単なものとすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液移送用治具において、前記栓体は、前記孔部の内径よりやや大きな外径を有する弾性部材で形成されていることを特徴とする。この構成によれば、孔部の開口端面と当接した栓体の弾性変形により、容易に栓体を孔部の開口端面の全周に亘って密着させて装着することができる。更に、弾性変形した栓体が元に戻ろうとする応力により蓋部と栓体は強く圧着され、加圧空気注入による容器内部からの圧力に対しても閉状態の保持性が強化される。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の液移送用治具において、前記栓体は、前記装着状態にて前記孔部の開口端面が当接される外側面部分に凹部が形成されていることを特徴とする。この構成によれば、前記孔部に前記栓体が押し込まれた際、前記孔部の開口端面が前記栓体の凹部にはまり込んで当接した状態となる。従って、加圧空気注入による容器内部圧力上昇により栓体が押し戻される状況を確実に防止することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明による液移送方法は、請求項1〜3の何れか1項に記載の液移送用治具を用いて液体を移送する方法において、移送される液体の入った密封性を有する容器の蓋部の上面部に前記栓体を密封装着可能な孔部を設ける孔部形成工程と、前記栓体を前記孔部に押し込み栓体を前記密封装着状態とする栓体装着工程と、前記容器内に前記空気注入管より加圧空気を注入し、前記液移送管を通して液体を押出して移送先まで移送する液移送工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、どのような形状、大きさを有する容器であっても、容器の蓋部を利用することで、比較的簡単な作業で容器内の液体を他の容器へ押出し移送する液移送方法を提供することができる。すなわち、栓体に適合する孔部を蓋部に形成し、この栓体をその孔部に密封装着し、そして加圧空気を容器内に注入して液体を押出すということのみで、本発明に係る液移送用治具を用いた液移送方法を提供することができる。すなわち、容器の形状や種類に関らず蓋部に所定サイズの孔を開けることができれば、栓体をその孔部に密封装着することができるので、その状態で加圧空気を容器内に注入するだけで液体を押出して移送するという汎用性のある液移送方法を実行することができる。
【0017】
更に、共通の蓋部を有する同種の容器から液体を移送する場合、二つ目以降の容器は、既に、液移送用治具の取りつけられた最初の容器の蓋部に取り替えるという簡易な作業のみで液押出し移送に必要な構成を新たに形成することができる。すなわち、同種の容器から連続的に液を移送する作業をより簡単なものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、どのような形状、大きさを有する容器であっても、栓体に適合する孔を開け得る構成を有する蓋部を有していれば、当該蓋部を利用することで、比較的簡単な作業で液押出し移送に必要な構成を作ることができる。従って、様々な容器に対して汎用性の高い液移送作業を行うことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係る液移送用治具の概略を説明する図である。
【図2】本実施の形態に係る液移送用治具の栓体の他の形状の一例を示す概略断面図である。
【図3】本実施の形態に係る液移送用治具の栓体の更に他の実施の形態を示す図である。
【図4】(A)移送すべき液体の入った密閉性を有する有蓋の容器を示す図である。(B)容器から取り外した、蓋部の拡大図である。
【図5】上面部に孔を開けた蓋部に栓体を装着した状態を示す図である。
【図6】本発明の液移送用治具を用いて実際に容器内の液体を貯液タンクに移送している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図に基いて詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る液移送用治具10の概略を説明する図である。図示のように液移送用治具10は、後述する蓋部の孔部に密封装着される栓体12を有しており、この栓体12は略円錐台形であって、外径の小さい側から蓋部に設けられた孔部に、その外側面12bが孔部の端縁に当接するように装着される。
【0021】
この栓体12には、図における上下方向に二つの管が密閉状態で挿通されている。一方は加圧ポンプPからの加圧空気を、移送される液体が入った容器内へと加圧空気を注入する空気注入管14、もう一方はその容器内の液体を容器外の目的の移送先まで移送する液移送管16である。
【0022】
空気注入管14は剛性を有する略L字状の中空円筒であり、空気ポンプPからの加圧空気が容器外端部14bから注入され容器内端部14aから容器内へ送られる。
【0023】
液移送管16は、容器内の底部まで伸長した容器内端部16aを有し、他端は容器外に伸長しており、本実施の形態では、略L字状の剛性を持つ中空円筒として形成された液移送管16に可とう性を有する延長管18を連結している。この延長管の端部18aが移送先の容器内まで伸長するものである。
【0024】
空気注入管14及び液移送管16は、その容器内端部14a側、容器内端部16a側から、栓体12に予め形成した小孔に挿通して取付けられている。該小孔は空気注入管14、液移送管16の外径よりもやや小さい径を有するように形成され空気注入管14、液移送管16が圧入して挿通されることで、栓体12へ密閉状態で装着されている。
【0025】
栓体12の素材は、空気注入管14と液移送管16を挿通する貫通孔の形成が容易な樹脂系の素材、特に、弾性を有する樹脂系の素材を使用するのが好適である。
【0026】
図2は、液移送用治具10の栓体12の他の形状の一例を示す概略断面図であり、図1と同様の構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施の形態における栓体12の特徴は、図示のように、栓体上面と栓体下面の間の中央の高さ位置で、外側面12bの全周に亘って連続形成された凹部12aが存在することである。この凹部12aを有することで、栓体12が後述の蓋部の孔部へ装着される際、すなわち、栓体12が蓋部の孔部の開口端面に凹部12aが当接するまで押し込まれた際、栓体12と蓋部の孔部の当接面と大きな摩擦抵抗を得ることができる。これにより、蓋部への栓体12の装着保持性が強化されるものである。
【0027】
図3は、液移送用治具10の栓体12の更に他の実施の形態を示す図である。図示のように、栓体12には、その外周面に段差部が形成されている。すなわち、栓体12の下側に拡径した棚部12cが形成されている。更に、栓体12は、その棚部12cに対応する内部位置に栓体下面側から、栓体上面方向へ棚部12cの高さ位置に向かってくり抜かれた空洞Xを有している。栓体12がこの構成を取ることにより、蓋部の孔部に栓体が装着する際には栓体12の下側部がたわみ易くその装着の容易化が図られる。また装着後は、移送される液体が入った容器内への加圧空気の注入により容器内方から栓体12に押上げ力が加わるが、棚部12cが蓋部の孔部の開口端部に掛止されることで確実に装着状態が保持される。更に、蓋部から栓体12を取り外す際は、図における矢印100方向に外側面12bを空洞Xに向けて押し込むことで棚部12cと蓋部の開口端部との掛止状態を簡単に解除することができ、栓体12の蓋部からの取り外しが容易となっている。
【0028】
以下に本発明に係る液移送用治具10により実際の液移送動作について説明する。図4(A)は、移送すべき液体の入った密閉性を有する有蓋の容器20を示す図である。図示のように、容器20には、この容器を密閉できる嵌合構造を有する蓋部22が存在する。例えば、移送される液体が、触れると人体に影響がある劇薬であること、貴重な液体であること、又は既に計量済みであること等の理由により、上記容器と蓋部が密閉構造を取ることは市場では一般的である。
【0029】
図4(B)は容器20から取り外した、蓋部22の拡大図である。図示のように、蓋部22には、その上面部22bに孔部24を形成している。この孔部24の形成は、種々の方法で行うことが可能であり、例えば、本実施の形態では上面部22bの中央にハンドドリル等を用いて直径5〜10mm程度の貫通孔を形成し、テーパリーマ等を用いてこの貫通孔の拡径を行い、孔部24を形成している。孔部24の大きさは、蓋部22の外方から栓体12を押し込んだ時に栓体12が密閉状態で装着される大きさである。
【0030】
図5は、上面部22bに孔を開けた蓋部22に栓体12を装着した状態を示す図である。図示のように、蓋部22の孔部24に、図における上方から下方へ栓体12をその小径の下面側から挿入し、外側面12bと蓋部22の開口端面22aとが密着接触した状態としている。ここで、栓体12は弾性変形して蓋部22の孔部24に装着されているため、その栓体12が元に戻ろうとする応力により蓋部22と栓体12は強く圧着されている。従って、後述する液移送時の容器内への加圧空気注入に伴う容器内部からの圧力に対しても、閉状態の保持性が強化される。
【0031】
図6は、本発明の液移送用治具10を用いて実際に容器20内の液体を貯液タンク30に移送している状態を示す図である。図示のように、容器20内には移送される液体26が湛えられている。孔部形成工程によって予め孔部24の形成された蓋部22には液移送用治具10が装着されており(栓体装着工程)、蓋部22は容器20に密封装着されている。そして、空気注入管14から、空気ポンプPからの加圧空気が容器20内に送り込まれる。一方、液移送管16に連通した容器外端部18aは、液体26の移送先である貯液タンク30内に、貯液タンク30の上部に形成された貯液タンク口部30aから挿入され、作業中に脱落しないように固定措置が行われる(図示せず)。例えば、容器外端部18aがクリップ等で貯液タンク口部30aに固定される。
【0032】
この状態で空気ポンプPによる加圧空気の容器20内への送入を続けることで、容器20内の圧力上昇により液体26が押圧され、液移送管16を介して液移送先である貯液タンク30中に移送される(液移送工程)。
【0033】
この様に、容器20がどのような形状、大きさを有していても、蓋部22が存在してさえいればその蓋部22に液移送治具10の栓体12を密閉装着可能な孔部24を形成するという比較的簡単な作業のみで上記液押出し移送に必要な構成を作ることができる。すなわち、液体を収納している容器の種類毎に構成の異なる液体移送装置を準備する必要がなく汎用性の高い液移送作業を行うことができる。
【0034】
更に、同形状の蓋部を使用し同種の複数の容器から繰り返し液体を貯液タンク30に移送する場合、二つ目以降の容器には、その蓋部を取り外して、最初の容器20の際に準備した蓋部22、すなわち、本発明に係る液移送用治具10を装着した蓋部22に付け替えるという簡易な作業のみで液押出し移送に必要な構成を新たに形成することができる。従って、同種の多数の容器からの液移送をより容易に行うことができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、栓体12には弾性を有する樹脂系の素材を使用し、これを蓋部22の孔部24に押し込むことで密封装着させているが、栓体12に剛性を有する樹脂系の素材を使用し、この栓体12の外側面12bに雄ネジを切ったテーパねじ部を形成し、この雄ネジを切った栓体12をネジ切りしていない蓋部22の孔部24に押し込みながら螺着させることで密封装着させてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態では、栓体12の外側面12bに凹部12aを形成した例を示したが、蓋部22の開口端面22a側にネジ溝等の凹凸を付けることも好適であり、栓体12の装着保持性を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 液移送用治具
12 栓体
12a 凹部
12c 棚部
14 空気注入管
14a 容器内端部
14b 容器外端部
16 液移送管
16a 容器内端部
18 延長管
18a 延長管の端部
22 蓋部
22a 開口端面
24 孔部
X 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部を加圧して容器内の液体を押出して移送するための液移送用治具において、
密封性を有する容器の蓋部の上面部に予め貫通形成した孔部に密封装着可能な栓体と、
該栓体に密閉状態で挿通された前記容器内への加圧空気注入用の空気注入管と、
前記栓体に同じく密閉状態で挿通された前記容器の底部まで伸長した容器内端部と液体の移送先まで伸長した容器外端部とを有する液移送管と、
を有することを特徴とする液移送用治具。
【請求項2】
前記栓体は、前記孔部の内径よりやや大きな外径を有する弾性部材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液移送用治具。
【請求項3】
前記栓体は、前記装着状態にて前記孔部の開口端面が当接される外側面部分に凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液移送用治具。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の液移送用治具を用いて液体を移送する方法において、
移送される液体の入った密封性を有する容器の蓋部の上面部に前記栓体を密封装着可能な孔部を設ける孔部形成工程と、
前記栓体を前記孔部に押し込み栓体を前記密封装着状態とする栓体装着工程と、
前記容器内に前記空気注入管より加圧空気を注入し、前記液移送管を通して液体を押出して移送先まで移送する液移送工程と、
を有することを特徴とする前記液移送用治具を用いた液移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157099(P2011−157099A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19592(P2010−19592)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(504325623)中国企業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】