説明

液面レベルセンサ

【課題】検出素子をなす導体付きフイルムの支持構造を単純化し、センサに加わる振動でフイルム支持体が変形しても、フイルムに引張り力が作用しないようにし、導体の断線を防ぐ。
【解決手段】導体付きフイルム11と、これを位置決めして支持するフイルム支持体31とを含んでなる液面レベルセンサ1で、支持体31は、フイルム11のうちの液面レベルの検出領域をなす部位の左右両側の各側縁に沿って、その各側縁寄り部位の表面及び裏面を交互に支持し、しかも互いに対面しないように配置された、フイルム表面支持部39及びフイルム裏面支持部38を備えている。この表面支持部39、裏面支持部38によって、フイルム11のうちの前記部位の左右両側の各側縁寄り部位の表面及び裏面を交互に支持した。フイルムは同部位を両面から挟まれていないため、各支持部に対して各側縁に沿って移動できるため、引張り力が作用するのを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面レベルセンサに関し、詳しくは、自動車のエンジンのオイルパンにおけるオイルの量、ウインドウォッシャータンクのウォッシャー液の量、燃料タンクの燃料の残量、或いはその他の容器内に入れられた液体の液量(液面ないし液位)を検出ないし計測するのに用いられる液面レベルセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液面レベルセンサには、その液面レベル検出素子に、ポリイミド等の絶縁性のある樹脂製の細長いフイルムに、一対の電極又は抵抗発熱体をなす導体を形成してなるものが使用されたものがある。例えば、フイルムに一対の検出用電極(導体)を形成し、その導体付きフイルム(以下、単にフイルムとも言う)を測定対象をなす液体中に浸漬させ、その一対の電極間の静電容量に基づいて測定対象をなす液体の液面レベルを検出するようにした静電容量式レベルセンサがある。また、フイルムに、通電することによって発熱する抵抗体を形成した導体付きフイルムを液面レベル検出素子とし、この検出素子を測定対象をなす液体中に浸漬し、通電することによってその抵抗体がその液に浸漬された割合に応じてその放熱効果が異なることによって抵抗値が変化することを利用した放熱式液面レベルセンサがある。
【0003】
このような液面レベルセンサにおいては、検出素子をなす導体付きフイルムが薄く、低剛性で容易に撓み変形するため、その導体付きフイルムが液中に浸漬された際には、フイルムのうち、液面レベルの検出領域が真っ直ぐに保持されるようにしてやる必要がある。また、このような液面レベルセンサが、オイルの量を検出する等の目的で車両に取り付けられる場合には、それがエンジンの振動や走行時の路面の凹凸に起因した振動を受け、さらには、液体(オイル)の流動圧を受ける。このため、このような振動等に対し、導体付きフイルムが変形を受けないように、そのフイルムを支持(保持)する構造が必要となる。このようなフイルムの支持構造の1例として、導体付きフイルム(帯状導体付きフイルム)の例えば両側縁をケース状をなす本体と蓋との間で挟み付けるようにしたものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭55−119018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようにして導体付きフイルムを挟み付けて本体内に支持、収容するものでは、本体と蓋の少なくとも2部品が必要となる。また、その各部品相互で同フイルムを挟み付けて固定するための部品相互間の蝶番や固定手段(ロック装置)も必要となる。このため、このようなフイルム支持構造を有するセンサにおいては、その支持構造が複雑化する。そして、その複雑化のために、液面レベルセンサの組み立て性(組立作業性)も悪くなり、製造コストの増大を招くといった問題もある。
【0005】
加えて、上記のフイルム支持構造では、導体付きフイルムに形成されている導体(電極又は抵抗体)が断線し易いといった問題もある。理由は次のようである。導体付きフイルムの左右の両側縁を、本体と蓋との間で挟み付けて支持すると、導体付きフイルムは緊張状態に支持されることになる。そして、この導体付フイルムを有する液面レベルセンサを振動がかかる用途、特にオイルパン等の自動車の各部に取り付けられて各所の液面レベルを検出する車両用途に用いた場合には、センサ自身が加振されて導体付きフイルムにまで振動の影響が及ぶことになる。このとき、フイルム自身は樹脂製であることから、上記振動の影響に対して多少なりとも撓み変形(湾曲)することができるが、導体自身(電極又は抵抗体)は薄くその横断面積は極めて微小であるため、緊張状態で支持されたフイルムが大きく湾曲する(撓む)と、その導体に亀裂や断線が発生する危険性がある。また、導体の外部端子接続部と外部のリード線との接続部(例えばハンダ付け部)に亀裂が入るといった危険もある。このように、本体と蓋とでフイルムを挟み付けて支持する構造では、その支持構造が複雑化するとともに、フイルムにおける導体の断線の危険性があるといった問題があった。
【0006】
本発明は、従来のセンサにおけるこうした問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、センサの検出素子をなすフイルムの支持構造を単純化し、しかも、センサに加わる振動によって樹脂製のフイルムに形成された導体の断線を招かないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、液面レベル検出素子をなす、樹脂製のフイルムに導体を形成してなる導体付きフイルムと、該導体付きフイルムを位置決めして支持するフイルム支持体とを含んでなる液面レベルセンサにおいて、
前記フイルム支持体は、長手方向に延びる前記導体付きフイルムのうちの液面レベルの検出領域をなす部位の左右両側の各側縁に沿って、その各側縁寄り部位の表面及び裏面を交互に支持するように形成され、しかも互いに対面しないように配置された、フイルム表面支持部及びフイルム裏面支持部を備えており、
このフイルム表面支持部及びフイルム裏面支持部によって、前記導体付きフイルムのうちの液面レベルの検出領域をなす部位の左右両側の各側縁寄り部位の表面及び裏面を交互に支持するフイルム支持構造を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記導体付きフイルムが、その厚み方向において、前記フイルム表面支持部及び前記フイルム裏面支持部との間で隙間嵌めとなるように、前記フイルム表面支持部及び前記フイルム裏面支持部の間の寸法が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の液面レベルセンサである。そして、請求項3記載の発明は、前記フイルム支持体には、前記導体付きフイルムの位置決めを行うためのピンが立設され、前記導体付きフイルムのうち液面レベルの検出領域をなす部位の一端寄り部位に形成される貫通孔を前記ピンに嵌入させることで、前記フイルム支持体に対し前記導体付きフイルムが位置決めされていることを特徴とする請求項1または2に記載の液面レベルセンサである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明の液面レベルセンサによれば、フイルムの支持が上記した従来技術のように、本体と蓋とでそれを挟み付ける支持構造でないため、その支持構造の複雑化を招かない。しかも、本発明によれば、フイルム支持体に形成したフイルム表面支持部及びフイルム裏面支持部によって、導体付きフイルムのうち液面レベルの検出領域をなす部分の各側縁寄り部位の表面及び裏面を交互に支持している。これより、可撓性を有する導体付きフイルムは、液面レベルセンサが車両等の振動が掛かる環境下に取り付けられた場合にも、フイルム支持体により検出領域をなす部位の直線性を良好に保持することができ、ひいては液面レベルの検出精度を良好に確保することができる。また、導体付きフイルムの各側縁寄り部位の表面及び裏面を交互に支持するため、支持される側の面と対向する側の面は自由状態とされるため、フイルム支持体によって導体付きフイルムを支持させた場合にも、過度に導体付きフイルムに引張り力が作用することを防止できる。したがって、フイルムに設けられた導体が断線することを有効に防止できる。なお、300μm以下の厚みを有する導体付きフイルムを支持するにあたって、本発明のフイルム支持構造を採用すると、本発明の効果をより有効に得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、フイルムは、フイルム表面支持部及びフイルム裏面支持部の両支持部間においてその厚み方向(面に直角な方向)に隙間(遊び)がある状態で支持されている。したがって、フイルム支持体を用いて薄く低剛性の導体付きフイルムを支持した場合にも、そのフイルムに過度の引張り力が作用することを一層有効に防止できる。このため、導体の断線防止効果をより高いものとすることができる。そして、請求項3に記載の発明によれば、導体付きフイルムのうち液面レベルの検出領域をなす部位の一端寄り部位をフイルム支持体に対し位置決めすることができる。したがって、フイルム支持体に導体付きフイルムを支持させる液面レベルセンサを量産する場合にも、液面レベルの検出領域をなす部位のフイルム支持体での配置位置が個体間でばらつくのを抑制することができ、ひいては同一品番の液面レベルセンサにおける検出精度の個体間のばらつきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る液面レベルセンサを具体化した実施の形態例について、図面に基づいて詳細に説明する。ただし、本形態の液面レベルセンサは静電容量式のものであって、例えば自動車エンジンのオイルタンク(オイルパン)内に、その底部から起立状に取付けられる構造のものである(図3参照)。このような本形態の液面レベルセンサ(オイルレベルセンサ)1は、図1〜3に示したように、静電容量検出用の電極等をなす導体層を形成してなる導体付きフイルム11(以下、フイルム11ともいう)と、この導体付きフイルム11の左右の各側縁寄り部位の表面及び裏面(両面)を交互に支持(保持)するフイルム支持体31と、これらを起立状にして取り付ける取付け用ベース部材61、及び図2,3に示したように、導体付きフイルム11を保護するように被せられる樹脂製で、キャップ状の保護ケース71等から構成されている。詳細は次のようである。
【0012】
まず、本形態に使用されている、液面レベル検出素子をなす導体付きフイルム11について、図4及び図5を中心として説明する。ただし、この導体付きフイルム11は、静電容量の検出用の一対の電極などをなす、エッチングでパターン形成された導体層(例えば、銅箔)10を一表面に有する樹脂製(ポリイミド製)のフイルム12に、同じ樹脂製(ポリイミド製)のフイルム13を導体層10を覆うようにして貼り合わせたものとして形成されている(図5に示した導体付きフイルム11の模式図参照)。なお、図4においては、フイルム12に挟まれた電極等をなす導体層10をダブルハッチングで示しているが、他の図では図示していない。すなわち、この導体付きフイルム11は、縦に長い細長矩形部14と、その下に、テーパー部15を介して幅の広い幅広矩形部16を一体的に連ねたものとして形成されており、長手方向(図4上下方向)に関して左右略対称とされている。なお、本形態の導体付きフイルム11の厚みは、100μm程度である。
【0013】
この導体付きフイルム11のうち、細長矩形部14及びテーパー部15には、幅方向の中央寄り部位に、長手方向に沿って一対の液面レベルの検出用電極が形成されている。このうち一方の電極18は、フイルムの幅方向の中央において、一定の幅で上向きに真っ直ぐに延びている。そして、他方の電極19は、この一方の電極18の図示左側下部から、一定の間隔を保持して平行に、一定の幅で上向きに真っ直ぐに延び、かつその一方の電極18の上端で横に曲げられ、さらに下向きに真っ直ぐに折り返され、両電極18,19が並列して配置されている。このような各電極18、19の基端部(図示下端部)には、それぞれ外向き横方向に曲げられ、幅広矩形部16の左右の各側辺に沿って下向きに延びる中継線部18b、19bを備えている。そして、各中継線部18b、19bは、幅広矩形部16の下辺(図示下辺)に沿って形成された、正方形の各端子部18c、19cに連結されている。本形態においては、このような一対の検出用電極18、19自身の周囲に存在する液体の液面レベルの変化による静電容量の変化を検出することで、その液面レベルを検出する方式のレベルセンサであり、フイルム11における液面レベルの検出領域をなす部位は、この一対の検出用電極18,19が並列して存在する範囲である。
【0014】
また、フイルム11のテーパー部15より下に位置する幅広矩形部16には、一対の基準検出用電極21,22が形成されている。基準検出用電極21,22の詳細については後述する。これは、クシ状に形成され、所定の間隔を保持して互いにかみ合う形で配置されている。この電極21,22は、一対の液面レベルの検出用電極18,19より下にあり、タンクの底部寄り部位に位置し、常に液没するように配置、形成されている。そして、この各電極21,22も下向きに延びる中継線部21b、22bを介して、幅広矩形部16の下辺(図示下辺)に沿って形成された、正方形の各端子部21c、22cに連結されている。また、フイルム11の周囲には接地用電極24をなす導体層が形成され、幅広矩形部16の下辺(図示下辺)に沿って形成された接地用の端子部24cに連結されている。なお、各端子部18c、19c、21c、22c、24cの中央には、リード端子接続用の円形の貫通孔が設けられている。
【0015】
このような導体付きフイルム11の上端部14aにおける左右中央には、上下に縦長(長円)の縦長貫通孔26が設けられており、次記するフイルム支持体(以下、単に支持体ともいう)31にこのフイルム11を組み付けたときにおけるそのフイルム11の位置決めとその上端部(細長矩形部の端部)14の浮き上がりを防止するようにされている。さらに、テーパー部15の両側辺寄り部位にもフイルム11の位置決めをするための位置決め用の貫通孔27が設けられている。
【0016】
次に、フイルム支持体31について、図6及び図7等に基づいて説明する。このフイルム支持体31は、絶縁性のある合成樹脂(例えば、6−6ナイロン)から一体成形され、前記したフイルム11の周縁を支持可能に、その平面形状と近似する枠形状を呈している。すなわち、フイルム11の各部形状に対応して、細長矩形枠部34、テーパー枠部35及び幅広矩形枠部36とを備えている。なお、このものは図6−Aにおける中心(縦)線に関して左右対称に形成されている。
【0017】
このような支持体31は、細長矩形枠部34とテーパー枠部35の各内側のうち、長手方向(高さ方向)に沿う部位、すなわち、左右の両枠部の各内側部位に、フイルム11の各側縁寄り部位の表面及び裏面を交互に支持するように、図6において上から順に、フイルム11の裏面を支持するフイルム裏面支持部38、フイルム表面支持部39、そしてフイルム裏面支持部38が、互い違いに形成されている。本形態では、2つのフイルム裏面支持部(以下、裏面支持部又は単に支持部とも言う)38,38は、それぞれ一定幅で長手方向に沿って形成されたリブ状のものであり、その棚状の平坦な表面(以下、支持面ともいう)38aにフイルム11の裏面を当接させて支持するように形成されている。そして、左右の両枠部のその支持面38aは1平面上にあるように形成されている。ただし、図示下のテーパー枠部35の各内側に存在するフイルム裏面支持部38における同支持面38aは、そのテーパー枠部35寄り部位に広がる三角面を呈している。なお、この三角面には、それぞれ位置決め用の円柱状のピン41が立設状に設けられており、フイルム11におけるテーパー部15の側縁寄り部位に設けられた位置決め用の貫通孔27にそれぞれ略隙間なく嵌入されるよう形成されている。
【0018】
そして、フイルム表面支持部(以下、表面支持部又は単に支持部とも言う)39は、フイルム裏面支持部38と面方向において(図8,9参照)所定寸法Sの間隔を保持するように、左右の両枠部34の各内側部位に形成されている。すなわち、この表面支持部39は、一定幅で長手方向に沿って張り出し形成された張り出し部であり、その平坦な裏面(以下、支持面ともいう)39aを有し、この支持面でフイルム11の表面を支持するようにされている。このようなフイルム表面支持部39も、左右の両枠部のものも含めて1平面となり、かつ、支持面38aと平行となるように形成されている。なお、張り出し部の表面39bは、図9、12に示したように同図において支持体31の内側に向かって下向きに傾斜されている。これは、図12に示したように、フイルム11を、このフイルム表面支持部39の表面39b側(支持面39aと反対側)から、押込み、適宜に撓み変形させることで、裏面支持部38と表面支持部39の間に嵌め込み、容易に支持体31に組み付けられるようにしたものである。
【0019】
また、本形態においては、枠部における各側の支持部38,39が、長手方向に沿って3分割されているが、フイルム裏面支持部38とフイルム表面支持部39とは、互いに対面しないように(上下方向において重ならないように)、各支持部38,39の端部が形成されている。また、図8、9に示したように各支持部38,39とも、それが形成されている枠部の内向き壁面38c、39cが、フイルム11の側端が外方に移動する(横ずれする)のを規制ないし防止するようにされている。したがって、枠部の各内向き壁面38c、39c相互間の寸法は、フイルム11の細長矩形部14の幅と略同じか、微量大きく設定されている。また、このような支持体31の各側における2つのフイルム裏面支持部38と、1つのフイルム表面支持部39とは、フイルム11が各側において両支持部の支持面38a,39a間に挟まれた際に、微小な隙間(遊び)Kが保持されるように、その間の寸法Sが設定されている(図8、9参照)。すなわち、導体付きフイルム11に代えてそれと同一厚さを有する仮想平板を、フイルム支持体31における枠部の各側における表面支持部39及び裏面支持部38との間に介在させた際において、その仮想平板が厚み方向に隙間嵌めとなるように設定されている。
【0020】
なお、本発明では、このような隙間Kはなくともよい。その場合には、導体付きフイルム11は、その厚み方向における遊びがない状態での支持となるため、隙間Kがある場合に比べると、平面性ないし長手方向における直線性が高く保持される。ただし、フイルム11をフイルム支持体31に支持させたときにフイルム11に引張り力が過度に作用させないこと、及び、フイルム11を裏面支持部38と表面支持部39の間に嵌め込む際の容易化のためにも、微小でも隙間Kが保持されるのが好ましい。
【0021】
一方、支持体31における細長矩形枠部34の上端には横枠部43が設けられている。この横枠部43は、フイルム11における細長矩形部14の上端部(短辺寄り部位)14aを受ける支持部をなすよう、上記したフイルム裏面支持部38の支持面38aと同一面で平面をなすように形成されている。そして、この横枠部43における中央には、フイルム11の上端部14に設けられた位置決め用の縦長貫通孔26の中央に、その短径よりやや小さい直径の断面円形を有する位置決め用のピン(凸部)45が立設状に形成されている。また、テーパー枠部35と幅広矩形枠部36との間には、横連結梁46が設けられている。ただし、横連結梁46は、フイルム裏面支持部38の支持面38aより突出しないように形成されている。そして、幅広矩形枠部36の下端部に沿っては、このフイルム支持体31を起立状にして、取付け用ベース部材61の上面に固定するための矩形板状の支持体固定部48を備えている。また、フイルムの幅広矩形部16の下辺寄り部位を直角状に折り曲げて支持するように、支持体31の幅広矩形枠部36の下端部には、支持体固定部48から直角に突出するように設けられた折り曲げ支持部49、50を備えている。ただし、折り曲げ支持部49,50のうち、両側にあるものは、その先端部内側にフイルム11の幅広矩形部16の下端を挟み込むための溝を有するフック51とされている。
【0022】
なお、幅広矩形枠部36の左右両側には、テーパー枠部35の内側に形成された三角面部の支持面と同一平面で連なる形の支持面38aを備えており、その枠部の内向き壁面38cがフイルム11の幅広矩形部16の側端が外方に移動するのを防止するようにされている。なお、この枠部36は、下端部に向かうに従って幅(厚み)が大きくなるようにテーパー状に形成されており、その下端部の外側には、支持体31を取付け用ベース部材61の上面に取り付ける際のフック53を備えている。本形態では、幅広矩形枠部36を、取付け用ベース部材61の上面に設けられた一対のガイド63に向き合う形で設けられた溝64に沿って下向きに押込んだ際に、このフック53が弾性変形して抜け止め状に固定されるように構成されている。
【0023】
本形態のセンサ1は、このようなフイルム支持体31に対し、上記した導体付きフイルム11を支持させている。具体的には、図11に示したように、フイルム支持体31における左右両側のフイルム表面支持部39及びフイルム裏面支持部38によって、導体付きフイルム11のうちの液面レベルの検出領域をなす部位である細長矩形部14を含む左右両側の各側縁寄り部位の表面及び裏面が交互に支持されている。そして、フイルム11の幅広矩形部16の下端寄り部位は、折り曲げられるようにして折り曲げ支持部49,50にて支持され、幅広矩形部16の下端縁は両側にある折り曲げ支持部50の先端のフック51に挟み込まれている。
【0024】
なお、このフイルム11の支持体31に対する組立は、上記もしたが、図12に示したように、フイルム11を、フイルム表面支持部39をなす張り出し部の表面39b側から、押込むようにして撓み変形させることで容易にできる。また、この組み立てにおいては、フイルム11の各貫通孔26,27に、それぞれピン(凸部)41、45が嵌入させられる。ただし、その各ピン先端41b、45bはカシメによって潰され、フイルム11が支持面38aから浮き上がらないようにされている。なお、テーパー部15の貫通孔27に嵌入させられているピン41にて、フイルム11の基準位置が決められている。ただし、長孔貫通孔26に嵌入させられているピン45は、その先端がカシメによって潰された状態においても、フイルム11を相対的に上下に自在に移動できるようにフイルム11の表面は押さえつけていない。そして、フイルム11の側縁は、支持体31の枠部の内向き壁面38c、39cにて規制されている。このようにして、フイルム11は支持体31にて支持ないし保持され、図13に示したようになる。
【0025】
本形態においては、このようにしてフイルム11を支持させたフイルム支持体31が、図1〜3に示したように、その支持体固定部48を介してオイルタンク底部への取付け用ベース部材61の上面に載置された状態で取り付けられている。その取り付けは、上記もしたように、支持体31の幅広矩形枠部36の両側をガイド63の溝64に沿って押込むことで行われている。なお、フイルム11の幅広矩形部16の下辺に沿って設けられた各端子18c、19c、21c、22c、24cの各貫通孔には、取付け用ベース部材61に設けられた各リード端子66の先端が嵌入され、それぞれハンダ付けにより電気的に接続されている。なお、図1,2中の67はコネクタであり、図3における下部の配線基板68を介して、図示しない外部機器に各リード端子66との電気的接続がされるように構成されている。また本形態では、図3に示したように、樹脂製の保護ケース71が内部に空間を保持するようにして、フイルム11及び支持体31を覆う形で取り付けられている。ただし、保護ケース71の上部と下部には、適数の貫通孔73が設けられており(下部の貫通孔は図示しない)、保護ケース71内に測定対象をなす液(本例ではオイル)が液面レベルに応じて出入り自在とされており、導体付きフイルム11はオイルに浸漬されるようにされている。なお、図3中の75は、オイルの温度を検知するためのサーミスタ素子を収納する収納部であり、サーミスタ素子は配線基板68と電気的に接続されている。
【0026】
このような本形態のセンサ1は、図3に示したように、リングパッキン69を介して液密にして固定され、タンクの底部Tに起立状に取付けられ、液面レベルの検出に供される。なお、その取り付けは、取付け用ベース部材61のフランジ60のネジ部材挿通孔(図1,2参照)62に図示しないネジ部材を通してねじ込むことによる。本形態の静電容量式のセンサ1では、フイルム11に設けられ、液位に応じて変化する一対の検出用電極間の静電容量を検出することで、オイルの量(液面レベル)が検出される。なお、基準用電極21,22、接地用電極24の作用については後述する。
【0027】
次に本形態のセンサの作用ないし効果を説明する。このような本形態の液面レベルセンサ1においては、フイルム11の支持構造が上記した従来技術のように、本体と蓋とでそれを挟み付ける支持構造とされておらず、フイルムの側縁寄り部位を交互に支持している構造のため、蝶番やロック装置を要しない。したがって、フイルム11の支持構造を極めて単純化できるという顕著な効果がある。
【0028】
また、本形態のフイルム支持構造によれば、フイルム11はその検出領域をなす部位の各側縁において、支持体31のフイルム表面支持部39と、裏面支持部38とで交互に、しかも隙間嵌め状態で支持されている。そして、フイルム11の位置決め用のピンのうち、図示上端側における位置決めピン45は、フイルム11の上端寄り部位における縦長貫通孔26に、その長孔に対応して相対的に上下動(スライド)自在に嵌められている。したがって、フイルム11に過度の引張り力が作用することを防止できる。これにより、フイルム11に設けられた一対の検出用電極18、19等が断線することを有効に防止できるという特有の効果もある。
【0029】
しかも、本形態のフイルム支持構造では、フイルム11の幅広矩形部16を長手方向において曲げて支持している。このため、テーパー枠部35における位置決めピン41にて位置決め固定されている部位(フイルムのテーパー部15)と、幅広矩形部16における外部取り出し用の各端子18c、19c、21c、22c、24cとの間においてフイルム11に引張り又は圧縮の各作用が及ぶような場合であっても、問題なくその作用ないし変形を吸収することができる。したがって、その間にある導体の断線や端子におけるハンダの割れ、カケも防止されるため、電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0030】
なお、本形態においては、フイルム11の側縁寄り部位を交互に支持する、裏面支持部38と表面支持部39の各支持面38a、39aのフイルム11の厚み方向相互間の寸法Sを、フイルム11の厚みより大きくして、いわば隙間嵌めとなるようにしたが、上記もしたように、この寸法Sは、本発明ではフイルム11の側縁寄り部位の厚みと同一であっても良い。すなわち、本発明において、導体付きフイルム11のうちの液面レベルの検出領域をなす部位の左右両側の各側縁に沿って、その各側縁寄り部位の表面及び裏面を交互に支持するように形成された、フイルム表面支持部39及びフイルム裏面支持部38は、互いに対面しないように配置されているから、フイルム11の面を同一部位において両面から圧縮する形で挟み付けるものではない。したがって、その間の寸法Sがフイルム11の厚みと同一であるとしても、さらには、それより小さくても、フイルム11の上下動を許容できるために導体の断線防止が図られる。また、本形態のフイルム支持体31は、1部品で形成したため、センサ自身の構成部品数の増大も招かない。
【0031】
また上記の形態では、支持体31の各側において、長手方向に沿って、上から裏面支持部38、表面支持部39そして裏面支持部38と、裏面側に2つの支持部を設け、表面側に1つの支持部を設け、これらの各支持部にてフイルム11をいわば3点支持で交互に支持する支持構造のものを例示した。このため、フイルム11の上端寄り部位とテーパー部15において、それぞれ貫通孔26,27を設け、これに支持体31に形成したピン41,45を嵌めかつその先端をカシメによって抜け止め構造とし、フイルム11が支持体31の上部の裏面支持部38或いは横枠部43からの浮き上がりを防止している。しかし、本発明では、支持体31の左右の各側に設ける裏面支持部38と表面支持部39の数は、適宜に設定すればよく、したがって、各側における表面支持部39と裏面支持部38とを数多く設けた場合には、このような浮き上がり防止手段は不要とし得る。
【0032】
なお、上記した導体付きフイルム11(液面レベル検出素子)における検出用電極18,19による静電容量の変化に基づく液面レベルの検出は次のようにして行われる。すなわち、導体付きフイルム11において、並列して配置された一対の検出用電極18,19は、自身の周囲に存在する物質の誘電率に応じてその電極間の静電容量が変化する特性を有する。このため、一対の検出用電極18,19における電極間の静電容量は、その電極が、長手方向寸法のうちオイルに浸漬されている部分の割合に応じて変化する。つまり、検出用電極の静電容量と、検出用電極がオイルに浸漬されている割合との間には相関関係があるため、その検出用電極の静電容量に基づいて、検出用電極がオイルに浸漬されている割合(深さ)を特定できる。すなわち、このように並列して配置された一対の検出用電極18,19を備える検出素子をなす導体付きフイルム11は、それが設置されたところがオイルタンク内であり、その検出用電極の周囲にオイルが存在する場合には、そのオイルの液面を検出できる。
【0033】
また、上記したセンサ1における導体付きフイルム11においては、検出用電極18,19に加えて一対の基準検出用電極21,22を備えている。これは次のような作用、効果を有している。すなわち、オイルは、その使用に応じて劣化し、変質もする。しかも、種類の異なるオイルが追加して収容されることがある。このような場合、当初から存在するオイルと比べると、その誘電率が変化する。したがって、上記した検出用電極18,19による静電容量のみに基づいて、そのオイルの液面レベルを測定する場合には、測定精度が低下する。このため、上記の形態では、一対の基準検出用電極21,22が常に液(油)没状態にあるように、それを設けたものである。すなわち、この一対の基準検出用電極21,22でもって、その周囲に存在するオイルの誘電率に基づく基準となる静電容量を検出することとしたものである。かくして、この基準となる静電容量の変化から、オイルの誘電率の変化を検知し、オイルの劣化等によって変化した誘電率の下で、検出用電極18,19で検出した静電容量から正しい液面レベルを検出することができる。
【0034】
さらに上記したセンサにおける導体付きフイルム11においては、その周囲に、接地用電極24が形成されている。このため、接地用電極24を接地させることで、検出用電極18,19から出入りする電気力線の一部をこの接地用電極24に出入りさせることができることから、その電気力線の分布範囲が狭くなるように、その分布状態を変更することができる。これにより、導体付きフイルム11が保護ケース71内に配置される場合でも、一対の検出用電極18,19の静電容量が保護ケース71の寄生容量の影響によって変化するのを抑制できるため、検出誤差が生じるのを抑制ないし防止できる。なお、このような接地用電極24は、導体付きフイルム11自体の補強手段としての効果もあるため、フイルムの変形防止にも効果的である。なお、上記した形態では、この接地用電極24のある部位が支持部にて支持されているため、同部位における導体付きフイルム11の厚みは、貼り合わせた2枚のフイルム12の厚みに接地用電極24をなす導体層10の厚みを加えたものとなる。
【0035】
上記においては、静電容量式のセンサとして具体化したが、本発明の液面レベルセンサは、フイルムに、通電することによって発熱する抵抗体を形成してなる導体付きフイルムを液面レベル検出素子として使用する放熱式液面レベルセンサにおいても同様に具体化できる。すなわち、この検出素子を測定対象をなす液体中に浸漬し、通電することによってその抵抗体がその液に浸漬された割合に応じてその放熱効果が異なることによって抵抗値が変化することを利用した放熱式液面レベルセンサである。なお、放熱式の液面レベルセンサにおいて、液面レベル検出素子は、発熱体をなす導体(層)を、上記したのと同様のフイルムで張り合わせるなどして形成すればよい。なお、この場合、発熱体をなす導体は、鉄ニッケル合金などのプレートから、エッチング等により、或いはNi薄膜等として蒸着やスパッタリングなどで形成すればよい。
【0036】
さらに、上記した実施の形態ではフイルム支持体が枠状のものとして具体化したが、本発明では、これに限定されるものではない。フイルムの組み付け性の低下はあるが、支持体自体をケース状或いは容器状のものとしてもよい。また、上記した実施の形態では、導体付きフイルムについて、液面レベルの検出領域でない幅広矩形部の下端寄り部位で折り曲げるようにして支持体に支持させた場合を例示したが、本発明では、フイルムの全体が一平面に沿うように支持体に支持させたものとしても具体化できる。
【0037】
上記した実施の形態では、オイルの液面レベル検出のためのセンサとして具体化したが、その他、各種の液体の液面レベルの測定にも広く使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の液面レベルセンサの実施の形態で、保護ケースを外した状態の斜視図。
【図2】図1において保護ケースを被せた平面図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】導体付きフイルムの説明用平面図。
【図5】図4のB−B線断面を説明するフイルムの貼り合わせ前の拡大断面図。
【図6】フイルム支持体の説明図であって、A図は図3のセンサにおいて支持体のみを右側から見た図、B図はA図の左側面図、C図はA図のG−G線断面図。
【図7】図6のA図の底面図。
【図8】フイルム支持体に導体付きフイルムを支持させた状態の図6のA図のD−D線拡大断面図。
【図9】フイルム支持体に導体付きフイルムを支持させた状態の図6のA図のE−E線拡大断面図。
【図10】図3のセンサにおいて支持体のみを左側から見た図。
【図11】フイルム支持体に導体付きフイルムを支持させた状態の図6のA図のF−F線断面及びその部分拡大図。
【図12】フイルム支持体に導体付きフイルムを支持させる時の説明用断面図。
【図13】フイルム支持体に導体付きフイルムを支持させた状態の斜視図。
【符号の説明】
【0039】
1 液面レベルセンサ
11 導体付きフイルム
14,15 液面レベルの検出領域をなす部位
31 フイルム支持体
38 フイルム裏面支持部
39 フイルム表面支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面レベル検出素子をなす、樹脂製のフイルムに導体を形成してなる導体付きフイルムと、該導体付きフイルムを位置決めして支持するフイルム支持体とを含んでなる液面レベルセンサにおいて、
前記フイルム支持体は、長手方向に延びる前記導体付きフイルムのうちの液面レベルの検出領域をなす部位の左右両側の各側縁に沿って、その各側縁寄り部位の表面及び裏面を交互に支持するように形成され、しかも互いに対面しないように配置された、フイルム表面支持部及びフイルム裏面支持部を備えており、
このフイルム表面支持部及びフイルム裏面支持部によって、前記導体付きフイルムのうちの液面レベルの検出領域をなす部位の左右両側の各側縁寄り部位の表面及び裏面を交互に支持するフイルム支持構造を有することを特徴とする液面レベルセンサ。
【請求項2】
前記導体付きフイルムが、その厚み方向において、前記フイルム表面支持部及び前記フイルム裏面支持部との間で隙間嵌めとなるように、前記フイルム表面支持部及び前記フイルム裏面支持部の間の寸法が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の液面レベルセンサ。
【請求項3】
前記フイルム支持体には、前記導体付きフイルムの位置決めを行うためのピンが立設され、前記導体付きフイルムのうち液面レベルの検出領域をなす部位の一端寄り部位に形成される貫通孔を前記ピンに嵌入させることで、前記フイルム支持体に対し前記導体付きフイルムが位置決めされていることを特徴とする請求項1または2に記載の液面レベルセンサ。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−38497(P2006−38497A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214948(P2004−214948)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】