液面検出センサ装置、及び、液体定量供給装置
【課題】液面を検出する液体の性質によらずに、精度よく液面を検出する。
【解決手段】液面検出センサ装置51は、揮発性溶液の液面と対向する先端部に設けられ、液面に超音波を出射する超音波出射部54cと、先端部に設けられ、超音波出射部54cから出射された超音波の液面からの戻り超音波を受信する超音波受信部54dとを有する超音波センサ54と、戻り超音波を受信する超音波受信部54dとを有する超音波センサ54と、超音波センサ54の超音波出射部54c及び超音波受信部54dを覆うとともに、超音波出射部54cから出射される超音波、及び、戻り超音波をガイドするキャップ体57と、超音波センサ54の先端部に空気流を生成する空気流生成部59とを備え、空気流生成部59は、キャップ体57を介して超音波センサ54の先端部に空気流を生成し、超音波センサ54の先端部への揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制する。
【解決手段】液面検出センサ装置51は、揮発性溶液の液面と対向する先端部に設けられ、液面に超音波を出射する超音波出射部54cと、先端部に設けられ、超音波出射部54cから出射された超音波の液面からの戻り超音波を受信する超音波受信部54dとを有する超音波センサ54と、戻り超音波を受信する超音波受信部54dとを有する超音波センサ54と、超音波センサ54の超音波出射部54c及び超音波受信部54dを覆うとともに、超音波出射部54cから出射される超音波、及び、戻り超音波をガイドするキャップ体57と、超音波センサ54の先端部に空気流を生成する空気流生成部59とを備え、空気流生成部59は、キャップ体57を介して超音波センサ54の先端部に空気流を生成し、超音波センサ54の先端部への揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の液面を検出する液面検出センサ装置、及び、この液面検出センサ装置を備えて第1容器体から第2容器体に対して所定量の液体を自動的に注ぎ分ける液体定量供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の分析或いは検査法においては、第1容器体から一定量の試料液等を第2容器体に注ぎ分けながら所定の分析・検査を行うことがある。例えば、特許文献1には、患者から採取した尿を装置内に自動的に取り込んで所定の検査を行うことで、清潔かつ正確な検査が行われるようにして患者毎の管理を確実に行うことが可能な尿測定装置の自動供給機が開示されている。
【0003】
また、食物繊維の定量法においては、例えば食品成分表で最も利用されている酵素−重量法の一種で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とに分別定量するプロスキー変法が実施されている。プロスキー変法においては、試料に酵素処理を施してでんぷん質とタンパク質を消化して低分子化した後に濾過を行って濾過物と濾過液に分別し、さらに濾過液に4倍容量のエタノールを加えて高分子成分を不溶化させる。プロスキー変法においては、さらにそれぞれの濾過物をエタノールとアセトンで順次洗浄した後に乾燥することにより、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の重量を求める。
【0004】
すなわち、プロスキー変法においては、予めセライトで濾過層を形成したつぼ型ガラス濾過器が用いられ、吸引ポンプを有するセット装置に設置した濾過器にトールビーカから試料液を供給して濾過を行う。プロスキー変法においては、トールビーカの容量が400mlであるとともに濾過器の容量が30mlであることから、1試料液について14回の注ぎ分け操作が必要となる。
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3033679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各種の検査・分析装置においては、上述した特許文献1に開示される尿測定装置の自動供給機のように、試料液の自動供給機能を備えることにより検査・分析作業の効率化が図られて極めて有効である。しかしながら、従来の液体自動供給装置は、もっぱら装置内に試料液を自動的に供給するものであり、上述したプロスキー変法のように大容量の容器から小容量の容器に対して試料液を1回毎に定量に分けて全容量を注ぎ分けて供給することが必要な特殊な用途に適合するものは提供されていない。
【0007】
したがって、従来の検査・分析装置においては、試料液の供給が分析員により行われ、分析員が各濾過器内の試料液の残存状態を常時監視しながら試料液の補充を行わなければならず、多数の試料液を検査する場合に監視・補充の単純ではあるが神経を使う作業を長時間に亘って行わなければならなかった。例えば、量産型の液体供給装置においては、液体計量機構や自動弁構造等を有する液体供給部が備えられて、一定量の液体を自動的に供給するようにしている。しかしながら、上述したプロスキー変法等に用いる実験装置的な検査・分析装置においては、このような量産型の液体供給装置に備えられる大規模で構造も複雑でありかつ高価な液体自動供給機構を採用することはできない。
【0008】
出願人は、上述した従来の検査・分析装置の問題を解決すべく鋭意工夫を行って、小型で構造簡易かつ廉価な液体定量装置を開発した。この液体定量装置は、大容量の第1容器体から小容量の第2容器体に供給する液体の上限液面位置と下限液面位置とを液面センサで検出し、駆動機構を制御して第1容器体を注ぎ位置と待機位置とに往復回動させることにより所定量ずつ注ぎ分けするとともに、全量の供給を終了すると第1容器体を初期位置へと復帰させる。かかる液体定量装置によれば、プロスキー変法等により多数の試料液の分析を行う際にも分析員が付ききりで各第2容器体内における液体の残量監視や補充を行う手間を不要とし、精密な検査分析を実施することが可能である。
【0009】
ところで、上述した新規な液体定量供給装置においては、第2容器体に供給された液体の液面を検出する手段としての液面センサが備わっているが、この液面センサは、供給される液体の性質によって、精度を欠く場合があった。すなわち、上述の液面センサは、出射面から超音波を当該液面に向けて出射するとともに、液面から反射した超音波を入射面から入射することで、出入射時間を計測することにより、液面までの距離を算出することができるセンサであるが、例えば、揮発性を有する液体の液面を検出する場合には、液面センサが揮発物質による影響を受けて、精度よく検出できないという問題があった。
【0010】
また、上述した新規な液体定量装置は、第1容器体を保持する支持プレート部材の一端部を筐体の主面から突出させた駆動軸に固定して主面と対向した状態で注ぎ位置と待機位置とに亘って往復回動させるとともに、支持プレート部材の側方に主面と対向して第2容器体をスタンドに保持して設置する。新規な液体定量装置は、もっぱら1組の第1容器体と第2容器体とを対象として開発され、筐体の主面に沿って第1容器体と第2容器体を並べて設置したことから操作部がやや横長となる。
【0011】
したがって、新規な液体定量装置においては、作業台上に多数台を併設して多数の試料液の分析を同時に行う場合に、横方向に大きなスペースを占有してしまうといった問題があった。また、新規な液体定量装置に対しては、小型で構造簡易かつ廉価な特性を保持しながら複数組の第1容器体と第2容器体を備えることにより1台で複数の試料液の分析を可能とする要望も寄せられた。
【0012】
したがって、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、検出する液体の性質によらず、精度よく液面を検出することができる液面検出センサ装置、及び、上述した大容量の第1容器体から小容量の第2容器体に全量分の液体を所定量ずつ正確かつ自動的に注ぎ分ける小型で構造簡易かつ廉価な新規な液体定量装置の特性を全面的に踏襲し、さらに設置状態でのスペース効率化や作業の効率化を図る液体定量供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成する本発明に係る液面検出センサ装置は、揮発性溶液を定量供給する液体定量供給装置に用いられる液面検出センサ装置であり、揮発性溶液の液面と対向する先端部に設けられ、この液面に超音波を出射する超音波出射部と、先端部に設けられ、超音波出射部から出射された超音波の液面からの戻り超音波を受信する超音波受信部とを有する超音波センサ部と、超音波センサ部の超音波出射部及び超音波受信部を覆うとともに、超音波出射部から出射される超音波、及び、戻り超音波をガイドするキャップ体と、超音波センサ部の先端部に空気流を生成する空気流生成部とを備える。そして、空気流生成部は、キャップ体を介して超音波センサ部の先端部に空気流を生成し、超音波センサ部の先端部への揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制することを特徴とする。
【0014】
また、液面検出センサ装置は、キャップ体に、このキャップ体と超音波センサ部の先端部との間に形成される空間部に、空気流生成部による空気流を供給する空気流供給孔が設けられ、キャップ体に連結され、空気流供給孔からの空気流が流入し、超音波出射部から出射される超音波、及び、戻り超音波をガイドする長尺のノズル体を備えるようにすることで、簡易な構成で、揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係る液体定量供給装置は、所定の容量を有する第2容器体に対して、大容量の第1容器体から所定量の揮発性液体を注ぎ分けて供給する。液体定量供給装置は、第1容器体を保持するホルダ機構と、第1容器体を所定の経路を以って移動させる移動ガイド機構と、第1容器体を待機位置と液体を第2容器体に注ぐ注ぎ位置とに移動させる駆動機構と、第2容器体の液面を検出する液面検出センサユニットとを備える。
【0016】
液体定量供給装置は、ホルダ機構が、筐体の主面に形成した高さ方向の断面略円弧状の凹陥部内において第1容器体を着脱自在に保持する。液体定量供給装置は、移動ガイド機構が、筐体の凹陥部内に位置して主面に開口された高さ方向の移動ガイド開口溝に沿ってホルダ機構により保持した第1容器体を、凹陥部に臨んで主面と対向して設置した第2容器体を略中心とする円弧状の軌跡を以って上下方向に移動させる。液体定量供給装置は、駆動機構が、上下方向の反復駆動力を出力する駆動源を有し、ホルダ機構を介して第1容器体を移動ガイド開口溝に沿って移動させる。液体定量供給装置は、液面検出センサユニットが、第2容器体の液面を検出することにより、第1位置と第2位置との移動タイミングを検出する。
【0017】
液体定量供給装置においては、液面検出センサユニットにより検出される第2容器体の液面状態に応じて、第1容器体が、移動ガイド開口溝の下端側の第1位置において主面と平行に対向した略垂直姿勢の待機状態に保持されるとともに、駆動機構により移動ガイド開口溝の上端側の第2位置へと移動されることにより主面と略直交する姿勢に変換されて傾くことで、第2容器体に液体を注ぐ動作を行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る液面検出センサ装置は、超音波出射部と超音波受信部とからなる超音波センサ部と、この超音波センサ部の超音波出射部及び超音波受信部を覆うとともに、超音波出射部から出射される超音波、及び、戻り超音波をガイドするキャップ体と、超音波センサ部の先端部に空気流を生成する空気流生成部とを備える。そして、空気流生成部は、キャップ体を介して超音波センサ部の先端部に空気流を生成し、該超音波センサ部の先端部への揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制することができ、すなわち、液体の性質によらず、精度よく液面を検出することができる。
【0019】
また、本発明にかかる液体定量供給装置によれば、筐体の主面に凹陥部を形成するとともにこの凹陥部内に高さ方向の移動ガイド開口溝を形成し、駆動機構によりホルダ機構に保持した大容量の第1容器体を主面に対して略垂直姿勢から略直交姿勢に変換させるように移動ガイド機構を介して第2容器体を略中心として上下方向に円弧状の軌跡を以って移動させて第2容器体に液体を供給するように構成したことにより、横幅が小さい縦長構造となり設置状態において横方向のスペースが低減されるようになる。また、液体定量供給装置は、上述の液面検出センサ装置を備えることから、液体定量供給装置によれば、検出する溶液の性質によらず、正確な液面検出を行うことができるとともに、作業台等に設置した状態でのスペース効率化や作業の効率化を図り、大容量の第1容器体から所定容量の第2容器体に対して精密な液体の注ぎ分け動作を自動的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態として示した液面検出センサ装置51、及び、液面検出センサ装置51を備えた液体定量供給装置(以下、単に供給装置と略称する)1について、図面を参照して詳細に説明する。供給装置1は、例えば上述したプロスキー変法による定量分析を実施する際の濾過工程に用いられ、第1容器体を構成する500ml程度の大きな容量を有するトールビーカ2に400mlの試料液(液体)を充填し、この試料液をトールビーカ2から第2容器体を構成する容量が30mlのつぼ型濾過器(第2容器)3に対して一定量毎に分けて自動的に注ぎ込んで所定の分析が行われるようにする。なお、以下の説明において方向を示す用語の「上下」、「左右」及び「前後」は、図1を基準として用いるものとする。
【0021】
供給装置1は、詳細を後述するようにトールビーカ2から濾過器3に供給する試料液の1回当たりの供給量を予め設定する。供給装置1は、トールビーカ2を第1位置から試料液を供給する第2位置へと移動させて濾過器3に対して設定量の試料液を自動供給した後に、トールビーカ2を第2位置から第1位置へと復帰させて待機状態とする。供給装置1は、濾過器3において供給された試料液の濾過動作が進行し所定量以下となった状態を検出すると、トールビーカ2を再び第1位置から第2位置へと自動的に移動させて濾過器3に試料液の供給動作を行って第1位置へと復帰させる。
【0022】
なお、供給装置1については、トールビーカ2を第1位置と第2位置とに亘って往復移動させると説明するが、例えば第1位置がトールビーカ2をセットしたり試料液を充填する初期位置と、この初期位置よりやや上方や前の注ぎ動作から少し下方で次の注ぎ動作に備える待機位置であってもよい。
【0023】
また、第2位置については、トールビーカ2が停止して濾過器3に対して試料液を注ぐ動作位置として説明するが、注ぎ動作時にトールビーカ2を急激に停止すると一度に大量の試料液が濾過器3に注ぎ込まれるいわゆるどか注ぎの発生或いは不安定な姿勢によるこぼれの発生が生じる虞がある。供給装置1においては、第2位置の近傍においてトールビーカ2の動作を制御することにより、上述した事態の発生を防止するとともに濾過器3における試料液の液面検出や制御の簡易化等が図られるようにする。
【0024】
したがって、第2位置については、特に精密を要しない場合や各機構部等によりその対応を図ることにより、トールビーカ2の停止状態を必須とせずまた固定位置とならない。また、第2位置については、トールビーカ2内の試料液の残存量に応じてその都度変化することになる。すなわち、第2位置とは、トールビーカ2が第1位置から上方へと円弧状の軌跡を以って移動されて所定の角度に傾けられることにより濾過器3への試料液の注ぎ込みを開始する位置である。
【0025】
供給装置1は、トールビーカ2の上述した反復移動動作を、全量の試料液を濾過器3に供給し終えるまで自動的に繰り返し行う。したがって、供給装置1は、複数台を設置して複数試料液の濾過を同時に行う場合でも分析員が全ての濾過器3を監視して試料液の残存状態に応じて注ぎ足し操作を行うことを不要とさせ、分析員の負担軽減と作業の効率化とともに正確な分析の実施を可能とする。
【0026】
供給装置1は、例えば作業テーブル上に載置され、高さが約75cm、奥行きが約30cmとやや大きいが、図1に示すように横幅が20cmと小さく、複数台を並べて設置しても作業に必要なスペースが充分に確保されて複数の試料液を同時に処理することを可能とする。供給装置1は、後述するように濾過器3が、筐体4の主面4Aと対向して濾過器支持ブラケット5の位置調整機構により所定の高さ位置及び前後位置に設定された状態で設置される。濾過器3は、所定量の試料液が充填される容器部3aと、容器部3aの底部に固定されたセライト等からなる濾過層3bと、濾過層3bが支持される支持部材3cとから構成されており、支持部材3cに濾過層3bと連結された内部空間を負圧状態として濾過層3bを通過する濾過液を吸引して排水する吸引排水機構6が接続される。また、濾過器3の支持部3cには、容器部3aと濾過層3bとを支持部3cに固定するためのフック状の固定部材3dが設けられている。支持部3cと連結された吸引排水機構6は、第1の吸引排水管6aと、この第1の吸引排水管6aの後段に連結され、濾過器3からの濾過液を溜める広口ビン6bと、広口ビン6bに接続された後段において図示しないポンプ等の吸引手段と連結された第2の吸引排水管6cとから構成されている。第1の吸引排水管6aは、支持部3cと広口ビン6bとを連結し、濾過器3からの濾過液を広口ビン6bに排水する。第2の吸引排水管6cは、広口ビン6bと吸引手段とを連結し、上段において広口ビン6bに溜まった濾過液を吸引しない位置、すなわち広口ビン6bの上部に連結され、内部を負圧状態とすることにより濾過器3の濾過液を吸引するように、広口ビン6b内のエアを吸引する。なお、広口ビン6bは、供給装置1毎に濾過液を回収する際に利用することができるが、第1の吸引排水管6aと第2の吸引排水管6cとを直接連結するようにしてもよいことは勿論である。また、濾過器3は、かかる構造に限定されず、例えば吸引ビンと、その上部開口部に装着される漏斗等により構成してもよいことは勿論である。
【0027】
供給装置1は、操作面を構成する筐体4の主面4Aが、図1及び図2に示すように高さ方向の略中央位置において下部領域4ALと上部領域4AUとに区割りされ、下部領域4ALに断面略円弧状の凹陥部7が設けられる。供給装置1には、筐体4の内部に設けた図示しないシャーシに詳細を後述するホルダ機構8と移動ガイド機構9と駆動機構10が組み立てられ、凹陥部7により構成する空間部内においてトールビーカ2を保持するとともに回動させながら高さ方向に移動させる。
【0028】
供給装置1は、詳細を後述するようにトールビーカ2がホルダ機構8と移動ガイド機構9とにより第1位置と第2位置とに亘って凹陥部7内を高さ方向に往復移動する。供給装置1は、ホルダ機構8が、トールビーカ2を第1位置において主面4Aと平行に対峙する略垂直姿勢に保持する。供給装置1は、駆動機構10が動作してホルダ機構8により保持したトールビーカ2を第1位置から第2位置へと移動させるが、移動ガイド機構9により凹陥部7内を上方へと円弧状の軌跡を以って移動させるにしたがって上述した略垂直姿勢から次第に主面4Aと略直交する姿勢へと変換させて傾倒状態とする。
【0029】
供給装置1は、濾過器3が、図2に示すように主面4Aと略同一面を構成して凹陥部7と対向して濾過器支持ブラケット5に設置される。供給装置1は、凹陥部7が、トールビーカ2を濾過器3を中心とする円弧状の軌跡を以って移動させる曲率を以って筐体4の主面4Aに形成される。供給装置1には、凹陥部7内に、移動ガイド機構9を構成する高さ方向の一対の移動ガイド開口溝11L、11R(以下、個別に説明する場合を除いて移動ガイド開口溝11と総称する。)が形成されている。移動ガイド開口溝11は、幅方向に離間して互いに平行なスリット状の開口溝として凹陥部7内に形成される。
【0030】
供給装置1は、図1に示すように、上部領域4AU内に制御回路部12等を搭載した詳細を省略する制御基板13が内蔵されるとともに、複数の操作ボタン14A〜14Dや液晶表示器15或いは電源のオン・オフ状態等を表示するLED(Light Emitting Diode)表示灯16等が設けられる。供給装置1には、上部領域4AUに一端を取り付けられ、先端が凹陥部7と対向して濾過器3内の試料液の材料を検出する液面検出センサ装置51が設けられる。
【0031】
供給装置1の濾過器支持ブラケット5は、図1、図2及び図5に示すように、平板状部材からなり、上面に濾過器3の支持部3cが固定される上面部材5aと、上面部材5aを支持し、供給装置1と連結される略L字状の支持部材5bとから構成されている。濾過器支持ブラケット5の支持部材5bは、一端側に上面部材5aが固定され、他端側が供給装置1の筐体4底面にネジ止めされて固定されている。濾過器支持ブラケット5は、支持部材5bの供給装置1の筐体4底面の固定位置を調整することにより、濾過器3の上下位置、左右位置、前後位置などの位置調整を行う。
【0032】
供給装置1は、ホルダ機構8が、図1、図2及び図4に示すように、一対の支持ブラケット部材18L、18R(以下、個別に説明する場合を除いて支持ブラケット部材18と総称する。)と、この支持ブラケット部材18に設けられてトールビーカ2を直立した状態で載置する受け台19と、支持ブラケット部材18、18に横架され載置されるトールビーカ2の高さ方向の2カ所が当接される半円弧状の固定ホルダ片21L、21U(以下、個別に説明する場合を除いて固定ホルダ片21と総称する。)と、受け台19の後方側より、固定ホルダ片21側に付勢されて設けられる可動ホルダ片20等の部材を有する。ホルダ機構8は、後述するように支持ブラケット部材18が駆動機構10により移動ガイド開口溝11に沿って上下方向に移動される。
【0033】
ホルダ機構8は、可動ホルダ片20が、トールビーカ2の外周部を固定ホルダ片21側に付勢し保持する長さを有するとともに、固定ホルダ片21よりもやや小幅に形成され、支持ブラケット部材18に対して、下端側を受け台19の後方側に設けられるヒンジ機構20aを介して組み合わされる。ホルダ機構8は、ヒンジ機構20aが、受け台19に固定され可動ホルダ片20を片持ちする軸受け筒20bと、支持ブラケット部材18L、18R間である左右方向に支架された支軸20cと、支軸20cから立設されるブラケット部材20dと支持ブラケット部材18Lとの間に装着されたコイルバネ20eから構成し、可動ホルダ片20を固定ホルダ片21側に付勢しながら回動自在に支持する。
【0034】
ホルダ機構8は、コイルバネ20eの弾性力に抗して可動ホルダ片20を開いた状態で、受け台19上にトールビーカ2を直立状態で載置する。ホルダ機構8は、可動ホルダ片20がコイルバネの弾性力により復帰して受け台19上に載置したトールビーカ2の外周部に当接することで、固定ホルダ片21との間でトールビーカ2を挟み込んで保持する。ホルダ機構8は、これによりトールビーカ2を、筐体4の主面4Aに形成した凹陥部7と対向して、主面4Aと平行に対向した略垂直状態で着脱自在に保持する。
【0035】
なお、ホルダ機構8は、上述した構造に限定されないことは勿論であり、例えば、トールビーカ2との当接面である可動ホルダ片20や固定ホルダ片21の内面にそれぞれトールビーカ2を確実に保持する滑り止め用の弾性シート材等を接合してもよい。ホルダ機構8は、トールビーカ2の大きさに合わせて適宜の個数或いは形状の可動ホルダ片20や固定ホルダ片21を備えてもよい。ホルダ機構8は、例えば、固定ホルダ片21を受け台19から立設した円弧状の立壁により構成し、可動ホルダ片20によりトールビーカ2を押し付けて保持するようにしてもよい。ホルダ機構8は、固定ホルダ片21を第2位置においてトールビーカ2の下側を保持する位置に設けることが好ましい。
【0036】
供給装置1は、移動ガイド機構9が、図2及び図4に示すように上述した凹陥部7内に開口された移動ガイド開口溝11と、この移動ガイド開口溝11に沿って筐体4の内部に設置された左右一対のガイドレール部材22L、22R(以下、個別に説明する場合を除いてガイドレール部材22と総称する。)と、これらガイドレール部材22に支持されて移動する駆動ブラケット部材23とを備える。
【0037】
移動ガイド機構9は、移動ガイド開口溝11が、トールビーカ2の外径よりも大きな間隔を有して、上述したように凹陥部7内において幅方向に離間して互いに平行でありかつ高さ方向の円弧状溝として形成される。移動ガイド開口溝11は、図1及び図2に示すようにホルダ機構8の支持ブラケット部材18の基端部を嵌挿させて駆動ブラケット部材23と連結させる。なお、供給装置1は、一対の移動ガイド開口溝11L、11Rを形成したが、1つの移動ガイド開口溝11であってもよいことは勿論である。
【0038】
ガイドレール部材22は、左右略対称形であり、移動ガイド開口溝11に沿って筐体4の内部に取り付けられる。ガイドレール部材22は、凹陥部7に対してその曲率とほぼ等しい曲率を有する円弧状であり、かつ、その高さとほぼ等しい長さを有する長尺の部材からなる。ガイドレール部材22には、図6に示すようにそれぞれの相対する側面に開口するガイド溝24L、24R(以下、個別に説明する場合を除いてガイド溝24と総称する。)が全長に亘って形成されることで断面が略コ字状を呈するチャンネル状の部材からなる。ガイドレール部材22は、同図に示すようにガイド溝24を構成する前面側の側壁が段付きとされ、ガイド溝24に沿ってチェーンガイド溝25L、25R(以下、個別に説明する場合を除いてチェーンガイド溝25と総称する。)が全長に亘って形成される。
【0039】
駆動ブラケット部材23は、図7及び図8に示すように、ガイドレール部材22の対向間隔とほぼ等しい幅を有するプレート状の基部26と、この基部26の両側縁に沿って一体に連設されたサイドプレート部27L、27R(以下、個別に説明する場合を除いてサイドプレート部27と総称する。)とにより構成される略H状の部材からなる。駆動ブラケット部材23には、厚み方向に対して凹陥部7の曲率とほぼ等しい曲率で湾曲された基部26に、移動ガイド開口溝11を嵌挿された上述したホルダ機構8の支持ブラケット部材18の基端部が結合される。
【0040】
駆動ブラケット部材23は、サイドプレート部27が、図7に示すように凹陥部7の曲率とほぼ等しい曲率で湾曲され、ガイド溝24の溝幅よりもやや大きな幅を有する円弧状に形成されたプレート部位からなる。サイドプレート部27には、長さ方向の両端近傍の外側面にピン軸28L、28U(以下、個別に説明する場合を除いてピン軸28と総称する。)が設けられるとともに、このピン軸28にガイド溝24の溝幅とほぼ同径のベアリングコロ29L、29U(以下、個別に説明する場合を除いてベアリングコロ29と総称する。)が装着されている。
【0041】
駆動ブラケット部材23は、サイドプレート部27Lをガイドレール部材22Lと対向させてベアリングコロ29Lをガイド溝24Lに嵌挿するとともに、サイドプレート部27Rをガイドレール部材22Rと対向させてベアリングコロ29Rをガイド溝24Rに嵌挿することにより、ガイドレール部材22L、22R間に組み合わされる。駆動ブラケット部材23は、後述する駆動機構10から上下方向の駆動力が作用されることによりベアリングコロ29がガイド溝24内で回転することで上下方向に円滑に移動する。駆動ブラケット部材23は、この移動動作により、ホルダ機構8の支持ブラケット部材18を一体的に移動させ、トールビーカ2を凹陥部7の曲率とほぼ等しい円弧状の軌跡を以って移動させるようにする。
【0042】
駆動機構10は、図2に示すように駆動源を構成するリニアサーボモータ30と、移動ガイド開口溝11の下方部に位置して前後に対向して設けられた下部ガイド体31F、31B(以下、個別に説明する場合を除いて下部ガイド体31と総称する。)と、移動ガイド開口溝11の上方部に位置して前後に対向して設けられた上部ガイド体32F、32B(以下、個別に説明する場合を除いて上部ガイド体32と総称する。)と、左右一対の下部チェーンベルト33L、33R(以下、個別に説明する場合を除いて下部チェーンベルト33と総称する。)と、左右一対の上部チェーンベルト34L、34R(以下、個別に説明する場合を除いて上部チェーンベルト34と総称する。)を備える。
【0043】
駆動機構10は、リニアサーボモータ30を、図2及び図3に示すように凹陥部7と対向するように背面側に位置して立設状態で筐体4の内部に設ける。リニアサーボモータ30は、各種の自動制御装置等に一般に用いられる周知のものと同等であることから詳細な説明を省略するが、左右一対の作動体35L、35R(以下、個別に説明する場合を除いて作動体35と総称する。)を備えており、この作動体35が後述する制御回路部12から出力される制御信号に基づいて移動方向、移動量或いは移動速度を精密に制御されて駆動される。
【0044】
リニアサーボモータ30は、詳細を省略するが作動体35の移動位置を検出して制御回路部12に対して位置信号を出力し、この位置信号に基づいて制御回路部12から出力される制御信号により所定の動作制御が行われる。リニアサーボモータ30は、位置信号に基づいて例えば出力が反転することにより作動体35の上下方向の移動を切り換え、作動体35の速度を切り換える。リニアサーボモータ30は、上述したように筐体4の内部に立設状態に設けることにより、作動体35が凹陥部7と対向して上下方向に往復移動する。作動体35には、後述するように駆動ベルト体を構成する下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34が、それぞれの一端部を固定される。
【0045】
前方下部ガイド体31Fは、図4に示すように左右一対の前方下部チェーン車36L、36R(以下、個別に説明する場合を除いて前方下部チェーン車36と総称する。)と、これら前方下部チェーン車36を支持する前方下部支軸37と、この前方下部支軸37を回転自在に支持する左右一対の前方下部ベアリング軸受38L、38R(以下、個別に説明する場合を除いて前方下部ベアリング軸受38と総称する。)とから構成される。前方下部ガイド体31Fは、図6に示すように前方下部支軸37が前方下部ベアリング軸受38を介してガイドレール部材22間にその下端部の近傍に位置して回転自在に支架され、この前方下部支軸37にガイドレール部材22のチェーンガイド溝25内に位置して前方下部チェーン車36が軸装される。
【0046】
後方下部ガイド体31Bも、基本的な構成を前方下部ガイド体31Fと同様とし、左右一対の後方下部チェーン車39L、39R(以下、個別に説明する場合を除いて後方下部チェーン車39と総称する。)と、これら後方下部チェーン車39を支持する後方下部支軸40と、この後方下部支軸40を回転自在に支持する左右一対の後方下部ベアリング軸受41L、41R(以下、個別に説明する場合を除いて後方下部ベアリング軸受41と総称する。なお、図2に左方後方下部ベアリング軸受41Lのみを図示する。)とから構成される。後方下部ガイド体31Bは、後方下部支軸40が後方下部ベアリング軸受41を介して筐体4のシャーシに回転自在に支架されるとともに、この後方下部支軸40に前方下部チェーン車36と対向位置して後方下部チェーン車39が軸装される。
【0047】
駆動機構10は、前方上部ガイド体32Fが、上述した前方下部ガイド体31Fに対向するガイドレール部材22の上端近傍に位置して同等の部材を備えて構成される。前方上部ガイド体32Fは、構成部材が前方下部ガイド体31Fと同等であるから詳細な説明を省略するが、左右一対の前方上部チェーン車42L、42R(以下、個別に説明する場合を除いて前方上部チェーン車42と総称する。)と、前方上部支軸43と、左右一対の前方上部ベアリング軸受44L、44R(以下、個別に説明する場合を除いて前方上部ベアリング軸受44と総称する。)とから構成される。
【0048】
駆動機構10は、後方上部ガイド体32Bが、上述した後方下部ガイド体31Bに対向して同等の部材を備えて構成される。後方上部ガイド体32Bは、構成部材の詳細な説明を省略するが、左右一対の後方上部チェーン車45L、45R(以下、個別に説明する場合を除いて後方上部チェーン車45と総称する。)と、後方上部支軸46と、左右一対の後方上部ベアリング軸受47L、47R(以下、個別に説明する場合を除いて後方上部ベアリング軸受47と総称する。)とから構成される。
【0049】
駆動機構10は、上述したように一端部をリニアサーボモータ30の作動体35に固定した下部チェーンベルト33が、図2及び図3に示すように後方下部チェーン車39と前方下部チェーン車36とに掛け合わされるとともにガイドレール部材22のチェーンガイド溝25内を導かれ、他端側を駆動ブラケット部材23の一端側に固定される。駆動機構10は、一端部を下部チェーンベルト33と対向して作動体35に固定した上部チェーンベルト34が、後方上部チェーン車45と前方上部チェーン車42とに掛け合わされるとともにガイドレール部材22のチェーンガイド溝25内を導かれ、他端側を下部チェーンベルト33と対向して駆動ブラケット部材23の他端側に固定される。
【0050】
駆動機構10は、制御回路部12からリニアサーボモータ30に供給される制御信号に基づいて作動体35が上下方向に駆動される。駆動機構10は、この作動体35の動作を下部ガイド体31と上部ガイド体32を介して駆動ブラケット部材23へと伝達し、駆動ブラケット部材23をガイドレール部材22に沿って指示された上方向或いは下方向に移動させる。駆動機構10は、例えば駆動ブラケット部材23が図2に示すガイドレール部材22の下端部に位置する第1位置の状態でリニアサーボモータ30にトールビーカ2から濾過器3への注ぎ動作を指示する制御信号が供給されると、作動体35が同図下方へと移動する。
【0051】
駆動機構10は、作動体35が下方へと移動動作するにしたがって、図4矢印で示すように下部チェーンベルト33が後方下部チェーン車39と前方下部チェーン車36を介して前方側へと繰り出されるように移動するとともに、上部チェーンベルト34が前方上部チェーン車42と後方上部チェーン車45を介して後方側へと巻き込まれるように移動する。駆動機構10は、この下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34の動作により駆動ブラケット部材23をガイドレール部材22に沿って上方へと押し上げるように移動させる。
【0052】
一方、駆動機構10は、第2位置においてトールビーカ2から濾過器3への注ぎ動作が終了してリニアサーボモータ30に第1位置への復帰動作を指示する制御信号が供給されると、作動体35が上方へと移動する。駆動機構10は、作動体35が上方へと移動動作するにしたがって、下部チェーンベルト33が前方下部チェーン車36と後方下部チェーン車39を介して後方がわへと巻き込まれるように移動するとともに、上部チェーンベルト34が後方上部チェーン車45と前方上部チェーン車42を介して前方側へと繰り出されるように移動する。駆動機構10は、この下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34の動作により駆動ブラケット部材23をガイドレール部材22に沿って下方へと押し下げるように移動させる。
【0053】
駆動機構10においては、上述したように両側部位をガイドレール部材22に支持された駆動ブラケット部材23を左右一対の下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34とに駆動することから、駆動ブラケット部材23がより安定した姿勢でガイドレール部材22に沿って上下方向の移動動作が行われるようになる。したがって、駆動機構10においては、駆動ブラケット部材23を介して、ホルダ機構8に保持されたトールビーカ2を安定かつ円滑に上下方向に移動させて液こぼれ等の発生が防止されるようにする。
【0054】
なお、駆動機構10においては、上述したように駆動源としてリニアサーボモータ30を用いたが、例えば回転出力型サーボモータ等の正逆回転可能な精密モータ或いは適宜のモータを駆動源として用いるようにしてもよい。かかる駆動機構10は、例えばこの精密モータにより上述した後方下部チェーン車39を支持する後方下部支軸40や後方上部チェーン車45を支持する後方上部支軸46を直接或いは間接的に回転駆動するようにしてもよい。
【0055】
また、駆動機構10においては、駆動ブラケット部材23を上述したように左右一対の下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34とにより移動させるようにしたが、左右いずれか一方側に設けたチェーンベルトにより移動させるようにしてもよい。駆動機構10は、さらにチェーンベルトとチェーン車に変えて例えばタイミングベルトとタイミングプーリを用いてもよい。
【0056】
供給装置1は、上述したトールビーカ2の動作を、制御回路部12から出力する制御信号により駆動機構10のリニアサーボモータ30を動作制御することにより行う。供給装置1は、後述するように濾過器3内における試料液の残存量、すなわち液面位置を液面検出センサ装置51により検出し、規定量以下の状態を検出すると駆動機構10を動作させてトールビーカ2を第1位置から第2位置へと移動して試料液の注ぎ動作が自動的に行われるようにするとともに規定量に達した状態を検出すると第2位置から第1位置へと復帰させる。なお、供給装置1は、トールビーカ2を第2位置に移動させて停止状態を保持して濾過器3への試料液の供給を行うが、例えば設定操作部を設けて濾過器3の容量等に応じてこの停止時間等を予め設定することも可能である。また、供給装置1は、この場合に設定操作部によりリニアサーボモータ30の速度設定等、他の設定操作を行うようにしてもよい。
【0057】
供給装置1は、図3に示した制御系により上述したトールビーカ2の制御動作を行う。供給装置1は、詳細を省略するが制御回路部12が、CPU(Central Processing Unit)やメモリ素子或いはカウンタ等を制御基板13に実装して構成する。なお、制御基板13には、制御回路部12の構成部品ばかりでなく、例えばモータ制御回路30A或いは電源回路部等の構成部品も実装される。
【0058】
供給装置1は、図示しない電源コードのプラグを例えば商用電源コンセントに接続することにより電源が供給される。供給装置1は、電源スイッチ14Aにより電源のオン・オフ操作を行い、電源回路部においてAC−DC変換処理や所定電圧変換処理を行って制御回路部12やリニアサーボモータ30等の構成各部に対して所定電圧の電源供給が行われるようにする。
【0059】
制御回路部12には、各操作ボタン14や液面検出センサ装置51或いはリニアサーボモータ30から出力される出力信号が入力され、これら出力信号に基づいて所定の処理を行うとともにリニアサーボモータ30を駆動するモータ制御回路30Aに対して制御信号を出力する。制御回路部12は、各出力信号に基づいて液晶表示器15を駆動して所定の表示を行うとともに、LED表示灯16による所定の点灯表示を行う。
【0060】
制御回路部12には、上述したようにリニアサーボモータ30から出力される作動体35の移動位置、換言すればトールビーカ2の移動位置に応じた位置信号が入力される。制御回路部12は、この位置信号をカウンタによりカウントしメモリ素子に登録した制御動作情報を比較して、所定の制御信号をモータ制御回路30Aに出力する。制御回路部12は、リニアサーボモータ30が、トールビーカ2が第1位置から所定の高さ位置まで移動する間は高速で駆動され、当該位置から第2位置までは低速で駆動され、第2位置から第1位置の直前までは高速で駆動され、直前位置で減速して緩やかに停止するように制御する。なお、制御回路部12は、かかる制御動作に限定されないことは勿論である。
【0061】
供給装置1には、操作ボタン14として、電源スイッチ14Aと、スタートスイッチ14Bと、一時停止スイッチ14Cと、復帰スイッチ14Dが筐体4の上面に設けられる。電源スイッチ14Aは、上述したように電源のオン・オフ操作を行う。スタートスイッチ14Bは、トールビーカ2や濾過器3をセットした状態で操作することにより、制御回路部12にスタート信号を出力し、駆動機構10を駆動してトールビーカ2の移動動作が行われるようにする。
【0062】
一時停止スイッチ14Cは、例えばトールビーカ2に試料液を供給している途中で、何らかの理由により当該注ぎ動作を一旦中止する必要が生じた場合に操作され、制御回路部12に一時停止信号を出力して駆動機構10の停止動作等が行われるようにする。復帰スイッチ14Dは、例えばトールビーカ2から全容量の試料液を濾過器3に供給し終えて分析作業を終了する場合等に操作され、制御回路部12に信号を出力して駆動機構10の初期位置復帰操作等が行われるようにする。なお、供給装置1は、例えばスタートスイッチ14Bと一時停止スイッチ14Cとをプッシュ−プッシュ型スイッチにより構成し、1度押し操作でスタート動作が行われるとともにその動作が継続されるようにし、2度押し操作で一時停止動作が行われるようにしてもよい。
【0063】
供給装置1は、液晶表示器15により、試料液の注ぎ動作の進行状況(例えば、注ぎ回数等)や上述した一時停止の動作モード等の状態を表示する。また、供給装置1は、多数組みを併設して用いる場合に、液晶表示器15により試料液番号等の表示が行われるようにする。なお、供給装置1は、設定操作部を有して分析仕様に基づく動作仕様を設定可能とする場合に、その情報を表示するようにしてもよい。供給装置1は、この液晶表示器15を必須とするものでは無いことは勿論である。
【0064】
LED表示灯16は、電源スイッチ14Aのオン・オフ操作に連動して点灯・消灯することで電源の投入状態を表示する。LED表示灯16は、例えばトールビーカ2から全容量の試料液を濾過器3に供給し終えた時点で点滅表示に切り替わることにより、分析者に対して試料液の補充操作や復帰スイッチ14Dの操作を促すようにする。LED表示灯16は、トールビーカ2が何らかの原因により移動ガイド開口溝11の途中で停止してしまったといった異常事態の発生において、例えば高速の点滅表示に切り替わって分析者に報知する。なお、供給装置1は、異常事態の発生に際して、LED表示灯16の点滅とともに警報ブザーの鳴動により報知するようにしてもよい。
【0065】
液面検出センサ装置51は、例えば超音波センサが用いられ、出射面から超音波を濾過器3内に向けて出射するとともに、濾過器3で反射された戻り超音波を入射面から入射してその時間をカウントとして検出信号をする。液面検出センサ装置51は、濾過器3内における試料液の液面の高さに応じた検出信号を制御回路部12に出力する。なお、液面検出センサ装置51については、上述した超音波センサに限定されず、液面の高さ位置を検出する適宜のセンサ、例えばフロートセンサや光学センサも用いられる。
【0066】
液面検出センサ装置51は、トールビーカ2から濾過器3に対する試料液の注ぎ込み状態を監視する。液面検出センサ装置51は、図1及び図2に示すように筐体4の主面4Aの上部領域4AUに立設され、先端部が濾過器3と対向位置されるようにする。液面検出センサ装置51は、図9及び図10に示すように、上部領域4AUから主面4Aに垂直な方向に設けられ、主面4Aと平行な面内で回動可能に支持するボールプランジャ17aを有する第1の支持部材17bと、ボールプランジャ17aにより、略90度ごとに回動固定される第2の支持部材17cとを介して主面4Aに固定されている。第1の支持部材17bは、円環状部材からなり、内部に第2の支持部材17cが挿通され、ボールプランジャ17aにより第2の支持部材17cの位置決めを行う。第2の支持部材17cは、円環状部材からなり、液面検出センサ装置51の第1の連結部材52が挿通される。第2の支持部材17cの先端部側の周面には、ネジ切りされた貫通孔17dが設けられ、ネジ17eが螺合されることにより、第1の連結部材52を所定の位置において固定する。
【0067】
液面検出センサ装置51は、第2の支持部材17cに挿通・固定される第1の連結部材52と、第1の連結部材52と連結され、超音波発生回路54aを収容する超音波発生回路収納部材53と、超音波発生回路収納部材53と連結され、後段の超音波センサ54の超音波出射面54bを主面4Aに対して垂直に向ける第2の連結部材55と、第2の連結部材55と連結され、超音波センサ54を収容する超音波センサ収納部材56と、超音波センサ収納部材56から臨まされた超音波センサ54と連結され、超音波出射面54bからの超音波の出射方向をガイドするキャップ体57と、キャップ体57に設けられたノズル58とから構成されている。
【0068】
第1の連結部材52は、円環状部材からなり、一端側が第2の支持部材17cに挿通され、所定の位置においてネジ17eにより螺合され、他端側が超音波発生回路収納部材53に設けられる挿通孔53aに挿通される。第1の連結部材52は、超音波発生回路収納部材53に設けられるネジ切りされた貫通孔53bにネジ53cを螺合することにより所定の位置において固定される。
【0069】
超音波発生回路収納部材53は、第1の連結部材52が挿通される挿通孔53aと、挿通孔53aと連結され、超音波発生回路54aを収納する空間部53dと、空間部53dと連結され挿通孔53aに対して垂直方向に設けられる第2の連結部材55が挿通される挿通孔53eとが設けられている。超音波発生回路収納部材53には、挿通孔53aに貫通されたねじ切りされた貫通孔53bが設けられ、この貫通孔53bにネジ53cを螺合させることにより、第1の連結部材52を固定する。超音波発生回路収納部材53には、同様に、挿通孔53eに貫通されたねじ切りされた貫通孔53fが設けられ、この貫通孔53fにネジ53gを螺合させることにより、第2の連結部材55を固定する。
【0070】
第2の連結部材55は、円環状部材からなり、超音波発生回路収納部材53の挿通孔53eに挿通され、超音波発生回路収納部材53と超音波センサ収納部材56とを連結する。
【0071】
超音波センサ収納部材56は、円環状部材からなり、一端側に設けられる挿通孔56aに第2の連結部材55が挿通され、一端側の外周面から挿通孔56aに亘ってネジ切りされて貫通された貫通孔56bにネジ56cを螺合させることにより、第2の連結部材55が固定される。また、超音波センサ収納部材56は、他端側の内周面に形成された雌ネジ部56dに超音波センサ54が超音波出射面54b側を一部臨ませて螺合され、超音波センサ54を保持する。さらに、超音波センサ収納部材56には、後述するファン59からのエアをノズル58側に送るための他端面から超音波センサ収納部材56内部に貫通して設けられた複数の貫通孔56eが形成されている。
【0072】
超音波センサ54は、円筒型の超音波センサであり、先端部に超音波を出射する超音波出射面54bを有する超音波出射部54cと、超音波出射部54cから出射された超音波の戻り超音波を受信する超音波受信部54dとから構成され、後端部から電源や電気信号が供給されるケーブル54eが接続されている。超音波センサ54は、その外周面に雄ネジ部54fが形成され、超音波センサ収納部材56の雌ネジ部56dと螺合されるとともに、キャップ体57の雌ネジ部57aと螺合される。
【0073】
キャップ体57は、超音波センサ54を介して超音波センサ収納部材56と密閉連結される部材であり、一端側から形成され、超音波センサ54の超音波出射部54c及び超音波受信部54dを覆うとともに、超音波出射部54cからの超音波、及び、液面に反射した戻り超音波のそれぞれを所定の方向にガイドする。キャップ体57は、超音波センサ54と螺合される第1の挿入穴57bと、この第1の挿入穴57bの底部において連続して形成された他端側へ貫通されノズル58がねじ込まれる第1の挿入穴57bより小径の第2の挿入穴57cとが設けられる。また、キャップ体57の一端側には、超音波センサ収納部材56の貫通孔56eに流入したファン59からのエアを超音波出射面54bと第1の挿入穴57bの底部との間に形成される空間部57dへバイパスする複数の空気流供給孔57eが形成されている。空気流供給孔57eは、ファン59からのエアを空間部57dに供給し空気流を生成する孔である。キャップ体57の第1の挿入穴57bの内周面には、一端側に超音波センサ54の雄ネジ部54fと螺合される雌ネジ部57aが設けられる。キャップ体57は、超音波センサ収納部材56と密閉して連結されるとともに、超音波出射面54bと第1の挿入穴57bの底部との間に空間部57dを形成するように、超音波センサ54に螺合される。
【0074】
ノズル58は、管状部材からなり、後端側がキャップ体57の第2の挿入穴57cにねじ込まれ、先端側から、ファン59からのエア及び超音波センサ54からの超音波が所定方向に出射されるとともに、液面に反射された戻り超音波を超音波受信部54dにガイドする。ノズル58は、先端側において、ノズル中心軸と直交する面に対して所定の角度θを有する切り欠き部58aが設けられている。この切り欠き部58aは、超音波出射部54cからの超音波が、切り欠きが形成されていない場合にノズル58の先端側から液面に出射される際に生じる反射波による影響を超音波受信部54dが受けないためのものである。
【0075】
なお、ファン59は、供給装置1の上部領域4AUに設けられる空気流生成部であり、このファンから供給されるエアが、液面検出センサ装置51の各部材の内部を流通し、ノズル58の先端から放出される。具体的には、供給装置1の筐体4内に設けられたファン59からのエアは、第2の支持部材17c内部、第1の連結部材52内、超音波発生回路収納部材53内、第2の連結部材55、超音波センサ収納部材56内、貫通孔56e内、空気流供給孔57e内、空間部57d、ノズル58内を順に通り、ノズル58の先端部から流出する。これは、濾過器3に注がれる試料液の性質によっては、例えば、揮発性の試料液であれば、ノズル58内に当該試料液の揮発物質が蓄積し、超音波センサの精度を低下させることを防止するためのものである。ファン59は、キャップ体57の空気流供給孔57eを介してノズル58から僅かな空気流を生成する程度の風量を供給するものであり、超音波センサ54の液面からの反射波を受信する精度が落ちない程度の風量が好ましい。
【0076】
このような構成を有する液面検出センサ装置51は、超音波センサ54を保持する超音波センサ収納部材56を備え、キャップ体57の空気流供給孔57eを介してファン59からの空気流が生成され、揮発性を有する試料液の液面を検出する際においても、超音波センサ54への揮発性物質の付着を抑制することができる。また、液面検出センサ装置1は、空気流生成部であるファン59からのエアを各部材内部を流通させ、空気流供給孔57eから超音波センサ54の先端部側に設けられる空間部57dに供給するので、キャップ体57やノズル58内に揮発性物質が溜まり、超音波出射部54cや超音波受信部54dへの揮発性物質の付着を抑制することができるとともに、装置本体の形状をすっきりさせることができ省スペース化が図られる。
【0077】
以上のように構成された供給装置1は、分析作業を行う段取り作業として、移動ガイド機構9の駆動ブラケット部材23の原点情報やリニアサーボモータ30の作動体35の原点情報を制御回路部12に認識させる原点認識操作が行われる。供給装置1においては、例えばスタートスイッチ14Bを操作して駆動機構10を駆動し、リニアサーボモータ30から出力される位置信号に基づいてスタート位置を認識してメモリ素子に記憶する。なお、この原点認識操作は、最初の分析作業に行えばよく、同一分析作業を行う場合にその都度実施する必要は無いことは勿論である。供給装置1においては、トールビーカ2の移動位置に応じてスタートスイッチ14Bをオン・オフ操作することにより、当該位置情報をメモリ素子に記憶させることにより制御位置を任意に設定することが可能である。
【0078】
供給装置1においては、上述したホルダ機構8によりトールビーカ2を、凹陥部7の下方部の第1位置において主面4Aと平行に対向した略垂直姿勢の待機状態に保持する。供給装置1においては、この待機状態においてトールビーカ2をホルダ機構8から取り外すことなく試料液の充填操作を行うことも可能である。供給装置1においては、上述したようにホルダ機構8が支持ブラケット部材18の一端部を移動ガイド開口溝11に嵌挿させて移動ガイド機構9の駆動ブラケット部材23に固定し、この駆動ブラケット部材23がガイドレール部材22に組み合わされている。
【0079】
供給装置1においては、制御回路部12からの制御信号により駆動機構10が動作してホルダ機構8を移動ガイド機構9により移動させることで、トールビーカ2を移動ガイド開口溝11に沿って円弧状の軌跡を以って上方へと移動させる動作を行う。すなわち、供給装置1においては、駆動機構10が、リニアサーボモータ30により作動体35を上方の初期位置から下方へとスライド移動させ、この作動体35に結合した下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34を駆動する。供給装置1においては、上述したように下部チェーンベルト33が下部ガイド体31に掛け合わされるとともに上部チェーンベルト34が上部ガイド体32に掛け合わされて移動ガイド機構9の駆動ブラケット部材23と結合されており、この駆動ブラケット部材23を移動させる。
【0080】
供給装置1においては、駆動機構10により、図4に示すようにガイドレール部材22の下端部に位置された駆動ブラケット部材23がこのガイドレール部材22に沿って上方へと移動する。供給装置1においては、移動ガイド機構9が、この駆動ブラケット部材23の移動動作に伴いホルダ機構8の支持ブラケット部材18を移動ガイド開口溝11内を円弧状の軌跡を以って上方へと移動させる。供給装置1においては、支持ブラケット部材18の移動に伴ってホルダ機構8に保持されたトールビーカ2が、凹陥部7内において略垂直姿勢から図5に示すように次第に略直交する姿勢に変換されながら移動する。
【0081】
供給装置1においては、トールビーカ2が、図4に示すようにその注ぎ口2Aを濾過器3に臨ませるようにしてこの濾過器3を略中心とした円弧状の軌跡を以って移動する。供給装置1においては、トールビーカ2が所定の高さ位置まで移動すると制御回路部12から出力される制御信号に基づいてリニアサーボモータ30が低速度となる。供給装置1においては、トールビーカ2が低速でさらに移動して第2位置まで達すると、充填した試料液を注ぎ口2Aから濾過器3内に注ぎ込む。
【0082】
供給装置1においては、上述したように濾過器3に所定量の試料液を注いた後にトールビーカ2を第1位置へと復帰させるが、リニアサーボモータ30が往路と復路で速度を変えて作動体35を駆動するように制御してもよい。供給装置1においては、この場合に復路においてトールビーカ2を高速で第1位置へと復帰させる。また、供給装置1においては、例えば全量の試料液を供給し終わる間は、トールビーカ2を途中位置まで復帰させて待機させるようにしてもよい。供給装置1においては、この場合にトールビーカ2を試料液がこぼれ落ちない途中位置まで下降させて待機させる。
【0083】
供給装置1においては、液面検出センサ装置51により、濾過器3内に残存する試料液の量がわずかとなり補充が必要な下限液面位置と、満杯となって注ぎ操作を停止させる上限液面位置とが検出されるようにする。供給装置1においては、液面検出センサ装置51から出力される検出信号を制御回路部12に入力し、下限液面位置に達した状態を検出するとこの制御回路部12から駆動機構10に対して第2位置への移動動作を指示する制御信号を出力する。
【0084】
供給装置1においては、第2位置に移動されたトールビーカ2から濾過器3に対して試料液の注ぎ込み操作が行われ、液面検出センサ装置51によりその注ぎ込み状態を監視する。供給装置1においては、液面検出センサ装置51から出力される検出信号に基づいて制御回路部12において上限液面位置に達した状態を検出すると、この制御回路部12から駆動機構10に対して初期位置への復帰動作を支持する制御信号を出力する。なお、供給装置1においては、駆動機構10が、トールビーカ2を第1位置へと復帰させる際に、起動時に微小の間隔で上下方向に移動させてあたかも振動を与えるように駆動することで濾過器3の開口縁における試料液の表面張力を下げていわゆる液切れ動作を行うようにしてもよい。
【0085】
供給装置1は、図11に示すように作業台50上に多数個1A〜1Nを並べて設置することにより、省スペース化を図って一人の分析員により多数の試料液の分析を同時に行うことを可能とする。各供給装置1A〜1Nは、それぞれが筐体4の主面4Aを前方に向けて作業台50上に設置され、ホルダ機構8により各1個ずつトールビーカ2を保持するとともに濾過器支持ブラケット5により濾過器3を凹陥部7に対向して設置する。
【0086】
各供給装置1A〜1Nは、上述したようにそれぞれのトールビーカ2が濾過器3を略中心として円弧状の軌跡を以って移動して試料液の注ぎ動作を行うように構成したことにより横幅が小さい縦長構造に構成される。したがって、各供給装置1A〜1Nは、限られたスペースの作業台50上に多数台を並べて設置することが可能であり、スペース効率化や作業の効率化を図り、各トールビーカ2から相対する濾過器3に対して精密な試料液の注ぎ分け動作を自動的に行うことが可能となる。
【0087】
図12に第2の実施の形態として示した供給装置60は、1つの筐体61内に上述した供給装置1に備える複数の機構を内蔵して構成したものであり、複数の試料液の分析を同時に実施可能とする。すなわち、供給装置60は、詳細を省略するが上述したホルダ機構8、移動ガイド機構9或いは駆動機構10等の機構部を筐体61に複数内蔵し、主面61Aに形成した凹陥部62内において複数のトールビーカ2を上下方向に円弧状の軌跡を以って移動させる。
【0088】
供給装置60は、上述したように各トールビーカ2がそれぞれ横幅が狭いスペースで移動されで、全体として横幅が小さい縦長構造に構成される。なお、供給装置60は、機構部については各トールビーカ2に対応して構成するが、例えば制御回路部については共通に構成することも可能であることから小型化が図られるようになる。
【0089】
図13に第3の実施の形態として示した供給装置70は、基本的な構成を上述した供給装置1と同様とすることから対応する部位について同一符号を付すことによりその説明を省略するが、トールビーカ2を移動させる駆動機構71に特徴を有している。供給装置70は、駆動機構71が、回転出力型サーボモータ72と、このサーボモータ72の出力軸72Aに固定されて正逆回転されるピニオン73と、このピニオン73により駆動されるラック部材74とから構成される。
【0090】
駆動機構71は、サーボモータ72が、上述したように液面検出センサ装置51が濾過器3の液面位置を検出して制御回路部12に検出信号を出力し、制御回路部12から出力される制御信号に基づいて正転及び逆転してピニオン73を駆動する。駆動機構71は、図示しないがサーボモータ72にエンコーダが設けられており、回転方向と回転量を制御回路部12に出力する。駆動機構71は、ラック部材74が、凹陥部7の曲率とほぼ等しい曲率を有するとともに移動ガイド開口溝11とほぼ等しい長さを有する断面円弧状の板部材からなる。
【0091】
ラック部材74は、上述した供給装置1の移動ガイド機構9に備えられた駆動ブラケット部材23に対応する部材であり、ホルダ機構8を構成する支持ブラケット部材18の基端部が固定される。ラック部材74は、図示しないが上述したベアリングコロと同等の適宜の移動ガイド構造を介して、ガイドレール部材22に沿って高さ方向に円滑に移動動作されるようにして組み合わされる。ラック部材74は、内周側に突出するようにして支持ブラケット部材18を固定するとともに、外周側にピニオン73と噛合されるラック74Aが長さ方向の全域に亘って一体に形成されている。
【0092】
以上のように構成された供給装置70は、図13に示すように初期位置において支持ブラケット部材18がラック部材74に固定されるホルダ機構8を介してトールビーカ2を垂直姿勢に保持する。供給装置70は、制御回路部12から出力される試料液の注ぎ動作を指示する制御信号に基づいてサーボモータ72が駆動され、このサーボモータ72によりピニオン73とラック部材74が動作してトールビーカ2を高さ方向に円弧状に移動させて濾過器3への試料液の供給が行われるようにする。
【0093】
駆動機構71は、図13に示す状態からピニオン73が同図において時計方向に回動することにより、ラック部材74を濾過器3を略回転中心として円弧状の軌跡を以って移動させる。駆動機構71は、支持ブラケット部材18を固定したラック部材74の移動動作によりトールビーカ2を垂直姿勢から次第に傾倒姿勢へと変換し、このトールビーカ2から濾過器3に対して試料液が供給されるようにする。駆動機構71は、濾過器3に対して所定量の試料液を供給すると、サーボモータ72が逆回転動作を行ってトールビーカ2を初期位置へと復帰させる。
【0094】
上述した各実施の形態においては、食物繊維の定量法として採用されるプロスキー変法の濾過工程に好適に用いられる液体定量供給装置を示したが、本発明はかかる適用例に限定されないことは勿論である。本発明は、大容量の第1容器体から小容量の第2容器体に対してその都度予め設定した量の液体を小分けして全容量分を供給する各種の用途にも用いられることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施の形態として示す液体定量供給装置の正面図である。
【図2】同液体定量供給装置の内部構造を示す要部斜視図である。
【図3】同液体定量供給装置の構成ブロック図である。
【図4】同液体定量供給装置に備えるホルダ機構と移動ガイド機構と駆動機構の構成を示す要部側面図である。
【図5】同液体定量供給装置におけるトールビーカから濾過器への試料液の注ぎ動作を示す要部側面図である。
【図6】同液体定量供給装置に備える移動ガイド機構と駆動機構の構成を示す要部断面図である。
【図7】同液体定量供給装置に備える移動ガイド機構の構成を示す要部断面図である。
【図8】同移動ガイド機構を構成するガイドレール部材と駆動ブラケット部材の組み合わせ状態を示す要部断面図である。
【図9】同液体定量供給装置に備える液面検出センサ装置の構成を示す分解斜視図である。
【図10】同液体定量供給装置に備える液面検出センサ装置の構成を示す縦断面図である。
【図11】同液体定量供給装置を複数組み並んで設置した使用状態の斜視図である。
【図12】第2の実施の形態として示す液体定量供給装置の正面図である。
【図13】第3の実施の形態として示す液体定量供給装置の移動ガイド機構と駆動機構の構成を示す要部構成図である。
【符号の説明】
【0096】
1 液体定量供給装置、2 トールビーカ、3 濾過器、4 筐体、4A 主面、5 濾過器支持ブラケット、6 吸引排水機構、7 凹陥部、8 ホルダ機構、9 移動ガイド機構、10 駆動機構、11 移動ガイド開口溝、12 制御回路部、13 制御基板、14 操作ボタン、18 支持ブラケット部材、20 可動ホルダ片、21 固定ホルダ片、22 ガイドレール部材、23 駆動ブラケット部材、24 ガイド溝、29 ベアリングコロ、30 リニアサーボモータ、33 下部チェーンベルト、34 上部チェーンベルト、35 作動体、50 作業台、51 液面検出センサ装置、52 連結部材、53 超音波発生回路収納部材、54 超音波センサ、54a 超音波発生回路、54b 超音波出射面、54c 超音波出射部、54d 超音波受信部、55 連結部材、56 超音波センサ収納部材、57 キャップ体、57d 空間部、57e 空気流供給孔、58 ノズル、59 ファン、60 供給装置、61 筐体、62 凹陥部、70 供給装置、71 駆動機構、72 サーボモータ、73 ピニオン、74 ラック部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の液面を検出する液面検出センサ装置、及び、この液面検出センサ装置を備えて第1容器体から第2容器体に対して所定量の液体を自動的に注ぎ分ける液体定量供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の分析或いは検査法においては、第1容器体から一定量の試料液等を第2容器体に注ぎ分けながら所定の分析・検査を行うことがある。例えば、特許文献1には、患者から採取した尿を装置内に自動的に取り込んで所定の検査を行うことで、清潔かつ正確な検査が行われるようにして患者毎の管理を確実に行うことが可能な尿測定装置の自動供給機が開示されている。
【0003】
また、食物繊維の定量法においては、例えば食品成分表で最も利用されている酵素−重量法の一種で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とに分別定量するプロスキー変法が実施されている。プロスキー変法においては、試料に酵素処理を施してでんぷん質とタンパク質を消化して低分子化した後に濾過を行って濾過物と濾過液に分別し、さらに濾過液に4倍容量のエタノールを加えて高分子成分を不溶化させる。プロスキー変法においては、さらにそれぞれの濾過物をエタノールとアセトンで順次洗浄した後に乾燥することにより、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の重量を求める。
【0004】
すなわち、プロスキー変法においては、予めセライトで濾過層を形成したつぼ型ガラス濾過器が用いられ、吸引ポンプを有するセット装置に設置した濾過器にトールビーカから試料液を供給して濾過を行う。プロスキー変法においては、トールビーカの容量が400mlであるとともに濾過器の容量が30mlであることから、1試料液について14回の注ぎ分け操作が必要となる。
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3033679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各種の検査・分析装置においては、上述した特許文献1に開示される尿測定装置の自動供給機のように、試料液の自動供給機能を備えることにより検査・分析作業の効率化が図られて極めて有効である。しかしながら、従来の液体自動供給装置は、もっぱら装置内に試料液を自動的に供給するものであり、上述したプロスキー変法のように大容量の容器から小容量の容器に対して試料液を1回毎に定量に分けて全容量を注ぎ分けて供給することが必要な特殊な用途に適合するものは提供されていない。
【0007】
したがって、従来の検査・分析装置においては、試料液の供給が分析員により行われ、分析員が各濾過器内の試料液の残存状態を常時監視しながら試料液の補充を行わなければならず、多数の試料液を検査する場合に監視・補充の単純ではあるが神経を使う作業を長時間に亘って行わなければならなかった。例えば、量産型の液体供給装置においては、液体計量機構や自動弁構造等を有する液体供給部が備えられて、一定量の液体を自動的に供給するようにしている。しかしながら、上述したプロスキー変法等に用いる実験装置的な検査・分析装置においては、このような量産型の液体供給装置に備えられる大規模で構造も複雑でありかつ高価な液体自動供給機構を採用することはできない。
【0008】
出願人は、上述した従来の検査・分析装置の問題を解決すべく鋭意工夫を行って、小型で構造簡易かつ廉価な液体定量装置を開発した。この液体定量装置は、大容量の第1容器体から小容量の第2容器体に供給する液体の上限液面位置と下限液面位置とを液面センサで検出し、駆動機構を制御して第1容器体を注ぎ位置と待機位置とに往復回動させることにより所定量ずつ注ぎ分けするとともに、全量の供給を終了すると第1容器体を初期位置へと復帰させる。かかる液体定量装置によれば、プロスキー変法等により多数の試料液の分析を行う際にも分析員が付ききりで各第2容器体内における液体の残量監視や補充を行う手間を不要とし、精密な検査分析を実施することが可能である。
【0009】
ところで、上述した新規な液体定量供給装置においては、第2容器体に供給された液体の液面を検出する手段としての液面センサが備わっているが、この液面センサは、供給される液体の性質によって、精度を欠く場合があった。すなわち、上述の液面センサは、出射面から超音波を当該液面に向けて出射するとともに、液面から反射した超音波を入射面から入射することで、出入射時間を計測することにより、液面までの距離を算出することができるセンサであるが、例えば、揮発性を有する液体の液面を検出する場合には、液面センサが揮発物質による影響を受けて、精度よく検出できないという問題があった。
【0010】
また、上述した新規な液体定量装置は、第1容器体を保持する支持プレート部材の一端部を筐体の主面から突出させた駆動軸に固定して主面と対向した状態で注ぎ位置と待機位置とに亘って往復回動させるとともに、支持プレート部材の側方に主面と対向して第2容器体をスタンドに保持して設置する。新規な液体定量装置は、もっぱら1組の第1容器体と第2容器体とを対象として開発され、筐体の主面に沿って第1容器体と第2容器体を並べて設置したことから操作部がやや横長となる。
【0011】
したがって、新規な液体定量装置においては、作業台上に多数台を併設して多数の試料液の分析を同時に行う場合に、横方向に大きなスペースを占有してしまうといった問題があった。また、新規な液体定量装置に対しては、小型で構造簡易かつ廉価な特性を保持しながら複数組の第1容器体と第2容器体を備えることにより1台で複数の試料液の分析を可能とする要望も寄せられた。
【0012】
したがって、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、検出する液体の性質によらず、精度よく液面を検出することができる液面検出センサ装置、及び、上述した大容量の第1容器体から小容量の第2容器体に全量分の液体を所定量ずつ正確かつ自動的に注ぎ分ける小型で構造簡易かつ廉価な新規な液体定量装置の特性を全面的に踏襲し、さらに設置状態でのスペース効率化や作業の効率化を図る液体定量供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成する本発明に係る液面検出センサ装置は、揮発性溶液を定量供給する液体定量供給装置に用いられる液面検出センサ装置であり、揮発性溶液の液面と対向する先端部に設けられ、この液面に超音波を出射する超音波出射部と、先端部に設けられ、超音波出射部から出射された超音波の液面からの戻り超音波を受信する超音波受信部とを有する超音波センサ部と、超音波センサ部の超音波出射部及び超音波受信部を覆うとともに、超音波出射部から出射される超音波、及び、戻り超音波をガイドするキャップ体と、超音波センサ部の先端部に空気流を生成する空気流生成部とを備える。そして、空気流生成部は、キャップ体を介して超音波センサ部の先端部に空気流を生成し、超音波センサ部の先端部への揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制することを特徴とする。
【0014】
また、液面検出センサ装置は、キャップ体に、このキャップ体と超音波センサ部の先端部との間に形成される空間部に、空気流生成部による空気流を供給する空気流供給孔が設けられ、キャップ体に連結され、空気流供給孔からの空気流が流入し、超音波出射部から出射される超音波、及び、戻り超音波をガイドする長尺のノズル体を備えるようにすることで、簡易な構成で、揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係る液体定量供給装置は、所定の容量を有する第2容器体に対して、大容量の第1容器体から所定量の揮発性液体を注ぎ分けて供給する。液体定量供給装置は、第1容器体を保持するホルダ機構と、第1容器体を所定の経路を以って移動させる移動ガイド機構と、第1容器体を待機位置と液体を第2容器体に注ぐ注ぎ位置とに移動させる駆動機構と、第2容器体の液面を検出する液面検出センサユニットとを備える。
【0016】
液体定量供給装置は、ホルダ機構が、筐体の主面に形成した高さ方向の断面略円弧状の凹陥部内において第1容器体を着脱自在に保持する。液体定量供給装置は、移動ガイド機構が、筐体の凹陥部内に位置して主面に開口された高さ方向の移動ガイド開口溝に沿ってホルダ機構により保持した第1容器体を、凹陥部に臨んで主面と対向して設置した第2容器体を略中心とする円弧状の軌跡を以って上下方向に移動させる。液体定量供給装置は、駆動機構が、上下方向の反復駆動力を出力する駆動源を有し、ホルダ機構を介して第1容器体を移動ガイド開口溝に沿って移動させる。液体定量供給装置は、液面検出センサユニットが、第2容器体の液面を検出することにより、第1位置と第2位置との移動タイミングを検出する。
【0017】
液体定量供給装置においては、液面検出センサユニットにより検出される第2容器体の液面状態に応じて、第1容器体が、移動ガイド開口溝の下端側の第1位置において主面と平行に対向した略垂直姿勢の待機状態に保持されるとともに、駆動機構により移動ガイド開口溝の上端側の第2位置へと移動されることにより主面と略直交する姿勢に変換されて傾くことで、第2容器体に液体を注ぐ動作を行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る液面検出センサ装置は、超音波出射部と超音波受信部とからなる超音波センサ部と、この超音波センサ部の超音波出射部及び超音波受信部を覆うとともに、超音波出射部から出射される超音波、及び、戻り超音波をガイドするキャップ体と、超音波センサ部の先端部に空気流を生成する空気流生成部とを備える。そして、空気流生成部は、キャップ体を介して超音波センサ部の先端部に空気流を生成し、該超音波センサ部の先端部への揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制することができ、すなわち、液体の性質によらず、精度よく液面を検出することができる。
【0019】
また、本発明にかかる液体定量供給装置によれば、筐体の主面に凹陥部を形成するとともにこの凹陥部内に高さ方向の移動ガイド開口溝を形成し、駆動機構によりホルダ機構に保持した大容量の第1容器体を主面に対して略垂直姿勢から略直交姿勢に変換させるように移動ガイド機構を介して第2容器体を略中心として上下方向に円弧状の軌跡を以って移動させて第2容器体に液体を供給するように構成したことにより、横幅が小さい縦長構造となり設置状態において横方向のスペースが低減されるようになる。また、液体定量供給装置は、上述の液面検出センサ装置を備えることから、液体定量供給装置によれば、検出する溶液の性質によらず、正確な液面検出を行うことができるとともに、作業台等に設置した状態でのスペース効率化や作業の効率化を図り、大容量の第1容器体から所定容量の第2容器体に対して精密な液体の注ぎ分け動作を自動的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態として示した液面検出センサ装置51、及び、液面検出センサ装置51を備えた液体定量供給装置(以下、単に供給装置と略称する)1について、図面を参照して詳細に説明する。供給装置1は、例えば上述したプロスキー変法による定量分析を実施する際の濾過工程に用いられ、第1容器体を構成する500ml程度の大きな容量を有するトールビーカ2に400mlの試料液(液体)を充填し、この試料液をトールビーカ2から第2容器体を構成する容量が30mlのつぼ型濾過器(第2容器)3に対して一定量毎に分けて自動的に注ぎ込んで所定の分析が行われるようにする。なお、以下の説明において方向を示す用語の「上下」、「左右」及び「前後」は、図1を基準として用いるものとする。
【0021】
供給装置1は、詳細を後述するようにトールビーカ2から濾過器3に供給する試料液の1回当たりの供給量を予め設定する。供給装置1は、トールビーカ2を第1位置から試料液を供給する第2位置へと移動させて濾過器3に対して設定量の試料液を自動供給した後に、トールビーカ2を第2位置から第1位置へと復帰させて待機状態とする。供給装置1は、濾過器3において供給された試料液の濾過動作が進行し所定量以下となった状態を検出すると、トールビーカ2を再び第1位置から第2位置へと自動的に移動させて濾過器3に試料液の供給動作を行って第1位置へと復帰させる。
【0022】
なお、供給装置1については、トールビーカ2を第1位置と第2位置とに亘って往復移動させると説明するが、例えば第1位置がトールビーカ2をセットしたり試料液を充填する初期位置と、この初期位置よりやや上方や前の注ぎ動作から少し下方で次の注ぎ動作に備える待機位置であってもよい。
【0023】
また、第2位置については、トールビーカ2が停止して濾過器3に対して試料液を注ぐ動作位置として説明するが、注ぎ動作時にトールビーカ2を急激に停止すると一度に大量の試料液が濾過器3に注ぎ込まれるいわゆるどか注ぎの発生或いは不安定な姿勢によるこぼれの発生が生じる虞がある。供給装置1においては、第2位置の近傍においてトールビーカ2の動作を制御することにより、上述した事態の発生を防止するとともに濾過器3における試料液の液面検出や制御の簡易化等が図られるようにする。
【0024】
したがって、第2位置については、特に精密を要しない場合や各機構部等によりその対応を図ることにより、トールビーカ2の停止状態を必須とせずまた固定位置とならない。また、第2位置については、トールビーカ2内の試料液の残存量に応じてその都度変化することになる。すなわち、第2位置とは、トールビーカ2が第1位置から上方へと円弧状の軌跡を以って移動されて所定の角度に傾けられることにより濾過器3への試料液の注ぎ込みを開始する位置である。
【0025】
供給装置1は、トールビーカ2の上述した反復移動動作を、全量の試料液を濾過器3に供給し終えるまで自動的に繰り返し行う。したがって、供給装置1は、複数台を設置して複数試料液の濾過を同時に行う場合でも分析員が全ての濾過器3を監視して試料液の残存状態に応じて注ぎ足し操作を行うことを不要とさせ、分析員の負担軽減と作業の効率化とともに正確な分析の実施を可能とする。
【0026】
供給装置1は、例えば作業テーブル上に載置され、高さが約75cm、奥行きが約30cmとやや大きいが、図1に示すように横幅が20cmと小さく、複数台を並べて設置しても作業に必要なスペースが充分に確保されて複数の試料液を同時に処理することを可能とする。供給装置1は、後述するように濾過器3が、筐体4の主面4Aと対向して濾過器支持ブラケット5の位置調整機構により所定の高さ位置及び前後位置に設定された状態で設置される。濾過器3は、所定量の試料液が充填される容器部3aと、容器部3aの底部に固定されたセライト等からなる濾過層3bと、濾過層3bが支持される支持部材3cとから構成されており、支持部材3cに濾過層3bと連結された内部空間を負圧状態として濾過層3bを通過する濾過液を吸引して排水する吸引排水機構6が接続される。また、濾過器3の支持部3cには、容器部3aと濾過層3bとを支持部3cに固定するためのフック状の固定部材3dが設けられている。支持部3cと連結された吸引排水機構6は、第1の吸引排水管6aと、この第1の吸引排水管6aの後段に連結され、濾過器3からの濾過液を溜める広口ビン6bと、広口ビン6bに接続された後段において図示しないポンプ等の吸引手段と連結された第2の吸引排水管6cとから構成されている。第1の吸引排水管6aは、支持部3cと広口ビン6bとを連結し、濾過器3からの濾過液を広口ビン6bに排水する。第2の吸引排水管6cは、広口ビン6bと吸引手段とを連結し、上段において広口ビン6bに溜まった濾過液を吸引しない位置、すなわち広口ビン6bの上部に連結され、内部を負圧状態とすることにより濾過器3の濾過液を吸引するように、広口ビン6b内のエアを吸引する。なお、広口ビン6bは、供給装置1毎に濾過液を回収する際に利用することができるが、第1の吸引排水管6aと第2の吸引排水管6cとを直接連結するようにしてもよいことは勿論である。また、濾過器3は、かかる構造に限定されず、例えば吸引ビンと、その上部開口部に装着される漏斗等により構成してもよいことは勿論である。
【0027】
供給装置1は、操作面を構成する筐体4の主面4Aが、図1及び図2に示すように高さ方向の略中央位置において下部領域4ALと上部領域4AUとに区割りされ、下部領域4ALに断面略円弧状の凹陥部7が設けられる。供給装置1には、筐体4の内部に設けた図示しないシャーシに詳細を後述するホルダ機構8と移動ガイド機構9と駆動機構10が組み立てられ、凹陥部7により構成する空間部内においてトールビーカ2を保持するとともに回動させながら高さ方向に移動させる。
【0028】
供給装置1は、詳細を後述するようにトールビーカ2がホルダ機構8と移動ガイド機構9とにより第1位置と第2位置とに亘って凹陥部7内を高さ方向に往復移動する。供給装置1は、ホルダ機構8が、トールビーカ2を第1位置において主面4Aと平行に対峙する略垂直姿勢に保持する。供給装置1は、駆動機構10が動作してホルダ機構8により保持したトールビーカ2を第1位置から第2位置へと移動させるが、移動ガイド機構9により凹陥部7内を上方へと円弧状の軌跡を以って移動させるにしたがって上述した略垂直姿勢から次第に主面4Aと略直交する姿勢へと変換させて傾倒状態とする。
【0029】
供給装置1は、濾過器3が、図2に示すように主面4Aと略同一面を構成して凹陥部7と対向して濾過器支持ブラケット5に設置される。供給装置1は、凹陥部7が、トールビーカ2を濾過器3を中心とする円弧状の軌跡を以って移動させる曲率を以って筐体4の主面4Aに形成される。供給装置1には、凹陥部7内に、移動ガイド機構9を構成する高さ方向の一対の移動ガイド開口溝11L、11R(以下、個別に説明する場合を除いて移動ガイド開口溝11と総称する。)が形成されている。移動ガイド開口溝11は、幅方向に離間して互いに平行なスリット状の開口溝として凹陥部7内に形成される。
【0030】
供給装置1は、図1に示すように、上部領域4AU内に制御回路部12等を搭載した詳細を省略する制御基板13が内蔵されるとともに、複数の操作ボタン14A〜14Dや液晶表示器15或いは電源のオン・オフ状態等を表示するLED(Light Emitting Diode)表示灯16等が設けられる。供給装置1には、上部領域4AUに一端を取り付けられ、先端が凹陥部7と対向して濾過器3内の試料液の材料を検出する液面検出センサ装置51が設けられる。
【0031】
供給装置1の濾過器支持ブラケット5は、図1、図2及び図5に示すように、平板状部材からなり、上面に濾過器3の支持部3cが固定される上面部材5aと、上面部材5aを支持し、供給装置1と連結される略L字状の支持部材5bとから構成されている。濾過器支持ブラケット5の支持部材5bは、一端側に上面部材5aが固定され、他端側が供給装置1の筐体4底面にネジ止めされて固定されている。濾過器支持ブラケット5は、支持部材5bの供給装置1の筐体4底面の固定位置を調整することにより、濾過器3の上下位置、左右位置、前後位置などの位置調整を行う。
【0032】
供給装置1は、ホルダ機構8が、図1、図2及び図4に示すように、一対の支持ブラケット部材18L、18R(以下、個別に説明する場合を除いて支持ブラケット部材18と総称する。)と、この支持ブラケット部材18に設けられてトールビーカ2を直立した状態で載置する受け台19と、支持ブラケット部材18、18に横架され載置されるトールビーカ2の高さ方向の2カ所が当接される半円弧状の固定ホルダ片21L、21U(以下、個別に説明する場合を除いて固定ホルダ片21と総称する。)と、受け台19の後方側より、固定ホルダ片21側に付勢されて設けられる可動ホルダ片20等の部材を有する。ホルダ機構8は、後述するように支持ブラケット部材18が駆動機構10により移動ガイド開口溝11に沿って上下方向に移動される。
【0033】
ホルダ機構8は、可動ホルダ片20が、トールビーカ2の外周部を固定ホルダ片21側に付勢し保持する長さを有するとともに、固定ホルダ片21よりもやや小幅に形成され、支持ブラケット部材18に対して、下端側を受け台19の後方側に設けられるヒンジ機構20aを介して組み合わされる。ホルダ機構8は、ヒンジ機構20aが、受け台19に固定され可動ホルダ片20を片持ちする軸受け筒20bと、支持ブラケット部材18L、18R間である左右方向に支架された支軸20cと、支軸20cから立設されるブラケット部材20dと支持ブラケット部材18Lとの間に装着されたコイルバネ20eから構成し、可動ホルダ片20を固定ホルダ片21側に付勢しながら回動自在に支持する。
【0034】
ホルダ機構8は、コイルバネ20eの弾性力に抗して可動ホルダ片20を開いた状態で、受け台19上にトールビーカ2を直立状態で載置する。ホルダ機構8は、可動ホルダ片20がコイルバネの弾性力により復帰して受け台19上に載置したトールビーカ2の外周部に当接することで、固定ホルダ片21との間でトールビーカ2を挟み込んで保持する。ホルダ機構8は、これによりトールビーカ2を、筐体4の主面4Aに形成した凹陥部7と対向して、主面4Aと平行に対向した略垂直状態で着脱自在に保持する。
【0035】
なお、ホルダ機構8は、上述した構造に限定されないことは勿論であり、例えば、トールビーカ2との当接面である可動ホルダ片20や固定ホルダ片21の内面にそれぞれトールビーカ2を確実に保持する滑り止め用の弾性シート材等を接合してもよい。ホルダ機構8は、トールビーカ2の大きさに合わせて適宜の個数或いは形状の可動ホルダ片20や固定ホルダ片21を備えてもよい。ホルダ機構8は、例えば、固定ホルダ片21を受け台19から立設した円弧状の立壁により構成し、可動ホルダ片20によりトールビーカ2を押し付けて保持するようにしてもよい。ホルダ機構8は、固定ホルダ片21を第2位置においてトールビーカ2の下側を保持する位置に設けることが好ましい。
【0036】
供給装置1は、移動ガイド機構9が、図2及び図4に示すように上述した凹陥部7内に開口された移動ガイド開口溝11と、この移動ガイド開口溝11に沿って筐体4の内部に設置された左右一対のガイドレール部材22L、22R(以下、個別に説明する場合を除いてガイドレール部材22と総称する。)と、これらガイドレール部材22に支持されて移動する駆動ブラケット部材23とを備える。
【0037】
移動ガイド機構9は、移動ガイド開口溝11が、トールビーカ2の外径よりも大きな間隔を有して、上述したように凹陥部7内において幅方向に離間して互いに平行でありかつ高さ方向の円弧状溝として形成される。移動ガイド開口溝11は、図1及び図2に示すようにホルダ機構8の支持ブラケット部材18の基端部を嵌挿させて駆動ブラケット部材23と連結させる。なお、供給装置1は、一対の移動ガイド開口溝11L、11Rを形成したが、1つの移動ガイド開口溝11であってもよいことは勿論である。
【0038】
ガイドレール部材22は、左右略対称形であり、移動ガイド開口溝11に沿って筐体4の内部に取り付けられる。ガイドレール部材22は、凹陥部7に対してその曲率とほぼ等しい曲率を有する円弧状であり、かつ、その高さとほぼ等しい長さを有する長尺の部材からなる。ガイドレール部材22には、図6に示すようにそれぞれの相対する側面に開口するガイド溝24L、24R(以下、個別に説明する場合を除いてガイド溝24と総称する。)が全長に亘って形成されることで断面が略コ字状を呈するチャンネル状の部材からなる。ガイドレール部材22は、同図に示すようにガイド溝24を構成する前面側の側壁が段付きとされ、ガイド溝24に沿ってチェーンガイド溝25L、25R(以下、個別に説明する場合を除いてチェーンガイド溝25と総称する。)が全長に亘って形成される。
【0039】
駆動ブラケット部材23は、図7及び図8に示すように、ガイドレール部材22の対向間隔とほぼ等しい幅を有するプレート状の基部26と、この基部26の両側縁に沿って一体に連設されたサイドプレート部27L、27R(以下、個別に説明する場合を除いてサイドプレート部27と総称する。)とにより構成される略H状の部材からなる。駆動ブラケット部材23には、厚み方向に対して凹陥部7の曲率とほぼ等しい曲率で湾曲された基部26に、移動ガイド開口溝11を嵌挿された上述したホルダ機構8の支持ブラケット部材18の基端部が結合される。
【0040】
駆動ブラケット部材23は、サイドプレート部27が、図7に示すように凹陥部7の曲率とほぼ等しい曲率で湾曲され、ガイド溝24の溝幅よりもやや大きな幅を有する円弧状に形成されたプレート部位からなる。サイドプレート部27には、長さ方向の両端近傍の外側面にピン軸28L、28U(以下、個別に説明する場合を除いてピン軸28と総称する。)が設けられるとともに、このピン軸28にガイド溝24の溝幅とほぼ同径のベアリングコロ29L、29U(以下、個別に説明する場合を除いてベアリングコロ29と総称する。)が装着されている。
【0041】
駆動ブラケット部材23は、サイドプレート部27Lをガイドレール部材22Lと対向させてベアリングコロ29Lをガイド溝24Lに嵌挿するとともに、サイドプレート部27Rをガイドレール部材22Rと対向させてベアリングコロ29Rをガイド溝24Rに嵌挿することにより、ガイドレール部材22L、22R間に組み合わされる。駆動ブラケット部材23は、後述する駆動機構10から上下方向の駆動力が作用されることによりベアリングコロ29がガイド溝24内で回転することで上下方向に円滑に移動する。駆動ブラケット部材23は、この移動動作により、ホルダ機構8の支持ブラケット部材18を一体的に移動させ、トールビーカ2を凹陥部7の曲率とほぼ等しい円弧状の軌跡を以って移動させるようにする。
【0042】
駆動機構10は、図2に示すように駆動源を構成するリニアサーボモータ30と、移動ガイド開口溝11の下方部に位置して前後に対向して設けられた下部ガイド体31F、31B(以下、個別に説明する場合を除いて下部ガイド体31と総称する。)と、移動ガイド開口溝11の上方部に位置して前後に対向して設けられた上部ガイド体32F、32B(以下、個別に説明する場合を除いて上部ガイド体32と総称する。)と、左右一対の下部チェーンベルト33L、33R(以下、個別に説明する場合を除いて下部チェーンベルト33と総称する。)と、左右一対の上部チェーンベルト34L、34R(以下、個別に説明する場合を除いて上部チェーンベルト34と総称する。)を備える。
【0043】
駆動機構10は、リニアサーボモータ30を、図2及び図3に示すように凹陥部7と対向するように背面側に位置して立設状態で筐体4の内部に設ける。リニアサーボモータ30は、各種の自動制御装置等に一般に用いられる周知のものと同等であることから詳細な説明を省略するが、左右一対の作動体35L、35R(以下、個別に説明する場合を除いて作動体35と総称する。)を備えており、この作動体35が後述する制御回路部12から出力される制御信号に基づいて移動方向、移動量或いは移動速度を精密に制御されて駆動される。
【0044】
リニアサーボモータ30は、詳細を省略するが作動体35の移動位置を検出して制御回路部12に対して位置信号を出力し、この位置信号に基づいて制御回路部12から出力される制御信号により所定の動作制御が行われる。リニアサーボモータ30は、位置信号に基づいて例えば出力が反転することにより作動体35の上下方向の移動を切り換え、作動体35の速度を切り換える。リニアサーボモータ30は、上述したように筐体4の内部に立設状態に設けることにより、作動体35が凹陥部7と対向して上下方向に往復移動する。作動体35には、後述するように駆動ベルト体を構成する下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34が、それぞれの一端部を固定される。
【0045】
前方下部ガイド体31Fは、図4に示すように左右一対の前方下部チェーン車36L、36R(以下、個別に説明する場合を除いて前方下部チェーン車36と総称する。)と、これら前方下部チェーン車36を支持する前方下部支軸37と、この前方下部支軸37を回転自在に支持する左右一対の前方下部ベアリング軸受38L、38R(以下、個別に説明する場合を除いて前方下部ベアリング軸受38と総称する。)とから構成される。前方下部ガイド体31Fは、図6に示すように前方下部支軸37が前方下部ベアリング軸受38を介してガイドレール部材22間にその下端部の近傍に位置して回転自在に支架され、この前方下部支軸37にガイドレール部材22のチェーンガイド溝25内に位置して前方下部チェーン車36が軸装される。
【0046】
後方下部ガイド体31Bも、基本的な構成を前方下部ガイド体31Fと同様とし、左右一対の後方下部チェーン車39L、39R(以下、個別に説明する場合を除いて後方下部チェーン車39と総称する。)と、これら後方下部チェーン車39を支持する後方下部支軸40と、この後方下部支軸40を回転自在に支持する左右一対の後方下部ベアリング軸受41L、41R(以下、個別に説明する場合を除いて後方下部ベアリング軸受41と総称する。なお、図2に左方後方下部ベアリング軸受41Lのみを図示する。)とから構成される。後方下部ガイド体31Bは、後方下部支軸40が後方下部ベアリング軸受41を介して筐体4のシャーシに回転自在に支架されるとともに、この後方下部支軸40に前方下部チェーン車36と対向位置して後方下部チェーン車39が軸装される。
【0047】
駆動機構10は、前方上部ガイド体32Fが、上述した前方下部ガイド体31Fに対向するガイドレール部材22の上端近傍に位置して同等の部材を備えて構成される。前方上部ガイド体32Fは、構成部材が前方下部ガイド体31Fと同等であるから詳細な説明を省略するが、左右一対の前方上部チェーン車42L、42R(以下、個別に説明する場合を除いて前方上部チェーン車42と総称する。)と、前方上部支軸43と、左右一対の前方上部ベアリング軸受44L、44R(以下、個別に説明する場合を除いて前方上部ベアリング軸受44と総称する。)とから構成される。
【0048】
駆動機構10は、後方上部ガイド体32Bが、上述した後方下部ガイド体31Bに対向して同等の部材を備えて構成される。後方上部ガイド体32Bは、構成部材の詳細な説明を省略するが、左右一対の後方上部チェーン車45L、45R(以下、個別に説明する場合を除いて後方上部チェーン車45と総称する。)と、後方上部支軸46と、左右一対の後方上部ベアリング軸受47L、47R(以下、個別に説明する場合を除いて後方上部ベアリング軸受47と総称する。)とから構成される。
【0049】
駆動機構10は、上述したように一端部をリニアサーボモータ30の作動体35に固定した下部チェーンベルト33が、図2及び図3に示すように後方下部チェーン車39と前方下部チェーン車36とに掛け合わされるとともにガイドレール部材22のチェーンガイド溝25内を導かれ、他端側を駆動ブラケット部材23の一端側に固定される。駆動機構10は、一端部を下部チェーンベルト33と対向して作動体35に固定した上部チェーンベルト34が、後方上部チェーン車45と前方上部チェーン車42とに掛け合わされるとともにガイドレール部材22のチェーンガイド溝25内を導かれ、他端側を下部チェーンベルト33と対向して駆動ブラケット部材23の他端側に固定される。
【0050】
駆動機構10は、制御回路部12からリニアサーボモータ30に供給される制御信号に基づいて作動体35が上下方向に駆動される。駆動機構10は、この作動体35の動作を下部ガイド体31と上部ガイド体32を介して駆動ブラケット部材23へと伝達し、駆動ブラケット部材23をガイドレール部材22に沿って指示された上方向或いは下方向に移動させる。駆動機構10は、例えば駆動ブラケット部材23が図2に示すガイドレール部材22の下端部に位置する第1位置の状態でリニアサーボモータ30にトールビーカ2から濾過器3への注ぎ動作を指示する制御信号が供給されると、作動体35が同図下方へと移動する。
【0051】
駆動機構10は、作動体35が下方へと移動動作するにしたがって、図4矢印で示すように下部チェーンベルト33が後方下部チェーン車39と前方下部チェーン車36を介して前方側へと繰り出されるように移動するとともに、上部チェーンベルト34が前方上部チェーン車42と後方上部チェーン車45を介して後方側へと巻き込まれるように移動する。駆動機構10は、この下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34の動作により駆動ブラケット部材23をガイドレール部材22に沿って上方へと押し上げるように移動させる。
【0052】
一方、駆動機構10は、第2位置においてトールビーカ2から濾過器3への注ぎ動作が終了してリニアサーボモータ30に第1位置への復帰動作を指示する制御信号が供給されると、作動体35が上方へと移動する。駆動機構10は、作動体35が上方へと移動動作するにしたがって、下部チェーンベルト33が前方下部チェーン車36と後方下部チェーン車39を介して後方がわへと巻き込まれるように移動するとともに、上部チェーンベルト34が後方上部チェーン車45と前方上部チェーン車42を介して前方側へと繰り出されるように移動する。駆動機構10は、この下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34の動作により駆動ブラケット部材23をガイドレール部材22に沿って下方へと押し下げるように移動させる。
【0053】
駆動機構10においては、上述したように両側部位をガイドレール部材22に支持された駆動ブラケット部材23を左右一対の下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34とに駆動することから、駆動ブラケット部材23がより安定した姿勢でガイドレール部材22に沿って上下方向の移動動作が行われるようになる。したがって、駆動機構10においては、駆動ブラケット部材23を介して、ホルダ機構8に保持されたトールビーカ2を安定かつ円滑に上下方向に移動させて液こぼれ等の発生が防止されるようにする。
【0054】
なお、駆動機構10においては、上述したように駆動源としてリニアサーボモータ30を用いたが、例えば回転出力型サーボモータ等の正逆回転可能な精密モータ或いは適宜のモータを駆動源として用いるようにしてもよい。かかる駆動機構10は、例えばこの精密モータにより上述した後方下部チェーン車39を支持する後方下部支軸40や後方上部チェーン車45を支持する後方上部支軸46を直接或いは間接的に回転駆動するようにしてもよい。
【0055】
また、駆動機構10においては、駆動ブラケット部材23を上述したように左右一対の下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34とにより移動させるようにしたが、左右いずれか一方側に設けたチェーンベルトにより移動させるようにしてもよい。駆動機構10は、さらにチェーンベルトとチェーン車に変えて例えばタイミングベルトとタイミングプーリを用いてもよい。
【0056】
供給装置1は、上述したトールビーカ2の動作を、制御回路部12から出力する制御信号により駆動機構10のリニアサーボモータ30を動作制御することにより行う。供給装置1は、後述するように濾過器3内における試料液の残存量、すなわち液面位置を液面検出センサ装置51により検出し、規定量以下の状態を検出すると駆動機構10を動作させてトールビーカ2を第1位置から第2位置へと移動して試料液の注ぎ動作が自動的に行われるようにするとともに規定量に達した状態を検出すると第2位置から第1位置へと復帰させる。なお、供給装置1は、トールビーカ2を第2位置に移動させて停止状態を保持して濾過器3への試料液の供給を行うが、例えば設定操作部を設けて濾過器3の容量等に応じてこの停止時間等を予め設定することも可能である。また、供給装置1は、この場合に設定操作部によりリニアサーボモータ30の速度設定等、他の設定操作を行うようにしてもよい。
【0057】
供給装置1は、図3に示した制御系により上述したトールビーカ2の制御動作を行う。供給装置1は、詳細を省略するが制御回路部12が、CPU(Central Processing Unit)やメモリ素子或いはカウンタ等を制御基板13に実装して構成する。なお、制御基板13には、制御回路部12の構成部品ばかりでなく、例えばモータ制御回路30A或いは電源回路部等の構成部品も実装される。
【0058】
供給装置1は、図示しない電源コードのプラグを例えば商用電源コンセントに接続することにより電源が供給される。供給装置1は、電源スイッチ14Aにより電源のオン・オフ操作を行い、電源回路部においてAC−DC変換処理や所定電圧変換処理を行って制御回路部12やリニアサーボモータ30等の構成各部に対して所定電圧の電源供給が行われるようにする。
【0059】
制御回路部12には、各操作ボタン14や液面検出センサ装置51或いはリニアサーボモータ30から出力される出力信号が入力され、これら出力信号に基づいて所定の処理を行うとともにリニアサーボモータ30を駆動するモータ制御回路30Aに対して制御信号を出力する。制御回路部12は、各出力信号に基づいて液晶表示器15を駆動して所定の表示を行うとともに、LED表示灯16による所定の点灯表示を行う。
【0060】
制御回路部12には、上述したようにリニアサーボモータ30から出力される作動体35の移動位置、換言すればトールビーカ2の移動位置に応じた位置信号が入力される。制御回路部12は、この位置信号をカウンタによりカウントしメモリ素子に登録した制御動作情報を比較して、所定の制御信号をモータ制御回路30Aに出力する。制御回路部12は、リニアサーボモータ30が、トールビーカ2が第1位置から所定の高さ位置まで移動する間は高速で駆動され、当該位置から第2位置までは低速で駆動され、第2位置から第1位置の直前までは高速で駆動され、直前位置で減速して緩やかに停止するように制御する。なお、制御回路部12は、かかる制御動作に限定されないことは勿論である。
【0061】
供給装置1には、操作ボタン14として、電源スイッチ14Aと、スタートスイッチ14Bと、一時停止スイッチ14Cと、復帰スイッチ14Dが筐体4の上面に設けられる。電源スイッチ14Aは、上述したように電源のオン・オフ操作を行う。スタートスイッチ14Bは、トールビーカ2や濾過器3をセットした状態で操作することにより、制御回路部12にスタート信号を出力し、駆動機構10を駆動してトールビーカ2の移動動作が行われるようにする。
【0062】
一時停止スイッチ14Cは、例えばトールビーカ2に試料液を供給している途中で、何らかの理由により当該注ぎ動作を一旦中止する必要が生じた場合に操作され、制御回路部12に一時停止信号を出力して駆動機構10の停止動作等が行われるようにする。復帰スイッチ14Dは、例えばトールビーカ2から全容量の試料液を濾過器3に供給し終えて分析作業を終了する場合等に操作され、制御回路部12に信号を出力して駆動機構10の初期位置復帰操作等が行われるようにする。なお、供給装置1は、例えばスタートスイッチ14Bと一時停止スイッチ14Cとをプッシュ−プッシュ型スイッチにより構成し、1度押し操作でスタート動作が行われるとともにその動作が継続されるようにし、2度押し操作で一時停止動作が行われるようにしてもよい。
【0063】
供給装置1は、液晶表示器15により、試料液の注ぎ動作の進行状況(例えば、注ぎ回数等)や上述した一時停止の動作モード等の状態を表示する。また、供給装置1は、多数組みを併設して用いる場合に、液晶表示器15により試料液番号等の表示が行われるようにする。なお、供給装置1は、設定操作部を有して分析仕様に基づく動作仕様を設定可能とする場合に、その情報を表示するようにしてもよい。供給装置1は、この液晶表示器15を必須とするものでは無いことは勿論である。
【0064】
LED表示灯16は、電源スイッチ14Aのオン・オフ操作に連動して点灯・消灯することで電源の投入状態を表示する。LED表示灯16は、例えばトールビーカ2から全容量の試料液を濾過器3に供給し終えた時点で点滅表示に切り替わることにより、分析者に対して試料液の補充操作や復帰スイッチ14Dの操作を促すようにする。LED表示灯16は、トールビーカ2が何らかの原因により移動ガイド開口溝11の途中で停止してしまったといった異常事態の発生において、例えば高速の点滅表示に切り替わって分析者に報知する。なお、供給装置1は、異常事態の発生に際して、LED表示灯16の点滅とともに警報ブザーの鳴動により報知するようにしてもよい。
【0065】
液面検出センサ装置51は、例えば超音波センサが用いられ、出射面から超音波を濾過器3内に向けて出射するとともに、濾過器3で反射された戻り超音波を入射面から入射してその時間をカウントとして検出信号をする。液面検出センサ装置51は、濾過器3内における試料液の液面の高さに応じた検出信号を制御回路部12に出力する。なお、液面検出センサ装置51については、上述した超音波センサに限定されず、液面の高さ位置を検出する適宜のセンサ、例えばフロートセンサや光学センサも用いられる。
【0066】
液面検出センサ装置51は、トールビーカ2から濾過器3に対する試料液の注ぎ込み状態を監視する。液面検出センサ装置51は、図1及び図2に示すように筐体4の主面4Aの上部領域4AUに立設され、先端部が濾過器3と対向位置されるようにする。液面検出センサ装置51は、図9及び図10に示すように、上部領域4AUから主面4Aに垂直な方向に設けられ、主面4Aと平行な面内で回動可能に支持するボールプランジャ17aを有する第1の支持部材17bと、ボールプランジャ17aにより、略90度ごとに回動固定される第2の支持部材17cとを介して主面4Aに固定されている。第1の支持部材17bは、円環状部材からなり、内部に第2の支持部材17cが挿通され、ボールプランジャ17aにより第2の支持部材17cの位置決めを行う。第2の支持部材17cは、円環状部材からなり、液面検出センサ装置51の第1の連結部材52が挿通される。第2の支持部材17cの先端部側の周面には、ネジ切りされた貫通孔17dが設けられ、ネジ17eが螺合されることにより、第1の連結部材52を所定の位置において固定する。
【0067】
液面検出センサ装置51は、第2の支持部材17cに挿通・固定される第1の連結部材52と、第1の連結部材52と連結され、超音波発生回路54aを収容する超音波発生回路収納部材53と、超音波発生回路収納部材53と連結され、後段の超音波センサ54の超音波出射面54bを主面4Aに対して垂直に向ける第2の連結部材55と、第2の連結部材55と連結され、超音波センサ54を収容する超音波センサ収納部材56と、超音波センサ収納部材56から臨まされた超音波センサ54と連結され、超音波出射面54bからの超音波の出射方向をガイドするキャップ体57と、キャップ体57に設けられたノズル58とから構成されている。
【0068】
第1の連結部材52は、円環状部材からなり、一端側が第2の支持部材17cに挿通され、所定の位置においてネジ17eにより螺合され、他端側が超音波発生回路収納部材53に設けられる挿通孔53aに挿通される。第1の連結部材52は、超音波発生回路収納部材53に設けられるネジ切りされた貫通孔53bにネジ53cを螺合することにより所定の位置において固定される。
【0069】
超音波発生回路収納部材53は、第1の連結部材52が挿通される挿通孔53aと、挿通孔53aと連結され、超音波発生回路54aを収納する空間部53dと、空間部53dと連結され挿通孔53aに対して垂直方向に設けられる第2の連結部材55が挿通される挿通孔53eとが設けられている。超音波発生回路収納部材53には、挿通孔53aに貫通されたねじ切りされた貫通孔53bが設けられ、この貫通孔53bにネジ53cを螺合させることにより、第1の連結部材52を固定する。超音波発生回路収納部材53には、同様に、挿通孔53eに貫通されたねじ切りされた貫通孔53fが設けられ、この貫通孔53fにネジ53gを螺合させることにより、第2の連結部材55を固定する。
【0070】
第2の連結部材55は、円環状部材からなり、超音波発生回路収納部材53の挿通孔53eに挿通され、超音波発生回路収納部材53と超音波センサ収納部材56とを連結する。
【0071】
超音波センサ収納部材56は、円環状部材からなり、一端側に設けられる挿通孔56aに第2の連結部材55が挿通され、一端側の外周面から挿通孔56aに亘ってネジ切りされて貫通された貫通孔56bにネジ56cを螺合させることにより、第2の連結部材55が固定される。また、超音波センサ収納部材56は、他端側の内周面に形成された雌ネジ部56dに超音波センサ54が超音波出射面54b側を一部臨ませて螺合され、超音波センサ54を保持する。さらに、超音波センサ収納部材56には、後述するファン59からのエアをノズル58側に送るための他端面から超音波センサ収納部材56内部に貫通して設けられた複数の貫通孔56eが形成されている。
【0072】
超音波センサ54は、円筒型の超音波センサであり、先端部に超音波を出射する超音波出射面54bを有する超音波出射部54cと、超音波出射部54cから出射された超音波の戻り超音波を受信する超音波受信部54dとから構成され、後端部から電源や電気信号が供給されるケーブル54eが接続されている。超音波センサ54は、その外周面に雄ネジ部54fが形成され、超音波センサ収納部材56の雌ネジ部56dと螺合されるとともに、キャップ体57の雌ネジ部57aと螺合される。
【0073】
キャップ体57は、超音波センサ54を介して超音波センサ収納部材56と密閉連結される部材であり、一端側から形成され、超音波センサ54の超音波出射部54c及び超音波受信部54dを覆うとともに、超音波出射部54cからの超音波、及び、液面に反射した戻り超音波のそれぞれを所定の方向にガイドする。キャップ体57は、超音波センサ54と螺合される第1の挿入穴57bと、この第1の挿入穴57bの底部において連続して形成された他端側へ貫通されノズル58がねじ込まれる第1の挿入穴57bより小径の第2の挿入穴57cとが設けられる。また、キャップ体57の一端側には、超音波センサ収納部材56の貫通孔56eに流入したファン59からのエアを超音波出射面54bと第1の挿入穴57bの底部との間に形成される空間部57dへバイパスする複数の空気流供給孔57eが形成されている。空気流供給孔57eは、ファン59からのエアを空間部57dに供給し空気流を生成する孔である。キャップ体57の第1の挿入穴57bの内周面には、一端側に超音波センサ54の雄ネジ部54fと螺合される雌ネジ部57aが設けられる。キャップ体57は、超音波センサ収納部材56と密閉して連結されるとともに、超音波出射面54bと第1の挿入穴57bの底部との間に空間部57dを形成するように、超音波センサ54に螺合される。
【0074】
ノズル58は、管状部材からなり、後端側がキャップ体57の第2の挿入穴57cにねじ込まれ、先端側から、ファン59からのエア及び超音波センサ54からの超音波が所定方向に出射されるとともに、液面に反射された戻り超音波を超音波受信部54dにガイドする。ノズル58は、先端側において、ノズル中心軸と直交する面に対して所定の角度θを有する切り欠き部58aが設けられている。この切り欠き部58aは、超音波出射部54cからの超音波が、切り欠きが形成されていない場合にノズル58の先端側から液面に出射される際に生じる反射波による影響を超音波受信部54dが受けないためのものである。
【0075】
なお、ファン59は、供給装置1の上部領域4AUに設けられる空気流生成部であり、このファンから供給されるエアが、液面検出センサ装置51の各部材の内部を流通し、ノズル58の先端から放出される。具体的には、供給装置1の筐体4内に設けられたファン59からのエアは、第2の支持部材17c内部、第1の連結部材52内、超音波発生回路収納部材53内、第2の連結部材55、超音波センサ収納部材56内、貫通孔56e内、空気流供給孔57e内、空間部57d、ノズル58内を順に通り、ノズル58の先端部から流出する。これは、濾過器3に注がれる試料液の性質によっては、例えば、揮発性の試料液であれば、ノズル58内に当該試料液の揮発物質が蓄積し、超音波センサの精度を低下させることを防止するためのものである。ファン59は、キャップ体57の空気流供給孔57eを介してノズル58から僅かな空気流を生成する程度の風量を供給するものであり、超音波センサ54の液面からの反射波を受信する精度が落ちない程度の風量が好ましい。
【0076】
このような構成を有する液面検出センサ装置51は、超音波センサ54を保持する超音波センサ収納部材56を備え、キャップ体57の空気流供給孔57eを介してファン59からの空気流が生成され、揮発性を有する試料液の液面を検出する際においても、超音波センサ54への揮発性物質の付着を抑制することができる。また、液面検出センサ装置1は、空気流生成部であるファン59からのエアを各部材内部を流通させ、空気流供給孔57eから超音波センサ54の先端部側に設けられる空間部57dに供給するので、キャップ体57やノズル58内に揮発性物質が溜まり、超音波出射部54cや超音波受信部54dへの揮発性物質の付着を抑制することができるとともに、装置本体の形状をすっきりさせることができ省スペース化が図られる。
【0077】
以上のように構成された供給装置1は、分析作業を行う段取り作業として、移動ガイド機構9の駆動ブラケット部材23の原点情報やリニアサーボモータ30の作動体35の原点情報を制御回路部12に認識させる原点認識操作が行われる。供給装置1においては、例えばスタートスイッチ14Bを操作して駆動機構10を駆動し、リニアサーボモータ30から出力される位置信号に基づいてスタート位置を認識してメモリ素子に記憶する。なお、この原点認識操作は、最初の分析作業に行えばよく、同一分析作業を行う場合にその都度実施する必要は無いことは勿論である。供給装置1においては、トールビーカ2の移動位置に応じてスタートスイッチ14Bをオン・オフ操作することにより、当該位置情報をメモリ素子に記憶させることにより制御位置を任意に設定することが可能である。
【0078】
供給装置1においては、上述したホルダ機構8によりトールビーカ2を、凹陥部7の下方部の第1位置において主面4Aと平行に対向した略垂直姿勢の待機状態に保持する。供給装置1においては、この待機状態においてトールビーカ2をホルダ機構8から取り外すことなく試料液の充填操作を行うことも可能である。供給装置1においては、上述したようにホルダ機構8が支持ブラケット部材18の一端部を移動ガイド開口溝11に嵌挿させて移動ガイド機構9の駆動ブラケット部材23に固定し、この駆動ブラケット部材23がガイドレール部材22に組み合わされている。
【0079】
供給装置1においては、制御回路部12からの制御信号により駆動機構10が動作してホルダ機構8を移動ガイド機構9により移動させることで、トールビーカ2を移動ガイド開口溝11に沿って円弧状の軌跡を以って上方へと移動させる動作を行う。すなわち、供給装置1においては、駆動機構10が、リニアサーボモータ30により作動体35を上方の初期位置から下方へとスライド移動させ、この作動体35に結合した下部チェーンベルト33と上部チェーンベルト34を駆動する。供給装置1においては、上述したように下部チェーンベルト33が下部ガイド体31に掛け合わされるとともに上部チェーンベルト34が上部ガイド体32に掛け合わされて移動ガイド機構9の駆動ブラケット部材23と結合されており、この駆動ブラケット部材23を移動させる。
【0080】
供給装置1においては、駆動機構10により、図4に示すようにガイドレール部材22の下端部に位置された駆動ブラケット部材23がこのガイドレール部材22に沿って上方へと移動する。供給装置1においては、移動ガイド機構9が、この駆動ブラケット部材23の移動動作に伴いホルダ機構8の支持ブラケット部材18を移動ガイド開口溝11内を円弧状の軌跡を以って上方へと移動させる。供給装置1においては、支持ブラケット部材18の移動に伴ってホルダ機構8に保持されたトールビーカ2が、凹陥部7内において略垂直姿勢から図5に示すように次第に略直交する姿勢に変換されながら移動する。
【0081】
供給装置1においては、トールビーカ2が、図4に示すようにその注ぎ口2Aを濾過器3に臨ませるようにしてこの濾過器3を略中心とした円弧状の軌跡を以って移動する。供給装置1においては、トールビーカ2が所定の高さ位置まで移動すると制御回路部12から出力される制御信号に基づいてリニアサーボモータ30が低速度となる。供給装置1においては、トールビーカ2が低速でさらに移動して第2位置まで達すると、充填した試料液を注ぎ口2Aから濾過器3内に注ぎ込む。
【0082】
供給装置1においては、上述したように濾過器3に所定量の試料液を注いた後にトールビーカ2を第1位置へと復帰させるが、リニアサーボモータ30が往路と復路で速度を変えて作動体35を駆動するように制御してもよい。供給装置1においては、この場合に復路においてトールビーカ2を高速で第1位置へと復帰させる。また、供給装置1においては、例えば全量の試料液を供給し終わる間は、トールビーカ2を途中位置まで復帰させて待機させるようにしてもよい。供給装置1においては、この場合にトールビーカ2を試料液がこぼれ落ちない途中位置まで下降させて待機させる。
【0083】
供給装置1においては、液面検出センサ装置51により、濾過器3内に残存する試料液の量がわずかとなり補充が必要な下限液面位置と、満杯となって注ぎ操作を停止させる上限液面位置とが検出されるようにする。供給装置1においては、液面検出センサ装置51から出力される検出信号を制御回路部12に入力し、下限液面位置に達した状態を検出するとこの制御回路部12から駆動機構10に対して第2位置への移動動作を指示する制御信号を出力する。
【0084】
供給装置1においては、第2位置に移動されたトールビーカ2から濾過器3に対して試料液の注ぎ込み操作が行われ、液面検出センサ装置51によりその注ぎ込み状態を監視する。供給装置1においては、液面検出センサ装置51から出力される検出信号に基づいて制御回路部12において上限液面位置に達した状態を検出すると、この制御回路部12から駆動機構10に対して初期位置への復帰動作を支持する制御信号を出力する。なお、供給装置1においては、駆動機構10が、トールビーカ2を第1位置へと復帰させる際に、起動時に微小の間隔で上下方向に移動させてあたかも振動を与えるように駆動することで濾過器3の開口縁における試料液の表面張力を下げていわゆる液切れ動作を行うようにしてもよい。
【0085】
供給装置1は、図11に示すように作業台50上に多数個1A〜1Nを並べて設置することにより、省スペース化を図って一人の分析員により多数の試料液の分析を同時に行うことを可能とする。各供給装置1A〜1Nは、それぞれが筐体4の主面4Aを前方に向けて作業台50上に設置され、ホルダ機構8により各1個ずつトールビーカ2を保持するとともに濾過器支持ブラケット5により濾過器3を凹陥部7に対向して設置する。
【0086】
各供給装置1A〜1Nは、上述したようにそれぞれのトールビーカ2が濾過器3を略中心として円弧状の軌跡を以って移動して試料液の注ぎ動作を行うように構成したことにより横幅が小さい縦長構造に構成される。したがって、各供給装置1A〜1Nは、限られたスペースの作業台50上に多数台を並べて設置することが可能であり、スペース効率化や作業の効率化を図り、各トールビーカ2から相対する濾過器3に対して精密な試料液の注ぎ分け動作を自動的に行うことが可能となる。
【0087】
図12に第2の実施の形態として示した供給装置60は、1つの筐体61内に上述した供給装置1に備える複数の機構を内蔵して構成したものであり、複数の試料液の分析を同時に実施可能とする。すなわち、供給装置60は、詳細を省略するが上述したホルダ機構8、移動ガイド機構9或いは駆動機構10等の機構部を筐体61に複数内蔵し、主面61Aに形成した凹陥部62内において複数のトールビーカ2を上下方向に円弧状の軌跡を以って移動させる。
【0088】
供給装置60は、上述したように各トールビーカ2がそれぞれ横幅が狭いスペースで移動されで、全体として横幅が小さい縦長構造に構成される。なお、供給装置60は、機構部については各トールビーカ2に対応して構成するが、例えば制御回路部については共通に構成することも可能であることから小型化が図られるようになる。
【0089】
図13に第3の実施の形態として示した供給装置70は、基本的な構成を上述した供給装置1と同様とすることから対応する部位について同一符号を付すことによりその説明を省略するが、トールビーカ2を移動させる駆動機構71に特徴を有している。供給装置70は、駆動機構71が、回転出力型サーボモータ72と、このサーボモータ72の出力軸72Aに固定されて正逆回転されるピニオン73と、このピニオン73により駆動されるラック部材74とから構成される。
【0090】
駆動機構71は、サーボモータ72が、上述したように液面検出センサ装置51が濾過器3の液面位置を検出して制御回路部12に検出信号を出力し、制御回路部12から出力される制御信号に基づいて正転及び逆転してピニオン73を駆動する。駆動機構71は、図示しないがサーボモータ72にエンコーダが設けられており、回転方向と回転量を制御回路部12に出力する。駆動機構71は、ラック部材74が、凹陥部7の曲率とほぼ等しい曲率を有するとともに移動ガイド開口溝11とほぼ等しい長さを有する断面円弧状の板部材からなる。
【0091】
ラック部材74は、上述した供給装置1の移動ガイド機構9に備えられた駆動ブラケット部材23に対応する部材であり、ホルダ機構8を構成する支持ブラケット部材18の基端部が固定される。ラック部材74は、図示しないが上述したベアリングコロと同等の適宜の移動ガイド構造を介して、ガイドレール部材22に沿って高さ方向に円滑に移動動作されるようにして組み合わされる。ラック部材74は、内周側に突出するようにして支持ブラケット部材18を固定するとともに、外周側にピニオン73と噛合されるラック74Aが長さ方向の全域に亘って一体に形成されている。
【0092】
以上のように構成された供給装置70は、図13に示すように初期位置において支持ブラケット部材18がラック部材74に固定されるホルダ機構8を介してトールビーカ2を垂直姿勢に保持する。供給装置70は、制御回路部12から出力される試料液の注ぎ動作を指示する制御信号に基づいてサーボモータ72が駆動され、このサーボモータ72によりピニオン73とラック部材74が動作してトールビーカ2を高さ方向に円弧状に移動させて濾過器3への試料液の供給が行われるようにする。
【0093】
駆動機構71は、図13に示す状態からピニオン73が同図において時計方向に回動することにより、ラック部材74を濾過器3を略回転中心として円弧状の軌跡を以って移動させる。駆動機構71は、支持ブラケット部材18を固定したラック部材74の移動動作によりトールビーカ2を垂直姿勢から次第に傾倒姿勢へと変換し、このトールビーカ2から濾過器3に対して試料液が供給されるようにする。駆動機構71は、濾過器3に対して所定量の試料液を供給すると、サーボモータ72が逆回転動作を行ってトールビーカ2を初期位置へと復帰させる。
【0094】
上述した各実施の形態においては、食物繊維の定量法として採用されるプロスキー変法の濾過工程に好適に用いられる液体定量供給装置を示したが、本発明はかかる適用例に限定されないことは勿論である。本発明は、大容量の第1容器体から小容量の第2容器体に対してその都度予め設定した量の液体を小分けして全容量分を供給する各種の用途にも用いられることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施の形態として示す液体定量供給装置の正面図である。
【図2】同液体定量供給装置の内部構造を示す要部斜視図である。
【図3】同液体定量供給装置の構成ブロック図である。
【図4】同液体定量供給装置に備えるホルダ機構と移動ガイド機構と駆動機構の構成を示す要部側面図である。
【図5】同液体定量供給装置におけるトールビーカから濾過器への試料液の注ぎ動作を示す要部側面図である。
【図6】同液体定量供給装置に備える移動ガイド機構と駆動機構の構成を示す要部断面図である。
【図7】同液体定量供給装置に備える移動ガイド機構の構成を示す要部断面図である。
【図8】同移動ガイド機構を構成するガイドレール部材と駆動ブラケット部材の組み合わせ状態を示す要部断面図である。
【図9】同液体定量供給装置に備える液面検出センサ装置の構成を示す分解斜視図である。
【図10】同液体定量供給装置に備える液面検出センサ装置の構成を示す縦断面図である。
【図11】同液体定量供給装置を複数組み並んで設置した使用状態の斜視図である。
【図12】第2の実施の形態として示す液体定量供給装置の正面図である。
【図13】第3の実施の形態として示す液体定量供給装置の移動ガイド機構と駆動機構の構成を示す要部構成図である。
【符号の説明】
【0096】
1 液体定量供給装置、2 トールビーカ、3 濾過器、4 筐体、4A 主面、5 濾過器支持ブラケット、6 吸引排水機構、7 凹陥部、8 ホルダ機構、9 移動ガイド機構、10 駆動機構、11 移動ガイド開口溝、12 制御回路部、13 制御基板、14 操作ボタン、18 支持ブラケット部材、20 可動ホルダ片、21 固定ホルダ片、22 ガイドレール部材、23 駆動ブラケット部材、24 ガイド溝、29 ベアリングコロ、30 リニアサーボモータ、33 下部チェーンベルト、34 上部チェーンベルト、35 作動体、50 作業台、51 液面検出センサ装置、52 連結部材、53 超音波発生回路収納部材、54 超音波センサ、54a 超音波発生回路、54b 超音波出射面、54c 超音波出射部、54d 超音波受信部、55 連結部材、56 超音波センサ収納部材、57 キャップ体、57d 空間部、57e 空気流供給孔、58 ノズル、59 ファン、60 供給装置、61 筐体、62 凹陥部、70 供給装置、71 駆動機構、72 サーボモータ、73 ピニオン、74 ラック部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性溶液を定量供給する液体定量供給装置に用いられる液面検出センサ装置において、
上記揮発性溶液の液面と対向する先端部に設けられ、上記液面に超音波を出射する超音波出射部と、上記先端部に設けられ、上記超音波出射部から出射された超音波の上記液面からの戻り超音波を受信する超音波受信部とを有する超音波センサ部と、
上記超音波センサ部の上記超音波出射部及び超音波受信部を覆うとともに、上記超音波出射部から出射される超音波、及び、上記戻り超音波をガイドするキャップ体と、
上記超音波センサ部の先端部に空気流を生成する空気流生成部とを備え、
上記空気流生成部は、上記キャップ体を介して上記超音波センサ部の先端部に空気流を生成し、該超音波センサ部の先端部への上記揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制することを特徴とする液面検出センサ装置。
【請求項2】
上記キャップ体には、該キャップ体と上記超音波センサ部の先端部との間に形成される空間部に、上記空気流生成部による上記空気流を供給する空気流供給孔が設けられ、
上記キャップ体に連結され、上記空気流供給孔からの空気流が流入し、上記超音波出射部から出射される超音波、及び、上記戻り超音波をガイドする長尺のノズル体を備えることを特徴とする請求項1記載の液面検出センサ装置。
【請求項3】
所定の容量を有する第2容器体に対して、大容量の第1容器体から所定量の揮発性液体を注ぎ分けて供給する液体定量供給装置であり、
筐体の主面に形成した高さ方向の断面略円弧状の凹陥部内において上記第1容器体を着脱自在に保持するホルダ機構と、
上記筐体の上記凹陥部内に位置して上記主面に開口された高さ方向の移動ガイド開口溝に沿って上記ホルダ機構により保持した上記第1容器体を、上記凹陥部に臨んで上記主面と対向して設置した上記第2容器体を略中心とする円弧状の軌跡を以って上下方向に移動させる移動ガイド機構と、
上下方向の反復駆動力を出力する駆動源を有し、上記ホルダ機構を介して上記第1容器体を上記移動ガイド開口溝に沿って移動させる駆動機構と、
上記揮発性溶液の液面と対向する先端部に設けられ、上記液面に超音波を出射する超音波出射部と、上記先端部に設けられ、上記超音波出射部から出射された超音波の上記液面からの戻り超音波を受信する超音波受信部とを有する超音波センサ部と、上記超音波センサ部の上記超音波出射部及び超音波受信部を覆うとともに、上記超音波出射部から出射される超音波、及び、上記戻り超音波をガイドするキャップ体と、上記超音波センサ部の先端部に空気流を生成する空気流生成部とを備え、上記空気流生成部が、上記キャップ体を介して上記超音波センサ部の先端部に空気流を生成し、該超音波センサ部の先端部への上記揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制し、上記第2容器体の液面を検出する液面検出センサユニットとを備え、
上記液面検出センサユニットにより検出される上記第2容器体の液面状態に応じて、上記第1容器体が、上記移動ガイド開口溝の下端側の第1位置において上記主面と平行に対向した略垂直姿勢の待機状態に保持されるとともに、上記駆動機構により上記移動ガイド開口溝の上端側の第2位置へと移動されることにより上記主面と略直交する姿勢に変換されて傾くことで上記第2容器体への注ぎ動作を行うことを特徴とする液体定量供給装置。
【請求項1】
揮発性溶液を定量供給する液体定量供給装置に用いられる液面検出センサ装置において、
上記揮発性溶液の液面と対向する先端部に設けられ、上記液面に超音波を出射する超音波出射部と、上記先端部に設けられ、上記超音波出射部から出射された超音波の上記液面からの戻り超音波を受信する超音波受信部とを有する超音波センサ部と、
上記超音波センサ部の上記超音波出射部及び超音波受信部を覆うとともに、上記超音波出射部から出射される超音波、及び、上記戻り超音波をガイドするキャップ体と、
上記超音波センサ部の先端部に空気流を生成する空気流生成部とを備え、
上記空気流生成部は、上記キャップ体を介して上記超音波センサ部の先端部に空気流を生成し、該超音波センサ部の先端部への上記揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制することを特徴とする液面検出センサ装置。
【請求項2】
上記キャップ体には、該キャップ体と上記超音波センサ部の先端部との間に形成される空間部に、上記空気流生成部による上記空気流を供給する空気流供給孔が設けられ、
上記キャップ体に連結され、上記空気流供給孔からの空気流が流入し、上記超音波出射部から出射される超音波、及び、上記戻り超音波をガイドする長尺のノズル体を備えることを特徴とする請求項1記載の液面検出センサ装置。
【請求項3】
所定の容量を有する第2容器体に対して、大容量の第1容器体から所定量の揮発性液体を注ぎ分けて供給する液体定量供給装置であり、
筐体の主面に形成した高さ方向の断面略円弧状の凹陥部内において上記第1容器体を着脱自在に保持するホルダ機構と、
上記筐体の上記凹陥部内に位置して上記主面に開口された高さ方向の移動ガイド開口溝に沿って上記ホルダ機構により保持した上記第1容器体を、上記凹陥部に臨んで上記主面と対向して設置した上記第2容器体を略中心とする円弧状の軌跡を以って上下方向に移動させる移動ガイド機構と、
上下方向の反復駆動力を出力する駆動源を有し、上記ホルダ機構を介して上記第1容器体を上記移動ガイド開口溝に沿って移動させる駆動機構と、
上記揮発性溶液の液面と対向する先端部に設けられ、上記液面に超音波を出射する超音波出射部と、上記先端部に設けられ、上記超音波出射部から出射された超音波の上記液面からの戻り超音波を受信する超音波受信部とを有する超音波センサ部と、上記超音波センサ部の上記超音波出射部及び超音波受信部を覆うとともに、上記超音波出射部から出射される超音波、及び、上記戻り超音波をガイドするキャップ体と、上記超音波センサ部の先端部に空気流を生成する空気流生成部とを備え、上記空気流生成部が、上記キャップ体を介して上記超音波センサ部の先端部に空気流を生成し、該超音波センサ部の先端部への上記揮発性溶液からの揮発物質の付着を抑制し、上記第2容器体の液面を検出する液面検出センサユニットとを備え、
上記液面検出センサユニットにより検出される上記第2容器体の液面状態に応じて、上記第1容器体が、上記移動ガイド開口溝の下端側の第1位置において上記主面と平行に対向した略垂直姿勢の待機状態に保持されるとともに、上記駆動機構により上記移動ガイド開口溝の上端側の第2位置へと移動されることにより上記主面と略直交する姿勢に変換されて傾くことで上記第2容器体への注ぎ動作を行うことを特徴とする液体定量供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−224299(P2008−224299A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60208(P2007−60208)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(599165234)東洋精機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(599165234)東洋精機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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