深さ調整用ドリル
【課題】ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルに関し、ドリル刃によりあける孔深さを高精度に調整することができ、且つその調整が容易な深さ調整用ドリルを提供する。
【解決手段】ドリル本体部11は、ドリル刃部14と第1のネジ部16とを有する。ドリル支持部12は、第1のネジ部16に螺合する第2のネジ部23を有し、第1及び第2のネジ部(16、23)が螺合状態となることでドリル本体部11を支持する。ドリル本体部11には、螺合状態にて1回転相対変位するごとに複数のマーク18が対応するように形成されたマーキング部15が設けられ、ドリル支持部12には、マーク18を読み取る際の基準位置を教示する読取基準部25が設けられている。
【解決手段】ドリル本体部11は、ドリル刃部14と第1のネジ部16とを有する。ドリル支持部12は、第1のネジ部16に螺合する第2のネジ部23を有し、第1及び第2のネジ部(16、23)が螺合状態となることでドリル本体部11を支持する。ドリル本体部11には、螺合状態にて1回転相対変位するごとに複数のマーク18が対応するように形成されたマーキング部15が設けられ、ドリル支持部12には、マーク18を読み取る際の基準位置を教示する読取基準部25が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルであって、ドリル刃によりあける孔深さを調整する機能を有する深さ調整用ドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルにおいて、ドリル刃によりあける孔深さを調整する機能を有する深さ調整用ドリルが用いられることがある。このような深さ調整用ドリルにおいて用いられる深さ規制具として、特許文献1に記載のように、ビニールハウスの支柱を立てる際などにおいて地面等に孔をあけるために用いられるものが知られている。この特許文献1に記載の深さ規制具は、ドリル本体の軸部に外嵌される筒状体を有し、その筒状体の外周面に突出する穴あけ深さ規制用突出部を備えたものである。具体的には、この深さ規制具は、上記筒状体が、2分割された第1筒状体および第2筒状体を連結したものからなり、第1筒状体および第2筒状体の各々の連結側に設けた段付き部の間に、有孔円盤状に形成された穴あけ深さ規制用突出部が回転自在に設けられているものである。そして、この深さ規制具は、ドリル本体の軸部に対して固定具で固定され、操作者の操作に基づいてドリル本体にて孔があけられていき孔がある一定深さに達すると、穴あけ深さ規制用突出部が地面等の孔あけ対象表面に当接し、それ以上は孔あけが困難な状態となることで、孔あけ深さが一定深さに調整されることを目的としている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−179273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された深さ規制具が、孔あけを行う際の所望の孔深さに応じて、ドリル本体の軸部における所望位置に取り付けられることで、所定の深さの孔あけが行われることになる。この場合、深さ規制具のドリル本体の軸部への取付位置の精度が、あけられる孔深さの精度に大きく影響することになる。特許文献1に記載の深さ規制具をドリル本体に所望位置で取り付けるに際しては、例えば、ノギス等の長さ測定手段を用いてドリル本体における所望の取付位置の測定を行い、かかる取付位置にて深さ規制具を固定することが考えられる。しかしながら、測定手段による測定精度によって深さ規制具の取付位置の精度が左右されることになり、例えば、ノギスを用いた場合では0.5mm程度の精度となってしまうことになる。このため、ドリルによりあけられる孔の深さ精度も同水準の精度しか得られないことになってしまう。
【0005】
例えば、医療分野や工業分野において、深さ調整用ドリルを操作者が操作することで、歯、骨、軟骨等に孔あけ作業が行われたり、特殊形状等の部材に孔あけ作業が行われたりする場合には、あけられる孔の深さ精度としては、上述したような水準の深さ規制具の取付位置の精度に基づく深さ精度ではなく、さらに高精度の深さ精度が要求されることになる。また、ノギスよりも高精度で深さ規制具の取付位置を測定可能な測定装置を用いることも考えられるが、高精度の測定装置をさらに準備する必要があるとともに煩雑な測定作業も行わなければならないことになる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルに関し、ドリル刃によりあける孔深さを高精度に調整することができ、且つその調整が容易な深さ調整用ドリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る深さ調整用ドリルは、先端側に設けられたドリル刃部と、第1のネジ部と、を有するドリル本体部と、前記第1のネジ部に螺合する第2のネジ部を有し、当該第1のネジ部と当該第2のネジ部とが螺合状態となることで前記ドリル本体部を支持するドリル支持部と、を備え、前記ドリル本体部及び前記ドリル支持部は、そのいずれか一方に、当該ドリル本体部が当該ドリル支持部に対して前記螺合状態にて1回転相対変位するごとに複数のマークが対応するように形成されたマーキング部が設けられ、その他方に、前記マークを読み取る際の基準位置を教示する読取基準部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、第1のネジ部と第2のネジ部が螺合することで、ドリル刃部を有するドリル本体部がドリル支持部に支持される。そして、ドリル本体部及びドリル支持部の一方には、1回転相対変位するごとに複数のマークが対応するマーキング部が設けられ、他方にはそのマークを読み取る際の読取基準部が設けられている。このため、所望のマークを読取基準部に合わせることで、ドリル本体部とドリル支持部との位置関係を調整するに際し、それらの1回転あたりの相対変位において複数の位置に調整することができる。即ち、ドリル本体部とドリル支持部とが1回転の相対変位を行うことによって発生する短い直線的なストロークの変化分をさらに複数の位置に分割して容易に調整することができ、1回転の回転ストロークを複数の直接ストロークに容易且つ正確に分割して位置調整することができる。これにより、ドリル本体部のドリル支持部に対する取付位置を高精度に調整することができ、かかる調整が行われた深さ調整用ドリルで孔あけ作業が行われることにより、孔深さを高精度に調整することができる。また、ドリル本体部及びドリル支持部に対して、その一方にマーキング部を他方に読取基準部を設けるという簡易な機構により、高精度な孔あけ作業を実現することができる。
従って、ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルに関し、ドリル刃によりあける孔深さを高精度に調整することができ、且つその調整が容易な深さ調整用ドリルを提供することができる。
【0009】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記ドリル本体部は、軸状に形成され、前記ドリル支持部は、前記ドリル本体部が前記螺合状態で挿通される筒状に形成され、前記第1のネジ部は、前記ドリル本体部に対して雄ネジ部として形成され、前記第2のネジ部は、前記ドリル支持部に対して雌ネジ部として形成されているものであってもよい。
【0010】
この構成によると、雄ネジ部が形成されたドリル本体部を雌ネジ部が形成されたドリル支持部に螺合することで、ドリル本体部をドリル支持部に安定して容易に支持させることができる。
【0011】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記マーキング部は、軸状に形成された前記ドリル本体部においてその周方向に定間隔で前記マークが複数設けられ、前記読取基準部は、筒状に形成された前記ドリル支持部において設けられているものであってもよい。
【0012】
この構成によると、軸状に形成されたドリル本体部の周方向に定間隔でマークが複数設けられ、筒状に形成されたドリル支持部に読取基準部が設けられているため、ドリル本体部をドリル支持部に対して回転させる際にドリル本体部の周方向に設けられたマークのうちの所望のマークを読取基準部に合わせることで、容易に位置調整を行うことができる。
【0013】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記ドリル支持部には、当該ドリル支持部に挿通された前記ドリル本体部に設けられた前記マーキング部の少なくとも一部を看視可能な窓部が形成されているものであってもよい。
【0014】
この構成によると、ドリル本体部に設けられたマーキング部の少なくとも一部を看視可能な窓部がドリル支持部に形成されているため、窓部から看視しながらマークを読取基準部に合わせるように位置調整することができる。
【0015】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記ドリル本体部において、前記マーキング部が前記ドリル刃部に隣接して設けられているものであってもよい。
【0016】
この構成によると、マーキング部がドリル刃部と隣接して設けられているため、ドリル刃部に近接した位置でマークを合わせることができ、ドリル刃部の実際の動きを把握しながらマークを合わせる位置を調整することを容易に行うことができる。
【0017】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記マーキング部は、軸状に形成された前記ドリル本体部においてその軸方向に沿って延びる第1の溝として複数本の前記マークがそれぞれ形成されているものであってもよい。
【0018】
この構成によると、軸状に形成されたドリル本体部にその軸方向に沿って延びる第1の溝を複数本設けることで、マーキング部のマークを容易に形成することができる。
【0019】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記マーキング部は、複数本の前記マークにおいて1本のみ他と溝形状が異なっているものであってもよい。
【0020】
この構成によると、複数本のマークのうち1本のみ他と溝形状が異なっているマークを設けたマーキング部とすることで、ドリル本体部をドリル支持部に対して回転させて相対変位させている際に異なる溝形状のマークを確認する毎に1回転の相対変位が行なわれたことを容易に確認することができ、位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0021】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記ドリル本体部には、その軸方向に沿って延びる第1の溝として形成された複数本の前記マークと直交する周方向に沿って延びる第2の溝が軸方向に定間隔で設けられているものであってもよい。
【0022】
この構成によると、ドリル本体部において、軸方向に延びる第1の溝として形成されたマークと直交する周方向に沿って延びる第2の溝が定間隔で設けられているため、ドリル本体部をドリル支持部に対して回転させて相対変位させている際に第2の溝を確認することで、回転数の変化に伴う大きな位置変化を容易に確認でき、位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0023】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記マーキング部は、筒状に形成された前記ドリル支持部においてその周方向に定間隔で前記マークが複数設けられ、前記読取基準部は、軸状に形成された前記ドリル本体部において設けられているものであってもよい。
【0024】
この構成によると、筒状に形成されたドリル支持部の周方向に定間隔でマークが複数設けられ、軸状に形成されたドリル本体部に読取基準部が設けられているため、ドリル本体部をドリル支持部に対して回転させる際にドリル支持部の周方向に設けられたマークのうちの所望のマークを読取基準部に合わせることで、容易に位置調整を行うことができる。また、軸状に形成されたドリル本体部の外側に配置されて筒状に形成されたドリル支持部にマーキング部が設けられるため、複数のマークをより多く形成することができ、1回転あたりに対応するマークの個数を多く設けることができ、これにより、より高精度の位置調整を可能にすることができる。
【0025】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記ドリル本体部を前記ドリル支持部に対して固定可能な止め手段をさらに備えているものであってもよい。
【0026】
この構成によると、ドリル本体部をドリル支持部に対して固定可能な止め手段が設けられているため、位置調整が完了した状態で、ドリル本体部をドリル支持部に対して確実に固定することができる。
【0027】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、人体における骨、軟骨、及び歯のうちの少なくともいずれかを切削するために用いられるものであってもよい。
【0028】
医療分野において、深さ調整用ドリルを操作者が操作することで歯、骨、軟骨に孔あけ作業が行われる際には、あけられる孔の深さ精度として高精度の深さ精度を実現することが要求されるが、本発明に係る深さ調整用ドリルを用いることで、かかる要求を容易に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においては、人体における軟骨に対して切削をして孔あけ作業を行うために用いられる場合を例にとって説明するが、この例に限らず、医療分野や工業分野において広く適用することができるものである。例えば、医療分野においては、人体における軟骨以外の骨や歯に対して切削をして孔あけ作業を行うために用いることができる。また、工業分野において、深さ調整用ドリルを操作者が操作することで特殊形状等の部材に孔あけ作業が行われる場合などに適用することもできる。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る深さ調整用ドリル1を示す正面図である。この図1に示す深さ調整用ドリル1は、例えば、人体において軟骨に損傷等を受けたときの治療のためその損傷等を受けた部分に培養した軟骨組織を移植する手術を行う場合などに、軟骨に対して切削をして孔あけ作業を行うために用いられる。図1に示すように、この深さ調整用ドリル1は、ドリル本体部11、ドリル支持部12、固定ナット13を備えて構成されている。
【0031】
図2は、深さ調整用ドリル1におけるドリル本体部11を示す正面図である。ドリル本体部11は、軸状に形成されている。そして、ドリル本体部11の先端側には切削加工用のドリル刃部14が設けられている(尚、図2では、ドリル刃の詳細は図示を省略している)。また、ドリル本体部11においては、ドリル刃部14に隣接して配置されるマーキング部15と、マーキング部15にさらに隣接して配置される第1のネジ部16とが設けられている。第1のネジ部16は、ドリル本体部11に対してその外周に設けられた雄ネジ部として形成されている。また、ドリル本体部11におけるドリル刃部14と反対側の端部には、切削加工のための回転動作を付与する図示しない回転駆動機構に取り付けるための取付部17が設けられている。なお、後述するように、軸状に形成されたドリル本体部11は、筒状に形成されたドリル支持部12に対して螺合状態にて支持されるようになっている。
【0032】
図3は、図2のa−a線矢視断面図を示したものである。この図3に示すように、マーキング部15は、ドリル本体部11の軸方向と直交する断面において多角形断面となるように形成されている。そして、この多角形断面の頂点を結ぶ線であってドリル本体部11の軸方向に平行な各稜線が、ドリル本体部11においてその周方向に定間隔で設けられた複数のマーク18を構成している。これにより、ドリル本体部11に設けられたマーキング部15は、ドリル本体部11がドリル支持部12に対して螺合状態にて1回転相対変位するごとに複数のマーク18が対応するように形成されている。尚、図3では、マーク18が10本形成されている場合を例示している。この場合、第1のネジ部26のピッチを1mmとすることで、ドリル本体部11がドリル支持部12に対して螺合状態で1回転するごとに10本のマーク18を読み取ることができ、これにより、ドリル本体部11のドリル支持部12に対する軸方向の変位を0.1mm単位で調整することができる。
【0033】
なお、図3(b)は、マーキング部15の変形例であるマーキング部20を示したものであり、変形例に係るドリル本体部の図3(a)に対応させて示す断面図である。この変形例に係るマーキング部20のように、軸状に形成されたドリル本体部においてその軸方向に沿って延びる溝(本実施形態における「第1の溝」)として複数本のマーク(21、22)がそれぞれ形成されているものであってもよい。そして、図3(b)に示すように、マーキング部20は、複数本のマーク(21、22)において1本のマーク22のみ他のマーク21と溝形状が異なっているものであってもよい。溝形状の異ならせ方としては、図3(b)に示すように相似形のまま大きさを変更するものでも、非相似形とするものでもいずれであってもよい。
【0034】
図4は、ドリル支持部12の一部断面を含む平面図(図4(a))と、そのb−b線矢視断面図(図4(b))とを示したものである。尚、図4(a)は、中心線Lに対する上半側を一部切欠き断面として示している。図4に示すように、ドリル支持部12は、ドリル本体部11に設けられた第1のネジ部16と螺合する第2のネジ部23を有しており、この第2のネジ部23は、ドリル支持部12に対して雌ネジ部として形成されている。そして、ドリル支持部12は、第1のネジ部16と第2のネジ部23とが螺合状態となることでドリル本体部11を支持するようになっており、ドリル本体部11が螺合状態で挿通される筒状に形成されている(図1、図2、図4参照)。
【0035】
また、ドリル支持部12には、このドリル支持部12に挿通されたドリル本体部11に設けられたマーキング部15の一部を外側から看視可能な長孔状の窓部24が形成されている(図1、図4参照)。即ち、窓部24を介してマーク18を確認できるようになっている。尚、本実施形態では、図4(b)に示すように、窓部24が両側方に設けられた例を示しているが、この例に限らず、1つであってもよい。さらに、筒状に形成されたドリル支持部12においては、ドリル本体部11に形成されたマーク18を窓部24を介して読み取る際の基準位置を教示する読取基準部25が設けられている。この読取基準部25は、図1及び図4に示すように、窓部24の縁部分の2箇所において刻設されたラインとして設けられている。この読取基準部25のラインとマーク18とを一直線状に並ぶように対応させることで、前述したように、例えば0.1mm単位でドリル本体部11のドリル支持部12に対する位置を調整することができる。尚、読取基準部25については、このような刻設されたラインに限らず、マーク18の読取のための基準位置を教示するものであればよく、形態を適宜変更して実施することができる。
【0036】
図5は、固定ナット13の一部断面を含む平面図(図5(a))と、図5(a)におけるb線矢視方向から見た側面図(図5(b))とを示したものである。尚、図5(a)は、中心線Lに対する下半側を断面として示したものである。この図5に示すように、固定ナット13には、ドリル本体部11における第1のネジ部16と螺合する雌ネジ部として形成された第3のネジ部26が設けられている。即ち、ドリル本体部11における第1のネジ部16は、ドリル支持部12における第2のネジ部23と螺合するとともに固定ナット13における第3のネジ部26とも螺合するようになっており、深さ調整用ドリル1においてダブルナット機構が実現されるようになっている。この固定ナット13によって、ドリル本体部11をドリル支持部12に対して固定可能な本実施形態の止め手段が構成されることになる。
【0037】
次に、本実施形態に係る深さ調整用ドリル1の作動について説明する。深さ調整用ドリル1は、前述したように、人体において軟骨に損傷等を受けたときの治療のためその損傷等を受けた軟骨部分に培養した軟骨組織を移植する手術(軟骨移植術)を行う場合などに、軟骨に対して切削をして孔あけ作業を行うために用いられる。
【0038】
上述の軟骨移植術が行われる場合、術者は、まず、ドリル本体部11をそのドリル刃部14の先端側からドリル支持部12に挿通させていき、第1のネジ部16と第2のネジ部23とを螺合させながら、ドリル刃部14をドリル支持部12の先端側から突出させる。そして、ノギス等の簡易な測定手段を用いて、ドリル刃部14のドリル支持部12の先端の端部27からの突出量X1(図1参照)が所望寸法付近の寸法となるように粗調整を行う。次いで、術者は、ドリル支持部12の窓部24からマーク18を看視しながら、前述のように0.1mm単位で突出量X1を調整する。このように、ドリル刃部14のドリル支持部12の先端からの突出量X1が所望の寸法となるように、ドリル本体部11のドリル支持部12に対する位置調整を行う。
【0039】
上述した位置調整が完了すると、術者は、固定ナット13をドリル本体部11の取付部17側から挿入して第3のネジ部26を第1のネジ部16に螺合させていき、ダブルナットの状態でドリル本体部11をドリル支持部12に対して固定する。こうして、図1に示す深さ調整用ドリル1の組み立てが完了すると、図示しない回転駆動機構に対して深さ調整用ドリル1を取付部17にて取り付けて固定する。これにより、軟骨移植術の対象の軟骨に対して孔あけ作業が開始できる状態になる。
【0040】
上述の状態になると、術者は、前述の回転駆動機構を手動で操作しながら軟骨移植術の対象の軟骨とその下層に位置する海綿骨に対して孔あけ作業を開始する。このとき、ドリル刃部14は、軟骨や海綿骨を切削しながらこの軟骨内に挿入されていくが、ドリル支持部12の先端の端部27がストッパとして機能して軟骨と当接するため、それ以上の深さにはドリル刃部14が軟骨内に挿入されないことになる。これにより、前述した突出量X1に対応した孔深さの孔が軟骨移植術の対象の軟骨等に対してあけられることになる。尚、ドリル刃部14による切削ストロークを規制する上述したようなストッパ機能は、ドリル支持部12の先端の端部27以外によって適宜実現させるものであってもよい。
【0041】
図6は、上述のように軟骨への孔あけ作業が終了した状態から培養した軟骨組織を移植する様子を断面で説明する模式図である。尚、図6においては、軟骨移植術の対象領域の断面を部分的に示している。図6(a)に示すように、軟骨移植術の対象領域には、軟骨28の層と海綿骨29の層とがあり、これらの層に対して、前述したように、深さ調整用ドリル1を用いて孔30が形成されている。この孔30に対して、培養した軟骨組織である培養軟骨31の層をリン酸カルシウム32の層に付着させたものである移植組織(図6(a)参照)を図6(b)に示すように埋入して移植する。尚、培養軟骨31については、国際公開番号WO2005/011765A1の国際公開公報に開示された人工関節の作成方法等の公知の方法によって作成することができる。このとき、培養軟骨31とリン酸カルシウム32とからなる移植組織の高さ寸法X2と合うように、孔30の孔深さ寸法X3があけられていることが望ましい。深さ調整用ドリル1を用いて孔30をあける場合は、移植組織の高さ寸法X2に合わせて前述の突出量X1を高精度で調整でき、これにより、移植組織の高さ寸法X2に合った深さ寸法X3の孔30をあけることができる。このように深さ寸法X3が移植組織の高さ寸法X2に合っていることで、軟骨移植術の終了後に軟骨組織や海綿骨組織が再生して修復すると、図6(c)に示すように、表面に凹み部分がほとんどない状態に修復されることになる。
【0042】
図7は、軟骨28及び海綿骨29の層に対してあけられた孔33の深さ寸法X4(図7(a)参照)が深すぎて移植組織の高さ寸法X2に合っていない場合を図6の場合との比較のために示したものである。このように、孔深さが深すぎるような穴33に移植組織を埋入すると、図7(b)に示すように、移植組織の上部側に段状の凹みができてしまうことになる。このため、軟骨移植術の終了後に軟骨組織等が再生して修復したときに、図7(c)に示すように、表面に凹み部分34が生じてしまい、滑らかな動きを可能にする軟骨の修復が困難になるという問題が生じることになる。本実施形態の深さ調整用ドリル1を用いて孔あけ作業を行うことで、図7に示すような問題の発生を防止することができる。
【0043】
以上説明した深さ調整用ドリル1によると、第1のネジ部16と第2のネジ部23が螺合することで、ドリル刃部14を有するドリル本体部11がドリル支持部12に支持される。そして、ドリル本体部11には、1回転相対変位するごとに複数のマーク18が対応するマーキング部15が設けられ、ドリル支持部12にはそのマーク18を読み取る際の読取基準部25が設けられている。このため、所望のマーク18を読取基準部25に合わせることで、ドリル本体部11とドリル支持部12との位置関係を調整するに際し、それらの1回転あたりの相対変位において複数の位置に調整することができる。即ち、ドリル本体部11とドリル支持部12とが1回転の相対変位を行うことによって発生する短い直線的なストロークの変化分をさらに複数の位置に分割して容易に調整することができ、1回転の回転ストロークを複数の直接ストロークに容易且つ正確に分割して位置調整することができる。これにより、ドリル本体部11のドリル支持部12に対する取付位置を高精度に調整することができ、かかる調整が行われた深さ調整用ドリル1で孔あけ作業が行われることにより、孔深さを高精度に調整することができる。また、ドリル本体部11に対してマーキング部15を、ドリル支持部12に対して読取基準部25を設けるという簡易な機構により、高精度な孔あけ作業を実現することができる。
【0044】
従って、深さ調整用ドリル1によると、ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルに関し、ドリル刃によりあける孔深さを高精度に調整することができ、且つその調整が容易な深さ調整用ドリルを提供することができる。
【0045】
また、深さ調整用ドリル1によると、雄ネジ部が形成されたドリル本体部11を雌ネジ部が形成されたドリル支持部12に螺合することで、ドリル本体部11をドリル支持部12に安定して容易に支持させることができる。
【0046】
また、深さ調整用ドリル1によると、軸状に形成されたドリル本体部11の周方向に定間隔でマーク18が複数設けられ、筒状に形成されたドリル支持部12に読取基準部25が設けられているため、ドリル本体部11をドリル支持部12に対して回転させる際にドリル本体部11の周方向に設けられたマーク18のうちの所望のマーク18を読取基準部25に合わせることで、容易に位置調整を行うことができる。
【0047】
また、深さ調整用ドリル1によると、ドリル本体部11に設けられたマーキング部15の少なくとも一部を看視可能な窓部24がドリル支持部12に形成されているため、窓部24から看視しながらマーク18を読取基準部25に合わせるように位置調整することができる。
【0048】
また、深さ調整用ドリル1によると、マーキング部15がドリル刃部14と隣接して設けられているため、ドリル刃部に近接した位置でマークを合わせることができ、ドリル刃部14の実際の動きを把握しながらマーク18を合わせる位置を調整することを容易に行うことができる。
【0049】
また、図3(b)にて変形例として説明したように、マーキング部20が設けられた深さ調整用ドリルによると、軸状に形成されたドリル本体部にその軸方向に沿って延びる第1の溝を複数本設けることで、マーキング部20のマーク(21、22)を容易に形成することができる。そして、この変形例にかかる深さ調整用ドリルによると、複数本のマーク(21、22)のうち1本のマーク22のみ他のマーク21と溝形状が異なっているマーク(21、22)を設けたマーキング部20とすることで、ドリル本体部をドリル支持部に対して回転させて相対変位させている際に異なる溝形状のマーク22を確認する毎に1回転の相対変位が行なわれたことを容易に確認することができ、位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0050】
また、深さ調整用ドリル1によると、ドリル本体部11をドリル支持部12に対して固定可能な止め手段である固定ナット13が設けられているため、位置調整が完了した状態で、ドリル本体部11をドリル支持部12に対して確実に固定することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係る深さ調整用ドリル2を示したものである。この深さ調整用ドリル2は、第1実施形態の深さ調整用ドリル1と同様に、軟骨等に対する孔あけ作業において用いられ、ドリル本体部11a、ドリル支持部12a、固定ナット13aを備えて構成されている。尚、図8(a)は深さ調整用ドリル2の正面図であり、図8(b)はドリル本体部11aの正面図である。
【0052】
ドリル本体部11aには、第1実施形態のドリル本体部11と同様に、ドリル刃部14a、複数本のマーク18が形成されたマーキング部15a、第1のネジ部16a、取付部17aが設けられている。しかし、ドリル本体部11aは、ドリル本体部11とは異なり、軸方向に沿って延びる第1の溝として形成された複数本のマーク18と直交する周方向に沿って延びる第2の溝35が軸方向に定間隔で複数設けられている。例えば、第1のネジ部16aのピッチが1mmでマーク18が10本設けられているような場合に、第2の溝35が1mm間隔で設けられていれば、ドリル本体部11aがドリル支持部12aに対して10回転するごとに第2の溝35で1目盛分(1mm分)だけドリル本体部11aがドリル支持部12aに対して軸方向に変位することになる。また、ドリル支持部12aには、第1実施形態と同様の読取基準部25a及び窓部24aに加え、第2の溝35を読み取る際の基準位置となる目印36が設けられている。この目印36の位置で第2の溝35を確認することで、ドリル本体部11aのドリル支持部12aに対する大きな変位を把握し易くなる。
【0053】
このように、深さ調整用ドリル2によると、ドリル本体部11aにおいて、軸方向に延びる第1の溝として形成されたマーク18aと直交する周方向に沿って延びる第2の溝35が定間隔で設けられているため、ドリル本体部11aをドリル支持部12aに対して回転させて相対変位させている際に第2の溝35を確認することで、回転数の変化に伴う大きな位置変化を容易に確認でき、位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図9は、第3実施形態に係る深さ調整用ドリル3を示したものである。この深さ調整用ドリル3は、第1実施形態の深さ調整用ドリル1と同様に、軟骨等に対する孔あけ作業において用いられ、ドリル本体部11b、ドリル支持部12b、固定ナット13bを備えて構成されている。尚、図9(a)は深さ調整用ドリル3の正面図であり、図9(b)はドリル本体部11bの正面図であり、図9(c)は中心線Lの上半側を一部切欠き断面で示したドリル支持部12bの正面図である。
【0055】
ドリル本体部11bには、第1実施形態のドリル本体部11と同様に、ドリル刃部14b、複数本のマーク18bが形成されたマーキング部15b、第1のネジ部16b、取付部17bが設けられている。しかし、ドリル本体部11bは、ドリル本体部11とは異なり、マーキング部15bではなく第1のネジ部16bがドリル刃部14bに隣接している。そして、ドリル本体部11bには、固定ナット13bに設けられた図示しない第3のネジ部と螺合する第4のネジ部37が、マーキング部15bと取付部17bとの間に配設されている。ドリル支持部12bは、第1実施形態と同様の第2のネジ部23b、窓部24b、読取基準部25bが設けられているが、ドリル本体部11bにおける上述したような第1のネジ部16b及びマーキング部15bの位置構成に対応した位置に、第2のネジ部23bと窓部24bと読取基準部25bとが設けられる構成になっている。このようにマーキング部15b等の位置を変更した深さ調整用ドリル3においても、第1実施形態の場合と同様に、ドリル刃によりあける孔深さを高精度に調整することができ、且つその調整が容易な深さ調整用ドリルを提供することができる。
【0056】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図10は、第4実施形態に係る深さ調整用ドリル4を示したものである。この深さ調整用ドリル4は、第1実施形態の深さ調整用ドリル1と同様に、軟骨等に対する孔あけ作業において用いられ、ドリル本体部11c、ドリル支持部12c、固定ナット13cを備えて構成されている。尚、図10(a)は深さ調整用ドリル4の正面図であり、図10(b)はドリル本体部11cの正面図であり、図10(c)は中心線Lの上半側を一部切欠き断面で示したドリル支持部12cの正面図である。
【0057】
ドリル本体部11cには、第3実施形態のドリル本体部11bと同様に、ドリル刃部14c、第1のネジ部16c、第4のネジ部37c、取付部17bが設けられている。しかし、軸状に形成されたドリル本体部11cは、ドリル本体部11bとは異なり、読取基準部25cが設けられている。一方、ドリル支持部12cは、第3実施形態と同様の第2のネジ部23cが設けられているが、窓部は設けられておらず、このドリル支持部12cの端部にマーキング部15cが設けられている。このマーキング部15cには、筒状に形成されたドリル支持部12cにおいてその周方向に定間隔で複数本設けられたマーク18cが形成されている。この深さ調整用ドリル4においては、ドリル本体部11cに設けられた読取基準部25cに対してドリル支持部12cに設けられたマーキング部15cのうちの所望のマーク18cを合わせることで一調整を行い、その後に固定ナット13cにおける第3のネジ部をドリル本体部11cにおける第4のネジ部37cと螺合させてダブルナット状態で固定する。
【0058】
このように、筒状に形成されたドリル支持部12cの周方向に定間隔でマーク18cが複数設けられ、軸状に形成されたドリル本体部11cに読取基準部25cが設けられているため、ドリル本体部11cをドリル支持部12cに対して回転させる際にドリル支持部12cの周方向に設けられたマーク18cのうちの所望のマーク18cを読取基準部25cに合わせることで、容易に位置調整を行うことができる。また、軸状に形成されたドリル本体部11cの外側に配置されて筒状に形成されたドリル支持部12cにマーキング部15cが設けられるため、複数のマーク18cをより多く形成することができ、1回転あたりに対応するマーク18cの個数を多く設けることができ、これにより、より高精度の位置調整を可能にすることができる。
【0059】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図11乃至図14は、第5実施形態に係る深さ調整用ドリル5を示したものである。この深さ調整用ドリル5は、第1実施形態の深さ調整用ドリル1と同様に、軟骨等に対する孔あけ作業において用いられ、ドリル本体部11d、ドリル支持部12d、固定ナットdを備えて構成されている。尚、図11は、深さ調整用ドリル5の正面図である。また、図12は、中心線Lの上半側を一部切欠き断面で示したドリル支持部12dの正面図(図12(a))、図12(a)のb線矢視側面図(図12(b))、及び固定ナット13dの正面図(図12(c))である。また、図13はドリル本体部11dの正面図であり、図14は図13のa−a線矢視断面図(図14(a))及び図13のb−b線矢視断面図(図14(b))である。
【0060】
図12(a)に示すように、ドリル支持部12dには、第3実施形態のドリル支持部12bと同様に、第2のネジ部23d、窓部24d、読取基準部25dが設けられている。しかし、ドリル支持部12dは、ドリル支持部12bとは異なり、第2のネジ部23dが設けられている側とは反対側の端部に第5のネジ部38が設けられている。雄ネジ部として形成されているこの第5のネジ部38は、図12(a)及び(b)に示すように、周方向均等位置の4箇所に形成された各スリット部39が設けられたテーパネジとして設けられている。そして、ドリル支持部12dにおける第5のネジ部38が設けられている部分の内周側には、複数の小突起部40が設けられている。(図12(b)では小突起部40が2個設けられている場合を例示している。また、図12(c)に示す固定ナット13dは、図示しない第3のネジ部が雌ネジ部として形成されたテーパネジとして設けられている。
【0061】
図13に示すように、ドリル本体部11dは、第3実施形態のドリル本体部11bと同様に、ドリル刃部14d、第1のネジ部16d、マーキング部20d、取付部17dが設けられている。しかし、ドリル本体部11dは、ドリル本体部11bとは異なり、第1実施形態における図3(b)の変形例と同様のマーキング部20dが設けられている。即ち、図14(b)に示すように、ドリル本体部11dの軸方向に沿って延びる第1の溝として形成された複数本のマーク(21d、22d)が設けられ、1本のマーク22のみ他と溝形状が異なっている。また、ドリル本体部11dには、マーキング部20dと取付部17dとの間に配設され、ドリル本体部11dの内周側に設けられた小突起部部40が押し付けられる押付面部41が設けられている。この押付面部41は、図14(a)に示すように、ドリル本体部11dの軸方向と直交する断面が多角形断面となるように形成されている。ドリル支持部12dにドリル本体部11dを挿通して螺合状態として位置調整を行った後、固定ナット13dにおける第3のネジ部をドリル支持部12dにおける第5のネジ部38に螺合させることで、第5のネジ部38が内側に撓み、さらに、小突起部部40がドリル本体部11dの押圧面部41と当接することで、ドリル本体部11dがドリル支持部12dに固定されることになる。即ち、深さ調整用ドリル5では、固定ナット13d、第5のネジ部38、小突起部40、押圧面部41によって、本実施形態の止め手段が構成されている。
【0062】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図15は、第6実施形態に係る深さ調整用ドリル6を示したものである。この深さ調整用ドリル6は、第1実施形態の深さ調整用ドリル1と同様に、軟骨等に対する孔あけ作業において用いられ、ドリル本体部11e、ドリル支持部12eを備えて構成されている。しかし、深さ調整用ドリル6においては、固定ナットは備えられていない。尚、図15(a)は中心線Lの上半側を一部切欠き断面で示したドリル支持部12eの正面図であり、図15(b)はドリル本体部11eの正面図である。
【0063】
図15(a)に示すように、ドリル支持部12eには、第3実施形態のドリル支持部12bと同様に、第2のネジ部23e、窓部24e、読取基準部25eが設けられている。しかし、ドリル支持部12eは、ドリル支持部12bとは異なり、固定レバー42が設けられている。この固定レバー42は、ドリル支持部12eの筒状の本体部分に対して、一方の端部45にて回動自在にヒンジ止めされている。図16は、固定レバー42における端部45の近傍を拡大して示したものである(尚、図16では、ドリル支持部12eの本体部分における回動支持部の図示は省略している)。この図16に示すように、固定レバー42の端部45には、その端部側に配置されて曲率半径R1の小さい小R部43と、小R部43に連続するとともに端部45におけるレバー軸46側に配置されて曲率半径R2の大きい大R部44とが形成されている(即ち、R1<R2の関係が成立している)。固定レバー42の端部45をこのような形状構成にすることで、図15(a)及び図16に示す状態まで固定レバー42を回動操作すると、大R部44にてドリル支持部12eの本体部分の壁部が強く押圧されるようになっている。
【0064】
ドリル本体部11eは、図15(b)に示すように、第3実施形態のドリル本体部11bと同様に、ドリル刃部14e、第1のネジ部16e、複数本のマークが軸方向に沿って延びるように形成されたマーキング部15e、取付部17eが設けられている。尚、ドリル本体部11eは、ドリル本体部11bとは異なり、第4のネジ部は設けられていない。このドリル本体部11eをドリル支持部12eに挿通して螺合状態として位置調整を行った後、図15(a)に示す状態まで固定レバー42を回動操作すると、前述のように大R部44にてドリル支持部12eの本体部分の壁部が強く押され、これにより、第1のネジ部16eと第2のネジ部23eとの接触領域がかしめられた状態になり、ドリル本体部11eがドリル支持部12eに対して固定されることになる。即ち、深さ調整用ドリル6では、固定レバー42が止め手段を構成しており、簡易な構成で止め手段を実現することができる。
【0065】
以上、本発明の第1乃至第6実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、医療分野や工業分野において広く適用することができ、例えば、医療分野においては、人体における軟骨、骨、歯に対して切削をして孔あけ作業を行うために用いることができ、また、工業分野においては、深さ調整用ドリルを操作者が操作することで特殊形状等の部材に孔あけ作業が行われる場合などに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図2】図1に示す深さ調整用ドリルにおけるドリル本体部を示す正面図である。
【図3】図2のa−a線矢視断面図である。
【図4】図1に示す深さ調整用ドリルにおけるドリル支持部の一部断面を含む平面図と、そのb−b線矢視断面図とを示したものである。
【図5】図1に示す深さ調整用ドリルにおける固定ナットの一部断面を含む平面図とその平面図におけるb線矢視方向から見た側面図とを示したものである。
【図6】軟骨への孔あけ作業が終了した状態から培養した軟骨組織を移植する様子を断面で説明する模式図である。
【図7】軟骨への孔あけ作業が終了した状態から培養した軟骨組織を移植する様子を断面で説明する模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図12】図11に示す深さ調整用ドリルにおけるドリル支持部12の正面図とその正面図のb線矢視側面図と固定ナットの正面図とを示したものである。
【図13】図11に示す深さ調整用ドリルにおけるドリル本体部の正面図である。
【図14】図13のa−a線矢視断面図及び図13のb−b線矢視断面図である。
【図15】本発明の第6実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図16】図15に示す深さ調整用ドリルにおける固定レバーの端部の近傍を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 深さ調整用ドリル
11 ドリル本体部
12 ドリル支持部
13 固定ナット(止め手段)
14 ドリル刃部
15 マーキング部
16 第1のネジ部
18 マーク
23 第2のネジ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルであって、ドリル刃によりあける孔深さを調整する機能を有する深さ調整用ドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルにおいて、ドリル刃によりあける孔深さを調整する機能を有する深さ調整用ドリルが用いられることがある。このような深さ調整用ドリルにおいて用いられる深さ規制具として、特許文献1に記載のように、ビニールハウスの支柱を立てる際などにおいて地面等に孔をあけるために用いられるものが知られている。この特許文献1に記載の深さ規制具は、ドリル本体の軸部に外嵌される筒状体を有し、その筒状体の外周面に突出する穴あけ深さ規制用突出部を備えたものである。具体的には、この深さ規制具は、上記筒状体が、2分割された第1筒状体および第2筒状体を連結したものからなり、第1筒状体および第2筒状体の各々の連結側に設けた段付き部の間に、有孔円盤状に形成された穴あけ深さ規制用突出部が回転自在に設けられているものである。そして、この深さ規制具は、ドリル本体の軸部に対して固定具で固定され、操作者の操作に基づいてドリル本体にて孔があけられていき孔がある一定深さに達すると、穴あけ深さ規制用突出部が地面等の孔あけ対象表面に当接し、それ以上は孔あけが困難な状態となることで、孔あけ深さが一定深さに調整されることを目的としている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−179273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された深さ規制具が、孔あけを行う際の所望の孔深さに応じて、ドリル本体の軸部における所望位置に取り付けられることで、所定の深さの孔あけが行われることになる。この場合、深さ規制具のドリル本体の軸部への取付位置の精度が、あけられる孔深さの精度に大きく影響することになる。特許文献1に記載の深さ規制具をドリル本体に所望位置で取り付けるに際しては、例えば、ノギス等の長さ測定手段を用いてドリル本体における所望の取付位置の測定を行い、かかる取付位置にて深さ規制具を固定することが考えられる。しかしながら、測定手段による測定精度によって深さ規制具の取付位置の精度が左右されることになり、例えば、ノギスを用いた場合では0.5mm程度の精度となってしまうことになる。このため、ドリルによりあけられる孔の深さ精度も同水準の精度しか得られないことになってしまう。
【0005】
例えば、医療分野や工業分野において、深さ調整用ドリルを操作者が操作することで、歯、骨、軟骨等に孔あけ作業が行われたり、特殊形状等の部材に孔あけ作業が行われたりする場合には、あけられる孔の深さ精度としては、上述したような水準の深さ規制具の取付位置の精度に基づく深さ精度ではなく、さらに高精度の深さ精度が要求されることになる。また、ノギスよりも高精度で深さ規制具の取付位置を測定可能な測定装置を用いることも考えられるが、高精度の測定装置をさらに準備する必要があるとともに煩雑な測定作業も行わなければならないことになる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルに関し、ドリル刃によりあける孔深さを高精度に調整することができ、且つその調整が容易な深さ調整用ドリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る深さ調整用ドリルは、先端側に設けられたドリル刃部と、第1のネジ部と、を有するドリル本体部と、前記第1のネジ部に螺合する第2のネジ部を有し、当該第1のネジ部と当該第2のネジ部とが螺合状態となることで前記ドリル本体部を支持するドリル支持部と、を備え、前記ドリル本体部及び前記ドリル支持部は、そのいずれか一方に、当該ドリル本体部が当該ドリル支持部に対して前記螺合状態にて1回転相対変位するごとに複数のマークが対応するように形成されたマーキング部が設けられ、その他方に、前記マークを読み取る際の基準位置を教示する読取基準部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、第1のネジ部と第2のネジ部が螺合することで、ドリル刃部を有するドリル本体部がドリル支持部に支持される。そして、ドリル本体部及びドリル支持部の一方には、1回転相対変位するごとに複数のマークが対応するマーキング部が設けられ、他方にはそのマークを読み取る際の読取基準部が設けられている。このため、所望のマークを読取基準部に合わせることで、ドリル本体部とドリル支持部との位置関係を調整するに際し、それらの1回転あたりの相対変位において複数の位置に調整することができる。即ち、ドリル本体部とドリル支持部とが1回転の相対変位を行うことによって発生する短い直線的なストロークの変化分をさらに複数の位置に分割して容易に調整することができ、1回転の回転ストロークを複数の直接ストロークに容易且つ正確に分割して位置調整することができる。これにより、ドリル本体部のドリル支持部に対する取付位置を高精度に調整することができ、かかる調整が行われた深さ調整用ドリルで孔あけ作業が行われることにより、孔深さを高精度に調整することができる。また、ドリル本体部及びドリル支持部に対して、その一方にマーキング部を他方に読取基準部を設けるという簡易な機構により、高精度な孔あけ作業を実現することができる。
従って、ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルに関し、ドリル刃によりあける孔深さを高精度に調整することができ、且つその調整が容易な深さ調整用ドリルを提供することができる。
【0009】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記ドリル本体部は、軸状に形成され、前記ドリル支持部は、前記ドリル本体部が前記螺合状態で挿通される筒状に形成され、前記第1のネジ部は、前記ドリル本体部に対して雄ネジ部として形成され、前記第2のネジ部は、前記ドリル支持部に対して雌ネジ部として形成されているものであってもよい。
【0010】
この構成によると、雄ネジ部が形成されたドリル本体部を雌ネジ部が形成されたドリル支持部に螺合することで、ドリル本体部をドリル支持部に安定して容易に支持させることができる。
【0011】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記マーキング部は、軸状に形成された前記ドリル本体部においてその周方向に定間隔で前記マークが複数設けられ、前記読取基準部は、筒状に形成された前記ドリル支持部において設けられているものであってもよい。
【0012】
この構成によると、軸状に形成されたドリル本体部の周方向に定間隔でマークが複数設けられ、筒状に形成されたドリル支持部に読取基準部が設けられているため、ドリル本体部をドリル支持部に対して回転させる際にドリル本体部の周方向に設けられたマークのうちの所望のマークを読取基準部に合わせることで、容易に位置調整を行うことができる。
【0013】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記ドリル支持部には、当該ドリル支持部に挿通された前記ドリル本体部に設けられた前記マーキング部の少なくとも一部を看視可能な窓部が形成されているものであってもよい。
【0014】
この構成によると、ドリル本体部に設けられたマーキング部の少なくとも一部を看視可能な窓部がドリル支持部に形成されているため、窓部から看視しながらマークを読取基準部に合わせるように位置調整することができる。
【0015】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記ドリル本体部において、前記マーキング部が前記ドリル刃部に隣接して設けられているものであってもよい。
【0016】
この構成によると、マーキング部がドリル刃部と隣接して設けられているため、ドリル刃部に近接した位置でマークを合わせることができ、ドリル刃部の実際の動きを把握しながらマークを合わせる位置を調整することを容易に行うことができる。
【0017】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記マーキング部は、軸状に形成された前記ドリル本体部においてその軸方向に沿って延びる第1の溝として複数本の前記マークがそれぞれ形成されているものであってもよい。
【0018】
この構成によると、軸状に形成されたドリル本体部にその軸方向に沿って延びる第1の溝を複数本設けることで、マーキング部のマークを容易に形成することができる。
【0019】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記マーキング部は、複数本の前記マークにおいて1本のみ他と溝形状が異なっているものであってもよい。
【0020】
この構成によると、複数本のマークのうち1本のみ他と溝形状が異なっているマークを設けたマーキング部とすることで、ドリル本体部をドリル支持部に対して回転させて相対変位させている際に異なる溝形状のマークを確認する毎に1回転の相対変位が行なわれたことを容易に確認することができ、位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0021】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記ドリル本体部には、その軸方向に沿って延びる第1の溝として形成された複数本の前記マークと直交する周方向に沿って延びる第2の溝が軸方向に定間隔で設けられているものであってもよい。
【0022】
この構成によると、ドリル本体部において、軸方向に延びる第1の溝として形成されたマークと直交する周方向に沿って延びる第2の溝が定間隔で設けられているため、ドリル本体部をドリル支持部に対して回転させて相対変位させている際に第2の溝を確認することで、回転数の変化に伴う大きな位置変化を容易に確認でき、位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0023】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記マーキング部は、筒状に形成された前記ドリル支持部においてその周方向に定間隔で前記マークが複数設けられ、前記読取基準部は、軸状に形成された前記ドリル本体部において設けられているものであってもよい。
【0024】
この構成によると、筒状に形成されたドリル支持部の周方向に定間隔でマークが複数設けられ、軸状に形成されたドリル本体部に読取基準部が設けられているため、ドリル本体部をドリル支持部に対して回転させる際にドリル支持部の周方向に設けられたマークのうちの所望のマークを読取基準部に合わせることで、容易に位置調整を行うことができる。また、軸状に形成されたドリル本体部の外側に配置されて筒状に形成されたドリル支持部にマーキング部が設けられるため、複数のマークをより多く形成することができ、1回転あたりに対応するマークの個数を多く設けることができ、これにより、より高精度の位置調整を可能にすることができる。
【0025】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、前記ドリル本体部を前記ドリル支持部に対して固定可能な止め手段をさらに備えているものであってもよい。
【0026】
この構成によると、ドリル本体部をドリル支持部に対して固定可能な止め手段が設けられているため、位置調整が完了した状態で、ドリル本体部をドリル支持部に対して確実に固定することができる。
【0027】
本発明に係る深さ調整用ドリルは、人体における骨、軟骨、及び歯のうちの少なくともいずれかを切削するために用いられるものであってもよい。
【0028】
医療分野において、深さ調整用ドリルを操作者が操作することで歯、骨、軟骨に孔あけ作業が行われる際には、あけられる孔の深さ精度として高精度の深さ精度を実現することが要求されるが、本発明に係る深さ調整用ドリルを用いることで、かかる要求を容易に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においては、人体における軟骨に対して切削をして孔あけ作業を行うために用いられる場合を例にとって説明するが、この例に限らず、医療分野や工業分野において広く適用することができるものである。例えば、医療分野においては、人体における軟骨以外の骨や歯に対して切削をして孔あけ作業を行うために用いることができる。また、工業分野において、深さ調整用ドリルを操作者が操作することで特殊形状等の部材に孔あけ作業が行われる場合などに適用することもできる。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る深さ調整用ドリル1を示す正面図である。この図1に示す深さ調整用ドリル1は、例えば、人体において軟骨に損傷等を受けたときの治療のためその損傷等を受けた部分に培養した軟骨組織を移植する手術を行う場合などに、軟骨に対して切削をして孔あけ作業を行うために用いられる。図1に示すように、この深さ調整用ドリル1は、ドリル本体部11、ドリル支持部12、固定ナット13を備えて構成されている。
【0031】
図2は、深さ調整用ドリル1におけるドリル本体部11を示す正面図である。ドリル本体部11は、軸状に形成されている。そして、ドリル本体部11の先端側には切削加工用のドリル刃部14が設けられている(尚、図2では、ドリル刃の詳細は図示を省略している)。また、ドリル本体部11においては、ドリル刃部14に隣接して配置されるマーキング部15と、マーキング部15にさらに隣接して配置される第1のネジ部16とが設けられている。第1のネジ部16は、ドリル本体部11に対してその外周に設けられた雄ネジ部として形成されている。また、ドリル本体部11におけるドリル刃部14と反対側の端部には、切削加工のための回転動作を付与する図示しない回転駆動機構に取り付けるための取付部17が設けられている。なお、後述するように、軸状に形成されたドリル本体部11は、筒状に形成されたドリル支持部12に対して螺合状態にて支持されるようになっている。
【0032】
図3は、図2のa−a線矢視断面図を示したものである。この図3に示すように、マーキング部15は、ドリル本体部11の軸方向と直交する断面において多角形断面となるように形成されている。そして、この多角形断面の頂点を結ぶ線であってドリル本体部11の軸方向に平行な各稜線が、ドリル本体部11においてその周方向に定間隔で設けられた複数のマーク18を構成している。これにより、ドリル本体部11に設けられたマーキング部15は、ドリル本体部11がドリル支持部12に対して螺合状態にて1回転相対変位するごとに複数のマーク18が対応するように形成されている。尚、図3では、マーク18が10本形成されている場合を例示している。この場合、第1のネジ部26のピッチを1mmとすることで、ドリル本体部11がドリル支持部12に対して螺合状態で1回転するごとに10本のマーク18を読み取ることができ、これにより、ドリル本体部11のドリル支持部12に対する軸方向の変位を0.1mm単位で調整することができる。
【0033】
なお、図3(b)は、マーキング部15の変形例であるマーキング部20を示したものであり、変形例に係るドリル本体部の図3(a)に対応させて示す断面図である。この変形例に係るマーキング部20のように、軸状に形成されたドリル本体部においてその軸方向に沿って延びる溝(本実施形態における「第1の溝」)として複数本のマーク(21、22)がそれぞれ形成されているものであってもよい。そして、図3(b)に示すように、マーキング部20は、複数本のマーク(21、22)において1本のマーク22のみ他のマーク21と溝形状が異なっているものであってもよい。溝形状の異ならせ方としては、図3(b)に示すように相似形のまま大きさを変更するものでも、非相似形とするものでもいずれであってもよい。
【0034】
図4は、ドリル支持部12の一部断面を含む平面図(図4(a))と、そのb−b線矢視断面図(図4(b))とを示したものである。尚、図4(a)は、中心線Lに対する上半側を一部切欠き断面として示している。図4に示すように、ドリル支持部12は、ドリル本体部11に設けられた第1のネジ部16と螺合する第2のネジ部23を有しており、この第2のネジ部23は、ドリル支持部12に対して雌ネジ部として形成されている。そして、ドリル支持部12は、第1のネジ部16と第2のネジ部23とが螺合状態となることでドリル本体部11を支持するようになっており、ドリル本体部11が螺合状態で挿通される筒状に形成されている(図1、図2、図4参照)。
【0035】
また、ドリル支持部12には、このドリル支持部12に挿通されたドリル本体部11に設けられたマーキング部15の一部を外側から看視可能な長孔状の窓部24が形成されている(図1、図4参照)。即ち、窓部24を介してマーク18を確認できるようになっている。尚、本実施形態では、図4(b)に示すように、窓部24が両側方に設けられた例を示しているが、この例に限らず、1つであってもよい。さらに、筒状に形成されたドリル支持部12においては、ドリル本体部11に形成されたマーク18を窓部24を介して読み取る際の基準位置を教示する読取基準部25が設けられている。この読取基準部25は、図1及び図4に示すように、窓部24の縁部分の2箇所において刻設されたラインとして設けられている。この読取基準部25のラインとマーク18とを一直線状に並ぶように対応させることで、前述したように、例えば0.1mm単位でドリル本体部11のドリル支持部12に対する位置を調整することができる。尚、読取基準部25については、このような刻設されたラインに限らず、マーク18の読取のための基準位置を教示するものであればよく、形態を適宜変更して実施することができる。
【0036】
図5は、固定ナット13の一部断面を含む平面図(図5(a))と、図5(a)におけるb線矢視方向から見た側面図(図5(b))とを示したものである。尚、図5(a)は、中心線Lに対する下半側を断面として示したものである。この図5に示すように、固定ナット13には、ドリル本体部11における第1のネジ部16と螺合する雌ネジ部として形成された第3のネジ部26が設けられている。即ち、ドリル本体部11における第1のネジ部16は、ドリル支持部12における第2のネジ部23と螺合するとともに固定ナット13における第3のネジ部26とも螺合するようになっており、深さ調整用ドリル1においてダブルナット機構が実現されるようになっている。この固定ナット13によって、ドリル本体部11をドリル支持部12に対して固定可能な本実施形態の止め手段が構成されることになる。
【0037】
次に、本実施形態に係る深さ調整用ドリル1の作動について説明する。深さ調整用ドリル1は、前述したように、人体において軟骨に損傷等を受けたときの治療のためその損傷等を受けた軟骨部分に培養した軟骨組織を移植する手術(軟骨移植術)を行う場合などに、軟骨に対して切削をして孔あけ作業を行うために用いられる。
【0038】
上述の軟骨移植術が行われる場合、術者は、まず、ドリル本体部11をそのドリル刃部14の先端側からドリル支持部12に挿通させていき、第1のネジ部16と第2のネジ部23とを螺合させながら、ドリル刃部14をドリル支持部12の先端側から突出させる。そして、ノギス等の簡易な測定手段を用いて、ドリル刃部14のドリル支持部12の先端の端部27からの突出量X1(図1参照)が所望寸法付近の寸法となるように粗調整を行う。次いで、術者は、ドリル支持部12の窓部24からマーク18を看視しながら、前述のように0.1mm単位で突出量X1を調整する。このように、ドリル刃部14のドリル支持部12の先端からの突出量X1が所望の寸法となるように、ドリル本体部11のドリル支持部12に対する位置調整を行う。
【0039】
上述した位置調整が完了すると、術者は、固定ナット13をドリル本体部11の取付部17側から挿入して第3のネジ部26を第1のネジ部16に螺合させていき、ダブルナットの状態でドリル本体部11をドリル支持部12に対して固定する。こうして、図1に示す深さ調整用ドリル1の組み立てが完了すると、図示しない回転駆動機構に対して深さ調整用ドリル1を取付部17にて取り付けて固定する。これにより、軟骨移植術の対象の軟骨に対して孔あけ作業が開始できる状態になる。
【0040】
上述の状態になると、術者は、前述の回転駆動機構を手動で操作しながら軟骨移植術の対象の軟骨とその下層に位置する海綿骨に対して孔あけ作業を開始する。このとき、ドリル刃部14は、軟骨や海綿骨を切削しながらこの軟骨内に挿入されていくが、ドリル支持部12の先端の端部27がストッパとして機能して軟骨と当接するため、それ以上の深さにはドリル刃部14が軟骨内に挿入されないことになる。これにより、前述した突出量X1に対応した孔深さの孔が軟骨移植術の対象の軟骨等に対してあけられることになる。尚、ドリル刃部14による切削ストロークを規制する上述したようなストッパ機能は、ドリル支持部12の先端の端部27以外によって適宜実現させるものであってもよい。
【0041】
図6は、上述のように軟骨への孔あけ作業が終了した状態から培養した軟骨組織を移植する様子を断面で説明する模式図である。尚、図6においては、軟骨移植術の対象領域の断面を部分的に示している。図6(a)に示すように、軟骨移植術の対象領域には、軟骨28の層と海綿骨29の層とがあり、これらの層に対して、前述したように、深さ調整用ドリル1を用いて孔30が形成されている。この孔30に対して、培養した軟骨組織である培養軟骨31の層をリン酸カルシウム32の層に付着させたものである移植組織(図6(a)参照)を図6(b)に示すように埋入して移植する。尚、培養軟骨31については、国際公開番号WO2005/011765A1の国際公開公報に開示された人工関節の作成方法等の公知の方法によって作成することができる。このとき、培養軟骨31とリン酸カルシウム32とからなる移植組織の高さ寸法X2と合うように、孔30の孔深さ寸法X3があけられていることが望ましい。深さ調整用ドリル1を用いて孔30をあける場合は、移植組織の高さ寸法X2に合わせて前述の突出量X1を高精度で調整でき、これにより、移植組織の高さ寸法X2に合った深さ寸法X3の孔30をあけることができる。このように深さ寸法X3が移植組織の高さ寸法X2に合っていることで、軟骨移植術の終了後に軟骨組織や海綿骨組織が再生して修復すると、図6(c)に示すように、表面に凹み部分がほとんどない状態に修復されることになる。
【0042】
図7は、軟骨28及び海綿骨29の層に対してあけられた孔33の深さ寸法X4(図7(a)参照)が深すぎて移植組織の高さ寸法X2に合っていない場合を図6の場合との比較のために示したものである。このように、孔深さが深すぎるような穴33に移植組織を埋入すると、図7(b)に示すように、移植組織の上部側に段状の凹みができてしまうことになる。このため、軟骨移植術の終了後に軟骨組織等が再生して修復したときに、図7(c)に示すように、表面に凹み部分34が生じてしまい、滑らかな動きを可能にする軟骨の修復が困難になるという問題が生じることになる。本実施形態の深さ調整用ドリル1を用いて孔あけ作業を行うことで、図7に示すような問題の発生を防止することができる。
【0043】
以上説明した深さ調整用ドリル1によると、第1のネジ部16と第2のネジ部23が螺合することで、ドリル刃部14を有するドリル本体部11がドリル支持部12に支持される。そして、ドリル本体部11には、1回転相対変位するごとに複数のマーク18が対応するマーキング部15が設けられ、ドリル支持部12にはそのマーク18を読み取る際の読取基準部25が設けられている。このため、所望のマーク18を読取基準部25に合わせることで、ドリル本体部11とドリル支持部12との位置関係を調整するに際し、それらの1回転あたりの相対変位において複数の位置に調整することができる。即ち、ドリル本体部11とドリル支持部12とが1回転の相対変位を行うことによって発生する短い直線的なストロークの変化分をさらに複数の位置に分割して容易に調整することができ、1回転の回転ストロークを複数の直接ストロークに容易且つ正確に分割して位置調整することができる。これにより、ドリル本体部11のドリル支持部12に対する取付位置を高精度に調整することができ、かかる調整が行われた深さ調整用ドリル1で孔あけ作業が行われることにより、孔深さを高精度に調整することができる。また、ドリル本体部11に対してマーキング部15を、ドリル支持部12に対して読取基準部25を設けるという簡易な機構により、高精度な孔あけ作業を実現することができる。
【0044】
従って、深さ調整用ドリル1によると、ドリル刃を回転させて切削等をすることにより孔あけを行う作業が操作者の操作に基づいて行われるドリルに関し、ドリル刃によりあける孔深さを高精度に調整することができ、且つその調整が容易な深さ調整用ドリルを提供することができる。
【0045】
また、深さ調整用ドリル1によると、雄ネジ部が形成されたドリル本体部11を雌ネジ部が形成されたドリル支持部12に螺合することで、ドリル本体部11をドリル支持部12に安定して容易に支持させることができる。
【0046】
また、深さ調整用ドリル1によると、軸状に形成されたドリル本体部11の周方向に定間隔でマーク18が複数設けられ、筒状に形成されたドリル支持部12に読取基準部25が設けられているため、ドリル本体部11をドリル支持部12に対して回転させる際にドリル本体部11の周方向に設けられたマーク18のうちの所望のマーク18を読取基準部25に合わせることで、容易に位置調整を行うことができる。
【0047】
また、深さ調整用ドリル1によると、ドリル本体部11に設けられたマーキング部15の少なくとも一部を看視可能な窓部24がドリル支持部12に形成されているため、窓部24から看視しながらマーク18を読取基準部25に合わせるように位置調整することができる。
【0048】
また、深さ調整用ドリル1によると、マーキング部15がドリル刃部14と隣接して設けられているため、ドリル刃部に近接した位置でマークを合わせることができ、ドリル刃部14の実際の動きを把握しながらマーク18を合わせる位置を調整することを容易に行うことができる。
【0049】
また、図3(b)にて変形例として説明したように、マーキング部20が設けられた深さ調整用ドリルによると、軸状に形成されたドリル本体部にその軸方向に沿って延びる第1の溝を複数本設けることで、マーキング部20のマーク(21、22)を容易に形成することができる。そして、この変形例にかかる深さ調整用ドリルによると、複数本のマーク(21、22)のうち1本のマーク22のみ他のマーク21と溝形状が異なっているマーク(21、22)を設けたマーキング部20とすることで、ドリル本体部をドリル支持部に対して回転させて相対変位させている際に異なる溝形状のマーク22を確認する毎に1回転の相対変位が行なわれたことを容易に確認することができ、位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0050】
また、深さ調整用ドリル1によると、ドリル本体部11をドリル支持部12に対して固定可能な止め手段である固定ナット13が設けられているため、位置調整が完了した状態で、ドリル本体部11をドリル支持部12に対して確実に固定することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係る深さ調整用ドリル2を示したものである。この深さ調整用ドリル2は、第1実施形態の深さ調整用ドリル1と同様に、軟骨等に対する孔あけ作業において用いられ、ドリル本体部11a、ドリル支持部12a、固定ナット13aを備えて構成されている。尚、図8(a)は深さ調整用ドリル2の正面図であり、図8(b)はドリル本体部11aの正面図である。
【0052】
ドリル本体部11aには、第1実施形態のドリル本体部11と同様に、ドリル刃部14a、複数本のマーク18が形成されたマーキング部15a、第1のネジ部16a、取付部17aが設けられている。しかし、ドリル本体部11aは、ドリル本体部11とは異なり、軸方向に沿って延びる第1の溝として形成された複数本のマーク18と直交する周方向に沿って延びる第2の溝35が軸方向に定間隔で複数設けられている。例えば、第1のネジ部16aのピッチが1mmでマーク18が10本設けられているような場合に、第2の溝35が1mm間隔で設けられていれば、ドリル本体部11aがドリル支持部12aに対して10回転するごとに第2の溝35で1目盛分(1mm分)だけドリル本体部11aがドリル支持部12aに対して軸方向に変位することになる。また、ドリル支持部12aには、第1実施形態と同様の読取基準部25a及び窓部24aに加え、第2の溝35を読み取る際の基準位置となる目印36が設けられている。この目印36の位置で第2の溝35を確認することで、ドリル本体部11aのドリル支持部12aに対する大きな変位を把握し易くなる。
【0053】
このように、深さ調整用ドリル2によると、ドリル本体部11aにおいて、軸方向に延びる第1の溝として形成されたマーク18aと直交する周方向に沿って延びる第2の溝35が定間隔で設けられているため、ドリル本体部11aをドリル支持部12aに対して回転させて相対変位させている際に第2の溝35を確認することで、回転数の変化に伴う大きな位置変化を容易に確認でき、位置調整をさらに容易に行うことができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図9は、第3実施形態に係る深さ調整用ドリル3を示したものである。この深さ調整用ドリル3は、第1実施形態の深さ調整用ドリル1と同様に、軟骨等に対する孔あけ作業において用いられ、ドリル本体部11b、ドリル支持部12b、固定ナット13bを備えて構成されている。尚、図9(a)は深さ調整用ドリル3の正面図であり、図9(b)はドリル本体部11bの正面図であり、図9(c)は中心線Lの上半側を一部切欠き断面で示したドリル支持部12bの正面図である。
【0055】
ドリル本体部11bには、第1実施形態のドリル本体部11と同様に、ドリル刃部14b、複数本のマーク18bが形成されたマーキング部15b、第1のネジ部16b、取付部17bが設けられている。しかし、ドリル本体部11bは、ドリル本体部11とは異なり、マーキング部15bではなく第1のネジ部16bがドリル刃部14bに隣接している。そして、ドリル本体部11bには、固定ナット13bに設けられた図示しない第3のネジ部と螺合する第4のネジ部37が、マーキング部15bと取付部17bとの間に配設されている。ドリル支持部12bは、第1実施形態と同様の第2のネジ部23b、窓部24b、読取基準部25bが設けられているが、ドリル本体部11bにおける上述したような第1のネジ部16b及びマーキング部15bの位置構成に対応した位置に、第2のネジ部23bと窓部24bと読取基準部25bとが設けられる構成になっている。このようにマーキング部15b等の位置を変更した深さ調整用ドリル3においても、第1実施形態の場合と同様に、ドリル刃によりあける孔深さを高精度に調整することができ、且つその調整が容易な深さ調整用ドリルを提供することができる。
【0056】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図10は、第4実施形態に係る深さ調整用ドリル4を示したものである。この深さ調整用ドリル4は、第1実施形態の深さ調整用ドリル1と同様に、軟骨等に対する孔あけ作業において用いられ、ドリル本体部11c、ドリル支持部12c、固定ナット13cを備えて構成されている。尚、図10(a)は深さ調整用ドリル4の正面図であり、図10(b)はドリル本体部11cの正面図であり、図10(c)は中心線Lの上半側を一部切欠き断面で示したドリル支持部12cの正面図である。
【0057】
ドリル本体部11cには、第3実施形態のドリル本体部11bと同様に、ドリル刃部14c、第1のネジ部16c、第4のネジ部37c、取付部17bが設けられている。しかし、軸状に形成されたドリル本体部11cは、ドリル本体部11bとは異なり、読取基準部25cが設けられている。一方、ドリル支持部12cは、第3実施形態と同様の第2のネジ部23cが設けられているが、窓部は設けられておらず、このドリル支持部12cの端部にマーキング部15cが設けられている。このマーキング部15cには、筒状に形成されたドリル支持部12cにおいてその周方向に定間隔で複数本設けられたマーク18cが形成されている。この深さ調整用ドリル4においては、ドリル本体部11cに設けられた読取基準部25cに対してドリル支持部12cに設けられたマーキング部15cのうちの所望のマーク18cを合わせることで一調整を行い、その後に固定ナット13cにおける第3のネジ部をドリル本体部11cにおける第4のネジ部37cと螺合させてダブルナット状態で固定する。
【0058】
このように、筒状に形成されたドリル支持部12cの周方向に定間隔でマーク18cが複数設けられ、軸状に形成されたドリル本体部11cに読取基準部25cが設けられているため、ドリル本体部11cをドリル支持部12cに対して回転させる際にドリル支持部12cの周方向に設けられたマーク18cのうちの所望のマーク18cを読取基準部25cに合わせることで、容易に位置調整を行うことができる。また、軸状に形成されたドリル本体部11cの外側に配置されて筒状に形成されたドリル支持部12cにマーキング部15cが設けられるため、複数のマーク18cをより多く形成することができ、1回転あたりに対応するマーク18cの個数を多く設けることができ、これにより、より高精度の位置調整を可能にすることができる。
【0059】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図11乃至図14は、第5実施形態に係る深さ調整用ドリル5を示したものである。この深さ調整用ドリル5は、第1実施形態の深さ調整用ドリル1と同様に、軟骨等に対する孔あけ作業において用いられ、ドリル本体部11d、ドリル支持部12d、固定ナットdを備えて構成されている。尚、図11は、深さ調整用ドリル5の正面図である。また、図12は、中心線Lの上半側を一部切欠き断面で示したドリル支持部12dの正面図(図12(a))、図12(a)のb線矢視側面図(図12(b))、及び固定ナット13dの正面図(図12(c))である。また、図13はドリル本体部11dの正面図であり、図14は図13のa−a線矢視断面図(図14(a))及び図13のb−b線矢視断面図(図14(b))である。
【0060】
図12(a)に示すように、ドリル支持部12dには、第3実施形態のドリル支持部12bと同様に、第2のネジ部23d、窓部24d、読取基準部25dが設けられている。しかし、ドリル支持部12dは、ドリル支持部12bとは異なり、第2のネジ部23dが設けられている側とは反対側の端部に第5のネジ部38が設けられている。雄ネジ部として形成されているこの第5のネジ部38は、図12(a)及び(b)に示すように、周方向均等位置の4箇所に形成された各スリット部39が設けられたテーパネジとして設けられている。そして、ドリル支持部12dにおける第5のネジ部38が設けられている部分の内周側には、複数の小突起部40が設けられている。(図12(b)では小突起部40が2個設けられている場合を例示している。また、図12(c)に示す固定ナット13dは、図示しない第3のネジ部が雌ネジ部として形成されたテーパネジとして設けられている。
【0061】
図13に示すように、ドリル本体部11dは、第3実施形態のドリル本体部11bと同様に、ドリル刃部14d、第1のネジ部16d、マーキング部20d、取付部17dが設けられている。しかし、ドリル本体部11dは、ドリル本体部11bとは異なり、第1実施形態における図3(b)の変形例と同様のマーキング部20dが設けられている。即ち、図14(b)に示すように、ドリル本体部11dの軸方向に沿って延びる第1の溝として形成された複数本のマーク(21d、22d)が設けられ、1本のマーク22のみ他と溝形状が異なっている。また、ドリル本体部11dには、マーキング部20dと取付部17dとの間に配設され、ドリル本体部11dの内周側に設けられた小突起部部40が押し付けられる押付面部41が設けられている。この押付面部41は、図14(a)に示すように、ドリル本体部11dの軸方向と直交する断面が多角形断面となるように形成されている。ドリル支持部12dにドリル本体部11dを挿通して螺合状態として位置調整を行った後、固定ナット13dにおける第3のネジ部をドリル支持部12dにおける第5のネジ部38に螺合させることで、第5のネジ部38が内側に撓み、さらに、小突起部部40がドリル本体部11dの押圧面部41と当接することで、ドリル本体部11dがドリル支持部12dに固定されることになる。即ち、深さ調整用ドリル5では、固定ナット13d、第5のネジ部38、小突起部40、押圧面部41によって、本実施形態の止め手段が構成されている。
【0062】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図15は、第6実施形態に係る深さ調整用ドリル6を示したものである。この深さ調整用ドリル6は、第1実施形態の深さ調整用ドリル1と同様に、軟骨等に対する孔あけ作業において用いられ、ドリル本体部11e、ドリル支持部12eを備えて構成されている。しかし、深さ調整用ドリル6においては、固定ナットは備えられていない。尚、図15(a)は中心線Lの上半側を一部切欠き断面で示したドリル支持部12eの正面図であり、図15(b)はドリル本体部11eの正面図である。
【0063】
図15(a)に示すように、ドリル支持部12eには、第3実施形態のドリル支持部12bと同様に、第2のネジ部23e、窓部24e、読取基準部25eが設けられている。しかし、ドリル支持部12eは、ドリル支持部12bとは異なり、固定レバー42が設けられている。この固定レバー42は、ドリル支持部12eの筒状の本体部分に対して、一方の端部45にて回動自在にヒンジ止めされている。図16は、固定レバー42における端部45の近傍を拡大して示したものである(尚、図16では、ドリル支持部12eの本体部分における回動支持部の図示は省略している)。この図16に示すように、固定レバー42の端部45には、その端部側に配置されて曲率半径R1の小さい小R部43と、小R部43に連続するとともに端部45におけるレバー軸46側に配置されて曲率半径R2の大きい大R部44とが形成されている(即ち、R1<R2の関係が成立している)。固定レバー42の端部45をこのような形状構成にすることで、図15(a)及び図16に示す状態まで固定レバー42を回動操作すると、大R部44にてドリル支持部12eの本体部分の壁部が強く押圧されるようになっている。
【0064】
ドリル本体部11eは、図15(b)に示すように、第3実施形態のドリル本体部11bと同様に、ドリル刃部14e、第1のネジ部16e、複数本のマークが軸方向に沿って延びるように形成されたマーキング部15e、取付部17eが設けられている。尚、ドリル本体部11eは、ドリル本体部11bとは異なり、第4のネジ部は設けられていない。このドリル本体部11eをドリル支持部12eに挿通して螺合状態として位置調整を行った後、図15(a)に示す状態まで固定レバー42を回動操作すると、前述のように大R部44にてドリル支持部12eの本体部分の壁部が強く押され、これにより、第1のネジ部16eと第2のネジ部23eとの接触領域がかしめられた状態になり、ドリル本体部11eがドリル支持部12eに対して固定されることになる。即ち、深さ調整用ドリル6では、固定レバー42が止め手段を構成しており、簡易な構成で止め手段を実現することができる。
【0065】
以上、本発明の第1乃至第6実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、医療分野や工業分野において広く適用することができ、例えば、医療分野においては、人体における軟骨、骨、歯に対して切削をして孔あけ作業を行うために用いることができ、また、工業分野においては、深さ調整用ドリルを操作者が操作することで特殊形状等の部材に孔あけ作業が行われる場合などに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図2】図1に示す深さ調整用ドリルにおけるドリル本体部を示す正面図である。
【図3】図2のa−a線矢視断面図である。
【図4】図1に示す深さ調整用ドリルにおけるドリル支持部の一部断面を含む平面図と、そのb−b線矢視断面図とを示したものである。
【図5】図1に示す深さ調整用ドリルにおける固定ナットの一部断面を含む平面図とその平面図におけるb線矢視方向から見た側面図とを示したものである。
【図6】軟骨への孔あけ作業が終了した状態から培養した軟骨組織を移植する様子を断面で説明する模式図である。
【図7】軟骨への孔あけ作業が終了した状態から培養した軟骨組織を移植する様子を断面で説明する模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図12】図11に示す深さ調整用ドリルにおけるドリル支持部12の正面図とその正面図のb線矢視側面図と固定ナットの正面図とを示したものである。
【図13】図11に示す深さ調整用ドリルにおけるドリル本体部の正面図である。
【図14】図13のa−a線矢視断面図及び図13のb−b線矢視断面図である。
【図15】本発明の第6実施形態に係る深さ調整用ドリルを示す正面図である。
【図16】図15に示す深さ調整用ドリルにおける固定レバーの端部の近傍を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 深さ調整用ドリル
11 ドリル本体部
12 ドリル支持部
13 固定ナット(止め手段)
14 ドリル刃部
15 マーキング部
16 第1のネジ部
18 マーク
23 第2のネジ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に設けられたドリル刃部と、第1のネジ部と、を有するドリル本体部と、
前記第1のネジ部に螺合する第2のネジ部を有し、当該第1のネジ部と当該第2のネジ部とが螺合状態となることで前記ドリル本体部を支持するドリル支持部と、
を備え、
前記ドリル本体部及び前記ドリル支持部は、そのいずれか一方に、当該ドリル本体部が当該ドリル支持部に対して前記螺合状態にて1回転相対変位するごとに複数のマークが対応するように形成されたマーキング部が設けられ、その他方に、前記マークを読み取る際の基準位置を教示する読取基準部が設けられていることを特徴とする、深さ調整用ドリル。
【請求項2】
前記ドリル本体部は、軸状に形成され、
前記ドリル支持部は、前記ドリル本体部が前記螺合状態で挿通される筒状に形成され、
前記第1のネジ部は、前記ドリル本体部に対して雄ネジ部として形成され、
前記第2のネジ部は、前記ドリル支持部に対して雌ネジ部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項3】
前記マーキング部は、軸状に形成された前記ドリル本体部においてその周方向に定間隔で前記マークが複数設けられ、前記読取基準部は、筒状に形成された前記ドリル支持部において設けられていることを特徴とする請求項2に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項4】
前記ドリル支持部には、当該ドリル支持部に挿通された前記ドリル本体部に設けられた前記マーキング部の少なくとも一部を看視可能な窓部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項5】
前記ドリル本体部において、前記マーキング部が前記ドリル刃部に隣接して設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項6】
前記マーキング部は、軸状に形成された前記ドリル本体部においてその軸方向に沿って延びる第1の溝として複数本の前記マークがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項7】
前記マーキング部は、複数本の前記マークにおいて1本のみ他と溝形状が異なっていることを特徴とする請求項6に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項8】
前記ドリル本体部には、その軸方向に沿って延びる第1の溝として形成された複数本の前記マークと直交する周方向に沿って延びる第2の溝が軸方向に定間隔で設けられていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項9】
前記マーキング部は、筒状に形成された前記ドリル支持部においてその周方向に定間隔で前記マークが複数設けられ、前記読取基準部は、軸状に形成された前記ドリル本体部において設けられていることを特徴とする請求項2に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項10】
前記ドリル本体部を前記ドリル支持部に対して固定可能な止め手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項11】
人体における骨、軟骨、及び歯のうちの少なくともいずれかを切削するために用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項1】
先端側に設けられたドリル刃部と、第1のネジ部と、を有するドリル本体部と、
前記第1のネジ部に螺合する第2のネジ部を有し、当該第1のネジ部と当該第2のネジ部とが螺合状態となることで前記ドリル本体部を支持するドリル支持部と、
を備え、
前記ドリル本体部及び前記ドリル支持部は、そのいずれか一方に、当該ドリル本体部が当該ドリル支持部に対して前記螺合状態にて1回転相対変位するごとに複数のマークが対応するように形成されたマーキング部が設けられ、その他方に、前記マークを読み取る際の基準位置を教示する読取基準部が設けられていることを特徴とする、深さ調整用ドリル。
【請求項2】
前記ドリル本体部は、軸状に形成され、
前記ドリル支持部は、前記ドリル本体部が前記螺合状態で挿通される筒状に形成され、
前記第1のネジ部は、前記ドリル本体部に対して雄ネジ部として形成され、
前記第2のネジ部は、前記ドリル支持部に対して雌ネジ部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項3】
前記マーキング部は、軸状に形成された前記ドリル本体部においてその周方向に定間隔で前記マークが複数設けられ、前記読取基準部は、筒状に形成された前記ドリル支持部において設けられていることを特徴とする請求項2に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項4】
前記ドリル支持部には、当該ドリル支持部に挿通された前記ドリル本体部に設けられた前記マーキング部の少なくとも一部を看視可能な窓部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項5】
前記ドリル本体部において、前記マーキング部が前記ドリル刃部に隣接して設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項6】
前記マーキング部は、軸状に形成された前記ドリル本体部においてその軸方向に沿って延びる第1の溝として複数本の前記マークがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項7】
前記マーキング部は、複数本の前記マークにおいて1本のみ他と溝形状が異なっていることを特徴とする請求項6に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項8】
前記ドリル本体部には、その軸方向に沿って延びる第1の溝として形成された複数本の前記マークと直交する周方向に沿って延びる第2の溝が軸方向に定間隔で設けられていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項9】
前記マーキング部は、筒状に形成された前記ドリル支持部においてその周方向に定間隔で前記マークが複数設けられ、前記読取基準部は、軸状に形成された前記ドリル本体部において設けられていることを特徴とする請求項2に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項10】
前記ドリル本体部を前記ドリル支持部に対して固定可能な止め手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の、深さ調整用ドリル。
【請求項11】
人体における骨、軟骨、及び歯のうちの少なくともいずれかを切削するために用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の、深さ調整用ドリル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−207276(P2008−207276A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45972(P2007−45972)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】
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