説明

深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物の除去方法

【課題】深冷分離設備を運転しながら、深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物を除去する方法を提供する。
【解決手段】熱交換器2と、気液分離槽3,4と、複数の流路5,6,7,8,9,10,11,12,13と、該流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入するための流路15とを具える深冷分離設備を用い、NOx含有ガスを深冷分離設備1の熱交換器2に導入して冷却し、気液分離槽3,4でガス分と液分に分離して深冷分離設備1を運転しながら、前記流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入して、深冷分離設備1内に蓄積したNOx化合物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物の除去方法に関し、特に深冷分離設備を運転しながら、深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物を除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、石油分解ガスやコークス炉ガスは、極微量のNOxを含有している。そのため、これら石油分解ガスやコークス炉ガス等の原料ガスを、深冷分離設備を用いて冷却し、気液分離操作を行う装置においては、原料ガス中に存在する極微量のNOxが深冷分離設備の熱交換器(冷却器)および配管類で凝縮し、共存する酸素、及び炭化水素、特にジエン類と反応して、爆発性のNOx化合物が生成することが知られている(非特許文献1及び2参照)。
【0003】
そして、この爆発性のNOx化合物は、深冷分離設備のプロセス流路において徐々に蓄積し、相当量以上のNOx化合物が蓄積した場合には、熱衝撃・打撃・振動等の衝撃により分解して爆発を引き起こすことになる。
【0004】
このため、深冷分離設備のプロセス流路でNOx化合物が蓄積した場合には、深冷分離設備の運転、更には深冷分離設備を含むプロセス全体の運転を一時停止し、アルカリ水溶液、メタノール等の極性溶媒を用いて、深冷分離設備の熱交換器(冷却器)および配管類を洗浄し、NOx化合物を除去する必要がある。
【0005】
【非特許文献1】長谷場慈、外2名,「深冷ガス分離装置における酸化窒素の危険性」,安全工学,Vol.8,No.1,p.22−29(1969)
【非特許文献2】W. H. Henstock, "NOx in the Cryogenic Hydrogen Recovery Section of an Olefins Production Unit", Plant/Operations Progress, vol.5, No,4, p232-237 (1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、深冷分離設備のプロセス流路に蓄積したNOx化合物の除去を行う場合、深冷分離設備、更には該深冷分離設備を含む装置全体を一時停止する必要がある。しかしながら、通常、1年以上の連続運転を行うことが前提である石油精製や石油化学などの装置産業にとって、装置の運転停止は大きな損失に繋がるという問題がある。そのため、深冷分離設備に蓄積した爆発性のNOx化合物の除去に関し、装置の運転を停止することなく、効率よく除去する方法が求められている。
【0007】
このような状況下、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、深冷分離設備を運転しながら、深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物を除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、接触分解装置(FCC装置)から副生するエチレンおよびプロピレンなどのオレフィン類を含有する軽質オフガス(FCCオフガス)等を、深冷分離設備を用いて冷却し、オレフィン類等を濃縮する装置において、深冷分離設備の熱交換器(冷却器)のプロセス流路の上流側および下流側の配管にメタノール等の極性溶剤の注入口および排出口を設け、更に、極性溶剤貯槽および注入ポンプからなる注入設備を深冷分離設備に配設し、この注入設備を用いて注入量を制御しながら、極性溶剤を連続的あるいは間欠的に注入し且つ排出口より排出することで、装置を停止することなく、深冷分離設備に蓄積した爆発性のNOx化合物を除去できることを見出し、この知見を基に本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明のNOx化合物の除去方法は、熱交換器と、気液分離槽と、複数の流路と、該流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入するための流路とを具える深冷分離設備を用い、
NOx含有ガスを深冷分離設備の熱交換器に導入して冷却し、気液分離槽でガス分と液分に分離して深冷分離設備を運転しながら、前記流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入して、深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物を除去することを特徴とする。
【0010】
本発明のNOx化合物の除去方法の第一の好適例においては、熱交換器と、気液分離槽と、熱交換器と気液分離槽とを連結する流路と、NOx含有ガスを熱交換器に導入するための流路と、NOx含有ガスを熱交換器に導入するための流路に極性溶剤を注入するための流路とを具える深冷分離設備を用い、
NOx含有ガスを深冷分離設備の熱交換器に導入して冷却し、気液分離槽でガス分と液分に分離して深冷分離設備を運転しながら、NOx含有ガスを熱交換器に導入するための流路に極性溶剤を注入して、深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物を除去する。
【0011】
本発明のNOx化合物の除去方法の第二の好適例においては、熱交換器と、第一気液分離槽と、第二気液分離槽と、NOx含有ガスを熱交換器に導入するための流路と、熱交換器で冷却されたNOx含有ガスを第一気液分離槽に送るための流路と、第一気液分離槽で分離されたガス分を熱交換器に再度導入するための流路と、熱交換器で再度冷却されたガス分を第二気液分離槽に送るための流路と、第一気液分離槽で分離されたガス分を熱交換器に再度導入するための流路と熱交換器で再度冷却されたガス分を第二気液分離槽に送るための流路とを連結するバイパスラインと、前記流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入するための流路とを具える深冷分離設備を用い、
NOx含有ガスを深冷分離設備の熱交換器に導入して冷却し、第一気液分離槽でガス分と液分に分離し、バイパスラインを通じて第一気液分離槽で分離されたガス分の少なくとも一部を熱交換器を介さずに第二気液分離槽に送って熱交換器の温度をコントロールし、第二気液分離槽でガス分と液分に分離して深冷分離設備を運転しながら、前記流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入して、深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物を除去する。
【0012】
本発明のNOx化合物の除去方法の他の好適例においては、前記NOxを含むガスが、石油分解ガス又はコークス炉ガスである。
【0013】
本発明のNOx化合物の除去方法の他の好適例においては、前記極性溶剤が、希アルカリ液、アルコール類及びケトン類からなる群から選択される少なくとも一種である。ここで、前記極性溶剤としては、取り扱い容易性の観点から、メタノールが特に好ましい。また、該メタノールの濃度は、通常メタノールに含有される水分が深冷分離設備の熱交換器で固化するのを避ける観点から、99.5質量%以上であることが好ましい。
【0014】
本発明のNOx化合物の除去方法の他の好適例においては、前記極性溶剤の注入を、0.5〜1時間の間隔をおいて間欠的に行う。この場合、NOx化合物の除去効果を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の運転を停止することなく、深冷分離設備のプロセス流路に蓄積した爆発性のNOx化合物を除去することが可能となるため、設備の運転停止及び運転開始に要する時間と手間並びに熱エネルギーのロスを削減でき、ひいては運転費の削減を図ることができる。
【0016】
また、深冷分離設備に極性溶剤の注入設備を設けることで、NOx化合物の洗浄除去を短時間で実施することが可能となる。そのため、NOx化合物が短時間で蓄積した場合などの緊急時にも、迅速な対応をとることが可能となる。
【0017】
更に、配管などを開放することなく密閉した状態で極性溶剤の注入が可能であるため、天候に左右されずに極性溶剤による洗浄が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図を参照しながら、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明のNOx化合物の除去方法の実施に利用できる深冷分離設備の一例の概略図である。図1に示す深冷分離設備1は、熱交換器(冷却器)2と、第一気液分離槽3と、第二気液分離槽4とを具える。なお、図1に示す深冷分離設備1は、熱交換器を一つ、気液分離槽を二つ具えるが、本発明のNOx化合物の除去方法を適用する深冷分離設備の熱交換器及び気液分離槽の数は、これに限られるものではない。
【0019】
また、図1に示す深冷分離設備1は、NOx含有ガスを熱交換器2に導入するための流路5と、熱交換器2で冷却されたNOx含有ガスを第一気液分離槽3に送るための流路6と、第一気液分離槽3で気液分離された液分を熱交換器2に送るための流路7と、第一気液分離槽3で気液分離されたガス分を熱交換器2に再度導入するための流路8と、熱交換器2で再度冷却されたガス分を第二気液分離槽4に送るための流路9と、第二気液分離槽4で気液分離されたガス分を深冷分離設備1の外部に排出するための流路10と、第二気液分離槽4で気液分離された液分を熱交換器2に送るための流路11と、熱交換器2に冷熱を供給し常温となった気体を深冷分離設備1の外部に排出すための流路12,13とを具える。
【0020】
図1に示す深冷分離設備1においては、原料のNOx含有ガスを流路5を通じて熱交換器2に導入し、熱交換器2においてNOx含有ガスを冷却する。ここで、冷却温度は、目的に応じて適宜設定され、例えば、−10〜−65℃の範囲が好ましい。
【0021】
なお、本発明の方法で用いる原料のNOx含有ガスとしては、NOxを含有する石油分解ガス及びコークス炉ガスが好ましい。石油分解ガスとしては、例えば、FCC装置のオフガス、スチームリフォーミング法、部分酸化法による水素製造設備の熱分解ガス、及びビスブレーキング法、コーキング法による熱分解ガスなどがあげられる。ここで、深冷分離設備1に導入するNOx含有ガスの量は、深冷分離設備1の規模に応じて変化し、特に限定されるものではないが、一例として、処理能力が10,000Nm3/Hr程度の場合は、5,000Nm3/Hr〜11,000Nm3/Hrの範囲が好ましい。
【0022】
熱交換器2で冷却されたNOx含有ガスは、流路6を通じて第一気液分離槽3に送られ、第一気液分離槽3において、ガス分と液分に分離される。
【0023】
第一気液分離槽3で気液分離された液分は、流路7を通じて熱交換器2に送られ、原料のNOx含有ガスへ冷熱を供給することで、常温まで戻され、気体となる。
【0024】
一方、第一気液分離槽3で気液分離されたガス分は、流路8を通じて熱交換器2に再度導入され、熱交換器2において更に冷却される。ここで、冷却温度は、目的に応じて適宜設定され、例えば、−65〜−130℃の範囲が好ましい。
【0025】
熱交換器2で再度冷却されたガス分は、流路9を通じて第二気液分離槽4に送られ、第二気液分離槽4において、ガス分と液分に再度分離される。
【0026】
第二気液分離槽4で気液分離されたガス分は、通常、メタン、窒素、水素等を含み、流路10を通じて深冷分離設備1の外部に排出される。
【0027】
一方、第二気液分離槽4で気液分離された液分は、減圧され冷媒として流路11を通じて熱交換器2に送られ、常温まで戻され、気体となる。該気体は、流路7、熱交換器2及び流路12を通じて流れる気体と合流し、流路13を通じて深冷分離設備1の外部に排出される。ここで、深冷分離設備1の外部に排出される気体は、エチレン、プロピレン、プロパン等を含み、例えば、図1中の槽14を経て、後段の精留装置に送られ、各成分に分離される。
【0028】
図1に示す深冷分離設備1においては、NOx含有ガスを熱交換器2に導入するための流路5に、極性溶剤を注入するための別の流路15が連結されている。また、流路15には、ブロー用の更に別の流路16が連結されており、ブローにより極性溶剤の注入を補助することができる。
【0029】
ここで、図1中の極性溶剤貯槽17に貯蔵されている極性溶剤を、注入ポンプ18により流路15を通じて流路5に注入することで、NOx含有ガスに極性溶剤を添加することができる。なお、極性溶剤貯槽17は、極性溶剤を乾燥状態に保つために、純度99.99体積%以上の窒素でシールされていることが好ましい。
【0030】
図1に示す深冷分離設備1においては、NOx含有ガスを流路5を通じて深冷分離設備1の熱交換器2に導入して冷却し、気液分離槽3,4で気体と液体に分離して、深冷分離設備1を運転しながら、NOx含有ガスを熱交換器2に導入するための流路5に、流路15を通じて極性溶剤を注入し、NOx含有ガスと極性溶剤の混合物が深冷分離設備1の熱交換器2、気液分離槽3及び流路6,7,8,9,11,12,13を流れることで、深冷分離設備1内に蓄積したNOx化合物を除去する。
【0031】
なお、図1に示す深冷分離設備1においては、NOx含有ガスを熱交換器2に導入するための流路5に、極性溶剤を注入するための流路15が連結されているが、本発明で使用する深冷分離設備は、複数の流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入するための流路が連結されていればよく、他の流路に連結されていてもよい。ここで、極性溶剤を注入するための流路は、NOx化合物が蓄積する可能性のある、運転温度が−50℃以下となる流路に連結されることが好ましい。
【0032】
本発明のNOx化合物の除去方法において、NOx化合物を洗浄除去するために用いる極性溶剤としては、希アルカリ液、アルコール類及びケトン類等を使用できる。ここで、希アルカリ液としては、希水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられ、アルコール類としては、メタノール等が挙げられ、ケトン類としては、アセトン等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いが容易な点で、メタノールが好ましい。
【0033】
なお、極性溶剤としてメタノールを使用する場合、使用するメタノールの濃度は、99.5質量%以上であることが好ましい。使用するメタノールの濃度が99.5質量%未満では、メタノールに通常含有される水分が深冷分離設備1の熱交換器2で固化し、トラブルを引き起こす。
【0034】
極性溶剤の注入速度は、深冷分離設備1の規模に応じて変化し、特に限定されるものではないが、一例として、処理能力が10,000Nm3/Hrの場合は、50〜600L/Hrの速度で極性溶剤を注入することが好ましい。極性溶剤の注入量が多いと、洗浄後の極性溶剤に含まれるNOx化合物の濃度が低下して、極性溶剤による洗浄の終了の判断が難しくなる。また、極性溶剤の注入量が極端に多いと、深冷分離設備1の熱交換器2の熱バランスに影響を及ぼし、深冷分離設備1の運転が困難になる。
【0035】
本発明のNOx化合物の除去方法においては、極性溶剤を間欠的注入しても、連続的に注入してもよいが、NOx化合物除去効果を確認するためには、0.5〜1時間の間隔をおいて間欠的に極性溶剤を注入することが好ましい。
【0036】
なお、本発明のNOx化合物の除去方法は、装置の運転中に極性溶剤による洗浄を行うため、図1に示す深冷分離設備1においては、流路8と流路9を連結する熱交換器2のバイパスライン19を設けることが好ましい。そして、流路8及びバイパスライン19通じて第一気液分離槽3で分離されたガス分の少なくとも一部を熱交換器2を介さずに流路9に導入し、その流量をコントロール弁等で制御することで運転条件を調整し、熱交換器2および流路の運転温度を−20〜−80℃にコントロールすることが好ましい。この場合、第二気液分離槽4や、流路9,11において注入した極性溶剤が固まるのを防止することができる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
表1に示す組成を有するFCC装置から副生するエチレンおよびプロピレンなどのオレフィン類を含有する軽質オフガス(FCCオフガス, 10,000Nm3/Hr)を、アミン洗浄装置およびソーダ洗浄装置等で含有するH2S、CO2等を除去した後、図1に示すようなメタノール貯槽17および注入ポンプ18からなる注入設備を備えた深冷分離設備1に導入した。
【0039】
【表1】

【0040】
深冷分離設備1を運転しながら、メタノール注入ポンプ18を用いて、流路15を通じてメタノールを500L/Hrの速度で0.5Hr連続注入した。深冷分離設備1のプロセス流路を洗浄した後のメタノールを図1中の槽14で回収した。回収した洗浄メタノールを濾過して固形物を除いた後、JIS B 7953に規定する分析法に準拠して、メタノール中のNO2量を算出した。
【0041】
更に、上記のメタノール注入、洗浄を2回繰り返した(合計0.5Hr注入×3回となる)。表2に洗浄メタノール中のNO2量を示す。表2の結果から、メタノール洗浄により深冷分離設備1内に蓄積したNOx化合物を除去出来ることが分かる。
【0042】
また、図1の槽14のプロセスガスを吸収液に通気後、GC−FIDにて分析し、メタノールの注入を停止してから80分後にメタノールが検出されなくなったことを確認した(1ppmw以下)。メタノール注入開始後、槽14のプロセスガスにメタノールが検出されなくなった時間をもってメタノール洗浄に係わる一連の作業時間とした。作業時間を表2に示す。
【0043】
(比較例1)
表1に示す組成を有するFCC装置から副生するエチレンおよびプロピレンなどのオレフィン類を含有する軽質オフガス(FCCオフガス, 10,000Nm3/Hr)を、アミン洗浄装置およびソーダ洗浄装置等で含有するH2S、CO2等を除去した後、図1に示す深冷分離設備に導入した。
【0044】
深冷分離設備1を停止した後、図1中のブロー用の流路16を通じてメタノールを250L注入した後、純度99.99体積%以上の窒素を、流路16を通じて200Nm3/Hrの流速で流し、図1の槽14までメタノールを流した。また、深冷分離設備1のプロセス流路を洗浄した後のメタノールを図1の槽14にて回収し、含有するNO2量を実施例1と同様にして測定した。
【0045】
更に、上記のメタノール注入、洗浄を2回繰り返した(合計250L注入×3回とし、総注入量を実施例1と同じとした)。回収したメタノール中のNO2量を表2に示す。表2の結果から、メタノール洗浄により深冷分離設備1内に蓄積したNOx化合物を除去出来ることが分かる。
【0046】
回収したメタノール中にNO2が検出されなくなった後に、深冷分離設備1を再起動した。
【0047】
図1の槽14のプロセスガスを吸収液に通気後、GC−FIDにて分析し、80分後にメタノールが検出されなくなったことを確認した(1ppmw以下)。メタノール注入開始後、槽14のプロセスガスにメタノールが検出されなくなった時間をもってメタノール洗浄に係わる一連の作業時間とした。作業時間を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2から、実施例1のように、メタノール注入設備を使用し、装置を運転停止することなくメタノール洗浄を行うことで、装置を運転停止してメタノール洗浄を行う場合(比較例1)よりも、メタノール洗浄に要する時間を26時間短縮できることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のNOx化合物の除去方法の実施に利用できる深冷分離設備の一例の概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1 深冷分離設備
2 熱交換器(冷却器)
3 第一気液分離槽
4 第二気液分離槽
5,6,7,8,9,10,11,12,13,15,16 流路
14 槽
17 極性溶剤貯槽
18 注入ポンプ
19 バイパスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、気液分離槽と、複数の流路と、該流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入するための流路とを具える深冷分離設備を用い、
NOx含有ガスを深冷分離設備の熱交換器に導入して冷却し、気液分離槽でガス分と液分に分離して深冷分離設備を運転しながら、前記流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入して、深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物を除去することを特徴とする、NOx化合物の除去方法。
【請求項2】
熱交換器と、気液分離槽と、熱交換器と気液分離槽とを連結する流路と、NOx含有ガスを熱交換器に導入するための流路と、NOx含有ガスを熱交換器に導入するための流路に極性溶剤を注入するための流路とを具える深冷分離設備を用い、
NOx含有ガスを深冷分離設備の熱交換器に導入して冷却し、気液分離槽でガス分と液分に分離して深冷分離設備を運転しながら、NOx含有ガスを熱交換器に導入するための流路に極性溶剤を注入して、深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物を除去することを特徴とする請求項1に記載のNOx化合物の除去方法。
【請求項3】
熱交換器と、第一気液分離槽と、第二気液分離槽と、NOx含有ガスを熱交換器に導入するための流路と、熱交換器で冷却されたNOx含有ガスを第一気液分離槽に送るための流路と、第一気液分離槽で分離されたガス分を熱交換器に再度導入するための流路と、熱交換器で再度冷却されたガス分を第二気液分離槽に送るための流路と、第一気液分離槽で分離されたガス分を熱交換器に再度導入するための流路と熱交換器で再度冷却されたガス分を第二気液分離槽に送るための流路とを連結するバイパスラインと、前記流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入するための流路とを具える深冷分離設備を用い、
NOx含有ガスを深冷分離設備の熱交換器に導入して冷却し、第一気液分離槽でガス分と液分に分離し、バイパスラインを通じて第一気液分離槽で分離されたガス分の少なくとも一部を熱交換器を介さずに第二気液分離槽に送って熱交換器の温度をコントロールし、第二気液分離槽でガス分と液分に分離して深冷分離設備を運転しながら、前記流路の少なくとも一つに極性溶剤を注入して、深冷分離設備内に蓄積したNOx化合物を除去することを特徴とする請求項1に記載のNOx化合物の除去方法。
【請求項4】
前記NOxを含むガスが、石油分解ガス又はコークス炉ガスであることを特徴とする請求項1に記載のNOx化合物の除去方法。
【請求項5】
前記極性溶剤が、希アルカリ液、アルコール類及びケトン類からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のNOx化合物の除去方法。
【請求項6】
前記極性溶剤がメタノールであることを特徴とする請求項5に記載のNOx化合物の除去方法。
【請求項7】
前記メタノールの濃度が99.5質量%以上であることを特徴とする請求項6に記載のNOx化合物の除去方法。
【請求項8】
前記極性溶剤の注入を、0.5〜1時間の間隔をおいて間欠的に行うことを特徴とする請求項1に記載のNOx化合物の除去方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−128541(P2008−128541A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312981(P2006−312981)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000181343)鹿島石油株式会社 (11)
【出願人】(502053100)石油コンビナート高度統合運営技術研究組合 (72)
【Fターム(参考)】