説明

混合プラスチックの分別方法

【課題】ペットボトル屑を対象とし、高純度のポリエステルと、ポリスチレン成分、ポリエステル成分をほとんど含まないポリプロピレン及び/又はポリエチレンを分別する方法を提供する。
【解決手段】破砕された廃棄プラスチック1及び水2と混合し水スラリーをなし、廃棄プラスチックに付着する気泡を分離させる。水スラリーを下部コーン角度が40度以下である下部コーン型円筒攪拌槽9内に旋回流が生じるように供給し、水が旋回しながら上昇速度7〜40mm/秒の上昇する流れにより排出すると同時に、更に排出された高比重プラスチックと水を脱水装置で分離する。分離された低比重プラスチックの水スラリーを遠心分離機19に供給し、固形分として排出し、水以下の低比重の成分を水と共に排出し、更に排出されたプラスチックと水を脱水装置で分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合素材からなるプラスチックの分別に関し、特に再利用を目的とする一般及び産業廃棄物中のペットボトル屑に含まれるポリプロピレン及び/又はポリエチレンなどの軽質プラスチック、及びポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系プラスチックの比重分離による混合プラスチックの分別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
資源保護のため、廃棄物から再利用可能な資源を回収し、しかるべき処理を施して再び役立てること、すなわちリサイクルは現代社会における極めて重要な課題である。なかでもプラスチック類は有限の資源である石油を主原料とする上、廃棄物として処理するにも多くの環境問題を発生しやすく、リサイクルの重要性が大きい。比較的選別収集の進んでいるペットボトルなどを含め廃プラスチック類は、食品、化粧品、洗剤等の容器類として使用されたものの閉める割合が大きい。これらペットボトルなどはキャップ部分に軽質プラスチック類であるポリプロピレン及び/又はポリエチレンが、また、ラベルなどにはポリエチレン及びポリスチレンが多く使用されている。リサイクルする上ではこれらのプラスチックを効率的に、高精度に分別する必要があり、リサイクル活動を進めていく上で分別精度と回収率を両立させることのできる技術が要望されている。
【0003】
プラスチックの複合素材を単一素材に分別する方法として気体流を利用した比重選別で分離する方法(例えば特許文献1参照。)が公知であるが、気体中では分別したプラスチックの純度は60〜70%程度にとどまり、バージン材としてリサイクルすることが困難である。また、比重が1を超えるプラスチックと1未満のプラスチックの分別方法として開放水槽にプラスチックを投入し、沈降したものと浮遊したものに分離する方法(例えば特許文献2、3参照。)では、比重が1.0を超過するポリスチレン、ポリエステルが混在している場合には両者を分別することが困難である。
【0004】
更に、上下に排水口を有する円筒形状の液体が充満された選別装置内の中央に廃プラスチックの水スラリーを供給し、旋回流により旋回しながら上昇流及び下降流により上部排出口から低比重プラスチックを下部排出口から高比重プラスチックを回収する方法(例えば特許文献4参照。)も提案されているが液成分の下降流が存在する為、液流れにより主に高比重プラスチックの純度を99%以上にアップさせることは現実的には困難であり、また、低流速範囲であることから大規模処理をする際には非常に大きな設備が必要となるなどの問題がある。これらとは別に、液体サイクロン形状を持つ液体比重分離機により廃プラスチックの水スラリーから単一素材のプラスチックに分別する案(例えば特許文献5参照。)も提案されている。しかし、これらの設備は一般に処理可能量が小さなものが多く、大規模な処理量に対応できないため、処理量が増加する場合には多系列分離装置を設置する必要があり、経済的とはいえないという欠点もある。
【0005】
【特許文献1】特開平6−63941号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭48−100760号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平4−326955号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平9−150417号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2000−288422号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の課題を背景になされたもので、その目的は、主としてポリプロピレン及び/又はポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステルから構成されるペットボトル屑を対象とし、高純度のポリエステル成分を高回収率で分別回収すると同時にポリスチレン成分、ポリエステル成分をほとんど含まないポリプロピレン及び/又はポリエチレンを分別し、分離性能を維持したまま大規模処理することができる廃プラスチックスの分別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した従来技術に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、予め破砕された廃棄プラスチックから特定比重のプラスチックを回収する方法であって、下記(a)〜(c)の工程を持つ分別装置を用いて分離することを特徴とする廃棄プラスチックの分離方法を用いることによりポリプロピレン及び/又はポリプロピレン、ポリスチレン、及び、ポリエステルを含むペットボトル屑から高純度のポリエステルとポリプロピレン及び/又はポリプロピレンを高回収率で分別する方法を完成するに至った。
(a)破砕された廃棄プラスチック及び水の供給口を有し、攪拌槽内にて破砕された廃棄プラスチックを水と混合し水スラリーをなし、廃棄プラスチックに付着する気泡を分離させ、搬送設備にて廃棄プラスチックの水スラリーを工程(b)に搬送する工程
(b)下部コーン角度が40度以下である下部コーン型円筒攪拌槽とその下に連結管を介して貯槽を有し、更に貯槽内部の充填物を外部に取り出すための搬送設備を有する装置に対し、工程(a)の廃棄プラスチックの水スラリーを下部コーン型円筒攪拌槽内に旋回流が生じるように下部コーン型円筒攪拌槽の直胴部接線方向に設置された水スラリー供給口より供給し、下部コーン型円筒攪拌槽内部を水が旋回しながら上昇速度7〜40mm/秒の上昇する流れにより水スラリー中の低比重プラスチックを、下部コーン型円筒攪拌槽上部に水スラリー供給口からの高さが下部コーン型円筒攪拌槽径の0.5〜5.0倍上方になるように設置されたオーバーフロー口より水と共に排出すると同時に、水スラリー中の高比重プラスチックを下部コーン型円筒攪拌槽下部を経由して貯槽下部より搬送設備を用いて排出し、更に排出された高比重プラスチックと水を脱水装置で分離する工程
(c)分離された低比重プラスチックの水スラリーを遠心分離機に供給し、水より高比重の成分を固形分として排出し、水以下の低比重の成分を水と共に排出し、更に排出されたプラスチックと水を脱水装置で分離する工程
【発明の効果】
【0008】
以上に説明した分離装置を用いた廃プラスチック分別方法を使用することによりポリプロピレン及び/又はポリプロピレン、ポリスチレン、及び、ポリエステルを含むペットボトル屑から高純度のポリエステルとポリプロピレン及び/又はポリプロピレンを高回収率で分別することができ、極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、廃棄プラスチックが主にポリエチレンテレフタレートからなるボトル(ペットボトル)である場合を図を用いて詳細に説明する。これは本発明の好ましい一形態ではあるが、廃棄プラスチックがペットボトルである場合や図1と全く同じ設備を用いた場合に限定されるものではない。
【0010】
予め破砕機などにより破砕されたポリプロピレン及び/又はポリプロピレン1a、ポリスチレン1b及びポリエステル1cから構成される廃ペットボトル1は廃ペットボトル投入口5から、また、水2は水供給口7からそれぞれ混合槽4に投入される。次にNo.1攪拌機6により混合されながら均一水スラリーとなり、廃ペットボトル表面に付着する気泡が除去される。この際、廃ペットボトルの水スラリー中の濃度は供給量を調整することで任意選ぶことができるが、水スラリー濃度が高くなると均一混合が困難なる他、廃ペットボトル小片の表面に付着する気泡を除去する目的を果すには10重量%以下であることが好ましい。また、廃ペットボトルの破砕の大きさは特に限定されるものではないが、破砕面が増加することにより破砕面の毛羽立ちなどによる絡まりが多くなる為、8mm〜20mm程度が最も好ましい。更に、攪拌は気泡を除去する目的を果すに十分であり、水スラリーを均一に混合できる強さであればよく、攪拌翼としてはパドル翼、タービン翼など通常使用されるすべての攪拌翼が使用できる。
【0011】
混合された廃プラスチック水スラリーはNo.1 スラリーポンプ8により下部コーン型円筒攪拌槽9の直胴部に接線方向に設置された廃ペットボトル水スラリー供給口11から槽内部で旋回流を形成するように供給される。供給された水スラリー中の廃ペットボトルは旋回しながらNo.2 攪拌機10による攪拌効果で小片の重なりなど解除されることにより高比重プラスチックであるポリエステル成分が沈降し、連結管13を経て高比重成分沈降槽(貯槽)14に落下する。下部コーン型円筒攪拌槽の下部コーンの角度は40度を越える場合にはポリエステル成分の高比重成分沈降槽14への落下が遅く、連結管上部にてポリエステル小片が閉塞する可能性があるので、下部コーン角度は40度以下とすることが好ましい。30度以下がより好ましいまた供給された水は全量旋回しながら上昇流れを形成し、オーバーフロー口12より排出される。比重が1より小さいポリプロピレン及び/又はポリエチレンは攪拌効果によりポリエステル成分に同伴されることなく完全に水の流れに伴ってオーバーフロー口12から取り出される。また、ポリエステルよりは比重が小さいものの、比重が1よりも大きなポリスチレン1bを主成分とするペットボトルのラベル等は供給された水の上昇流れを7mm/秒以上とすることにより沈降速度より水の上昇流れが強くなりポリエステル側に混入することなく水流れと共にオーバーフロー口12から取り出される。逆に水の上昇流れが40mm/秒を超えるとするとポリエステル成分もポリスチレンと同様に水流れによりオーバーフロー口側に混入し始める為、高比重成分としてのポリエステル回収率が低下する。そのため、水の上昇流れは7mm/秒〜40mm/秒の範囲とすることが重要である。更に好ましくは10mm/秒〜20mm/秒とすることで安定した高分別能力を維持することができる。廃ペットボトル水スラリー供給口11とオーバーフロー口12の間にて水の上昇流によりオーバーフロー口側に持ち込まれる廃プラスチックを精密分離している。この距離が短い場合には分離時間がとれずポリエステル成分のオーバーフロー口側への混入割合が増加し、長い場合には下部コーン型円筒攪拌槽の装置サイズが大きくなる他、ポリスチレン成分が装置内に滞留するなどの問題が発生する可能性があるため、廃ペットボトル水スラリー供給口11とオーバーフロー口12までの垂直距離は下部コーン型円筒攪拌槽径の0.5倍〜5倍にする必要があり、更に好ましくは下部コーン型円筒攪拌槽径と1.0倍〜2倍とすることで高分離性能を達成することができる。
【0012】
ポリエステル成分1cは高比重成分沈降槽14からスクリューコンベアー15により水面上まで搬送され、高比重成分排出口16からNo.1 脱水機17で脱水されて回収される。一方、オーバーフロー口12から取り出されるポリプロピレン及び/又はポリエチレン、ポリスチレンの水スラリーはNo.2 スラリーポンプ18により遠心分離機19に供給され、ケーク排出口20側よりポリスチレン成分1bが回収される。また、同時にろ液排出口21より水と共に排出されるポリプロピレン及び/又はポリエチレン成分1cはNo.2 脱水機22で脱水され、回収される。No.1及びNo.2脱水機、No.1及びNo.2スラリーポンプ、遠心分離機などの機械設備についてはタイプなど特段限定されるものではなく、汎用機械を使用することができる。本設備を使用することにより回収されるポリエステル成分は純度99.8%以上、回収率99%以上を達成可能であり、同時にポリプロピレン及び/又はポリエチレンは純度、回収率共に99.5%以上を達成することが可能であり、更に数トン/時以上の廃プラスチック処理が可能な上、処理量低下時も水スラリー濃度の調整などにより分別能力の低下が防止でき優れた分別方法である。
【実施例】
【0013】
以下実施例により本発明の内容をさらに具体的に説明するが本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。回収率については下式に基づき算出した。
回収率=各箇所に分別されたプラスチック重量×対象成分の純度/原料廃プラスチック中の対象成分重量
【0014】
[実施例1]
図1の設備にて廃ペットボトルを12mmサイズに破砕したものを用いて実施した。分別実験において下部コーン型円筒攪拌槽内の水上昇流を10mm/秒となるように水スラリー濃度を調整し、この間に破砕物に付着していた気泡を取り除いた。また、下部コーン型円筒攪拌槽のフィード位置からオーバーフロー位置までの距離を槽径とあわせ、コーン角度30度の装置で廃ペットボトル1000kg/時で処理した結果を下表の実施例1に示す。
【0015】
[実施例2〜3、比較例1〜3]
実施例2〜3、比較例1〜3については水上昇流の値と、下部コーン型円筒攪拌槽のフィード位置からオーバーフロー位置までの高さを変更して実施した。その結果の詳細を表1にまとめた。比較項目は各々分別品の純度と回収率である。
【0016】
[比較例4]
下部コーン型円筒攪拌槽のコーン角度を45度の装置とした以外は実施例1と同一条件で分別試験を実施した結果、下部コーン型円筒混合槽内コーン部にて高比重成分であるポリエステルが閉塞し、分別テストを継続できなくなった。
【0017】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0018】
実施例1〜3、比較例1〜3にて表されているように、以上に説明した分離装置を用いた廃プラスチック分別方法を使用することによりポリプロピレン及び/又はポリプロピレン、ポリスチレン、及び、ポリエステルを含むペットボトル屑から高純度のポリエステルとポリプロピレン及び/又はポリプロピレンを高回収率で分別することができる。ゆえにそれぞれのプラスチックのリサイクルが効率的に実施することが出き、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明における工程(a)の実施の一態様を示した概略図である。
【符号の説明】
【0020】
1・・・廃ペットボトル
1a・・ポリプロピレン及び/又はポリエチレン成分
1b・・ポリスチレン成分
1c・・ポリエステル成分
2・・・水
3・・・排水
4・・・混合槽
5・・・廃ペットボトル投入口
6・・・No.1攪拌機
7・・・水供給口
8・・・No.1スラリーポンプ
9・・・下部コーン型円筒攪拌槽
10・・・No.2攪拌機
11・・・廃ペットボトル水スラリー供給口
12・・・オーバーフロー口
13・・・連結管
14・・・高比重成分沈降槽
15・・・スクリューコンベアー
16・・・高比重成分排出口
17・・・No.1脱水機
18・・・No.2スラリーポンプ
19・・・遠心分離機
20・・・ケーク排出口
21・・・ろ液排出口
22・・・No.2脱水機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め破砕された廃棄プラスチックから特定比重のプラスチックを回収する方法であって、下記(a)〜(c)の工程を持つ分別装置を用いて分離することを特徴とする廃棄プラスチックの分離方法。
(a)破砕された廃棄プラスチック及び水の供給口を有し、攪拌槽内にて破砕された廃棄プラスチックを水と混合し水スラリーをなし、廃棄プラスチックに付着する気泡を分離させ、搬送設備にて廃棄プラスチックの水スラリーを工程(b)に搬送する工程
(b)下部コーン角度が40度以下である下部コーン型円筒攪拌槽とその下に連結管を介して貯槽を有し、更に貯槽内部の充填物を外部に取り出すための搬送設備を有する装置に対し、工程(a)の廃棄プラスチックの水スラリーを下部コーン型円筒攪拌槽内に旋回流が生じるように下部コーン型円筒攪拌槽の直胴部接線方向に設置された水スラリー供給口より供給し、下部コーン型円筒攪拌槽内部を水が旋回しながら上昇速度7〜40mm/秒の上昇する流れにより水スラリー中の低比重プラスチックを、下部コーン型円筒攪拌槽上部に水スラリー供給口からの高さが下部コーン型円筒攪拌槽径の0.5〜5.0倍上方になるように設置されたオーバーフロー口より水と共に排出すると同時に、水スラリー中の高比重プラスチックを下部コーン型円筒攪拌槽下部を経由して貯槽下部より搬送設備を用いて排出し、更に排出された高比重プラスチックと水を脱水装置で分離する工程
(c)分離された低比重プラスチックの水スラリーを遠心分離機に供給し、水より高比重の成分を固形分として排出し、水以下の低比重の成分を水と共に排出し、更に排出されたプラスチックと水を脱水装置で分離する工程
【請求項2】
工程(b)における円筒攪拌槽内部を水が旋回しながら上昇する流れの上昇速度が10mm/秒〜20mm/秒であることを特徴とする請求項1記載の廃棄プラスチックの分離方法。
【請求項3】
工程(b)における下部コーン型円筒攪拌槽において廃棄プラスチックの水スラリーの供給口からオーバーフロー口までの垂直距離が、下部コーン型円筒攪拌槽径の1.0倍〜2.0倍の範囲であることを特徴とする請求項1記載の廃棄プラスチックの分離方法。
【請求項4】
予め破砕された廃棄プラスチックが主にポリエチレンテレフタレートからなるボトルであることを特徴とする請求項1記載の廃棄プラスチックの分離方法。
【請求項5】
工程(b)における下部コーン型円筒攪拌槽において下部コーン角度が30度以下であることを特徴とする請求項1記載の廃棄プラスチックの分離方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−125520(P2007−125520A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321998(P2005−321998)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】