説明

混合方法及び混合装置

【課題】粘度が高く、性状や混合比が著しく異なる組成物であっても、均一に攪拌できる混合方法及び混合装置を提供する。
【解決手段】軸の周囲に回転する攪拌具による攪拌装置により一次混合後、スタティックミキサーによって二次混合を行うことを特徴とする混合方法。軸の周囲に回転する攪拌具による攪拌装置及びスタティックミキサーを備えた混合装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変成シリコーン樹脂とその硬化触媒のように、粘度が高く、性状や混合比が著しく異なる材料であっても、均一に攪拌できる混合方法及び混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤のような混合組成物を製造する際、混合は最も基本的かつ重要な操作であり、目的に応じて様々な装置、方法が用いられてきた。例えば、軸の周囲に回転する攪拌具、具体的にはパドル、アーム、プロペラ、ら旋翼、回転盤等を有する混合装置が汎用的に使用されている。
【0003】
ところで、本発明者らは速硬化性を有しながら保存安定性にも優れる湿気硬化性樹脂組成物を提案しているが、この組成物は空気中の湿気と反応するとすぐに硬化してしまうため、混合から充填までを密閉系で行う必要がある。ところが前記混合装置を用いると、混合時は密閉系で行うことができるものの、粘度が高いために不活性ガスの圧力で押出して充填するような方法を採用できず、系を開放して取り出すしかないため、密閉系で製造することができなかった。また、混合に時間がかかることから、密閉系で製造できたとしても、効率的な製造方法とはいえなかった。
【0004】
そこで本発明者らはスタティックミキサーに着目した。スタティックミキサーはミキサー内のエレメントを通過する度に分割・転換・反転の作用により混合されるもので、密閉系で混合でき、混合物をそのまま充填できるし、混合に要する時間が極めて短くて済む点が前記組成物の製造に適していると考えられた。ところが、実際にスタティックミキサーを用いて製造を行ったところ、混合が不十分であり不適であった。これは、前記組成物の樹脂成分と硬化触媒の混合比が約98:2と著しく偏っていることが原因と考えられた。なお、特許文献1、2にはスタティックミキサー等の混合性の改良に関する発明が開示されているが、これらの方法を用いても前記組成物の混合性は改良できなかった。
【特許文献1】特開2005-81298号公報
【特許文献2】特公平6-332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来知られた混合装置では前記組成物を工業的スケールで製造することはできなかった。しかし、前記組成物のように粘度が高く、性状や混合比が著しく異なり、混合から充填まで密閉系で行う必要があるような組成物は従来知られていなかったため、これに適合するような混合方法や混合装置が存在しないのも無理はなかった。
【0006】
本発明は前記課題に鑑み、粘度が高く、性状や混合比が著しく異なる組成物であっても、均一に攪拌できる混合方法及び混合装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、混合が不十分ながら密閉系で取扱いができるスタティックミキサーの改良を試み、エレメントの数を増加させたが、混合状態を改良することはできなかった。そこで、各材料を回転翼で混合後にスタティックミキサーに導入したところ、良好な混合状態の組成物が得られることを見出し、さらに検討を重ねることにより本発明を完成させた。
【0008】
即ち、第一の発明は、軸の周囲に回転する攪拌具による攪拌装置により一次混合後、スタティックミキサーによって二次混合を行うことを特徴とする混合方法である。第一の発明により、粘度が高く、性状や混合比が著しく異なる組成物であっても、均一に攪拌できる。第二の発明は、軸の周囲に回転する攪拌具による攪拌装置及びスタティックミキサーを備えた混合装置である。第二の発明により、前記混合方法をより簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の混合装置、混合方法により、粘度が高く、性状や混合比が著しく異なる組成物であっても、均一に攪拌することができる。また、密閉系で行うことも可能であり、接着剤、塗料、シーリング材のような各種組成物を混合する際に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における軸の周囲に回転する攪拌具による攪拌装置とは、具体的にはパドル、アーム、プロペラ、ら旋翼、回転盤等の攪拌具が軸の周囲を回転することにより攪拌が行われる攪拌装置である。
【0011】
第一の発明は、前記攪拌装置により一次混合後、スタティックミキサーによって二次混合を行うことを特徴とする混合方法である。一次混合と二次混合の間に別段の時間的又は空間的制約はないが、一次混合と二次混合の間隔が長過ぎると一次混合の効果が低下する場合がある。また、一次混合と二次混合を別の場所で別の装置を用いて行っても良いが、工数が増加するため不利である。特に、密閉系で取り扱う必要がある組成物を対象とする際には非常に不利である。
【0012】
第二の発明は、軸の周囲に回転する攪拌具による攪拌装置及びスタティックミキサーを備えた混合装置である。本装置を用いることにより、1ステップで十分に混合された組成物を得ることができる。なお、混合されるそれぞれの材料が本装置に供給された後、密閉系のままで前記攪拌装置に達するようにし、さらに密閉系のままスタティックミキサーに導入されるようにすれば、密閉系で取扱う必要がある組成物も対象とすることができるため、より好ましい。
【0013】
粘度が高く、性状や混合比が著しく異なり、密閉系で取扱う必要がある組成物の具体例としては、特願2006-283287に記載される組成物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0014】
以下、本発明について実施例、比較例により説明する。なお、本発明は実施例に何ら制約されるものではない。
【0015】
実施例
図1に示すような回転翼及びスタティックミキサー(エレメント数24)を備えた混合装置を用い、トリアルコキシシリル型変成シリコーンであるG−3440ST(旭硝子ウレタン株式会社製、商品名)100重量部、硬化触媒としてU−220H(ジブチル錫化合物、日東化成株式会社製、商品名)2重量部、ジフェニルジメトキシシランであるKBM202SS(信越化学工業株式会社製、商品名)0.5重量部、アミノシランであるA−1120(OSiスペシャリティーズ社製、商品名)5重量部の組成を有する混合物を製造し、製造過程で採取した50検体について、皮張り時間を測定した。皮張り時間はいずれも約30秒であり、十分に混合できていた。なお、皮張り時間は、金属板上に厚さ2mmとなるように塗布し、23℃、50%RH環境下にて接着剤が指に付着しなくなるまでの時間である。
【0016】
比較例
図1に示す装置から回転翼を除いた混合装置を用い、実施例1と同様の組成を有する混合物を製造し、製造過程で採取した50検体について、皮張り時間を測定した。各検体の皮張り時間にはばらつきが見られ、3日経過しても皮張らない検体も存在した。したがって、十分に混合できていないことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例で使用した混合装置の概略図
【符号の説明】
【0018】
1 電磁弁
2 原料タンク1
3 原料タンク2
4 プッシュロッド
5 回転翼
6 スタティックミキサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の周囲に回転する攪拌具による攪拌装置により一次混合後、スタティックミキサーによって二次混合を行うことを特徴とする混合方法。
【請求項2】
軸の周囲に回転する攪拌具による攪拌装置及びスタティックミキサーを備えた混合装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−264707(P2008−264707A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112490(P2007−112490)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】