説明

混合用アタッチメント

【課題】 薬剤注入口の開閉操作、及び薬剤収容室への原水流入路や流出路の開閉操作を容易且つスムーズに行うことができる混合用アタッチメントを提供する。
【解決手段】 薬剤収容室15に収容された混合用薬剤を原水と共に下流側流路13に流出させる混合用アタッチメント10であって、内側筒体16に対する外側筒体17の周方向Yへの回転移動によって、上流側閉塞部19に形成された原水流入路21や下流側閉塞部20に形成された流出路22を開閉するようになっており、外側筒体17の周面には、薬剤収容室15への薬剤注入口23が開口形成され、この薬剤注入口23と合致可能なスライド注入口24を備える帯板状の開閉スライド部材25が、軸方向Xにスライド移動可能に取り付けられている。また、開閉スライド部材25の下端部25aを係止する切り欠き凹部26と、開閉スライド部材25の上端部25bを遊嵌する切り欠き凹溝28が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合用薬剤を原水に混合しつつ、該原水と共に流出させる混合用アタッチメント、及び該混合用アタッチメントを一体として取り付けた薬剤散布器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばシャワー器具等の散布器具において、ホース等の管路を経て供給される原水に入浴剤等の薬剤を混合用薬剤として添加混合し、これらの混合用薬剤とともに原水を散布器具から散布できるようにしたアタッチメントが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のアタッチメントは、図6に示すように、外部容器50の内部に薬剤収容室51が設けられた2重構造を備えており、流入口52に設けられたバルブ53を開閉して原水を薬剤収容室51の内部に流入させ、流入した原水により混合用薬剤を溶解しつつ流出口54を介して流出させて、混合用薬剤が添加混合された状態で原水を散布器具から散布できるようにするものである。また特許文献1に記載のアタッチメントによれば、薬剤収容室51への混合用薬剤の補充は、薬剤収容室51の外側に設けられた蓋55を開閉して薬剤等を注入することによって行われる。
【0003】
また、薬剤収容室(反応容器部)への混合用薬剤(反応部材)の補充を容易に行えるようにした混合用アタッチメント(シャワーヘッド装置)も開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のシャワーヘッド装置によれば、外周面に開口部を有する円筒形状の薬剤収容室の当該外周面に沿って、周面にスライド開口部を備える円筒スリーブ形状の開閉部材が、回転自在に密着して装着されており、この開閉部材を周方向に回転スライドさせてスライド開口部を薬剤収容室の開口部に合致させることにより、薬剤収容室に混合用薬剤を補充可能な状態とし、スライド開口部を開口部からずらすことにより、注入口の開口状態を遮断できるようにしたものである。
【0004】
さらに、使用時に薬剤収容室へ原水を流入させて混合用薬剤を原水に添加混合させる状態と、補充時に薬剤収容室へ混合用薬剤を注入可能とする状態とを切り替える操作を、容易に行えるようにした混合用アタッチメントも開示されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に記載の混合用アタッチメントによれば、同心状に配置された内側筒体と外側筒体とを有しており、内側筒体の内側を原水主流路とすると共に、内側筒体と外側筒体との間の中空部を、両端を上流側閉塞部と下流側閉塞部とで覆って薬剤収容室とし、外側筒体の外周に装着されたカバー体を軸方向にスライド移動させて外側筒体の周面に形成された薬剤注入口を開閉する一方で、カバー体を外側筒体とともに周方向へ回転移動させて、上流側閉塞部に形成された原水流入路や下流側閉塞部に形成された流出路を開閉するようになっている。
【特許文献1】特開平8−187454号公報
【特許文献2】特開2002−35645号公報
【特許文献3】特開2004−42027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1に記載のアタッチメントによれば、バルブ53を開閉して原水に混合用薬剤を添加混合する操作と、蓋55を開閉して薬剤収容室51に薬剤等を注入する操作とは、異なる機構を介して行われることになり、取り扱いが面倒になると共に、混合用薬剤の補充作業の最中や補充作業の後に蓋55を閉めていない状態で、薬剤収容室51の流入口52を開放したままホースや散布装置に原水を給送すること(誤動作)によって、例えば薬剤収容室51に収容された混合用薬剤を薬剤注入口56から周囲にまき散らしてしまうおそれがある。
【0006】
また、特許文献2に記載のシャワーヘッド装置によれば、混合用薬剤を混合している状態から原水のみを流下させる状態に切り替える操作が煩雑になり、また円筒形状の薬剤収容室の外周面と円筒スリーブ形状の開閉部材の内周面との間の隙間に混合用薬剤や原水が侵入して、カビやぬめりが生じやすくなる。さらに、温水等を使用する場合には、これらの隙間に蒸気が侵入して曇ることにより、薬剤収容室を透明な部材によって形成した場合でも、内部の混合用薬剤の残量等を確認しにくくなる。
【0007】
一方、特許文献3に記載の混合用アタッチメントによれば、カバー体や外側筒体の軸方向又は周方向へのスライド移動によって、薬剤収容室へ原水を流入させて混合用薬剤を原水に添加混合する操作と、薬剤収容室へ混合用薬剤を注入可能な状態とする操作とを、スムーズに切り替えながら容易に行うことが可能になると共に、混合用薬剤の注入口を開放したまま薬剤収容室へ原水を流入させてしまうといったこと(誤動作)を確実に回避することが可能になるが、取り扱い易さをさらに向上させることが望まれている。
【0008】
本発明は、薬剤注入口の開閉操作、及び薬剤収容室への原水流入路や流出路の開閉操作を容易且つスムーズに行うことができ、薬剤注入口を開放したまま薬剤収容室へ原水が流入するのを確実に回避することができ、且つ取り扱い易さが向上するとともに前述のカビやぬめりの発生を抑制することができる混合用アタッチメント、及び該混合用アタッチメントを取り付けた薬剤散布器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上流側流路と下流側流路との間に介在して設けられ、薬剤収容室に収容された混合用薬剤を上流側流路から流入した原水に混合しつつ、該原水と共に下流側流路に流出させる混合用アタッチメントであって、同心状に配置された内側筒体と外側筒体とを有しており、前記内側筒体の内側を原水主流路とすると共に、前記内側筒体と前記外側筒体との間の中空部を、両端を上流側閉塞部と下流側閉塞部とで覆って前記薬剤収容室とし、前記内側筒体に対する前記外側筒体の周方向への回転移動によって、前記上流側閉塞部に形成された原水流入路や前記下流側閉塞部に形成された流出路を開閉するようになっており、前記外側筒体の周面には、前記薬剤収容室への薬剤注入口が開口形成され、該薬剤注入口と合致可能なスライド注入口を備える帯板状の開閉スライド部材が、前記薬剤注入口を覆って前記外側筒体の軸方向にスライド移動可能に取り付けられており、且つ前記開閉スライド部材をスライド移動させて前記薬剤注入口と前記スライド注入口とを合致させた状態では、前記内側筒体に対する前記外側筒体の回転移動を阻止し、前記外側筒体を回転移動させて前記原水流入路や前記流出路が開放された状態では、前記開閉スライド部材のスライド移動を阻止するロック機構を備える混合用アタッチメント、及び該混合用アタッチメントを一体として取り付けた薬剤散布器具を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の混合用アタッチメント又は薬剤散布器具によれば、薬剤注入口の開閉操作、及び薬剤収容室への原水流入路や流出路の開閉操作を容易且つスムーズに行うことができると共に、薬剤注入口を開放したまま薬剤収容室へ原水が流入するのを確実に回避することができ、且つ取り扱い易さを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい第1実施形態に係る混合用アタッチメント10は、図1に示すように、例えば、散布器具であるシャワー器具11と、シャワー水供給ホース12との間に介在して取り付けられ、原水であるシャワー水に浴用薬剤、洗浄用薬剤、香料薬剤、スキンケア用薬剤等の薬剤を添加混合しつつ下流側のシャワー器具11に向けて流下させて、これらの薬剤が添加混合されたシャワー水によってシャワーを行うことを可能し、シャワー器具11を薬剤散布器具としても用いることができるようにするために採用されたものである。すなわち、本第1実施形態の混合用アタッチメント10は、例えば合成樹脂からなり、例えば使用者が湯上り用としてシャワーを使用する際に、その都度、薬剤収容室15(図3参照)に所望量の混合用薬剤を注入充填し、混合用薬剤を混合したシャワー水を身体に散水させ、当該混合用薬剤を身体に付着させて、これらの薬剤による効用が効果的に得られるようにすること目的として用いられるものである。
【0012】
そして、本第1実施形態の混合用アタッチメント10は、図2(a),(b)、図3、及び図4(a),(b)に示すように、シャワー水供給ホース12側の上流側流路13とシャワー器具11側の下流側流路14との間に介在して設けられ、薬剤収容室15に液状、ゲル状、粒状等の状態で収容された混合用薬剤を上流側流路13から流入した原水に混合しつつ、当該混合用薬剤を希釈又は溶解させた混合液を原水と共に下流側流路14に流出させるアタッチメントであって、同心状に配置された内側筒体16と外側筒体17とを有しており、内側筒体16の内側は原水主流路18となっていると共に、内側筒体16と外側筒体17との間の円環状断面を有する中空部は、両端を上流側閉塞部19と下流側閉塞部20とで覆って薬剤収容室15となっている。また内側筒体16に対する外側筒体17の周方向Yへの回転移動によって、上流側閉塞部19に形成された原水流入路21(図4(b)参照)や下流側閉塞部20に形成された流出路22(図4(b)参照)を開閉するようになっており、外側筒体17の周面には、薬剤収容室15への薬剤注入口23が開口形成され、この薬剤注入口23と合致可能なスライド注入口24を備える帯板状の開閉スライド部材25が、薬剤注入口23を覆って外側筒体17の軸方向Xにスライド移動可能に取り付けられている。さらに、開閉スライド部材25を軸方向Xにスライド移動させて薬剤注入口23とスライド注入口24とを合致させた状態では(図4(a)参照)、内側筒体16に対する外側筒体17の回転移動を阻止し、外側筒体17を回転移動させて原水流入路21や流出路22が開放された状態では(図4(b)参照)、開閉スライド部材25の軸方向Xへのスライド移動を阻止するロック機構を備えている。
【0013】
また、本第1実施形態によれば、開閉スライド部材25は、外側筒体17の下端縁部から下方に突出可能にスライド移動できるように取り付けられており、ロック機構は、この開閉スライド部材25と、外側筒体17の下方において開閉スライド部材25の下端部である下方突出部分25aを係止する切り欠き凹部26と、外側筒体17の上方に設けられた、遊嵌凸部27及びこの遊嵌凸部27を周方向Yにスライド移動可能に遊嵌する切り欠き凹溝28とによって構成される。そして、開閉スライド部材25の下方突出部分25aを切り欠き凹部26に係止した状態(図2(a)参照)で薬剤注入口23とスライド注入口24とを合致させ、この係止した状態を開放して遊嵌凸部27が切り欠き凹溝28の一方(右側)の端部に当接するまで外側筒体17を回転させることにより(図2(b)参照)、原水流入路21や流出路22を開放するようになっている。
【0014】
さらに、本第1実施形態によれば、外側筒体17は、当該外側筒体17の上方及び下方に設けられた上方環状突壁29と下方環状突壁30との間に配置されてこれらに対して周方向Yに回転可能に取り付けられており、切り欠き凹部26は、下方環状突壁30の上端縁部を切り欠いて形成されている。
【0015】
さらにまた、本第1実施形態によれば、切り欠き凹溝28は、上方環状突壁29の下端縁部を切り欠いて形成され、遊嵌凸部27は、開閉スライド部材25が上方にスライド移動した際に外側筒体17の上端縁部から上方に突出する切り欠き凹部26と係止される下端部25aとは反対側の部分である開閉スライド部材25の上端部25bによって構成されている。
【0016】
また、本第1実施形態によれば、外側筒体17の周面には、外側筒体17の軸方向Xに延設するスライド案内溝31が形成されており、開閉スライド部材25は、このスライド案内溝31に填め込まれて当該スライド案内溝31に沿って軸方向Xにスライド移動するようになっている。
【0017】
本第1実施形態の混合用アタッチメント10を構成する内側筒体16は、円盤ドーナツ形状の上方基盤32と円盤ドーナツ形状の下方基盤33とによって上下の端部を支持された状態で固定され、内側の原水主流路18は、上方基盤32及び下方基盤33の中央貫通穴32a.33aを介して下流側流路14や上流側流路13と連通している。この内側筒体16の下部及び上部における周面が上流側閉塞部19及び下流側閉塞部20によって覆われる部分には、上流側連通孔34及び下流側連通孔35が、当該内側筒体16の周壁を横方向に貫通するようにして、周方向Yの同じ位置に上下に配置されて各々形成されている(図4(a),(b)参照)。
【0018】
外側筒体17は、好ましくは透明な合成樹脂からなるスリーブ形状の部材であって、その下端部及び上端部において、内側筒体16との間に上流側閉塞部19及び下流側閉塞部20を各々介在させて、内側筒体16に対して周方向Yに回転移動可能に取り付けられる。これによって、外側筒体17の内側には、当該外側筒体17と、内側筒体16と、上流側閉塞部19及び下流側閉塞部20とによって囲まれる、円環状断面の薬剤収容室15が形成されることになる。
【0019】
また、本第1実施形態によれば、外側筒体17には、これの下部における周面に薬剤収容室15への薬剤注入口23が開口形成され、この薬剤注入口23は水抜き口を兼ねると共に、外側筒体17の上部には、薬剤注入口23の垂直上方に位置して空気孔36が開口形成されている。そして、薬剤注入口23及び空気孔36を覆うようにして、これらと同時に合致可能なスライド注入口24及びスライド空気孔43を有する開閉スライド部材25が、外側筒体17の軸方向Xにスライド移動可能に取り付けられている。
【0020】
開閉スライド部材25は、例えば親指で操作し易い幅として5〜20mm程度の幅を有する帯板状の部材であって、その上側部分が隆起部25cとして肉厚に盛り上がって形成される。隆起部25cの外表面には例えば滑止め用の凹凸が設けられて、開閉スライド部材25を軸方向Xにスライド移動する際や外側筒体17を周方向Yに回転移動する際の操作性を向上させている。また、本第1実施形態によれば、開閉スライド部材25は、外側筒体17の外周面に形成されたスライド案内溝31に填め込まれるようにして、当該スライド案内溝31に沿って軸方向Xにスライド移動するようになっている。これによって、開閉スライド部材25を軸方向Xに安定した状態でスライド移動させることが可能になると共に、外側筒体17を周方向Yに回転移動する際の操作を安定した状態で行うことが可能になる。
【0021】
外側筒体17と内側筒体16との間に介在する上流側閉塞部19と下流側閉塞部20は、円盤ドーナツ形状の部材であって、下方基盤33と上方基盤32の薬剤収容室15側の内面に各々回転スライド可能に密着して取り付けられる。また上流側閉塞部19と下流側閉塞部20は、シール性を確保するためのO−リングを適宜の位置に介在させつつ、上流側閉塞部19と下流側閉塞部20の外周面を外側筒体17の内周面に各々接合一体化すると共に、これらの内周面を内側筒体16の外周面に各々回転スライド可能に密着させて取り付けられる。これによって上流側閉塞部19と下流側閉塞部20は、内側筒体16を中心とした周方向Yに、外側筒体17と一体となって回転移動することになる。
【0022】
また、上流側閉塞部19と下流側閉塞部20の内部には、これらの断面中央部分を同心状かつ円環状に貫通するようにして、原水流入路21及び流出路22が、周方向Yに沿って延設して各々形成されている。原水流入路21が形成された上流側閉塞部19には、内側筒体16の上流側連通孔34と合致することが可能な周方向Yの特定の位置に、内側筒体16の外周面を覆う当該上流側閉塞部19の内壁部分を貫通して、原水流入口37(図4(b)参照)が形成されている。また原水流入路21の天面壁部分を貫通して、収容室連通孔38が周方向Yに複数箇所開口形成されており、これらの収容室連通孔38を介して、原水流入路21から薬剤収容室15に原水を供給することができるようになっている。
【0023】
一方、流出路22が形成された下流側閉塞部20には、内側筒体16の下流側連通孔35と合致することが可能な周方向Yの特定の位置に、内側筒体16の外周面を覆う当該下流側閉塞部20の内壁部分を貫通して、流出口39(図4(b)参照)が、原水流入口37と同じ方向に開口して形成されている。また流出路22の下面壁部分を貫通して、収容室連通孔40が周方向Yに複数箇所開口形成されており、これらの収容室連通孔40を介して、混合用薬剤を混入した原水を薬剤収容室15から流出路22に排出することができるようになっている。
【0024】
そして、本第1実施形態によれば、内側筒体16に対する上流側閉塞部19及び下流側閉塞部20が一体となった外側筒体17の相対的な回転移動によって、図4(a)に示すような、上流側連通孔34及び下流側連通孔35と、原水流入口37及び流出口39とが互いにずれて原水流入路21及び流出路22が閉塞された状態と、図4(b)に示すような、上流側連通孔34及び下流側連通孔35と、原水流入口37及び流出口39とが互いに合致して原水流入路21及び流出路22が開放された状態とを切り替えて、原水流入路21及び流出路22の開閉操作を容易に行うことが可能になる。
【0025】
本第1実施形態によれば、外側筒体17の開閉スライド部材25と共に上記ロック機構を構成する切り欠き凹部26は、図2(a),(b)に示すように、外側筒体17の下方に張り出して設けられた、下方基盤33の外周部分である下方環状突壁30の上端縁部を、例えば開閉スライド部材25の幅と同等かこれよりも若干広い幅で、略矩形形状に下方に切り欠いて形成される。この切り欠き凹部26には、スライド案内溝31に沿って下方にスライド移動させた開閉スライド部材25の下方突出部分25aが嵌合するように係止される。この状態では、外側筒体17に開口形成された薬剤注入口23及び空気孔36と、開閉スライド部材25に開口形成されたスライド注入口24及びスライド空気孔43とが互いに合致して、薬剤収容室15の水抜きや、薬剤収容室15への混合用薬剤の注入を行うことが可能になる(図4(a)参照)。またこの状態では、開閉スライド部材25の下方突出部分25aが切り欠き凹部26に係止して、外側筒体17の周方向Yへの回転移動が確実に阻止されることになる。
【0026】
開閉スライド部材25及び切り欠き凹部26と共に上記ロック機構を構成する切り欠き凹溝28は、外側筒体17の上方に張り出して設けられた、上方基盤32の外周部分である上方環状突壁29の下端縁部を、切り欠き凹部26の直上部分から例えば開閉スライド部材25の幅の1.5〜4倍程度の周方向Yの長さで上方に切り欠いて形成される。また切り欠き凹溝28は、下方突出部分25aが切り欠き凹部26から抜き出されるまで開閉スライド部材25を上方にスライド移動できるような深さで設けられている。
【0027】
この切り欠き凹溝28には、スライド案内溝31に沿って上方にスライド移動させた、開閉スライド部材25の上端部25bにある遊嵌凸部27が遊嵌し、当該切り欠き凹溝28によって画定される領域内においてこの遊嵌凸部27を周方向Yにスライドさせつつ、外側筒体17を内側筒体16に対して周方向Yに回転移動させることが可能になる。この状態では、外側筒体17に開口形成された薬剤注入口23及び空気孔36と、開閉スライド部材25に開口形成されたスライド注入口24及びスライド空気孔43とが互いにずれて閉塞することになる。また遊嵌凸部27が切り欠き凹溝28の右側端部に当接するまで外側筒体17を回転移動することにより、上流側連通孔34及び下流側連通孔35と原水流入口37及び流出口39とが互いに合致して、原水を薬剤収容室15に流入させることが可能になる(図4(b)参照)。さらに、開閉スライド部材25は、切り欠き凹部26が設けられた位置から周方向Yにずれて、これの下端部25aが下方環状突壁30の切り欠き凹部26のない上端縁部に当接することにより、開閉スライド部材25の下方へのスライド移動が確実に阻止されることになる。
【0028】
なお、本第1実施形態によれば、混合用アタッチメント10には、図1及び図3に示すように、その上端部に、上方基盤32を介してシャワー器具11が装着されると共に、その下端部に、下方基盤33を介して例えば脱塩素フィルターを備える浄水部41が装着され、さらにこの浄水部41にシャワー水供給ホース12が接続される。
【0029】
また、本第1実施形態によれば、薬剤収容室15の上流側端部における原水流入路21の収容室連通孔38と接続して、流出路22に向かう螺旋流を薬剤収容室15内に生じさせる螺旋流発生手段が設けられている。すなわち、本第1実施形態によれば、螺旋流発生手段は、例えば円環状断面を有する薬剤収容室15の下端部分に周方向Yに180度の間隔をおいて配置された一対の中空円筒突起42からなるものである。これらの中空円筒突起42は、例えば放流口を、各々円環状断面の薬剤収容室15の周方向Yに沿った同じ回転方向に向けて横向きに開口させていることより、原水流入路21から流入する原水を円環状断面の周方向Yに向けて放流口から放流させ、これによって薬剤収容室15内に、流出路22に向かう螺旋流を発生させるようになっている。
【0030】
そして、上述の構成を有する本第1実施形態の混合用アタッチメント10が取り付けられたシャワー器具11を用いて、混合用薬剤を混合したシャワー水によるシャワーを行うには、まず薬剤収容室15に所望量の混合用薬剤を注入する作業を行う。すなわち、混合用アタッチメント10やシャワー器具11が一体として取り付けられた、図1に示す薬剤散布器具を手で把持し、例えば親指を開閉スライド部材25の隆起部25cに密着係止して、遊嵌凸部27が切り欠き凹溝28の左側端部に当接するまで外側筒体17を回転移動し、さらに開閉スライド部材25を下方にスライド移動して、下方突出部分25aを切り欠き凹部26に係止する。これによって、外側筒体17の薬剤注入口23及び空気孔36と、開閉スライド部材25のスライド注入口24及びスライド空気孔43とが合致するので、空気孔36から空気を排除しつつ、薬剤注入口23を介して薬剤収容室15へ混合用薬剤をスムーズに注入してゆくことが可能になる。またこの注入作業の最中には、下方突出部分25aの切り欠き凹部26への係止によって、外側筒体17の回転移動が阻止されて、薬剤収容室15に原水を流入させることがない。
【0031】
薬剤収容室15へ混合用薬剤を所望量注入したら、例えば上述と同様の親指の操作によって、開閉スライド部材25を、その上端部25bが切り欠き凹溝28の左側端部の上縁部分に当接するまで上方にスライド移動させる。これによって、外側筒体17の薬剤注入口23及び空気孔36と、開閉スライド部材25のスライド注入口24及びスライド空気孔43とがずれて、薬剤注入口23及び空気孔36が閉塞され、注入された混合用薬剤が薬剤収容室15から洩出することなく内部に収容された、薬剤散布までの待機状態となる。また、開閉スライド部材25を上方にスライド移動させた後に、これの下端部25aが切り欠き凹部26から周方向Yに外れるように外側筒体17を僅かに回転移動させることにより、かかる待機状態において、開閉スライド部材25が下方に移動して混合用薬剤が洩出するのを効果的に回避することが可能になる。
【0032】
そして、このような待機状態から、使用者が、例えば入浴の仕上げとしてシャワー水と共に混合用薬剤を身体に散布する際には、例えばシャワーを行いつつ上述と同様の親指の操作によって、開閉スライド部材25の遊嵌凸部27が切り欠き凹溝28の右側端部に当接するまで外側筒体17を回転移動する。これによって、上流側連通孔34及び下流側連通孔35と原水流入口37及び流出口39とが互いに合致し、原水を薬剤収容室15に流入させると共に、混合用薬剤を原水に混合させて下流側流路14に流出させることが可能になり、シャワー水と共に混合用薬剤を身体に散布することができる。
【0033】
シャワーが終了したら、例えば上述と同様の親指の操作によって、外側筒体17を反対側に回転移動して遊嵌凸部27を切り欠き凹溝28の左側端部に当接させ、さらに下方突出部分25aが切り欠き凹部26に係止するまで開閉スライド部材25を下方にスライド移動させる。これによって、外側筒体17の薬剤注入口23及び空気孔36と、開閉スライド部材25のスライド注入口24及びスライド空気孔43とが合致して、混合用薬剤と入れ替わった原水が薬剤注入口23を介して薬剤収容室15から水抜きされ、薬剤収容室15へ混合用薬剤を注入してゆくことが可能な状態に復帰することになる。
【0034】
したがって、本第1実施形態の混合用アタッチメント10、又はこの混合用アタッチメント10を取り付けた薬剤散布器具によれば、例えば親指による簡単な操作によって、薬剤注入口23の開閉操作、及び薬剤収容室15への原水流入路21や流出路22の開閉操作を容易且つスムーズに行うことができると共に、薬剤注入口23を開放したまま薬剤収容室15へ原水が流入するのを確実に回避することができ、且つ取り扱い易さを向上させることが可能になる。
【0035】
また、本第1実施形態によれば、外側筒体17は、開閉スライド部材25を上下にスライド移動させるスライド案内溝31が設けられた5〜20mm程度の幅の帯状部分を除いて、その略全体を一重構造とすることができ、薬剤収容室の外側に周方向Yに回転移動可能なスリーブ部材を設けて二重構造とした場合とは違って、薬剤収容室の外周面とスリーブ部材の内周面との間の隙間に混合用薬剤や原水が侵入してカビやぬめり、水垢等の汚れが発生するのを抑制することができる。また開閉スライド部材25は、外側筒体17の外周面に沿って上下方向にのみスライド移動し、周方向Yへはスライド移動しないので、スライド案内溝31との間の隙間を極僅かなものとすることができ、これによって、カビやぬめり、水垢等の汚れの発生をさらに抑制できる。
【0036】
さらに、本第1実施形態によれば、外側筒体17は、その略全体を一重構造とすることができるので、外側筒体17を透明な部材によって形成しても、二重構造の隙間に蒸気等が侵入して曇ることになるのを回避することができ、これによって薬剤収容室15の内部の混合用薬剤の残量等を容易に確認することができる。
【0037】
なお、本発明は上記第1実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の混合用アタッチメントは、シャワー水に浴用薬剤やスキンケア用薬剤等の身体用薬剤を混合して送り出すものに限定されることなく、シャワー器具以外のその他の薬剤散布器具に取り付けて、各種の液状、ゲル状、粒状、固形状等の家庭用消費薬剤や農業用薬剤等の薬剤を原水に混合するために採用することもできる。また、薬剤収容室の内部に螺旋流を生じさせる螺旋流発生手段は設けても設けなくても良く、内側筒体に対して外側筒体を回転操作して流入路及び流出路を開閉する機構は、上述の開閉機構に限定されるものではない。さらに、混合用アタッチメントは、シャワー器具とシャワー水供給ホースとの間に介在させて取り付ける必要は必ずしもなく、シャワー器具の外部から見えないように当該シャワー器具に内蔵させて取り付けることもできる。さらにまた、開閉スライド部材は、スライド案内溝に填め込まれて当該スライド案内溝に沿って軸方向にスライド移動するものでなくても良い。
【0038】
また、薬剤注入口とスライド注入口とを合致させた状態では内側筒体に対する外側筒体の回転移動を阻止し、原水流入路や流出路が開放された状態では開閉スライド部材のスライド移動を阻止するロック機構として、上記第1実施形態のものに限定されることなくその他の種々のロック機構を採用することができる。例えば、図5(a)に示すように、開閉スライド部材25の突出部分を係止する切り欠き凹部26を、上方環状突壁29の下端縁部を切り欠いて形成し、遊嵌凸部27を遊嵌する切り欠き凹溝28を下方環状突壁30の上端縁部を切り欠いて形成することもできる。また、図5(b)に示すように、切り欠き凹溝28を、外側筒体17の上端縁部又は下端縁部を切り欠いて形成し、遊嵌凸部27を、上方環状突壁29の下端縁部又は下方環状突壁30の上端縁部から突出する部分としても良い。
【0039】
さらに、図5(c)に示すように、切り欠き凹溝28は、上方環状突壁29、下方環状突壁30又は外側筒体17の上端縁部又は下端縁部の内側を、外側表面部分を残して(外側表面部分に切り欠き凹溝28を形成するのではなく)切り欠くことによって形成し、この内側部分の切り欠き凹溝28に、対向する上端縁部又は下端縁部の内側部分から突出させた遊嵌凸部27を遊嵌させるようにすることもできる。このように、切り欠き凹溝28を外側表面部分を残して(外側表面部分に切り欠き凹溝28を形成するのではなく)内側部分に形成することにより、切り欠き凹溝28及び遊嵌凸部27を当該外側表面部分で覆い隠して、これらがシャワー器具や薬剤散布器具の外部から見えないようにすることができ、これによってデザイン性を向上させることが可能になる。また切り欠き凹溝28と遊嵌凸部27による回転機構を内側に設けることによって、汚れやカビの発生をさらに低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係る混合用アタッチメントをシャワー器具に取り付けて使用する状況を説明する側面図である。
【図2】(a),(b)は、本発明の第1実施形態に係る混合用アタッチメントを示す側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る混合用アタッチメントをシャワー器具に取り付けて構成される薬剤散布器具の断面図である。
【図4】(a)は、本発明の第1実施形態に係る混合用アタッチメントの薬剤収容室へ混合用薬剤を注入可能な状態を示す断面図、(b)は、本発明の第1実施形態に係る混合用アタッチメントの混合用薬剤を原水に混合可能な状態を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の混合用アタッチメントにおけるロック機構の他の形態を例示する略示斜視図である。
【図6】従来の混合用アタッチメントの一例を説明する部分破断側面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 混合用アタッチメント
11 シャワー器具
12 シャワー水供給ホース
13 上流側流路
14 下流側流路
15 薬剤収容室
16 内側筒体
17 外側筒体
18 原水主流路
19 上流側閉塞部
20 下流側閉塞部
21 原水流入路
22 流出路
23 薬剤注入口
24 スライド注入口
25 開閉スライド部材
25a 開閉スライド部材の下端部(下方突出部分)
25b 開閉スライド部材の上端部
25c 開閉スライド部材の隆起部
26 切り欠き凹部
27 遊嵌凸部
28 切り欠き凹溝
29 上方環状突壁
30 下方環状突壁
31 スライド案内溝
32 上方基盤
33 下方基盤
34 上流側連通孔
35 下流側連通孔
36 空気孔
37 原水流入口
38 収容室連通孔
39 流出口
40 収容室連通孔
41 浄水部
42 中空円筒突起(螺旋流発生手段)
43 スライド空気孔
X 軸方向
Y 周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側流路と下流側流路との間に介在して設けられ、薬剤収容室に収容された混合用薬剤を上流側流路から流入した原水に混合しつつ、該原水と共に下流側流路に流出させる混合用アタッチメントであって、
同心状に配置された内側筒体と外側筒体とを有しており、前記内側筒体の内側を原水主流路とすると共に、前記内側筒体と前記外側筒体との間の中空部を、両端を上流側閉塞部と下流側閉塞部とで覆って前記薬剤収容室とし、
前記内側筒体に対する前記外側筒体の周方向への回転移動によって、前記上流側閉塞部に形成された原水流入路や前記下流側閉塞部に形成された流出路を開閉するようになっており、
前記外側筒体の周面には、前記薬剤収容室への薬剤注入口が開口形成され、該薬剤注入口と合致可能なスライド注入口を備える帯板状の開閉スライド部材が、前記薬剤注入口を覆って前記外側筒体の軸方向にスライド移動可能に取り付けられており、
且つ前記開閉スライド部材をスライド移動させて前記薬剤注入口と前記スライド注入口とを合致させた状態では、前記内側筒体に対する前記外側筒体の回転移動を阻止し、前記外側筒体を回転移動させて前記原水流入路や前記流出路が開放された状態では、前記開閉スライド部材のスライド移動を阻止するロック機構を備える混合用アタッチメント。
【請求項2】
前記開閉スライド部材は、前記外側筒体の上端縁部又は下端縁部から突出可能にスライド移動できるように取り付けられており、前記ロック機構は、前記開閉スライド部材と、前記外側筒体の下方又は上方において前記開閉スライド部材の端部を係止する切り欠き凹部と、前記外側筒体の上方又は下方に設けられた、遊嵌凸部及び該遊嵌凸部を周方向にスライド移動可能に遊嵌する切り欠き凹溝とからなり、前記開閉スライド部材の端部を前記切り欠き凹部に係止した状態で前記薬剤注入口と前記スライド注入口とを合致させ、該係止した状態を解除して前記遊嵌凸部が前記切り欠き凹溝の一方の端部に当接するまで前記外側筒体を周方向に回転させることにより、前記原水流入路や前記流出路を開放する請求項1記載の混合用アタッチメント。
【請求項3】
前記外側筒体は、当該外側筒体の上方及び下方に設けられた上方環状突壁と下方環状突壁との間に配置されてこれらに対して周方向に回転可能に取り付けられており、前記切り欠き凹部は、前記下方環状突壁の上端縁部又は前記上方環状突壁の下端縁部を切り欠いて形成される請求項1又は2に記載の混合用アタッチメント。
【請求項4】
前記切り欠き凹溝は、前記上方環状突壁の下端縁部又は前記下方環状突壁の上端縁部を切り欠いて形成され、前記遊嵌凸部は、前記外側筒体の上端縁部又は下端縁部から突出する部分である請求項3記載の混合用アタッチメント。
【請求項5】
前記遊嵌凸部は、前記開閉スライド部材の前記切り欠き凹部と嵌合する端部とは反対側の端部を突出させて設けられる請求項4記載の混合用アタッチメント。
【請求項6】
前記切り欠き凹溝は、前記外側筒体の上端縁部又は下端縁部を切り欠いて形成され、前記遊嵌凸部は、前記上方環状突壁の下端縁部又は前記下方環状突壁の上端縁部から突出する部分である請求項3記載の混合用アタッチメント。
【請求項7】
前記切り欠き凹溝は、前記上方環状突壁、前記下方環状突壁又は前記外側筒体の上端縁部又は下端縁部を、外側表面部分を残してこれの内側部分を切り欠くことによって形成される請求項4〜6のいずれかに記載の混合用アタッチメント。
【請求項8】
前記外側筒体の周面には、前記外側筒体の軸方向に延設するスライド案内溝が形成されており、前記開閉スライド部材は、該スライド案内溝に填め込まれて当該スライド案内溝に沿って軸方向にスライド移動する請求項1〜7のいずれかに記載の混合用アタッチメント。
【請求項9】
散布器具に取り付けて使用される請求項1〜8のいずれかに記載の混合用アタッチメント。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の混合用アタッチメントを一体として取り付けた薬剤散布器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−43592(P2006−43592A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228586(P2004−228586)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】