説明

混合装置

【課題】 二酸化炭素ボンベ内の二酸化炭素の残量を把握でき、加工を一時中断することなく好適なタイミングで二酸化炭素ボンベの交換を可能とする混合装置を提供することである。
【解決手段】 純水供給源と、液化二酸化炭素が封入された二酸化炭素ボンベと、該純水供給源から供給された純水と該二酸化炭素ボンベから供給された二酸化炭素とを混合して混合液を生成する混合部と、を備えた純水と二酸化炭素を混合する混合装置であって、該二酸化炭素ボンベに封入された液化二酸化炭素の残量を検出する二酸化炭素残留検出手段を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水と二酸化炭素とを混合する混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、シリコンやガリウム砒素等からなるウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって区画された各領域にICやLSI等の回路素子が形成される。
【0003】
回路素子が形成されたウエーハの裏面を研削装置や研磨装置で研削、研磨してウエーハを所定の厚みへと薄化した後、切削装置によって分割予定ラインに沿って切削して個々の半導体デバイスを製造している。
【0004】
研削装置や研磨装置、切削装置によってウエーハを加工する際には、加工によって発生する加工熱を冷却するとともに加工で生じた加工屑をウエーハ上から除去するために、加工液を供給しつつ加工が遂行される。半導体デバイスではごく微量の不純物でも残留すると品質に重大な影響を及ぼすため、これらの加工液として純水が使用される。
【0005】
ここで、純水とは比抵抗値が約1〜10MΩ・cm以上の水を指す。例えば、純水は市水をフィルタ、活性炭フィルタ、イオン交換樹脂、逆浸透膜等に通過させることで生成される。
【0006】
ところが、一般に純水は比抵抗値が高く非常に絶縁性が高いため、流動による摩擦から静電気が発生し、回路素子の静電破壊を引き起こしたり、加工中の回路素子に切削屑等の微粒子の付着を生じさせてしまう。
【0007】
そこで、純水に二酸化炭素を混合して比抵抗値を例えば0.1〜1MΩ・cm程度に落とした混合液を生成して、この混合液を加工液として用いる手法が広く採用されている(例えば、特開2001−30170号公報参照)。二酸化炭素の供給源としては、液化二酸化炭素を封入した二酸化炭素ボンベが広く利用されている。
【0008】
一般に、純水に二酸化炭素を混合する方法としては、特公平7−67554号公報に開示されるような、純水に二酸化炭素(炭酸ガス)を直接注入する方法や、特開平10−324502号公報に開示されるような、気体は通過するが液体を透過しない疎水性膜を用いて純水中に二酸化炭素(炭酸ガス)を溶解する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−30170号公報
【特許文献2】特公平7−67554号公報
【特許文献3】特開平10−324502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、二酸化炭素を液化させた液化二酸化炭素は大気圧では存在せず、このため、液化二酸化炭素を封入した二酸化炭素ボンベの内圧は高圧となる。この高い内圧に耐えうるために、ボンベは一般的に金属から形成され、残量が外から見えない上、二酸化炭素ボンベ自体も残量計を一般的に備えていない。
【0011】
更に、二酸化炭素はレギュレータを介して二酸化炭素ボンベから供給されるが、二酸化炭素ボンベ内の液化二酸化炭素は一部が気化した状態であるため、ガスの残圧がほぼゼロの状態、即ち、ボンベ内が殆ど空にならないとレギュレータでは残量が分からない。
【0012】
従って、加工装置や混合装置で検出した加工液の比抵抗値が所定値を上回った際に初めて二酸化炭素ボンベ内の二酸化炭素がなくなったことに気づき、従来は加工を一時中断して二酸化炭素ボンベを交換する必要があった。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二酸化炭素ボンベ内の二酸化炭素の残量を把握でき、加工を一時中断することなく好適なタイミングで二酸化炭素ボンベの交換を可能とする混合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、純水供給源と、液化二酸化炭素が封入された二酸化炭素ボンベと、該純水供給源から供給された純水と該二酸化炭素ボンベから供給された二酸化炭素とを混合して混合液を生成する混合部と、を備えた純水と二酸化炭素を混合する混合装置であって、該二酸化炭素ボンベに封入された液化二酸化炭素の残量を検出する二酸化炭素残留検出手段を具備したことを特徴とする混合装置が提供される。
【0015】
請求項2記載の発明によると、請求項1記載の発明において、前記混合部は、前記純水供給源から供給された純水と前記二酸化炭素ボンベから供給された二酸化炭素とを混合して飽和炭酸水を生成する第1混合部と、該第1混合部で生成された飽和炭酸水と該純水供給源から流量計を介して供給される純水とを混合して混合液を生成する第2混合部と、該第1混合部で生成された飽和炭酸水を該第2混合部へ1吐出毎に所定量注入する定量ポンプとを含み、前記二酸化炭素残量検出手段は、該流量計で検出した純水の流量に基づいて、該第2混合部で生成される該混合液の比抵抗値が所定値になるように該定量ポンプの吐出回数を制御する制御部と、該定量ポンプの吐出回数を記憶する吐出回数記憶部と、予め該二酸化炭素ボンベに当初封入された液化二酸化炭素の量を記憶する当初量記憶部とを有する制御手段から構成され、該第1混合部で生成された飽和炭酸水における二酸化炭素の飽和溶解度と、該吐出回数記憶部で記憶している該定量ポンプの吐出回数とから二酸化炭素の使用量を産出し、該当初量記憶部で記憶している液化二酸化炭素の量から該使用量を減算することで、該二酸化炭素ボンベに封入されている二酸化炭素の残量を算出することを特徴とする混合装置が提供される
【発明の効果】
【0016】
本発明の混合装置は、二酸化炭素ボンベに封入された液化二酸化炭素の残量を検出する二酸化炭素残量検出手段を備えるため、二酸化炭素ボンベ内の二酸化炭素の残量を容易に把握することができ、加工を一時中断することなく好適なタイミングで二酸化炭素ボンベの交換が可能となる。
【0017】
請求項2記載の発明によると、流量計で検出した純水の流量に基づいて第2混合部で生成される混合液の比抵抗値が所定値となるように飽和炭酸水を第2混合部へ供給する定量ポンプを作動する。
【0018】
従って、従来からよく利用されている特許文献2に開示された純水に二酸化炭素を直接注入する方法や、特許文献3に開示されている疎水性膜を用いる方法に比べて安定した比抵抗値が得られる上、所望の比抵抗値に到達する時間を短縮できる。
【0019】
また、作動させた定量ポンプの吐出回数と第1混合部で生成された飽和炭酸水における二酸化炭素の飽和溶解度に基づいて、二酸化炭素ボンベ内の二酸化炭素の残量を算出するため、別途二酸化炭素ボンベの残量検出機構を設ける必要が無く、コンパクトな混合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の混合装置で二酸化炭素と混合した純水を切削水として使用可能な切削装置の要部斜視図である。
【図2】本発明実施形態に係る純水に二酸化炭素を混合する混合装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の混合装置を適用するのに適した切削装置の要部斜視図が示されている。半導体ウエーハ8の切削に際して、ウエーハ8は外周部が環状フレーム10に貼着されたダイシングテープ6にその裏面が貼着され、切削装置2のチャックテーブル4によりダイシングテープ6を介して吸引保持される。
【0022】
12は切削装置2の切削ユニットであり、スピンドルハウジング14中に収容された図示しないモータにより回転駆動されるスピンドルと、スピンドルの先端に着脱可能に装着された切削ブレード16とを含んでいる。
【0023】
切削ブレード16は、ホイールカバー18で覆われており、ホイールカバー18のパイプ20が図2に示した本発明の混合装置26の排出口56に流量コントローラを介して接続されている。切削ブレード16は、円形基台の外周にニッケル母材又はニッケル合金母材中にダイアモンド砥粒が分散された砥石部(切刃)が電着されて構成されている。
【0024】
パイプ20から導入された本発明の混合装置26により比抵抗値が所望値に厳密に管理された純水からなる切削水は、切削ブレード6を挟むように設置された切削水ノズル22から噴出されて、ウエーハ8の切削が遂行される。
【0025】
ウエーハ8の切削時には、切削ノズル22から切削水を噴射しながら、切削ブレード16を矢印A方向に高速(例えば30000rpm)で回転させて、チャックテーブル4をX軸方向に加工送りすることにより、ウエーハ8が分割予定ラインに沿って切削されて切削溝24が形成される。
【0026】
以下、例えば、切削装置2の切削水ノズル22に比抵抗値調整済みの切削水を供給するのに適した、本発明実施形態に係る混合措置26を図2に示したブロック図を参照して説明する。
【0027】
純水供給源28から供給された純水は分岐点30で第1経路32aと、第2経路32bに分岐され、第2経路32bを介して第1混合部としての中空糸膜34に供給される。純水供給源28と分岐点30との間には開閉を切り替える切替バルブ36が挿入されている。
【0028】
第1混合部としての中空糸膜34にはレギュレータ40を介して液化二酸化炭素が封入された二酸化炭素ボンベ38から二酸化炭素(炭酸ガス)が供給され、第2経路32bを介して供給された純水と混合されて飽和炭酸水を生成する。
【0029】
中空糸膜34で生成された飽和炭酸水は、定量ポンプ42を駆動することにより送られて、第1経路32aを介して供給される純水と合流点46で合流して、第2混合部48で純水と飽和炭酸水とが混合されて混合液が生成される。
【0030】
定量ポンプ42としては、ピストンタイプ、プランジャータイプ、ダイアフラムタイプ等いろいろなタイプがあるが、本実施形態ではダイアフラムタイプの定量ポンプ42を使用しているので、定量ポンプ42の1吐出はダイアフラムの1往復動となる。
【0031】
第2混合部48には混合手段としてのスタティックミキサー50が配設されていて、このスタティックミキサー50により第1経路32aを介して供給される純水と定量ポンプ42を駆動することにより合流点46に供給される飽和炭酸水が混合されて、混合液が生成される。
【0032】
混合手段としては、スタティックミキサー50に限定されるものではなく、流路を長くして混合手段を形成するか、流路に邪魔板を挿入した貯水タンクを配設して混合手段を形成するか、或いは流入口と流出口の位置を調整して流れを制御することにより混合手段を形成するようにしてもよい。
【0033】
スタティックミキサー50で純水と飽和炭酸水と混合して生成された混合液は、比抵抗値計52を介して排出口56に排出される。比抵抗値計52で検出された混合液の比抵抗値はコントローラ54に入力される。
【0034】
更に、第1経路32aを介して供給される純水の流量は流量センサー44で検出され、検出された流量値はコントローラ54に入力される。図示した実施形態では、流量センサー44は分岐点30よりも下流側の第1経路32a中に配設されているが、流量センサー44を分岐点30より上流側(純水供給側)に配設し、定量ポンプ42の吐出回数から第2経路32bに流れる水量を求めることで第1経路32aに流れる水量を検出してもよい。
【0035】
尚、切替バルブ36はただ単に開閉を切り換えるバルブであり、流量調整バルブではないが、排出口56から排出される混合液の流量が変動するため、第1経路32aを流れる純水の流量は変動する。
【0036】
例えば、混合装置26を図1に示した切削装置2に接続して使用する場合には、切削水ノズル22から噴出される切削水の流量は切削加工中と切削加工の中止状態では大きく変動し、更に図示しない洗浄装置作動時にも洗浄水が使用されるため、排出口56から排出される混合液の流量が変動し、それに伴って第1経路32aを流れる純水の流量も変動する。
【0037】
本実施形態の混合装置26では、比抵抗値計52で検出した混合液の比抵抗値と、流量センサー44で検出した純水の流量とに基づいて、コントローラ54の制御部60で定量ポンプ42の作動を制御し、排出口56から排出される混合液が予め設定した好ましい比抵抗値となるように制御する。
【0038】
より簡単な構成では、比抵抗値計52を省略して、流量センサー44で検出した第1経路32aを流れる純水の流量に基づいて、定量ポンプ42の駆動を制御し、排出口56に排出される混合液の比抵抗値を設定した比抵抗値となるように制御してもよい。
【0039】
この場合には、混合液が設定した比抵抗値となるように、流量センサー44で検出した純水の流量と定量ポンプ42の駆動時間とが関係付けられたマップを利用したフィードフォワード制御となる。
【0040】
図2で符号35は混合部であり、第1混合部としての中空糸膜34と、スタディックミキサー50が配設された第2混合部48と、中空糸膜34で生成された飽和炭酸水を第2混合部48に1吐出毎に所定量注入する定量ポンプ42と、第1経路32aを介して供給される純水の流量を検出する流量センサー44とを含んでいる。
【0041】
第2経路32bには温度計58が配設されており、第2経路32bを介して供給される純水の温度は温度計58により検出されてコントローラ54に入力される。レギュレータ40では二酸化炭素ボンベ38からの給気圧力を所定値に設定し、この設定給気圧力がコントローラ54に入力される。
【0042】
本実施形態の混合装置26は、二酸化炭素ボンベ38に封入された液化二酸化炭素の残量を検出する二酸化炭素残量検出手段を備えたことを特徴とする。この二酸化炭素残量検出手段は、コントローラ54内に配設された、流量センサー44で検出された純水の流量に基づいて第2混合部48で生成される混合液の比抵抗値が所定値になる様に定量ポンプ42の吐出回数を制御する制御部60と、定量ポンプ42の吐出回数を記憶する吐出回数記憶部62と、予め二酸化炭素ボンベ38に当初封入されていた液化二酸化炭素の量を記憶する当初量記憶部64とから構成される。
【0043】
コントローラ54の制御部60では、第1混合部34で生成された飽和炭酸水における二酸化炭素の飽和溶解度と、吐出回数記憶部62で記憶している定量ポンプ42の吐出回数から二酸化炭素の使用量を算出し、当初量記憶部64で記憶している二酸化炭素の当初量から使用量を減算することで、二酸化炭素ボンベ38に封入されている二酸化炭素の残量を算出する。
【0044】
飽和溶解度は以下の2つの方法により算出することができる。第1の方法は、純水供給源28の設定水温と、レギュレータ40で設定する二酸化炭素ボンベ38からの設定給気圧力に基づいて理論値を算出し、この理論値に基づいて飽和溶解度を算出する。第2の方法は、温度計58で検出する第2経路32bを流れる純水の水温と、レギュレータ40の設定給気圧力とに基づいて飽和溶解度を算出する。
【0045】
上述した実施形態では、二酸化炭素残量検出手段を、コントローラ54の制御部60と、吐出回数記憶部62と、当初量記憶部64とから構成しているが、二酸化炭素残量検出手段はこの構成に限定されるものではなく、二酸化炭素ボンベ38を計りの上にのせ、二酸化炭素ボンベ38の重量変化から二酸化炭素の残量を検出するようにしてもよい。
【0046】
上述した実施形態の二酸化炭素残量検出手段では、作動させた定量ポンプ42の吐出回数と、第1混合部34で生成された飽和炭酸水における二酸化炭素の飽和溶解度とに基づいて、二酸化炭素ボンベ38中の液化二酸化炭素の残量を算出するため、別途二酸化炭素ボンベ38の残量検出機構を設ける必要が無く、コンパクトな混合装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
2 切削装置
16 切削ブレード
22 切削水ノズル
26 混合装置
28 純水供給源
38 二酸化炭素ボンベ
34 中空糸膜
42 定量ポンプ
44 流量センサー
48 第2混合部
50 スタティックミキサー
52 比抵抗値計
54 コントローラ
58 温度計
60 制御部
62 吐出回数記憶部
64 当初量記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水供給源と、液化二酸化炭素が封入された二酸化炭素ボンベと、該純水供給源から供給された純水と該二酸化炭素ボンベから供給された二酸化炭素とを混合して混合液を生成する混合部と、を備えた純水と二酸化炭素を混合する混合装置であって、
該二酸化炭素ボンベに封入された液化二酸化炭素の残量を検出する二酸化炭素残留検出手段を具備したことを特徴とする混合装置。
【請求項2】
前記混合部は、
前記純水供給源から供給された純水と前記二酸化炭素ボンベから供給された二酸化炭素とを混合して飽和炭酸水を生成する第1混合部と、
該第1混合部で生成された飽和炭酸水と該純水供給源から流量計を介して供給される純水とを混合して混合液を生成する第2混合部と、
該第1混合部で生成された飽和炭酸水を該第2混合部へ1吐出毎に所定量注入する定量ポンプとを含み、
前記二酸化炭素残量検出手段は、
該流量計で検出した純水の流量に基づいて、該第2混合部で生成される該混合液の比抵抗値が所定値になるように該定量ポンプの吐出回数を制御する制御部と、
該定量ポンプの吐出回数を記憶する吐出回数記憶部と、
予め該二酸化炭素ボンベに当初封入された液化二酸化炭素の量を記憶する当初量記憶部と、を有する制御手段から構成され、
該第1混合部で生成された飽和炭酸水における二酸化炭素の飽和溶解度と、該吐出回数記憶部で記憶している該定量ポンプの吐出回数とから二酸化炭素の使用量を産出し、
該当初量記憶部で記憶している液化二酸化炭素の量から該使用量を減算することで、該二酸化炭素ボンベに封入されている二酸化炭素の残量を算出することを特徴とする請求項1記載の混合装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−110817(P2012−110817A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261102(P2010−261102)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】