説明

混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法

【課題】粘度上昇が生じない、風味良好な長期間保存時において乳蛋白質の凝集、沈殿を生じない混濁物質入り乳性酸性飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも(a)乳を乳酸発酵して得られた乳酸菌発酵酸性乳、(b)混濁果汁および/又は混濁野菜汁、(c)ジェランガム、(d)大豆食物繊維をジェランガムが溶解しない温度で混合した溶液を均質化処理した後、ジェランガムが溶解する温度以上で加熱処理する混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法。ジェランガムが溶解しない温度が70℃未満である。加熱処理を70℃以上で行なうのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法であって、ジェランガム、大豆食物繊維から成る安定剤によって安定化した酸性乳蛋白質、混濁果汁および/又は混濁野菜汁等の混濁物質を液中に分散させた後に、加熱処理してジェランガムを溶解後に冷却した場合に、酸性乳蛋白質と混濁果汁および/又は混濁野菜汁等の混濁物質が共に沈降することがない保存安定性の高い混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
常温流通の飲料のシェルフライフは、流通時間および消費者の手元での保存期間を考慮し、一般的に半年〜1年程度が望まれる。飲料のシェルフライフを決定する要因として、微生物の増殖(腐敗)、風味・色調の劣化、凝集沈殿などいくつかの要因が挙げられる。常温流通の酸性乳飲料においては、乳蛋白質の凝集沈殿が早いためにシェルフライフの決定要因となっている。言い方をかえれば、乳蛋白質の凝集沈殿を抑制することにより、酸性乳飲料のシェルフライフを延長することができる。
【0003】
近年は、PETボトルやガラス瓶などの透明容器の使用が拡大し、金属缶など不透明容器では問題にならない程度の小量の沈殿も製品の外観不良となるため、これまで開示された技術よりもさらに沈殿を抑制する技術が望まれている。
【0004】
乳蛋白質は、酸性条件下ではプラスの荷電をもったミセル構造を有し、なんらかの安定化技術を用いなければ数時間から数日の静置によって沈降する。豆乳蛋白質も同様である。乳蛋白質の沈殿を抑制する製法に関しては、種々の工夫が提案されており、ペクチンや大豆食物繊維を用いて静電気的、あるいは粒子表面の吸着層あるいは溶媒和層による立体障害的作用による分散の系が提案されている。カルシウムにより促進される乳蛋白質の沈殿をペクチンで抑制する技術(特許文献1)、大豆食物繊維で乳蛋白質の沈殿を抑制する技術(特許文献2)などが開示されているが、酸性乳飲料に果汁・野菜汁などを加えた場合、乳蛋白質がポリフェノールほか植物由来物質と反応し凝集を起こすため、酸性乳のみの場合よりも安定化は困難になり、また果汁の種類、パルプ物質の量、混合比率、製品の比重などの条件により安定化は異なるために、この様な種々の条件下において安定化することができる技術は未だに知られていない。
【0005】
また、ジェランガムを用いた飲料およびその製造方法についても、いくつかの技術が開示されている。ジェランガムは、高濃度で溶解して冷却すればゲルを形成し、低濃度ではゾル化し液状となる多糖類である。殆ど粘度に影響しないゾル状態であっても、液中で分子が集合した網目構造を形成し、細断したゼリーや果肉などの径数mm以下程度の粒状食品を液中に分散させるのに適している。しかし、酸性条件下の乳蛋白質粒子については直径が数μmと小さく、ジェランガムゾルの網目構造は網の目が大きいため、乳蛋白質の沈殿を抑制する程の効果は発揮できない。また、ジェランガムは、弱いながら乳蛋白質と反応し条件によってはかえって沈殿を増すという性質がある。
【0006】
ジェランガムを用いて粒状食品を液中に分散させる例として、例えば特許文献3、特許文献4では、ともに細断したゼリーや果肉などの数mm程度の粒状食品を液中に分散させることを目的としており、乳蛋白質粒子のような直径が数μmの微細粒子については記載がない。また、特許文献5は、飲用または食用時の流動性のあるゲルの製造方法であり、特許文献6は、ジェランガム等の膠質を原料とする耐熱性ゼリー細片を混入後に加熱殺菌できる長期保存可能な飲料を得ることが目的であり、いずれも乳蛋白質の安定化技術は示唆されていない。特許文献7は、ジェランガムとカルボキシルメチルセルロースとの組み合わせにより沈殿や離水を防止する対象として、チョコレートミルクなど乳飲料を含めているが、これらは中性の乳飲料であり、乳蛋白質が不安定化する酸性乳飲料は含まれていない。特許文献8は、ジェランガムを糊料ないしゲル化材とする酸乳食品であり、乳蛋白質の安定化を目的としている。しかし、酸性乳と混濁果汁および/又は混濁野菜汁等の混濁物質との組み合わせによる乳蛋白質の安定化技術は示唆されていない。
【特許文献1】特開平8−56567号公報
【特許文献2】特開平9−94060号公報
【特許文献3】特開平5−3773号公報
【特許文献4】特開平8−23893号公報
【特許文献5】特開平7−284652号公報
【特許文献6】特開平7−67593号公報
【特許文献7】特表平8−509611号公報
【特許文献8】特開昭62−126932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この様な従来技術に鑑みて、天然多糖類のジェランガムを用いているにも関わらず粘度上昇が生じない、風味が良好な、長期保存時において乳蛋白質の凝集・沈殿を生じることのない、混濁果汁・混濁野菜汁等の混濁物質入りの酸性乳飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも(a)乳を乳酸発酵して得られた乳酸菌発酵酸性乳、(b)混濁果汁および/又は混濁野菜汁、(c)ジェランガム、(d)大豆食物繊維をジェランガムが溶解しない温度で混合した溶液を均質化処理した後、ジェランガムが溶解する温度以上で加熱処理することを特徴とする混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、(a)乳を乳酸発酵して得られた乳酸菌発酵酸性乳と(d)大豆食物繊維を含む溶液を均質化処理した後、(c)ジェランガムが溶解しない温度でジェランガム、(b)混濁果汁および/又は混濁野菜汁を混合して溶液を調製した後、ジェランガムが溶解する温度以上で加熱処理することを特徴とする混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法を提供するものである。
【0010】
前記溶液にさらに(e)酸味料を含み、該溶液をジェランガムが溶解する温度以上で加熱処理するのが好ましい。
本発明者らは、各種の増粘剤およびゲル化剤を比較検討し、乳蛋白質と反応性の弱いことからジェランガムを選択した。ジェランガムを用いてもなお、乳蛋白質とわずかに反応して、若干の凝集沈殿が起こるが、乳蛋白質と他の安定剤とを十分に反応させて乳蛋白質を安定化した後にジェランガムを溶解すれば、乳蛋白質とジェランガムの凝集反応を防止できることを見い出した。
【0011】
尚、ジェランガムの配合を、乳蛋白質を安定化した後に行う必要はなく、ジェランガムが溶解しない温度、例えば70℃未満、好ましくは10〜50℃で酸性乳等の原材料と配合すれば、ジェランガムは溶解せずに懸濁しており、一方、大豆食物繊維から成る安定剤は溶解するので、この状態で均質化処理を行ない、乳蛋白質と安定剤を十分に反応させる。この後に、ジェランガムが溶解する温度、例えば70℃以上に加熱してジェランガムを溶解する。
【0012】
また、ジェランガムは、混濁果汁・混濁野菜汁等の混濁物質を液中へ分散・浮遊させるために、両者の相乗作用により沈降する乳蛋白質粒子を保持する機能を有し、乳蛋白質粒子の沈殿形成は顕著に減少することを見い出した。
【0013】
例えば、混濁果汁のかわりに、混濁果汁から固形成分を除いた透明果汁を用いると、乳蛋白質の沈殿を保持する混濁物質に含まれる固形成分がないために、乳蛋白質の沈殿抑制効果は認められない。
【0014】
従って、酸性乳飲料の安定化のために、ジェランガム、大豆食物繊維から成る安定剤、混濁果汁および/又は混濁野菜汁等の混濁物質が必須原料であることが明らかになり、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0015】
以上説明した様に、本発明によれば、酸性乳と混濁果汁や混濁野菜汁等の混濁物質を含んでいるにも関わらず、ジェランガムと更に大豆食物繊維から成る安定剤を組み合わせ使用して溶解と加熱温度を調整することにより、粘度上昇が生じない、風味良好な長期間保存時において乳蛋白質の凝集、沈殿を生じない混濁物質入り乳性酸性飲料が得られる。
【0016】
また、本発明の製造方法によれば、前記飲料を容易にかつ工業的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明の混濁物質入り酸性乳性飲料は、酸性乳、混濁果汁および/又は混濁野菜汁等の混濁物質、ジェランガム、大豆食物繊維から成る安定剤を必須成分として含有することを特徴とする。
【0018】
酸性乳に用いる原料乳としては、牛乳、山羊乳、羊乳、馬乳等の獣乳、豆乳等の植物乳が挙げられる。原料乳の形態としては、全脂乳、脱脂乳、乳清およびこれらの粉乳、濃縮乳からの還元乳等を用いることができる。これらの原料乳は、酸性乳の調整時において単独もしくは混合物として用いることもできる。原料乳の無脂乳固形分濃度は、0.1〜15重量%となるように調製されたものを用いるのが好ましい。無脂乳固形分濃度が0.1重量%未満では、乳風味を得ることができず、また乳蛋白質の凝集反応もほとんど問題にならなくなる。無脂乳固形分濃度が15重量%を越えると、酸性化時に粘度が増加して飲料としての清涼感が失われる。
【0019】
原料乳類を酸性化して酸性乳とする方法としては、乳酸発酵乳製品の製造に一般に用いられる乳酸菌スターターを乳類に対して接種し、通常行われている乳酸発酵の条件により発酵する方法が挙げられ、その方法により得られる乳酸発酵乳を酸性乳として用いることができる。
【0020】
本発明の酸性乳性飲料中における酸性乳の含有量は、固形分として0.1〜10重量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜3重量%である。
混濁物質には、混濁果汁および混濁野菜汁等が用いられる。混濁果汁としては、オレンジ、ミカン、グレープフルーツ、レモン等の柑橘類、イチゴ、ブルーベリーなどのベリー類、リンゴ、洋なし、モモ、ブドウ、キウイフルーツ、メロン、バナナ、パイナップル、パパイヤ等の混濁果汁およびピューレが挙げられる。混濁野菜汁としては、トマト、ピーマン、カボチャ、ニンジン、ビート、ラディッシュ、セロリ、レタス、キャベツ、ハクサイ、ミツバ、モロヘイヤ、ケール、ほうれんそう、クレソン、パセリ、シソ等の混濁野菜汁およびピューレが挙げられる。混濁果汁および混濁野菜汁の混濁物質には、果肉質、野菜組織、パルプ質、繊維質、さのう等の固形成分が含まれおり、この固形成分が乳蛋白質の沈殿抑制効果を示し、混濁果汁および混濁野菜汁から固形成分を除いた透明果汁および透明野菜汁では乳蛋白質の沈殿抑制効果は認められない。
【0021】
本発明の酸性乳性飲料中における混濁物質の含有量は、0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜25重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
安定剤としては、前記酸性乳に作用してカゼインとの複合体を形成する作用を有する原材料であって、大豆食物繊維が好ましい。大豆食物繊維は酸性乳性飲料中に0.03〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の濃度で使用することが好ましい。0.03重量%未満では、十分な安定化能力を発揮することができず、5重量%を越えると粘度が増加して飲料としての清涼感が失われる。安定剤は、あらかじめ調製した水溶液として添加使用するのが好ましい。
【0022】
ジェランガムとしては、特に制限はなく、ネイティブジェランガム(高アセチル化ジェランガム)および低アセチル化ジェランガムのいずれも用いることができるが、特に1−3結合したグルコース残基にグリセリル基1残基とアセチル基が平均1/2残基結合したネイティブジェランガムが、乳蛋白質との反応性が弱く好ましい。ジェランガムの使用濃度は、厳密には液中に含まれるカルシウムやナトリウム等のイオン濃度の影響を受けるが、カルシウム強化などを行なわない一般の飲料においては、0.01〜0.05重量%の濃度で使用することが好ましい。0.01重量%未満では、十分な安定化能力がなく、0.05重量%を越えると粘度増加および冷却時にゲル化して飲料としての清涼感が失われる。ジェランガムは、酸性乳と安定剤の均質化の後に添加することも可能ではあるが、液温がジェランガムが溶解しない温度であれば、安定剤は溶解しているがジェランガムは溶解せずに懸濁した状態で調整することができる。
【0023】
また、本発明の酸性乳性飲料には、その他の成分として、糖類、酸味料、香料、色素、高甘味度甘味料等を添加することができる。
また、上記の各成分に水を添加して濃度を調製する。
【0024】
次に、本発明の酸性乳性飲料の製造方法について説明する。
本発明の酸性乳性飲料は、少なくとも酸性乳、混濁果汁および/又は混濁野菜汁等の混濁物質、ジェランガム、大豆食物繊維から成る安定剤を必須原料として、必要に応じてその他の成分および水を用いてジェランガムが溶解しない温度、例えば70℃未満で混合溶液を調製する。混合溶液のpHは2.5〜4.5、好ましくは3〜4の範囲が望ましい。
【0025】
前記酸性乳、安定剤、混濁果汁および混濁野菜汁等の混濁物質を含む原材料を調整するには、乳蛋白質と安定剤の複合体を効率的に形成する目的で、原材料配合液を100〜500kg/cm2程度の均質化処理を行うのが好ましい。混濁果汁および混濁野菜汁等の混濁物質は、均質化処理後に配合することもできる。
【0026】
均質化処理は、特に制限はないが、例えば食品加工に一般に用いられるホモゲナイザー等の均質化処理装置を用いて行なうのが好ましい。
均質化処理した後にジェランガムを完全に溶解するために、ジェランガムの溶解温度以上に加熱して混濁物質入り酸性乳性飲料を得る。ジェランガムの溶解温度は、原材料配合液に含有されている塩類やpHにより異なるが、ネイティブジェランガムの場合約70〜80℃の範囲であり、この温度以上で加熱処理すればよく、例えば70℃以上で加熱処理を行なえばよい。この加熱処理は、殺菌のための加熱を兼ねることができる。
【0027】
また、製品を常温流通とするためには、食品衛生法に定められた殺菌条件を超える必要がある。常温流通商品としての殺菌条件に満たない温度を用いる場合は、冷蔵流通商品とすることもできる。
【実施例】
【0028】
以下実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
ジェランガム濃度別の実施例
果糖ぶどう液糖100g、乳酸菌発酵酸性乳20g、大豆食物繊維(商品名:SM−910、三栄源エフ、エフ、アイ株式会社製)およびネイティブジェランガム(商品名:ビストップ D−1677、三栄源エフ、エフ、アイ株式会社製)混合分散水溶液50g(大豆食物繊維2g、ネイティブジェランガム0.05〜3g含有)、オレンジ混濁果汁(商品名:65°ネーブルオレンジ混濁果汁、日進通商株式会社製)50g、結晶クエン酸2g、香料2gに全体が1000gとなるように加水して混合溶液を調製した。混合溶液のpHは3.5であり、液温は18℃であった。
【0029】
この混合溶液をラボラトリーホモゲナイザー(型式15M−8BA マトントゴーリン社製)により、均質化処理(圧力150kg/cm2、処理流量2500ml/min)した後、90℃達温加熱処理してガラス壜透明容器に熱時充填し冷却した。室温に2週間放置し沈殿生成量を観察した。同時に風味についても官能検査を実施した。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
(注)
(1)外観観察
+++:沈殿多し
++ :沈殿やや多い
+ :若干の沈殿
− :沈殿なし
(2)風味
官能検査は、N=20により行なった。
(3)*は比較例を示す。
この結果から、ネイテイブジェランガムの有効濃度は0.015〜0.05重量%であることが認められる。
【0032】
実施例2
ネイテイブジェランガムと併用するペクチンと大豆食物繊維の比較
果糖ぶどう液糖100g、乳酸菌発酵酸性乳20g、乳安定剤およびネイティブジェランガム混合分散水溶液50g(ネイティブジェランガム0.02g含有、乳安定剤添加は下記の表2に示す。)、オレンジ混濁果汁50g、結晶クエン酸2g、香料2gに全体が1000gとなるように加水して混合溶液を調製した。混合溶液のpHは3.5であり、液温は18℃であった。
【0033】
この混合溶液を実施例1と同様に均質化処理(圧力150kg/cm2、処理流量2500ml/min)した後、90℃達温加熱処理してガラス壜透明容器に熱時充填し冷却した。室温に2週間放置し沈殿生成量を観察した。同時に風味についても官能検査を実施した。その結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
(注)*は比較例を示す。
この結果から、清涼感があり安定性の優れた組合わせは、ネイテイブジェランガムと大豆食物繊維であることが認められる。
【0036】
実施例3および比較例1
アップルの混濁果汁と透明果汁の比較例
果糖ぶどう液糖100g、乳酸菌発酵酸性乳20g、安定剤およびネイティブジェランガム混合分散水溶液50g(大豆食物繊維2g、ネイティブジェランガム0.2g含有)、アップル混濁果汁あるいはアップル透明果汁50g、結晶クエン酸2g、香料2gを加え、全体が1000gとなるように加水して混合溶液を調製した。混合溶液のpHは3.5であり、液温は18℃であった。
【0037】
この混合溶液を実施例1と同様に均質化処理(圧力150kg/cm2、処理流量2500ml/min)した後、90℃達温加熱処理してガラス壜透明容器に熱時充填し冷却した。室温に2週間放置し沈殿生成量を観察した。その結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
(注)
アップル混濁果汁は、1/4アップル混濁果汁(湘南香料株式会社)を用いた。
アップル透明果汁は、70°アップル透明果汁(湘南香料株式会社)を用いた。
【0040】
この結果から、混濁果汁の場合に顕著な効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、酸性乳と混濁果汁や混濁野菜汁等の混濁物質を含んでいるにも関わらず、ジェランガムと更に大豆食物繊維から成る安定剤を組み合わせ使用して溶解と加熱温度を調整することにより、粘度上昇が生じない、風味良好な長期間保存時において乳蛋白質の凝集、沈殿を生じない混濁物質入り乳性酸性飲料の製造方法に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(a)乳を乳酸発酵して得られた乳酸菌発酵酸性乳、(b)混濁果汁および/又は混濁野菜汁、(c)ジェランガム、(d)大豆食物繊維をジェランガムが溶解しない温度で混合した溶液を均質化処理した後、ジェランガムが溶解する温度以上で加熱処理することを特徴とする混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法。
【請求項2】
(a)乳を乳酸発酵して得られた乳酸菌発酵酸性乳と(d)大豆食物繊維を含む溶液を均質化処理した後、(c)ジェランガムが溶解しない温度でジェランガム、(b)混濁果汁および/又は混濁野菜汁を混合して溶液を調製した後、ジェランガムが溶解する温度以上で加熱処理することを特徴とする混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法。
【請求項3】
ジェランガムが溶解しない温度が70℃未満である請求項1または2記載の混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法。
【請求項4】
加熱処理を70℃以上で行なう請求項1乃至3のいずれかの項に記載の混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法。
【請求項5】
前記溶液にさらに(e)酸味料を含み、該溶液をジェランガムが溶解する温度以上で加熱処理する請求項1乃至4のいずれかの項に記載の混濁物質入り酸性乳性飲料の製造方法。

【公開番号】特開2006−325606(P2006−325606A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248449(P2006−248449)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【分割の表示】特願平10−87995の分割
【原出願日】平成10年3月17日(1998.3.17)
【出願人】(000104353)カルピス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】