説明

混練機

【課題】混合槽と加圧蓋の隙間からのフィラーの噴出を防止することにより、混練工程中の清掃工程をなくすとともに、フィラーの配合比率を安定させ、かつ混練完了後のフィラーの落下、混入による分散不良を防止し、混練材料の分散、均一性の向上と品質の安定を図ることができる混練機を提供すること。
【解決手段】混練材料を収容する混合槽1と、混合槽1に収容された混練材料を混練する並列した2本のロータ2、2と、混合槽1の上部開口部に摺動可能に挿入される加圧蓋3とを備え、加圧蓋3の混合槽1との摺動部を、上下複数段に区分し、下段蓋31には、下段蓋31と混合槽側壁間13との隙間を可及的小とするパッキンP1を配備し、上下蓋間には空気溜まり33を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練機に関し、特に、混合槽と加圧蓋の隙間からのフィラーの噴出を防止することにより、混練工程中の清掃工程をなくすとともに、フィラーの配合比率を安定させ、かつ混練完了後のフィラーの落下、混入による分散不良を防止し、ゴムやプラスチック等の混練材料の分散、均一性の向上と品質の安定を図ることができる混練機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、混練機は、図6に示すように混合槽1内に2本のロータ2、2が配設され、互いに内側に回転するようにし、かつ混練材料が常に混合槽1の内側(中央側)に移送されるようにロータにねじれを加えたロータ翼22(ねじれ翼)を形成し、さらにゴムやプラスチック等の混練材料をこの2本のロータ2、2に噛み込ませるために、混合槽1の上部に加圧蓋4が配設されている。
また、混練材料のロータ間への噛み込みを一層効果的に行うために、加圧蓋4にエアシリンダ等(図示省略)の加圧手段を配設することにより一定の加圧力が付加された状態のもとで加圧蓋4を上下動できるようにして、混合槽1の内断面が混練材料に適した形状及び内容積になるように構成している。
【0003】
ところで、この種の混練機を用いて混練材料を混練する際、ロータ2、2の回転により混練材料内の空隙(ボイド)の体積と形が様々に変化し、この変化による材料挙動の反力により加圧蓋4に上下動(ダンシング)が起こり、混合槽1と加圧蓋4の隙間から空気と一緒に混練材料に含まれるフィラーが噴出することがあった。
【0004】
そして、このようにして噴出したフィラーが周囲に飛散しないように、また、噴出したフィラーの清掃を簡易に行えるように、フィラーが噴出する混合槽1の箇所にダストカバーを取り付け、噴出したフィラーによって混合槽1上部の周囲や加圧蓋4の上面が汚れると、ダストカバーを開放して清掃を行うようにしていた。
【0005】
しかしながら、フィラーが加圧蓋4の上部に噴出すると、周囲が汚れるだけでなく、加圧蓋4の上面42及び混合槽1上部の開口縁周部1a等に堆積したフィラーの清掃工程を混練工程中に設定する必要があり、設備の稼働を停止することから生産性が著しく低下するという問題がある。
また、噴出したフィラーの分だけ配合比率の変化が生じ、バッチ間で品質のバラツキが出たり、加圧蓋の上部に噴出し、加圧蓋上面42及び混合槽上部開口縁周部1a等に堆積したフィラーが、混練完了後の材料排出時に材料内に落下、混入して、これが分散不良の原因となったりする問題もあった(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特公平7−61438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の混練機が有する問題点に鑑み、混合槽と加圧蓋の隙間からのフィラーの噴出を防止することにより、混練工程中の清掃工程をなくすとともに、フィラーの配合比率を安定させ、かつ混練完了後のフィラーの落下、混入による分散不良を防止し、混練材料の分散、均一性の向上と品質の安定を図ることができる混練機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の混練機は、混練材料を収容する混合槽と、該混合槽に収容された混練材料を混練する並列した2本のロータと、該混合槽の上部開口部に摺動可能に挿入される加圧蓋とを備えた混練機において、加圧蓋の混合槽との摺動部を、上下複数段に区分し、下段蓋には、該下段蓋と混合槽側壁間との隙間を可及的小とするパッキンを配備し、前記上下蓋間には空気溜まりを形成したことを特徴とする。
【0009】
この場合において、上段蓋及び下段蓋の対向面となる上側面及び下側面を、外方に向かって開く傾斜面とするとともに、前記両傾斜面を曲側面で連続するように形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の混練機によれば、混練材料を収容する混合槽と、該混合槽に収容された混練材料を混練する並列した2本のロータと、該混合槽の上部開口部に摺動可能に挿入される加圧蓋とを備えた混練機において、加圧蓋の混合槽との摺動部を、上下複数段に区分し、下段蓋には、該下段蓋と混合槽側壁間との隙間を可及的小とするパッキンを配備し、前記上下蓋間には空気溜まりを形成したことから、下段蓋から粉体の噴出が発生した場合でも、空気溜まりによって噴出した粉体の勢いを抑え、最上段の蓋と混合槽側壁との隙間から外部への噴出を有効に防止することができ、これにより、混練工程中の清掃工程をなくすとともに、フィラーの配合比率を安定させ、かつ混練完了後のフィラーの落下、混入による分散不良を防止し、混練材料の分散、均一性の向上と品質の安定を図ることができる。
【0011】
この場合、上段蓋及び下段蓋の対向面となる上側面及び下側面を、外方に向かって開く傾斜面とするとともに、前記両傾斜面を曲側面で連続するように形成することによって、下段蓋から侵入するフィラーを含んだ空気の流れが曲面部分でスムーズに円弧を描くこととなり、蓋間の側面に付着堆積する粉体の量を大きく低減することのできる混練機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の混練機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1〜図3に、本発明の混練機の一実施例を示す。
この混練機は、混練材料を収容する断面が繭形をした混合槽1と、該混合槽1に収容された混練材料を混練する並列した2本のロータ2と、該混合槽1の上部開口部に摺動可能に挿入される加圧蓋3とを備える。
【0014】
混合槽1の対向する側壁11間には、ロータ翼22の回転軌跡の外周縁に添うように繭形に成形した周壁12が配設されており、これにより、混合槽1の断面形状を繭形にし、側壁11と周壁12とでチャンバーを形成している。
周壁12は、詳しくは、2本の並列するロータ2のロータ翼22の外周面のうち、その底部となる部分と側部となる部分とを囲むように繭形に形成されているが、周壁12の上部は解放されていて、この解放された開口部に加圧蓋3が配設されている。
【0015】
ロータ2は、混合槽1の側壁11を貫通させて2本のロータ軸21を平行に配設し、かつそれぞれ内側に回転するように支持するとともに、この各ロータ軸21に混練材料を混練するために、ロータ軸21の一端から他端側に向けてロータ軸21の略中央までの間に亘って、ねじれを加えたロータ翼22を一体に形成している。
そして、両ロータ2は、ロータ翼22が回転方向に互いに90°或いは任意の角度に位相をずらせた状態で、駆動装置(図示省略)により両ロータ2が同速度で、或いは異速度で、回転するようになっている。
【0016】
加圧蓋3には、混合槽1の側壁11のロータ2よりも上方部分と周壁12の上方側壁13との4面の隙間からフィラーが外部に噴出することがないように、下段蓋31と上段蓋32を上下に配備し、下段蓋31の混合槽との摺動部には前記隙間を可及的に小とするようにパッキンP1を配設する。上段蓋32と混合槽1の側壁11、13との隙間は3mm程度とすることが好ましい。
この下段蓋31と上段蓋32との間には環状の空気溜まり33を形成する。この空気溜まり33によって下段蓋31から噴出したフィラーの勢いを抑え上段蓋32により外部への噴出を抑制することができる。この際、図に示すように下段蓋31の上側面を傾斜面34によって構成し、下段蓋31と上段蓋32との間に形成する空気溜まり33を正面視断面が台形の環状(ドーナツ状)にするときは下段蓋31から噴出したフィラーは傾斜面34に沿って拡がり、上段蓋32の下面に衝突してその勢いを有効に抑えることができる。また、加圧蓋3が上昇するときには空気溜まり33に入ったフィラーが落下し滑り落ちて下段蓋31と側壁11との隙間より混合槽1内に戻される。
また、下段蓋31の上側面と上段蓋32の下側面とをそれぞれ外方に向かって開く、傾斜面35と傾斜面36とし、前記両傾斜面35、36を曲側面37で連続するように形成することができる。これによって図3に示すように下段蓋31から侵入するフィラーを含んだ空気の流れが、傾斜面35、36と曲側面37に沿ってスムーズに円弧を描くこととなり、両蓋間に付着堆積しようとする粉体の量を大きく低減することができる。また、上方から下方に向かった傾斜面36とすることによって、上段蓋32下面の清掃時に覗き込むことなく当該箇所へのフィラーの付着が確認でき、確実かつ容易に清掃をすることができる。
この際、空気溜まり33は図例の環状のもののほか、リブで複数室に区分けされたものであってもよく、この場合、上段蓋32を装着するフランジ部分の強度を向上させることができる。
【0017】
また、加圧蓋3には、エアシリンダのピストンロッド5やガイドロッド6を配設し、上下動可能に支持することにより、混合槽1の内部が混練材料に適した形状及び内容積となるように調整し、混練材料のロータ2間への噛み込みを効果的にしている。
【0018】
かくして、本実施例の混練機は、混練材料を収容する断面が繭形をした混合槽1と、該混合槽1に収容された混練材料を混練する並列した2本のロータ2と、該混合槽1の上部開口部に摺動可能に挿入される加圧蓋3とを備えた混練機において、加圧蓋3に配設した下段蓋31と上段蓋32によって形成した空気溜まり33によって、混合槽1と加圧蓋3の隙間から外部へのフィラーの噴出を防止することができ、これにより、混練工程中の清掃工程をなくすとともに、フィラーの配合比率を安定させ、かつ混練完了後のフィラーの落下、混入による分散不良を防止し、混練材料の分散、均一性の向上と品質の安定を図ることができる。
【実施例2】
【0019】
図4に、本発明の混練機の加圧蓋の別の実施例を示す。
図4(a)に示す混練機の加圧蓋3は、加圧蓋を下段蓋31、中段蓋32A、上段蓋32Bの3段に構成したもので混合槽1から加圧蓋3外部へのフィラーの噴出を有効に防止する。この場合、図4(a)に示すように、下段蓋31にのみパッキンP1を配設する他、図4(b)に示すように、中段蓋32AにもパッキンP2を配設するようにしても構わない。
【実施例3】
【0020】
図5に、本発明の混練機の別の実施例を示す。
この混練機は、実施例1の混練機の改造型で、混練機の構造上、加圧蓋の清掃スペースが十分に確保できず、清掃が困難となる辺Xには、空気溜まり33を構成することなく、空気溜まり33をコ字状に構成する例を示す。
同様に、加圧蓋3の2つの辺が清掃困難となる場合にはこれらの辺にも空気溜まり33を構成することなく清掃可能な2辺にのみ空気溜まり33をL字状に構成するようにしても構わない。
【0021】
ただし、空気溜まり33は、環状に設ける方がフィラーの外部噴出を効果的に防止することができるため、可能な限り4辺すべてに空気溜まり33を設け、環状(ドーナツ状)とすることが好ましい。
【0022】
以上、本発明の混練機について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の混練機は、混合槽と加圧蓋の隙間からのフィラーの噴出を防止することにより、混練工程中の清掃工程をなくすとともに、フィラーの配合比率を安定させ、かつ混練完了後のフィラーの落下、混入による分散不良を防止し、混練材料の分散、均一性の向上と品質の安定を図るという特性を有していることから、各種フィラーを精密に含有する材料の混練の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の混練機の一実施例を示す部分断面の正面図である。
【図2】同混練機を示す部分断面の側面図である。
【図3】同混練機の空気溜まり部分を説明する拡大した一部断面図である。
【図4】本発明の混練機の加圧蓋の別の実施例を示す部分断面の正面図で、(a)は、加圧蓋を3段にし、下段蓋にのみパッキンを配設した例を、(b)は、3段のうち下段と中段との2箇所にパッキンを配設した例を示す。
【図5】本発明の混練機の別の実施例を示し、(a)は平面図、(b)は部分断面の正面図である。
【図6】従来の混練機を示す部分断面の正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 混合槽
11 側壁
12 周壁
13 上方側壁
2 ロータ
21 ロータ軸
22 ロータ翼
3 加圧蓋
31 下段蓋
32 上段蓋
P1 パッキン
33 空気溜まり
35 傾斜面
36 傾斜面
37 曲側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練材料を収容する混合槽と、該混合槽に収容された混練材料を混練する並列した2本のロータと、該混合槽の上部開口部に摺動可能に挿入される加圧蓋とを備えた混練機において、加圧蓋の混合槽との摺動部を、上下複数段に区分し、下段蓋には、該下段蓋と混合槽側壁間との隙間を可及的小とするパッキンを配備し、前記上下蓋間には空気溜まりを形成したことを特徴とする混練機。
【請求項2】
上段蓋及び下段蓋の対向面となる上側面及び下側面を、外方に向かって開く傾斜面とするとともに、前記両傾斜面を曲側面で連続するように形成したことを特徴とする請求項1記載の混練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−152200(P2007−152200A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349376(P2005−349376)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(595057720)株式会社モリヤマ (26)
【Fターム(参考)】