説明

混練状態の評価方法、及び、混練状態の評価システム

【課題】二次電池の材料となる黒色の物質であっても、混練対象物の品質に影響を与えることなく、混練度合いを任意の複数箇所で検知し、評価することで全体的な均質性の判断を正確かつ客観的にすることが可能となる、混練状態の評価方法、及び、混練状態の評価システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る混練状態の評価方法は、二次電池の混練工程で製造する電極合材の材料として用いる2種類以上の活物質及び添加物の混合物が混練状態にある被検出体Mの内部に照射部から照射光を照射する照射工程と、照射工程で照射した照射光の被検出体Mの内部における反射光又は散乱光を、前記照射部と近接した少なくとも2箇所の受光部で受光する光検出工程と、光検出工程で受光した反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定する測定工程と、測定工程で測定した波数スペクトルの波形を比較することにより、前記被検出体の混練度合いを評価する評価工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練状態の評価方法、及び、混練状態の評価システムに関し、より詳しくは、2種類以上の物質が混練されている状態における混練度合いを評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばリチウムイオン電池のような二次電池の生産においては、電極合材の材料として用いる活物質及び添加物(混練対象物)を混練する、いわゆる混練工程が行われている。その際、製品である二次電池の品質精度を確保するため、混練工程における前記混練対象物の混練度合い(混ざり具合)を見定めるとともに、前記混練対象物が混ざりきってから前記混練工程を終了させる必要がある。
しかし従来は、前記混練対象物の混練度合いを直接評価する手段がなかったため、作業者の感覚や経験則によって混練工程にかける時間を決定していた。即ち、前記混練対象物が本当に混ざりきったかを客観的に判断する方法がないため、混練工程を終了させるまでに必要以上に時間がかかっていたのである。
【0003】
一方、上記のような物質の混合体の均質性を検知する技術として、前記混合体に対して2つのプローブを対向させて配置し、前記プローブの一方から他方へと光を透過させる、いわゆる透過法を用いた技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−68146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記透過法による技術は、前記二次電池の材料となる活物質やカーボン導電材料等、黒色の物質では光が透過しないため、前記混練工程に適用することは困難であった。また、前記プローブは光を照射する側と光を受光する側の2つを配設する必要があることから、特許文献1の如くプローブを混合槽の回転軸と同一軸上に配設する等、プローブを配設する位置の自由度に乏しく、混練対象物の任意の場所において混練度合いを検知することはできなかった。さらに、プローブの配設に制約があることから、複数の箇所において混練度合いを検知する構成にすることは難しく、混練度合いが不均質な領域である滞留部などの発生に対処することができなかった。
【0006】
なお、混練対象物に対して、導電性の液を添加して電気伝導度を調べたり、着色剤を添加して均一性を確かめたりする方法については、混練対象物に対して他の物質を投入することによる与える影響が不明であり、二次電池の品質を確保する上で問題が大きかった。
【0007】
そこで本発明では、上記現状に鑑み、二次電池の材料となるような黒色の物質であっても、混練対象物の品質に影響を与えることなく、混練度合いを任意の複数箇所で検知し、評価することで全体的な均質性の判断を正確かつ客観的にすることが可能となる、混練状態の評価方法、及び、混練状態の評価システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、2種類以上の物質が混練状態にある被検出体の内部に照射部から照射光を照射する、照射工程と、前記照射工程における前記照射光の前記被検出体の内部における反射光又は散乱光を、前記照射部と近接した少なくとも2箇所の受光部で受光する、光検出工程と、前記光検出工程で受光した反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定する、測定工程と、前記測定工程で測定した波数スペクトルの波形を比較することにより、前記被検出体の混練度合いを評価する、評価工程と、を備えるものである。
【0010】
請求項2においては、前記照射光は、レーザー光、赤外光、又は、近赤外光のうち何れか一つであるものである。
【0011】
請求項3においては、前記被検出体は、低透光性を有するものである。
【0012】
請求項4においては、前記照射工程では、基端部を光源に接続した光源ファイバーの先端部を、前記被検出体の内部に前記照射部として挿入した状態で、前記光源が前記光源ファイバーを介して前記照射光を照射し、前記光検出工程では、基端部を分光計に接続した少なくとも2本の光検出ファイバーの先端部を前記被検出体の内部に前記受光部として挿入した状態で、前記分光計が前記光検出ファイバーを介して前記反射光又は散乱光を受光し、前記測定工程では、前記光源及び前記分光計で構成された光学装置で、前記反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定するものである。
【0013】
請求項5においては、少なくとも1本の前記光源ファイバーと、1本の前記光検出ファイバーと、を束ねて一体化することにより、1本の光ファイバープローブを構成し、前記照射工程及び前記光検出工程において、基端部が前記光学装置に接続された、少なくとも2本の前記光ファイバープローブの先端部を前記被検出体に挿入した状態で、前記光源が前記光源ファイバーを介して前記照射光を照射するとともに、前記分光計が前記光検出ファイバーを介して前記反射光又は散乱光を受光するものである。
【0014】
請求項6においては、少なくとも1本の前記光源ファイバーと、間隔を微小距離にして隣接させた前記2本以上の光検出ファイバーと、を束ねて一体化することにより、1本の光ファイバープローブを構成し、前記照射工程及び前記光検出工程において、基端部が前記光学装置に接続された、前記光ファイバープローブの先端部を前記被検出体に挿入した状態で、前記光源が前記光源ファイバーを介して前記照射光を照射するとともに、前記分光計が前記2本以上の光検出ファイバーを介して前記反射光又は散乱光を受光するものである。
【0015】
請求項7においては、前記光検出ファイバーの先端部を凸面形状に形成したものである。
【0016】
請求項8においては、前記被検出体は、二次電池の混練工程で製造する電極合材の材料として用いる、活物質及び添加物の混合物であるものである。
【0017】
請求項9においては、基端部が光源に接続されるとともに先端部が2種類以上の物質が混練状態にある被検出体の内部に挿入され、前記光源が照射した照射光を前記先端部から前記被検出体の内部に照射する、光源ファイバーと、基端部が分光計に接続されるとともに先端部が前記被検出体の内部に前記光源ファイバーの先端部と近接して挿入され、前記被検出体の内部における前記照射光の反射光又は散乱光を前記先端部で受光し、前記分光計に入射させる、少なくとも2本の光検出ファイバーと、前記光源及び前記分光計で構成され、前記2本以上の光検出ファイバーで受光した反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定する、光学装置と、前記光学装置で測定した波数スペクトルの波形を比較することにより、前記被検出体の混練度合いを評価する、評価装置と、を備えるものである。
【0018】
請求項10においては、前記照射光は、レーザー光、赤外光、又は、近赤外光のうち何れか一つであるものである。
【0019】
請求項11においては、前記被検出体は、低透光性を有するものである。
【0020】
請求項12においては、少なくとも1本の前記光源ファイバーと、1本の前記光検出ファイバーと、が束ねられて一体化されることにより、1本の光ファイバープローブが構成され、基端部が前記光学装置に接続された、少なくとも2本の前記光ファイバープローブの先端部が前記被検出体に挿入された状態で、前記光源が前記光源ファイバーを介して前記照射光を照射するとともに、前記分光計が前記光検出ファイバーを介して前記反射光又は散乱光を受光するものである。
【0021】
請求項13においては、少なくとも1本の前記光源ファイバーと、間隔を微小距離にして隣接させた前記2本以上の光検出ファイバーと、が束ねられて一体化されることにより、1本の光ファイバープローブが構成され、基端部が前記光学装置に接続された、前記光ファイバープローブの先端部が前記被検出体に挿入された状態で、前記光源が前記光源ファイバーを介して前記照射光を照射するとともに、前記分光計が前記2本以上の光検出ファイバーを介して前記反射光又は散乱光を受光するものである。
【0022】
請求項14においては、前記光検出ファイバーの先端部は凸面形状に形成されるものである。
【0023】
請求項15においては、前記被検出体は、二次電池の混練工程で製造する電極合材の材料として用いる、活物質及び添加物の混合物であるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0025】
本発明により、二次電池の材料となる黒色の物質であっても、混練対象物の品質に影響を与えることなく、混練度合いを任意の複数箇所で検知し、評価することで全体的な均質性の判断を正確かつ客観的にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一実施形態に係る混練状態の評価システムの概要を示した概略図。
【図2】第一実施形態に係る光ファイバープローブの先端部を示した拡大図。
【図3】第一実施形態で測定した波数スペクトルを示した線図。
【図4】本発明の第二実施形態に係る混練状態の評価システムの概要を示した概略図。
【図5】第二実施形態に係る光ファイバープローブの先端部を示した拡大図。
【図6】第二実施形態に係る光ファイバープローブの先端部を示した断面図。
【図7】第三実施形態に係る光ファイバープローブの先端部を示した拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0028】
[混練状態の評価システム10(第一実施形態)]
まず始めに、本発明の第一実施形態に係る混練状態の評価システム10について、図1及び図2を用いて説明をする。
図1に示す如く、混練状態の評価システム10は、主に、8本の第一光源ファイバー11a〜18aと、8本の第二光源ファイバー11b〜18bと、第一光検出ファイバー21aと、第二光検出ファイバー21bと、光源41及び分光計42で構成された光学装置40と、評価装置50と、を備える。
【0029】
さらに、8本の第一光源ファイバー11a〜18aと、第一光検出ファイバー21aとが、図2に示す如く近接して束ねられて一体化されることにより、1本の第一光ファイバープローブ31aが構成されている。より詳細には、第一光検出ファイバー21aの周囲を取り囲むようにして第一光源ファイバー11a〜18aを配設し、その周囲を高分子化合物からなる保護層32で被覆しているのである。また、前記第一光ファイバープローブ31aと同様に第二光ファイバープローブ31bについても、8本の第二光源ファイバー11b〜18bと、第二光検出ファイバー21bとが束ねられて構成されている。
【0030】
なお、本明細書に記載する光源ファイバー及び光検出ファイバーには、その照射・検出する光の種類に応じてプラスチック製又はガラス製のものが用いられるが、その材質は限定されるものではない。また、本明細書においては光検出ファイバーとして、第一光検出ファイバー21aと第二光検出ファイバー21bの2本を用いる構成としているが、その数は3本以上とすることも可能である。換言すれば、光ファイバープローブを3本以上用いる構成にすることも可能である。
【0031】
前記第一光ファイバープローブ31a及び第二光ファイバープローブ31bは、それぞれ基端部が前記光学装置40に接続される。詳細には、照射光を照射する光源41に第一光源ファイバー11a〜18a及び第二光源ファイバー11b〜18bが接続され、反射光又は散乱光を受光する分光計42に第一光検出ファイバー21a及び第二光検出ファイバー21bが接続されているのである。
【0032】
そして、前記第一光ファイバープローブ31a及び第二光ファイバープローブ31bのそれぞれの先端部が被検出体Mに挿入されているのである。該被検出体Mは混練槽60の内部において2種類以上の物質が混練状態で貯溜される、二次電池の混練工程で製造する電極合材の材料として用いる活物質及び添加物の混合物である。つまり、前記被検出体Mは二次電池の材料となる活物質やカーボン導電材料等の黒色物質であって光の透過性が低く、即ち低透光性を有するのである。なお、前記被検出体Mの色は黒色に限られず、濃い褐色等の光の透過性が低い色であっても差し支えない。
これにより、第一光源ファイバー11a〜18a及び第二光源ファイバー11b〜18bは前記光源41が照射した照射光を、先端部から前記被検出体Mの内部に照射するように構成される。また、第一光検出ファイバー21a及び第二光検出ファイバー21bは前記被検出体Mの内部における前記照射光の反射光又は散乱光を先端部で受光し、前記分光計42に入射させるように構成されるのである。
なお、本明細書において、該被検出体Mは上記の如く活物質及び添加物の混合物であるものとして説明するが、本発明は2種類以上の物質が混練状態又は混合状態にあるものにおける混練度合い又は混合状態を評価する場合に全般的に適用することが可能であり、その対象は限定されるものではない。
【0033】
前記照射光としては、例えばレーザー光、赤外光、又は、近赤外光等が用いられる。そして、前記反射光又は散乱光は、前記照射光がレーザー光の場合は主に前記被検出体の内部における前記レーザー光のラマン散乱による散乱光であり、前記照射光が赤外光又は近赤外光の場合は主に前記被検出体の内部における前記赤外光又は近赤外光の反射光又は全反射光であるものとする。全反射光を受光する場合は、前記被検出体の内部にしみ出したエバネッセント波を受光することになる。ただし、前記照射光及び反射光又は散乱光は上記のものに限られず、光ファイバーの中を透過する光であれば利用することが可能である。
【0034】
前記光学装置40は図1に示す如く、上記の如く前記光源41及び前記分光計42で構成されており、前記第一光検出ファイバー21a及び第二光検出ファイバー21bで受光した反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定するように構成される。
また、前記評価装置50は図1に示す如く、前記光学装置40と電気的に接続され、光学装置40にて測定された波数スペクトルの波形を比較することにより、前記被検出体Mの混練度合いを評価するように構成されている。具体的には、評価装置50は入力機能、表示機能、記憶機能、通信機能、及び、各種演算機能等を備えた制御装置であり、CPUやRAMやROMやインターフェース等のマイクロコンピュータを主体として構成されているのである。
【0035】
[混練状態の評価方法]
上記の如く構成した混練状態の評価システム10で行われる、被検出体Mにおける混練状態の評価方法について説明する。
本発明に係る混練状態の評価方法においては、二次電池の混練工程で製造する電極合材の材料として用いる2種類以上の活物質及び添加物の混合物が混練状態にある被検出体Mの内部に、照射部である前記第一光源ファイバー11a〜18a及び第二光源ファイバー11b〜18bから照射光を照射する、照射工程と、前記照射工程で照射した照射光の前記被検出体Mの内部における反射光又は散乱光を、前記照射部と近接した受光部である前記第一光検出ファイバー21a及び第二光検出ファイバー21bで受光する、光検出工程と、前記光検出工程で受光した反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定する、測定工程と、前記測定工程で測定した波数スペクトルの波形を比較することにより、前記被検出体の混練度合いを評価する、評価工程と、を備える。
【0036】
具体的には前記照射工程及び前記光検出工程において、前記の如く8本の第一光源ファイバー11a〜18aと第一光検出ファイバー21aとを束ねて一体化することにより1本の第一光ファイバープローブ31aを構成し、同様に8本の第二光源ファイバー11b〜18bと第二光検出ファイバー21bとを束ねて一体化することにより1本の第二光ファイバープローブ31bを構成し、第一光ファイバープローブ31a及び第二光ファイバープローブ31bの基端部を前記光学装置40に接続し、同じく先端部を前記被検出体Mの内部に挿入するのである。そして、第一光ファイバープローブ31a及び第二光ファイバープローブ31bの先端部を被検出体Mの内部に挿入した状態で、前記光源41が照射部である前記第一光源ファイバー11a〜18a及び第二光源ファイバー11b〜18bを介して前記照射光を照射するとともに、前記分光計42が受光部である前記第一光検出ファイバー21a及び第二光検出ファイバー21bを介して前記反射光又は散乱光を受光するのである。
【0037】
前記の如く、照射光としては、例えばレーザー光、赤外光、又は、近赤外光等を用いるものとする。そして、前記反射光又は散乱光としては、前記照射光がレーザー光の場合は前記被検出体の内部における前記レーザー光の散乱光を検出し、前記照射光が赤外光又は近赤外光の場合は前記被検出体の内部における前記赤外光又は近赤外光の反射光又は全反射光を検出するものとする。
【0038】
そして、前記測定工程において、前記光源41及び前記分光計42で構成された光学装置40で、前記第一光検出ファイバー21a及び第二光検出ファイバー21bを介して受光した前記反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定するのである。
【0039】
さらに、前記評価工程において、光学装置40にて測定された波数スペクトルの波形を比較することにより、前記被検出体Mの混練度合いを評価するのである。
前記評価工程について、図3を用いて具体的に説明する。図3(a)は未混練状態の被検出体Mを測定した場合の波数スペクトルを示した線図、図3(b)は混練状態の被検出体Mを測定した場合の波数スペクトルを示した線図である。
【0040】
図3(a)、(b)はともに横軸を反射光又は散乱光の波数、縦軸を吸光度(被検出体Mにおける所定の物質の濃度)としている。そして、第一光検出ファイバー21aで受光し、前記光学装置40で測定した波数スペクトルを実線Aで、第二光検出ファイバー21bで受光し、前記光学装置40で測定した波数スペクトルを鎖線Bで表している。
【0041】
前記評価工程においては、前記光学装置40で測定した波数スペクトルを比較し、各々の波数スペクトルに特有である吸収ピーク値の高さの相対的な割合で、混練度合いが評価される。
具体的には、図3(a)においては、実線Aにおける中央部分のピーク値Paと、同じく鎖線Bにおける中央部分のピーク値Pbとを比較した場合、それぞれが大きく異なるため各々の相対的な割合は所定の範囲内にないと判断するのである。即ち、第一光検出ファイバー21aにおける濃度の状態と第二光検出ファイバー21bにおける濃度の状態とが同一でないと判断し、被検出体Mは未混練状態にあると評価するのである。
一方、図3(b)においては、実線Aと鎖線Bは完全に一致している。即ち、それぞれの中央部分のピーク値Paとピーク値Pbとが同じ値になるため各々の相対的な割合が所定の範囲内にあると判断するのである。即ち、第一光検出ファイバー21aにおける濃度の状態と第二光検出ファイバー21bにおける濃度の状態とが同一であると判断し、被検出体Mが全体的な混練状態に至ったと評価するのである。
【0042】
上記の如く被検出体Mが混練状態にあると評価された場合、評価装置50はその旨を表示機能により表示する。これにより作業者は被検出体Mが混ざりきったことを客観的に判断し、二次電池の混練工程を終了させるのである。
【0043】
なお、本実施形態においては、各々の波数スペクトルに特有である吸収ピーク値の高さの割合で混練度合いを評価する構成としたが、前記評価の方法はこれに限定されるものではなく、例えば波数スペクトルにおける所定の波数の範囲における面積を比較することで評価することも可能である。
【0044】
本実施形態によれば前記のように構成することにより、二次電池の材料となるような光の透過性が低い(低透光性を有する)黒色の物質であっても、混練対象物の品質に影響を与えることなく、混練度合いを任意の複数箇所で検知し、評価することが可能となる。
具体的には、散乱光、反射光、全反射光を利用した第一光ファイバープローブ31a及び第二光ファイバープローブ31bを用いることにより、二次電池の材料となる活物質やカーボン導電材料等、黒色の物質であっても測定することが可能となり、二次電池の生産における混練工程に適用することができるのである。特に、前記照射光に近赤外光を用いた場合は、黒色の物質における透過性が比較的高いため、上記の効果がより大きいのである。
【0045】
また、第一光ファイバープローブ31a(第二光ファイバープローブ31b)は、第一光源ファイバー11a〜18a(第二光源ファイバー11b〜18b)と第一光検出ファイバー21a(第二光検出ファイバー21b)と近接し、束ねて一体化することにより構成される。つまり、光ファイバープローブにおける照射部である光源ファイバーと受光部である光検出ファイバーとを一体として構成することにより、例えば透過法のようにそれぞれのプローブを配設する際に対向させたり、光軸を合わせて設置したりする必要がないため、任意の箇所において混練度合いを検知することが可能となるのである。
【0046】
さらに、上記の如く構成することにより、光ファイバープローブの配設位置及び配設数に制約をなくすことができるため、光ファイバープローブを混練対象物に挿入するだけで、任意の複数の箇所において混練度合いを検知することができる。即ち、いわゆるツインビーム光プローブ法を用いることが可能となるのであり、例えば混練対象物が滞留しやすい部分などにプローブを配設することで、混練度合いが不均質な領域があっても、全体が混練されたことを確認することが可能となるのである。一般的には、混練度合いを検知するための測定点数が多くなれば測定精度はよくなるが、測定点数の増加による費用対効果を考慮すると4箇所程度で混練度合いを検知することが望ましい。即ち、光ファイバープローブを4本用いる構成にし、該光ファイバープローブで検出した4つの波数スペクトルを前記の如く比較することで、少ないコストで混練度合いを検知することが可能となるのである。
【0047】
なお、前記光ファイバープローブは必ずしも同一の混練対象物に同時に使用する必要はない。例えば、混ざりきった混練対象物における波数スペクトルを測定した後、評価対象である混練対象物における波数スペクトルを測定し、両者を比較することによって評価対象である混練対象物の混練度合いを評価する構成にすることも可能である。
さらに、混練対象物に対して他の物質を投入することがないため、二次電池の品質に影響を与えることがないのである。
【0048】
このように、例えばリチウムイオン電池のような二次電池の生産における混練工程の際、作業者が混練対象物の混練度合いを見定めることができ、前記混練対象物が混ざりきってから前記混練工程を終了させることができる。つまり、前記混練対象物の混練度合いを直接評価することができるため、作業者は混練対象物が混ざりきったことを正確かつ客観的に判断することができ、混練工程を最短時間で終了させることが可能となるのである。
【0049】
[混練状態の評価システム110(第二実施形態)]
次に、本発明の第二実施形態に係る混練状態の評価システム110について、図4から図6を用いて説明をする。なお、以下の実施形態において説明する混練状態の評価システムにおいて、第一実施形態と共通する部分については、同符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図4に示す如く、混練状態の評価システム110は、光源ファイバー111〜118と、光検出ファイバー121・122と、光源41並びに分光計42で構成された光学装置40と、評価装置50と、を備える。
【0051】
さらに、8本の光源ファイバー111〜118と、2本の光検出ファイバー121・122とが、図5に示す如く近接して束ねられて一体化されることにより、1本の光ファイバープローブ131が構成されている。より詳細には、光検出ファイバー121・122を、間隔をμmレベルの微小距離に近づけて隣接させ、その周囲を取り囲むようにして光源ファイバー111〜118を配設し、さらにその周囲を高分子化合物からなる保護層132で被覆しているのである。
【0052】
上記の如く構成した混練状態の評価システム110において、第一実施形態と同様に、被検出体Mにおける混練状態の評価方法を行うのである。
即ち、照射工程及び光検出工程において、前記の如く8本の光源ファイバー111〜118と、間隔を微小距離に近づけて隣接させた光検出ファイバー121・122とを束ねて一体化することにより1本の光ファイバープローブ131を構成し、光ファイバープローブ131の基端部を光学装置40に接続し、同じく先端部を前記被検出体Mの内部に挿入するのである。そして、光ファイバープローブ131の先端部を被検出体Mの内部に挿入した状態で、光源41が照射部である光源ファイバー111〜118を介して照射光を照射するとともに、分光計42が受光部である光検出ファイバー121・122を介して反射光又は散乱光を受光するのである。
【0053】
そして、測定工程において、前記光源41及び前記分光計42で構成された光学装置40で、前記光検出ファイバー121・122を介して受光した前記反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定するのである。
さらに、評価工程において、第一実施形態と同様に光学装置40にて測定された波数スペクトルの波形を比較することにより、前記被検出体Mの混練度合いを評価するのである。
【0054】
本実施形態によれば前記のように構成することにより、第一実施形態における効果に加え、被検出体Mの混練度合いについて、より高精度の分解能を得ることが可能となる。
具体的には、光検出ファイバー121・122を、間隔をμmレベルの微小距離に近づけて隣接させることにより、液体、固体表面の組成比や状態を表す波数スペクトルの分析を、μmレベルの精度で行うことが可能となるのである。換言すれば、被検出体Mとして用いられる混合物の混合状態をμmレベルで評価することができるのである。
【0055】
本実施形態における前記光検出ファイバー121・122の先端部の断面形状について、図6(a)及び(b)を用いて説明する。図6(a)及び(b)は本実施形態に係る光ファイバープローブ131の先端部を示した断面図及び受光範囲である。
【0056】
図6(a)は、光ファイバープローブ131xに配設される光検出ファイバー121x・122xの先端部121y・122yが平面形状である場合について示している。図6(a)に示す如く、光検出ファイバー121x・122xは先端部121y・122yが平面形状の場合、ファイバー側面から外側(光ファイバープローブ131xの外周側)約30°の角度までの範囲を受光する。そのため、光検出ファイバー121xの受光範囲である図6(a)中の矢印αxの範囲と、光検出ファイバー122xの受光範囲である図6(a)中の矢印βxの範囲とが重なってしまい、即ち光検出ファイバー121xと光検出ファイバー122xとの検出領域が重なってしまうのである。
【0057】
このため、本実施形態においては、前記光検出ファイバー121・122の先端部121e・122eは凸面形状に形成される。具体的には図6(b)に示すように、光ファイバープローブ131の先端部において、光検出ファイバー121・122の先端部121e・122eが先端側にやや膨らんで形成されているのである。このように構成することにより、前記先端部121e・122eにおいて反射光又は散乱光を屈折させることができる。即ち、光検出ファイバー121・122の受光範囲が広がらないようにすることが可能となり、図6(b)中の矢印α及び矢印βに示す如く平行な範囲の反射光又は散乱光を受光することが可能となるのである。つまり、光検出ファイバー121と光検出ファイバー122との検出領域が重なることを防ぎ、光検出ファイバー121・122による検出精度を向上させることができるのである。
【0058】
[混練状態の評価システム(第三実施形態)]
次に、本発明の第三実施形態に係る混練状態の評価システムについて、図7を用いて説明をする。
本実施形態に係る混練状態の評価システムにおいては、前記第二実施形態に記載の構成に加え、8本の光源ファイバー211〜218と、7本の光検出ファイバー221〜227とが、図7に示す如く束ねられて一体化されることにより、1本の光ファイバープローブ231が構成されている。より詳細には、光検出ファイバー221〜227を、間隔を微小距離、例えばμmレベルに近づけて隣接させ、その周囲を取り囲むようにして光源ファイバー211〜218を配設し、さらにその周囲を高分子化合物からなる保護層232で被覆しているのである。
【0059】
上記の如く構成した混練状態の評価システムにおいて、第二実施形態と同様に、被検出体Mにおける混練状態の評価方法を行うのである。
本実施形態によれば前記のように構成することにより、第一・第二実施形態における効果に加え、より高度な分析結果を得ることが可能となる。
具体的には、光検出ファイバー221〜227を、光ファイバープローブ231の内部に7本配設することにより、多点での測定が可能となり、混練状態を表す波数スペクトルの分析を二次元的に行うことが可能となるのである。
【符号の説明】
【0060】
10 混練状態の評価システム
31a 第一光ファイバープローブ
31b 第二光ファイバープローブ
40 光学装置
50 評価装置
M 被検出体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の物質が混練状態にある被検出体の内部に照射部から照射光を照射する、照射工程と、
前記照射工程における前記照射光の前記被検出体の内部における反射光又は散乱光を、前記照射部と近接した少なくとも2箇所の受光部で受光する、光検出工程と、
前記光検出工程で受光した反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定する、測定工程と、
前記測定工程で測定した波数スペクトルの波形を比較することにより、前記被検出体の混練度合いを評価する、評価工程と、を備える、
ことを特徴とする、混練状態の評価方法。
【請求項2】
前記照射光は、レーザー光、赤外光、又は、近赤外光のうち何れか一つである、
ことを特徴とする、請求項1に記載の混練状態の評価方法。
【請求項3】
前記被検出体は、低透光性を有する、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の混練状態の評価方法。
【請求項4】
前記照射工程では、基端部を光源に接続した光源ファイバーの先端部を、前記被検出体の内部に前記照射部として挿入した状態で、前記光源が前記光源ファイバーを介して前記照射光を照射し、
前記光検出工程では、基端部を分光計に接続した少なくとも2本の光検出ファイバーの先端部を前記被検出体の内部に前記受光部として挿入した状態で、前記分光計が前記光検出ファイバーを介して前記反射光又は散乱光を受光し、
前記測定工程では、前記光源及び前記分光計で構成された光学装置で、前記反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定する、
ことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の混練状態の評価方法。
【請求項5】
少なくとも1本の前記光源ファイバーと、1本の前記光検出ファイバーと、を束ねて一体化することにより、1本の光ファイバープローブを構成し、
前記照射工程及び前記光検出工程において、基端部が前記光学装置に接続された、少なくとも2本の前記光ファイバープローブの先端部を前記被検出体に挿入した状態で、前記光源が前記光源ファイバーを介して前記照射光を照射するとともに、前記分光計が前記光検出ファイバーを介して前記反射光又は散乱光を受光する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の混練状態の評価方法。
【請求項6】
少なくとも1本の前記光源ファイバーと、間隔を微小距離にして隣接させた前記2本以上の光検出ファイバーと、を束ねて一体化することにより、1本の光ファイバープローブを構成し、
前記照射工程及び前記光検出工程において、基端部が前記光学装置に接続された、前記光ファイバープローブの先端部を前記被検出体に挿入した状態で、前記光源が前記光源ファイバーを介して前記照射光を照射するとともに、前記分光計が前記2本以上の光検出ファイバーを介して前記反射光又は散乱光を受光する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の混練状態の評価方法。
【請求項7】
前記光検出ファイバーの先端部を凸面形状に形成した、
ことを特徴とする、請求項6に記載の混練状態の評価方法。
【請求項8】
前記被検出体は、二次電池の混練工程で製造する電極合材の材料として用いる、活物質及び添加物の混合物である、
ことを特徴とする、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の混練状態の評価方法。
【請求項9】
基端部が光源に接続されるとともに先端部が2種類以上の物質が混練状態にある被検出体の内部に挿入され、前記光源が照射した照射光を前記先端部から前記被検出体の内部に照射する、光源ファイバーと、
基端部が分光計に接続されるとともに先端部が前記被検出体の内部に前記光源ファイバーの先端部と近接して挿入され、前記被検出体の内部における前記照射光の反射光又は散乱光を前記先端部で受光し、前記分光計に入射させる、少なくとも2本の光検出ファイバーと、
前記光源及び前記分光計で構成され、前記2本以上の光検出ファイバーで受光した反射光又は散乱光ごとに波数スペクトルを測定する、光学装置と、
前記光学装置で測定した波数スペクトルの波形を比較することにより、前記被検出体の混練度合いを評価する、評価装置と、を備える、
ことを特徴とする、混練状態の評価システム。
【請求項10】
前記照射光は、レーザー光、赤外光、又は、近赤外光のうち何れか一つである、
ことを特徴とする、請求項9に記載の混練状態の評価システム。
【請求項11】
前記被検出体は、低透光性を有する、
ことを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の混練状態の評価システム。
【請求項12】
少なくとも1本の前記光源ファイバーと、1本の前記光検出ファイバーと、が束ねられて一体化されることにより、1本の光ファイバープローブが構成され、
基端部が前記光学装置に接続された、少なくとも2本の前記光ファイバープローブの先端部が前記被検出体に挿入された状態で、前記光源が前記光源ファイバーを介して前記照射光を照射するとともに、前記分光計が前記光検出ファイバーを介して前記反射光又は散乱光を受光する、
ことを特徴とする、請求項9から請求項11の何れか1項に記載の混練状態の評価システム。
【請求項13】
少なくとも1本の前記光源ファイバーと、間隔を微小距離にして隣接させた前記2本以上の光検出ファイバーと、が束ねられて一体化されることにより、1本の光ファイバープローブが構成され、
基端部が前記光学装置に接続された、前記光ファイバープローブの先端部が前記被検出体に挿入された状態で、前記光源が前記光源ファイバーを介して前記照射光を照射するとともに、前記分光計が前記2本以上の光検出ファイバーを介して前記反射光又は散乱光を受光する、
ことを特徴とする、請求項9から請求項11の何れか1項に記載の混練状態の評価システム。
【請求項14】
前記光検出ファイバーの先端部は凸面形状に形成される、
ことを特徴とする、請求項13に記載の混練状態の評価システム。
【請求項15】
前記被検出体は、二次電池の混練工程で製造する電極合材の材料として用いる、活物質及び添加物の混合物である、
ことを特徴とする、請求項10から請求項14の何れか1項に記載の混練状態の評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−261868(P2010−261868A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113968(P2009−113968)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】