説明

混練用セグメント

【課題】フライトから欠け落ちた小片が最終的な混練製品のコンタミネーションとならない混練用セグメントを提供する。
【解決手段】混練用セグメント1aは、混練用フライト12a,12bを有するセグメント本体17aを備え、内部が空洞とされたバレルに回転自在に収容される混練スクリュに設けられる。混練用セグメント1aは、混練スクリュとともに回転してバレル内に供給される材料を混練する。混練用セグメント1aにおいて、混練用フライト12a,12bの先端部15a,16bはセグメント本体17aの材質とは異なる材質で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練用セグメントに関し、特に、混練材料に混入してもコンタミネーションとならない材質でフライトの先端部が構成された混練用セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、押出機や連続混練機などの混練設備においては、バレル内に高分子樹脂のペレットや粉状の添加物などの材料が供給される。供給された材料は、バレル内に挿通された一対の混練スクリュによって混練されながら下流側へ送られる。
混練スクリュは様々な種類のセグメントを複数備えており、各セグメントは、セグメントの中心を貫通するスプライン軸に固定されている。例えばロータセグメントやニーディングディスクセグメントなどの混練用セグメントにスクリュセグメントを組み合わせることで製品用途に合わせて様々な材料を混練できるようになっている。
【0003】
ところで、近年、混練される材料の種類が多くなるとともに、混練機で製造される製品の種類も増加している。それに伴って、複数の材料がどの程度均等に混練されているかといった製品の均質性に対する要求も益々高くなっている。
特許文献1には、上述の要求を満たしつつ生産性を向上させるという二軸連続混練機が開示されている。特許文献1に開示の二軸連続混練機は、互いに連通する左右一対の混練室を内部に有するバレルと、前記混練室内に回転自在に挿通された左右一対の混練スクリューと、前記混練室内に混練材料を供給すべく前記バレルの上流側端部に接続された第一供給手段と、前記混練室内に添加物を供給すべく前記バレルの上流側端部又は中流部に接続された第二供給手段と、を備えており、前記各混練スクリューにおける前記第二供給手段よりも下流側の部分に、前記添加物を前記混練材料に練り込むための混練ゾーンが設けられている二軸連続混練機において、前記混練ゾーンは、「前記セグメント群は、前記混練スクリューの回転によって混練材料を下流側に送る方向に捩じれたフライトを有する送りセグメントのみ、または、これに前記混練スクリューの軸心方向と平行なフライトを有する中立セグメントを付加することによって構成されている。」こと、及び「前記各ロータセグメントのフライトは、混練室の内面とのチップクリアランスが比較的小さい高位チップ部と、同チップクリアランスが比較的大きい低位チップ部とを軸心方向に交互に並設することによって構成されている。」こと、を充足する複数のロータセグメントを軸心方向に並設してなるセグメント群より構成されていることを特徴とするものである。
【0004】
特許文献1は、このような二軸連続混練機によれば、高品質なコンパウンドの生産量を大幅に向上することができるとしている。
特許文献2には、混練フライトの異常摩耗だけでなく、疲労破壊によるスプライン軸の折損をも防止することが可能とされる混練スクリュが開示されている。特許文献2に開示の混練スクリュは、混練される材料を下流側に送るスクリュセグメントからなる送り部と、当該材料を混練する混練用セグメントからなる混練部とが設けられたスクリュ本体を備えた混練スクリュであって、前記スクリュ本体は、回転外径が軸方向に沿って漸次に変化する多段状部を前記混練部に対して連続的に備えていることを特徴とするものである。
【0005】
特許文献3には、フライト部における耐磨耗性を損なうことなく靱性が確保されたとされる押出機用スクリュが開示されている。特許文献3に開示の押出機用スクリュは、外周に螺旋状に形成されたフライト部(3f)を有する押出機用スクリュにおいて、前記フライト部(3f)における幅方向の両端部(3f2)の硬度が、前記両端部(3f2)の間に位置する中央部(3f1)の硬度よりも高いことを特徴とし、前記両端部(3f2)は、表面処理加工により形成することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−210731号公報
【特許文献2】特開2009−148936号公報
【特許文献3】特開2009−298034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、複数の材料を均等に混練するために混練スクリュの回転を高速にすると、特許文献1の明細書中に記載されているように混練スクリュの振れが大きくなり、従来の混練機は機械的損傷を受けやすくなる。具体的には、混練スクリュに備えられたセグメントの翼部(フライト)が、バレルの内壁に接触して欠けてしまうことがある。
このときにフライトから欠け落ちた小片は、混練中の材料に混ざって最終的な混練製品の汚染物(コンタミネーション)となってしまう。通常、セグメントはステンレスなどの金属で構成されているので、フライトから欠け落ちた金属小片が混練中の材料に混ざることとなる。このように金属小片が混ざってしまうと、例えば、混練中の材料が絶縁材料である場合に、最終的な混練製品の電気的な物性に影響を及ぼしてしまう。
【0008】
問題はこれだけではなく、この混練製品の製造業者がコンタミネーションの混入に気付くのが困難であるという問題も存在する。
特許文献2に開示の混練スクリュにおいても、金属で製作されたセグメントのチップ部がバレルと接触して摩耗し、混練中の材料に混入する恐れがある。
また、特許文献3に開示の押出機用スクリュにおいては、フライト部における両端部を表面処理加工して金属粉の発生を抑制しても、混練時に材料から受ける応力で表面処理部分が剥離してフライト部の中央部及びフライト部本体が露出し、金属製のフライト部本体がバレルと接触して摩耗し、混練中の材料に混入する恐れがある。
【0009】
このような金属材料によるコンタミネーションの問題を解消するには、2通りのアプローチを考えることができる。1つは、フライトが欠損及び剥離しないようにする工夫であり、もう一つは、フライトから欠け落ちた又は剥離した小片がコンタミネーションとならないようにする工夫である。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、上記2通りのアプローチのうち後者に着目して、フライトから欠け落ちた又は剥離した小片が最終的な混練製品のコンタミネーションとならない混練用セグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の混練用セグメントは以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の混練用セグメントは、混練用フライトを有するセグメント本体を備え、内部が空洞とされたバレルに回転自在に収容される混練スクリュに設けられて、当該混練スクリュとともに回転して前記バレル内に供給される材料を混練する混練用セグメントであって、前記混練用フライトの先端部は、前記セグメント本体の材質とは異なる材質で構成されていることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記混練用フライトの先端部には、前記バレル内に供給される材料に対しコンタミとならない材質で構成された非コンタミ部材が設けられているとよい。
また、好ましくは、前記非コンタミ部材は、前記セグメント本体とは別体で形成されており、セグメント本体に対して交換可能となるように構成されているとよい。
さらに、好ましくは、前記非コンタミ部材の材質は、前記バレル内に供給される材料よりも溶融点の高い耐熱性樹脂であるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の混練用セグメントによれば、フライトから欠け落ちた小片が最終的な混練製品のコンタミネーションとならない混練用セグメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の混練用セグメントを備えた混練設備の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態による混練用セグメントの構成を示す図であり、(a)は、その斜視図、(b)は軸垂直方向の断面図である。
【図3】図2(b)において破線で囲んだ部分の拡大図である。
【図4】本発明の第2実施形態による混練用セグメントの構成を示す斜視図、及びその断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態による混練用セグメントの構成を示す斜視図、及びその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る混練用セグメント1a及び混練設備2を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る混練用セグメント1aが設けられた2軸の連続混練機(混練設備)2を示している。なお、混練用セグメント1aを、連続混練機2以外にも例えば2軸押出機などの設備に設けることができるが、以下の説明では連続混練機2に設けた例を挙げて、本実施形態に係る混練用セグメント1aを説明する。
【0015】
図1に示すように、連続混練機2は、長尺で中空かつ空洞のバレル3と、バレル3の長手方向に沿ってバレル3の内部を挿通するように設けられた混練スクリュ4とを備えている。連続混練機2は、この混練スクリュ4を軸心回りに回転させることでバレル3内に供給された材料を混練しつつ下流側に送る構造となっている。
なお、以下の説明において、図1の紙面左側を連続混練機2の上流側とし、紙面右側を下流側とする。また、図1の紙面の左右方向を連続混練機2を説明する際の軸方向とする。さらに、軸方向に対して垂直な方向を連続混練機2を説明する際の軸垂直方向という。
【0016】
バレル3は、軸方向に沿って長い筒状に形成されており、軸垂直方向に切断した断面は、2つの中空部を並列につなぎ合わせためがね形状の空洞となっている。連続混練機2の上流側にはバレル3の空洞内に材料を供給するホッパ5が設けられており、またバレル3の内部には電気ヒーターや加熱された油を用いた加熱装置(図示略)が備えられている。
図1に示すように、混練スクリュ4は、バレル3内において、空洞を形成する2つの中空部のそれぞれに挿通するように一対設けられている。一対の混練スクリュ4,4は、バレル3とほぼ等尺のスプライン軸6を内部に備えている。スプライン軸6が複数のセグメントを串刺し状に貫通し、かつ各セグメントをスプライン軸6上の所定位置に固定することで、混練スクリュ4が形成される。
【0017】
混練スクリュ4は、さまざまな種類のセグメントを組み合わせて形成されており、図1では軸方向に3つのパート(機能により区画された部位)から構成されている。これらの3つのパートは、材料を混練する混練部7と、混練部7より上流側に配備されてこの混練部7に材料を送る送り部8と、混練部7より下流側に配備されて混練部7で混練された材料を下流側のペレタイザなどに送る押出部9である。
【0018】
これら3つのパートのうち送り部8と押出部9とは、それぞれ軸方向に螺旋状に捩れたスクリュフライトを備えた複数のスクリュセグメント10で構成されており、混練スクリュ4の回転に合わせて材料を下流側に送ることができるようになっている。
混練部7は、混練スクリュ4の中央に位置するパートであり、軸方向に連続して配備された複数の混練用セグメント1aで構成されている。本実施形態では、混練用セグメント1aはロータセグメントであり、このロータセグメント1aを軸方向に連続して6個並べて配備することで混練部7が構成されている。
【0019】
図2を参照しながら、本実施形態に係るロータセグメント1aの構成について説明する。図2(a)は、一対の混練スクリュ4,4に備えられた隣り合うロータセグメント1a,1aを示す斜視図であり、図2(b)は、その断面図である。
図2(a)及び図2(b)に示すように、ロータセグメント1aは、スプライン軸6に固定された状態において、軸垂直方向の断面が略楕円形状(ラグビーボール形状)となるように形成された柱状の部材であり、当該断面における中央にはスプライン軸6を挿通可能な挿通孔11が軸方向に沿って形成されている。
【0020】
略楕円形状の断面を有するロータセグメント1aにおいて当該楕円形状の長軸の両端側に形成された頂部には、挿通孔11を挟んで挿通孔11の径外方向に突出しつつ、ロータセグメント1aの外周面に軸方向に沿って連続してつながるように2条の混練用フライト12a,12bが形成されている。これら混練用フライト12a,12bは、混練スクリュ4が回転すると混練用フライトの頂部がバレル3の内周面をかすめるように旋回し、バレル3の内周面に付着した材料を掻き取って混練できるようになっている。
【0021】
図2(a)及び図2(b)に示すように、一方の混練用フライト12aは、頂部の端面中央を径内側(軸垂直方向に沿ってスプライン軸6側)に向かって切り欠いて凹状に形成された切欠部13を有している。この切欠部13は、2つの側面20と、これらの側面20の間に形成される底面14とで形成されている。側面20は、混練用フライト12aの頂部から径内側に向かって軸垂直方向に沿って形成されており、軸方向に距離をあけて互いに向かい合うように2つ形成されている。そして、これらの2つの側面20の間には2つの側面20に対してほぼ垂直となるように底面14が形成されている。切り欠かれずに残った切欠部13の両隣を、以下凸部という。
【0022】
図2(a)及び図2(b)に示すように、挿通孔11に対して混練用フライト12aの反対側に形成された混練用フライト12bにおいて、頂部の端面中央には、混練用フライト12aの切欠部13に対応する形状となるように凸状に形成された突起部が形成されている。この突起部は、混練用フライト12bの頂面から挿通孔11の径外側に向かうとともに軸垂直方向に沿うように形成されている。
【0023】
軸方向に沿った突起部の両隣には、混練用フライト12aの凸部に対応する形状の平坦部が形成されている。
このように、混練用フライト12bの端面の形状は、混練用フライト12aの端面の形状と異なる。
図2及び図3に示すように、このようなロータセグメント1aは、挿通孔11の内周面に複数の歯を備えており、これら複数の歯がスプライン軸6の外周面に備えられた複数の歯と係合することで、スプライン軸6と一体に回転できるようになっている。
【0024】
ところで本実施形態の場合、図2及び図3に示すように、上述の混練用フライト12a,12bの頂部(先端部)は、ロータセグメント1aにおける他の部分とは異なる材質で別体に形成されており、この別体の部材を非コンタミ部材15a,16aと呼ぶ。以降、ロータセグメント1aにおいて、非コンタミ部材15a,16a以外をセグメント本体17aと呼ぶこととする。
【0025】
以下、非コンタミ部材15a,16aの形状について詳細に説明する。
図2に示すように、非コンタミ部材15a,16aは、混練用フライト12a,12bの頂部において軸方向に沿って形成されている。本実施形態によるロータセグメント1aにおいて、混練用フライト12a側の非コンタミ部材15aと混練用フライト12b側の非コンタミ部材16aは、互いに異なる形状を有している。
【0026】
図2(b)及び図2(b)の断面図において破線で囲んだ部分の拡大図を示す図3に示す。
図3に示すように、非コンタミ部材15aの底面、すなわち非コンタミ部材15aにおいてセグメント本体17aと接する接触面18aは、一つの平坦面(平面)であって、断面が略楕円形状を呈するセグメント本体17aの長軸に沿った軸垂直方向d、すなわちロータセグメント1aの長軸に対して傾斜している。その接触面18aの傾斜方向は、図2(b)及び図3の紙面に向かって左右方向であるロータセグメント1aの幅方向において、ロータセグメント1aの一方の側面から混練材料が接触する他方の側面に向かって下るように傾斜している。つまり、接触面18aは、矢印で示すロータセグメント1aの回転方向に向かって下るように傾斜し、混練時に混練材料から見て、面広となるような法面となっていて、ロータセグメント1aの回転時すなわち混練作業時において、非コンタミ部材15aが混練材料から受ける力を面で受け止めて分散するように傾いている。
【0027】
それ故、この傾斜した接触面18aを備えた非コンタミ部材15aをセグメント本体17aに取り付ければ、混練材料から受ける力によって接触面18a上で生じる非コンタミ部材15aのズレ方向にはたらく力を小さくすることができる。
また、この接触面18aの傾きによって、ロータセグメント1aの回転中に非コンタミ部材15aがバレル3の内周面と接触しても、接触時に非コンタミ部材15aが受ける応力を、この回転方向に向かって傾斜した接触面18a全体にわたってほぼ均等に分散して受けることができる。
【0028】
このような接触面18aを採用すれば、接触面18a上で非コンタミ部材15aのずれ方向にはたらく力がほとんど発生しないので、非コンタミ部材15aがセグメント本体17aから外れたりずれたりしにくくなる。
図2(b)の断面図からわかるように、混練用フライト12b側の非コンタミ部材16aにおいても、非コンタミ部材15aと同様に、セグメント本体17aとの接触面18aは矢印で示すロータセグメント1aの回転方向に向かって下るように傾斜している。
【0029】
これによって、非コンタミ部材15aと同様に、接触面18a上で非コンタミ部材16aのずれ方向にはたらく力がほとんど発生しないので、非コンタミ部材16aが外れたりずれたりしにくくなる。
図2(a)及び図2(b)に示すように、非コンタミ部材15aの凸部及び非コンタミ部材16aの平坦部のほぼ中央には、挿通孔11の軸心に向かって接触面18aまで貫通した貫通孔21が形成されている。これに対して、セグメント本体17aには、非コンタミ部材15a,16aの貫通孔21に対応する位置に所定深さのボルト孔が形成されている。
【0030】
非コンタミ部材15a,16aの貫通孔21は、ナットの挿入が可能な大きさで所定深さの上部貫通孔と、当該貫通孔の底面から接触面18aまで貫通し、セグメント本体17aの先端部(非コンタミ部材の接触面18aと接する面)に立設されたアンカボルトの挿入が可能な下部貫通孔とからなっている。
非コンタミ部材15a,16aをセグメント本体17aに固定した後には、貫通孔21を塞ぐために、非コンタミ部材15a,16aと同一の素材からなるプラグ(栓部材)22が挿入される。
【0031】
ところで、非コンタミ部材15a,16aは、ステンレス鋼などからなるセグメント本体17aとは異なる材質のものであり、例えば、混練される材料よりも溶融点の高いPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの耐熱性樹脂で形成することができる。
例えば、電気絶縁性の材料を混練する場合、非コンタミ部材15a,16aがステンレス鋼ではなく耐熱性樹脂で形成されていれば、混練中に非コンタミ部材15a,16aから欠け落ちた樹脂性の小片が混練材料に混ざっても、混練される材料の絶縁性を損なうことはない。
【0032】
つまり、非コンタミ部材15a,16aをPEEKなどの耐熱性樹脂で構成することで、本実施形態による混練用セグメントを絶縁フィルム用の材料の混練に用いても、絶縁性を損なうコンタミネーションが発生することはない。
このように、非コンタミ部材15a,16aには、混練材料の物性を損なわない材質が選択されて用いられるので、混練材料の物性を損なう汚染物(以下、コンタミネーション又はコンタミという)とならない。
【0033】
よって、非コンタミ部材15a,16aを構成する材料は、耐熱性樹脂に限らない。混練用フライトを構成する部材として十分な機械強度があれば、混練材料の物性にあわせてセラミックのような様々な材質を適宜選択することができる。
図2に示すように、このような非コンタミ部材15a,16aは、混練用フライト12a,12bの頂部において混練用フライト12a,12bの軸方向(スプライン軸の軸芯方向)に沿って形成されている。
【0034】
このような非コンタミ部材15a,16aをセグメント本体17aに固定する方法について説明する。
図2(b)及び図3に示すように、まず、非コンタミ部材15a,16aを装着しない状態でセグメント本体17aのボルト孔にアンカボルトを設けるようにする。すなわち、非コンタミ部材15aの底面(接触面18a)に接するセグメント本体17aの面において、軸垂直方向dを向くボルト孔を開けておき、このボルト孔に雌ネジを形成しておく。その上で、両端にネジ部が形成されたアンカボルトの基端をねじ込んでおく。
【0035】
その後、非コンタミ部材15a,16aの貫通孔21にアンカボルトを挿入し、非コンタミ部材15a,16aとセグメント本体17aを当接させる。その上で、貫通孔21内に突出したアンカボルトにナットを締め付けるようにし、このようにして、非コンタミ部材15a,16aとセグメント本体17aとが一体となるように固定する。
図2及び図3に示すように、非コンタミ部材15a,16aをセグメント本体17aに固定した後に、非コンタミ部材15a,16aと同一の素材からなるプラグ(栓部材)22を貫通孔21に挿入し、当該貫通孔21を塞ぐ。
【0036】
図3に示すように、プラグ22の側面には、凸状(突起状)の嵌合爪25が設けられている。非コンタミ部材15a,16aの貫通孔21の側面には、嵌合爪25の形状に対応した凹状の窪みが形成されている。プラグ22が貫通孔21に挿入された際に、当該窪みに嵌合爪25が係合することで貫通孔21でプラグ22が固定されるので、混練中でもプラグ22が非コンタミ部材15a,16aから脱落することはない。なお、嵌合爪25は、プラグ22の側面一周にわたって環状に形成されていてもよい。この場合、貫通孔21の側面に形成された凹状の窪みも貫通孔21の側面一周にわたって環状に形成される。
【0037】
上述のように、別体に形成された非コンタミ部材15a,16aを取り付けて混練用フライト12a,12bを構成することで、本実施形態によるロータセグメント1aを構成することができる。
このように構成されたロータセグメント1aは、平行に配置された2本のスプライン軸6のそれぞれに取り付けられる。このとき、図2(a)及び図2(b)に示すように、隣り合う略楕円形状のロータセグメント1aは、互いに接触しないように配置される。
【0038】
上述のように、本実施形態による非コンタミ部材15a,16aは、ボルトとナットによってセグメント本体17aに対して取り付けたり取り外したりすることができるので、非コンタミ部材15a,16aが損傷した場合でも、損傷した非コンタミ部材15a,16aだけを容易に交換することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る混練用セグメントについて説明する。
【0039】
図4に示すように、本実施形態に係る混練用セグメント1bは、第1実施形態に係る混練用セグメント1aと同様の外観形状を有している。また、本実施形態に係る混練用セグメント1bの混練用フライト12c,12dの先端には、第1実施形態に係る混練用セグメント1aと同様に、別体に形成された非コンタミ部材15b,16bが混練用フライト12c,12dの頂部において軸方向に沿ってそれぞれ取り付けられており、非コンタミ部材15b,16bを形成する材料も第1実施形態による非コンタミ部材15a,16aと略同様である。
【0040】
ただし、本実施形態による非コンタミ部材15b,16bは、セグメント本体17bと接する接触面18bが第1実施形態による非コンタミ部材15a,16aの接触面18aの形態とは異なるので、以下、接触面18bの形状について詳細に説明する。
図4を参照しながら、本実施形態による非コンタミ部材15bの接触面18bの構成を説明する。
【0041】
第1実施形態による非コンタミ部材15aの接触面18aは傾斜した平坦面であったが、本実施形態による非コンタミ部材15bの接触面18bは、断面視で水平面23と垂直面24とからなるL字型に形成されている。
非コンタミ部材15bの水平面23は、第1実施形態で定義した軸方向に沿って延びる平坦面であり、セグメント本体17bの長軸に沿った軸垂直方向dに対して、略垂直となるように水平に延びている。
【0042】
図4の拡大図に示すように、セグメント本体17bの表面から内部に向かう幅(水平方向での幅)は、セグメント本体17bの幅の約3分の2ほどを占めている。また、非コンタミ部材15bの垂直面24は、軸垂直方向dと略平行であり、水平面23の軸方向に沿って延びる一辺を共有して水平面23に対して略垂直に切り立つ平坦面である。
図4に示すように、このような水平面23と垂直面24とからなるL字型の接触面18bを有する非コンタミ部材15bは、セグメント本体17bに取り付けられた場合、混練用フライト12cの先端部の全体を占めてはおらず、混練用セグメントの回転方向側で当該先端部の約3分の2ほどを占めている。先端部の残りの3分の1ほどは、セグメント本体17bによって構成されている。
【0043】
このように、セグメント本体17bと当接する非コンタミ部材15bの接触面18bの形状は、第1実施形態における非コンタミ部材15aとは異なっている。
以上のようなL字型の接触面18bを有する第2実施形態の非コンタミ部材15bをセグメント本体17bに取り付ければ、ロータセグメント1bの回転時すなわち混練作業時において、非コンタミ部材15bが混練材料から受ける力の多くを垂直面24で受けることができる。また、ロータセグメント1bの回転中に非コンタミ部材15bがバレル3の内周面と接触しても、接触時に非コンタミ部材15bが受ける応力を、水平面23と垂直面24の両面で受けることができる。
【0044】
このような水平面23と垂直面24を有する接触面18bを採用すれば、接触面18b上で非コンタミ部材15bのずれ方向にはたらく力を受けることができるので、非コンタミ部材15bが外れたりずれたりしにくくなる。
なお、非コンタミ部材15bをセグメント本体17bに固定する方法については、第1実施形態による非コンタミ部材15aの取り付け方法と略同様であり、アンカボルト及びナットを用いてセグメント本体17bに固定される。それ故、非コンタミ部材15bも第1実施形態による非コンタミ部材15aと同様に、セグメント本体17bに対して取り付けたり取り外したりすることができるので、非コンタミ部材15bが損傷した場合でも、損傷した非コンタミ部材15bだけを容易に交換することができる。
【0045】
本実施形態で用いられるプラグ22は、第1実施形態で用いたプラグ22と同様に嵌合爪25を有するものである。この嵌合爪25に合わせて、非コンタミ部材15b,16bの貫通孔の側面にも、嵌合爪25の形状に対応した凹状の窪みが形成されている。
一方、本実施形態による非コンタミ部材16bの接触面18bも、非コンタミ部材15bの接触面18bと同様の水平面23と垂直面24とからなるL字型となっている。その形状や奏する作用効果は、非コンタミ部材15bと同様であるため、詳説は省略する。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る混練用セグメントについて説明する。
【0046】
図5に示すように、本実施形態に係る混練用セグメント1cは、第1実施形態に係る混練用セグメント1aと同様の外観形状を有している。また、本実施形態に係る混練用セグメント1cの混練用フライト12e,12fの先端には、第1実施形態に係る混練用セグメント1aと同様に、別体に形成された非コンタミ部材15c,16cが混練用フライト12e,12fの頂部において軸方向に沿ってそれぞれ取り付けられており、非コンタミ部材15c,16cを形成する材料も第1実施形態による非コンタミ部材15a,16aと同様である。
【0047】
本実施形態による非コンタミ部材15c,16cは、セグメント本体17cと接する接触面18cが第1実施形態による非コンタミ部材15a,16aの接触面18aと異なるので、接触面18cの形状について詳細に説明する。
図5を参照しながら、本実施形態による非コンタミ部材15cの接触面18cの構成を説明する。
【0048】
第1実施形態による非コンタミ部材15aの接触面18aは傾斜した平坦面であったが、本実施形態による非コンタミ部材15cの接触面18cは、傾斜していない平坦な水平面である。
非コンタミ部材15cの接触面18cは、軸垂直方向dに対して略垂直となるように水平に延びていて、長手方向には、第1実施形態で定義したスプライン軸6の軸方向に平行な状態で延びる平坦面である。
【0049】
図5の拡大図に示すように、セグメント本体17cの表面から内部に向かう接触面18cの水平方向の幅は、紙面に向かって左右方向となるセグメント本体17cの幅全体を占めている。また、この幅方向のほぼ中央に、軸垂直方向dに沿って立設された突起19が設けられている。この突起19は、セグメント本体17cに設けられた嵌入孔(詳細は後述)に、嵌り込むものであって、セグメント本体17cの幅方向に所定の厚みを有し、その幅方向の両側面は軸垂直方向dに沿って略平行である。
【0050】
このような突起19は、独立した複数の突起19が軸方向に沿って断続的に配置されたものでもよいし、軸方向に沿って連続的に1つの突条として形成されたものでもよい。
このように、セグメント本体17cと当接する非コンタミ部材15cの接触面18cの形状は、第1実施形態における非コンタミ部材15aとは異なっている。
それ故、ロータセグメント1cの回転時すなわち混練作業時において、非コンタミ部材15cが混練材料から受ける力の多くを、斯かる突起19(突起19の側面)で受けることができるようになる。また、ロータセグメント1cの回転中に非コンタミ部材15cがバレル3の内周面と接触しても、接触時に非コンタミ部材15cが受ける応力を、水平面と突起19の側面の両方で受けることができる。それ故、このような接触面18cを採用すれば、接触面18c上で非コンタミ部材15cのずれ方向にはたらく力を受けることができるので、非コンタミ部材15cが外れたりずれたりしにくくなる。
【0051】
このような非コンタミ部材15cをセグメント本体17cに固定する方法について説明する。本実施形態による非コンタミ部材15cは、第1実施形態及び第2実施形態とは異なり、アンカボルト及びナットを用いない。
図5の断面拡大図に示すように、セグメント本体17cに、非コンタミ部材15cの突起19に対応する形状の嵌入孔を予め形成しておく。嵌入孔は挿通孔11の中央を向く方向に形成されている。その上でこの嵌入孔に突起19を挿入して固定することで、本実施形態によるロータセグメント1cを構成することができる。ここで突起19を嵌入孔に固定する方法には、従来より用いられる締まり嵌めなどを採用することができるが、これに限らず接着剤を用いて固定してもよい。
【0052】
非コンタミ部材15cも第1実施形態による非コンタミ部材15aと同様に、セグメント本体17cに対して取り付けたり取り外したりすることができるので、非コンタミ部材15cが損傷した場合でも、損傷した非コンタミ部材15cだけを容易に交換することができる。
一方、本実施形態による非コンタミ部材16cの接触面18cも、非コンタミ部材15cの接触面18cと同様の水平面と突起19とからなっている。その形状や奏する作用効果は、非コンタミ部材15cと同様であるため、詳説は省略する。
【0053】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0054】
例えば、上記の各実施形態では、別体に形成された非コンタミ部材をロータセグメントに適用した例を開示したが、ロータセグメントに限らず、スクリュセグメント及びニーディングセグメントにおいても、その先端を別体に形成された非コンタミ部材で構成できることは、明らかである。
【符号の説明】
【0055】
1a,1b,1c ロータセグメント(混練用セグメント)
2 連続混練機(混練設備)
3 バレル
4 混練スクリュ
5 ホッパ
6 スプライン軸
7 混練部
8 送り部
9 押出部
10 スクリュセグメント
11 挿通孔
12a〜12f 混練用フライト
13 切欠部
14 底面
15a〜15c 非コンタミ部材
16a〜16c 非コンタミ部材
17a〜17c セグメント本体
18a〜18c 接触面
19 突起
20 側面
21 貫通孔
22 プラグ
23 水平面
24 垂直面
25 嵌合爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練用フライトを有するセグメント本体を備え、内部が空洞とされたバレルに回転自在に収容される混練スクリュに設けられて、当該混練スクリュとともに回転して前記バレル内に供給される材料を混練する混練用セグメントであって、
前記混練用フライトの先端部は、前記セグメント本体の材質とは異なる材質で構成されていることを特徴とする混練用セグメント。
【請求項2】
前記混練用フライトの先端部には、前記バレル内に供給される材料に対しコンタミとならない材質で構成された非コンタミ部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の混練用セグメント。
【請求項3】
前記非コンタミ部材は、前記セグメント本体とは別体で形成されており、セグメント本体に対して交換可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の混練用セグメント。
【請求項4】
前記非コンタミ部材の材質は、前記バレル内に供給される材料よりも溶融点の高い耐熱性樹脂であることを特徴とする請求項2又は3に記載の混練用セグメント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−153114(P2012−153114A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16685(P2011−16685)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】