説明

清拭用エマルジョンおよびウエットティッシュ

【解決手段】
本発明の清拭用エマルジョンは、水性エマルジョン;100重量部中に、0.1〜10重量部の油剤が、0.1〜5重量部の界面活性剤で水中に分散された水中油分散型エマルジョンであり、該水性エマルジョン中に含有される全油剤量を100重量部としたときに、該油剤中に炭酸ジカプリリルが1〜20重量部の量で含有されていることを特徴としている。さらに、本発明のウエットティッシュは、不織布に、該不織布100重量部に対して150〜250重量部の上記清拭用エマルジョンが含浸されてなり、この該不織布は、レーヨン繊維と、親水化ポリエチレンテレフタレート繊維および熱溶融性樹脂からなる繊維ウエブとが三次元的に交絡させた、目付けが35g/m2を超える不織布であることを
特徴としている。
【効果】本発明の清拭用エマルジョンおよびウエットティッシュに含浸されている液剤は、油剤として炭酸カプリリルを含有するために、油剤特有のベタツキがなく、非常に軽い使用感が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油剤を含有する清拭用エマルジョンおよびこのエマルジョンを含有するウエットティッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
お手拭、乳幼児のおしり拭きなどとして、所定の水溶性成分が溶解された水溶液を、不織布に含浸させ、これを水不透過性の包装袋などに収容したウエットティッシュが広く知られている。
【0003】
このようなウエットティッシュにおいては、不織布に含浸される液剤は、水を主成分として、これに保湿剤、界面活性剤などを配合した組成の水溶液であるのが一般的であった。他方、上記のウエットティッシュとは別の製品として、ウエットティッシュ用の水性の薬液の換わりに、油性の液剤を使用したウエットティッシュ(特開2004-261440号公報;
特許文献1参照)が知られている。
【0004】
乳幼児の便などが、油脂分を含有することから、乳幼児のお尻の清拭には、こうした油剤を含浸させたウエットティッシュが適している。油性の液剤が含浸されたウエットティッシュは、便などの汚染物を非常に良好に除去することができる。さらに、このような清拭剤を使用する際には、肛門部分だけでなく、その周囲も拭き取りされる。こうした清拭操作によって、清拭された部分の皮膚の表面にある皮脂成分も除去され、皮脂の除去によって皮膚のかさつきなどが生じやすいことから、清拭部分に油剤を補充することが好ましく、こうした点からも油剤を含有する清拭剤あるいは油剤含有のウエットティッシュを使用することが望ましいとされている。
【0005】
ところが、実際に使用されている清拭剤あるいはウエットティッシュの大部分は、水系の清拭剤あるいは水系の清拭成分を含有するウエットティッシュであって、油剤を高い含有率で含む清拭剤あるいはウエットティッシュはそれほど広汎には使用されていない。
【0006】
これは油剤を含有する清拭剤あるいはウエットティッシュは、油剤の残存感が強いからであり、清拭部分に水系の清拭剤あるいはウエットティッシュを用いた場合のようなサラット感が生じにくいからである。なお、ウエットティッシュに関しては例えば特公平5−20093号公報(特許文献2)などに油剤を用いることが知られているが、こうした油剤を
含有するウエットティッシュに関しても、上記と同様の理由から水系の液剤を使用するのが一般的であった。
【0007】
さらに、ウエットティッシュに上記のような油剤を含浸させると、油剤の粘度のためか、嵩高なウエットティッシュ特有の風合いが損なわれてしまうことがわかった。
【特許文献1】特開2004-261440号公報
【特許文献2】特公平5−20093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、油剤を高い濃度で含有し優れた清拭力を有するにも拘らず、水性洗浄剤のようなサラッとした使用感を与える清拭剤およびウエットティッシュを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の清拭用エマルジョンは、水性エマルジョン;100重量部中に、0.1〜10重量部の油剤が、0.1〜5重量部の界面活性剤で水中に分散された水中油分散型エマルジョンであり、
該水性エマルジョン中に含有される全油剤量を100重量部としたときに、該油剤中に炭酸ジカプリリルが1〜20重量部の量で含有されていることを特徴としている。
【0010】
本発明のウエットティッシュは、不織布に、該不織布100重量部に対して150〜250重量部の水性エマルジョンが含浸されてなり、
該不織布は、レーヨン繊維と、親水化ポリエチレンテレフタレート繊維および熱溶融性樹脂からなる繊維ウエブとが三次元的に交絡させた、目付けが35g/m2を超える不織
布であり、
該水性エマルジョンは、水性エマルジョン;100重量部中に、0.1〜10重量部の油剤が、0.1〜5重量部の界面活性剤で水中に分散された水中油分散型エマルジョンであり、
該水性エマルジョン中に含有される全油剤量を100重量部としたときに、該油剤中に炭酸ジカプリリルが1〜20重量部の量で含有されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウエットティッシュに含有される液剤は、油剤を含有する水性エマルジョンであり、油脂分を含む便などの拭き取り除去にたいへん適している。本発明のウエットティッシュは、上記のように油剤を含有しているにも拘わらず、使用感は非常にサラッとしており、使用後の皮膚に油剤の残存感が殆どなく、ベタツキなどは生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の清拭用エマルジョンおよびウエットティッシュについて具体的に説明する。
本発明の清拭用エマルジョンは、油剤を界面活性剤で水中に分散させた水中油分散型エマルジョンである。
【0013】
従って、本発明の清拭用エマルジョン中には、油剤が含有されている。
本発明で使用する油剤としては、油脂(ロウ類を含む)、高級アルコール、脂肪酸、エステル類、炭化水素類、金属石鹸、その他の油剤を使用することができる。
【0014】
油脂類は、一般に脂肪酸とグリセリンとのエステルであり、この油脂類には、植物油、動物油が含まれる。本発明で油剤として使用される植物油の例としては、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、パーム油、パーム核油、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ヒマシ油、椿油、ホホバ油、綿実油、モクコウ、ヤシ油、(ローズヒップ油、カウナバロウ、キャンデリラロウ)などを挙げることができる。このような植物油のなかでも、室温で液体の植物油を使用することが好ましい。
【0015】
また、本発明で油脂類として使用される動物油の例としては、ミンク油、タートル油、卵黄油、ミツロウ、牛脂、鯨ロウ、ラノリン、スクワラン、馬油、ブリスタンを挙げることができる。このような動物油のなかでも、室温で液体の植物油を使用することが好ましい。
【0016】
本発明で油剤として使用する炭化水素類としては、炭素数15以上のパラフィン系の油剤が好ましく使用され、このようなパラフィン系油剤の例としては、流動パラフィン、セレシンを挙げることができる。
【0017】
また、油剤として使用可能な脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミ
チン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、リノール酸を挙げることができる。
【0018】
さらに、高級アルコール類としては、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルデカノール、オレイルアルコールを挙げることができる。
【0019】
また、エステル類の例としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクタデシル、ラウリン酸へキシル、ジオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プリピレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、酢酸ラノリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシルを挙げることができる。
【0020】
上記のような油剤は、適宜組み合わせて使用することができるが、比較的展伸性の高い油剤を基材油として、脂肪酸トリグリセリドのように比較的重い油剤を組合せることにより、例えば乳幼児の便のような油分含む被清拭物を拭き取り易くなる。
【0021】
上記のような基材油としては、上述の流動パラフィンを使用することが好ましく、さらに、ここで添加する比較的重い使用感を有する油剤としては、ホホバオイル、(レープシード油のような脂肪酸のトリグリセリドのような植物性の脂肪酸エステルを使用することが好ましい。
【0022】
このような場合に、清拭用エマルジョンに配合される油剤中に基材油として配合される流動パラフィンの量は、油剤の合計の量を100重量部としたとき、通常は60重量部〜98重量部、好ましくは60重量部〜95重量部である。また、この基材油に添加する比較的軽い使用感を有する油剤の量は、油剤の合計の量を100重量部としたときに、通常は1〜30重量部、好ましくは3〜25重量部の範囲内の量で使用する。さらに、ホホバオイルに代表されるような比較的重い油剤である脂肪酸のトリグリセリドは、油剤全体量を100重量部としたときに、通常は1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部の量で使用される。このような量で比較的重い油剤を使用することにより、洗浄力が向上すると共に、皮膚に対する保護効果が向上する。しかも、上記のような量であれば、後述する炭酸ジカプリリルを配合することにより、油剤全体が重くなることはなく、サラット感が保持される。
【0023】
このような量で基材油に比較的重い使用感を有する油剤を配合することにより、乳幼児のお尻を清拭して便などを拭き取るのには水系の清拭剤と比較すると格段に優れた清拭力が発現するが、清拭後に被清拭部位に相当量の油膜が残留し、不快感を与える原因となる。
【0024】
これは、上記のような基材油と比較的重い使用感を有する油剤を使用したのでは、清拭面に上記のような油剤に起因する油膜が形成され、使用後に不快感を与えることがある。
本発明の清拭用エマルジョンは、上記のような油剤に加えて、油剤として炭酸ジカプリリル(Dicaprylyl Carbonate)を用いる。
【0025】
この炭酸ジカプリリルは、次式「I」で示される構造を有している。
【0026】
【化1】

【0027】
この炭酸ジカプリリルは、それ自体がたいへんサラサラした軽い感触の油剤である。一般に油剤には、「重い」「軽い」という使用感がある。この油剤の重い、軽いという使用感は、延展性(Spreading Value)として評価することができる。この延展性は、上腕部
に4mgの油性剤を滴下し、10分間後に広がった油滴面積(mm2)で表すことができる。こ
の時標準品としてデカン酸テトラデシルを用い、この標準品であるデカン酸テトラデシルの延展性を780mm2とする。本発明で使用する炭酸ジカプリリル単独の延展性は、16
00mm2であり、極めて高い値を示す。通常、この延展性が1000mm2を超える油性剤は、使用感が軽いといわれており、因みに、低粘度流動パラフィンの延展性は、700〜800mm2の範囲内、多くの場合660mm2付近にある。
【0028】
上記のような延展性を有する炭酸ジカプリリルを油剤中に少量配合することにより、油剤全体の使用感が非常に軽くなる。
本発明において、油剤(100重量部)中における炭酸ジカルリリルの配合量は、1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部である。このような量で炭酸ジカプリリルを配合することにより、基材油の種類に拘わらず、油剤の使用感を非常に軽くすることができ、この油剤の使用感は、油剤をそのまま使用した場合だけでなく、この油剤を水に分散させた水中油型のエマルジョンにおいても極めてさらさらした使用感が発現する。すなわち、油剤を水に分散させた水中油型エマルジョンについて、その使用感を、油性剤の使用感を表す延展性で表すことは適当ではないが、上記のような量で炭酸ジカプリリルを配合した油剤を用いて形成されたエマルジョンは、比較的重い使用感の油剤を含有している場合であっても、延展性で表すと、1000mm2を超える軽い使用感が得られる。
【0029】
しかも、本発明の清拭用エマルジョンは、油剤を含有しているために便などを拭き取り易く、しかも拭き取った部分に使用感が低下しない程度の油膜を残すことから、皮膚のかさつきなどを有効に防止することができる。
【0030】
本発明の清拭剤およびウエットティッシュに含有される液剤は、上記のような油剤を含有する水中油型エマルジョンである。
本発明の清拭用エマルジョンは、上記油剤に界面活性剤を加えた後、この混合物に少量の水を加えて、一旦油中水型エマルジョンを形成し、この油中水型エマルジョンを多量の水中に一気に投入して水中油型エマルジョンに相転移をすることにより調製することができる。
【0031】
ここで使用する界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などを使用することができるが、通常のノニオン系界面活性剤、さらに必要によりアニオン系界面活性剤を使用する。
【0032】
ここで使用することができるノニオン系界面活性剤としては、例えば、
ポリオキシエチレン(POE)ソルビタンオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;
POEソルビットモノオレエート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類;
POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート等のPO
Eグリセリン脂肪酸エステル類;
POEモノオレエート、POEジステアレート、POEジオレエート等のPOE脂肪酸エステル類;POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル、POE2−ヘキシルデシルエーテル、POE2−ヘプチルウンデシルエーテル、POE2−デシルテトラデシルエーテル、POE2−デシルペンタデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類;プルロニック型類;
POE・POPセチルエーテル、POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類;
POEヒマシ油等のPOEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体;POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ誘導体;ポリグリセリンモノアルキルエステル・モノアルキルエーテル類;
ショ糖モノオレイン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル類;
シリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0033】
また、本発明で必要により使用するアニオン系界面活性剤の例としては、
脂肪酸石鹸、エ−テルカルボン酸およびその塩、アルカンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、高級アルコ−ル硫酸エステル塩、二級高級アルコ−ル硫酸エステル塩、アルキルおよびアルキルアリルエ−テル硫酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロ−ルアミドの硫酸エステル塩、硫酸化油、リン酸エステル塩、アミノ酸、コラ−ゲン加水分解物と高級脂肪酸縮合物、コラ−ゲン加水分解物誘導体等のアニオン系界面活性剤を挙げることができる。
【0034】
また、本発明では、界面活性剤として、必要であれば、アルキルアミン塩、ポリアミンまたはアルカノ−ルアミン脂肪酸誘導体、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモルホリニウム塩等のカチオン系界面活性剤を使用することも可能である。なお、上記のようなカチオン系界面活性剤は、エマルジョンを形成するための界面活性剤として使用されるよりも、抗菌剤、殺菌剤として使用されることが多い。上記のような界面活性剤は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記のような界面活性剤の使用量は、油剤の合計量100重量部に対して、通常、10〜50重量部、好ましくは20〜30重量部の範囲内にある。上記のような量で界面活性剤を使用することにより、安定な水中油型エマルジョンを形成することができる。
【0036】
さらに、本発明の清拭剤およびウエットティッシュ中に配合される液剤の安定性を確保するためにエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールのような多価アルコールなどを保湿可溶化剤として配合することが好ましい。このような相溶剤の使用量は、通常はエマルジョン100重量部中に、通常は1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部の範囲内にある。
【0037】
本発明のウェットティッシュの基材不織布に含浸される水中油分散型エマルジョンには、上記の成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の任意成分を配合することができる。具体的には、例えば防腐剤、香料、キレート剤、pH調整剤、薬効成分、植物成分等を挙げることができる。
【0038】
特に本発明では、多量の水中に油剤が分散した状態で存在することから、適切な防腐剤を配合する必要があり、通常は塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム;パラオ
キシ安息香酸メチルおよびパラオキシ安息香酸ブチルのようなパラオキシ安息香酸エステル;フェノキシエタノールのようなその他の防腐剤などを挙げることができる。このような防腐剤の配合量(合計量)は、エマルジョン100重量部中に通常は0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部の範囲内にある。このような量の防腐剤を配合することにより、細菌学的にエマルジョンあるいはウエットティッシュを長期間安定に保持することができると共に、人体に対しても安全性が高い。
【0039】
また、本発明の清拭剤およびウエットティッシュ用の薬液には、グリチルリチン酸ジカリウム、ヨクイニンエキス、トウキエキス、ヒアルロン酸、セラミドのような保湿剤あるいは消炎剤を配合することが好ましい。このような保湿剤あるいは消炎剤の配合量は、エマルジョン100重量部中に、通常は0.0001〜1重量部、好ましくは0.0005〜0.1重量部の範囲内にある。このような量の保湿剤あるいは消炎剤を配合することにより、拭き取りにより皮脂が拭い去られたとしても、上記の油剤およびこの保湿剤あるいは消炎剤が共同して、皮膚を有効に保護することができる。
【0040】
本発明の清拭剤およびウエットティッシュに含有される液剤は、上記のような成分が水に分散した水中油分散型のエマルジョンとして得られる。このような水中油分散型のエマルジョンを形成する方法としては、種々の方法を採用することができるが、一般には、油状成分を加熱しながら攪拌して均一な油性組成物を形成し、この油性組成物に少量の水を加えて、油中水分散型のエマルジョンを形成し、この油中水分散型のエマルジョンを多量の水中に投入して、相転移させて、水中油分散型のエマルジョンにする方法を採用するのが有利である。
【0041】
上記のようにして形成された清拭剤は、相当量の油剤を含むにも拘らず、炭酸ジカプリリルを配合することにより、非常にサラッとした使用感が得られる。しかも、油剤を含有することから、例えば便汚れなどを非常に容易に除去することができる。従って、付着した汚れを擦り取る必要が殆どなく、この部分の皮脂を過度に除去することがない。しかも、本発明の清拭剤およびウエットティッシュ用の薬液には、適度の油剤が含有されており、さらに、通常は保湿性および消炎性に優れたグリチルリチン酸ジカリウムなどを含有するので、清拭部分の皮膚の荒れなどを最小限に抑えることができ、現在のところ、非常に皮膚の敏感な乳幼児にした事例においても、肌荒れなどを起こしたことはない。
【0042】
本発明のウエットティッシュは、上記のような組成を有する清拭剤を、ウエットティッシュ用の液剤として不織布に含浸させることにより得られる。
しかしながら、上記の液剤は、相当量の油剤を含有するために、目付けの低い不織布に含浸させたのでは、含有される油剤によって不織布の風合いが損なわれるので、本発明で使用される不織布としては、目付けが通常は35g/m2を超える不織布、好ましくは3
6g/m2〜40g/m2の範囲内の目付けを有する不織布を使用する。
【0043】
このような嵩高の不織布を使用することにより、相当量の油剤を含有している液剤を含浸させることによっても、ウエットティッシュの風合いが損なわれることはない。
本発明で使用する不織布としては、種々の組成の不織布を使用することができるが、特にレーヨン、親水性ポリエチレンテレフタレート(親水性PET)からなるウエブに三次元交絡を形成して、この交絡部分を、例えばポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)などの熱溶融性樹脂で固定した不織布を使用することが好ましい。このような不織布の目付けを上記のように調節するためには、交絡点を固定するポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)などの熱溶融性樹脂の使用量を減らして、交絡部分における繊維の固定を緩やかにする。
【0044】
具体的には、得られる不織布の量を100重量部としたときに、レーヨン繊維の量が、
40重量部以上50重量部未満の範囲内の量、好ましくは40〜45重量部の範囲内の量であり、親水化ポリエチレンテレフタレート繊維の量が、20重量部を超え40重量部以下の範囲内の量、好ましくは25〜35重量部の範囲内の量であり、熱溶融性樹脂の量が20重量部を超え30重量部未満の範囲内、好ましくは23〜28重量部の範囲内の量であるように各成分の量を調整する。このように交絡部分を固定する熱溶融性樹脂の量を減らして、その分親水性PETの量およびレーヨンの量を増やすことにより、油剤を含有する液剤を含浸させても、ウエットティッシュの風合いが損なわれることがない。
【0045】
本発明のウエットティッシュにおいて、不織布と、上記のような液剤の配合比率は、不織布の目付けを考慮して決定されるが、通常の場合、不織布100重量部に対して、含浸させる液剤の量は通常は100〜300重量部、好ましくは150〜250重量部の範囲内にする。このような量で液剤を含浸させることにより、得られるウエットティッシュから液剤が分離することがなく、しかも不織布の有する良好な風合いが損なわれることがない。
【0046】
本発明のウエットティッシュは、上記のような不織布に、上記特定の液剤を含浸させ、機密性の高い包装材料で梱包され、さらにこの梱包体をケースに収納して使用される。
このような構成を有する本発明のウエットティッシュは、相当量の油剤を含有しているにも拘らず、炭酸ジカプリリルを含有することにより、ウエットティッシュを使用した後に、清拭部分がさらさらした使用感を有し、油剤の残留感が殆ど残らない。しかしながら、油剤を含有することにより、付着便などの付着汚れの除去性はたいへん優れており、ごしごしこすることなく、簡単に拭き取ることができる。
【0047】
このように本発明のウエットティッシュは、使用後に油剤の残留感が殆どないにも拘らず、清拭部分はウエットティッシュに含有される油剤などの成分によって被覆保護されており、清拭部分がカサツクなどがなく、非常に良好な皮膚状態を維持し続けることができる。
【0048】
しかも、油剤を含有するウエットティッシュに見られがちな、不織布の風合いの低下も殆ど生じない。
本発明のウエットティッシュは、乳幼児のお尻の清拭布として使用することができることは勿論、成人用として使用することもでき、特に介護用のウエットティッシュとして好適に使用することができる。即ち、被介護者には高齢者が多く、皮脂の分泌量が低下しており、従来のような水系の薬液を含浸させたウエットティッシュを用いたのでは、皮膚を保護している皮脂を殆ど除去してしまい、皮膚あれの原因とも成りかねないが、本発明のウエットティッシュは、相当量の油剤を含有するので、拭い去られてしまった皮脂の代わり、新たな油性皮膜が形成されて皮膚を保護するので、皮膚のカサツキなどの皮膚トラブルの発生を未然に防止することができる。
【0049】
次に本発明の清拭剤およびウエットティッシュについて実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
流動パラフィン;3.50重量部、炭酸ジカプリリル;0.25重量部、ホホバオイル;0.05重量部、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル20モルE.O.付加体;0.26重量部、ポリオキシエチレン硬化水添ヒマシ油(PEG-40モル付加体);0.29重量部、モノオレイン酸グリセリン;0.21重量部、パラオキシ安息香酸メチル;0.30重量部を容器に採り、100rpmの速度で攪拌しながら、60℃に加熱し、9.20重量
部の水(60℃以上)を加え、80℃に加熱して150rpmの速度で全体が均一になるま
で攪拌し、さらに得られた油性混合物(油中水分散型エマルジョン)の温度を60℃〜6
3℃に範囲内に制御した。
【0051】
ここで使用した炭酸ジカプリリルの延展性は、1600mm2/であり、非常にサラサラ感のある非常に軽い油剤であった。この炭酸ジカプリリル;0.25重量部、流動パラフィン;3.50重量部、ホホバオイル;0.05重量部の混合物も、同様にサラサラ感のある非常に軽い油剤であった。
【0052】
さらに、175rpmの速度で攪拌しながら、精製水76.829重量部を上記の油性混
合物と混合し相転移させて、水中油分散型エマルジョンを得た。
これとは別にプロピレングリコール;3.5重量部、パラオキシ安息香酸ブチル;0.05重量部、塩化セチルピリジニウム;0.06重量部、フェノキシエタノール;0.50重量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.001重量部を、加熱しながら混合して均一な混合物を得た。
【0053】
得られた混合物を、上記のようにして得られた水中油分散型エマルジョン(温度60℃以下)の攪拌下(175rpm)に加え、さらに水を加えて全体が100重量部になるよう
調整し、さらに30分間攪拌して本発明の清拭剤を得た。
【0054】
この清拭剤は、油状感が殆どないサラサラした使用感のエマルジョンであり、たいへん優れた洗浄作用があった。しかも、この清拭剤は、使用後に油剤の残存感は殆ど残らず、しかも適用箇所には適度の油層が形成され、カサツキは感じられなかった。
【0055】
レーヨン:親水性ポリエチレンテレフタレート(親水性PET):ポリプロピレン/ポリエチレン=45:30:25からなる目付け37g/m2の不織布に、この不織布100g
に対して上記の清拭剤を200gの量で加えて、清拭剤含有不織布、即ち、本発明のウエットティッシュを得た。
【0056】
得られたウエットティッシュは、不織布100g当り200gの清拭剤を含有しており、さらに、この清拭剤にはホホバオイル、流動パラフィンのような延展性の低い油剤が含有されているにも拘らず、炭酸ジカプリリルを使用することによって、延展性の低い油剤を使用したエマルジョンおよびこのようなエマルジョンを含浸させたウエットティッシュにおいても、炭酸ジカプリリルによって奏される効果である油剤のサラット感がエマルジョンおよびこのエマルジョンを含浸させたウエットティッシュにおいても保持され、本発明のウエットティッシュも非常にサラッとした使用感であった。また、得られたウエットティッシュを乳幼児のお尻の清拭に使用してみたが、付着した便も擦り取らずに簡単に除去することができ、従って、清拭部分の皮脂を過度に除去することがなく、さらに清拭部分には油剤による新たな油膜が形成された。しかも、このように新たな皮膜が形成されるにも拘らず、本発明のウエットティッシュは重い油状感がなく、非常にサラサラした使用感が得られた。
【実施例2】
【0057】
流動パラフィン;2.64重量部、炭酸ジカプリリル;0.30重量部、ホホバオイル;0.06重量部、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル20モルE.O.付加体;0.26重量部、ポリオキシエチレン硬化水添ヒマシ油(PEG-40モル付加体);0.29重量部、モノオレイン酸グリセリン;0.21重量部、パラオキシ安息香酸ブチル;0.05重量部を容器に採り、100rpmの速度で攪拌しながら、60℃に加熱し、9.20重量
部の水(60℃以上)を加え、80℃に加熱して150rpmの速度で全体が均一になるま
で攪拌し、さらに得られた油性混合物(油中水分散型エマルジョン)の温度を60℃〜63℃に範囲内に制御した。
【0058】
ここで使用した炭酸ジカプリリルの延展性は、1600mm2であり、非常にサラサラ感
のある非常に軽い油剤であった。この炭酸ジカプリリル;0.30重量部、流動パラフィン;2.64重量部、ホホバオイル;0.06重量部の混合物も、同様にサラサラ感のある非常に軽い油剤であった。
【0059】
さらに、175rpmの速度で攪拌しながら、精製水76.829重量部を上記の油性
混合物と混合し相転移させて、水中油分散型エマルジョンを得た。
これとは別にプロピレングリコール;3.50重量部、パラオキシ安息香酸メチル;0.30重量部、塩化セチルピリジニウム;0.06重量部、フェノキシエタノール;0.30重量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.001重量部を、加熱しながら混合して均一な混合物を得た。
【0060】
得られた混合物を、上記のようにして得られた水中油分散型エマルジョン(温度60℃以下)の攪拌下(175rpm)に加え、さらに水を加えて全体が100重量部になるよう
調整し、さらに30分間攪拌して本発明の清拭剤を得た。
【0061】
この清拭剤は、油状感が殆どないサラサラした使用感のエマルジョンであり、たいへん優れた洗浄作用があった。しかも、この清拭剤は、使用後に油剤の残存感は殆ど残らず、しかも適用箇所には適度の油層が形成され、カサツキは感じられなかった。
【0062】
レーヨン:親水性ポリエチレンテレフタレート(親水性PET):ポリプロピレン/ポリエチレン=45:30:25からなる目付け37g/m2の不織布に、この不織布100g
に対して上記の清拭剤を200gの量で加えて、清拭剤含有不織布、即ち、本発明のウエットティッシュを得た。
【0063】
得られたウエットティッシュは、不織布100g当り200gの清拭剤を含有しており、さらに、この清拭剤にはホホバオイル、流動パラフィンのような延展性の低い油剤が含有されているにも拘らず、炭酸ジカプリリルを使用することによって、延展性の低い油剤を使用したエマルジョンおよびこのようなエマルジョンを含浸させたウエットティッシュにおいても、炭酸ジカプリリルによって奏される効果である油剤のサラット感がエマルジョンおよびこのエマルジョンを含浸させたウエットティッシュにおいても保持され、本発明のウエットティッシュも非常にサラッとした使用感であった。また、得られたウエットティッシュを乳幼児のお尻の清拭に使用してみたが、付着した便も擦り取らずに簡単に除去することができ、従って、清拭部分の皮脂を過度に除去することがなく、さらに清拭部分には油剤による新たな油膜が形成された。しかも、このように新たな皮膜が形成されるにも拘らず、本発明のウエットティッシュは重い油状感がなく、非常にサラサラした使用感が得られた。
〔比較例1〕
以下に記載する組成の油剤不含有の薬液を製造して、レーヨン:親水性PET:PP/P
E=55:20:30からなる不織布(目付け:35g/m2)100gに対して、200gの割合で含浸させてウエットティッシュを製造した。
プリピレングリコール 3.500重量部
グリチルリチン酸ジカリウム 0.010重量部
乳酸ナトリウム液 0.200重量部
d,l- ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 0.200重量部
トリメチルグリシン 0.050重量部
パラオキシ安息香酸メチル 0.100重量部
塩化セチルピリジニウム 0.070重量部
フェノキシエタノール 0.300重量部
ヒドロキシエタンジスルホン酸 0.030重量部
ヒドロキシエタンジスルホン酸4ナトリウム 0.020重量部
ポリオキシエチレン(20)
ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル 0.010重量部
精製水 95.620重量部
上記のような薬液は、油剤を含有していないので、使用後に油剤感はないが、皮膚に付着した便を除去するために、擦り取る必要があり、この部分においては相当量の皮脂も除供された。
〔比較例2〕
以下に示す組成の清拭用油剤を調製して、目付け35g/m2の不織布100gに20
0gの割合で含浸させて油性ウエットティッシュを製造した。
流動パラフィン 90重量部
ホホバオイル 5重量部
ポリオキシエチレン
ソルビタンモノラウレート 5重量部
得られたウエットティッシュは、含浸される油剤によって、不織布の風合いがそこなわれたものであった。
【0064】
また、このウエットティッシュを使用したところ、拭き取った後に、油剤特有のベタツキなどの残存感が強く残り、たいへん使用感が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の清拭剤およびウエットティッシュを形成する液剤には、油剤が含有されており、例えば便付着汚れなどを軽く拭くだけで容易に除去することができる。しかも、油剤として特定量の炭酸ジカプリリルを配合することにより、清拭剤およびウエットティッシュが油剤を含んでいるにも拘らず、油剤の残存感が殆どなく、非常にサラサラした使用感が得られる。
【0066】
また、本発明のウエットティッシュは、目付けが35g/m2を超える嵩高な不織布を
使用しているので、上記のような油剤を含有するにも拘らず、ウエットティッシュの風合いが損なわれることがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性エマルジョン;100重量部中に、0.1〜10重量部の油剤が、0.1〜5重量部の界面活性剤で水中に分散された水中油分散型エマルジョンであり、
該水性エマルジョン中に含有される全油剤量を100重量部としたときに、該油剤中に炭酸ジカプリリルが1〜20重量部の量で含有されていることを特徴とする清拭用エマルジョン。
【請求項2】
上記水性エマルジョン中に、保湿可溶化剤が含有されていることを特徴とする請求項第1項記載の清拭用エマルジョン。
【請求項3】
上記エマルジョン中に、グリチルリチン酸ジカリウムを含有することを特徴とする請求項第1項記載の清拭用エマルジョン。
【請求項4】
不織布に、該不織布100重量部に対して150〜250重量部の水性エマルジョンが含浸されてなり、
該不織布は、レーヨン繊維と、親水化ポリエチレンテレフタレート繊維および熱溶融性樹脂からなる繊維ウエブとが三次元的に交絡させた、目付けが35g/m2を超える不織
布であり、
該水性エマルジョンは、水性エマルジョン;100重量部中に、0.1〜10重量部の油剤が、0.1〜5重量部の界面活性剤で水中に分散された水中油分散型エマルジョンであり、
該水性エマルジョン中に含有される全油剤量を100重量部としたときに、該油剤中に炭酸ジカプリリルが1〜20重量部の量で含有されていることを特徴とするウエットティッシュ。
【請求項5】
上記不織布中100重量部中に、レーヨン繊維の量が、40重量部以上50重量部未満の範囲内にあり、親水化ポリエチレンテレフタレート繊維の量が、20重量部を超え40重量部以下の範囲内にあり、熱溶融性樹脂の量が20重量部を超え30重量部未満の範囲内の量で含有されていることを特徴とする請求項第4項記載のウエットティッシュ。
【請求項6】
上記水性エマルジョン中に、保湿可溶化剤が含有されていることを特徴とする請求項第4項記載のウエットティッシュ。
【請求項7】
上記エマルジョン中に、グリチルリチン酸ジカリウムを含有することを特徴とする請求項第4項記載のウエットティッシュ。

【公開番号】特開2006−345997(P2006−345997A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173903(P2005−173903)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】