説明

清掃用シート

【課題】 洗剤が徐々に放出されて洗浄力が持続し、洗剤を継ぎ足すことなく洗浄を行うことができる清掃用シートを提供すること。
【解決手段】 本発明の清掃用シートは、エアレイ法によって形成され且つセルロース系繊維を含む中間層が、同一の又は異なる熱可塑性繊維を含む一対の表面層間にサンドイッチされた構造を有する。一対の該表面層間に、界面活性剤を50重量%以上含むペースト状洗剤が保持されている。ペースト状洗剤の粘度は20℃において1000mPa・s〜500000mPa・sであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油汚れや水垢、こびりつき汚れ等の除去洗浄に好適に用いられる清掃用シートに関する。本発明の清掃用シートは、特に、食器や調理器具の洗浄に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、キッチン周り、浴室や洗面台等の水周りの汚れの清掃に好適に用いられる清掃用シートを提案した(特許文献1参照)。この清掃用シートは、繊維長が2〜15mmで且つ繊度が10〜150dtexの熱可塑性繊維を10〜90重量%、及びセルロース系繊維を10〜90重量%含み、表面に前記熱可塑性繊維の先端部が多数存在して、清掃対象面に存する汚れに対する研摩性ないし掻き取り性を有するものである。この清掃用シートには界面活性剤を含む水性洗浄剤が含浸されているので、水道から離れた場所を清掃する場合に、そのままの状態で(つまり追加的な水の供給無しに)清掃に供することができる。このような使用形態では、水性洗浄剤の洗浄力の持続性、即ち水性洗浄剤の徐放性は特に問題とならない。
【0003】
しかし、食器や調理器具の洗浄のように、水で汚れを洗い流しながら対象物を洗浄する場合には、洗浄剤の徐放性が問題となる。即ち、水性洗浄剤剤が水と共に洗い流されてしまうので、洗浄剤を継ぎ足さないと洗浄力を持続させることができない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−61885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る清掃用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エアレイ法によって形成され且つセルロース系繊維を含む中間層が、同一の又は異なる熱可塑性繊維を含む一対の表面層間にサンドイッチされた構造を有し、一対の該表面層間に、界面活性剤を50重量%以上含むペースト状洗剤が保持されている清掃用シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】
また本発明は、前記の清掃用シートに水を含ませ、該清掃用シートによって清掃対象物を清掃する清掃方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の清掃用シートは、ペースト状洗剤がシートの内部に保持されているので、水で汚れを洗い流しながら対象物を洗浄しても、洗剤が徐々に放出されて洗浄力が持続し、洗剤を継ぎ足すことなく洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の清掃用シートの一実施形態の一部破断斜視図が示されている。本実施形態の清掃用シート1は、一対の中間層2a,2bが、一対の表面層3a,3b間にサンドイッチされた構造を有している。中間層2a,2b及び表面層3a,3bは何れも繊維材料から構成されている。一対の中間層2a,2bの間には、ペースト状洗剤4が保持されている。清掃用シート1は、一対の中間層2a,2b及び一対の表面層3a,3bの合計4層が、エンボス加工によって接合一体化されて、4プライの1枚のシートとなされている。図1中、符号5は、エンボス加工によって形成されたエンボス部を示している。
【0010】
本実施形態の清掃用シート1は、一対の表面層3a,3b間にペースト状洗剤4が保持されている点に特徴の一つを有する。詳細には、清掃用シート1を用いて対象物を洗浄すると、ペースト状洗剤4が水に徐々に溶解して放出されるので洗浄力が持続する。従って洗剤を継ぎ足すことなく洗浄を行うことができる。また洗浄の初期段階で洗剤が過度に放出されることがないので、手がぬるぬるし過ぎず、作業性が良好である。これに対して、界面活性剤を含有する液状の水性洗浄剤をシートに含浸させたタイプの清掃用シートを用い、水で汚れを洗い流しながら対象物を洗浄すると、洗浄の初期段階で液状の洗浄剤が多量に放出され、その後は放出量が急激に低下するので、洗浄力が持続しない。また、洗浄の初期段階で液状の洗浄剤が多量に放出されるので、手がぬるぬるしてしまい作業性が良好でない。
【0011】
ペースト状洗剤4の徐放性を更に高める観点から、ペースト状洗剤4は清掃用シート1の表面から最も遠い位置に保持されていることが好ましい。この観点から、本実施形態においては4層構造の清掃用シート1の厚さ方向中央部である、2枚の中間層2a,2b間にペースト状洗剤4が保持されている。
【0012】
ペースト状洗剤4の徐放性は、ペースト状洗剤4の配合組成にも関係している。即ちペースト状洗剤4における界面活性剤の配合量が高いほど、ペースト状洗剤4の徐放性は高まる。この観点から、本実施形態においてはペースト状4における界面活性剤の配合量を50重量%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上としている。尤も、界面活性剤の配合量が高すぎると、その分散性等が低下するなど処方が容易でなくなる傾向にある。従って、界面活性剤の配合量の上限値は好ましくは95重量%であり、更に好ましくは90重量%である。
【0013】
ペースト状洗剤4の徐放性は、ペースト状洗剤4の粘度にも関係している。即ちペースト状洗剤4の粘度が高いほど、ペースト状洗剤4の徐放性は高まる。尤も、粘度が高すぎると、ペースト状洗剤4を清掃用シート1に施す操作が行いにくくなる場合がある。これらの観点から、ペースト状洗剤4の粘度は、20℃において好ましくは1000mPa・s〜500000mPa・s、更に好ましくは3000mPa・s〜400000mPa・sである。ペースト状洗剤4の粘度をこの範囲内に調整するためには、例えば界面活性剤の種類や配合量を調整したり、粘度調整剤を添加すればよい。ペースト状洗剤4の粘度は、BH型粘度計を用い、No.7のローターにて2rpmで測定される。
【0014】
清掃用シート1の使用に際しては、これに適量の水を含ませ手で揉んでペースト状洗剤4を泡立たせる。従って、清掃用シート1には、水をよく吸収し、水はねを起こさないような吸水力が要求される。この観点から、清掃用シート1における中間層2a,2bは、吸水力の高い材料であるセルロース系繊維を含んだものとなっている。この場合、2つの中間層2a,2bにおける繊維の配合組成は同一でもよく、或いは異なっていてもよい。セルロース系繊維としては、木材パルプ、レーヨン、コットンなどが挙げられる。これらのうち、特に吸水性の高い繊維である木材パルプを用いることが好ましい。
【0015】
中間層2a,2bは、セルロース系繊維を50重量%以上含むことが、十分な吸水力が発現する観点から好ましい。その場合、中間層2a,2bは、セルロース系繊維100%から構成されていてもよい。或いは、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上のセルロース系繊維に加えて、好ましくは50重量%以下で、更に好ましくは30重量%以下で、他の繊維材料が含まれていてもよい。他の繊維材料としては例えば熱可塑性繊維などが挙げられる。
【0016】
ペースト状洗剤4を効果的に泡立たせる観点から、中間層2a,2bは嵩高で且つ繊維間に微細な多数の空隙を有している多孔質構造であることが好ましい。中間層2a,2bをそのような多孔質構造とするために、これらの層はエアレイ法によって形成されている。エアレイ法では、繊維を解繊して空気の流れにのせて搬送し、金網又は細孔を有するスクリーンを通過させた後、ワイヤーメッシュ上に落下堆積させる。エアレイ法で形成された中間層2a,2bは、構成繊維が三次元状にランダムに堆積した状態になっているので、嵩高な構造となり、また構成繊維間に微細な多数の空隙が形成される。
【0017】
エアレイ法で繊維が堆積されて形成されたウエブは、繊維同士の交点がバインダーを用いた接着によって接合されて中間層2a,2bとなされる。熱可塑性繊維が含まれている場合には、バインダーに代えて又はバインダーと共に、熱融着によって繊維同士の交点を接合することもできる。バインダーとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリアクリレート等が用いられる。
【0018】
セルロース系繊維は、その繊維長が0.1〜15mmであることが、エアレイ法による均一なウエブの作製の点から好ましい。セルロース系繊維として木材パルプが用いられる場合、木材パルプは一般に繊維長の分布が広いことから、長さ加重平均繊維長で1〜4mmの長さのものが好適に用いられる。木材パルプの長さ加重平均繊維長は、カヤーニ繊維長測定器等で測定される。微小な特定繊維長範囲内にある繊維の平均繊維長をli(i=1〜144)とし、その本数をNiとすると、全体の長さ加重平均繊維長は、以下の式で表わされる。
【0019】
【数1】

【0020】
セルロース系繊維の繊度については特に制限はなく、該セルロース系繊維の種類に応じて適切な繊度のものが用いられる。
【0021】
中間層2a,2bはその坪量が20〜100g/m2、特に30〜60g/m2であることが、十分な量の水を吸収でき、また清掃用シート1を手で揉んで泡立たせるときの操作性が良好になる点から好ましい。この場合、2つの中間層2a,2bはその坪量が同じでもよく、或いは異なっていてもよい。
【0022】
中間層2a,2bは、セルロース系繊維を含み且つエアレイ法によって形成されたものなので、強度の観点からは十分に高いものとは言えない場合がある。従って、中間層2a,2bを清掃用シート1の表面に直接露出させ、露出面を清掃に供することは有利ではない。そこで本実施形態においては、中間層2a,2bを、強度の高い一対の表面層3a,3bでサンドイッチし、該表面層3a,3bを清掃に供している。表面層3a,3bの強度を高める観点から、本実施形態においては該層3a,3bの構成繊維として熱可塑性繊維を用いている。熱可塑性繊維は1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
熱可塑性繊維としては、繊維長が好ましくは2〜15mm、更に好ましくは3〜8mm、一層好ましくは4〜6mmのものを用いる。また、繊度が好ましくは10〜150dtex、更に好ましくは20〜130dtex、一層好ましくは30〜120dtexのものを用いる。つまり、短くて太い繊維を用いることが好ましい。それによって、表面層3a,3bの表面に、熱可塑性繊維の先端部が多数存在することになり、また個々の繊維が曲がりにくくなって、対象物の表面に存する汚れに対する研摩性ないし掻き取り性が高くなる。
【0024】
表面層3a,3bの表面に、熱可塑性繊維の先端部を多数存在させる観点から、該層3a,3はエアレイ法で形成されたものであることが好ましい。エアレイ法で形成された表面層3a,3bは、構成繊維が三次元状にランダムに堆積した状態になっているので、その表面に繊維の先端部が存在しやすくなるからである。エアレイ法で繊維が堆積されて形成されたウエブは、繊維同士の交点が、熱融着及び/又はバインダーを用いた接着によって接合されている。バインダーとしては、先に述べたものを用いることができる。
【0025】
表面層3a,3bに含まれる熱可塑性繊維としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂を材料とする繊維が用いられる。樹脂硬度は、ロックウェル硬さでR40〜R150の範囲が好ましい。特に、汚れの掻き取り性を向上させる点からは、R80〜R150の樹脂を用いることが好ましい。前記の各種材料のうち、2種の樹脂の組み合わせからなる複合繊維(芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維)を用いることもできる。特に、食器や調理器具へ与えるダメージが低く、且つ掻き取り性に優れているアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、塩化ビニル系繊維、ポリアミド繊維及びポリオレフィン系繊維が好ましい。更に、繊維の脱落を防止する面からは、融点の異なる低融点樹脂と高融点繊維とからなり且つ該低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成している熱融着性複合繊維を用いるのが好適である。低融点樹脂/高融点樹脂の組み合わせとしては、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/エチレン・ブテン−1結晶性共重合体、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6/ナイロン−66、低融点ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート等が例示できる。
【0026】
熱融着性複合繊維の形態は、並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型、三層以上の多層型、中空並列型、中鞘芯型、異形鞘芯型、海島型等で且つ低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成した構造であれば良い。熱融着性複合繊維のうち好ましいものは、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・ブチレン−1結晶性共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとの共重合ポリエステルなどの低融点ポリエステルから選ばれる何れか1種の熱可塑性樹脂を低融点樹脂とし、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートを高融点樹脂とする並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型の複合繊維である。特に、汚れの掻き取り性が良好になる点から、低融点ポリエステルとポリエチレンテレフタレートとの複合繊維を用いることが好ましい。
【0027】
熱可塑性繊維として、捲縮性を有しているものを用いることもできる。これによって、清掃用シート1の厚み感(嵩高性)を向上させることができ、洗浄の作業性が良好になる。捲縮形態としては、スパイラル型、ジグザグ型、U字型などがあり、これの何れもが好適に用いられる。
【0028】
表面層3a,3bは、熱可塑性繊維を50重量%以上含むことが、十分な強度が発現する観点から好ましい。その場合、表面層3a,3bは、セルロース系繊維100%から構成されていてもよい。或いは好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上の熱可塑性繊維に加えて、好ましくは50重量%以下で、更に好ましくは20重量%以下で、他の繊維材料が含まれていてもよい。他の繊維材料としては例えばセルロース系繊維などが挙げられる。
【0029】
表面層3a,3bはその坪量が40〜100g/m2、特に50〜80g/m2であることが、十分な強度を確保でき、また清掃用シート1を手で揉んで泡立たせるときの操作性が良好になる点から好ましい。この場合、2つの表面層3a,3bはその坪量が同じでもよく、或いは異なっていてもよい。
【0030】
図1に示すように、中間層2a,2bと表面層3a,3bとはエンボス加工によって一体化されている。これらの層の一体化をエンボス加工によって行うことで、清掃用シート1に凹凸構造が形成される。即ち、エンボス部5が凹部となり、そのまわりが凸部となる。このような凹凸構造によって、清掃用シート1は、これを手でこすって対象物を洗浄する時の操作性が良好になる。また、エンボス加工によって清掃用シート1全体の強度が向上する。凹凸構造を形成するためのエンボス加工としては、ヒートエンボス加工や超音波エンボス加工を用いることが好ましい。
【0031】
清掃用シート1に保持されるペースト状洗剤4に関しては、先にその概略を述べたが、該洗剤4の具体的な配合組成については以下の通りである。ペースト状洗剤4に含まれる界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の何れもが用いられる。洗浄力の高さや、手荒れを防ぐ観点から、界面活性剤として陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。なお界面活性剤の配合量は先に述べた通りである。
【0032】
ペースト状洗剤4には、界面活性剤の他にアルカリ剤、電解質及び水溶性溶剤等を配合してもよい。アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等の炭酸塩、硫酸水素ナトリウム等のアルカリ性の硫酸塩、第1リン酸ナトリウム等のリン酸塩、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア、モノ、ジ又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のβ−アミノアルカノール並びにモルホリン等が挙げられる。特に感触とpHの緩衝性の点でモノ、ジ又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のβ−アミノアルカノール並びにモルホリンが好ましい。
【0033】
電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び硫酸ナトリウムのような一価の水溶性金属塩、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸亜鉛のような二価の水溶性金属塩、塩化アルミニウム及び塩化鉄のような三価の水溶性金属塩、並びにクエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム及びフマル酸ナトリウムのような水溶性有機酸塩が好ましい。
【0034】
水溶性溶剤としては、一価アルコール、多価アルコール及びその誘導体から選ばれる1種以上のものが好適である。特に、油汚れの溶解性、仕上がり性、安全性の点から、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、グリセリン等が好ましい。更に、除菌性能を付与する点からは、これらの中でもエタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール等が好ましい。
【0035】
ペースト状洗剤4中に含まれるアルカリ剤の量は、0.01〜30重量%、特に0.1〜20重量%であることが好ましい。電解質の量は、0.01〜20重量%、特に0.1〜10重量%であることが好ましい。水溶性溶剤の量は、0.1〜20重量%、特に0.2〜10重量%であることが好ましい。また、ペースト状洗剤4に含まれる水の量は、5〜20重量%、特に8〜18重量%であることが好ましい。
【0036】
更に、ペースト状洗剤4には必要に応じ、抗菌剤、香料、防黴剤、色素(染料、顔料)、キレート剤、研磨剤、漂白剤等を含有させることもできる。
【0037】
清掃用シート1におけるペースト状洗剤4の保持量は、該シート1の全体重量(ペースト状洗剤4を施した後の清掃用シート1の全体重量)に対して10〜80重量%、特に20〜70重量%であることが、清掃用シート1の清掃持続時間を長くする観点から好ましい。同様の理由により、ペースト状洗剤4の保持量は、50〜300g/m2、特に70〜200g/m2であることが好ましい。
【0038】
ペースト状洗剤4が保持された状態の清掃用シート1全体の坪量は、100〜600g/m2、特に200〜500g/m2であることが、取り扱い性や経済性等の点から好ましい。
【0039】
清掃用シート1にはペースト状洗剤4が保持されているものの、該洗剤4はシートの内部に保持されているので、該シート1はその表面が実質的に湿潤していないドライな状態にある乾式シートである。清掃用シート1の使用に際しては、これに適量の水を含ませた後に該シート1を手で揉んで洗剤4を泡立たせる。その状態下に対象物を洗浄する。洗浄の作業中に洗剤4の泡立ちが低下してきたら、シート1に再び水を含ませて泡立たせる。ペースト状洗剤4は徐々に放出されるので、このような操作を複数回繰り返しても泡立ちが持続する。従って途中で洗剤を継ぎ足すことなく、一枚の清掃用シート1で多数の対象物を洗浄することができる。
【0040】
清掃用シート1による洗浄の対象物としては、食器や調理器具などが好適である。例えば魚焼きグリルやフライパン、カレー鍋やシチュー鍋のように、しつこい油汚れやこびりつき汚れ、或いは水垢が付着している食器・調理器具を清掃用シート1によってきれいに洗浄することができる。
【0041】
次に本実施形態の清掃用シート1の好ましい製造方法について説明する。先ず、木材パルプ等のセルロース系繊維をエアレイ法によって堆積させ、ウエブを形成する。形成されたウエブに対してバインダーを施して繊維同士の交点を接合する。繊維が熱融着性を有する場合には、バインダーに代えて又はバインダーと共に繊維同士の交点を熱融着してもよい。この操作によって一方の中間層が形成される。
【0042】
次いで、中間層上に熱可塑性繊維をエアレイ法によって堆積させ、ウエブを形成する。形成されたウエブにおける繊維同士の交点を熱融着によって接合する。熱融着に代えて又は熱融着と共にバインダーによる接着で繊維同士の交点を接合してもよい。このようにして一方の表面層が中間層上に形成される。このようにして形成されたシートは、中間層と表面層とが一体になった2プライの1枚のシートである。
【0043】
このシートにおける中間層の表面に、所定量のペースト状洗剤を施す。この操作には各種塗工方法を用いることができる。ペースト状洗剤は、中間層の表面全域に又は半分の領域に施すことができる。次にこのシートを、中間層が内側となるように二つ折りする。ペースト状洗剤を中間層の表面の半分の領域にのみ施した場合には、ペースト状洗剤を施した領域と施していない領域とが対向するようにシートを二つ折りする。これによって4層構造のシートが得られる。最後に、この4層構造のシートにエンボス加工を施して、本実施形態の清掃用シートが得られる。
【0044】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態の清掃用シート1では、一対の中間層2a,2b間にペースト状洗剤4が保持されていたが、これに代えて、少なくとも一方の中間層2a,2b自体にペースト状洗剤4を含浸させてもよい。
【0045】
また前記実施形態の清掃用シート1は、一対の表面シート3a,3b間に一対の中間層2a,2bが挟持された構造のものであるが、これに代えて、一対の表面シート間に中間層を1層のみ又は3層以上配してもよい。中間層を1層配する場合には、少なくとも一方の表面層と中間層との間にペースト状洗剤を保持させるか、或いは中間層自体にペースト状洗剤を含浸させることができる。
【0046】
また、清掃用シート1に更に付加的な機能を付与する目的で、表面シート3a,3bと中間層2a,2bとの間に付加的な層を配してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。
【0048】
〔実施例1〕
セルロース系繊維としてのパルプ繊維(長さ加重平均繊維長2.5mm)を原料として用い、エアレイ法によりウェブを形成した。このウェブにおける構成繊維同士の交点を、バインダー(アクリロニトリルーブタジエンゴム)によって接着し、坪量40g/m2の中間層を形成した。
【0049】
ポリエチレンテレフタレート繊維(22dtex×5mm)を原料として用い、エアレイ法により中間層上にウェブを形成した。このウェブにおける構成繊維同士の交点を、バインダー(アクリロニトリルーブタジエンゴム)によって接着し、坪量60g/m2の表面層を形成した。
【0050】
このようにして得られた中間層と表面層とが一体化されたシートにおける中間層の表面全域にペースト状洗剤を130g/m2の塗工量で塗布した。ペースト状洗剤の組成は以下の通りである。また20℃における粘度は260000mPa・sであった。
・アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(界面活性剤) 77%
・2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(アルカリ剤) 3%
・水 20%
【0051】
ペースト状洗剤を塗工した後のシートを、中間層が内側となるように二つ折りして4層構造となし、次いでヒートエンボス加工によってこれら4層を一体化した。エンボスパターンは図1に示す通りであった。このようにして清掃用シートを得た。
【0052】
〔比較例1〕
ペースト状洗剤を塗布しない以外は実施例1と同様にして4層構造のシートを得た。このシートに以下の組成を有する水性洗浄剤を含浸させた。含浸率は480%であった。水性洗浄剤を含浸させたシートを70℃の乾燥機内で3時間乾燥させた。このようにして清掃用シートを得た。得られたシートにおける水性洗浄剤の含浸率は55%であった。
・アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(界面活性剤) 10.5%
・2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(アルカリ剤) 1.0%
・水溶性溶剤 2.5%
・水 86%
【0053】
〔徐放性評価〕
得られた清掃用シートにおける洗浄剤の徐放性を以下の方法で評価した。その結果を以下の表1に示す。
(1)清掃用シートに15gの水を含ませる。
(2)手で10回軽く揉む。
(3)乾いた30cmの白色陶器皿を3枚洗う(皿の表のみをシートを4回転回して洗う)。
(4)シートから3gの液をしぼり出す。しぼり出した液を70℃で3時間乾燥させて揮発分を除去し、界面活性剤の重量を測定する。測定された重量から、絞り液中の界面活性剤の濃度を算出する。
(5)シートに3gの水を含ませる。
(6)手で3回軽く揉む。
(7)前記の(3)〜(6)の操作を11回繰り返す。
(8)このようにして合計36枚の皿を洗い、その間での界面活性剤の濃度の変化を測定する。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1の清掃用シートでは清掃の初期に界面活性剤が多量に放出されず、徐々に放出されることが判る。これに対して比較例1の清掃用シートでは、清掃の初期に界面活性剤が多量に放出され、清掃の終期では界面活性剤が放出されないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の清掃用シートの一実施形態を示す一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 清掃用シート
2a,2b 中間層
3a,3b 表面層
4 ペースト状洗剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアレイ法によって形成され且つセルロース系繊維を含む中間層が、同一の又は異なる熱可塑性繊維を含む一対の表面層間にサンドイッチされた構造を有し、一対の該表面層間に、界面活性剤を50重量%以上含むペースト状洗剤が保持されている清掃用シート。
【請求項2】
前記ペースト状洗剤の粘度が20℃において1000mPa・s〜500000mPa・sである請求項1記載の清掃用シート。
【請求項3】
前記表面層がエアレイ法で形成されたものである請求項1又は2記載の清掃用シート。
【請求項4】
前記表面層が、繊維長2〜15mmで、繊度10〜100dtexの熱可塑性繊維を含む請求項1ないし3の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項5】
前記中間層が、セルロース系繊維として木材パルプを含む請求項1ないし4の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項6】
前記中間層が同一の又は異なる一対の層からなり、一対の該層間に前記ペースト状洗剤が保持されている請求項1ないし5の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項7】
食器又は調理器具の洗浄に用いられる請求項1ないし6の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れかに記載の清掃用シートに水を含ませ、該清掃用シートによって清掃対象物を清掃する清掃方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−15011(P2006−15011A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197174(P2004−197174)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】