説明

清浄空調装置

【課題】布製筒状部材を吹出チェンバーの吹出口に接続した空調装置において、吹出チェンバーから吹き出す空気流を整流して一様なものとし、筒状部材の揺動の発生を解消乃至緩和する。
【解決手段】空調機器から供給する空気を吹き出す吹出チェンバーと、この吹出チェンバーの吹出口に取り付ける終端を閉塞した筒状部材と、上記吹出口に取り付ける整流構造体とで清浄空調装置を構成する。そして、筒状部材は、その上方軸方向に設けるガイドレールと、これを自由に滑動する複数のランナーとを介して軸方向に伸縮自在に吊下する。一方、上記整流構造体は、上記吹出口の口径に見合う形状の枠体の内部に、該枠体内部を多数の小室に区画する筒状構造物を設けたものとし、具体的には、筒状構造物の断面形状がハニカム形状、または、格子状である。また、筒状構造物を、多数のパイプを結束して枠体に収納可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品加工工場や精密機器の製造ラインにおけるクリーンルーム等で使用される、空気清浄機能を備えた空調装置に関するもので、部屋の天井付近に設置される布製の筒状部材から、低速、均一に清浄空気を吹き出すようにした空調装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品加工工場等の低温作業設備において、食品の鮮度や品質を管理するため低温環境を維持すると共に、作業者の体感温度が下がらないようにするため、及び、粉塵等を舞い上がらせないようにするため、天井付近に、一端を空調機器の吹出口に接続し他端は閉塞した布製の筒状部材を複数列設し、該筒状部材からは、ごく低速の冷気が吹き出されるようにした空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、これらの空調装置は、上記布製の筒状部材を防塵フィルターとしても機能させて、精密機器の製造ラインにおけるクリーンルーム等で空気清浄を行うようにすることもある。
【0003】
これらの空調装置の一例の概略を図3に従って説明する。図3は空調装置を設置した部屋を示したもので、(A)は部屋の平面図、(B)は側面図である。図3において、11は一般的な空調機器の室外ユニット、12は室内ユニットで、一定温度に調節した空気を吹出チェンバー13に供給し、ここから室内に送出するものである。吹出チェンバー13には複数の吹出口14、14・・が設けられ、各吹出口14には終端を閉塞した布製筒状部材15、15・・が適宜な手段で接続されている。この布製筒状部材15は適宜な吊下金具16で天井から伸縮自在に吊下支承され、上記吹出口14から供給される空気によって筒状に膨らみ、その布製素材によって周面で空気からゴミ等の粉塵や不純物を捕集し、清浄な空気のみを一様且つ低速に室内に供給するものである。
【0004】
【特許文献1】特開平3−110343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の空調装置では、布製筒状部材が吹出チェンバーの吹出口に直接接続されているので、吹出口から送出された空気はそのまま筒状部材の中に充満する。この場合、一般的に送出される空気流は常に一定ではなく、脈流や乱流が生じている。このため、天井から吊下支承しているだけの筒状部材は、その空気流によって不規則に揺動することがある。この不規則揺動によって、捕集した粉塵を再度放出したり、異音を発するなど、部屋の作業環境に悪影響を及ぼすおそれがあった。また、継続的な揺動によって吊下部分が外れたり、損傷したりするという不都合も考えられる。
【0006】
本発明は、かかる諸課題を解決するため、従来の空調装置に改良を加えたものであり、吹出チェンバーから吹き出す空気流を整流して一様なものとし、筒状部材の揺動の発生を解消乃至緩和するようにすることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、空調機器から供給する空気を吹き出す吹出チェンバーと、この吹出チェンバーの吹出口に取り付ける終端を閉塞した筒状部材と、上記吹出口に取り付ける整流構造体とで清浄空調装置を構成するという手段を採用した。
【0008】
そして、この筒状部材は、布製で、上記吹出口から吹き出す風量に応じて軸方向に膨張するものであるという手段を採用した。
【0009】
また、筒状部材は、その上方軸方向に設けるガイドレールと、これを自由に滑動する複数のランナーとを介して軸方向に伸縮自在に吊下したものであるという手段を採用した。
【0010】
一方、上記整流構造体は、上記吹出口の口径に見合う形状の枠体の内部に、該枠体内部を多数の小室に区画する筒状構造物を設けたものであるという手段を採用した。
【0011】
具体的には、筒状構造物の断面形状がハニカム形状であるという手段、または、筒状構造物の断面形状が格子状であるという手段を採用した。
【0012】
また、筒状構造物が、多数のパイプを結束して枠体に収納可能としたものであるという手段を採用した。
【発明の効果】
【0013】
上記構成にかかる本発明の清浄空調装置は、吹出チェンバーの吹出口に整流構造体を取り付けたものであるから、吹出口から筒状部材に吹き込む空気は、整流された一様流となる。そのため、従来のように脈流や乱流によって筒状部材が不規則に揺動することがなく、粉塵の再放出や異音の発生を防止すると共に、吊下部分の脱落や損傷を防止できるようになったものである。
【0014】
このとき、筒状部材は布製であるので、整流された一様流の風量に応じて軸方向に膨張するものである。
【0015】
また、筒状部材を軸方向に延びるガイドレールと複数のランナーを介して吊下するので、吹出風量によって伸縮自在となるものである。
【0016】
一方、枠体内部を多数の小室に区画する筒状構造物を設けた整流構造体を吹出チェンバーの吹出口に取り付けるという簡単な構成であるから、その製造や設置が簡単で手間を要さず、また、安価に提供できるものとなった。
【0017】
さらに、筒状構造物の断面形状をハニカム形状、格子状またはパイプ状としたので、安定的な形状で確実な整流作用を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る清浄空調装置の好ましい実施形態を、添付した図面に従って説明する。図1(A)は、空調装置の一部の概略説明図であり、図において、1は吹出チェンバーで、図示しない空調機器の室外ユニット及び室内ユニットと接続され、一定温度の空気を吹出口2から送出するものである。なお、図では吹出口2は一ヶ所しか例示していないが、本装置を適用する部屋の大きさに応じて複数の吹出口を設ける。
【0019】
3は、終端を閉塞した不織布製の円筒フィルター(筒状部材)で、適宜な締め付けバンド4等により、その開口端を上記吹出口2に取り付ける。そして、吹出口2から空気を送出することによって、図のようにその風量に応じて軸方向に膨張し、その周面から低速の空調空気を均一に排出するものであり、同時に周面で高度な集塵作用を行うものである。この円筒フィルター3は、その上方に設けるガイドレール5を自由に滑動する複数のランナー6、6・・を介して伸縮自在に吊下している。これらの構成は、基本的には上述した従来の空調装置とほぼ同等の構成である。なお、小規模な空調装置の場合には、ガイドレールとランナーによる吊下を省略することもある。
【0020】
なお、円筒フィルター3としては、例えば出願人の販売にかかる電石サニフィルター(登録商標)を使用することができる。これは強力な電界を持つ超極細繊維の電石不織布からなるものであって、目に見えないチリやホコリからミクロ単位の微粒子までを確実に捕集するもので、排出される空気は極めて清浄なものとなる。このため室内環境を極めて清浄に維持することが可能となるものである。
【0021】
次に、7は上記吹出口2に取り付ける整流構造体である。この整流構造体7は、例えば同図(B)に示すように、吹出口2の口径に見合う形状の枠体8の内部に、断面がハニカム形状を有する所定長さの筒状構造物9を組み付けたもので、吹出口2に挿着する。吹出口2から送出される空気は、この整流構造体7の多数のハニカム形状の筒状構造物9を通過することによって整流され、乱れのない一様流となって円筒フィルター3内に供給される。これにより、円筒フィルター3は不規則に揺動することなく安定し、異音を生じることもない。また、吊下部分の脱落や損傷を未然に防ぐことができる。
【0022】
図2(A)〜(C)は、上記整流構造体7の断面形状の例を示すものである。(A)に示すように、枠体8内をハニカム形状の筒状構造物9で区画するほか、(B)に示すように格子状の筒状構造物9aで区画しても一定の整流効果を得ることができる。また、図示しないが、同心円状及び放射状に区画することも可能である。また、同図(C)に示すように、多数のパイプ10を適宜な結束具8aでほぼ円筒状に束ねて枠体8に収め、これを上記吹出口2に挿着するようにしてもよい。これらの構造は、簡単に構成できると共に、外力に対して安定している。特にハニカム形状はその安定性が高く評価される。
【0023】
要するに、本発明における整流構造体7は、空気の吹出方向を、適宜な形状の構造物で所定長さの筒状の多数の小室に区画し、各小室を通過させることで空気を整流し、円筒フィルター3に一様流を供給できるものであればよいのである。
【0024】
なお、この整流構造体7を構成する素材は特に限定するものではない、特に筒状構造物9については、金属製のものを使用してもよいが、コストの面や軽量化の観点からは、紙製や合成樹脂製のものを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る清浄空調装置の一例を示すもので、(A)はその一部の概略説明図、(B)は整流構造体の取り付けの状態を示す説明図である。
【図2】それぞれ整流構造体の断面形状の例を示すものである
【図3】従来の空調装置の概略を示すもので、(A)は部屋の平面図、(B)は側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 吹出チェンバー
2 吹出口
3 円筒フィルター(筒状部材)
4 締め付けバンド
5 ガイドレール
6 ランナー
7 整流構造体
8 枠体
9 筒状構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機器から供給する空気を吹き出す吹出チェンバーと、この吹出チェンバーの吹出口に取り付ける終端を閉塞した筒状部材と、上記吹出口に取り付ける整流構造体とからなることを特徴とする清浄空調装置。
【請求項2】
筒状部材は、布製で、上記吹出口から吹き出す風量に応じて軸方向に膨張するものである請求項1記載の清浄空調装置。
【請求項3】
筒状部材は、その上方軸方向に設けるガイドレールと、これを自由に滑動する複数のランナーとを介して軸方向に伸縮自在に吊下したものである請求項1または請求項2記載の清浄空調装置。
【請求項4】
整流構造体は、上記吹出口の口径に見合う形状の枠体の内部に、該枠体内部を多数の小室に区画する筒状構造物を設けたものである請求項1から請求項3のいずれか1項記載の清浄空調装置
【請求項5】
筒状構造物の断面形状がハニカム形状である請求項4記載の清浄空調装置。
【請求項6】
筒状構造物の断面形状が格子状である請求項4記載の清浄空調装置。
【請求項7】
筒状構造物が、多数のパイプを結束して枠体に収納可能としたものである請求項4記載の清浄空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−180457(P2009−180457A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20961(P2008−20961)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(592124137)株式会社サンロード (15)
【Fターム(参考)】