説明

減圧乾燥装置

【課題】密閉容器に洗浄用水の一部が付着しているワークを入れ、付着水を減圧乾燥させる減圧乾燥装置において、真に必要な乾燥時間を定量的に把握することができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】ST01で許容される付着水の量wを設定する。このwを第2の式に代入して第2の圧力p2を決定する(ST02)。濡れたワークを真空乾燥させ(ST05)、第3の圧力p3を測定する(ST08)。第3の圧力p3が、第2の圧力p2以下であれば合格(ST10)、否であれば不合格(ST11)と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品の乾燥に好適な減圧乾燥技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品は、塗装前、表面処理前などに洗浄される。すなわち、洗浄により機械部品に付いているごみ、油、鉄粉などを除去する。古くは洗浄液に溶剤が使用されていたが、今日では、廃液の処理の関係で、洗浄液に水又は水系洗浄剤が使用される。水系洗浄剤は水に界面活性剤や溶剤を添加したものであり、大部分が水である。以下、水又は水系洗浄剤を、洗浄用水と呼ぶことにする。
【0003】
洗浄後には、洗浄用水の大部分はワークから脱落するが、一部は付着水の形態で残留する。次の工程までに付着水を除去する必要がある。残留水は、一般に乾燥法で除去される。乾燥法には、自然乾燥や熱風乾燥や真空乾燥が知られている。
【0004】
特に、真空乾燥は、ワークを高温に暖める必要がないので、熱エネルギー的に有利であり、ワークの熱歪みを回避することができ、近年、注目されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−115966公報(第3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1第3頁の段落番号[0018]〜[0019]に「(減圧状態)・・・略・・・すると、水の沸点が急激に低下するため、ワーク24の表面に付着した水が突沸・気化し、ワーク24の表面は瞬時に乾燥する。・・・略・・・(ワーク取り出し)乾燥工程が終了したら減圧装置16を停止し、ヒータ20への通電も停止し、バルブV1〜V5を閉じる。・・・略・・・」との記載がある。
【0007】
この説明では、乾燥工程が終了した時点を特定することができない。すなわち、従来の真空乾燥法では、実験と経験に基づいて、乾燥時間を決めて、この乾燥時間が終了したら、乾燥が終了したと認定してきた。乾燥不良を出したくないので、乾燥時間は、真に必要な時間の1.5倍〜数倍になっているのが実情である。
【0008】
これでは、乾燥時間がネックとなって、生産性の向上が図れないことになる。そこで、真に必要な乾燥時間を定量的に把握することができる技術が望まれる。
【0009】
本発明は、真に必要な乾燥時間を定量的に把握することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様に係る発明は、真空ポンプと真空計とヒータとが備えられている密閉容器に、洗浄用水の一部が付着しているワークを入れ、付着水を減圧乾燥させる減圧乾燥方法であって、
気体の状態方程式と前記密閉容器の内体積と前記ヒータで一定に保つ密閉容器内の温度と水の分子量と水分の気体定数とから、ワークに付着していた水の量と水分の分圧との関係が示される第1の式を導く工程と、
前記密閉容器に、乾燥したワークモデルを入れて、前記ヒータで所定の温度に保ちながら密閉容器を減圧し、前記真空計で計測した真空度が一定になったときの真空度を第1の圧力とする工程と、
前記第1の式に前記第1の圧力を加えて、第2の式とする工程と、
前記ワークにおいて、許容される付着水の量を設定する工程と、
前記許容される付着水の量と前記第2の式から求められる圧力を第2の圧力とする工程と、
前記密閉容器に、水が付着しているワークを入れ、前記ヒータで所定の温度に保ちながら密閉容器を減圧し、減圧開始から所定時間が経過したら前記真空計で真空度を計測し、この真空度を第3の圧力とする工程と、
前記第2の圧力を判定基準として、前記第3の圧力を合否判定する工程と、
からなることを特徴とする。
【0011】
第2の態様に係る発明では、合否判定する工程に、同工程で不合格とされたワークを対象にして修復が可能か否かを判断する修復可否工程と、この工程で可と判定された場合はワークを修復する修復工程と、修復可否工程で否と判定された場合にはワークを溶解させる再生工程とを加えたことを特徴とする。
【0012】
第3の態様に係る発明では、ワークは内燃機関変速装置のトルクコンバータケース又はミッションケースであることを特徴とする。
【0013】
第4の態様に係る発明では、密閉容器に洗浄用水の一部が付着しているワークを入れ、付着水を減圧乾燥させる減圧乾燥装置であって、
減圧乾燥装置は、ワークを収納する密閉容器と、この密閉容器の内部を減圧する真空ポンプと、密閉容器の内部を暖めるヒータと、密閉容器内部の温度を測る温度計と、この温度計で計測した温度が一定の温度になるように前記ヒータの出力を制御する温度コントローラと、密閉容器の内部の圧力を測る真空計と、前記密閉容器の内部を所定の温度に保ちながら減圧し、減圧開始から所定時間が経過した後に前記真空計で計測した真空度が目標値以下であるか否かによって前記ワークの乾燥の合否判定を行う演算・制御部とからなることを特徴とする。
【0014】
第5の態様に係る発明では、演算・制御部に、
気体の状態方程式と前記密閉容器の内体積と前記ヒータで一定に保つ密閉容器内の温度と水の分子量と水分の気体定数とから、ワークに付着していた水の量と水分の分圧との関係が示される第1の式を導く工程と、
前記密閉容器に、乾燥したワークモデルを入れて、前記ヒータで所定の温度に保ちながら密閉容器を減圧し、前記真空計で計測した真空度が一定になったときの真空度を第1の圧力とする工程と、
前記第1の式に前記第1の圧力を加えて、第2の式とする工程と、
前記ワークにおいて、許容される付着水の量を設定する工程と、
前記許容される付着水の量と前記第2の式から求められる圧力を第2の圧力とする工程と、からなる工程群を経て、第2の圧力が設定されており、
このような演算・制御部は、
前記密閉容器に、水が付着しているワークを入れ、前記ヒータで所定の温度に保ちながら密閉容器を減圧し、減圧開始から所定時間が経過したら前記真空計で真空度を計測し、この真空度を第3の圧力とする工程と、
前記第2の圧力を判定基準として、前記第3の圧力を合否判定する工程と、からなる工程群を経て、乾燥の合否を判定する機能を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様に係る発明では、減圧乾燥時に真空度(第3の圧力)を測定し、この圧力が判定基準圧(第2の圧力)より、高真空側であれば乾燥が良好に終了したと判定する。
判定基準圧としての第2の圧力は、密閉容器と真空ポンプの性能と許容される付着水の量とから予め定める。従って、判定基準圧は、真に必要な乾燥時間と良好な相関関係を有する。
【0016】
そのため、本発明によれば、真に必要な乾燥時間を定量的に把握することができ、このような判定基準圧に基づいて判定するため、乾燥時間を延長する必要はない。この結果、濡れたワークの乾燥を効率よく実施することができる。
【0017】
第2の態様に係る発明では、合否判定する工程に、修復可否工程と、この工程で可と判定された場合はワークを修復する修復工程と、再生工程とを加えた。
修復工程に回されたワークは修復されて、再度、第1の態様に係る発明に記載の工程群を経て合否判定される。
再生工程に回されたワークは溶解され、成形されて新しいワークに再生される。
【0018】
すなわち、特定の形状に成形されたワークの複雑な形状部分に関連して不具合が発生することはよくある事例である。乾燥が不十分と判断したワークでは成形不良で巣穴などができている場合がある。乾燥が不十分と判断したワークは、目視確認で修復可能であれば、修復工程で修復し再度洗浄して、第1の態様に係る発明に記載の減圧乾燥方法を実施する。
【0019】
乾燥が不十分と判断したワークにおいて、目視確認で乾燥が不十分である原因、例えば巣穴があることが解っても修復が不可能又は乾燥が不十分である原因が特定できない場合は、再生工程などを経てから第1の態様に係る発明に記載の減圧乾燥方法を実施する。
第2の態様に係る発明の工程を有することにより、非常に効率よく該当ワークを製造し、かつエコロジーの観点からも材料の廃棄低減となる、極めて重要な工程である。
【0020】
第3の態様に係る発明では、ワークは内燃機関変速装置のトルクコンバータケース又はミッションケースであることを特徴とする。
特に、内燃機関変速装置のトルクコンバータケース又はミッションケースは、構造が複雑であり、金属プレートに該当金属のリブが複雑に林立し、乾燥後に目視にて乾燥状態を判断することは、熟練の作業者にあっても難しい作業である。
作業者が目視の乾燥確認を実施する必要がない第3の態様に係る発明は、当該工程を誰でも実施することができる優れた方法である。
【0021】
第4の態様に係る発明では、密閉容器に洗浄用水の一部が付着しているワークを入れ、付着水を減圧乾燥させる減圧乾燥装置であって、
減圧乾燥装置は、ワークを収納する密閉容器と、この密閉容器の内部を減圧する真空ポンプと、密閉容器の内部を暖めるヒータと、密閉容器内部の温度を測る温度計と、この温度計で計測した温度が一定の温度になるように前記ヒータの出力を制御する温度コントローラと、密閉容器の内部の圧力を測る真空計と、前記密閉容器の内部を所定の温度に保ちながら減圧し、減圧開始から所定時間が経過した後に前記真空計で計測した真空度が目標値以下であるか否かによって前記ワークの乾燥の合否判定を行う演算・制御部とからなることを特徴とする。
【0022】
従来は、乾燥の状態は目視確認で実施してきたため、作業者の個人差が出やすいと共に乾燥時間過多による作業能率の低下があった。
この点、本発明は、乾燥の状態を真空度で判断するようにした。そのため、作業者の個人差が生じる心配はなく、乾燥時間を適正化することもでき、作業能率を向上させることができる。
【0023】
第5の態様に係る発明は、前記演算・制御部に、第2の圧力が設定されており、このような演算・制御部は、密閉容器に、水が付着しているワークを入れ、ヒータで所定の温度に保ちながら密閉容器を減圧し、減圧開始から所定時間が経過したら真空計で真空度を計測し、この真空度を第3の圧力とする工程と、第2の圧力を判定基準として、第3の圧力を合否判定する工程と、からなる工程群を経て、乾燥の合否を判定する機能を有している。
【0024】
減圧乾燥時に真空度(第3の圧力)を測定し、この圧力が判定基準圧(第2の圧力)より、高真空側であれば乾燥が良好に終了したと判定する。
判定基準圧としての第2の圧力は、密閉容器と真空ポンプの性能と許容される付着水の量とから予め定める。従って、判定基準圧は、真に必要な乾燥時間と良好な相関関係を有する。
【0025】
そのため、本発明によれば、真に必要な乾燥時間を定量的に把握することができ、このような判定基準圧に基づいて判定するため、乾燥時間を延長する必要はない。この結果、濡れたワークの乾燥を効率よく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る減圧乾燥装置の原理図である。
【図2】ワークモデルで得た減圧グラフである。
【図3】付着水の量と真空度の関係を示すグラフである。
【図4】乾燥の合否判定までの手順を説明するフロー図である。
【図5】修復可否工程及びそれ以降のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る減圧乾燥装置の原理図であり、減圧乾燥装置10は、蓋11を備えた密閉容器12と、この密閉容器12内に設けられトルクコンバータケース又はミッションケースのようなワーク13を支えるワークスタンド14と、密閉容器12の底から水を抜く排水管15と、密閉容器12の内部を減圧する真空ポンプ16と、密閉容器12の内部を暖めるヒータ17と、密閉容器12内部の温度を測る温度計18と、この温度計18で計測した温度が一定の温度(例えば50℃)になるようにヒータ17の出力を制御する温度コントローラ19と、密閉容器12の内部の圧力を測る真空計21と、この真空計21で測った真空度を読込み、キーボードなどの設定器22で設定した所定時間に基づいて真空ポンプ16を運転し、所定時間が経過したら真空ポンプ16を止めと共に以下に述べる一連の演算を実施する演算・制御部23と、乾燥の結果を表示する表示部24と、からなる。
【0028】
次に本発明の減圧乾燥方法を説明する。
気体の状態方程式は、周知の通り、次式で与えられる。
【0029】
【数1】

【0030】
(1)式のM、R、T及びVに数値を入れて、水分の分圧pと水の質量wとの関係式を求める。関係式(「第1の式」)を次に示す。
【数2】

【0031】
次に、図1に示す減圧乾燥装置10を用いて、以下の手順で第1の圧力を求める。
ワーク13は、予め天日干しして十分に乾燥させる。この乾燥物をワークモデル26と言う。このワークモデル26を密閉容器12に入れて、ヒータ17で所定の温度(50℃)に保ちながら密閉容器12を減圧し、真空計21で真空度を連続的に計測する。密閉容器12の内体積は325.2リットル、真空ポンプ16の排気速度は毎分6,410リットルである。
【0032】
図2はワークモデルで得た減圧グラフであり、横軸が真空ポンプ運転時間に相当する排気時間を示し、縦軸は真空度を示す。
排気時間が0では、真空計の読みは1.0atm(大気圧)であったものが、排気時間が経過するに連れて低真空から高真空へ移行した。しかし、25秒頃からは圧力は0.031atm一定になった。このような圧力は真空到達度と呼ばれる。
【0033】
図1において、蓋11を開けたときに大気が密閉容器12内に侵入し、大気中に含まれる微量の物質が密閉容器12やワークスタンド14に付着する。これらの微量の物質、例えば有機物は、高真空になると表面から蒸発し、ガスとなって密閉容器12を満たす。
【0034】
このようなガス発生は、例えれば、ボートの底に開いた穴から浸入する浸水である。また、真空ポンプ16は、例えればボートに溜まった水を掻き出す排水ポンプである。
浸水は止められないが、排水ポンプの能力が高ければ、浸水のレベル(水位)を低くすることができる。浸水のレベル(水位)は排水ポンプと浸水とがバランスしたところで、一定になる。一定になった水位が、真空到達度に相当する。
この真空到達度は密閉容器の大きさや、構造によっても変化する。
【0035】
上記例では、真空到達度は0.031atmであった。この0.031atmを「第1の圧力」と呼ぶ。
【0036】
上述の第1の式は、理想状態での式である。上記第1の圧力は、使用する密閉容器12と真空ポンプ16とから決まる現実の値である。そこで、第1の式を第1の圧力で補正、具体的には第1の式の右辺に第1の圧力を加える。得られた式は第2の式と呼ぶ。
【数3】

【0037】
図3は付着水の量と真空度の関係を示すグラフであり、上述の第2の式をグラフ化したものである。すなわち、wに5、10、15を代入することで、pを求め、グラフを描くことができる。
【0038】
ところで、付着水の量が「0」であることが望まれるが、大気中の湿度が高ければ、密閉容器から取り出したワークに大気中の水分が付着する。従って、付着水の量を「0」にすることは、現実的でない。排気時間も延ばさなければならない。
そこで、次の工程の内容(塗装、化成処理など)から要求される乾燥度を考慮して、許される付着水の量を定める。
【0039】
仮に、許される付着水の量が5g(グラム)であったとする。すると、グラフに示すように、対応する真空度は0.054atmとなる。この圧力を「第2の圧力」と呼ぶ。
【0040】
今までの工程をまとめると、次の通りになる。
気体の状態方程式と密閉容器の内体積とヒータで一定に保つ密閉容器内の温度と水の分子量と水分の気体定数とから、ワークに付着していた水の量と水分の分圧との関係が示される第1の式を導く工程と、
密閉容器に、乾燥したワークモデルを入れて、ヒータで所定の温度に保ちながら密閉容器を減圧し、真空計で計測した真空度が一定になったときの真空度を第1の圧力とする工程と、
第1の式に前記第1の圧力を加えて、第2の式とする工程と、
ワークにおいて、許容される付着水の量を設定する工程と、
許容される付着水の量と前記第2の式から求められる圧力を第2の圧力とする工程と、を実施した。
ここまでの工程が、準備工程群となる。
【0041】
次に、自動車の生産ラインで実施する乾燥状態の合否判定を説明する。
図1の密閉容器12に、濡れたワーク(例えば、トルクコンバータケース又はミッションケース)13を入れ、ヒータ17で所定の温度(50℃)に保ちながら密閉容器12を減圧する。そして、減圧開始から所定時間(例えば25秒)が経過したら真空計21で真空度を計測する。この真空度を「第3の圧力」と呼ぶ。
【0042】
測定した第3圧力が、0.06atmであれば、判定基準として第2の圧力0.054atmを上回っているので、判定は不合格(乾燥不十分)となる。
また、測定した第3圧力が、0.04atmであれば、判定基準として第2の圧力0.054atmを下回っているので、判定は合格(乾燥十分)となる。
【0043】
以上の作業を、フローで再度説明する。
図4は乾燥の合否判定までの手順を説明するフロー図であり、ステップ番号(以下、ST)01で許容される付着水の量wを設定する。このwを第2の式(p=0.0045w+0.031)に代入すれば第2の圧力p2が定まる(ST02)。また、図2を参照して乾燥時間t1を設定する(ST03)。乾燥時間t1は25秒が適当である。
【0044】
ST04で、密閉容器に濡れたワークを投入し、真空ポンプの運転を開始する(ST05)。排気時間(真空ポンプの運転時間)t2が予め定めたt1に到達したら、真空ポンプを止める(ST07)。そのときの第3の圧力(密閉容器内の圧力)p3を測定する(ST08)。
図1に示した演算・制御部23で、第3の圧力p3が、第2の圧力p2以下であるか否かを調べる(ST09)。
【0045】
第3の圧力p3が、第2の圧力p2以下であれば合格(ST10)、否であれば不合格(ST11)の判定を行い、そのことを、図1の表示部24に表示する。
【0046】
許容される付着水の量(ST01)は、気圧、湿度、ワークの大きさ、密閉容器の大きさなどにより、適宜設定される。
また、ST03での乾燥時間t1も同様である。
【0047】
以上に述べたように、本発明では真空ポンプを止めた時点での真空到達度(第3の圧力)を、第2の圧力と比較することで、乾燥の良否が判定できるようにした。
真空ポンプの運転時間は、図2を参照して、必要最小限の時間まで短縮することができる。従来は、安全側に延ばしていた長い乾燥時間を、本発明では短い乾燥時間に変更することができる。この結果、生産性を大いに高めることができる。
【0048】
好ましくは、図4のST11の(A)に、次の工程を続ける。
図5は修復可否工程及びそれ以降のフロー図である。ST12では、不合格にとされたワークを対象にして修復が可能か否かを判断する(修復可否工程)。
この工程で可と判定された場合は、ワークを修復する修復工程(ST13)へ回す。又は、修復可否工程で否と判定された場合にはワークを溶解させる再生工程(ST14)へ回す。
【0049】
修復工程に回されたワークは修復されて、再度、本発明の乾燥の合否判定が実施される。
再生工程に回されたワークは溶解され、成形されて新しいワークに再生される。
【0050】
すなわち、特定の形状に成形されたワークの複雑な形状部分に関連して不具合が発生することはよくある事例である。乾燥が不十分と判断したワークでは成形不良で巣穴などができている場合がある。乾燥が不十分と判断したワークは、目視確認で修復可能であれば、修復工程で修復し再度洗浄して、減圧乾燥方法を実施する。
【0051】
乾燥が不十分と判断したワークにおいて、目視確認で乾燥が不十分である原因、例えば巣穴があることが解っても修復が不可能又は乾燥が不十分である原因が特定できない場合は、再生工程などを経てから減圧乾燥方法を実施する。
図5の工程を有することにより、非常に効率よく該当ワークを製造し、かつエコロジーの観点からも材料の廃棄低減となる、極めて重要な工程である。
【0052】
またワークが、内燃機関変速装置のトルクコンバータケース又はミッションケースであれば、構造が複雑であり、金属プレートに該当金属のリブが複雑に林立している。このようなトルクコンバータケース又はミッションケースを乾燥後に目視にて乾燥状態を判断することは、熟練の作業者にあっても難しい作業である。
本発明によれば、作業者が目視の乾燥確認を実施する必要がなく、当該工程を誰でも実施することができる。
【0053】
尚、本発明方法は、自動車の部品の乾燥判定に好適であるが、他の機械部品に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の減圧乾燥方法は、自動車の部品の乾燥に好適である。
【符号の説明】
【0055】
10…減圧乾燥装置
12…密閉容器
13…ワーク(濡れたワーク)
16…真空ポンプ、
17…ヒータ
18…温度計
19…温度コントローラ
21…真空計
22…設定器
23…演算・制御部
24…表示部
26…ワークモデル(乾いたワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器に洗浄用水の一部が付着しているワークを入れ、付着水を減圧乾燥させる減圧乾燥装置であって、
減圧乾燥装置は、ワークを収納する密閉容器と、この密閉容器の内部を減圧する真空ポンプと、密閉容器の内部を暖めるヒータと、密閉容器内部の温度を測る温度計と、この温度計で計測した温度が一定の温度になるように前記ヒータの出力を制御する温度コントローラと、密閉容器の内部の圧力を測る真空計と、前記密閉容器の内部を所定の温度に保ちながら減圧し、減圧開始から所定時間が経過した後に前記真空計で計測した真空度が目標値以下であるか否かによって前記ワークの乾燥の合否判定を行う演算・制御部とからなることを特徴とする減圧乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132678(P2012−132678A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87046(P2012−87046)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2007−74782(P2007−74782)の分割
【原出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(592068635)アクトファイブ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】