説明

減臭性内装布帛

【課題】布帛の性状や用途との関係、減臭の対象となる臭気成分との関係、減臭機能と共に布帛に付与される抗菌性、防害性、調湿性、撥水性、防汚性、難燃性等の機能性等々との関係において減臭剤の種類や適用方法が異なり、強度劣化や風合いその他の機能性の低下等の点で内装布帛に適切な減臭剤は得られていない。
【解決手段】活性炭とバインダー樹脂と消石灰を配合した減臭処理液を、好ましくは裏面に付与して仕上げることによって、風合いを損なったり、繊維に損傷を与えたり、焼却時に有害ガスを発生する等の不都合を伴わない減臭性内装布帛を得る。活性炭と消石灰の粒径は10μm以下とし、活性炭と消石灰の付着量をそれぞれ5〜25gf/cm2 とし、消石灰の付着量を活性炭の付着量以下とするとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテン、椅子張地(シート地)、天井、壁張地、敷物等の内装材、特に、車両の内装材として使用されるパイル布帛を含む織物、編物、不織布、人工皮革等の布帛(以下、内装布帛と総称する。)に減臭機能を付与する減臭技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
布帛の減臭技術においては、布帛の性状や用途との関係、減臭の対象となる臭気成分との関係、減臭機能と共に布帛に付与される抗菌性、防害性、調湿性、撥水性、防汚性、難燃性等の機能性等々との関係において、活性炭をはじめとする種々の減臭剤、例えば、アミン化合物(例えば、特許文献1参照)、コロイダル銀(例えば、特許文献2参照)、ヒドラジン誘導体(例えば、特許文献3参照)、含珪酸マグネシウム粘土鉱物(例えば、特許文献4参照)等々が適用される。
活性炭は、最も周知の減臭剤であり、その布帛への適用においては、活性炭と他の減臭剤との併用がよいとされる(例えば、特許文献5、6、7参照)。
【特許文献1】特開2000−281998号公報
【特許文献2】特開平10−101964号公報
【特許文献3】特開平08−280781号公報
【特許文献4】特開昭62−282926号公報(特公平05−80342)
【特許文献5】特開平06−055695号公報(特許第3188525号)
【特許文献6】特開平04−073277号公報(特許第2825314号)
【特許文献7】特開平02−145864号公報(特許第2651613号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
内装布帛用減臭剤に関しては余りにも多くの提案がなされている。
そのことは、布帛の性状や用途との関係、減臭の対象となる臭気成分との関係、減臭機能と共に布帛に付与される抗菌性、防害性、調湿性、撥水性、防汚性、難燃性等の機能性等々との関係において減臭剤の種類や適用方法が異なり、その関係において満足し得る減臭剤が得られていないことを示す。例えば、内装布帛の強度劣化や風合いその他の機能性の低下を招くとか。
【0004】
そこで本発明は、風合いを損なったり、繊維に損傷を与えたり、焼却時に有害ガスを発生する等の不都合を伴うことがなく、活性炭を適用して減臭性内装布帛を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る内装布帛は、活性炭とバインダー樹脂と消石灰を配合した減臭処理液を付与して仕上げられていることを第1の特徴とする。
【0006】
本発明に係る内装布帛の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、減臭性処理液が裏面に付与されている点にある。
【0007】
本発明に係る内装布帛の第3の特徴は、上記第1、第2の何れかの特徴に加えて、活性炭と消石灰の粒径が10μm以下である点にある。
【0008】
本発明に係る内装布帛の第4の特徴は、上記第1、第2、第3の何れかの特徴に加えて、活性炭と消石灰の付着量がそれぞれ5〜25gf/cm2 であり、消石灰の付着量が活性炭の付着量以下である点にある。
【発明の効果】
【0009】
下記の実施例の〔表3〕が示すように、消石灰と共に活性炭を内装布帛に適用するときは、特に臭気として気付き難いが故にシックハウス症候群の原因として問題視される4ppm程度の低濃度のホルムアルデヒドガスに対する活性炭の減臭機能が向上する。
このため、本発明(請求項1)によると、高価な活性炭の適用量を少なくして経済的に、そして、適用量が少なくて済むので活性炭による汚染や風合い低下もなく、車両内装材に適し、シックハウス症候群の予防に有効な減臭性内装布帛を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を効果的に実施するには、予め活性炭と消石灰との混合分散液を調製し、それにバインダー樹脂を加えて減臭処理液を調製し、そうすることによってバインダー樹脂が活性炭に直接触れ合う機会を少なくすると共に、活性炭と消石灰の粒径を10μm以下とし、それらが互いに吸着し合えるようにすることが望ましい。
そのように活性炭と消石灰の粒径を10μm以下にするときは、それらによって布帛の風合いが損なわれず、活性炭の比表面積も増えて減臭機能も向上する。
【0011】
活性炭と消石灰の布帛への付着量は、減臭効果の点ではそれぞれ5g/m2 以上とし、風合い低下防止の点ではそれぞれ25g/m2 以下とする。
又、布帛表面での感触や外観が損なわれないようにするには、減臭処理液を布帛の裏面に付与するとよい。
【0012】
消石灰の膨潤収縮変化を増長するためには、上記の通り、その粒径を10μm以下にすると比表面積を40〜45m2 /g、細孔容積率を0.16〜0.22とし、見掛け比量が0.45〜0.55になるようにするとよい。
そのように消石灰を嵩高に調製すると、湿潤収縮による容積変化が大きくなって効果的である。
【実施例】
【0013】
バインダー樹脂として、アクリル系樹脂エマルジョン(樹脂成分50重量%、伸葉株式会社製品名SY−715)と、ウレタン系樹脂エマルジョン(樹脂成分30重量%、第一工業製薬株式会社製品名スーパーフレックス300)と、ポリエステル系樹脂ディスパージョン(樹脂成分30重量%、東洋紡績株式会社製品名D−1930)を用意した。
平均粒径5μmの活性炭(株式会社クラレ製品名クラレコールYP−17)と、平均粒径5.0μm、比表面積を45m2 /g、細孔容積率を0.2、見掛け比量が0.5の消石灰を用意した。
難燃剤として、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤(クラリアントジャパン株式会社製品名APP−204)とポリリン酸エステル系難燃剤(伸葉株式会社製品名SYガード−106)とアンチモン・ブロム系難燃剤(丸菱油化工業株式会社製品名ノンネンSM−18)を用意した。
【0014】
それらの樹脂エマルジョンと活性炭と消石灰と難燃剤を配合して下記〔表1〕と〔表2〕と〔表3〕に示す合計24種類の減臭処理液(A、B、C、D、E、F、G、………
T、U、V、W、X)を調製し、パイル糸と地糸の双方にポリエステル繊維を使用したパイル目付315gf/m2 、総目付450gf/m2 のパイル経編地(トリコット)の裏面に、それらの減臭処理液を塗布して加熱乾燥し、下記〔表1〕と〔表2〕と〔表3〕に示す実施例1〜13と比較例1〜11の合計24種類の減臭性内装布帛を試作し、それらの難燃性と減臭性と剛軟度(風合い)を調べ、〔表1〕と〔表2〕と〔表3〕に示す結果を得た。
尚、〔表1〕と〔表2〕と〔表3〕において、処理液成分配合比率として示す各組成物の「部」は、「重量部」を意味する。
【0015】
難燃性試験については、米国自動車安全基準FMVSS−302水平法によって行い、水平に支持した試料(減臭性内装布帛)の一端に接炎が単位時間(60秒間)に移動した距離を測定し、その移動距離が80mm以内のものを以て「難燃性あり」と判定する。
減臭性試験については、20cm角に裁断したブランク試料(未加工内装布帛)を、容量3リットルの臭い袋(近江オドエァーサービス株式会社製品)に挿入して密封し、臭い袋内の空気を抜き取って真空状態にし、初期濃度が40ppm又は4ppmのホルムアルデヒドガス又はトルエンガスを2リットル注入し、3時間放置後の臭い袋内のホルムアルデヒドガス又はトルエンガスの濃度(CB )を測定すると共に、同様にして、20cm角に裁断した試験試料(減臭性内装布帛)を、容量3リットルの臭い袋に挿入して密封し、臭い袋内の空気を抜き取って真空状態にし、初期濃度が40ppm又は4ppmのホルムアルデヒドガス又はトルエンガスを2リットル注入し、3時間放置後の臭い袋内のホルムアルデヒドガス又はトルエンガスの濃度(CA )を測定し、それらの差(CB −CA )をブランク試料を装填した臭い袋内の濃度(CB )で除した値に100を掛けて減臭率(%)を算出する。
剛軟度(風合い)試験については、JIS−L−1086・45°カンチレバー法によって行う。
【0016】
【表1】

【0017】
〔表1〕が示すように、本発明によると、消石灰はホルムアルデヒドの減臭に有効であり、活性炭と消石灰を併用すれば、ホルムアルデヒドと有機溶剤(トルエン)の双方に減臭効果のある内装布帛が得られる。
【0018】
【表2】

【0019】
〔表2〕が示すように、本発明によると、難燃剤による内装布帛の難燃性能は、消石灰によって格別阻害されることなく、難燃剤に活性炭と消石灰を併用して減臭性難燃内装布帛を得ることが出来る。
【0020】
【表3】

【0021】
〔表3〕が示すように、本発明によると、難燃剤に活性炭と消石灰を併用し、あまり気にならない低濃度(4ppm)のホルムアルデヒドガスの減臭に有効であり、シックハウス症候群の予防に有効な減臭性難燃内装布帛を得ることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭とバインダー樹脂と消石灰を配合した減臭処理液を付与して仕上げられた減臭性内装布帛。
【請求項2】
減臭性処理液が裏面に付与されている前掲請求項1に記載の減臭性内装布帛。
【請求項3】
活性炭と消石灰の粒径が10μm以下である前掲請求項1と請求項2の何れかに記載の減臭性内装布帛。
【請求項4】
活性炭と消石灰の付着量がそれぞれ5〜25gf/cm2 であり、消石灰の付着量が活性炭の付着量以下である前掲請求項1と請求項2と請求項3の何れかに記載の減臭性内装布帛。

【公開番号】特開2006−9199(P2006−9199A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189069(P2004−189069)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000148151)株式会社川島織物 (104)
【Fターム(参考)】