説明

渦型羽根車式集積装置

【課題】腰が弱い損券紙幣や伝票類であってもジャムを発生させることなく安定して収納部に集積する渦型羽根車式集積装置を提供する。
【解決手段】大径搬入ローラ29と搬送ベルトを介して大径搬入ローラ29に圧接する小径搬入ローラ32とが紙葉類13を搬入口から集積部28に搬入する。中央上部ガイド部材33は紙幣13の中央上面に接し、紙幣13の中央部が上に浮き上がらないように抑止しながら紙幣13を案内する。両端下部ガイド部材34は、上に曲がった先端部で、矢印bで示すように集積部28に搬入される紙幣13の両端部を持ち上げて、紙幣13に対し紙幣搬送方向に直交する方向に大きいU字状の曲がり癖を生じさせながら紙幣13を案内する。紙幣13は先端を羽根26に叩かれて垂れ下がることなく羽根26と羽根26の間に入り込み、回転搬送され、ストッパ24に突き当たって渦型羽根車23から離脱し集積部28に集積される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦型羽根車式集積装置に係わり、更に詳しくはATM(automated teller machine)等において不良変形紙幣として鑑別された紙幣を収納するリジェクト収納部や、伝票等の整理機や有価証券の計数機として単体でも使用可能な紙葉類集積装置における渦型羽根車式集積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばATM等の紙幣の収納機構として渦巻型の羽根を有する羽根車を使用し、紙幣を羽根車の羽根と羽根の間に滑り込ませながら収納時の紙幣追突を避けつつ紙幣をストッパまで案内し、羽根車の回転に伴ってストッパで先端を止められた紙幣が羽根と羽根の間から抜け出して下方の収納部プレートに落下する、ということを繰り返して、紙幣を紙幣収納部に収納する方法が提案されている。(例えば、特許文献1、2参照。)
【0003】
ところで、顧客がATM等から入金する紙幣は必ずしも形の整ったものばかりと限らず、中には皺の多いものや使い古して腰が弱くなっている紙幣も存在する。特に紙幣を裸のままポケット等に入れて持ち歩く習慣の国々では、皺の多いものや使い古しの腰の無い紙幣が多く流通している。
【0004】
そのような、皺の多いものや腰の弱い紙幣は、ATM等の入金口に預け入れ紙幣として投入された場合、その紙幣は鑑別部で不良紙幣又は変形紙幣として判定され、リジェクトボックス(リジェクト収納部)に収納される場合が多い。
【0005】
リジェクト収納部の設置目的は様々であって、任意に設定することが可能である。その設定目的によってはボックス自体が個別に独立して配置される。例えば、顧客からの入金時において、折れ、シワ、破れ等の損傷が大きく今後の使用に支障が考えられる損券や、既に発行していない旧券などを収納する収納部である。
【0006】
また、他の一つは、顧客からの入金時において、正常券のうち出金で再利用される機会の最も少ない二千円紙幣と五千円紙幣を収納する収納部である。出金時において顧客が二千円紙幣や五千円紙幣を必要とする場合は、両替専用機が使用される。
【0007】
また、取忘れ回収部としての収納機能を持つものもある。取忘れ回収部は、紙幣出金時に顧客が取り残した紙幣を一時的に回収する回収部であり、紙幣預け入れ時に用いられることはない。
【0008】
尚、顧客からの入金時において、贋紙幣、外国紙幣等の受付外の金種や、贋紙幣では無いが大きな汚れ等があり今後の使用に支障が考えられる紙幣は、リジェクトボックスではなく、返却保留部に返却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−84170号公報
【特許文献2】特開平09−278262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記のリジェクト収納部のように一時集積庫を形成する収納部には、紙幣の搬入口に特許文献1、2に述べたような渦巻型の羽根を有する渦型羽根車を備えた渦型羽根車式集積装置が用いられる場合が多い。
【0011】
通常は、リジェクト収納部としての渦型羽根車式集積装置に搬入された紙幣は先行の羽と後続の羽根との間隙に挟まれて羽根車に挟持され、収納位置で羽根車から抜け出して収納部に集積される。
【0012】
この渦型羽根車を複数の羽根車を並列させた構成にした場合、紙幣の変形などがあると、それぞれの羽根車の位相の異なる隙間に紙幣が案内され、紙幣が湾曲させられることにより紙幣の進行方向への剛性が高まり、湾曲した羽根車の渦状の羽根の回転に紙幣が追従できず、ストッパに到達する前に抜けて状態が不安定になったり、紙幣の後端が残ってジャムになったりすることが多くなる。
【0013】
また、羽根車を1個にした場合でも、皺の多い紙幣や剛性の低下した紙幣は、腰が弱いので先端を羽根車の羽根に叩かれたとき下に垂れ下がり、羽根車の羽根と羽根との間隙に入り込めず、羽根車に挟持されることなく下に垂れ下がった部分に続いて後部が折れ曲がりながら収納部の搬入口直下に堆積し、後続の紙幣と共にリジェクト収納部にジャムを発生させることがしばしばある。
【0014】
通常、リジェクト収納部には、鑑別部で正常ではないと判断された紙幣を収納するが、鑑別部で正常ではないと判断された紙幣は、紙幣が斜めになったり横に寄ったりして、側面の構造物に擦ったり衝突する場合があるので、リジェクト収納部の壁面を広く取る必要が出てくる。そうすると装置全体が大型化してしまうという問題がある。
【0015】
また、一般に、渦型羽根車式集積装置は、前述したように、ATMのリジェクト収納部として用いられる他に、伝票等の整理機、紙葉類の計数機として単体で使用される場合も多い。この場合も伝票等は一般に用紙の腰が弱いので上記のようなジャム発生の恐れが多分にある。
【0016】
しかしながら、上述した特許文献1、2には、そのような腰が弱い損券紙幣や伝票類をリジェクト収納部としての渦型羽根車式集積装置、又は整理機や紙葉類の計数機としての渦型羽根車式集積装置に収納する際に発生する恐れが多分にあるジャムについての防止策や解決策については開示も示唆もない。
【0017】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、腰が弱い損券紙幣や伝票類であってもジャムを発生させることなく安定して収納部に集積する渦型羽根車式集積装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の渦型羽根車式集積装置は、紙葉類を収納する集積部を備えた渦型羽根車式集積装置であって、上記紙葉類を上記集積部の搬入口から上記集積部に搬入する搬入手段と、上記搬入口に対向する端部側に配置されたストッパと、上記搬入口と上記ストッパとの間に配置された渦型羽根車と、上記搬入手段から上記渦型羽根車の羽根の回転領域の両側に近接する位置まで延在して配置され、上記搬入手段により上記集積部に搬入される上記紙葉類の中央部上面を案内すると共に上記紙葉類の中央部の浮き上がりを抑止する中央上部ガイド部材と、上記搬入手段の両側に配置され該搬入手段により上記集積部に搬入される上記紙葉類の両端部を案内すると共に上記両端部を持ち上げて上記紙葉類に対しU字状の曲がり癖を生じさせる両端下部ガイド部材と、上記搬入手段、上記ストッパ、上記渦型羽根車、上記中央上部ガイド部材、上記両端下部ガイド部材とは独立して、上記渦型羽根車の下方に位置して昇降可能に配置された昇降ステージと、を備え、上記渦型羽根車は、上記搬入口から上記U字状の曲がり癖を生じながら搬入される上記紙葉類を羽根と羽根との間隙に挟持して回転し、上記羽根の両側に出る上記紙葉類の両端部を上記ストッパに突き当てて上記紙葉類を上記羽根と羽根との間隙から離脱させて上記紙葉類を上記昇降ステージに集積する、ように構成される。
【0019】
この渦型羽根車式集積装置において、例えば、上記両端下部ガイド部材は、上記紙葉類の搬送方向の面に対し、突出した突出部を有する、ように構成してもよく、また、例えば、上記紙葉類を受け入れる受入装置側の鑑別部で不良または変形の紙葉類であると鑑別された紙葉類を収納するリジェクト収納部を構成する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の渦型羽根車式集積装置によれば、紙葉類を大きいU字状の曲がり癖を付けて集積部に搬入するので、腰が弱い損券紙幣や伝票類であっても羽根に叩かれて垂れ下がることなく羽根車に挟持されてストッパで羽根車から離脱するので、紙葉類にジャムを発生させることなく安定して収納部に集積することができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明の渦型羽根車式集積装置によれば、紙葉類は集積部に搬入後、羽根車の羽根に挟持されるまで大きいU字状の曲がり癖を持っているが、この癖によりリジェクト収納部の壁面に強く擦ることや衝突することがなく、安定して羽根車に挟持させることができ、羽根車に挟持された後は曲がり癖を付けるガイドから外れ、羽根の曲がりに追随して屈曲することで安定して収納部に蓄積されるため、リジェクト収納部の内部を紙葉類のサイズよりも広くする必要がなく、装置全体の大型化を抑止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係る渦型羽根車式集積装置を備えたATM(automated teller machine)の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)は実施例1に係る渦型羽根車式集積装置の紙幣搬入・集積機構の構成を示す斜視図、(b)はその側断面図である。
【図3】(a)は実施例1に係る渦型羽根車式集積装置の紙幣搬入時の動作状態を示す斜視図(その1)、(b)はその側断面図である。
【図4】(a)は実施例1に係る渦型羽根車式集積装置の紙幣搬入時の動作状態を示す斜視図(その2)、(b)はその側断面図である。
【図5】(a)は実施例1に係る渦型羽根車式集積装置の図3、図4に続く搬入紙幣集積動作を示す斜視図、(b)はその側断面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1に係る渦型羽根車式集積装置を備えたATM(automated teller machine)(以下、本体装置ともいう)の構成を模式的に示す断面図である。同図に示すATM1は、紙幣入出金装置2と、搬送部3と、収納部4とを備えている。
【0025】
紙幣入出金装置2は、装置前方(図の右方)のやや傾斜して形成されている上面に、図では断面のため見えないが入力操作パネル部と、上部開口部にシャッタを有する入出金部5と、集積された紙幣を一時的に収容する一時集積部6を備えている。
【0026】
搬送部3には、搬送路7(7a、7b)が縦横に入り組んで配置されている。搬送路7は、図では黒の太線のみで示しているが、実際は多数のローラと、それらのローラに掛け渡された多数のベルトと、搬送路の分岐点に配置された切替ゲート等から成る。
【0027】
本体装置1の上部の搬送路7aには、プール部8や鑑別部9やダミー券保持部11などが連結されている。プール部8は、顧客12によって入出金部5に入金され、入出金部5から一時集積部6に移動して、一時集積部6から本体装置側に繰り出される紙幣13を一時的に収容する。
【0028】
そして、上記繰り出し中に計数された紙幣13の枚数と、顧客12が入力操作パネル部から入力した紙幣13の枚数又は額面が示す紙幣枚数とが一致すると、プール部8に一時収容されていた紙幣13が一枚ごとにプール部8の下方から取り出されて、鑑別部9に搬入される。
【0029】
鑑別部9は、内部を通過する紙幣の真贋、汚れ、角折れ等を判定する。この鑑別部9による判定結果は不図示の中央処理装置に通知される。中央処理装置は、鑑別部9を通過した紙幣が、搬送路7aを搬送される途上において、上記の通知に基づいて種々の処理を行う。
【0030】
本体装置1の下部の搬送路7bの下方にある収納部4には、リジェクトボックス14、大サイズの紙幣を収容するカセットA15、中サイズの紙幣を収容するカセットB16、小サイズの紙幣を収容するカセットC17及びカセットD18が着脱自在に配設されている。
【0031】
上記4つのカセットA15、B16、C17及びD18の上部には、搬入搬出路19が設けられている。また、リジェクトボックス14の上部には、搬入専用路21が設けられている。これらの搬入搬出路19及び搬入専用路21には不図示の切替ゲートを介して搬送路7bが連結されている。
【0032】
更に、上記のリジェクトボックス14には、本例特有の渦型羽根車式集積装置22が内蔵されている。渦型羽根車式集積装置22の上部には、渦型羽根車23、ストッパ24、紙幣集積用昇降ステージ25が配設されている。尚、同図の渦型羽根車式集積装置22には、搬入専用路21と渦型羽根車23との間に配置されている詳しくは後述する搬送ローラや案内部材等の図示は省略している。
【0033】
このATM1において、顧客12に紙幣を出金するときは、顧客12が入力操作パネル部から入力した金額に対応する額面と枚数の紙幣が、紙幣に対応するカセットA14、B15、C16又はD17から搬送路7bに繰り出され、鑑別部9で金種が確認され、搬送路7aから一時集積部6に送り込まれて集積される。
【0034】
一時集積部6に順次集積された集積紙幣の総額が、顧客12が入力操作パネル部から入力した紙幣の額面と枚数が示す紙幣枚数と一致すると、集積紙幣は入出金部5に一括して移動され、入出金部5のシャッタが開かれて、顧客12による紙幣の取り出しが可能となる。
【0035】
また、このATM1において、顧客12が紙幣を入金するときは、入出金部5のシャッタが開かれ、顧客12から入金紙幣が入出金部5に投入される。入金紙幣は一括して一時集積部6に移動され、一時集積部6から一旦プール部8に全紙幣が収容される。
【0036】
プール部8に収容された紙幣は一枚ごとプール部8から搬送路7aに繰り出され、鑑別部9を通過する。鑑別部9において紙幣が真券で且つ汚れや破れ等の不具合がないと判別されたときは、その紙幣は搬送路7a、7bを介して収納部4の紙幣に対応するカセットA15、カセットB16、カセットC17又はカセットD18に収納される。
【0037】
また、鑑別部9において、紙幣が偽造品など受付不可の紙幣であると判別されたときは、その紙幣は搬送路7aを逆搬送されて一時集積部6に返却される。
【0038】
また、鑑別部9において、紙幣が偽造紙幣ではないが例えば大きな汚れ等を示しており今後の使用に支障があると判別された紙幣、又は皺等が多く他の紙幣と交換する必要があると判別された紙幣、すなわち不良紙幣又は変形紙幣は、リジェクトボックス14に収容されるか又は一時集積部6に返却される。
【0039】
上記のような不良紙幣又は変形紙幣は、入金されるまでの間の流通頻度が高かったことが予想され、そのような紙幣は腰が弱くなっている。そのため、リジェクトボックス14の渦型羽根車式集積装置22に搬入されたとき、先端を羽根車の羽根に叩かれたて羽根車に挟持されることなく垂れ下がり、ジャムを発生させ易いことは前述した。
【0040】
本例の渦型羽根車式集積装置22は、腰が弱い損券紙幣等であっても、先端が羽根に叩かれて垂れ下がることなく羽根車に挟持されてストッパで羽根車から離脱するようにし、ジャムを発生させることなく安定して紙幣を紙幣集積用昇降ステージ25上に順次集積していくことができる。
【0041】
図2(a)は本例の渦型羽根車式集積装置22の紙幣搬入・集積機構の構成を示す斜視図であり、同図(b)はその側断面図である。尚、図2(a),(b)には図1に示した構成と同一の構成部分には図1と同一の番号を付与して示している。
【0042】
図2(a),(b)に示すように、渦型羽根車式集積装置22の紙幣搬入・集積機構部は、中央部に矢印aで示す方向に回転する1個の渦型羽根車23を備えている。渦型羽根車23は通常は複数の渦巻状の羽根26を備えている。
【0043】
渦型羽根車23の下方には、昇降装置27に連結されて昇降可能な図1にも示した昇降ステージ25が配置されている。この昇降ステージ25は、図1にも示した渦型羽根車23、ストッパ24、後述する搬入機構、中央上部ガイド部材、両端下部ガイド部材とは独立に、渦型羽根車23の下方に位置して昇降する。
【0044】
また、紙幣搬入・集積機構部の渦型羽根車23の回転軸に直行する方向の一方の壁面には、図1に示した2個のストッパ24が渦型羽根車23を両面から挟むような位置に固定して配置されている。
【0045】
ストッパ24は、それぞれ立設部24aと張出傾斜部24bを有し、張出傾斜部24bは渦型羽根車23の両面を挟む位置に張り出して配置され、立設部24aは張出傾斜部24bの下方に連続して形成されている。
【0046】
これら渦型羽根車23とストッパ24とにより、渦型羽根車式集積装置22の集積機構が構成されている。そして渦型羽根車23の下方において渦型羽根車23の下部と、昇降ステージ25と、ストッパ24の立設部24aとで形成される空間が紙幣搬入・集積機構部の集積部28を形成している。
【0047】
また、紙幣搬入・集積機構部のストッパ24に対向する壁面には搬入口が形成され、この搬入口には、矢印bで示すように紙幣13を搬入して集積部28に送り込む搬入機構が配置されている。搬入機構は、大径搬入ローラ29、搬送ベルト31、小径搬入ローラ32から成る。
【0048】
上記の小径搬入ローラ32は搬送ベルト31を介して大径搬入ローラ29に圧接している。小径搬入ローラ32と大径搬入ローラ29は共に2ずつあり、大径搬入ローラ29は側面の一部が渦型羽根車23の羽根26の回転範囲の空間を挟む位置に張り出している。
【0049】
この搬入機構の前方の両側には、本例の特徴として、中央上部ガイド部材33と両端下部ガイド部材34が配置されている。中央上部ガイド部材33は、上記の2個の大径搬入ローラ29の中間から渦型羽根車23の羽根26の回転領域内まで先端を張り出して配置されている。
【0050】
そして、破線楕円c内に示す両端下部ガイド部材34は、小径搬入ローラ32が搬送ベルト31を介して大径搬入ローラ29に圧接する圧接面の両側方向に位置し、搬入機構により搬入される紙幣13の両端部に対応する位置に配置され、その先端が、渦型羽根車23の羽根26の回転領域のやや手前に位置し、上に曲がった状態に形成されている。
【0051】
図3(a)は、上記構成の紙幣搬入・集積機構部を有する渦型羽根車式集積装置22の紙幣搬入時の動作状態を示す斜視図であり、同図(b)はその側断面図である。尚、図3(a),(b)には図2(a),(b)と同一構成部分には図2(a),(b)と同一の番号を付与して示している。
【0052】
図3(a),(b)に示すように、紙幣13が大径搬入ローラ29と小径搬入ローラ32からなる搬入機構によって矢印bで示すように集積部28に搬入されると、中央上部ガイド部材33は紙幣13の中央上面に接し、紙幣13の中央部が上に浮き上がらないように抑止しながら紙幣13を案内する。
【0053】
一方、両端下部ガイド部材34は、上に曲がった先端部で、矢印bで示すように集積部28に搬入される紙幣13の両端部を持ち上げて、紙幣13に対し紙幣搬送方向に直交する方向に大きいU字状の曲がり癖を生じさせながら紙幣13を案内する。
【0054】
紙幣13が大きな汚れがあるような使い古しの紙幣、又は剥き出しのままポケットに入れていたため皺が多くなった紙幣のように、紙質の腰が弱くなっている紙幣であっても、紙幣搬送方向に直交する方向に強制的な曲がり癖が生じているので、紙幣13の搬入される先端部には搬入方向の曲げに対して強い抵抗力を持っている。
【0055】
したがって、紙幣13は、搬入される先端を回転する渦型羽根車23の羽根26によって叩かれても下に垂れ下がることなく搬入される方向に延び出す。
【0056】
図4(a)は上記の搬入動作に続く紙幣搬入時の動作状態を示す斜視図であり、同図(b)はその側断面図である。尚、図4(a),(b)には、図3(a),(b)と同一構成部分には図3(a),(b)と同一の番号を付与して示している。
【0057】
図4(a),(b)に示すように、先行の羽根26aと後続の羽根26bとで紙幣搬入のタイミングに合わせるように形成された間隙に、搬入が継続されている紙幣13が入り込み、そのまま先行の羽根26aと後続の羽根26bとに挟持される。
【0058】
既に両端下部ガイド部材34の案内から開放されている紙幣13の被挟持部は、渦巻型の羽根26の曲がりに追随して挟持され、羽根26から外にはみ出す紙幣13の両端部13aも同様に渦巻型の羽根26の曲がりに追随することで、紙幣13全体が回転搬送される。
【0059】
図5(a)は上記渦型羽根車23の回転搬送に続く搬入紙幣集積動作を示す斜視図であり、図5(b)はその側断面である。尚、図5(a),(b)には説明に必要な構成部分にのみ、図4(a),(b)と同一の番号を付与して示している。
【0060】
先行の羽根26aと後続の羽根26bとに挟持されて回転搬送される紙幣13(先行紙幣13b、後続紙幣13c)は、羽根26から外にはみ出している両端部がストッパ24の張出傾斜部24bに突き当たって停止し、渦型羽根車23はそのまま回転を続けるので紙幣13は渦型羽根車23から離脱する。
【0061】
渦型羽根車23から離脱した紙幣13は、その先端を、矢印cで示すように、ストッパ24の張出傾斜部24bの傾斜面にそって落下させ、先に渦型羽根車23から離脱して集積部28に集積されている先行紙幣13bの上に、後続紙幣13cとして集積される。
【0062】
ストッパ24の立設部24aは、昇降ステージ25上に順次集積される紙幣13の先端を位置決めする。昇降ステージ25は、紙幣13が順次集積されていく枚数に応じて昇降装置27により駆動され、順次降下して、適正な空間部からなる集積部28の形成を継続する。
【0063】
尚、上記実施例1では、渦型羽根車式集積装置をATMのリジェクト収納部を構成するものとして説明したが、これに限ることなく、例えば、伝票類の整理機又は有価証券類の計数機として単体で用いる紙葉類収納装置として用いるように出来ることは言うまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、腰が弱い損券紙幣や伝票類であってもジャムを発生させることなく安定して収納部に集積する渦型羽根車式集積装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ATM(automated teller machine)(本体装置)
2 紙幣入出金装置
3 搬送部
4 収納部
5 入出金部
6 一時集積部
7(7a、7b) 搬送路
8 プール部
9 鑑別部
11 ダミー券保持部
12 顧客
13 紙幣
13a 紙幣の両端部
13b 先行紙幣
13c 後続紙幣
14 リジェクトボックス
15 大サイズ紙幣収容カセットA
16 中サイズ紙幣収容カセットB
17 小サイズ紙幣収容カセットC
18 小サイズ紙幣収容カセットD
19 搬入搬出路
21 搬入専用路
22 渦型羽根車式集積装置
23 渦型羽根車
24 ストッパ
24a 立設部
24b 張出傾斜部
25 紙幣集積用昇降ステージ
26 羽根
26a 先行の羽根
26b 後続の羽根
27 昇降装置
28 集積部
29 大径搬入ローラ
31 搬送ベルト
32 小径搬入ローラ
33 中央上部ガイド部材
34 両端下部ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を収納する集積部を備えた渦型羽根車式集積装置であって、
前記紙葉類を前記集積部の搬入口から前記集積部に搬入する搬入手段と、
前記搬入口に対向する端部側に配置されたストッパと、
前記搬入口と前記ストッパとの間に配置された渦型羽根車と、
前記搬入手段から前記渦型羽根車の羽根の回転領域の両側に近接する位置まで延在して配置され、前記搬入手段により前記集積部に搬入される前記紙葉類の中央部上面を案内すると共に前記紙葉類の中央部の浮き上がりを抑止する中央上部ガイド部材と、
前記搬入手段の両側に配置され該搬入手段により前記集積部に搬入される前記紙葉類の両端部を案内すると共に前記両端部を持ち上げて前記紙葉類に対しU字状の曲がり癖を生じさせる両端下部ガイド部材と、
前記搬入手段、前記ストッパ、前記渦型羽根車、前記中央上部ガイド部材、前記両端下部ガイド部材とは独立して、前記渦型羽根車の下方に位置して昇降可能に配置された昇降ステージと、
を備え、
前記渦型羽根車は、前記搬入口から前記U字状の曲がり癖を生じながら搬入される前記紙葉類を羽根と羽根との間隙に挟持して回転し、前記羽根の両側に出る前記紙葉類の両端部を前記ストッパに突き当てて前記紙葉類を前記羽根と羽根との間隙から離脱させて前記紙葉類を前記昇降ステージに集積する、
ことを特徴とする渦型羽根車式集積装置。
【請求項2】
前記両端下部ガイド部材は、前記紙葉類の搬送方向の面に対し、突出した突出部を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の渦型羽根車式集積装置。
【請求項3】
前記紙葉類を受け入れる受入装置側の鑑別部で不良または変形の紙葉類であると鑑別された紙葉類を収納するリジェクト収納部を構成する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の渦型羽根車式集積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−1468(P2013−1468A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131311(P2011−131311)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】