渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサー
【課題】例えばOPGWのように鋼線などの磁性体部材とアルミニウム管などの非磁性体部材とを束ねてなる管状の検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことを可能とする。
【解決手段】磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に出力コイル及び検波コイルを巻き回すと共に出力コイル及び検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出するようにした。
【解決手段】磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に出力コイル及び検波コイルを巻き回すと共に出力コイル及び検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサーに関する。さらに詳述すると、本発明は、管状の検査対象物であって磁性体部材と非磁性体部材とからなる検査対象物におけるき裂等の損傷の検出に用いて好適な渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ複合架空地線(以下、OPGWと表記する)においては、敷設からの時間経過に伴い、例えば強風振動、腐食、あるいは凍結によって、OPGWを構成する部材であるアルミ管のき裂、貫通孔、あるいは割れ等の損傷が発生する場合がある。
【0003】
管状の検査対象物の損傷を電磁誘導による渦電流を利用して検出する従来の非接触型渦電流探傷方法としては、例えば、図12に示すように、励磁用コイルの配線及び検出用コイルの配線を有する可撓性基板102を配管108に巻き付けると共にこれらコイルの両端部に接続されたコネクタ103a,103bを、配管108を貫通させるボビン105の両端のフランジ部106に固定される取付部材107に取り付けられる固定基板104b及び固定基板104aに固定される渦電流探傷検査用コイル素子101を用いて電気信号の測定を行って配管108の探傷を行うものがある(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特許第3247666号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の渦電流探傷方法では、上述の構成を有する渦電流探傷検査用コイル素子101を用いて得られる検波信号について特別の処理をすることなく配管108に発生している損傷の検出を行うようにしているので、検査対象物が例えばOPGWのように複雑な構造を有する場合には特に、コイル素子101から得られる検波信号がノイズを含んでしまい測定誤差が生じ易く損傷の検出を十分な精度で行うことができない場合があるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、例えばOPGWのように鋼線などの磁性体部材とアルミニウム管などの非磁性体部材とを束ねてなる管状の検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことができる渦電流探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の渦電流探傷方法は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に出力コイル及び検波コイルを巻き回すと共に出力コイル及び検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出するようにしている。
【0008】
したがって、この渦電流探傷方法によると、検波信号のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出するようにしているので、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物における磁性体部材の損傷又は非磁性体部材の損傷を適確に検出することができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の渦電流探傷方法において、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であるようにしている。
【0010】
さらに、請求項3記載の渦電流探傷センサーは、電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行う渦電流探傷センサーであって、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に巻き回される出力コイル及び検波コイルを有し、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であるようにしている。
【0011】
この場合には、検査対象物の内部にある非磁性体部材の損傷部から発生する微弱な信号を周りの磁性体部材からの強い信号により埋もれてしまうことなく検出することができ、検査対象物の非磁性体部材と磁性体部材の損傷をより適確に検出することができる。
【0012】
また、請求項4記載の渦電流探傷方法は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外周面と検査対象物に巻き回される出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であることを特徴とする渦電流センサーを用いることにより、検査対象物の外側に巻き回される出力コイル及び検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を磁性体部材からの信号に影響されることなく検出可能とするようにしている。
【0013】
さらに、請求項5記載の渦電流探傷センサーは、電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行う渦電流探傷センサーであって、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に巻き回される出力コイル及び検波コイルを有し、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔を5mm未満とすることにより、出力コイル及び検波コイルを用いての電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定によって得られる検波信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を磁性体部材からの信号に影響されることなく検出可能とするようにしている。
【0014】
この渦電流探傷方法及び渦電流探傷センサーによると、検査対象物の内部にある非磁性体部材の損傷部から発生する微弱な信号を周りの磁性体部材からの強い信号により埋もれてしまうことなく検出することができ、検査対象物の非磁性体部材と磁性体部材の損傷をより適確に検出することができる
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物における磁性体部材の損傷又は非磁性体部材の損傷を適確に検出することができ、例えばOPGWのような管状の検査対象物であって磁性体部材と非磁性体部材とからなる検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことが可能であるので、損傷発生有無の検査の信頼性の向上を図ることができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、測定によって得られる検波信号のノイズを低減してより適確に検査対象物の損傷を検出することが可能であるので、損傷発生有無の検査の信頼性の更なる向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1及び図2に、本発明の渦電流探傷方法の実施形態の一例を示す。この渦電流探傷方法は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に出力コイル及び検波コイルを巻き回すと共に出力コイル及び検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出するようにしている。
【0019】
本実施形態では、電磁誘導現象を利用した電気信号の測定において図1及び図2に示す渦電流探傷センサー1を用いる。渦電流探傷センサー1は、図1及び図2に示すように、大きくは、円筒状のボビン2と接続端子固定基板5と基板固定部材7とからなる。
【0020】
ボビン2は、軸中心位置に貫通孔2aを有する円筒状に形成される。貫通孔2aの直径は、渦電流探傷センサー1が電気信号の測定を行う管状の検査対象物(図示していない)の外径に合わせて調整される。ボビン2は例えばポリアセタール等の合成樹脂などの非導電性材料によって形成される。
【0021】
また、ボビン2は、軸方向の中央付近において、周壁に、周方向に一回りする環状の溝2dを二つ有する。そして、二つの溝2d,2dを形成することにより、二つの溝2d,2dの間の仕切り2bがボビン2の軸方向中央付近に形成されると共にフランジ部2cがボビン2の軸方向両側端部に形成される。
【0022】
そして、一方の溝2dに出力コイル(図示省略)が巻き回されると共に他方の溝2dに検波コイル(図示省略)が巻き回される。なお、これらのコイルとして、あるいは、これらのコイルとボビンとが一体のものとして、フレキシブル配線基盤(Flexible PWBとも呼ばれる)を用いても良い。
【0023】
渦電流探傷センサー1は仕切り2bを挟んで溝2dに巻き回される出力コイルと検波コイルとによって渦電流探傷を行う。このため、二つの溝2d,2dの間隔であって仕切り2bの幅は、二つのコイルが相互に渦電流探傷センサーとしての出力コイル及び検波コイルとして作動可能な範囲内で設定される。
【0024】
ここで、本発明の渦電流探傷センサー1は、検査対象物の外周面と、出力コイル及び検波コイルを溝2dに巻き回した際のこれらコイルの内周面との間隔を10mm未満とすることが好ましく、より好ましくは5mm未満とすることであり、最も好ましくは2mm未満とすることである。
【0025】
なお、出力コイル及び検波コイルをボビン2の溝2dに巻き回した際のコイルの内周面と溝2dの底面とは一致する。したがって、ボビン2の貫通孔2aの直径を検査対象物の外径と一致させると、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔は溝2dの底部2eにおけるボビン2の周壁の厚さによって決定される。
【0026】
接続端子固定基板5は、本実施形態では、ボビン2の軸方向長さよりも短い長方形の板状に形成され、長手方向をボビン2の軸方向と合わせて配置される。
【0027】
基板固定部材7は、二個を一組として、ボビン2の両側端部のフランジ部2cに一組ずつ、ボビン2の軸方向と垂直方向にフランジ部2cを両側から挟んで取り付けられる。このため、基板固定部材7はΩ型であってΩ型の凹部7aが半円の曲面に形成され、凹部7aの半円の曲面はフランジ部2cの周面の形状(具体的にはフランジ部2cの半径)に合わせて形成される。
【0028】
基板固定部材7は、また、Ω型の凹部7aの両側の端部7bに貫通孔7cを有する。そして、二個の基板固定部材7の凹部7aを向かい合わせてフランジ部2cを挟むと共に、向かい合った端部7bの双方の貫通孔7cを貫通するボルト8aとナット8bとによって端部7bを締め付けることによって基板固定部材7はフランジ部2cに固定される。
【0029】
接続端子固定基板5は、長方形の長手方向の両側に貫通孔5cを有する。そして、接続端子固定基板5は、基板固定部材7の端部7bを締め付けるボルト8aを貫通孔5cを貫通させて基板固定部材7の端部に固定される。すなわち、基板固定部材7を向かい合わせてフランジ部2cを挟む際に、向かい合う基板固定部材7の端部7bの貫通孔7cと接続端子固定基板5の貫通孔5cとの位置を合わせて基板固定部材7の間に接続端子固定基板5を挟み、向かい合う基板固定部材7と接続端子固定基板5とが束ねられて固定される。
【0030】
接続端子固定基板5には、出力コイルの両端と電気的に接続される接続端子6a及び検波コイルの両端と電気的に接続される接続端子6bが取り付けられる。そして、出力コイルと接続端子6a、並びに、検波コイルと接続端子6bとを電気的に接続させるため、接続端子固定基板5には、さらに、出力コイルの両端を結び付けるための二つで一組の接続孔5a及び検波コイルの両端を結び付けるための二つで一組の接続孔5bが設けられると共に、接続孔5aと接続端子6aとの間、並びに、接続孔5bと接続端子6bとの間にリード5dが設けられる。
【0031】
そして、出力コイルの両端と電気的に接続される接続端子6aにはX信号とY信号との表示角度の設定(具体的には、X信号−Y信号の2次元座標軸上で原点中心に所定の角度を回転させて表示する機能のこと。位相器の設定角度ともいう。)が可能な市販の単周波数型渦流探傷装置からの出力側のケーブルが接続され、当該接続端子6aを介して出力コイルに対して交流電圧が供給される。また、検波コイルの両端と電気的に接続される接続端子6bには前記渦流探傷装置からの配線が接続され、出力コイルに供給される交流電圧によって検査対象物に誘起されて検波コイルによって検知される誘導電圧が当該接続端子6bを介して前記渦流探傷装置に入力される。なお、検波信号とは具体的には電圧である。
【0032】
検査対象物の内部にある非磁性体部材の損傷部から発生する微弱な信号を周りの磁性体部材からの強い信号により埋もれてしまうことなく分離して検出できるようにするために、検査対象物の非磁性体部材にあらかじめ損傷を付与した試験片を渦電流探傷センサー1のボビン2の貫通孔2aに挿入し、損傷のない位置でバランス(即ち0点設定)させた後、試験片軸方向に沿って渦電流探傷センサー1を移動させ、損傷に伴う検出信号(X信号とY信号)を得る。
【0033】
X信号−Y信号の2次元座標軸上で、非磁性体部材の損傷に伴う検出信号がほぼY軸方向にくるように、原点を中心として回転すべき表示角度(位相器の設定角度)を求めておく。装置に位相器の表示機能がない場合には、損傷部の検出信号として得られるX信号とY信号とを用いて、三角形の底辺をX信号の値(単位はV)とし高さをY信号の値(単位はV)とする角度を90度(Y軸の角度)から差し引くことにより、回転すべき表示角度が求まる。
【0034】
次に、前項で求めた回転すべき表示角度(位相器の設定角度)に設定を行った後、渦電流探傷センサー1のボビン2の貫通孔2aに管状の検査対象物を貫通させた状態で、損傷のない位置でバランス(即ち0点設定)させた後、渦電流探傷センサー1を検査対象物の軸方向に移動させながら、出力コイルに供給される交流電圧によって検査対象物に誘起される誘導電圧を検波コイルによって検出する。
【0035】
そして、本発明は、管状の検査対象物の外側に出力コイル及び検波コイルを巻き回し、出力コイルに供給される交流電圧によって検査対象物に誘起されて検波コイルによって検出される誘導電圧のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出する。
【0036】
具体的には、渦電流探傷センサー1を用いた測定によって得られる検波信号について、X信号に変動が認められる場合には鋼管などの磁性体部材に損傷が発生していると判断され、Y信号に変動が認められる場合にはアルミニウム管などの非磁性体部材に損傷が発生していると判断される。
【0037】
なお、検査対象物に損傷が発生していると判断するためのX信号の変動の程度は特定の基準に限定されるものではなく、作業者が適宜設定すれば良い。具体的には例えば、検波コイルによって検出される渦電流の電圧が出力コイルに供給する交流電圧の2割を超える変動をした場合には検査対象物に損傷が発生していると判断することなどが考えられる。
【0038】
ここで、本実施形態の渦電流探傷センサー1自体は測定位置を計測するものではない。したがって、センサーの移動が所定の速度で行われる場合には、検波信号のデータを記録する際に測定開始からの経過時間を記録すると共に測定開始からの経過時間と検査開始位置からの移動距離とを対応させておくことによって、検査対象物に発生している損傷の位置を特定することができる。
【0039】
以上のように構成された本発明の渦電流探傷方法によれば、検波信号のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出するようにしているので、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物における磁性体部材の損傷又は非磁性体部材の損傷を適確に検出することができる。
【0040】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、市販の渦流探傷装置に備わっている表示角度(位相器の設定角度)を変えて、磁性体部材の損傷をY信号で、非磁性体部材の損傷をX信号で評価することや、磁性体部材の損傷はなく非磁性体部材の損傷のみを検出・評価すれば良いケースにおいてX信号やY信号でなく振幅のみで評価するなども本発明に含まれる。
【0041】
ここで、振幅は数式1によって定義される。
(数1) 振幅(V)={(X信号の値(V))2+(Y信号の値(V))2}1/2
【0042】
すなわち、振幅は、X信号−Y信号の図において原点からの距離を示している。そして、X信号が0である場合には、振幅はY信号の高さを示している。
【実施例1】
【0043】
本発明の渦電流探傷方法を実際のOPGWの損傷の検出に適用した実施例を図3から図11を用いて説明する。
【0044】
本実施例において検査対象物として用いたOPGWの断面を図3に示す。このOPGW10は、中心部の光ファイバ収納アルミ管11とこの光ファイバ収納アルミ管11を取り囲む八本のアルミ覆鋼線14とからなる。
【0045】
光ファイバ収納アルミ管11は、外周壁であるアルミ管11aと、アルミ管11a内部に配設される三本の光ファイバユニット12と、これら三本の光ファイバユニット12のアルミ管11a内部での位置を固定するための三つの溝13aを有する溝付きアルミスペーサ13とからなる。
【0046】
なお、本実施例の光ファイバユニット12は、中央の光ファイバとその周囲の六本の光ファイバとを束ねてなるものである。また、アルミ覆鋼線14は鋼線の周りにアルミを被覆させたものである。
【0047】
以上のように、本実施例において検査対象物として用いるOPGW10は、磁性体部材と非磁性体部材とからなるものであり、本発明を適用するのに好適なものである。なお、実際のOPGWの保守点検においては外部からは明確に視認することができない中心部のアルミ管11aの損傷が特に問題になるので、本発明によればOPGWのアルミ管11aの損傷の検出を適確に行うことが可能になることは実際のOPGWの保守点検に対して非常に有益である。
【0048】
本実施例においては、図1及び図2に示す渦電流探傷センサー1を用いて損傷の検出を行った。なお、本実施例では、探傷周波数は70kHz、低域通過フィルタは10Hzとした。X信号−Y信号の2次元座標軸上で回転すべき表示角度の設定(位相器の設定)は40度とした。
【0049】
また、本実施例で用いたOPGW10(線種の規格としてはOPGW−60である。60は避雷用地線としての面積60mm2を表しており、図3の八本のアルミ覆鋼線14の総面積に該当する。)の外径は11.4mmであり、渦電流探傷センサー1のボビン2の貫通孔2aの直径はこのOPGW10の外径に合わせて調整された。
【0050】
本実施例では、(1)損傷の態様の違いによる探傷性能の差の有無の確認、並びに(2)センサーの仕様の違いによる探傷性能の差の有無の確認を行った。
【0051】
(1)損傷の態様の違いによる探傷性能の差の有無の確認
まず、損傷の態様の違いによる本発明の渦電流探傷方法の探傷性能の差の有無を確認するため、OPGW10のアルミ管11aに人工的に貫通孔や軸方向き裂を付与し、或いは実際の自然現象による凍結で割れを起こさせて、これらの損傷の検出を行った。なお、アルミ管11aの検出対象の損傷の他には損傷のないことを確認したOPGW10を用いて測定を行った。
【0052】
まず、アルミ管11aに損傷として貫通孔(直径3mm)を有するOPGW10を用いて測定を行った。所定の探傷周波数70kHz、低域通過フィルタ10Hz、回転すべき表示角度の設定(位相器の設定)40度と設定し、OPGW10をボビン2の貫通孔2aに貫通させた状態で、損傷のない位置でバランス(即ち0点設定)させた後、渦電流探傷センサー1をOPGW10の軸方向に移動させて損傷部分を通過することにより、検波コイルによって検出されて市販の渦流探傷装置の表示画面上(あるいは、同装置を介してPC画面上)に表示された検波信号の軌跡として図4に示す結果が得られた。なお、図4において、横軸は検波信号のX信号の値(単位はV)、縦軸はY信号の値(単位はV)である。横軸、縦軸ともに、一目盛りは2Vを表している。
【0053】
また、市販の渦流探傷装置の表示画面上(あるいは、同装置を介してPC画面上)に表示されたデータを、横軸を時間軸にすると共に縦軸をY信号の値にして表示することにより図5(A)に示す結果が得られ、横軸を時間軸にすると共に縦軸をX信号の値にして表示することにより図5(B)に示す結果が得られた。図5(A)と図5(B)ともに、縦軸は一目盛りが1Vを、横軸は一目盛りが0.5secを表している。
【0054】
図4及び図5に示す結果から、Y信号の値の変動が大きいので非磁性体であるアルミ管11aに損傷が発生していると判断され、一方で、X信号の値の変動は大きいとは言えないので磁性体である鋼線には損傷は発生していないと判断された。
【0055】
また、アルミ管11aに損傷として軸方向き裂(幅2mm×長さ10mm)を有するOPGW10(線種の規格としてはOPGW−60)を用いて測定を行い、渦電流の検波信号の軌跡について図6に示す結果が得られ、時間経過に伴うX,Y信号の値の変動について図7に示す結果が得られた。さらに、アルミ管11aに損傷として凍結割れ(割れ長さ0.9mm)を有するOPGW10(線種の規格としてはOPGW−60)を用いて測定を行い、検波信号の軌跡について図8に示す結果が得られ、時間経過に伴うX、Y信号の値の変動について図9に示す結果が得られた。図6と図8においては、横軸、縦軸ともに、一目盛りは2Vを表している。図7と図9においては、ともに、縦軸は一目盛りが1Vを、横軸は一目盛りが0.5secを表している。
【0056】
図7及び図9に示す結果から、いずれの場合についても、Y信号の値の変動が大きいので非磁性体であるアルミ管11aに損傷が発生していると判断され、一方で、X信号の値の変動は大きいとは言えないので磁性体である鋼線には損傷は発生していないと判断された。
【0057】
これらの結果から、本発明の渦電流探傷方法によれば、損傷の種類に拘わらず、さらに、長さが1mmにも満たない微小な損傷であっても、損傷の検出を適確に高い精度で行うことが可能であることが確認された。
【0058】
(2)センサーの仕様の違いによる探傷性能の差の有無の確認
次に、センサーの仕様の違いによる本発明の渦電流探傷方法の探傷性能の差の有無を確認するため、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔即ち溝2dの底部2eにおけるボビン2の周壁の厚さを1.6mm,4.3mm,9.3mmの三段階に変化させてOPGW10(線種の規格としてはOPGW−60)のアルミ管11aに人工的に貫通孔や軸方向き裂を付与した損傷、或いは実際の自然現象により凍結で割れを起こさせた損傷の検出を行った。なお、アルミ管11aの検出対象の損傷の他には損傷のないことを確認したOPGW10を用いて測定を行った。
【0059】
まず、アルミ管11aに損傷として軸方向き裂(幅2mm×長さ10mm)を有するOPGW10を用いて測定を行い、図10に示す結果が得られた。図10において、横軸は検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔(単位はmm)であり、縦軸は振幅(単位はV)である。また、各試験片として以下の諸元を有する試験片を用いた。
試験片1:線種A,幅0.2mm×長さ5mmの軸方向き裂
試験片2:線種B,幅0.2mm×長さ5mmの軸方向き裂
試験片3:線種A,幅0.2mm×長さ15mmの軸方向き裂
試験片4:線種B,幅0.2mm×長さ15mmの軸方向き裂
なお、線種Aと線種Bとでは製造メーカーが異なる。
【0060】
ここで、振幅は数式2によって定義される。
(数2) 振幅(V)={(X信号の値(V))2+(Y信号の値(V))2}1/2
【0061】
すなわち、振幅は、X信号−Y信号の図(図4、図6、図8)において原点からの距離を示している。そして、X信号が0である場合(図5及び図7のケース)には、振幅はY信号の高さを示している。
【0062】
また、アルミ管11aに損傷として凍結割れ(割れ長さが0.9mm、3.4mm、4.6mmの3種類)を有するOPGW10を用いて測定を行い、図11に示す結果が得られた。図11も、横軸は検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔(単位はmm)であり、縦軸は振幅(単位はV)である。また、各試験片として以下の諸元を有する試験片を用いた。
試験片5:線種B,貫通部長さ0.9mmの凍結割れ
試験片6:線種A,貫通部長さ4.6mmの凍結割れ
試験片7:線種C,貫通部長さ3.4mmの凍結割れ
なお、線種Aと線種Bとでは製造メーカーが異なり、
線種Bと線種Cとでは製造メーカーは同じであるがロットが異なる。
【0063】
これらの結果から、本発明の渦電流探傷方法においては、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔が小さいほど損傷に起因する検出信号が顕著に得られる傾向にあり、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔を10mm未満とすることが好ましく、より好ましくは5mm未満とすることであり、最も好ましくは2mm未満とすることであることが確認された。
【0064】
なお、本実施例では、図3に示す断面を有するOPGW10を検査対象物として用いているが、本発明の渦電流探傷方法の適用に適したOPGWの断面構成はこれに限られるものではなく、更に言えば、本発明の適用に適した検査対象物はOPGWに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施に用いられる渦電流探傷センサーの一例を示す側面図である。
【図2】本発明の実施に用いられる渦電流探傷センサーの一例を示す正面図である。
【図3】実施例において検査対象物として用いたOPGWの断面図である。
【図4】アルミ管に貫通孔を有するOPGWの渦電流の検波信号の軌跡を示す図である。
【図5】アルミ管に貫通孔を有するOPGWの渦電流のX又はY信号を示す図である。 (A)はY信号を示す図である。(B)はX信号を示す図である。
【図6】アルミ管にき裂を有するOPGWの渦電流の検波信号の軌跡を示す図である。
【図7】アルミ管にき裂を有するOPGWの渦電流のX又はY信号を示す図である。 (A)はY信号を示す図である。(B)はX信号を示す図である。
【図8】アルミ管に凍結割れを有するOPGWの渦電流の検波信号の軌跡を示す図である。
【図9】アルミ管に凍結割れを有するOPGWの渦電流のX又はY信号を示す図である。 (A)はY信号を示す図である。(B)はX信号を示す図である。
【図10】アルミ管にき裂を有するOPGWの損傷の検出における検査対象物外周面とコイル内周面との間隔の変化に伴う振幅の変動を説明する図である。
【図11】アルミ管に凍結割れを有するOPGWの損傷の検出における検査対象物外周面とコイル内周面との間隔の変化に伴う振幅の変動を説明する図である。
【図12】従来の渦電流探傷センサーを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 渦電流探傷センサー
2 ボビン
5 接続端子固定基板
7 基板固定部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型の渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサーに関する。さらに詳述すると、本発明は、管状の検査対象物であって磁性体部材と非磁性体部材とからなる検査対象物におけるき裂等の損傷の検出に用いて好適な渦電流探傷方法並びに渦電流探傷センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ複合架空地線(以下、OPGWと表記する)においては、敷設からの時間経過に伴い、例えば強風振動、腐食、あるいは凍結によって、OPGWを構成する部材であるアルミ管のき裂、貫通孔、あるいは割れ等の損傷が発生する場合がある。
【0003】
管状の検査対象物の損傷を電磁誘導による渦電流を利用して検出する従来の非接触型渦電流探傷方法としては、例えば、図12に示すように、励磁用コイルの配線及び検出用コイルの配線を有する可撓性基板102を配管108に巻き付けると共にこれらコイルの両端部に接続されたコネクタ103a,103bを、配管108を貫通させるボビン105の両端のフランジ部106に固定される取付部材107に取り付けられる固定基板104b及び固定基板104aに固定される渦電流探傷検査用コイル素子101を用いて電気信号の測定を行って配管108の探傷を行うものがある(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特許第3247666号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の渦電流探傷方法では、上述の構成を有する渦電流探傷検査用コイル素子101を用いて得られる検波信号について特別の処理をすることなく配管108に発生している損傷の検出を行うようにしているので、検査対象物が例えばOPGWのように複雑な構造を有する場合には特に、コイル素子101から得られる検波信号がノイズを含んでしまい測定誤差が生じ易く損傷の検出を十分な精度で行うことができない場合があるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、例えばOPGWのように鋼線などの磁性体部材とアルミニウム管などの非磁性体部材とを束ねてなる管状の検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことができる渦電流探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の渦電流探傷方法は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に出力コイル及び検波コイルを巻き回すと共に出力コイル及び検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出するようにしている。
【0008】
したがって、この渦電流探傷方法によると、検波信号のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出するようにしているので、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物における磁性体部材の損傷又は非磁性体部材の損傷を適確に検出することができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の渦電流探傷方法において、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であるようにしている。
【0010】
さらに、請求項3記載の渦電流探傷センサーは、電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行う渦電流探傷センサーであって、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に巻き回される出力コイル及び検波コイルを有し、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であるようにしている。
【0011】
この場合には、検査対象物の内部にある非磁性体部材の損傷部から発生する微弱な信号を周りの磁性体部材からの強い信号により埋もれてしまうことなく検出することができ、検査対象物の非磁性体部材と磁性体部材の損傷をより適確に検出することができる。
【0012】
また、請求項4記載の渦電流探傷方法は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外周面と検査対象物に巻き回される出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であることを特徴とする渦電流センサーを用いることにより、検査対象物の外側に巻き回される出力コイル及び検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を磁性体部材からの信号に影響されることなく検出可能とするようにしている。
【0013】
さらに、請求項5記載の渦電流探傷センサーは、電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行う渦電流探傷センサーであって、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に巻き回される出力コイル及び検波コイルを有し、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔を5mm未満とすることにより、出力コイル及び検波コイルを用いての電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定によって得られる検波信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を磁性体部材からの信号に影響されることなく検出可能とするようにしている。
【0014】
この渦電流探傷方法及び渦電流探傷センサーによると、検査対象物の内部にある非磁性体部材の損傷部から発生する微弱な信号を周りの磁性体部材からの強い信号により埋もれてしまうことなく検出することができ、検査対象物の非磁性体部材と磁性体部材の損傷をより適確に検出することができる
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物における磁性体部材の損傷又は非磁性体部材の損傷を適確に検出することができ、例えばOPGWのような管状の検査対象物であって磁性体部材と非磁性体部材とからなる検査対象物における損傷の検出を高い精度で行うことが可能であるので、損傷発生有無の検査の信頼性の向上を図ることができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、測定によって得られる検波信号のノイズを低減してより適確に検査対象物の損傷を検出することが可能であるので、損傷発生有無の検査の信頼性の更なる向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1及び図2に、本発明の渦電流探傷方法の実施形態の一例を示す。この渦電流探傷方法は、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に出力コイル及び検波コイルを巻き回すと共に出力コイル及び検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出するようにしている。
【0019】
本実施形態では、電磁誘導現象を利用した電気信号の測定において図1及び図2に示す渦電流探傷センサー1を用いる。渦電流探傷センサー1は、図1及び図2に示すように、大きくは、円筒状のボビン2と接続端子固定基板5と基板固定部材7とからなる。
【0020】
ボビン2は、軸中心位置に貫通孔2aを有する円筒状に形成される。貫通孔2aの直径は、渦電流探傷センサー1が電気信号の測定を行う管状の検査対象物(図示していない)の外径に合わせて調整される。ボビン2は例えばポリアセタール等の合成樹脂などの非導電性材料によって形成される。
【0021】
また、ボビン2は、軸方向の中央付近において、周壁に、周方向に一回りする環状の溝2dを二つ有する。そして、二つの溝2d,2dを形成することにより、二つの溝2d,2dの間の仕切り2bがボビン2の軸方向中央付近に形成されると共にフランジ部2cがボビン2の軸方向両側端部に形成される。
【0022】
そして、一方の溝2dに出力コイル(図示省略)が巻き回されると共に他方の溝2dに検波コイル(図示省略)が巻き回される。なお、これらのコイルとして、あるいは、これらのコイルとボビンとが一体のものとして、フレキシブル配線基盤(Flexible PWBとも呼ばれる)を用いても良い。
【0023】
渦電流探傷センサー1は仕切り2bを挟んで溝2dに巻き回される出力コイルと検波コイルとによって渦電流探傷を行う。このため、二つの溝2d,2dの間隔であって仕切り2bの幅は、二つのコイルが相互に渦電流探傷センサーとしての出力コイル及び検波コイルとして作動可能な範囲内で設定される。
【0024】
ここで、本発明の渦電流探傷センサー1は、検査対象物の外周面と、出力コイル及び検波コイルを溝2dに巻き回した際のこれらコイルの内周面との間隔を10mm未満とすることが好ましく、より好ましくは5mm未満とすることであり、最も好ましくは2mm未満とすることである。
【0025】
なお、出力コイル及び検波コイルをボビン2の溝2dに巻き回した際のコイルの内周面と溝2dの底面とは一致する。したがって、ボビン2の貫通孔2aの直径を検査対象物の外径と一致させると、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔は溝2dの底部2eにおけるボビン2の周壁の厚さによって決定される。
【0026】
接続端子固定基板5は、本実施形態では、ボビン2の軸方向長さよりも短い長方形の板状に形成され、長手方向をボビン2の軸方向と合わせて配置される。
【0027】
基板固定部材7は、二個を一組として、ボビン2の両側端部のフランジ部2cに一組ずつ、ボビン2の軸方向と垂直方向にフランジ部2cを両側から挟んで取り付けられる。このため、基板固定部材7はΩ型であってΩ型の凹部7aが半円の曲面に形成され、凹部7aの半円の曲面はフランジ部2cの周面の形状(具体的にはフランジ部2cの半径)に合わせて形成される。
【0028】
基板固定部材7は、また、Ω型の凹部7aの両側の端部7bに貫通孔7cを有する。そして、二個の基板固定部材7の凹部7aを向かい合わせてフランジ部2cを挟むと共に、向かい合った端部7bの双方の貫通孔7cを貫通するボルト8aとナット8bとによって端部7bを締め付けることによって基板固定部材7はフランジ部2cに固定される。
【0029】
接続端子固定基板5は、長方形の長手方向の両側に貫通孔5cを有する。そして、接続端子固定基板5は、基板固定部材7の端部7bを締め付けるボルト8aを貫通孔5cを貫通させて基板固定部材7の端部に固定される。すなわち、基板固定部材7を向かい合わせてフランジ部2cを挟む際に、向かい合う基板固定部材7の端部7bの貫通孔7cと接続端子固定基板5の貫通孔5cとの位置を合わせて基板固定部材7の間に接続端子固定基板5を挟み、向かい合う基板固定部材7と接続端子固定基板5とが束ねられて固定される。
【0030】
接続端子固定基板5には、出力コイルの両端と電気的に接続される接続端子6a及び検波コイルの両端と電気的に接続される接続端子6bが取り付けられる。そして、出力コイルと接続端子6a、並びに、検波コイルと接続端子6bとを電気的に接続させるため、接続端子固定基板5には、さらに、出力コイルの両端を結び付けるための二つで一組の接続孔5a及び検波コイルの両端を結び付けるための二つで一組の接続孔5bが設けられると共に、接続孔5aと接続端子6aとの間、並びに、接続孔5bと接続端子6bとの間にリード5dが設けられる。
【0031】
そして、出力コイルの両端と電気的に接続される接続端子6aにはX信号とY信号との表示角度の設定(具体的には、X信号−Y信号の2次元座標軸上で原点中心に所定の角度を回転させて表示する機能のこと。位相器の設定角度ともいう。)が可能な市販の単周波数型渦流探傷装置からの出力側のケーブルが接続され、当該接続端子6aを介して出力コイルに対して交流電圧が供給される。また、検波コイルの両端と電気的に接続される接続端子6bには前記渦流探傷装置からの配線が接続され、出力コイルに供給される交流電圧によって検査対象物に誘起されて検波コイルによって検知される誘導電圧が当該接続端子6bを介して前記渦流探傷装置に入力される。なお、検波信号とは具体的には電圧である。
【0032】
検査対象物の内部にある非磁性体部材の損傷部から発生する微弱な信号を周りの磁性体部材からの強い信号により埋もれてしまうことなく分離して検出できるようにするために、検査対象物の非磁性体部材にあらかじめ損傷を付与した試験片を渦電流探傷センサー1のボビン2の貫通孔2aに挿入し、損傷のない位置でバランス(即ち0点設定)させた後、試験片軸方向に沿って渦電流探傷センサー1を移動させ、損傷に伴う検出信号(X信号とY信号)を得る。
【0033】
X信号−Y信号の2次元座標軸上で、非磁性体部材の損傷に伴う検出信号がほぼY軸方向にくるように、原点を中心として回転すべき表示角度(位相器の設定角度)を求めておく。装置に位相器の表示機能がない場合には、損傷部の検出信号として得られるX信号とY信号とを用いて、三角形の底辺をX信号の値(単位はV)とし高さをY信号の値(単位はV)とする角度を90度(Y軸の角度)から差し引くことにより、回転すべき表示角度が求まる。
【0034】
次に、前項で求めた回転すべき表示角度(位相器の設定角度)に設定を行った後、渦電流探傷センサー1のボビン2の貫通孔2aに管状の検査対象物を貫通させた状態で、損傷のない位置でバランス(即ち0点設定)させた後、渦電流探傷センサー1を検査対象物の軸方向に移動させながら、出力コイルに供給される交流電圧によって検査対象物に誘起される誘導電圧を検波コイルによって検出する。
【0035】
そして、本発明は、管状の検査対象物の外側に出力コイル及び検波コイルを巻き回し、出力コイルに供給される交流電圧によって検査対象物に誘起されて検波コイルによって検出される誘導電圧のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出する。
【0036】
具体的には、渦電流探傷センサー1を用いた測定によって得られる検波信号について、X信号に変動が認められる場合には鋼管などの磁性体部材に損傷が発生していると判断され、Y信号に変動が認められる場合にはアルミニウム管などの非磁性体部材に損傷が発生していると判断される。
【0037】
なお、検査対象物に損傷が発生していると判断するためのX信号の変動の程度は特定の基準に限定されるものではなく、作業者が適宜設定すれば良い。具体的には例えば、検波コイルによって検出される渦電流の電圧が出力コイルに供給する交流電圧の2割を超える変動をした場合には検査対象物に損傷が発生していると判断することなどが考えられる。
【0038】
ここで、本実施形態の渦電流探傷センサー1自体は測定位置を計測するものではない。したがって、センサーの移動が所定の速度で行われる場合には、検波信号のデータを記録する際に測定開始からの経過時間を記録すると共に測定開始からの経過時間と検査開始位置からの移動距離とを対応させておくことによって、検査対象物に発生している損傷の位置を特定することができる。
【0039】
以上のように構成された本発明の渦電流探傷方法によれば、検波信号のX信号の変動に基づいて検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出するようにしているので、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物における磁性体部材の損傷又は非磁性体部材の損傷を適確に検出することができる。
【0040】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、市販の渦流探傷装置に備わっている表示角度(位相器の設定角度)を変えて、磁性体部材の損傷をY信号で、非磁性体部材の損傷をX信号で評価することや、磁性体部材の損傷はなく非磁性体部材の損傷のみを検出・評価すれば良いケースにおいてX信号やY信号でなく振幅のみで評価するなども本発明に含まれる。
【0041】
ここで、振幅は数式1によって定義される。
(数1) 振幅(V)={(X信号の値(V))2+(Y信号の値(V))2}1/2
【0042】
すなわち、振幅は、X信号−Y信号の図において原点からの距離を示している。そして、X信号が0である場合には、振幅はY信号の高さを示している。
【実施例1】
【0043】
本発明の渦電流探傷方法を実際のOPGWの損傷の検出に適用した実施例を図3から図11を用いて説明する。
【0044】
本実施例において検査対象物として用いたOPGWの断面を図3に示す。このOPGW10は、中心部の光ファイバ収納アルミ管11とこの光ファイバ収納アルミ管11を取り囲む八本のアルミ覆鋼線14とからなる。
【0045】
光ファイバ収納アルミ管11は、外周壁であるアルミ管11aと、アルミ管11a内部に配設される三本の光ファイバユニット12と、これら三本の光ファイバユニット12のアルミ管11a内部での位置を固定するための三つの溝13aを有する溝付きアルミスペーサ13とからなる。
【0046】
なお、本実施例の光ファイバユニット12は、中央の光ファイバとその周囲の六本の光ファイバとを束ねてなるものである。また、アルミ覆鋼線14は鋼線の周りにアルミを被覆させたものである。
【0047】
以上のように、本実施例において検査対象物として用いるOPGW10は、磁性体部材と非磁性体部材とからなるものであり、本発明を適用するのに好適なものである。なお、実際のOPGWの保守点検においては外部からは明確に視認することができない中心部のアルミ管11aの損傷が特に問題になるので、本発明によればOPGWのアルミ管11aの損傷の検出を適確に行うことが可能になることは実際のOPGWの保守点検に対して非常に有益である。
【0048】
本実施例においては、図1及び図2に示す渦電流探傷センサー1を用いて損傷の検出を行った。なお、本実施例では、探傷周波数は70kHz、低域通過フィルタは10Hzとした。X信号−Y信号の2次元座標軸上で回転すべき表示角度の設定(位相器の設定)は40度とした。
【0049】
また、本実施例で用いたOPGW10(線種の規格としてはOPGW−60である。60は避雷用地線としての面積60mm2を表しており、図3の八本のアルミ覆鋼線14の総面積に該当する。)の外径は11.4mmであり、渦電流探傷センサー1のボビン2の貫通孔2aの直径はこのOPGW10の外径に合わせて調整された。
【0050】
本実施例では、(1)損傷の態様の違いによる探傷性能の差の有無の確認、並びに(2)センサーの仕様の違いによる探傷性能の差の有無の確認を行った。
【0051】
(1)損傷の態様の違いによる探傷性能の差の有無の確認
まず、損傷の態様の違いによる本発明の渦電流探傷方法の探傷性能の差の有無を確認するため、OPGW10のアルミ管11aに人工的に貫通孔や軸方向き裂を付与し、或いは実際の自然現象による凍結で割れを起こさせて、これらの損傷の検出を行った。なお、アルミ管11aの検出対象の損傷の他には損傷のないことを確認したOPGW10を用いて測定を行った。
【0052】
まず、アルミ管11aに損傷として貫通孔(直径3mm)を有するOPGW10を用いて測定を行った。所定の探傷周波数70kHz、低域通過フィルタ10Hz、回転すべき表示角度の設定(位相器の設定)40度と設定し、OPGW10をボビン2の貫通孔2aに貫通させた状態で、損傷のない位置でバランス(即ち0点設定)させた後、渦電流探傷センサー1をOPGW10の軸方向に移動させて損傷部分を通過することにより、検波コイルによって検出されて市販の渦流探傷装置の表示画面上(あるいは、同装置を介してPC画面上)に表示された検波信号の軌跡として図4に示す結果が得られた。なお、図4において、横軸は検波信号のX信号の値(単位はV)、縦軸はY信号の値(単位はV)である。横軸、縦軸ともに、一目盛りは2Vを表している。
【0053】
また、市販の渦流探傷装置の表示画面上(あるいは、同装置を介してPC画面上)に表示されたデータを、横軸を時間軸にすると共に縦軸をY信号の値にして表示することにより図5(A)に示す結果が得られ、横軸を時間軸にすると共に縦軸をX信号の値にして表示することにより図5(B)に示す結果が得られた。図5(A)と図5(B)ともに、縦軸は一目盛りが1Vを、横軸は一目盛りが0.5secを表している。
【0054】
図4及び図5に示す結果から、Y信号の値の変動が大きいので非磁性体であるアルミ管11aに損傷が発生していると判断され、一方で、X信号の値の変動は大きいとは言えないので磁性体である鋼線には損傷は発生していないと判断された。
【0055】
また、アルミ管11aに損傷として軸方向き裂(幅2mm×長さ10mm)を有するOPGW10(線種の規格としてはOPGW−60)を用いて測定を行い、渦電流の検波信号の軌跡について図6に示す結果が得られ、時間経過に伴うX,Y信号の値の変動について図7に示す結果が得られた。さらに、アルミ管11aに損傷として凍結割れ(割れ長さ0.9mm)を有するOPGW10(線種の規格としてはOPGW−60)を用いて測定を行い、検波信号の軌跡について図8に示す結果が得られ、時間経過に伴うX、Y信号の値の変動について図9に示す結果が得られた。図6と図8においては、横軸、縦軸ともに、一目盛りは2Vを表している。図7と図9においては、ともに、縦軸は一目盛りが1Vを、横軸は一目盛りが0.5secを表している。
【0056】
図7及び図9に示す結果から、いずれの場合についても、Y信号の値の変動が大きいので非磁性体であるアルミ管11aに損傷が発生していると判断され、一方で、X信号の値の変動は大きいとは言えないので磁性体である鋼線には損傷は発生していないと判断された。
【0057】
これらの結果から、本発明の渦電流探傷方法によれば、損傷の種類に拘わらず、さらに、長さが1mmにも満たない微小な損傷であっても、損傷の検出を適確に高い精度で行うことが可能であることが確認された。
【0058】
(2)センサーの仕様の違いによる探傷性能の差の有無の確認
次に、センサーの仕様の違いによる本発明の渦電流探傷方法の探傷性能の差の有無を確認するため、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔即ち溝2dの底部2eにおけるボビン2の周壁の厚さを1.6mm,4.3mm,9.3mmの三段階に変化させてOPGW10(線種の規格としてはOPGW−60)のアルミ管11aに人工的に貫通孔や軸方向き裂を付与した損傷、或いは実際の自然現象により凍結で割れを起こさせた損傷の検出を行った。なお、アルミ管11aの検出対象の損傷の他には損傷のないことを確認したOPGW10を用いて測定を行った。
【0059】
まず、アルミ管11aに損傷として軸方向き裂(幅2mm×長さ10mm)を有するOPGW10を用いて測定を行い、図10に示す結果が得られた。図10において、横軸は検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔(単位はmm)であり、縦軸は振幅(単位はV)である。また、各試験片として以下の諸元を有する試験片を用いた。
試験片1:線種A,幅0.2mm×長さ5mmの軸方向き裂
試験片2:線種B,幅0.2mm×長さ5mmの軸方向き裂
試験片3:線種A,幅0.2mm×長さ15mmの軸方向き裂
試験片4:線種B,幅0.2mm×長さ15mmの軸方向き裂
なお、線種Aと線種Bとでは製造メーカーが異なる。
【0060】
ここで、振幅は数式2によって定義される。
(数2) 振幅(V)={(X信号の値(V))2+(Y信号の値(V))2}1/2
【0061】
すなわち、振幅は、X信号−Y信号の図(図4、図6、図8)において原点からの距離を示している。そして、X信号が0である場合(図5及び図7のケース)には、振幅はY信号の高さを示している。
【0062】
また、アルミ管11aに損傷として凍結割れ(割れ長さが0.9mm、3.4mm、4.6mmの3種類)を有するOPGW10を用いて測定を行い、図11に示す結果が得られた。図11も、横軸は検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔(単位はmm)であり、縦軸は振幅(単位はV)である。また、各試験片として以下の諸元を有する試験片を用いた。
試験片5:線種B,貫通部長さ0.9mmの凍結割れ
試験片6:線種A,貫通部長さ4.6mmの凍結割れ
試験片7:線種C,貫通部長さ3.4mmの凍結割れ
なお、線種Aと線種Bとでは製造メーカーが異なり、
線種Bと線種Cとでは製造メーカーは同じであるがロットが異なる。
【0063】
これらの結果から、本発明の渦電流探傷方法においては、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔が小さいほど損傷に起因する検出信号が顕著に得られる傾向にあり、検査対象物の外周面と出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔を10mm未満とすることが好ましく、より好ましくは5mm未満とすることであり、最も好ましくは2mm未満とすることであることが確認された。
【0064】
なお、本実施例では、図3に示す断面を有するOPGW10を検査対象物として用いているが、本発明の渦電流探傷方法の適用に適したOPGWの断面構成はこれに限られるものではなく、更に言えば、本発明の適用に適した検査対象物はOPGWに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施に用いられる渦電流探傷センサーの一例を示す側面図である。
【図2】本発明の実施に用いられる渦電流探傷センサーの一例を示す正面図である。
【図3】実施例において検査対象物として用いたOPGWの断面図である。
【図4】アルミ管に貫通孔を有するOPGWの渦電流の検波信号の軌跡を示す図である。
【図5】アルミ管に貫通孔を有するOPGWの渦電流のX又はY信号を示す図である。 (A)はY信号を示す図である。(B)はX信号を示す図である。
【図6】アルミ管にき裂を有するOPGWの渦電流の検波信号の軌跡を示す図である。
【図7】アルミ管にき裂を有するOPGWの渦電流のX又はY信号を示す図である。 (A)はY信号を示す図である。(B)はX信号を示す図である。
【図8】アルミ管に凍結割れを有するOPGWの渦電流の検波信号の軌跡を示す図である。
【図9】アルミ管に凍結割れを有するOPGWの渦電流のX又はY信号を示す図である。 (A)はY信号を示す図である。(B)はX信号を示す図である。
【図10】アルミ管にき裂を有するOPGWの損傷の検出における検査対象物外周面とコイル内周面との間隔の変化に伴う振幅の変動を説明する図である。
【図11】アルミ管に凍結割れを有するOPGWの損傷の検出における検査対象物外周面とコイル内周面との間隔の変化に伴う振幅の変動を説明する図である。
【図12】従来の渦電流探傷センサーを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 渦電流探傷センサー
2 ボビン
5 接続端子固定基板
7 基板固定部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に出力コイル及び検波コイルを巻き回すと共に前記出力コイル及び前記検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号のX信号の変動に基づいて前記検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて前記検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項2】
前記検査対象物の外周面と前記出力コイル及び前記検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であることを特徴とする請求項1記載の渦電流探傷方法。
【請求項3】
電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行う渦電流探傷センサーであって、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に巻き回される出力コイル及び検波コイルを有し、前記検査対象物の外周面と前記出力コイル及び前記検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であることを特徴とする渦電流探傷センサー。
【請求項4】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外周面と前記検査対象物に巻き回される出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であることを特徴とする渦電流センサーを用いることにより、前記検査対象物の外側に巻き回される前記出力コイル及び前記検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号の変動に基づいて前記検査対象物を構成する前記非磁性体部材の損傷を前記磁性体部材からの信号に影響されることなく検出可能とすることを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項5】
電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行う渦電流探傷センサーであって、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に巻き回される出力コイル及び検波コイルを有し、前記検査対象物の外周面と前記出力コイル及び前記検波コイルの内周面との間隔を5mm未満とすることにより、前記出力コイル及び前記検波コイルを用いての電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定によって得られる検波信号の変動に基づいて前記検査対象物を構成する前記非磁性体部材の損傷を前記磁性体部材からの信号に影響されることなく検出可能とすることを特徴とする渦電流探傷センサー。
【請求項1】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に出力コイル及び検波コイルを巻き回すと共に前記出力コイル及び前記検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号のX信号の変動に基づいて前記検査対象物を構成する磁性体部材の損傷を検出すると共にY信号の変動に基づいて前記検査対象物を構成する非磁性体部材の損傷を検出することを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項2】
前記検査対象物の外周面と前記出力コイル及び前記検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であることを特徴とする請求項1記載の渦電流探傷方法。
【請求項3】
電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行う渦電流探傷センサーであって、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に巻き回される出力コイル及び検波コイルを有し、前記検査対象物の外周面と前記出力コイル及び前記検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であることを特徴とする渦電流探傷センサー。
【請求項4】
磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外周面と前記検査対象物に巻き回される出力コイル及び検波コイルの内周面との間隔が5mm未満であることを特徴とする渦電流センサーを用いることにより、前記検査対象物の外側に巻き回される前記出力コイル及び前記検波コイルを用いて電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定を行い、当該測定によって得られる検波信号の変動に基づいて前記検査対象物を構成する前記非磁性体部材の損傷を前記磁性体部材からの信号に影響されることなく検出可能とすることを特徴とする渦電流探傷方法。
【請求項5】
電磁誘導現象を利用した検査対象物についての電気信号の測定を行う渦電流探傷センサーであって、磁性体部材と非磁性体部材とからなる管状の検査対象物の外側に巻き回される出力コイル及び検波コイルを有し、前記検査対象物の外周面と前記出力コイル及び前記検波コイルの内周面との間隔を5mm未満とすることにより、前記出力コイル及び前記検波コイルを用いての電磁誘導現象を利用した前記検査対象物についての電気信号の測定によって得られる検波信号の変動に基づいて前記検査対象物を構成する前記非磁性体部材の損傷を前記磁性体部材からの信号に影響されることなく検出可能とすることを特徴とする渦電流探傷センサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−236695(P2009−236695A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83441(P2008−83441)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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