説明

渦電流検出方法および渦電流検出センサ

【課題】検出ヘッドの環境変化にかかわらず一定の検出出力となる渦電流検出センサの提供。
【解決手段】渦電流検出センサ1にインピーダンス測定手段20により測定された検出コイル2のインピーダンスと参照コイル3のインピーダンスを用いて磁界の検出出力の校正をする校正手段30を備える。検出コイル2の測定中の検出コイルインピーダンスと、測定後の所定の時間以内に検出コイル2が測定対象物5から所定の距離離れた状態での検出コイル2の検出コイルインピーダンスとから測定対象物5の物性値を算出する。
所定の条件で計測された、検出コイル2の基準検出コイルインピーダンスと参照コイルの基準参照コイルインピーダンスと、測定対象物5の物性値を用いて、測定出力を校正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流検出センサに関するものであり、詳しくは渦電流検出センサの温度補償に関するものである。
【背景技術】
【0002】
渦電流検出センサは測定対象物の内部構造により変化する渦電流により発生する磁気変動を検出しており、検出感度を向上するため検出ヘッドを測定対象物に接近もしくは接触させて測定している。このため、測定対象物の熱により検出ヘッドの温度が変化して測定誤差を生じることがあった。これを改善するために検出コイルの温度を測定し、あらかじめ用意した補正表により誤差補正する従来技術1(例えば、特許文献1参照)がある。また、温度変動による誤差の大部分が検出コイルと参照コイルの温度差に起因することから、検出コイルと参照コイルの温度差が小さな構造にする従来技術2(例えば、特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−204319号公報
【特許文献2】特開2007−285804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術1では、温度検出センサと検出コイルの位置を完全に一致させて配置することはできず、検出コイルの温度を正確に検出することは困難で充分な誤差補正はできなかった。従来技術2では、検出コイルと参照コイルは磁気的な影響を受けない距離だけ離して配置されるため熱源からの距離も異なるので完全に同一温度にすることは困難であった。
さらに、検出コイルの複素インピーダンスはコイルと測定対象物の導電率、透磁率、寸法により変化し、導電率、透磁率、寸法は温度等の環境条件によって変化する。このため、渦電流検出センサにより高精度の良否判定をするためには、基準測定物の測定条件と測定対象物の測定条件を一定にする必要があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、検出コイルと参照コイルと測定対象物の温度変動による誤差を防止すると共に、さらに、温度変動以外の原因による検出コイルと参照コイルのインピーダンス変動による誤差発生も防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、検出コイルと参照コイルが直列に接続された回路と、2個の基準抵抗が直列に接続されたインダクタンスブリッジに交流電圧を印加し、前記検出コイルを測定対象物に近接させて、前記測定対象物に所定の渦電流を発生させかつ前記渦電流による磁界を前記検出コイルで検出する渦電流検出センサを用いた渦電流検出方法において、
前記検出コイルの複素インピーダンスと前記参照コイルの複素インピーダンスの少なくも一方を測定するインピーダンス測定工程と、
前記インピーダンス測定工程により測定された前記検出コイルの複素インピーダンスと前記参照コイルの複素インピーダンスの少なくも一方を用いて前記磁界の検出出力の校正をする校正工程を備えたことである。
【0006】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1に係る発明において、前記インピーダンス測定工程が、
前記測定対象物を測定中の前記検出コイルの複素インピーダンスである測定検出コイルインピーダンスを測定する測定検出コイルインピーダンス測定工程と、
前記測定対象物を測定後に所定の条件で前記検出コイルの複素インピーダンスである測定後検出コイルインピーダンスを計測する測定後検出コイルインピーダンス測定工程と、から構成されることである。
【0007】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項2に係る発明において、前記校正工程が、所定の条件における渦電流検出センサの検出出力である基準検出出力と、前記所定の条件における検出コイルの複素インピーダンスである基準検出コイルインピーダンスと、前記所定の条件における参照コイルの複素インピーダンスである基準参照コイルインピーダンスと、前記所定の条件における前記基準抵抗の複素インピーダンスである基準抵抗インピーダンスと、前記測定検出コイルインピーダンスと、前記測定後検出コイルインピーダンスと、を用いて前記測定対象物測定の前記渦電流検出センサの出力を校正する工程で構成されることである。
【0008】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項3に係る発明において、前記測定検出コイルインピーダンス測定工程が、周期の異なる第1の周期、第2の周期、第3の周期の前記交流電圧を印加して、第1の測定検出コイルインピーダンス、第2の測定検出コイルインピーダンス、第3の測定検出コイルインピーダンスを測定する工程で構成され、
前記測定後検出コイルインピーダンス測定工程が、任意の周期の前記交流電圧を印加して、測定後検出コイルインピーダンスを測定する工程で構成され、
前記測定検出コイルインピーダンスを、前記第1の測定検出コイルインピーダンス、前記第2の測定検出コイルインピーダンス、前記第3の測定検出コイルインピーダンスと、前記測定後検出コイルインピーダンスを用いて算出される校正測定検出コイルインピーダンスとしたことである。
【0009】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項2〜請求項4に係る発明において、前記測定後検出コイルインピーダンス測定工程が、前記検出コイルの温度変化が前記測定対象物を測定した時の温度から所定温度以内で、前記検出コイルに対して前記測定対象物の磁気的影響が所定の値以下である状態で、前記検出コイルの複素インピーダンスを計測する工程で構成されることである。
【0010】
請求項6に係る発明の特徴は、検出コイルと参照コイルが直列に接続された回路と、2個の基準抵抗が直列に接続されたインダクタンスブリッジに交流電圧を印加し、前記検出コイルを測定対象物に近接させて、前記測定対象物に所定の渦電流を発生させかつ前記渦電流による磁界を前記検出コイルで検出する渦電流検出センサにおいて、
前記検出コイルの複素インピーダンスと前記参照コイルの複素インピーダンスの少なくも一方を測定するインピーダンス測定手段と、
前記インピーダンス測定手段により測定された前記検出コイルの複素インピーダンスと前記参照コイルの複素インピーダンスの少なくも一方を用いて前記磁界の検出出力の校正をする校正手段を備えたことである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、測定対象物や環境の温度変化により変化した測定時の検出コイルと参照コイルのインピーダンスを測定できるので、その値を基にして渦電流検出センサの出力を所定の温度における出力に校正でき、検出コイルと参照コイルの温度変化による変動を受けない渦電流検出センサを実現できる。
【0012】
請求項2、請求項3に係る発明によれば、実測時の検出コイルのインピーダンスに基づき、渦電流検出センサの出力を校正できるため、環境変動に関わらず基準状態での測定が可能な渦電流検出センサを実現できる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、渦電流検出センサの出力を検出コイルと測定対象物が電磁気的に結合した状態を正確に反映した基準状態における出力に校正できるため、環境変動に関わらず基準状態での正確な測定が可能な渦電流検出センサを実現できる。
【0014】
請求項6に係る発明によれば、測定対象物や環境の温度変化により変化した測定時の検出コイルと参照コイルのインピーダンスを測定できるので、その値を基にして渦電流検出センサの出力を所定の温度における出力に校正でき、温度変化による変動を受けない渦電流検出センサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の渦電流センサのブロック図である。
【図2】本実施形態の渦電流センサの回路図である。
【図3】本実施形態の渦電流センサの動作を示す工程図である。
【図4】本実施形態の変形態様の渦電流センサの動作を示す工程図である。
【図5】本実施形態の変形態様のインピーダンス軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を上置コイル方式の渦電流検出センサに応用した実施の形態を図1〜図3に基づき説明する。
図1に示す渦電流検出センサ1は、内部に検出コイル2と参照コイル3、端子6、7、8とスイッチS3、S4、S5を備えた検出ヘッド4と、検出コイル2と参照コイル3の複素インピーダンスから段測定対象物5に発生する渦電流を検出する渦電流検出手段10と、インピーダンス測定手段20と、校正手段30により構成されている。
図2に示す回路図において、渦電流検出手段10は直列に結合された基準抵抗101、基準抵抗102と電圧計103と交流電源104と端子105,106,107を備えている。インピーダンス測定手段20は直列に結合された抵抗201と抵抗202、直列に結合された抵抗203とインダクタンス204と計測端子207と計測端子208、電圧計205と交流電源206を備えている。
【0017】
渦電流検出センサ1は以下のようにして渦電流検出を行う。
スイッチS3を端子105に接続し、スイッチS4を端子106に接続し、スイッチS5を端子107に接続する。これにより、検出コイル2と参照コイル3が直列に接続された回路と、基準抵抗101、基準抵抗102が直列に接続されたインダクタンスブリッジに交流電源104により交流電圧を印加する。検出コイル2を測定対象物5に近接させて、測定対象物5に渦電流による磁界を発生させ磁界の影響で変化する検出コイル2の複素インピーダンスの変化を電圧計103で検出することで渦電流の変化を検出する。渦電流は測定対象物5の電磁気的物性の変化により変化するので、渦電流を検出することで測定対象物5の電磁気的物性に影響を与える内部組織の変化を検出できる。
【0018】
渦電流検出センサ1を測定対象物5の良否判定に使用する場合、良品の基準測定物の渦電流検出出力を基準として測定対象物5の検出出力を比較することで良否判定をする。
【0019】
コイルの複素インピーダンス測定は以下のように実施する。スイッチS3を端子44に接続し、スイッチS4を端子45に接続し、スイッチS5を端子46に接続する。さらに、インピーダンス測定手段20は端子207、208間に測定対象コイルを接続することで直列インダクタンスブリッジを形成する。可変インダクタンス204のインダクタンスをL10、可変抵抗203の抵抗をR10、基準抵抗201の抵抗をR20、基準抵抗202の抵抗をR30とし、測定対象コイルの複素インピーダンスをR+jωLとする。ここで、電圧計205の電圧が0となるようにR10、L10を調整したとき、R=R10・R20/R30、L=L10・R20/R30となることが知られている。
検出コイル2の複素インピーダンスはスイッチS1を端子41に接続し、スイッチS2を端子43に接続し、電圧計205の電圧が0となるようにR10、L10を調整することで測定する。参照コイル3の複素インピーダンスはスイッチS1を端子42に接続し、スイッチS2を端子43に接続し、電圧計205の電圧が0となるようにR10、L10を調整することで測定する。
【0020】
渦電流検出センサ1を測定対象物5の研削焼けの良否判定に使用する場合について図3に基づき以下に説明する。
この場合良品の基準測定物の渦電流検出出力を基準として、測定対象物5の検出出力を比較することで良否判定をする。渦電流検出出力は測定対象物の組成によっても異なるため対象測定物に対応した基準測定物の渦電流検出出力を判定基準とする。
【0021】
基準測定物測定工程(ST1)で、基準測定物を所定の測定状態で測定したときの渦電流検出センサの出力電圧を基準検出出力Vとし校正手段30内部に格納する。同じ環境条件で、検出コイルに対して外部からの有意差のある磁気的影響が及ばない状態で検出コイルの複素インピーダンスを計測したときの検出コイルの複素インピーダンスを基準検出コイルインピーダンスZとし校正手段30内部に格納する。さらに、同じ環境条件で測定した、参照コイルの複素インピーダンスを基準参照コイルインピーダンスZ2、基準抵抗101の複素インピーダンスを基準抵抗インピーダンスZ3、基準抵抗102の複素インピーダンスを基準抵抗インピーダンスZ4、として校正手段30内部に格納する。
【0022】
測定対象物5の実測定は以下のように行う。
測定物測定工程(ST2)で、検出ヘッド4を測定対象物5に接触させて測定対象物5を測定したときの、検出コイルの複素インピーダンスを測定検出コイルインピーダンスZ1wmとして校正手段30内部に格納する。
次に測定後インピーダンス測定工程(ST3)で、検出ヘッド4を検出コイル2に対して測定対象物5の有意差のある磁気的影響が及ばない距離以上に測定対象物5から離し、測定ヘッド4の温度が測定対象物5を測定中の温度から所定の温度以上変化しない状態での、検出コイル2の複素インピーダンスを測定後検出コイルインピーダンスZ1mとして校正手段30内部に格納する。
【0023】
ここで、直列インダクタンスブリッジによる渦電流検出電圧Vは印加電圧をE、検出コイルの複素インピーダンスをZ、参照コイルの複素インピーダンスをZ、基準抵抗の複素インピーダンスをZ、Zとすると、V=E((Z/(Z+Z)−Z/(Z+Z))となることが知られている。
校正工程(ST4)では、校正渦電流検出電圧Vは校正手段30において以下のように算出する。
環境変化のない状態で測定対象物5を測定したときの検出コイル2の複素インピーダンスをZ1w、検出出力をVとするとV=E((Z/(Z+Z)−Z1w/(Z+Z1w))となる。基準状態で測定対象物5を測定したときの検出コイル2の複素インピーダンスZ1wと実測時の検出コイル2の複素インピーダンスZ1wmの差をΔWとすると、コイルと測定対象物5の環境変化によるインピーダンス変化の寄与率はコイル側が大きいので、Z1w−Z1wm=ΔW≒Z−Z1mとなる。よって、Z1wはZ1w≒Z1wm+(Z−Z1m)となり、校正渦電流検出電圧VはV=E((Z/(Z+Z)−(Z1wm−(Z−Z1m))/(Z+(Z1wm+(Z−Z1m))))となる。
以上の校正により渦電流検出センサ1の環境変化がない状態の渦電流検出電圧に近い校正渦電流検出電圧Vを得ることができる。
【0024】
最後に良否判定工程(ST5)で、基準検出出力Vと校正渦電流検出電圧Vを比較し良否を判定する。例えば、許容値をHとするとH≧|V−V|で測定対象物5を良品と判定、それ以外を不良品と判定する。
以上の渦電流検出方法によれば、検出コイルの環境変化によるインピーダンス変動による誤判定を防止できる。
<本実施形態の変形態様>
【0025】
以上の実施例では、環境変化による誤差の大部分を占める渦電流検出センサ1の誤差を校正したが、以下の方法で測定対象物5の環境変化による誤差を含めて校正することができる。
ここで、基準環境で検出コイル2と測定対象物5が接近した状態(測定物の測定時)の複素インピーダンスZ1wをZ1w=X+jYとすると、X=R1W=R+f(μ、σ、ω、K、L)、Y=ω・L1W=ω・L+f(μ、σ、ω、K、L)と表せ、図5のような軌跡を描くことが知られている。f(μ、σ、ω、K、L)、f(μ、σ、ω、K、L)は変数をμ、σ、ω、K、Lとする関数で、μは測定対象物5の透磁率、σは測定対象物5の導電率、ωは印加電圧の角周波数、Kは測定対象物5と検出コイルの距離で決まる結合係数、Lは基準環境での検出コイル2のリアクタンス、Rは基準環境での検出コイル2の抵抗である。
【0026】
実測時の工程を図4に基づき説明する。
基準測定物測定工程(ST1)で以下の項目を決定し校正手段30内部に格納する。基準測定物を所定の測定状態で測定したときの渦電流検出センサの出力電圧である基準検出出力VS、同じ環境条件で、検出コイルに対して外部からの有意差のある磁気的影響が及ばない状態で検出コイルの複素インピーダンスを計測したときの検出コイルの複素インピーダンスである基準検出コイルインピーダンスZ、同じ環境条件で測定した、参照コイルの複素インピーダンスである基準参照コイルインピーダンスZ2、基準抵抗101の複素インピーダンスである基準抵抗インピーダンスZ3、基準抵抗102の複素インピーダンスである基準抵抗インピーダンスZ
さらに、インピーダンス軌跡関数決定工程(ST2)で、渦電流検出センサ1を用いて、μ、σの異なる材質の測定対象物5を印加電圧の角周波数ωと結合係数Kを変化させながら計測しR、L、X、Yを実測することで図5に示すようなインピーダンスの軌跡を描く関数であるインピーダンス軌跡関数f(μ、σ、ω、K、L)、f(μ、σ、ω、K、L)の実験式を求めて、校正手段30に格納しておく。
【0027】
測定物測定工程(ST3)で、測定対象物5の実測時に異なる3個の角周波数ω、ω、ωの電圧を印加し、測定中の検出コイル2の複素インピーダンスであるR1wm1、R1wm2、R1wm3、L1wm1、L1wm2、L1wm3を測定する。
【0028】
次に、測定後検出コイルインピーダンス測定工程(ST4)で、検出ヘッド4を検出コイル2に対して測定対象物5の有意差のある磁気的影響が及ばない距離以上に測定対象物5から離し、測定ヘッド4の温度が測定対象物5を測定中の温度から所定の温度以上変化しない状態で任意の角周波数ωの電圧を印加し、検出コイル2の複素インピーダンスであるR1m、L1mを測定する。
【0029】
物性値演算工程(ST5)で、インピーダンス軌跡関数と検出コイル2の複素インピーダンスとからR1wm1=R1m+f(μ、σ、ω、K、L1m)、R1wm2=R1m+f(μ、σ、ω、K、L1m)、R1wm3=R1m+f(μ、σ、ω、K、L1m)の3個の方程式を得る。3個の連立方程式から実測時のμ、σ、Kを算出し校正手段30に格納しておく。
ここで、μ、σ、Kの算出に、L1wm1=ω・L1m+f(μ、σ、ω、K、L1m)、L1wm2=ω・L1m+f(μ、σ、ω、K、L1m)、L1wm3=ω・L1m+f(μ、σ、ω、K、L1m)の3個の連立方程式を用いてもよい。
【0030】
校正インピーダンス演算工程(ST6)において、検出コイル2の校正インピーダンスZ1wKは算出された測定時の測定物の透磁率μ、導電率σと接触係数Kの値を使用し
1wK=R+f(μ、σ、ω、K、L)+j(ω・L+f(μ、σ、ω、K、L))として演算する。
【0031】
校正工程(ST7)において、校正渦電流検出電圧Vは、あらかじめ校正手段30内部に格納されている、基準検出コイルインピーダンスZ、基準参照コイルインピーダンスZ2、基準抵抗インピーダンスZ3、基準抵抗インピーダンスZ4、と検出コイル2の校正インピーダンスZ1wKにより、V=E((Z/(Z+Z)−Z1wK/(Z+Z1wK))として算出する。
【0032】
良否判定工程(ST8)において、基準検出出力Vと校正渦電流検出電圧Vを比較し良否を判定する。例えば、許容値をHとするとH≧|V−V|で測定対象物5を良品と判定、それ以外を不良品と判定する。
【0033】
以上の渦電流検出方法によれば、検出コイルと測定対象物5の環境変化によるインピーダンス変動による誤判定を防止できる。
【符号の説明】
【0034】
1:渦電流検出センサ 2:検出コイル 3:参照コイル 4:検出ヘッド 10:渦電流検出手段 20:インピーダンス測定手段 30:校正手段 101、102、201、202:基準抵抗 103、205:電圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出コイルと参照コイルが直列に接続された回路と、2個の基準抵抗が直列に接続されたインダクタンスブリッジに交流電圧を印加し、前記検出コイルを測定対象物に近接させて、前記測定対象物に所定の渦電流を発生させかつ前記渦電流による磁界を前記検出コイルで検出する渦電流検出センサを用いた渦電流検出方法において、
前記検出コイルの複素インピーダンスと前記参照コイルの複素インピーダンスの少なくも一方を測定するインピーダンス測定工程と、
前記インピーダンス測定工程により測定された前記検出コイルの複素インピーダンスと前記参照コイルの複素インピーダンスの少なくも一方を用いて前記磁界の検出出力の校正をする校正工程を備えた渦電流検出方法。
【請求項2】
前記インピーダンス測定工程が、
前記測定対象物を測定中の前記検出コイルの複素インピーダンスである測定検出コイルインピーダンスを測定する測定検出コイルインピーダンス測定工程と、
前記測定対象物を測定後に所定の条件で前記検出コイルの複素インピーダンスである測定後検出コイルインピーダンスを計測する測定後検出コイルインピーダンス測定工程と、から構成される、請求項1記載の渦電流検出方法。
【請求項3】
前記校正工程が、所定の条件における渦電流検出センサの検出出力である基準検出出力と、前記所定の条件における検出コイルの複素インピーダンスである基準検出コイルインピーダンスと、前記所定の条件における参照コイルの複素インピーダンスである基準参照コイルインピーダンスと、前記所定の条件における前記基準抵抗の複素インピーダンスである基準抵抗インピーダンスと、前記測定検出コイルインピーダンスと、前記測定後検出コイルインピーダンスと、を用いて前記測定対象物測定の前記渦電流検出センサの出力を校正する工程で構成される、請求項2記載の渦電流検出方法。
【請求項4】
前記測定検出コイルインピーダンス測定工程が、周期の異なる第1の周期、第2の周期、第3の周期の前記交流電圧を印加して、第1の測定検出コイルインピーダンス、第2の測定検出コイルインピーダンス、第3の測定検出コイルインピーダンスを測定する工程で構成され、
前記測定後検出コイルインピーダンス測定工程が、任意の周期の前記交流電圧を印加して、測定後検出コイルインピーダンスを測定する工程で構成され、
前記測定検出コイルインピーダンスを、前記第1の測定検出コイルインピーダンス、前記第2の測定検出コイルインピーダンス、前記第3の測定検出コイルインピーダンスと、前記測定後検出コイルインピーダンスを用いて算出される校正測定検出コイルインピーダンスとした、請求項3記載の渦電流検出方法。
【請求項5】
前記測定後検出コイルインピーダンス測定工程が、前記検出コイルの温度変化が前記測定対象物を測定した時の温度から所定温度以内で、前記検出コイルに対して前記測定対象物の磁気的影響が所定の値以下である状態で、前記検出コイルの複素インピーダンスを計測する工程で構成される、請求項2ないし請求項4に記載の渦電流検出方法。
【請求項6】
検出コイルと参照コイルが直列に接続された回路と、2個の基準抵抗が直列に接続されたインダクタンスブリッジに交流電圧を印加し、前記検出コイルを測定対象物に近接させて、前記測定対象物に所定の渦電流を発生させかつ前記渦電流による磁界を前記検出コイルで検出する渦電流検出センサにおいて、
前記検出コイルの複素インピーダンスと前記参照コイルの複素インピーダンスの少なくも一方を測定するインピーダンス測定手段と、
前記インピーダンス測定手段により測定された前記検出コイルの複素インピーダンスと前記参照コイルの複素インピーダンスの少なくも一方を用いて前記磁界の検出出力の校正をする校正手段を備えた渦電流検出センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−247631(P2011−247631A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118341(P2010−118341)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】