説明

温室用吸湿式加温機

【課題】既存の温風暖房装置に除湿装置を組み付けて手狭な設置面積の場所にでも簡単に設置できる安価な温室用吸湿式加温機を提供する。
【解決手段】温室用吸湿式加温機1の加温機2は本体缶体6、バーナ燃焼筒4、バーナ室7、送風機付きバーナ8、バーナ室7と合流煙室9の間に配設された複数の熱風パイプ10、合流煙室9と排煙室11の間に配設された排煙パイプ12、排煙室11の煙突13からなる。他方の吸湿装置3は貯留タンク17の除湿剤を供給パイプ18で供給される水分吸着器19、加温機2のバーナ燃焼筒4に外嵌配置されて加熱によって、空気中の水分を吸着した除湿剤を蒸気と除湿剤に分離する気液分離部としての螺旋状パイプ5、除湿剤と共に貯留タンク17に戻された蒸気を取り込んで水にし、温室外に排出する分離水蒸気排出パイプ24を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室用吸湿式加温機に係わり、更に詳しくはハウス内に設置した加温機の機能を一部兼用して湿度吸収装置を組み付けて形成された温室用吸湿式加温機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生物の生育について大きく作用するのは、光、温度、そして湿度である。湿度は相対湿度のことをいう場合が一般的で、この相対湿度(以下、単に湿度という)が高いときは、僅かの温度の低下で周囲の物に露点が結ばれる。
【0003】
露点が果実の表面に付着すると裂果現象を招いて良好な果実の収量が減少する。また、露点が葉面や茎葉に付着すると病斑が発生しやすくなる。病斑は、その形状や色が植物が罹った病気によっても異なるが、いずれにしても植物が病気に罹ったことを示す警戒信号である。
【0004】
このような不具合を解消するために、加温ハウス等の室内空気の暖房と除湿とを、加熱再生可能な吸着液を用い、同時に、又は独立に制御して実行できる除湿式温風暖房装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開昭62−182534号公報(請求の範囲、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の除湿式温風暖房装置は、除湿部と温風暖房部とが一体化されて不可分であり、既存の温風暖房装置に独立の除湿を組み付けて構成されたものではない。
【0006】
このため、温風暖房だけでよいという温室に設置すると除湿部が余剰の設備となって設置面積を狭めるだけでなく、高価な除湿部の構成が無駄な投資となって不経済である。
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、既存の温風暖房装置に除湿装置を組み付けて手狭な設置面積の場所にでも簡単に設置できる安価な温室用吸湿式加温機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温室用吸湿式加温機は、単体で使用可能な加温機と、単体で使用可能な吸湿装置と、から成り、上記加温機の燃焼発熱部に上記吸湿装置の気液分離部を係合させ上記加温機と上記吸湿装置の機能を一部兼用化させて一体に組み付けて成るように構成される。
【0008】
この温室用吸湿式加温機において、上記加温機は、少なくとも本体缶体と、該本体缶体内に配設された上記燃焼発熱部となるバーナ燃焼筒と、該バーナ燃焼筒が配置されたバーナ室と、該バーナ室に一端が開口し他端が合流煙室に開口し上記本体缶体の長手方向に平行して延在する複数の熱風パイプと、該複数の熱風パイプの外側に平行に配置され一端が上記合流煙室に開口し他端が排煙室に開口する複数の排煙パイプと、を備え、上記吸湿装置は、少なくとも上記加温機の上記バーナ燃焼筒に外嵌可能な円筒状に形成され上記気液分離部となる螺旋状パイプと、水分を吸収放出可能な除湿剤を備えた貯留タンクと、該貯留タンクの除湿剤を供給パイプを介して供給される水分吸着器と、該水分吸着器にて空気中の水分を吸着した上記除湿剤を上記螺旋状パイプに送出する第1の送り戻しパイプと、該第1の送り戻しパイプに配設された流量調節バルブと、上記螺旋状パイプによる加熱により水分と除湿剤に分離された気液分離体を上記貯留タンクに送出する第2の送り戻しパイプと、上記貯留タンクの上部に開口し外部延長部が温室から外部に延在して端部が開口する分離水蒸気排出パイプと、を有するように構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、単体で使用可能な加温機と単体で使用可能な吸湿装置とを一体に組み付けて温室用吸湿式加温機とするので、手狭な設置面積の場所にでも簡単に設置できる安価な温室用吸湿式加温機を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1(a) は、本発明の一実施の形態における温室用吸湿式加温機を一部透視的に示す側面図であり、同図(b) は、その加温機部分の吸湿装置取り付け前の正面図、同図(c) は背面図である。
【0012】
図1(a),(b),(c) に示すように、本例の温室用吸湿式加温機1は、単体でも使用可能な加温機2と、これも単体で使用可能な吸湿装置3とを用い、加温機2の燃焼発熱部であるバーナ燃焼筒4に吸湿装置3の気液分離部である螺旋状パイプ5を外嵌係合させて、全体を一体に組み付けて構成される。
【0013】
この温室用吸湿式加温機1における加温機2は、少なくとも、本体缶体6と、この本体缶体6内に配設された上述した燃焼発熱部としてのバーナ燃焼筒4と、このバーナ燃焼筒4が配置されたバーナ室7を備えている。バーナ燃焼筒4には、送風機付きバーナ8のバーナ口が配置されている。
【0014】
また、加温機2は、少なくとも、更に、上記のバーナ室7に一端が開口し、他端が合流煙室9に開口し本体缶体6の長手方向に平行して延在する複数の熱風パイプ10を備えている。
【0015】
また、加温機2は、少なくとも、更に、上記複数の熱風パイプ10の外側に平行に配置され一端が合流煙室9に開口し他端が排煙室11に開口する複数の排煙パイプ12を備えている。上記の排煙室11には、煙突13が取り付けられおり、この煙突13の先端は、特には図示しないが、温室の外に出るように配置されている。
【0016】
また、加温機2のバーナ室7がある前面14には、扉15が、ヒンジ16に支持されて開閉可能に設けられている。
この加温機2は、バーナ燃焼筒4で送風機付きバーナ8が燃焼して熱風を巻き起こす。この熱風は、8本の熱風パイプ10を通って合流煙室9に噴き出し、合流煙室9から16本の排煙パイプ12に分散して流れ込み、排煙パイプ12を介し放熱と輻射で本体缶体6の外殻を熱しながら排煙室11に集合し、煙突13から温室の外に排出される。
【0017】
温室は、排煙パイプ12を通る熱風によって熱せられた本体缶体6の外殻から放射される熱によって暖められる。
温室用吸湿式加温機1における他方の吸湿装置3は、少なくとも加温機2のバーナ燃焼筒4に外嵌可能な円筒状に形成され気液分離部としての上述した螺旋状パイプ5と、水分を吸収放出可能な除湿剤を備えた貯留タンク17と、この貯留タンク17の除湿剤を、矢印aで示すように供給パイプ18を介して供給される水分吸着器19を備えている。
【0018】
そして、吸湿装置3は、少なくとも更に、上記の水分吸着器19により空気中の水分を吸着した除湿剤を、矢印bで示すように螺旋状パイプ5に送出する第1の送り戻しパイプ21と、この第1の送り戻しパイプ21に配設された流量調節バルブ22と、螺旋状パイプ5において加熱により吸着した水分と元の除湿剤に分離された気液分離体を貯留タンク17に送出する第2の送り戻しパイプ23を備えている。
【0019】
上記貯留タンク17の上部には、分離水蒸気排出パイプ24の蒸気取り入れ口が開口しており、分離水蒸気排出パイプ24の外部延長部は、特には図示しないが、温室から外部に延在して配置されている。
【0020】
本例において、貯留タンク17に貯留される除湿剤には、トリエチレングリコールが用いられる。このトリエチレングリコールは、不図示のポンプによって貯留タンク17から水分吸着器19に送り込まれ、特には図示しないが、水分吸着器19の垂れ幕式流路に注ぎ込まれ、垂れ幕流路に沿って落下しながら接触する空気中の水分を吸着する。
【0021】
水分を吸着したトリエチレングリコールは、第1の送り戻しパイプ21から下方に送り戻され、流量調節バルブ22により、バーナ燃焼筒4の温度に応じて流量を調節されながら螺旋状パイプ5に送り込まれる。
【0022】
螺旋状パイプを流れながらバーナ燃焼筒4からの加熱によって、100℃以上に熱せられたトリエチレングリコールは、水分吸着器19で吸着してきた水分を蒸気として放出する。この放出された蒸気とともにトリエチレングリコールは第2の送り戻しパイプ23を通って貯留タンク17に落下して貯留される。
【0023】
一方の水蒸気は、分離水蒸気排出パイプ24の蒸気取り入れ口に取り込まれ、外部延長部が下方向に傾斜して温室外部まで延在して配設された分離水蒸気排出パイプ24内で熱交換により蒸気から冷えて水となり、温室外に排出される。
【0024】
このように、本発明の温室用吸湿式加温機は、除湿剤の再生を、従来の加温機の機能を損なわないように加温機のバーナ燃焼筒を利用し、必要に応じて温室ハウスの加温と除湿を行うものである。
【0025】
また、このように、加温機と除湿装置の機能を一部兼用とすることにより、据付面積が減少し、その分、作付け面積が広くなると共に、従来、加温機と除湿装置の個別に行ってきた取り扱いが一つに単純化されるので、作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a) は本発明の一実施の形態における温室用吸湿式加温機を一部透視的に示す側面図、(b) はその加温機部分の吸湿装置取り付け前の正面図、(c) は背面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 温室用吸湿式加温機
2 加温機
3 吸湿装置
4 バーナ燃焼筒
5 螺旋状パイプ
6 本体缶体
7 バーナ室
8 送風機付きバーナ
9 合流煙室
10 熱風パイプ
11 排煙室
12 排煙パイプ
13 煙突
14 前面
15 扉
16 ヒンジ
17 貯留タンク
18 供給パイプ
19 水分吸着器
21 第1の送り戻しパイプ
22 流量調節バルブ
23 第2の送り戻しパイプ
24 分離水蒸気排出パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単体で使用可能な加温機と、
単体で使用可能な吸湿装置と、
から成り、
前記加温機の燃焼発熱部に前記吸湿装置の気液分離部を係合させ前記加温機と前記吸湿装置の機能を一部兼用化させて一体に組み付けて成る、
ことを特徴とする温室用吸湿式加温機。
【請求項2】
前記加温機は、少なくとも
本体缶体と、
該本体缶体内に配設された前記燃焼発熱部となるバーナ燃焼筒と、
該バーナ燃焼筒が配置されたバーナ室と、
該バーナ室に一端が開口し他端が合流煙室に開口し前記本体缶体の長手方向に平行して延在する複数の熱風パイプと、
該複数の熱風パイプの外側に平行に配置され一端が前記合流煙室に開口し他端が排煙室に開口する複数の排煙パイプと、
を備え、
前記吸湿装置は、少なくとも
前記加温機の前記バーナ燃焼筒に外嵌可能な円筒状に形成され前記気液分離部となる螺旋状パイプと、
水分を吸収放出可能な除湿剤を備えた貯留タンクと、
該貯留タンクの除湿剤を供給パイプを介して供給される水分吸着器と、
該水分吸着器にて空気中の水分を吸着した前記除湿剤を前記螺旋状パイプに送出する第1の送り戻しパイプと、
該第1の送り戻しパイプに配設された流量調節バルブと、
前記螺旋状パイプによる加熱によって水分と除湿剤に分離された気液分離体を前記貯留タンクに送出する第2の送り戻しパイプと、
前記貯留タンクの上部に開口し外部延長部が温室から外部に延在して端部が開口する分離水蒸気排出パイプと、
を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の温室用吸湿式加温機。

【図1】
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【公開番号】特開2008−259459(P2008−259459A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105347(P2007−105347)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000111292)ネポン株式会社 (24)
【Fターム(参考)】