説明

温度制御機構及び電気オーブン

【課題】本発明は複数の焼成炉のON、OFF制御による最大消費電力を削減することを実現可能とした多段式電気オーブンにおける焼成炉の温度制御機構を提供することを目的とするものである。
【解決手段】複数の焼成炉2と、この焼成炉2に配置された電熱ヒーター10とこの電熱ヒーター10に設置された温度センサー11と、温度センサー11により検知された温度情報に基づいてON、OFF通電温度調整可能とされた操作部7と、各焼成炉2におけるON、OFFが互いに重ならないように制御可能とされた制御部13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度制御機構及び電気オーブンに関する。詳しくは、菓子、あるいはパン等の焼成炉の温度制御機構及びこうした温度制御機構を有する電気オーブンに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多段式の電気オーブンとして、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
具体的には、特許文献1に記載された電気オーブンは、図6に示すように、焼成室101内に設けてある複数の焼成部と、各焼成部に対応して設けてある電熱ヒーター110、120、130、140、150と、各焼成部に対応して設けてある各温度センサー111、121、131、141と、この各温度センサー111、121、131、141、が検知する温度情報を処理することにより、各焼成部の温度調整を行う温度調整器102を備えている。
【0003】
このような構成の電気オーブンでは、通常は各温度センサーで測定された温度に基づいて電熱ヒーターの通電時間のON、OFF制御による温度調整が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−175338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した電熱ヒーターの通電時間のON、OFF制御による温度調整の場合には、各電熱ヒーターの全てがON、あるいは各電熱ヒーターの全てがOFFのタイミングとなる。このために、各電熱ヒーターの全てがONの時に瞬間最大消費電力となる。
【0006】
例えば、2段式の電気オーブンで1段当たりの最大消費電力5kwでオーブン全体での消費電力が10kwとし、2段の各火力を中火(最大温度の70%)とした場合には、電熱ヒーターの通電時間は0.7秒の0N、0.3秒のOFFとなる。
【0007】
この場合の1段当たりの消費電力は、5kw×0.7=3.5kwであるので、2段の総合計量の瞬間最大消費電力は7.0kwとなる。
【0008】
このようにON、OFF制御による温度調整の場合には、各電熱ヒーターの全てがON、あるいは各電熱ヒーターの全てがOFFの切り替えとなる。
【0009】
ここで、災害等による電力供給不足による節電が社会全体に要請されており、特に電力需要時の瞬間最大消費電力を低く抑えることが急務となる。しかし、常に各電熱ヒーターの全てがONの時の消費電力の合計量となるON、OFF制御による温度調整の場合には、瞬間最大消費電力を低く抑えることができない。
【0010】
また、瞬間最大消費電力が大きくなることで定格電力が大きくなりその結果、基本電力料金が高くなりコスト高となる。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、複数の焼成炉のON、OFF制御による最大消費電力を削減することを実現可能とした温度制御機構及びこうした温度制御機構を有する電気オーブンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る温度制御機構は、焼成炉内の温度情報に基づいて、同焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電をON状態、若しくは、OFF状態とする通電手段と、一の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がON状態である場合には、他の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がOFF状態となる様に、前記通電手段を制御する制御手段とを備える。
【0013】
ここで、焼成炉内の温度情報に基づいて、焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電をON状態、若しくは、OFF状態とする通電手段と、一の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がON状態である場合には、他の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がOFF状態となる様に、通電手段を制御する制御手段とによって、各焼成炉の電熱ヒーターへの通電が互いに重ならないように制御されることで瞬間最大消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0014】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る電気オーブンは、複数の焼成炉と、前記焼成炉内に配置された電熱ヒーターと前記焼成炉内に設置された温度センサーと、
前記温度センターで検知された前記焼成炉内の温度情報に基づいて、前記電熱ヒーターへの通電をON状態、若しくは、OFF状態とする通電手段と、一の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がON状態である場合には、他の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がOFF状態となる様に、前記通電手段を制御する制御手段とを備える。
【0015】
ここで、焼成炉内に配置された電熱ヒーターと前記焼成炉内に設置された温度センサーと、温度センターで検知された前記焼成炉内の温度情報に基づいて、電熱ヒーターへの通電をON状態、若しくは、OFF状態とする通電手段と、一の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がON状態である場合には、他の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がOFF状態となる様に、通電手段を制御する制御手段とによって、、各焼成炉の電熱ヒーターへの通電が互いに重ならないように制御されることで瞬間最大消費電力を低く抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の温度制御機構によれば、複数の焼成炉のON、OFF温度制御における瞬間最大消費電力を抑制することが可能となる。
また、本発明の電気オーブンによれば、複数の焼成炉のON、OFF温度制御における瞬間最大消費電力を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した電気オーブンの一例を説明するための正面模式図である。
【図2】本発明を適用した電気オーブンの内部機構の一例を説明するための模式図である。
【図3】本発明を適用した温度制御機構のブロック回路の一例を説明するための模式図である。
【図4】本発明を適用した温度制御機構による消費電力の一例を説明するためのグラフ図である。
【図5】本発明を適用した温度制御機構による消費電力の他の例を説明するためのグラフ図である。
【図6】従来の電気オーブンにおける焼成炉の温度制御機構の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0019】
図1は本発明を適用した電気オーブンの一例を説明するための正面模式図、図2は本発明を適用した電気オーブンの内部機構の一例を説明するための模式図、図3は本発明を適用した焼成炉の温度制御機構のブロック回路の一例を説明するための模式図である。
【0020】
ここで示す電気オーブン1は、縦列された2個の焼成炉2と、それぞれの焼成炉2の開口部3に装着された開閉扉4とから構成されている。
【0021】
また、開閉扉4には取っ手部5及び菓子などの焼成具合を観察する覗き窓6が設けられ、開閉扉4で開口部3を開閉できる構成とされている。
【0022】
また、開閉扉4と並列状に操作部7が配置され、この操作部7で焼成炉2内の温度制御や焼成時間などの操作が行われる構成とされている。
【0023】
また、焼成炉2の上下部には上火用加熱部8及び下火用加熱部9が配置されるものであり、この上火用加熱部8及び下火用加熱部9はニクロム線による電熱ヒーターで形成されている。
【0024】
更に、焼成炉2内には温度センサー(図示せず。)が設けられ、この温度センサーで焼成炉2内の温度を検知して電熱ヒーターのON、OFF制御による温度調整を行う構成とされている。
【0025】
また、図3に示すように、それぞれの焼成炉2に電熱ヒーター10と温度センサー11が配置されると共に操作部7に接続されている。
【0026】
ここで、操作部7の表示パネルに温度センサー11による焼成炉2内の温度が表示され、この温度表示に基づいて設定温度を維持するためのタイマー、あるいは、通常荒火(火力最大)、軟火(火力が中)、極軟(火力が弱)の火力調整用スイッチが設けられている。
【0027】
また、操作部12は制御部13に接続され、この操作部7でこのCPU回路部13で各操作部7からのON、OFF制御の情報が入力されている。
【0028】
ここで、制御部13はCPU回路より構成され、各操作部7からのON、OFF制御の電気情報に基づいて各焼成炉2の電熱ヒーター10への通電開始時間が重ならないように、制御されている。
【0029】
具体的には、各焼成炉2を温度調整をON、OFF制御により行う場合に、制御部13のCPU回路で1段目の焼成炉2の電熱ヒーター10がONとされたときは、2段目の焼成炉2の電熱ヒーター10がOFFとなるように制御された構成とされている。
【0030】
ここで、図4(図4(A)は本発明の比較例としてON、OFF制御を同時に行う場合の最大消費電力を説明するためのグラフ図を示し、図4(B)は本発明を適用した温度制御機構の一例を説明するためのグラフ図を示す。)に示すように、例えば、2段式の電気オーブンでオーブン全体の最大消費電力を10kwとした場合には、1段当たりの最大消費電力が5kwとなる。
【0031】
このような構成の電気オーブンでは、通常荒火(火力最大)が100%、軟火(火力が中)が50%、極軟(火力が弱)が30%の火力調整となっている。
【0032】
ここで、各段の火力調整を軟火(50%)とする場合に、0.5秒のON、OFF制御を繰り返す。この2段の焼成炉でのON、OFF通電を同時に繰り返した際の瞬間最大消費電力は図4(A)で示すように、2段の焼成炉で各焼成炉の最大消費電力の5kwの0.5秒間通電することで、
5kw×50%×2=5kwとなる。
【0033】
それに対して、図4(B)に示すように、本発明を適用した温度制御機構の制御部で2段のON、あるいはOFFの通電が重ならないように開始した場合の瞬間最大消費電力は、焼成炉の最大消費電力の5kwの0.5秒間通電することで、
5kw×50%×1=2.5kwとなる。
【0034】
このように、2段の焼成炉でのON、OFF通電を通電が重ならないような制御を行った場合には、ON、OFF通電を同時に行った場合と比べて瞬間最大消費電力は半分の2.5kwとなる。
【0035】
また、図5(図5(A)は本発明の比較例としてON、OFF制御を同時に行う場合の最大消費電力を説明するためのグラフ図を示し、図5(B)は本発明を適用した温度制御機構の他の例を説明するためのグラフ図を示す。)に、各段の火力調整を極軟(30%)とした場合の瞬間最大消費電力のグラフ図を示す。
【0036】
ここで、各段の火力調整を極軟(30%)とする場合には、0.3秒のON、0.7秒のOFF制御を繰り返す。この2段の焼成炉でのON、OFF通電を同時に繰り返した際の瞬間最大消費電力は、各焼成炉の最大消費電力の5kwの0.3秒間通電することで、
5kw×30%×2=3kwとなる。
【0037】
それに対して、図5(B)に示すように、本発明を適用した温度制御機構の制御部で2段のON、あるいはOFFの通電が重ならないように開始した場合の瞬間最大消費電力は、焼成炉の最大消費電力の5kwの0.3秒間通電することで、
5kw×30%×1=1.5kwとなる。
【0038】
このように、2段の焼成炉でのON、OFF通電を通電が重ならないような制御を行った場合には、ON、OFF通電を同時に行った場合と比べて瞬間最大消費電力は半分の1.5kwとなる。
【0039】
但し、2段の焼成炉を荒火(100%)とした場合には、あるいは荒火と軟火、極軟との組み合わせをした場合には、元々の定格消費電力10kwよりも消費電力が大きくなるために、必ず同時に通電されないような構成とする。
【0040】
また、本発明では焼成開始時間を設定した場合には、その設定時間の数時間前より設定温度までのアイドル(予熱)が開始される。
【0041】
このアイドルではCPU回路部で軟火、あるいは極軟での火力調整を行うことで最大消費電力を最小限に抑えた状態で設定温度まで上昇させる。
【0042】
ここで、焼成炉内が設定温度に達した場合には通電がOFFとなるが、温度センサーで焼成炉内の温度が例えば3℃下がったことが検知されると自動的に通電がONされ、設定温度まで上昇させて常に焼成炉内の温度を維持させるON、OFF制御が行われる。
【0043】
このようにして設定開始時間までに時間をかけて設定温度としておくことで、設定開始時より菓子等の焼成を行う場合には、軟火、あるいは極軟による火力調整で焼成温度を充分に維持することが可能となる。
【0044】
なお、本実施例では、焼成炉の火力調整を軟火(50%)とした場合の温度制御機構を詳述するものであるが、必ずしも火力調整を軟火とした場合のON、OFF制御をする必要性はない。
【0045】
また、本実施例では、焼成炉の火力調整を極軟(30%)とした場合の温度制御機構を詳述するものであるが、必ずしも火力調整を極軟とした場合のON、OFF制御をする必要性はない。
【0046】
このように、2段の焼成炉の瞬間最大消費電力が重ならないように、焼成炉の火力調整は2段の焼成炉の火力調整割合(ON、OFF通電割合)の合計が100%以下であればいかなる数値であっても構わない。
【0047】
以上の構成より成る本発明では、複数の焼成炉を有する電気オーブンのON、OFF温度制御を2段のON、あるいはOFFの通電が重ならないように開始することで瞬間最大消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0048】
また、焼成開始時間を設定し、その数時間前より設定温度までのアイドル(予熱)がON、OFF制御で行われることで、瞬間最大消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0049】
また、設定温度までのアイドル(予熱)がON、OFF制御で行われることで、焼成開始時よりON、OFF制御による温度調整が可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 電気オーブン
2 焼成炉
3 開口部
4 開閉扉
5 取っ手部
6 覗き窓
7 操作部
8 上火用加熱部
9 下火用加熱部
10 電熱ヒーター
11 温度センサー
13 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成炉内の温度情報に基づいて、同焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電をON状態、若しくは、OFF状態とする通電手段と、
一の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がON状態である場合には、他の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がOFF状態となる様に、前記通電手段を制御する制御手段とを備える
温度制御機構。
【請求項2】
複数の焼成炉と、
前記焼成炉内に配置された電熱ヒーターと
前記焼成炉内に設置された温度センサーと、
前記温度センターで検知された前記焼成炉内の温度情報に基づいて、前記電熱ヒーターへの通電をON状態、若しくは、OFF状態とする通電手段と、
一の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がON状態である場合には、他の焼成炉内に配置された電熱ヒーターへの通電がOFF状態となる様に、前記通電手段を制御する制御手段とを備える
電気オーブン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−80615(P2013−80615A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219937(P2011−219937)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(595099225)株式会社七洋製作所 (10)
【Fターム(参考)】