説明

温度制御装置、温度制御方法及び温度制御システム

【課題】冷却手段又は加熱手段に大きな冷却能力又は加熱能力を必要とせず、被制御装置の温度を変更するときに高速かつ高精度に温度制御することができる温度制御装置を提供する。
【解決手段】被制御装置12と、第1及び第2の供給部30、40を含む供給装置20との間に設けられ、流体の温度を制御する温度制御装置50であって、流体を貯蔵する貯蔵部51と、被制御装置12を第1及び第2の供給部30、40の一方と接続するとともに貯蔵部51を第1及び第2の供給部30、40の他方と接続するか、又は、被制御装置12と貯蔵部51と接続するように、接続を切り替える接続切替部55とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度が制御される被制御装置に供給される流体の温度を制御する温度制御装置、温度制御方法及び温度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの製造工程では、半導体ウェハを、例えば−60℃から30℃などの低温から高温まで幅広い温度に制御する必要がある。
【0003】
通常、このような温度制御は、内部に冷却液を流通させる冷却液流路が形成された保持器で半導体ウェハを保持し、冷却液流路に冷凍機を用いて冷却した冷却液を流すことにより、保持器自体の温度を制御している。このような装置として、チャックに保持された半導体ウェハの温度を低下させることができる温度制御装置の例が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
従来の温度制御装置は、チャックに設けられた冷却液流路に流すための冷却液を蓄えるための低温タンクと、この低温タンク内の冷却液をチャックの冷却液流路へ送り出すためのポンプを備えている。また、従来の温度制御装置は、低温タンク内の冷却液と内部を流れる冷媒との間で熱交換を行うための熱交換器と、熱交換器内に冷媒を流すための冷凍機と、チャックに設けられた測温抵抗体と、タンク内の冷却液を加熱するためのヒータとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−148852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した温度制御装置には、次のような問題がある。
【0007】
例えば−60〜30℃のような、低温から高温までの幅広い温度範囲において、被制御装置を冷却・昇温する際に、大きな冷却速度又は大きな昇温速度が必要とされることがある。冷却速度を増加させるためには、温度制御装置に大きな冷凍能力を有する冷凍機等の冷却手段を備えればよく、昇温速度を増加させるためには、温度制御装置に大きな加熱能力を有するヒータ等の加熱手段を備えればよい。
【0008】
しかし、温度制御装置に大きな冷凍能力を有する冷却手段や大きな加熱能力を有する加熱手段を備える場合には、装置コストが増大したり、装置の設置面積が増大したりするという問題がある。また、温度を一定に制御している間は、それほど大きな冷凍能力・加熱能力を必要としないことが多く、冷却・昇温のためだけに冷却手段及び加熱手段の能力を大きくしなくてはならないという無駄が発生する。
【0009】
更に、温度制御装置を設置する場所がたとえばクリーンルーム内や真空装置内などの空冷式や水冷式の冷凍機を使用することができない環境や、設置面積に制約がある場合には、被制御装置の近くに温度制御装置を設置できないことがある。このような場合、温度制御装置を被制御装置から離れた場所に設置することになるため温度制御装置から被制御装置まで流体が流れる流路が長くなり、被制御装置の温度を変更するときに高速に温度制御することができず、あるいは、高精度で温度制御することができない。
【0010】
また、上記した問題は、冷却手段として冷凍機により冷却する場合に限られず、冷却水又は送風機により冷却する場合にも共通する課題である。また、被制御装置を常温よりも低い温度に冷却する場合に限られず、常温よりも高い温度に加熱する場合にも共通する課題である。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、冷却手段又は加熱手段に大きな冷却能力又は加熱能力を必要とせず、被制御装置の温度を変更するときに高速かつ高精度に温度制御することができる温度制御装置及び温度制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる手段を講じたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明は、供給された流体により温度が制御される被制御装置と、温度調節された流体を前記被制御装置へ供給する第1の供給部及び第2の供給部を含む供給装置との間に設けられ、前記被制御装置に供給される流体の温度を制御する温度制御装置であって、流体を貯蔵する貯蔵部と、前記被制御装置を前記第1の供給部及び前記第2の供給部の一方と接続するとともに前記貯蔵部を前記第1の供給部及び前記第2の供給部の他方と接続するか、又は、前記被制御装置を前記貯蔵部と接続するように、接続を切り替える接続切替部と、を有する、温度制御装置である。
【0014】
また、本発明は、上述の温度制御装置において、前記接続切替部の動作と前記第1の調節部の動作と前記第2の調節部の動作とを制御する制御部を有し、前記制御部は、前記被制御装置に供給される流体の温度を第1の温度から第2の温度に変更する際に、前記接続切替部により前記被制御装置を前記第1の供給部と接続した状態で前記第1の調節部により前記被制御装置に供給される流体の温度が前記第1の温度になるように制御しているときに、前記接続切替部により前記貯蔵部を前記第2の供給部と接続するとともに前記第2の調節部により前記貯蔵部に貯蔵される流体の温度が予備温度になるように制御し、前記接続切替部により前記被制御装置を前記貯蔵部を介して前記第2の供給部と接続し、前記貯蔵部に貯蔵されている流体が前記被制御装置に供給されるように制御し、次に、前記接続切替部により前記被制御装置を前記貯蔵部を介さずに前記第2の供給部と接続するとともに前記第1の調節部により前記被制御装置に供給される流体の温度が前記第2の温度になるように制御するものである。
【0015】
また、本発明は、供給された流体により温度が制御される被制御装置と、温度調節された流体を前記被制御装置へ供給する第1の供給部及び第2の供給部を含む供給装置との間に設けられ、前記被制御装置に供給される流体の温度を制御する温度制御装置における温度制御方法であって、前記被制御装置に供給される流体の温度を第1の温度から第2の温度に変更する際に、接続切替部により前記被制御装置を前記第1の供給部と接続した状態で第1の調節部により前記被制御装置に供給される流体の温度が前記第1の温度になるように制御しているときに、流体を貯蔵する貯蔵部を前記接続切替部により前記第2の供給部と接続するとともに第2の調節部により前記貯蔵部に貯蔵される流体の温度が予備温度になるように制御し、前記接続切替部により前記被制御装置を前記貯蔵部を介して前記第2の供給部と接続し、前記貯蔵部に貯蔵されている流体が前記被制御装置に供給されるように制御し、次に、前記接続切替部により前記被制御装置を前記貯蔵部を介さずに前記第2の供給部と接続するとともに前記第1の調節部により前記被制御装置に供給される流体の温度が前記第2の温度になるように制御する。
【0016】
また、本発明は、供給された流体により温度が制御される被制御装置と、温度調節された流体を前記被制御装置へ供給する第1の供給部及び第2の供給部を含む供給装置と、前記被制御装置と前記供給装置との間に設けられ、前記被制御装置に供給される流体の温度を制御する温度制御装置と、を備え、当該温度制御装置は、流体を貯蔵する貯蔵部と、前記被制御装置を前記第1の供給部及び前記第2の供給部の一方と接続するとともに前記貯蔵部を前記第1の供給部及び前記第2の供給部の他方と接続するか、又は、前記被制御装置を前記貯蔵部と接続するように、接続を切り替える接続切替部と、を有する、温度制御システムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷却手段又は加熱手段に大きな冷却能力又は加熱能力を必要とせず、被制御装置の温度を変更するときに高速かつ高精度に温度制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態に係る温度制御装置を含む温度制御システムの構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る温度制御方法により被制御装置の温度制御を行う際の、温度制御装置の状態を示す図(その1)である。
【図3】第1の供給部、第2の供給部、タンク、設定温度、被制御装置の温度の時間変化を示すグラフ(その1)である。
【図4】第1の実施の形態に係る温度制御方法により被制御装置の温度制御を行う際の、温度制御装置の状態を示す図(その2)である。
【図5】第1の供給部、第2の供給部、タンク、設定温度、被制御装置の温度の時間変化を示すグラフ(その2)である。
【図6】第1の実施の形態に係る温度制御方法により被制御装置の温度制御を行う際の、温度制御装置の状態を示す図(その3)である。
【図7】第1の供給部、第2の供給部、タンク、設定温度、被制御装置の温度の時間変化を示すグラフ(その3)である。
【図8】第1の実施の形態に係る温度制御方法により被制御装置の温度制御を行う際の、温度制御装置の状態を示す図(その4)である。
【図9】第1の供給部、第2の供給部、タンク、設定温度、被制御装置の温度の時間変化を示すグラフ(その4)である。
【図10】第1の実施の形態に係る温度制御方法により被制御装置の温度制御を行う際の、温度制御装置の状態を示す図(その5)である。
【図11】第1の供給部、第2の供給部、タンク、設定温度、被制御装置の温度の時間変化を示すグラフ(その5)である。
【図12】第1の供給部、第2の供給部、タンク、設定温度、被制御装置の温度の時間変化を示すグラフ(その6)である。
【図13】第1の供給部、第2の供給部、タンク、設定温度、被制御装置の温度の時間変化を示すグラフ(その7)である。
【図14】第1の供給部、第2の供給部、タンク、設定温度、被制御装置の温度の時間変化を示すグラフ(その8)である。
【図15】第2の実施の形態に係る温度制御装置を含む温度制御システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
図1を参照し、第1の実施の形態に係る温度制御装置を含む温度制御システムについて説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る温度制御装置50を含む温度制御システム10の構成を示す図である。
【0021】
温度制御システム10は、被制御装置12と、供給装置20と、温度制御装置50と、制御部60とを有する。被制御装置12は、流体が流れることによって温度が制御される。供給装置20は、流体を温度調節して被制御装置12へ供給する第1の供給部30及び第2の供給部40を含む。温度制御装置50は、被制御装置12と供給装置20との間に設けられ、被制御装置12を第1の供給部30又は第2の供給部40と切り替えて接続するとともに被制御装置12を流れる流体の温度を制御する。制御部60は、供給装置20の動作と、温度制御装置50の動作を制御する。
【0022】
なお、制御部60は、温度制御装置50の内部に設けられていてもよい。これにより、温度制御装置50を設けたときの、被制御装置12と供給装置20と温度制御装置50とを含めた温度制御システム10全体の温度制御を、温度制御装置50単独で制御することができる。以下では、制御部60が、温度制御装置50に含まれている例について説明する。
【0023】
本実施の形態では、被制御装置12として、半導体ウェハを保持し、保持した半導体ウェハに、例えば低温領域で電気的な検査を行う半導体検査装置を例に説明する。
【0024】
被制御装置12は、半導体ウェハWを保持するチャック13を有する。チャック13の内部には、流体が流れる流路14が形成されている。流路14の入口15には、温度制御装置50を介して供給装置20の供給口が接続されている。供給装置20の供給口から供給された流体は、温度制御装置50を介して、被制御装置12の流路14の入口15に供給される。被制御装置12の流路14の出口16には、温度制御装置50を介して供給装置20の回収口が接続されている。被制御装置12の流路14の出口16から排出された流体は、温度制御装置50を介して供給装置20の回収口へ戻される。
【0025】
供給装置20は、流体を温度調節して被制御装置12へ供給する第1の供給部30及び第2の供給部40を含む。
【0026】
第1の供給部30は、ポンプ31、冷凍機32、ヒータ33、温度センサ34を有する。ポンプ31の吸入側は、被制御装置12の流路14の出口16と温度制御装置50を介して接続される回収口35と、帰還流路36を介して接続されている。ポンプ31の排出側は、被制御装置12の流路14の入口15と温度制御装置50を介して接続された供給口37と、供給流路38を介して接続されている。冷凍機32及びヒータ33は、帰還流路36上であって、回収口35とポンプ31との間に設けられている。図1に示す例では、冷凍機32及びヒータ33は、回収口35とポンプ31との間に、流体の流れる方向に冷凍機32、ヒータ33の順に設けられている。また、温度センサ34は、ヒータ33により温度調節された流体の温度を測定するためのものであり、供給流路38に設けられている。
【0027】
第1の供給部30では、回収口35から回収され帰還流路36を流れる流体は、冷凍機32により冷却される。そして、冷却された流体は、必要に応じてヒータ33により温度調節される。ヒータ33により温度調節された流体は、ポンプ31の吸入側から吸入された後、ポンプ31の排出側から排出される。ポンプ31の排出側から排出された流体は、供給流路38を流れた後、供給口37から供給される。
【0028】
第2の供給部40は、ポンプ41、冷凍機42、ヒータ43、温度センサ44を有する。ポンプ41の吸入側は、被制御装置12の流路14の出口16と温度制御装置50を介して接続される回収口45と、帰還流路46を介して接続されている。ポンプ41の排出側は、被制御装置12の流路14の入口15と温度制御装置50を介して接続された供給口47と、供給流路48を介して接続されている。冷凍機42及びヒータ43は、帰還流路46上であって、回収口45とポンプ41との間に設けられている。図1に示す例では、冷凍機42及びヒータ43は、回収口45とポンプ41との間に、流体の流れる方向に冷凍機42、ヒータ43の順に設けられている。また、温度センサ44は、ヒータ43により温度調節された流体の温度を測定するためのものであり、供給流路48に設けられている。
【0029】
第2の供給部40でも、第1の供給部30と同様に、回収口45から回収され帰還流路46を流れる流体は、冷凍機42により冷却される。そして、冷却された流体は、必要に応じてヒータ43により温度調節される。ヒータ43により温度調節された流体は、ポンプ41の吸入側から吸入された後、ポンプ41の排出側から排出される。ポンプ41の排出側から排出された流体は、供給流路48を流れた後、供給口47から供給される。
【0030】
また、供給装置20は、リザーブタンク21を有していてもよい。リザーブタンク21は、帰還流路36、46に接続されており、必要に応じて帰還流路36、46に流体を追加補充することができる。
【0031】
なお、ヒータ33、43が独立に制御可能であるときは、冷凍機32、42は、独立して設けられてなくてもよく、同一の冷凍機を用いて帰還流路36、46を流れる流体を冷却してもよい。
【0032】
また、冷凍機及びヒータに代え、例えば工場内の冷却水又は送風機により送風された冷気により熱交換する熱交換器を有し、被制御装置から戻した流体を冷却水により冷却し、冷却された流体を供給してもよい。あるいは、冷凍機及びヒータに代え、ヒータのみを有し被制御装置から戻した流体をヒータにより加熱し、加熱された流体を供給してもよい。
【0033】
温度制御装置50は、タンク51と、ヒータ53、54と、接続切替部55と、制御部60とを有する。なお、タンク51は、本発明における貯蔵部に相当し、ヒータ53、54は、それぞれ本発明における第1の調節部、第2の調節部に相当する。
【0034】
タンク51は、流体を貯蔵する。接続切替部55は、あるタイミングでは、第1の供給部30及び第2の供給部40の一方と、被制御装置12及びタンク51の一方とを接続するとともに、第1の供給部30及び第2の供給部40の他方と、被制御装置12及びタンク51の他方とを接続する。また、接続切替部55は、他のあるタイミングでは、第1の供給部30及び第2の供給部40の一方と、被制御装置12と、タンク51とを接続する。ヒータ53は、接続切替部55から被制御装置12へ流体が流れる流路の途中に設けられており、被制御装置12へ流れる流体の温度を調節する。ヒータ54は、接続切替部55からタンク51へ流体が流れる流路の途中に設けられており、タンク51へ流れる流体の温度を調節する。
【0035】
接続切替部55は、第1の供給部30の供給口37と接続される第1の供給口側接続口G1と、第1の供給部30の回収口35と接続される第1の回収口側接続口G3とを有する。また、接続切替部55は、第2の供給部40の供給口47と接続される第2の供給口側接続口G2と、第2の供給部40の回収口45と接続される第2の回収口側接続口G4とを有する。また、接続切替部55は、被制御装置12の流路14の入口15と接続される被制御装置入口側接続口G5と、被制御装置12の流路14の出口16と接続される被制御装置出口側接続口G6とを有する。また、接続切替部55は、タンク51の入口と接続されるタンク入口側接続口G7と、タンク51の出口と接続されるタンク出口側接続口G8とを有する。
【0036】
第1の供給口側接続口G1は、供給流路R1により被制御装置入口側接続口G5と接続されている。第2の供給口側接続口G2は、供給流路R1の途中の位置P1で供給流路R1に合流する供給流路R2により、被制御装置入口側接続口G5と接続されている。被制御装置出口側接続口G6は、帰還流路R3により、第1の回収口側接続口G3と接続されている。被制御装置出口側接続口G6は、帰還流路R3の途中の位置P2で帰還流路R3と分岐する帰還流路R4により、第2の回収口接続口G4と接続されている。
【0037】
第1の供給口側接続口G1は、供給流路R1の途中の位置P3で供給流路R1から分岐する供給流路R5によりタンク入口側接続口G7と接続されている。第2の供給口側接続口G2は、供給流路R2の途中の位置P4で供給流路R2から分岐する供給流路R6により、タンク入口側接続口G7と接続されている。タンク出口側接続口G8は、帰還流路R3の途中の位置P5で帰還流路R3に合流する帰還流路R7により、第1の回収口側接続口G3と接続されている。タンク出口側接続口G8は、帰還流路R4の途中の位置P6で帰還流路R4に合流する帰還流路R8により、第2の回収口側接続口G4と接続されている。
【0038】
また、タンク出口側接続口G8は、供給流路R2の途中の位置P7で供給流路R2に合流する接続流路R9により、被制御装置入口側接続口G5と接続されている。
【0039】
供給流路R1の位置P1と位置P3の間には、流路を連通又は遮断するバルブV1が設けられている。供給流路R2の位置P1と位置P4の間には、流路を連通又は遮断するバルブV2が設けられている。帰還流路R3の位置P2と位置P5の間には、流路を連通又は遮断するバルブV3が設けられている。帰還流路R4の位置P2と位置P6の間には、流路を連通又は遮断するバルブV4が設けられている。供給流路R5の途中には、流路を連通又は遮断するバルブV5が設けられている。供給流路R6の途中には、流路を連通又は遮断するバルブV6が設けられている。帰還流路R7の途中には、流路を連通又は遮断するバルブV7が設けられている。帰還流路R8の途中には、流路を連通又は遮断するバルブV8が設けられている。
【0040】
ヒータ53は、被制御装置入口側接続口G5の被制御装置12側に設けられている。すなわち、ヒータ53は、接続切替部55から被制御装置12へ流体が流れる流路の途中に設けられており、接続切替部55から被制御装置12へ流れる流体の温度を調節するためのものである。また、ヒータ53の被制御装置12側には、ヒータ53により温度調節された流体の温度を測定するための温度センサ57が設けられている。
【0041】
ヒータ54は、タンク入口側接続口G7のタンク51側に設けられている。すなわち、ヒータ54は、接続切替部55からタンク51へ流体が流れる流路の途中に設けられており、接続切替部55からタンク51へ流れる流体の温度を調節するためのものである。また、ヒータ54のタンク51側には、ヒータ54により温度調節された流体の温度を測定するための温度センサ58が設けられている。
【0042】
制御部60は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ61を有する。コントローラ61は、ヒータ53、54と接続切替部55との動作を含め、温度制御システム10の各構成部分の動作を制御する。また、コントローラ61には、工程管理者が温度制御システム10の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、温度制御システム10の各構成部の可動状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース62が接続されている。さらに、コントローラ61には、温度制御システム10で実行される各種処理をコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラムが格納された記憶部63が接続されている。制御プログラムは記憶部63の中の記憶媒体(記録媒体)に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0043】
次に、本実施の形態に係る温度制御装置を含む温度制御システムにおける温度制御方法について説明する。
【0044】
図2、図4、図6、図8、図10は、本実施の形態に係る温度制御方法により被制御装置12の温度制御を行う際の、温度制御装置50の状態を示す図である。また、図3、図5、図7、図9は、第1の供給部30(温度センサ34)、第2の供給部40(温度センサ44)、タンク51(温度センサ58)、設定温度、被制御装置12の温度の時間変化を、それぞれ図2、図4、図6、図8に対応した時間領域で示すグラフである。
【0045】
なお、図2、図4、図6、図8、図10において、白抜きのバルブは閉じており、黒抜きのバルブは開いている状態を示している。また、図9は、図8に加え、図10にも対応した時間領域で示している。
【0046】
以下では、被制御装置12を温度T1に制御している状態(図3、図4)から、被制御装置12を温度T1より低い温度T2に変更している間の状態(図4、図5)を経て、被制御装置12を温度T2に制御している状態(図6、図7)となり、その後、被制御装置12を温度T2より高い温度T3に変更している間の状態(図8、図9)を経て、被制御装置12を温度T3に制御する(図9、図10)際の、温度制御方法について説明する。
【0047】
まず、接続切替部55により被制御装置12を第1の供給部30と接続した状態で、ヒータ53により被制御装置12を流れる流体の温度が温度T1になるように制御することで、被制御装置12を温度T1になるように制御しているものとする。このとき、接続切替部55によりタンク51を第2の供給部40と接続するとともにヒータ54によりタンク51に貯蔵される流体の温度が予備温度T21になるように制御する。なお、予備温度T21として、温度T2に温度変動分を加算した温度、あるいは、温度T1よりも温度T2に近い温度とすることができる。
【0048】
図2に示すように、接続切替部55のバルブV2、V4、V5、V7、V9が閉じた状態で、バルブV1、V3を開く。これにより、第1の供給部30の供給口37を、接続切替部55の第1の供給口側接続口G1、供給流路R1、被制御装置入口側接続口G5を介して被制御装置12の流路14の入口15に接続する。また、被制御装置12の流路14の出口16を、接続切替部55の被制御装置出口側接続口G6、帰還流路R3、第1の回収口側接続口G3を介して第1の供給部30の回収口35に接続する。
【0049】
図3に示すように、被制御装置12へ供給される流体の設定温度を温度T1に設定する。そして、被制御装置12へ温度T1の流体を供給するために、制御部60は、第1の供給部30へ、例えば途中の流路における熱交換等による温度変動分を加算した温度T11の流体を供給するよう要求する。そして、第1の供給部30から供給されてきた流体の温度T11を、ヒータ53により温度T1に調節し、温度がT1に調節された流体を被制御装置12に供給する。
【0050】
また、同時に、制御部60は、被制御装置12から、次の設定温度の情報を受け取る。前述したように、次の設定温度は、温度T1よりも低い温度T2であるとする。
【0051】
図2に示すように、接続切替部55のバルブV2、V4、V5、V7、V9が閉じ、バルブV1、V3が開いた状態で、バルブV6、V8を開く。これにより、第2の供給部40の供給口47を、接続切替部55の第2の供給口側接続口G2、供給流路R2、R6、タンク入口側接続口G7を介してタンク51の入口に接続する。また、タンク51の出口を、接続切替部55のタンク出口側接続口G8、帰還流路R8、R4、第2の回収口側接続口G4を介して第2の供給部40の回収口45に接続する。
【0052】
図3に示すように、後で被制御装置12へ温度T2の流体を供給するために、タンク51へは予備温度T21の流体を貯蔵するものとする。そして、タンク51へ予備温度T21の流体を供給するために、制御部60は、第2の供給部40へ、温度変動分を加算した温度T22の流体を供給するよう要求する。そして、第2の供給部40から供給されてきた流体の温度T22を、ヒータ54により温度T21に調節し、温度がT21に調節された流体をタンク51に貯蔵する。
【0053】
なお、図3では、T1が25℃であり、T11が20℃であり、T2が−50℃(図5参照)であり、T21が−55℃であり、T22が−60℃である例を示している。
【0054】
次いで、接続切替部55により被制御装置12をタンク51を介して第2の供給部40と接続し、タンク51に貯蔵されている流体が被制御装置12に供給されるように制御する。
【0055】
図4に示すように、接続切替部55のバルブV2、V5、V7が閉じ、V6が開いた状態で、バルブV1、V3、V8を閉じ、バルブV4、V9を開く。このとき、第2の供給部40の供給口47を、接続切替部55の第2の供給口側接続口G2、供給流路R2、R6、タンク入口側接続口G7を介してタンク51の入口に接続したままである。また、タンク51の出口を、接続切替部55のタンク出口側接続口G8、接続流路R9、供給流路R2、R1、被制御装置入口側接続口G5を介して被制御装置12の流路14の入口15に接続する。そして、被制御装置12の流路14の出口16を、接続切替部55の被制御装置出口側接続口G6、帰還流路R4、第2の回収口側接続口G4を介して第2の供給部40の回収口45に接続する。
【0056】
図5に示すように、被制御装置12へ温度T2の流体を供給するために、制御部60は、第2の供給部40へ、温度T2に温度変動分を加算した温度T23(図7参照)の流体を供給するよう要求する。すると、タンク51内の流体の温度は、温度T21から温度T2へ徐々に上昇するとともに、被制御装置12の温度は、温度T1から温度T2へ徐々に低下する。また、最初のうちは、被制御装置12から流体が戻ることによって、第2の供給部40から供給される流体の温度は、温度T22から一旦上昇して温度T23を上回るが、その後被制御装置12の温度が低下するのに伴って、温度T23に収束するように低下する。
【0057】
なお、図5では、T23が−55℃(図7参照)である例を示している。
【0058】
また、第1の供給部30を停止してもよく、又は、図示しないバイパス流路により第1の供給部30の供給口37と回収口35とを短絡し、例えば温度T11で第1の供給部30の運転を継続してもよい。
【0059】
次いで、接続切替部55により被制御装置12をタンク51を介さずに第2の供給部40と接続するとともに、ヒータ53により、被制御装置12に流れる流体の温度が温度T2になるように制御する。
【0060】
図6に示すように、接続切替部55のバルブV1、V3、V8が閉じ、バルブV4が開いた状態で、バルブV6、V9を閉じ、バルブV2を開く。これにより、第2の供給部40の供給口47を、接続切替部55の第2の供給口側接続口G2、供給流路R2、R1、被制御装置入口側接続口G5を介して被制御装置12の流路14の入口15に接続する。また、被制御装置12の流路14の出口16は、接続切替部55の被制御装置出口側接続口G6、帰還流路R4、第2の回収口側接続口G4を介して第2の供給部40の回収口45に接続したままである。
【0061】
図7に示すように、被制御装置12の設定温度は温度T2に設定されたままである。そして、第2の供給部40から供給されてきた流体の温度T23を、ヒータ53により温度T2に調節し、温度がT2に調節された流体を被制御装置12に供給する。
【0062】
また、同時に、制御部60は、被制御装置12から、更に次の設定温度の情報を受け取る。前述したように、次の設定温度は、温度T2よりも高い温度T3であるとする。
【0063】
図6に示すように、接続切替部55のバルブV1、V3、V6、V8、V9が閉じ、バルブV2、V4が開いた状態で、バルブV5、V7を開く。これにより、第1の供給部30の供給口37を、接続切替部55の第1の供給口側接続口G1、供給流路R1、R5、タンク入口側接続口G7を介してタンク51の入口に接続する。また、タンク51の出口を、接続切替部55のタンク出口側接続口G8、帰還流路R7、R3、第1の回収口側接続口G3を介して第1の供給部30の回収口35に接続する。
【0064】
図7に示すように、後で被制御装置12へ温度T3の流体を供給するために、タンク51へは予備温度T31の流体を貯蔵するものとする。そして、タンク51へ予備温度T31の流体を供給するために、制御部60は、第1の供給部30へ、温度変動分を加算した温度T32の流体を供給するよう要求する。そして、第1の供給部30から供給されてきた流体の温度T32を、ヒータ54により温度T31に調節し、温度がT31に調節された流体をタンク51に貯蔵する。
【0065】
なお、図7では、T3が−5℃(図9参照)であり、T31が0℃であり、T32が−5℃である例を示している。
【0066】
次いで、接続切替部55により被制御装置12をタンク51を介して第1の供給部30と接続し、タンク51に貯蔵されている流体が被制御装置12に供給されるように制御する。
【0067】
図8に示すように、接続切替部55のバルブV1、V6、V8が閉じ、V5が開いた状態で、バルブV2、V4、V7を閉じ、バルブV3、V9を開く。このとき、第1の供給部30の供給口37を、接続切替部55の第1の供給口側接続口G1、供給流路R1、R5、タンク入口側接続口G7を介してタンク51の入口に接続したままである。また、タンク51の出口を、接続切替部55のタンク出口側接続口G8、接続流路R9、供給流路R2、R1、被制御装置入口側接続口G5を介して被制御装置12の流路14の入口15に接続する。そして、被制御装置12の流路14の出口16を、接続切替部55の被制御装置出口側接続口G6、帰還流路R3、第1の回収口側接続口G3を介して第1の供給部30の回収口35に接続する。
【0068】
図9に示すように、被制御装置12へ温度T3の流体を供給するために、制御部60は、第1の供給部30へ、温度T3に温度変動分を加算した温度T33の流体を供給するよう要求する。すると、タンク51内の流体の温度は、温度T31から温度T3へ徐々に低下するとともに、被制御装置12の温度は、温度T2から温度T3へ徐々に上昇する。また、最初のうちは、被制御装置12から流体が戻ることによって、第1の供給部30から供給される流体の温度は、温度T32から一旦低下して温度T33を下回るが、その後被制御装置12の温度が上昇するのに伴って、温度T33に収束するように上昇する。
【0069】
なお、図9では、T33が−10℃である例を示している。
【0070】
また、第2の供給部40を停止してもよく、又は、図示しないバイパス流路により第2の供給部40の供給口47と回収口45とを短絡し、例えば温度T23で第2の供給部40の運転を継続してもよい。
【0071】
次いで、接続切替部55により被制御装置12をタンク51を介さずに第1の供給部30と接続するとともに、ヒータ53により、被制御装置12に流れる流体の温度が温度T3になるように制御する。
【0072】
図10に示すように、接続切替部55のバルブV2、V4、V6、V7、V8が閉じ、バルブV3が開いた状態で、バルブV5、V9を閉じ、バルブV1を開く。これにより、第1の供給部30の供給口37を、接続切替部55の第1の供給口側接続口G1、供給流路R1、被制御装置入口側接続口G5を介して被制御装置12の流路14の入口15に接続する。また、被制御装置12の流路14の出口16は、接続切替部55の被制御装置出口側接続口G6、帰還流路R3、第1の回収口側接続口G3を介して第1の供給部30の回収口35に接続したままである。
【0073】
図9に示すように、被制御装置12の設定温度は温度T3に設定されたままである。そして、第1の供給部30から供給されてきた流体の温度T33を、ヒータ53により温度T3に調節し、温度がT3に調節された流体を被制御装置12に供給する。
【0074】
以上、本実施の形態に係る温度制御方法によれば、被制御装置を流れる流体の温度を変更する前に、予備温度を有する流体を予めタンクに貯蔵しておく。そして、変更の際に、まず、タンクに貯蔵されている流体を被制御装置に供給する。これにより、冷却手段又は加熱手段に大きな冷却能力又は加熱能力を必要とせず、被制御装置の温度を変更するときに高速かつ高精度に温度制御することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、被制御装置12を流れる流体の温度を変更する前に、予備温度を有する流体を予めタンク51に貯蔵しておく温度制御方法について説明した。しかし、図10に示すように、被制御装置12を流れる流体の温度を変更しない定常運転状態において、供給装置20と被制御装置12とを本実施の形態に係る温度制御装置50を介して接続することにより、被制御装置12に流体が供給される直前にヒータ53により流体の温度を高精度に温度制御することができる。
【0076】
従って、供給装置を被制御装置から離れた場所に設置することができるため、被制御装置の設置面積を低減できる。あるいは、被制御装置がクリーンルームの内部に設置されている場合には、供給装置をクリーンルームの外部に設置することができるため、例えば摺動部材を有する冷凍機により温度制御する場合でも、クリーンルームの内部を清浄に保持することができる。更に、供給装置から供給する流体の温度を精密に制御する必要がないため、被制御装置を高精度に温度制御できるとともに、供給装置のコストを低減することができる。
(第1の実施の形態の変形例)
次に、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る温度制御装置を含む温度制御システムにおける温度制御方法について説明する。
【0077】
本変形例に係る温度制御装置を含む温度制御システムにおける温度制御方法は、所定の高温側予備温度、低温側予備温度を用いてタンクに貯蔵する流体の温度を決定する点で、第1の実施の形態に係る温度制御装置を含む温度制御システムにおける温度制御方法と相違する。従って、本変形例における温度制御システムは、第1の実施の形態における温度制御システムと同一構造を有しているため、説明を省略する。
【0078】
図11、図12、図13、図14は、第1の供給部30(温度センサ34)、第2の供給部40(温度センサ44)、タンク51(温度センサ58)、設定温度、被制御装置12の温度の時間変化を、それぞれ図2、図4、図6、図8に対応した時間領域で示すグラフである。なお、図14は、図8に加え、図10にも対応した時間領域で示している。
【0079】
以下では、被制御装置12を温度T1に制御している状態(図2、図11)から、被制御装置12を温度T1より低い温度T2に変更している間の状態(図4、図12)を経て、被制御装置12を温度T2に制御している状態(図6、図13)となり、その後、被制御装置12を温度T2より高い温度T3に変更している間の状態(図8、図14)を経て、被制御装置12を温度T3に制御する(図10、図14)際の、温度制御方法について説明する。
【0080】
まず、接続切替部55により被制御装置12を第1の供給部30と接続した状態で、ヒータ53により被制御装置12に流れる流体の温度が温度T1になるように制御しているものとする。
【0081】
ここで、本変形例では、次の設定温度T2が決定されていないものとする。この場合、温度T1が相対的に高いときは、タンク51に貯蔵される流体の温度が相対的に低い温度になるように制御する。また、温度T1が相対的に低いときは、タンク51に貯蔵される流体の温度が相対的に高い温度になるように制御する。
【0082】
本変形例では、所定のしきい値温度Tthを設定しておいてもよい。このとき、温度T1がしきい値温度Tthよりも高いときは、タンク51に貯蔵される流体の温度がしきい値温度Tthよりも低い温度である低温側予備温度Tplになるように制御する。また、温度T1がしきい値温度Tthよりも低いときは、タンク51に貯蔵される流体の温度がしきい値温度Tthよりも高い温度である高温側予備温度Tphになるように制御する。
【0083】
以下では、温度T1がしきい値温度Tthよりも高いものとする。このとき、接続切替部55によりタンク51を第2の供給部40と接続するとともに、ヒータ54により、タンク51に貯蔵される流体の温度が低温側予備温度Tplになるように制御する。このときのバルブの切替状態は、図2におけるバルブの切替状態と同一である。
【0084】
図11に示すように、タンク51へは温度Tplの流体を貯蔵するものとする。そして、タンク51へ温度Tplの流体を供給するために、制御部60は、第2の供給部40へ、温度変動分を加算した温度T22の流体を供給するよう要求する。そして、第2の供給部40から供給されてきた流体の温度T22を、ヒータ54により温度Tplに調節し、温度がTplに調節された流体をタンク51に貯蔵する。
【0085】
なお、図11では、T1が20℃であり、Tthが0℃であり、Tphが30℃であり、Tplが−60℃であり、T22が−65℃である例を示している。
【0086】
その後、次の温度T2が決定したら、接続切替部55により被制御装置12をタンク51を介して第2の供給部40と接続し、タンク51に貯蔵されている流体が被制御装置12に供給されるように制御する。このときのバルブの切替状態は、図4におけるバルブの切替状態と同一である。
【0087】
図12に示すように、被制御装置12へ温度T2の流体を供給するために、制御部60は、第2の供給部40へ、温度T2に温度変動分を加算した温度T23(図13参照)の流体を供給するよう要求する。すると、タンク51内の流体の温度は、温度Tplから温度T2へ徐々に上昇するとともに、被制御装置12の温度は、温度T1から温度T2へ徐々に低下する。また、最初のうちは、被制御装置12から流体が戻ることによって、第2の供給部40から供給される流体の温度は、温度T22から一旦上昇して温度T23を上回るが、その後被制御装置12の温度が低下するのに伴って、温度T23に収束するように低下する。
【0088】
なお、図12では、T23が−35℃(図13参照)である例を示している。
【0089】
次いで、接続切替部55により被制御装置12をタンク51を介さずに第2の供給部40と接続するとともに、ヒータ53により、被制御装置12に流れる流体の温度が温度T2になるように制御する。このときのバルブの切替状態は、図6におけるバルブの切替状態と同一である。
【0090】
図13に示すように、被制御装置12の設定温度は温度T2に設定されたままである。そして、第2の供給部40から供給されてきた流体の温度T23を、ヒータ53により温度T2に調節し、温度がT2に調節された流体を被制御装置12に供給する。
【0091】
このとき、次の設定温度T3が決定されていないものとする。また、温度T2は、しきい値温度Tthよりも低い。従って、接続切替部55によりタンク51を第1の供給部30と接続するとともに、ヒータ54により、タンク51に貯蔵される流体の温度が高温側予備温度Tphになるように制御する。このときのバルブの切替状態は、図6におけるバルブの切替状態と同一である。
【0092】
図13に示すように、タンク51へは温度Tphの流体を貯蔵するものとする。そして、タンク51へ温度Tphの流体を供給するために、制御部60は、第1の供給部30へ、温度変動分を加算した温度T32の流体を供給するよう要求する。そして、第1の供給部30から供給されてきた流体の温度T32を、ヒータ54により温度Tphに調節し、温度がTphに調節された流体をタンク51に貯蔵する。
【0093】
なお、図13では、T32が25℃である例を示している。
【0094】
その後、次の温度T3が決定したら、接続切替部55により被制御装置12をタンク51を介して第1の供給部30と接続し、タンク51に貯蔵されている流体が被制御装置12に供給されるように制御する。このときのバルブの切替状態は、図8におけるバルブの切替状態と同一である。
【0095】
図14に示すように、被制御装置12へ温度T3の流体を供給するために、制御部60は、第1の供給部30へ、温度T3に温度変動分を加算した温度T33の流体を供給するよう要求する。すると、タンク51内の流体の温度は、温度Tphから温度T3へ徐々に低下するとともに、被制御装置12の温度は、温度T2から温度T3へ徐々に上昇する。また、最初のうちは、被制御装置12から流体が戻ることによって、第1の供給部30から供給される流体の温度は、温度T32から一旦低下して温度T33を下回るが、その後被制御装置12の温度が上昇するのに伴って、温度T33に収束するように上昇する。
【0096】
なお、図14では、T3が15℃、T33が10℃である例を示している。
【0097】
次いで、接続切替部55により被制御装置12をタンク51を介さずに第1の供給部30と接続するとともに、ヒータ53により、被制御装置12に流れる流体の温度が温度T3になるように制御する。このときのバルブの切替状態は、図10におけるバルブの切替状態と同一である。
【0098】
図14に示すように、被制御装置12の設定温度は温度T3に設定されたままである。そして、第1の供給部30から供給されてきた流体の温度T33を、ヒータ53により温度T3に調節し、温度がT3に調節された流体を被制御装置12に供給する。
【0099】
本変形例でも、被制御装置を流れる流体の温度を変更する前に、予備温度を有する流体を予めタンクに貯蔵しておく。そして、変更の際に、まず、タンクに貯蔵されている流体を被制御装置に供給する。これにより、冷却手段又は加熱手段に大きな冷却能力又は加熱能力を必要とせず、被制御装置の温度を変更するときに高速かつ高精度に温度制御することができる。
【0100】
また、本変形例では、所定の高温側予備温度、低温側予備温度を用いてタンクに貯蔵する流体の温度を決定する。これにより、次の設定温度が決まっていない場合でも、予め現在の温度と離れた温度の流体をタンクに貯蔵しておくことができるため、被制御装置の温度を変更するときに高速かつ高精度に温度制御することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る温度制御装置を含む温度制御システムについて説明する。
【0101】
本実施の形態に係る温度制御装置50aを含む温度制御システム10aは、温度制御装置50aにおけるヒータ53、54が設けられている位置が、第1の実施の形態に係る温度制御装置50を含む温度制御システム10と相違する。従って、本実施の形態における温度制御システム10aのうち、温度制御装置50aのヒータ53、54以外の部分は、第1の実施の形態における温度制御システム10のうち、温度制御装置50のヒータ53、54以外の部分と同一構造を有しているため、説明を省略する。
【0102】
図15は、本実施の形態に係る温度制御装置50aを含む温度制御システム10aの構成を示す図である。
【0103】
図15に示すように、ヒータ53は、第1の供給口側接続口G1の第1の供給部30側に設けられている。すなわち、ヒータ53は、第1の供給部30から接続切替部55aへ流体が流れる流路の途中に設けられており、第1の供給部30から接続切替部55aへ流れる流体の温度を調節するためのものである。
【0104】
なお、温度センサ57は、第1の実施の形態と同様に、被制御装置入口側接続口G5の被制御装置12側に設けられている。
【0105】
ヒータ54は、第2の供給口側接続口G2の第2の供給部40側に設けられている。すなわち、ヒータ54は、第2の供給部40から接続切替部55aへ流体が流れる流路の途中に設けられており、第2の供給部40から接続切替部55aへ流れる流体の温度を調節するためのものである。
【0106】
なお、温度センサ58は、第1の実施の形態と同様に、タンク入口側接続口G7のタンク51側に設けられている。
【0107】
本実施の形態に係る温度制御装置を含む温度制御システムにおける温度制御方法は、ヒータ53、54が設けられている位置が異なる点を除き、第1の実施の形態に係る温度制御装置を含む温度制御システムにおける温度制御方法と同様にすることができる。
【0108】
すなわち、被制御装置12に流れる流体の温度を温度T1から温度T1よりも低い温度T2に変更し、次に、温度T2から温度T2よりも高い温度T3に変更する際の温度制御方法は、図2〜図10を用いて説明した温度制御方法と同様である。
【0109】
ただし、図6及び図7を用いて説明した工程では、第2の供給部40から供給されてきた流体の温度T23を、ヒータ53に代えヒータ54により温度T2に調節する。また、第1の供給部30から供給されてきた流体の温度T32を、ヒータ54に代えヒータ53により温度T31に調節する。
【0110】
本実施の形態でも、被制御装置を流れる流体の温度を変更する前に、予備温度を有する流体を予めタンクに貯蔵しておく。そして、変更の際に、まず、タンクに貯蔵されている流体を被制御装置に供給する。これにより、冷却手段又は加熱手段に大きな冷却能力又は加熱能力を必要とせず、被制御装置の温度を変更するときに高速かつ高精度に温度制御することができる。
【0111】
また、本実施の形態では、ヒータ53、54が、それぞれ供給流路R1、R2上に設けられている。従って、ヒータ53、54のいずれか一方に不具合が発生したときも、他方のヒータを用いて被制御装置に流れる流体の温度を高精度に温度制御することができる。
【0112】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0113】
実施の形態では、被制御装置12を、半導体ウェハの電気的な検査を行う半導体検査装置とした場合について説明したが、これに限られない。たとえば、半導体ウェハの製造工程での半導体ウェハの温度制御に用いることも可能である。このような工程では、温度制御装置を設置する場所がクリーンルーム内や真空装置内などの空冷式や水冷式の冷凍機を使用することができない環境である場合が多く、特に好適である。
【0114】
実施の形態では、温度制御装置における調節部(ヒータ)を、接続切替部からタンクへ流体が流れる流路の途中と接続切替部から被制御装置へ流体が流れる流路の途中の2箇所に設ける場合と、第1の供給口側接続口G1の第1の供給部30側と、第2の供給口側接続口G2の第2の供給部40側の2箇所に設ける場合について説明したが、これに限られず、接続切替部内の流路に設けてもよい。たとえば、接続切替部内の第1の供給部から被制御装置へ流れる流路、第2の供給部から被制御装置へ流れる流路、第1の供給部からタンクへ流れる流路、第2の供給部からタンクへ流れる流路の4箇所に調節部(ヒータ)を設けてもよい。
【0115】
実施の形態では、第1の供給部、第2の供給部にそれぞれポンプを設ける例について説明したが、これに限られない。たとえば、温度制御装置の第1の供給部の供給口と接続される流路と、第2の供給部の供給口と接続される流路とにポンプを設けてもよい。
【0116】
実施の形態では、被制御装置と貯蔵部とが接続する際に、被制御装置を第1の供給部若しくは第2の供給部と貯蔵部を介して接続する場合について説明したが、これに限られない。たとえば、被制御装置と貯蔵部とが接続する際に、被制御装置を第1の供給部と第2の供給部のいずれも介さずに、被制御装置と貯蔵部との間で流体を循環させるように切替部を構成してもよい。
【0117】
実施の形態では、ヒータにより被制御装置を流れる流体の温度が設定温度になるように制御することで、被制御装置12を設定温度になるように制御する場合について説明したが、これに限られない。たとえば、被制御装置12の温度に基づいてヒータを直接制御してもよい。また、被制御装置12に入る流体の温度と被制御装置12から出てくる流体の温度に基づいて、ヒータを制御してもよい。
【符号の説明】
【0118】
10 温度制御システム
12 被制御装置
20 供給装置
30 第1の供給部
31 ポンプ
32 冷凍機
33 ヒータ
34 温度センサ
40 第2の供給部
41 ポンプ
42 冷凍機
43 ヒータ
44 温度センサ
50 温度制御装置
51 タンク
53、54 ヒータ
55 接続切替部
57、58 温度センサ
60 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された流体により温度が制御される被制御装置と、温度調節された流体を前記被制御装置へ供給する第1の供給部及び第2の供給部を含む供給装置との間に設けられ、前記被制御装置に供給される流体の温度を制御する温度制御装置であって、
流体を貯蔵する貯蔵部と、
前記被制御装置を前記第1の供給部及び前記第2の供給部の一方と接続するとともに前記貯蔵部を前記第1の供給部及び前記第2の供給部の他方と接続するか、又は、前記被制御装置を前記貯蔵部と接続するように、接続を切り替える接続切替部と、
を有する、温度制御装置。
【請求項2】
前記被制御装置と前記貯蔵部との接続は、前記被制御装置を前記第1の供給部若しくは前記第2の供給部と前記貯蔵部を介して接続することを特徴とする請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記接続切替部から前記被制御装置へ流れる流体の温度を調節する第1の調節部と、
前記接続切替部から前記貯蔵部へ流れる流体の温度を調節する第2の調節部と、
を有する、請求項1又は2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記第1の供給部から前記接続切替部へ流れる流体の温度を調節する第1の調節部と、
前記第2の供給部から前記接続切替部へ流れる流体の温度を調節する第2の調節部と
を有する、請求項1又は2に記載の温度制御装置。
【請求項5】
前記接続切替部の動作と前記第1の調節部の動作と前記第2の調節部の動作とを制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記被制御装置に供給される流体の温度を第1の温度から第2の温度に変更する際に、
前記接続切替部により前記被制御装置を前記第1の供給部と接続した状態で前記第1の調節部により前記被制御装置に供給される流体の温度が前記第1の温度になるように制御しているときに、前記接続切替部により前記貯蔵部を前記第2の供給部と接続するとともに前記第2の調節部により前記貯蔵部に貯蔵される流体の温度が予備温度になるように制御し、
前記接続切替部により前記被制御装置を前記貯蔵部を介して前記第2の供給部と接続し、前記貯蔵部に貯蔵されている流体が前記被制御装置に供給されるように制御し、次に、
前記接続切替部により前記被制御装置を前記貯蔵部を介さずに前記第2の供給部と接続するとともに前記第1の調節部により前記被制御装置に供給される流体の温度が前記第2の温度になるように制御する、請求項3に記載の温度制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
しきい値温度、前記しきい値温度よりも高い高温側予備温度、及び、前記しきい値温度よりも低い低温側予備温度を予め決定しておき、
前記被制御装置に供給される流体の温度が前記第1の温度になるように制御しているときに、
前記第1の温度が前記しきい値温度よりも高い温度であるならば、前記貯蔵部に貯蔵される流体の温度が前記低温側予備温度になるように制御し、
前記第1の温度が前記しきい値温度よりも低い温度であるならば、前記貯蔵部に貯蔵される流体の温度が前記高温側予備温度になるように制御するものである、請求項5に記載の温度制御装置。
【請求項7】
前記第1の供給部又は前記第2の供給部は、供給する流体を冷却するための冷凍機を有するものである、請求項1から請求項6のいずれかに記載の温度制御装置。
【請求項8】
供給された流体により温度が制御される被制御装置と、温度調節された流体を前記被制御装置へ供給する第1の供給部及び第2の供給部を含む供給装置との間に設けられ、前記被制御装置に供給される流体の温度を制御する温度制御装置における温度制御方法であって、
前記被制御装置に供給される流体の温度を第1の温度から第2の温度に変更する際に、
接続切替部により前記被制御装置を前記第1の供給部と接続した状態で第1の調節部により前記被制御装置に供給される流体の温度が前記第1の温度になるように制御しているときに、流体を貯蔵する貯蔵部を前記接続切替部により前記第2の供給部と接続するとともに第2の調節部により前記貯蔵部に貯蔵される流体の温度が予備温度になるように制御し、
前記接続切替部により前記被制御装置を前記貯蔵部を介して前記第2の供給部と接続し、前記貯蔵部に貯蔵されている流体が前記被制御装置に供給されるように制御し、次に、
前記接続切替部により前記被制御装置を前記貯蔵部を介さずに前記第2の供給部と接続するとともに前記第1の調節部により前記被制御装置に供給される流体の温度が前記第2の温度になるように制御する、温度制御方法。
【請求項9】
しきい値温度、前記しきい値温度よりも高い高温側予備温度、及び、前記しきい値温度よりも低い低温側予備温度を予め決定しておき、
前記被制御装置に供給される流体の温度が前記第1の温度になるように制御しているときに、
前記第1の温度が前記しきい値温度よりも高い温度であるならば、前記貯蔵部に貯蔵される流体の温度が前記低温側予備温度になるように制御し、
前記第1の温度が前記しきい値温度よりも低い温度であるならば、前記貯蔵部に貯蔵される流体の温度が前記高温側予備温度になるように制御するものである、請求項8に記載の温度制御方法。
【請求項10】
供給された流体により温度が制御される被制御装置と、
温度調節された流体を前記被制御装置へ供給する第1の供給部及び第2の供給部を含む供給装置と、
前記被制御装置と前記供給装置との間に設けられ、前記被制御装置に供給される流体の温度を制御する温度制御装置と、を備え、
当該温度制御装置は、
流体を貯蔵する貯蔵部と、
前記被制御装置を前記第1の供給部及び前記第2の供給部の一方と接続するとともに前記貯蔵部を前記第1の供給部及び前記第2の供給部の他方と接続するか、又は、前記被制御装置を前記貯蔵部と接続するように、接続を切り替える接続切替部と、
を有する、温度制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−20509(P2013−20509A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154331(P2011−154331)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(509329682)株式会社ナカヤ (2)
【Fターム(参考)】