説明

温度検出装置および定着装置

【課題】定着ローラの温度を非接触で検出する温度検出装置において温度検出精度をより向上できる装置を提供すること。
【解決手段】サーモパイルユニット34は、ステム101、CAN102、サーモパイルチップ103等を備える。CAN102の内面1021とサーモパイルチップ103との間の位置には、赤外線Aの光路を取り囲むようにして、円筒状の導光部材106が配設されている。導光部材106は、ガラス等からなり、その内周面には赤外線反射膜111が設けられている。CAN102の内面1021からサーモパイルチップ103に向かう輻射熱による赤外線Bは、導光部材106の赤外線反射膜111で反射し、ステム101に導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱体の温度を非接触で検出する温度検出装置および当該温度検出装置を備える定着装置に関し、特に被加熱体の温度検出精度を向上させる技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置は、シート上の未定着画像を加熱、加圧により定着させるための定着装置を備えている。この定着装置には、定着ローラと、定着ローラに圧接される加圧ローラと、定着ローラを加熱するヒータと、定着ローラの表面温度を検出するセンサ等が設けられており、当該センサからの検出信号に基づいて、定着ローラの表面温度が所定の定着温度に維持されるようになっている。
【0003】
上記センサとしては、定着ローラ表面に接触して温度を検出する接触型のサーミスタが用いられることが多かったが、接触による定着ローラ表面の傷付き、磨耗等が発生してしまう。そのため、従来から定着ローラ表面に接触せずに温度を検出できる非接触型のセンサ、具体的にはサーモパイルを用いる構成が提案されている。
図10は、従来のサーモパイルの構成例を示す図である。
【0004】
同図に示すように、サーモパイルユニット900は、ステム901、キャップ状のCAN902、サーモパイルチップ903、サーミスタ904およびレンズ905などを備える。
サーモパイルチップ903は、定着ローラからの輻射熱による赤外線Aを、レンズ905を介して受光して、受光量に応じた電気信号を出力する。
【0005】
サーミスタ904は、サーモパイルチップ903の環境(温度)変化に対する温度補償を行うものであり、ステム901の温度をサーモパイルチップ903の基準温度として検出する。このサーミスタ904による温度検出の結果に基づいて、環境変化によるサーモパイルチップ903の出力誤差が補正される。
サーモパイルチップ903とサーミスタ904は、ステム901上に配置され、金属製のCAN902により密閉されている。これにより湿気等の侵入が防止される。
【0006】
このような構成の場合、定着ローラの温度が上昇すると、CAN902の温度も上昇し、時間経過に連れてサーモパイルチップ903には、定着ローラからの赤外線Aと、CAN902からの輻射熱による赤外線Bとが合わせて入射されるようになり、時間経過の前後で温度検出結果に差が生じるようになる。
また、CAN902からステム901への熱伝達によりステム901の温度が上昇する。その際、ステム901の中心部(サーモパイルチップ903の配置位置の部分)よりもステム901の周縁部の方がCAN902に近いため、ステム901の中央部よりも周縁部の方が、温度が上がることになる。従って、ステム901の温度上昇に連れて、サーモパイルチップ903とサーミスタ904間の距離の分だけ、両者の配置位置における温度差が大きくなる。その結果、サーモパイルチップ903の実際の温度とサーミスタ904による検出温度との差が増大して検出誤差が大きくなるということも生じる。
【0007】
そこで、特許文献1には、サーモパイルユニット900をアルミ等の外殻ケースにそっくり収容する構成が開示されている。熱ローラからの赤外線が外殻ケースにより遮断されて直接サーモパイルユニット900のCAN902に当たらなくなると共に、サーモパイルユニット900の周囲温度が均一化されるので、サーモパイルチップ903の実際の温度とサーミスタ904による検出温度との差を小さくでき、検出誤差が低減されるというものである。
【特許文献1】特開2003−35601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成としても、時間が経過して外殻ケースの温度が上昇すると、外殻ケースからサーモパイルユニット900に向けて赤外線が放射され、サーモパイルユニット900のCAN902の温度が上がってしまう。そうなると、上記同様にサーモパイルチップ903に、熱ローラからの赤外線AとCAN902からの赤外線Bが入射されることになり、結果的に検出誤差が大きくなるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、被加熱体の温度を非接触で検出する場合の温度検出精度をより向上できる温度検出装置および当該温度検出装置を備える定着装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る温度検出装置は、被加熱体の温度を非接触で検出する温度検出装置であって、赤外線入射窓を有するケースと、前記ケース内部に収容され、前記被加熱体から放射される輻射熱による赤外線を、前記赤外線入射窓を介して受光する受光センサと、前記ケース内部に収容され、前記ケース内面から前記受光センサの赤外線受光部に向かって放射される輻射熱による赤外線を別の方向に導く導光部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記ケースは、ステムと、当該ステムに取り付けられるキャップ状のカバーを有し、前記赤外線入射窓は、前記カバーに設けられ、前記受光センサは、前記カバーに被われるようにして前記ステム上に配置され、前記導光部材は、前記カバー内面と前記受光センサとの間の位置であり、前記赤外線入射窓から入射される赤外線の光路を除く位置に配されていることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記導光部材は、前記光路の周囲を取り囲むようにして配されていることを特徴とする。
また、前記導光部材は、入射した赤外線を反射して、前記ステム上における前記受光センサの配置部分以外の部分に導くことを特徴とする。
さらに、前記導光部材は、入射した赤外線を反射して、前記被加熱体が位置する方向に導くことを特徴とする。
【0013】
また、前記導光部材は、入射した赤外線の一部を屈折させ、および別の一部を反射して、前記ステム上における前記受光センサの配置部分以外の部分に導くことを特徴とする。
さらに、前記導光部材は、樹脂またはガラスからなり、赤外線反射膜を有することを特徴とする。
本発明は、シート上の未定着画像を、被加熱体としての定着ローラの熱により定着させる定着装置であって、前記定着ローラの温度を検出する温度検出手段として、上記に記載の温度検出装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記のような導光部材を配設することにより、ケースからの輻射熱による赤外線の影響をほとんど受けることなく被加熱体の温度検出を行えるようになり、温度検出精度の向上を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る温度検出装置および定着装置を、モノクロのレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)の定着部に適用した場合を例に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るプリンタ1全体の概略構成を示す図である。
同図に示すように、プリンタ1は、画像形成部10、給紙部20、定着部30および制御部40を備えている。
【0016】
給紙部20は、給紙カセット21、給送ローラ22およびタイミングローラ対23等を備え、給紙カセット21に収容されたシートSを給送ローラ22により1枚ずつ繰り出し、シート搬送路(破線)に沿ってタイミングローラ対23を介して転写位置Tまで給送させる。
画像形成部10は、感光体ドラム11を一様に帯電させ、帯電された感光体ドラム11表面をプリンタヘッド12内部のレーザダイオード(不図示)から出射されるレーザビームの走査により露光して感光体ドラム11上に静電潜像を形成し、形成された静電潜像を現像してトナー像を形成した後、そのトナー像を転写位置Tにおいて、給紙部20からのシートSに転写ローラ13の静電的作用により転写させるものである。
【0017】
定着部30は、定着ローラ31、定着ローラ31に圧接される加圧ローラ32、定着ローラ31を加熱するヒータ33、および定着ローラ31の表面温度(以下、「ローラ表面温度」という。)を検出するための非接触センサとしてのサーモパイルユニット34等を備える。
定着ローラ31と加圧ローラ32は、矢印方向に回転駆動されており、定着ローラ31と加圧ローラ32の圧接部をトナー像(未定着画像)が転写されたシートSが通過する際に当該トナー像が加熱、加圧されてシート上に定着される。定着後のシートSは、排出ローラ対25を介して排出トレイ26上に排出される。
【0018】
制御部40は、画像形成部10、給紙部20および定着部30の動作を統括的に制御して円滑な画像形成動作を実行させる。また、制御部40は、サーモパイルユニット34からの出力信号を受信し、ローラ表面温度を監視して、ローラ表面温度が所定の定着温度に維持されるようにヒータ33への電力供給量を制御する。
図2(a)は、サーモパイルユニット34の内部構成を示す図であり、図2(b)は、サーモパイルユニット34の1つの構成要素である導光部材106の構成を示す斜視図である。
【0019】
図2(a)に示すように、サーモパイルユニット34は、ステム101とCAN102からなるケース100、サーモパイルチップ103、サーミスタ104、レンズ105および導光部材106などを備える。同図では、CAN102、レンズ105および導光部材106を縦方向に切断したときの断面で示している。
ケース100は、ステム101に、金属製のキャップ状のカバーからなるCAN102が嵌め込まれてなり、サーモパイルチップ103とサーミスタ104を収容する。ケース100は密閉されており、ケース100の内部には、窒素ガス等の不活性ガスが封入されている。CAN102の、定着ローラ31と対向する側の面には、赤外線入射窓としてのレンズ105が設けられている。ステム101上には、サーモパイルチップ103とサーミスタ104が配置されている。
【0020】
サーモパイルチップ103(受光センサ)は、サーモパイルからなる赤外線受光部1031を有し、定着ローラ31からの輻射熱による赤外線Aを、レンズ105を介して赤外線受光部1031で受光して、その受光量に応じた電気信号を出力する。より具体的には、サーモパイルが定着ローラ31からの赤外線Aの入射により加熱されると、その加熱量に応じた電圧を出力する。
【0021】
サーミスタ104は、ステム101の温度をサーモパイルチップ103の基準温度として検出し、その検出信号を出力する。制御部40は、サーミスタ104からの検出信号に基づいて、サーモパイルチップ103の、環境(温度)変化による出力電圧の誤差を補正する。
図3は、サーモパイルチップ103の出力電圧(補正後)とローラ表面温度との関係の例を示す図である。
【0022】
同図に示すように、サーモパイルチップ103の出力電圧(補正後)とローラ表面温度とが略比例の関係になっていることが判る。制御部40は、同図に示す出力電圧とローラ表面温度との関係を示す情報を予め保持しており、この情報を参照して、出力電圧(補正後)からローラ表面温度を特定する。
図2(a)に戻って、CAN102の内面1021と、サーモパイルチップ103の赤外線受光部1031との間であり、熱ローラ31からの赤外線Aの光路107(レンズ105から赤外線受光部1031までの間の赤外線の光路)を除く位置には、円筒状の導光部材106が、当該光路107の周囲を取り囲むようにして配設されている。
【0023】
導光部材106は、図2(b)に示すように、外径が略一定で、内径がステム101に近づくに連れて小さくなる形状になっている。導光部材106は、ここではアクリル系の樹脂またはガラスにより形成され、その内周面113には、赤外線反射膜111が設けられている。赤外線反射膜111は、アルミ、金または銀などからなり、蒸着またはメッキなどにより、導光部材106の内周面113の全面に渡って形成される。
【0024】
この導光部材106は、定着ローラ31の熱により加熱されたCAN102から赤外線受光部1031に向かって放射される、輻射熱による赤外線を別の方向に導いて、赤外線受光部1031への入射を防止するものである。
図4は、導光部材106により赤外線が導光される様子を示す模式図である。
同図に示すように、CAN102の輻射熱による赤外線のうち、CAN102の内面1021からサーモパイルチップ103に向かう赤外線Bは、導光部材106の外周面112から入射して導光部材106の内部を通り、導光部材106の内周面に設けられた赤外線反射膜111により反射されて、ステム101上におけるサーモパイルチップ103の配置部分以外の部分(領域)に導かれる。
【0025】
これによりCAN102の温度が上昇し、CAN102から輻射熱が放射されるようになっても、サーモパイルチップ103に向かう赤外線Bを赤外線受光部1031に入射させないようにすることができる。換言すれば、CAN102の温度が低いときでも高いときでも赤外線Bの影響をほとんど受けずにローラ表面温度を検出することができる。
従って、従来のようにCAN102の温度が低いときには赤外線Aだけを検出し、CAN102の温度が高くなると赤外線AとBの両方を検出してしまい、本来であれば同じ温度が検出されるべきところ時間の前後で検出温度が異なるといったことを生じ難くすることができ、温度検出精度の向上を図れる。
【0026】
図5は、従来相当の構成のサーモパイルユニットを用いた場合におけるローラ表面温度の検出結果の例を示す図であり、図6は、従来相当のサーモパイルユニットを用いた場合におけるステムとCANの温度変化の例を示す図であり、図7は、本発明のサーモパイルユニット34を用いた場合におけるローラ表面温度の検出結果の例を示す図である。
図5、図7は、実験として、定着ローラ31表面にサーミスタを接触させる構成をとると共に、当該サーミスタの温度検出結果に応じてローラ表面温度を140〔℃〕に維持する制御を行った場合に、時間経過に連れてサーモパイルユニットにより検出される温度がどのように遷移したのかを示すグラフである。なお、横軸は時間軸であり、単位を秒で表わしており、測定開始から図5では450秒、図7では500秒までの間については、実際のローラ表面温度とサーモパイルユニットによる検出温度とが略同じであったので省略している。
【0027】
図5の従来相当の例では、測定開始から450秒を過ぎた当たりから、サーモパイルユニットによる検出温度が実際のローラ表面温度(140〔℃〕)を上回っており、検出誤差が生じている。この検出誤差は、測定開始から5000秒の付近では、約20〔℃〕になっていることが判る。これは、上記のように従来相当のサーモパイルユニットの場合、CANの温度上昇によりCANからの赤外線Bを検出して、実際のローラ表面温度よりも高い温度を検出してしまったものと考えられる。
【0028】
ローラ表面温度が実際の温度よりも20〔℃〕も高く検出されるということは、このサーモパイルユニットを用いると、ローラ表面温度は、本来の定着温度よりも20〔℃〕低い温度で制御されることになり、定着が正常に行われないおそれが生じる。
また、図6に示すように、ステムの温度とCANの温度にも時間の経過に連れて差が生じており、同図では測定開始から5000秒後に約5〔℃〕の温度差になっている。
【0029】
この温度差が大きくなるということは、上記のようにサーモパイルチップの基準温度の検出誤差が大きくなることを意味するので、結果的に検出温度の誤差が大きくなることになる。
これに対し、図7に示す本発明の構成例の場合、測定開始から5000秒を過ぎるまでの間、サーモパイルユニット34による検出温度と実際のローラ表面温度とが略一致しており、検出誤差がほとんど生じていないことが判る。これは、導光部材106の配置によりCAN102からの赤外線Bがステム101に導かれ、赤外線Bの影響をほとんど受けずに温度検出を行えたからであると考えられる。
【0030】
また、図示していないが、赤外線Bがステム101に導かれることにより、ステム101の温度が従来相当の構成例よりも上昇し、ステム101とCAN102の温度が略同じになっていることが判った。従来相当に比べて、ステム101とCAN102の温度差が少なくなり、さらなる検出温度の誤差低減を図れたものと思われる。
以上説明したように、サーモパイルユニット34に導光部材106を配設したので、CAN102からの輻射熱の影響をほとんど受けることなくローラ表面温度を検出できるようになり、温度検出精度の向上を図ることができる。
【0031】
なお、導光部材106の大きさ、形状、材料、赤外線反射膜111の材料、膜厚、ステム101表面に対する角度θ(図4)等については、実験等から赤外線の導光に最適な大きさ、材料、角度等が決定される。このことは以下の実施の形態等について同様である。
(第2の実施の形態)
上記実施の形態では、CAN102からの赤外線Bをステム101の位置する方向に導く構成としたが、本実施の形態では、その逆の方向に導くとしており、この点が異なっている。以下、説明の都合上、第1の実施の形態と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
【0032】
図8(a)は、本実施の形態に係るサーモパイルユニット234の構成例を示す図であり、図8(b)は、サーモパイルユニット234の構成要素である導光部材206の構成例を示す斜視図であり、図8(c)は、反射部材201の構成例を示す斜視図である。
導光部材206は、第1の実施の形態に係る導光部材106の代わりになるものであり、図8(b)に示すように、円筒状であって、外径が略一定で、内径がステム101に近づくに連れて大きくなる形状になっている。導光部材206の材料としては、上記導光部材106と同じとすることができる。導光部材206の内周面には、赤外線反射膜211が設けられている。赤外線反射膜211は、第1の実施の形態に係る赤外線反射膜111と同じものを用いることができる。
【0033】
反射部材201は、図8(c)に示すように円筒状で円錐台形状をした部材であり、金属またはガラス等から形成され、その外表面には赤外線反射膜202が形成されている。赤外線反射膜202は、第1の実施の形態に係る赤外線反射膜111と同じものが用いられる。反射部材201は、その径が最小の部分でレンズ105の径よりもやや大きくなっており、径の最小の部分とレンズ105とが対向するように、CAN102の上面に配置されている。
【0034】
図8(a)に示すように、CAN102からの赤外線Bは、導光部材206の外周面212から入射して導光部材206の内部を通り、導光部材206の内周面に設けられた赤外線反射膜211で反射されて、CAN102の上部1022の方向に導かれる。
これによりCAN102の上部1022の温度が上昇するが、その輻射熱による赤外線Cが定着ローラ31の方向(同図の上方)に放射されると、その赤外線Cは、反射部材201の赤外線反射膜202により、サーモパイルユニット234の外部に向けて反射される。従って、第1の実施の形態と同様に、CAN102からの赤外線Bを赤外線受光部1031に入射させないようにすることができ、赤外線Bの影響をほとんど受けずにローラ表面温度を検出することができる。
【0035】
なお、赤外線Bを別の方向に導くという点からすれば、反射部材201を設けない構成をとるとしてもある程度の効果を得ることができる。
(第3の実施の形態)
図9(a)は、本実施の形態に係るサーモパイルユニット334の構成例を示す図であり、図9(b)は、サーモパイルユニット334の構成要素である導光部材306の構成例を示す斜視図である。
【0036】
導光部材306は、図9(b)に示すように、円筒状であって、内径が略一定で、外径がステム101に近づくに連れて大きくなる形状になっている。導光部材306の内周面には、赤外線反射膜311が設けられている。導光部材306と赤外線反射膜311の材料としては、第1の実施の導光部材106と赤外線反射膜111と同じものを用いることができる。
【0037】
図9(a)に示すように、CAN102からの赤外線Bの一部は、導光部材306の外周面312で屈折してステム101上の、サーモパイルチップ103が配置されていない部分に導かれる。また、赤外線Bの別の一部は、導光部材306の内周面に設けられた赤外線反射膜311で反射され、ステム101上の、サーモパイルチップ103が配置されていない部分に導かれる。
【0038】
これにより、上記実施の形態と同様に、CAN102からの赤外線Bを赤外線受光部1031に入射させないようにすることができ、赤外線Bの影響をほとんど受けずにローラ表面温度を検出することができる。
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
【0039】
(1)上記第1の実施の形態では、赤外線反射膜111を導光部材106の内周面113に設けるとしたが、赤外線Bの直進を妨げて別の方向に導くことができれば良く、例えば内周面113に代えて外周面112に設けるとすることもできる。この場合、反射された赤外線Bがステム101の方向に導かれるように外周面112のステム101に対する角度を工夫することが好ましい。
【0040】
さらに、導光部材106に赤外線反射膜111の全部または一部を設けないとしてもある程度の効果を得ることができる。導光部材106の配置により、赤外線Bの少なくとも一部を導光部材106の外周面112、内周面113で反射させることが可能になり、導光部材を配置しない従来の構成に比べて、赤外線Bの影響を受ける程度を低減できるからである。この場合、内周面113および/または外周面112を反射率等の向上のために鏡面化等しておくことが望ましい。これらのことは、第2、第3の実施の形態について同様である。
【0041】
(2)また、上記実施の形態では、導光部材を円筒状のものとしたが、赤外線Bを別の方向に導くことができるものであれば、その形状が円筒状に限られないことはいうまでもない。例えば、断面が矩形の筒状としても良い。
さらに、上記実施の形態では、赤外線Aの光路107の周囲を1周に渡って取り囲むように導光部材を配置するとしたが、一周に限られることはない。例えば、一部、具体的には半周だけとすることもできる。少なくとも、その半周分については、CAN102から赤外線受光部1031に向かう赤外線Bを別の方向に導くことで赤外線受光部1031に入射させないようにすることができ、従来よりも温度検出精度の向上を図れる。
【0042】
また、ケース100をステム101とCAN102とで構成したが、サーモパイルチップ103と導光部材106を収容するケースであれば、これに限られないこともいうまでもない。
(3)上記実施の形態では、本発明に係る温度検出装置をサーモパイルユニットに適用した場合の例を説明したが、本発明は、被加熱体からの赤外線を受光して温度を検出する非接触式の温度検出装置一般に適用できる。また、被加熱体を、複写機、プリンタ等の画像形成装置の定着部における定着ローラとした場合の例を説明したが、温度検出対象となるべき被加熱体であれば、これに限られることもない。
【0043】
また、上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の温度検出装置は、温度検出精度を向上させる技術として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施の形態に係るプリンタ1全体の概略構成を示す図である。
【図2】(a)は、サーモパイルユニット34の内部構成を示す図であり、(b)は、サーモパイルユニット34の1つの構成要素である導光部材106の構成を示す斜視図である。
【図3】サーモパイルチップ103の出力電圧(補正後)とローラ表面温度との関係の例を示す図である。
【図4】導光部材106により赤外線が導光される様子を示す模式図である。
【図5】従来相当の構成のサーモパイルユニットを用いた場合におけるローラ表面温度の検出結果の例を示す図である。
【図6】従来相当の構成のサーモパイルユニットを用いた場合におけるステムとCANの温度変化の例を示す図である。
【図7】本発明のサーモパイルユニット34を用いた場合におけるローラ表面温度の検出結果の例を示す図である。
【図8】(a)は、第2の実施の形態に係るサーモパイルユニット234の構成例を示す図であり、(b)は、サーモパイルユニット234の構成要素である導光部材206の構成例を示す斜視図であり、(c)は、反射部材201の構成例を示す斜視図である。
【図9】(a)は、第3の実施の形態に係るサーモパイルユニット334の構成例を示す図であり、(b)は、サーモパイルユニット334の構成要素である導光部材306の構成例を示す斜視図である。
【図10】従来のサーモパイルユニットの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
30 定着部
31 定着ローラ
33 ヒータ
34、234、334 サーモパイルユニット
100 ケース
101 ステム
102 CAN
103 サーモパイルチップ
105 レンズ
106、206、306 導光部材
111、202、211、311 赤外線反射膜
1031 赤外線受光部
A 定着ローラからの赤外線
B CANからの輻射熱による赤外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱体の温度を非接触で検出する温度検出装置であって、
赤外線入射窓を有するケースと、
前記ケース内部に収容され、前記被加熱体から放射される輻射熱による赤外線を、前記赤外線入射窓を介して受光する受光センサと、
前記ケース内部に収容され、前記ケース内面から前記受光センサの赤外線受光部に向かって放射される輻射熱による赤外線を別の方向に導く導光部材と、
を備えることを特徴とする温度検出装置。
【請求項2】
前記ケースは、ステムと、当該ステムに取り付けられるキャップ状のカバーを有し、
前記赤外線入射窓は、前記カバーに設けられ、
前記受光センサは、前記カバーに被われるようにして前記ステム上に配置され、
前記導光部材は、前記カバー内面と前記受光センサとの間の位置であり、前記赤外線入射窓から入射される赤外線の光路を除く位置に配されていることを特徴とする請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項3】
前記導光部材は、
前記光路の周囲を取り囲むようにして配されていることを特徴とする請求項2に記載の温度検出装置。
【請求項4】
前記導光部材は、
入射した赤外線を反射して、前記ステム上における前記受光センサの配置部分以外の部分に導くことを特徴とする請求項2または3に記載の温度検出装置。
【請求項5】
前記導光部材は、
入射した赤外線を反射して、前記被加熱体が位置する方向に導くことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温度検出装置。
【請求項6】
前記導光部材は、
入射した赤外線の一部を屈折させ、および別の一部を反射して、前記ステム上における前記受光センサの配置部分以外の部分に導くことを特徴とする請求項2または3に記載の温度検出装置。
【請求項7】
前記導光部材は、樹脂またはガラスからなり、赤外線反射膜を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の温度検出装置。
【請求項8】
シート上の未定着画像を、被加熱体としての定着ローラの熱により定着させる定着装置であって、
前記定着ローラの温度を検出する温度検出手段として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の温度検出装置を備えることを特徴とする定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−26285(P2008−26285A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202481(P2006−202481)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】