温度検出
温度センサ・アレイが光ファイバ(16)を備えており、光ファイバの間隔をおいて位置する部分に複数のブラッグ格子(18)が形成されている。各部分はハウジング(14)内に位置しており、ハウジングは、各部分を光ファイバに対して軸方向の歪みを実質的に加えることなく自由に収容することに加えて、ハウジングの外方でファイバに加えられた歪みから前記格子を隔離するようになっている。したがって、実質的に温度の変化のみが各部分のブラッグ格子に影響を与えることになる。この温度センサ・アレイは、とりわけ複合材料部材を形成するためのツール(12)の温度を検出して制御するために用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出、例えば、複合材料部材成形用のツールの温度検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合材料部材を作るのに、内部に埋め込まれた一又は複数のヒータを備えたツールを使用することが知られている。硬化サイクル中、前記ツールの温度を監視及び/又は制御することが必要である。通常、熱電対を使用するが、それらは幾つかの欠点がある。単一の熱電対は局所的な領域しか監視しないし、より大きなツールでは、多くの熱電対が必要となり、配線および接続部が複数必要となる。通常、複数の熱電対は、形成中の複合材料部材の端方の外方の「予備」部材に設けられる。この予備部材は、複合材料部材が成形された後に、複合材料部材から取り除かれる。さらに、複数の熱電対およびそれらの配線を、形成中の材料の中に埋め込むこともできるが、複合材料をツールから取り外すと、配線が損傷し、交換することになり、また、熱電対を再び用いる際に、再び校正を行うこととなる。これらの熱電対は、前記複合材料自体の材料を直接的に監視するようには用いられない。というのは、これらの熱電対が複合材料部材の材料(すなわち、廃棄されない複合材料部材の材料)自体に埋設され又はその他の方法で複合材料部材の表面に傷跡を残すことになってしまうからである。
【0003】
例えば、温度のような変数又は化学種の濃度を検出するためにブラッグ格子を利用した光ファイバセンサが提案されている。光ファイバの歪みを検出するために、複数のブラッグ格子を光ファイバ上に分布させて配置することは公知である。さらに、ファイバ上の複数の格子を扱う(アドレスする)ために、波長分割マルチプレックス又は時分割マルチプレックスの技術を用いることが知られている。
【0004】
WO00/39548には、ファイバに沿ってアレイ状に分布させた格子が開示されている。各格子は、円筒状のガラス筒内に入れられているとともに、それに融合されているファイバの一部分上に配設されており、かかるガラス筒は、ファイバの熱膨張率とは異なる熱膨張率を有し、格子に対して歪みを加えることによって温度変化に対する前記格子の感度を向上させるようになっている。また、前記ガラス筒は、かかる筒の外方のファイバに加えられた軸方向の歪みに対する、前記格子の感度を、低下させるようにもなっている。しかしながら、前記ガラス筒がファイバに融合されているため、ファイバ上の軸方向の歪みは、ガラス筒内のファイバに対して伝達されるので、該ガラス筒内の前記格子によって検知される値は、このファイバ上の軸方向の歪みの影響を受けることになる。
【0005】
WO03/076887には、船、橋梁、原油採掘、生産設備のような大きな構造体用で、歪みに反応する一又は複数のブラッグ格子を備えた光ファイバの利用について開示されている。また、この文献には、歪応答格子により計測される温度信号を補償するために利用され得る温度測定を行うために、歪みを隔離するパッケージ内にブラッグ格子を配設することが開示されている。したがって、WO03/076887には、実際の温度計測ではなく、むしろ温度補償を実現するためにブラッグ格子を利用することが記載されている。WO03/076887に開示されている歪み隔離用のパッケージの一例は、ディスク内の円形状の溝に光ファイバのループを受容し、かかる光ファイバは、前記円形状の溝に対して接戦方向に沿ってその円形状の溝に入出するようになっている。この歪み隔離用のパッケージは、それ自体比較的大きく、かつ、光ファイバが円形状の溝に入出するところで光ファイバがそれ自体と交差又は横断するという欠点がある。歪み隔離用のパッケージの他の例として、よりコンパクトな構成が開示されている。かかる構成では、光ファイバが直線状に延び、ブラッグ格子が高弾性係数を有する部材、すなわち補強材上に配設され、ブラッグ格子が高弾性係数を有する接着剤を用いてこの補強材に固定されている。前記光ファイバと補強材は、さらに低弾性係数を有するポリマーによって被覆され、前記補強材の両端部に位置する光ファイバに集中応力が作用するのを低減するようになっている。かかる歪み隔離用のパッケージは複雑な構造となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、コンパクトで安価な構造を有し、複合材料部材を成形するためのツールに役立つ温度センサを提供し、アレイ状に配置された温度センサを提供し、上記のような温度センサ又はアレイ状に配置された温度センサを組み入れたツールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様は、光ファイバと歪み隔離用ハウジングとを備えた装置を提供している。かかるハウジングは、キャビティを有し、キャビティへの入口およびキャビティからの出口を有している。光ファイバは入口からハウジングに入り、出口からハウジングを出るように構成されている。また、この光ファイバは、前記入口に位置する第一の固定箇所においてハウジングに固定されているとともに、前記出口に位置する第二の固定箇所においてハウジングに固定されている。かかる光ファイバは、ブラッグ格子を前記ハウジング内に有しているとともに、交差することのない通路に沿って、前記キャビティへの入口と前記キャビティからの出口との間を延びている。前記通路は、前記ハウジングの外方の光ファイバに加えられた歪みから前記ブラッグ格子が形成されている部分を前記ハウジング内に実質的に隔離するように、また、実質的に温度変化のみが前記ブラッグ格子に影響を与えるように、少なくとも一つの固定されていない弧状部を有している。
【0008】
前記構成により、簡単に製造することができ、コンパクトにすることができ、かつ、構造体の所望の位置に容易に設けて温度測定が可能となるシンプルな構成を得ることができる。前記ハウジングは、センサやアレイ状に配置されたセンサのいかなる個々の用途に対しても適合性を有するいかなる適正な材料から作られてもよい。前記ハウジングは、該ハウジングの外方のファイバに加えられる歪みから前記格子を隔離することにより、ハウジングの外方のファイバに歪みを生じさせないという状態を確保することを必要とすることなく(前記ファイバの破損を回避するのを除いて)、より正確な温度検出を可能とするとともに、装置の簡単なセットアップを可能とする。
【0009】
また、本発明の一つの態様は、このような装置を組み入れたツール又は他の構造体を提供している。
【0010】
本発明のさまざまな態様が、本明細書に添付した独立形式のあるいは従属形式の請求項に記載されている。本発明の他の態様は、記載されている実施形態の構成要件、添付の従属形式の請求項に記載されている構成要件および/又は独立形式の請求項に記載されている構成要件のあらゆる組み合わせをも含むものである。したがって、本発明は、単に添付の請求項に明確に記載されている組み合わせに限定されるものではない。
【0011】
本発明の実施例は単なる例示であって、これらは添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、複合材料部材を成形するためのツール上に配置された温度検出のための本発明にかかるアレイ状に配列されたブラッグ格子を示す概略図である。
【図2】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングの一例を水平方向に沿って断面して示した概略図である。
【図3】図2の歪み隔離用ハウジングの一例を略式に示した分解斜視図である。
【図4】図2の歪み隔離用ハウジングを鉛直方向に沿って断面して示した概略図である。
【図5】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングの他の一例を水平方向に沿って断面して示した概略図である。
【図6】図5の歪み隔離用ハウジングの一例を略式に示した斜視図である。
【図7】図4の歪み隔離用ハウジングの一例を鉛直方向に沿って断面して示した概略図である。
【図8】図2の歪み隔離用ハウジングの他の構成を鉛直方向に沿って断面して示した概略図である。
【図9】図2の歪み隔離用ハウジングのさらに他の構成を鉛直方向に沿って断面して示した概略図である。
【図10】図4の歪み隔離用ハウジングの他の構成を鉛直方向に沿って断面して示した概略図である。
【図11】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングのさらなる一例を示す水平方向に沿って断面した概略図である。
【図12】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングの他の一例を示す水平方向に沿って断面した概略図である。
【図13】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングのさらなる一例を示す水平方向に沿って断面した概略図である。
【図14】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングの他の一例を略式に示した斜視図である。
【図15】本発明に従って加熱素子とアレイ状に配列されたブラッグ格子を有する、複合材料部材を成形するためのツールを示した概略図である。
【図16】本発明にかかるアレイ状に配列されたブラッグ格子を有する構造体を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は種々の形態で実施することができ又その一部を置換することができるものであり、以下にそのうちの幾つかの例を挙げて図面を参照してより詳細に説明する。しかし、これら例示された実施例や図によって本発明が限定されて解釈されるものではなく、反対に、本発明は、発明の精神や範囲に従って、本発明の実施例と均等するあるいは置き換えられたものまで含むものと理解されたい。
【0014】
本発明の実施例を、高分子樹脂内に予め含浸させた強化ファイバの積層材料を例に挙げて、複合材料からなる部材を成形するためのツールを参照して、説明する。
【0015】
積層された材料の各薄層は、ファイバの複数の層を含むこともできる。これらのファイバは、例えば、炭素繊維であってもよいし又はケブラーであってもよい。一連の薄層のファイバは、当該技術分野において公知になっているように、異なる向きを有していてもよい。複合材料部材の成形のプロセスには、内部に埋め込まれ得る一又は複数のヒータにより加熱されるツールが必要となる。このツールの温度は、少なくとも監視され、そして、好ましくは制御されることが必要である。このため、アレイ状に配列された温度センサが設けられている。本実施例では、前記のアレイ状の配列は、一本の光ファイバ上に複数のセンサが配置されたものとなっている。
【0016】
前記ツールは、成形される複合材料と相性の良い材料でできている。例えば、既に述べた実施例では、前記ツールに複合部材と同一の材料が用いられている。
【0017】
前記光ファイバは、いかなる適切な材料でつくられてもよい。ここに記載の実施例では、前記光ファイバは、ガラス製又はシリカ製の光ファイバであり、かかる光ファイバは、典型的な炭素繊維複合部材の硬化された一層の厚みと同等の直径をしており、ここで、典型的な厚みは、0.250mm(250ミクロン)である。ガラス製の光ファイバは、炭素製ファイバと比べて剛性が低いものの、複合材料およびその加工性との相性がよい。かかる光ファイバは、ツールの複合材料の表面から適切な深さに埋め込むことができる。別の実施例では、前記光ファイバが他の材料で作られていてもよい。
【0018】
図1を参照すると、複合材料部材を成形するためのツール12内には、それぞれが光ファイバ16の一部を含んでいる複数のハウジング14が埋め込まれている。前記ハウジング14は、前記ツール12の表面より下(内部方)に埋め込まれることによって一体となっている。例えば、前記ツールが薄層で構成されている場合、前記ハウジングは該ツール表面上の最上面の薄層の真下に位置付けされる。
【0019】
前記ファイバ16のうちのハウジング14内に位置する部分は、それぞれブラッグ格子18を該ファイバ上に有している。かかる格子18を、公知の方法によって、前記ファイバ上に書き込むことができる。ブラッグ格子プロセッサ20、例えばファイバ・センサ・インターロゲータは、前記ファイバ16に沿って前記格子に適切な波長のレーザ光を伝達するよう構成されている。各格子は、前記プロセッサ20によって、波長分割マルチプレックス(TDM)技術又は時分割マルチプレックス(WDM)技術を用いてアドレスされるようになっているが、両者とも当該技術分野において良く知られた技術であるので、これ以上詳しいことはここでは説明しない。温度の変化については、当該技術分野において公知のように、格子18により前記プロセッサ20へ戻された信号を適切に処理することにより検知することができる。図1の実施例では、前記アレイ状に配列されたセンサによって検出された温度を解析すべく適切な解析ソフトウェアを実行するようにコンピューター22を配置することができる。図15を参照しつつ下記に述べられている如く、検出された温度に応じて一又は複数の加熱素子を制御することができる。
【0020】
下記に記載されているように、ハウジング14の各々は、ハウジングの外方のファイバに対して加えられる歪みからハウジング14内の格子18を隔離するためにファイバ16の一部を収容するようになっている。前記ファイバ16に対しては、ハウジング14内では軸方向の歪みをできるだけ少なく抑え、理想的には軸方向の歪みを無くすことが望ましい。前記ハウジング14内の歪みは、一定の基準レベル内にあり、このことから、温度の変化により引き起こされる歪みを検出することができる。前記光ファイバ16のうちのハウジング14内に位置する部分は、それぞれ少なくとも一つの弧状部又は湾曲部を有するように形成されている。このことは、このファイバ16がハウジング14の入口点とハウジング14の出口点との間でより長い経路をとることによって歪みから実質的に隔離され得るようになっていることを意味している。なお、入口若しくは入口点又は出口若しくは出口点と記載されているが、このことは移動を示しているのでもなければ入口と出口の機能を示しているのでもなく、これらの用語は、光ファイバが貫通する歪み隔離用ハウジングのポート又は開口部を表すために用いられているに過ぎない。光ファイバ16のうちの、ハウジング14とハウジング14との間にある部分は、ツールの材料内に埋め込まれている。ファイバ16のうちのハウジング14とハウジング14との間の部分は歪みを受けることになるが、ハウジング14が当該ハウジング14内の格子18をその歪みから隔離しているため、かかる格子18は正確に温度のみを検出することができる。
【0021】
図2は、図1に示されている歪み隔離用ハウジング14のうちの一つに対応する歪み隔離用ハウジング30の一例を水平方向に沿って断面して表した概略図である。図3は、図2の歪み隔離用ハウジングを略式に示す分解斜視図である。図4は、図2の歪み隔離用ハウジング30を光ファイバ16の経路をたどって且つ鉛直方向に沿って断面して表した概略図である。なお、本明細書における水平および鉛直という記載は絶対的な方向ではなく相対的な方向を指定するためのものであり、絶対的な方向は、ハウジングの向きに応じて変わるものである。
【0022】
図3および図4に示されているように、歪み隔離用ハウジングは、ベース部34とカバー部44とを備えている。図2、図3および図4に示されている実施例では、歪み隔離用ハウジング30は、タイルのようなほぼ矩形形状を有している。複合部材用のツールへの使用を意図する一つの実施例では、ハウジングの外寸法は、約25mm×20mm×3mm(長さ×幅×高さ)である。個々の用途に応じて、他のサイズのハウジングを用いることができる。前記ベース部34は、ベース部内にキャビティ36を形成するために底壁31と周壁32とを有しており、前記カバー部44は、このキャビティ36を覆うためのほぼ平坦な部材である。凹部46、48が、周壁において間隔をおいて相互に位置する二つの部位(本実施例では、ほぼ対向する部位46、48)に設けられることにより、光ファイバのためのハウジング30の入口38およびハウジング30の出口40が形成されている。光ファイバ16が、周壁の凹部46、48を貫通しており、また、ハウジング30の入口38とハウジング30の出口40において、適切な位置に樹脂42を用いて固定又はシールされている。すなわち、周壁32の凹部が詰められることによってシールされている。これに用いられる樹脂はツールが加熱される温度に対し耐えることができるようないかなる適切な樹脂であってもよい。カバー部44にベース部34を接合する適切な樹脂の一例として、「Duralco 4525-1、高温用の樹脂」を挙げることができる。また、この同一の樹脂をハウジングの壁の穴を詰めるためのシールに用いることができる。センサを埋め込みうる複合材料用のツールを形成する複合材料内の炭素繊維を結合するために、異なるエポキシ樹脂を用いることができる。
【0023】
本実施例では、光ファイバ16は、周壁32の凹部46、48内の樹脂により、ハウジング30の入口38およびハウジング30の出口40で支持(保持)され、キャビティ36を自由に貫通するようになっている。光ファイバ16は、凹部内の樹脂によりハウジング30内に固定されており、光ファイバ16の長さが、ハウジング30の入口38とハウジング30の出口40との間の直線距離よりも長いため、光ファイバ16が少なくとも一つの弧状部17を呈するようになっている。本実施例では、ブラッグ格子18は、ハウジング30内の弧状部17の途中に形成されている。少なくとも一つの弧状部17が存在するのは、ファイバの配置される経路がハウジング30の入口38とハウジング30の出口40との間の直線経路よりも長いからである。例えば、直線経路の長さが25mmであると仮定すると、ハウジング中で25.6mmの長さの光ファイバは、33mmの弧半径に対して45度の弧角度を形成することになる。
【0024】
光ファイバ16の曲率により規定される弧角度および半径は、ハウジング内のファイバを歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、ファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。例えば、前記弧は、緩やかな弧であり、ファイバのフルループよりも相当下回り、すなわち光ファイバがそれ自体と交差すべくとり得る経路を相当下回るようなものであるように選択される。規定された弧角度は、例えば10〜90度の範囲内であり、より有利には30〜60度の範囲内にある。上述の一つの実施例では、弧は45度程度であり、曲率半径は33mmである。
【0025】
このことは、光ファイバにそれ自体に対する損傷を回避させ且つブラッグ格子18の良好な動作を担保させることを可能とする曲率内に含まれ、且つあまり多くのスペースをとらないような緩やかな湾曲を採らせることにより、ハウジング内の光ファイバをハウジングの外方の歪みから実質的に隔離することができるということを意味している。ブラッグ格子18を、例えば光ファイバのうちのハウジング内に位置する弧形状を有する部分に設けることができる。
【0026】
図5は、図1に示されている歪み隔離用ハウジングのうちの一つに対応する歪み隔離用ハウジング50の他の一例を示す、水平方向に沿って断面した概略図である。図6は、図5の歪み隔離用ハウジングを略式に示す分解斜視図である。図7は、図5の歪み隔離用ハウジング50を光ファイバ16の経路をたどって且つ鉛直方向に沿って断面したものを示す概略図である。図6および図7に示されているように、歪み隔離用ハウジングはベース部52とカバー部56とを備えている。図5、図6および図7に示されている実施例では、歪み隔離用ハウジング50は、タイルのようなほぼ矩形形状を有している。ベース部52はチャネル54から形成されており、このチャネルは、光ファイバ16を受けるために弧状の経路をたどることができるようなキャビティを形成している。本実施例では、チャネル54は光ファイバの断面よりも大きな断面を有しているので、光ファイバは、チャネル54内に完全かつ自由に受けられ、チャネル54の摩擦による拘束を受けない。光ファイバ16は、ハウジング50の入口38からハウジング50の出口40までチャネル54を貫通して延びている。本実施例では、光ファイバ16は、樹脂42を用いて周壁32の凹部を充填させることで、チャネル内のハウジング50の入口38の領域とハウジング50の出口40の領域とにおいて保持(固定)されている。図2および図3に示されている実施例と同様に、用いられる樹脂は、前記したように、ツールを加熱する温度に耐えることができるいかなる適切な樹脂であってもよい。
【0027】
本実施例では、光ファイバ16は、樹脂42により、ハウジング50の入口38の領域およびハウジング50の出口40の領域で支持され、チャネル54を自由に貫通するようになっている。光ファイバ16は、樹脂42によりハウジング50内に実質的に取り付けられており、チャネル50をたどる光ファイバ16の長さは、このチャネルがハウジング50の入口38とハウジング50の出口40との間の直線経路をたどる場合の直線距離よりも長くなっている。したがって、光ファイバ16は少なくとも一つの弧状部17を有している。本実施例では、ブラッグ格子18は、ハウジング50のチャネル54内の弧状部17の途中に形成されている。少なくとも一つの弧状部17が存在するのは、ファイバによってとられた経路およびチャネル54の経路がハウジング50の入口38とハウジング50の出口40との間の直線距離よりも長くなっているからである。
【0028】
前記チャネル54の経路は、図2〜図4を参照して記述されているように、光ファイバ16の曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング内のファイバを歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、ファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。
【0029】
図2〜図4の実施例をさらに参照すると、図8は、ハウジング30と類似しているものの、図4に示されているハウジングとは幾分異なる構成を有している他のハウジング60を示す鉛直断面図である。光ファイバ16を完全に受けるキャビティ36を有したベース部34と、ほぼ平坦なカバー44とを備えた、ハウジング30というよりは、図8の例示のハウジング60では、ベース部62およびカバー部64は、光ファイバ16を受けるためのキャビティ66の一部を形成するような形状に形成されている。図8に示されているように、ベース部62は、キャビティ66のうちの一部を形成するための周壁63を有しており、カバー部64は、キャビティ66のうちのさらなる一部を形成するための周壁65を有している。これらの周壁63、65には、ハウジング60の入口38およびハウジング60の出口40において凹部が形成されている。光ファイバ16は、ベース部62およびカバー部64の周壁63、65の入口38および出口40凹部の各々により部分的に保持され、図2〜図4に記載されているように、凹部を詰めてシールするための樹脂42を用いて凹部にシール(固定)されている。また、この樹脂を、ベース部62をカバー部64に接合するためにも用いることができる。
【0030】
本実施例では、図2〜図4に示された実施例と同様に、光ファイバ16は、周壁63、65の凹部内の樹脂42により、ハウジング30の入口38およびハウジング30の出口40で支持され、キャビティ66を自由に貫通するようになっている。また、図2〜図4の実施例と同様に、光ファイバ16は、凹部内の樹脂によりハウジング60内に固定されており、光ファイバ16の長さが、ハウジング60の入口38とハウジング60の出口40との間の直線距離よりも長いため、光ファイバが、図2〜図4に記載されたような少なくとも一つの弧状部を呈し、光ファイバ16の弧状部の途中に形成されたブラッグ格子を有するようになっている。
【0031】
図9は、ハウジング60と類似しているものの、図8に示されているハウジングとは幾分異なる構成を有している、さらに他の形態のハウジング70の構成を示す鉛直断面図である。ハウジング70のベース部72は、光ファイバを部分的に受けるキャビティ66を形成する周壁73を有している。ハウジング70のカバー部74はほぼ平坦になっており(すなわち、それは周壁を有していない)、しかし代わりに、それには、光ファイバ16を部分的に受けるためのチャネル75が形成されている。チャネル75は、光ファイバ16を受けるための弧状の経路をたどるようにカバー内に形成されている。本実施例では、チャネル54は光ファイバ16の直径よりも大きな幅寸法を有しているので、光ファイバは、チャネル75内に部分的にかつ自由に受けられ、チャネル75との摩擦による拘束を受けないようになっている。光ファイバ16は、ハウジング70の入口38からハウジング70の出口40までチャネル75を貫通して延設されている。本実施例では、光ファイバは、前述したような樹脂42を用いて、ハウジング内のうちの、ハウジング70の入口38の領域とハウジング50の出口40の領域において固定されている。前述した実施例と同様に、用いられる樹脂はツールが加熱される温度に耐えることができるいかなる適切な樹脂であってもよい。例えば、「Duralco 4525-1、高温用の樹脂」を用いて、ベース部34をカバー部44に接合し、ハウジングの周壁内の穴を詰めてシールすることが可能である。チャネル75の経路は、図2〜図4を参照して記述されているように、光ファイバ16の曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング70内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。ブラッグ格子18は、光ファイバ16の弧状部の途中に形成されている。
【0032】
図10は、ハウジング50と類似しているものの、図7に示されているハウジングとは幾分異なる構成を有している、さらに他の形態のハウジング80の構成を示す鉛直断面図である。この場合、ベース部82にはチャネル83が形成されており、カバー部84にはチャネル85が形成されている。これらのチャネル83、85は、カバー部84がベース部82に接合されたとき、該チャネル83、85が組み合わされてチャネル86を形成し、このチャネル86が、光ファイバ16を受けるための弧状の経路をたどるキャビティを形成するように構成されている。本実施例では、チャネル86は光ファイバの断面よりも大きな断面を有しているので、光ファイバは、チャネル86内に完全かつ自由に受容され、チャネル86との摩擦による拘束を受けないようになっている。光ファイバ16は、ハウジング80の入口38からハウジング80の出口40までチャネル86を貫通して延びている。本実施例では、光ファイバは、チャネル86を充填する樹脂42を用いて、チャネル内のうちの、ハウジング80の入口38の領域とハウジング80の出口40の領域とにおいて保持(固定)されている。前述したその他の実施例と同様に、用いられる樹脂はツールが加熱される温度に耐えることができる、いかなる適切な樹脂であってもよい。前記チャネル86の経路は、図2〜図4に記載されているように、光ファイバ16の曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。ブラッグ格子18は、光ファイバ16の弧状部の途中に形成されている。
【0033】
前述したすべての実施例において、光ファイバ16の位置決めは図2〜図4に記載されているのと実質的に同様におこなわれ、単一の湾曲を有しているということを前提としている。しかしながら、他の多くの可能性が存在する。
【0034】
図11には、図2〜図4のハウジングに類似したハウジング90に基づいた、一つの可能な他の形態の構成が示されている。しかしながら、図11に示されているように、ハウジング90は、周壁92のほぼ対角線上に対向した位置関係にある入口38と出口40とを有している。本実施例では、入口38と出口40との間の距離よりも長い光ファイバ16が、入口38と出口40とにおける周壁の凹部に詰め込まれた樹脂42により、ハウジング90のベース部94の周壁92内に形成されているキャビティ96内に保持されている。本実施例では、光ファイバの追加の長さは、「S」状又は曲がりくねった形状、この場合には二つの弓状のものが相互に反対向きになって並んだ形状(形態)に形成されている。ブラッグ格子18は、曲がりくねった部分に設けられている。ファイバ16の弧状部と弧状部との間に設けられてもよいし、又は、弧状部上に設けられてもよい。先に述べた実施例と同様に、光ファイバ16のハウジング90は、図2〜図4に記載されているように、光ファイバの曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。
【0035】
上述した実施例では、ハウジング14はほぼ正方形状又は矩形形状を有している。しかしながら、他の実施例では、他の形状が用いられてもよい。
【0036】
例えば、図12には、菱形状のハウジング100が示されており、この菱形状のハウジング100は、図2〜図4に例示されたハウジングに類似している。かかるハウジング100は、このハウジング100のベース部104のほぼ両端における周壁102内に入口38と出口40とを備えている。この入口38と出口40との間の距離よりも長い光ファイバ16が、入口38と出口40における周壁の凹部に詰め込まれた樹脂42により、ハウジング100のベース部104の周壁102内のキャビティ106内に、保持(固定)されている。本実施例では、光ファイバがより長い長さを有することにより、弧状又は「C」形状が形成されている。本実施例の弧状部内にブラッグ格子18が設けられている。前述した実施例と同様に、光ファイバ16のハウジング100は、図2〜図4に記載されているように、光ファイバの曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。
【0037】
図13には円状のハウジング110が示されており、この円状のハウジング110は、その他の点では、図2〜図4に例示されているハウジングに類似している。ハウジング110は、ハウジング110のベース部114の周壁112に、ほぼ対向した入口38および出口40を備えている。入口38と出口40との間の距離よりも長い光ファイバ16が、入口38と出口40における周壁の凹部に詰め込まれた樹脂42により、ハウジング110のベース部114の周壁112内のキャビティ116内に、保持(固定)されている。本実施例では、光ファイバの追加の長さが、弧状又は「C」形状を形成している。この実施例の弧状部にブラッグ格子18が設けられている。先の実施例と同様に、光ファイバ16とハウジング110は、図2〜図4に記載されているように、該光ファイバ16の曲率により規定される弧角度および半径が、前記ハウジング内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。
【0038】
前述した実施例では、ハウジングは平坦な上側面および下側面を有している。しかしながら、他の実施例としてのハウジングは他の外部形状を有していてもよい。例えば、図14には、ほぼ円筒形状をしたハウジング120の一例が示されている。本実施例は、ハウジング上部122とハウジング下部124とから形成されている。チャネル128の入口38がハウジング120の一方の端部に設けられており、チャネル128の出口がハウジング120の他方の端部に設けられている。前記チャネル128は、入口38と出口40との間の直線距離より長い湾曲した経路をたどるように、ハウジング124の二つの部分122、124の各々の一部に形成されている。光ファイバ16は、前記チャネル128内に受容され、ハウジング120内のうちの、ハウジング120の入口38の領域および出口40の領域においてシールされている。本実施例では、ブラッグ格子18は、光ファイバ16の弧状部の途中に形成されている先の実施例と同様に、光ファイバ16とハウジング120は、図2〜図4に記載されているように、光ファイバの曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。
【0039】
なお、ハウジングのさまざまな実施例は、歪み隔離用ハウジングの形状および構成の具体例を表すために選択的に記載されたものである。いうまでもなく、これらの実施例は、例示することのみを意図したものであり、さまざまな実施例の特徴がいかなる適切なコンビネーションで組み合わせられいてもよい。例えば、ハウジングの形状は、記載された実施例ならびに/又は直線の壁および/若しくは湾曲した(例えば、半円状、多角形状の)壁を組み合わせたものを有するハウジングの他の実施例のうちのいずれの形態をとってもよく、これらのハウジングは、図4、図7、図8、図9、図10、図14のうちの一又は複数を、参照して記載されているように構成されていてもよい。
【0040】
図15には、複合材料部材を形成するためのツール132用の温度センサを形成するための、歪み隔離用ハウジングの例示の用途が示されている。この例示のツール132は、例えば抵抗性加熱素子たる複数の電気ヒータ134をその内部に埋め込んだものである。各ヒータ134はツールのあるゾーン(領域)を加熱するようになっている。図15に示されているように、各ゾーンは、図2〜図14に例示のみを意図して記載されているように、ブラッグ格子18が設けられた光ファイバ16の弧状部を収容しているハウジング14を含み得る。図15に示されている実施例では、光ファイバ16の両端がファイバ・センサ・インターロゲータ20に接続されている。ファイバ16の両端をファイバ・センサ・インターロゲータに接続させることの利点は、ファイバが途中で損傷した場合であっても、今までどおりブラッグ格子18にアクセスすることができるということである。ファイバ・センサ・インターロゲータ20は、それらの格子18により検出された温度を求めるためにTDM又はWDMの技術を用いてブラッグ格子18をアドレスするようになっている。コンピューター22は、格子18からの温度信号を処理し、次いで、本実施例では、ヒータコントローラ136に温度データを送信し、このヒータコントローラ136は、ハウジング14内において格子18により検出された温度に応じて個々のヒータ134を制御し、ツール132の各領域の温度を制御するようになっている。
【0041】
例示の実施形態では、光ファイバ16およびハウジング14は、ツール上又はツール内のいかなる適切な位置に設けられてもよい。例えば、加熱素子134と所望の関係に従って位置決めされもよい。光ファイバ16およびハウジング14は、上述の実施例に記載されているようにツールの材料に埋め込まれていてもよいし、又は、例えばツールが中空である場合、光ファイバおよび/又はハウジングは、そのツールの内面に固定されていてもよい。
【0042】
図1および図15に記載されているような光ファイバセンサのアレイ配列は、ツール全体にわたる温度を簡単に監視および/又は制御することが可能である。光ファイバ上には複数の格子を設けることができる。例えば、100以上の格子およびそれらに対応するハウジングを設けることができる。さらに、ハウジング内に設けられた格子付きの複数のファイバが一つのツール上に設けられてもよいし、複数のファイバ・センサ・インターロゲータ2が設けられてもよい。また、一又は複数のヒータコントローラが設けられてもよい。
【0043】
ブラッグ格子18を有しているファイバ16(又は、複数のファイバ)およびハウジング14は、組立てる工程およびツールから部材を取り外す工程で損傷を受けることは通常ない。したがって、光ファイバおよびハウジングは、ツールから取り外され、また、新しいツールに再利用されることにより、時間および材料の消耗を低減し、生産費を削減することができる。
【0044】
光ファイバ上の温度センサ(ハウジング内の格子により形成される)は、最初に使用する前に校正される。しかしながら、校正の後、これらのセンサは、形成される部材に適用可能な品質管理基準に従い、続く次の部材形成処置のために再校正される必要はない。したがって、このようなツールの一部の用途、例えば重要ではない部材の製造では、格子を使用毎に再校正する必要はない。しかしながら、重要な部材が、それに関連する品質管理基準を有し得る場合、センサを再校正する必要がある。したがって、このツールの一部の用途、例えば重要な航空機用の部材の製造においては、品質管理および/又は監督機関が、再校正を要求する場合がある。
【0045】
前述した実施例では、ツールは複合材料から形成されており、このツールの複合材料内に光ファイバを埋め込むことが可能である。また、この複合材料内にハウジングも埋め込んでもよい。しかしながら、他の実施例では、このツールが他の一又は複数の材料から作られていてもよい。一つの実施例では、このツールが成型材料、例えばプラスチックからなっていてもよく、成型プロセス中に、ファイバおよびハウジングが材料内に埋め込まれていてもよい。
【0046】
上述のハウジングは、複合材料であってもよいし、又は、ツールと相性のよい他の材料であってもよい。他の実施例では、ハウジングは、当該ハウジングの外方のファイバに加えられる歪みから当該ハウジング内のファイバを実質的に隔離するために、ファイバおよびブラッグ格子を実質的に自由にハウジング内に収容することによって、実質的に温度の変化のみがブラッグ格子に対して影響を与えるという限りにおいて、例えば金属の如き他の材料から作ることが可能である。
【0047】
上述の用途の具体例は、成型ツールの温度の検出に関するものである。しかしながら、上述のようにハウジング内に収容されるブラッグ格子を有する光ファイバの他の用途には、成型するツール以外の構造体の温度を検出することが含まれ得る。このような構造体の例としては、宇宙船、航空機、船および自動車を含む乗り物;パイプライン;化学プラントなどの産業プラント;建物、トンネル、道、橋梁、鉄道および他の土木構造体等が挙げられる。
【0048】
本発明は、さらに、医学又は獣医学、例えば人又は動物の温度の監視に用いられてもよい。
【0049】
図16には、光ファイバを備えた装置152が示されており、この光ファイバ上のハウジング14内に位置する部分にはブラッグ格子18が設けられ、各ハウジング14は、当該ハウジング14の外方のファイバ16に加えられた歪みからファイバを隔離するためにハウジング14内にファイバ16およびブラッグ格子18を実質的に自由に収容することにより、実質的に温度の変化のみがブラッグ格子18に対して影響を与えるようになっている。これらのハウジングは前記した通りのものであってもよい。温度検出用のブラッグ格子18に加えて、ファイバ16は、上述のようなハウジング14内には設けられておらず、温度以外の変数を検出するように動作可能な少なくとも一つのブラッグ格子154、156を有していてもよい。例えば、ファイバ16上の一又は複数の格子154、156は、適切な信号プロセッサ160と一緒に動作して、歪み、化学種および/又は他の変数若しくは物性を検出できるようになっていてもよい。
【0050】
図16の装置152は構造体を備えており、この構造体の具体例としては、宇宙船、航空機、船および自動車を含む乗り物;パイプライン;化学プラントなどの産業プラント;建物、トンネル、道、橋梁、鉄道および他の土木用構造体等が挙げられる。装置152は温度と化学種を検出するために用いられてもよい。
【0051】
例えば、図16の装置が構造体152上に設けられ、上述のようなツールになるような場合、格子154、156は、ツール上で実行される複合材料の硬化プロセス中の例えば硬化品質を検出するために用いることができる。
【0052】
例えば、構造体152が土木用構造体又は乗り物である場合、例えば構造体152の温度および歪みを監視するように図16に図示する装置を構成することができる。例えば、構造体152が航空機又は他の乗り物である場合、構造体の疲労の開始を予測および/又は監視するために、その乗り物の構造体の部品の歪みおよび温度変化を監視することが望ましい場合もある。構造体が例えば橋梁である場合、本装置は、例えば橋梁上の道路の温度に加えて、例えば橋梁に作用する負荷を監視することができる。
【0053】
本装置を、歪み、温度および化学種を監視するために用いることが可能である。このことは、上述のようなツール上で硬化サイクルを監視する際に有益な場合もあれば、又は、化学プラント又は道路のトンネルの内部におけるとりわけ汚染物質の蓄積を監視するのに有益な場合もある。
【0054】
図16に示されているように、光ファイバ16はプロセッサ160に接続されている。このプロセッサ160は、ブラッグ格子プロセッサ、例えば図1又は図15に記載されているようなファイバ・センサ・インターロゲータを備えている。プロセッサ160は、将来分析するために、格子18、154、156により検出されたデータを記録する、参照番号「162」で示されたデータ記録装置を、さらに備えていてもよい。これに加えて、又はこれに変えて、プロセッサ160は、例えば温度のような検出された変数を制御するためのプロセスコントローラを備えていてもよい。プロセッサ160は、遠隔のプロセッサ164と通信するデータ発信機を備えていてもよい。この遠隔のプロセッサは、それ自体が、データ記録装置および/又はプロセスコントローラを有していてもよい。
【0055】
以上のように、光ファイバを有した温度センサ・アレイが記載されている。複数のブラッグ格子が光ファイバ上の間隔をあけて並んだ部位に形成されている。光ファイバのうちのブラッグ格子を有している部分をハウジング内に収容し、このハウジングが、当該ハウジングの外方のファイバに加えられた歪みから格子を実質的に隔離して自由にその部分を収容することにより、温度の変化のみがその部分のブラッグ格子に影響を与えるようになっている。このアレイは、とりわけ複合材料部材を形成するためのツールの、温度を検出して制御するためなどに用いることができる。
【0056】
前記した実施形態は相当に詳細に記載されているが、いったん前記開示内容が完全に理解されたならば、多数の変更および修正が当業者にとって明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出、例えば、複合材料部材成形用のツールの温度検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合材料部材を作るのに、内部に埋め込まれた一又は複数のヒータを備えたツールを使用することが知られている。硬化サイクル中、前記ツールの温度を監視及び/又は制御することが必要である。通常、熱電対を使用するが、それらは幾つかの欠点がある。単一の熱電対は局所的な領域しか監視しないし、より大きなツールでは、多くの熱電対が必要となり、配線および接続部が複数必要となる。通常、複数の熱電対は、形成中の複合材料部材の端方の外方の「予備」部材に設けられる。この予備部材は、複合材料部材が成形された後に、複合材料部材から取り除かれる。さらに、複数の熱電対およびそれらの配線を、形成中の材料の中に埋め込むこともできるが、複合材料をツールから取り外すと、配線が損傷し、交換することになり、また、熱電対を再び用いる際に、再び校正を行うこととなる。これらの熱電対は、前記複合材料自体の材料を直接的に監視するようには用いられない。というのは、これらの熱電対が複合材料部材の材料(すなわち、廃棄されない複合材料部材の材料)自体に埋設され又はその他の方法で複合材料部材の表面に傷跡を残すことになってしまうからである。
【0003】
例えば、温度のような変数又は化学種の濃度を検出するためにブラッグ格子を利用した光ファイバセンサが提案されている。光ファイバの歪みを検出するために、複数のブラッグ格子を光ファイバ上に分布させて配置することは公知である。さらに、ファイバ上の複数の格子を扱う(アドレスする)ために、波長分割マルチプレックス又は時分割マルチプレックスの技術を用いることが知られている。
【0004】
WO00/39548には、ファイバに沿ってアレイ状に分布させた格子が開示されている。各格子は、円筒状のガラス筒内に入れられているとともに、それに融合されているファイバの一部分上に配設されており、かかるガラス筒は、ファイバの熱膨張率とは異なる熱膨張率を有し、格子に対して歪みを加えることによって温度変化に対する前記格子の感度を向上させるようになっている。また、前記ガラス筒は、かかる筒の外方のファイバに加えられた軸方向の歪みに対する、前記格子の感度を、低下させるようにもなっている。しかしながら、前記ガラス筒がファイバに融合されているため、ファイバ上の軸方向の歪みは、ガラス筒内のファイバに対して伝達されるので、該ガラス筒内の前記格子によって検知される値は、このファイバ上の軸方向の歪みの影響を受けることになる。
【0005】
WO03/076887には、船、橋梁、原油採掘、生産設備のような大きな構造体用で、歪みに反応する一又は複数のブラッグ格子を備えた光ファイバの利用について開示されている。また、この文献には、歪応答格子により計測される温度信号を補償するために利用され得る温度測定を行うために、歪みを隔離するパッケージ内にブラッグ格子を配設することが開示されている。したがって、WO03/076887には、実際の温度計測ではなく、むしろ温度補償を実現するためにブラッグ格子を利用することが記載されている。WO03/076887に開示されている歪み隔離用のパッケージの一例は、ディスク内の円形状の溝に光ファイバのループを受容し、かかる光ファイバは、前記円形状の溝に対して接戦方向に沿ってその円形状の溝に入出するようになっている。この歪み隔離用のパッケージは、それ自体比較的大きく、かつ、光ファイバが円形状の溝に入出するところで光ファイバがそれ自体と交差又は横断するという欠点がある。歪み隔離用のパッケージの他の例として、よりコンパクトな構成が開示されている。かかる構成では、光ファイバが直線状に延び、ブラッグ格子が高弾性係数を有する部材、すなわち補強材上に配設され、ブラッグ格子が高弾性係数を有する接着剤を用いてこの補強材に固定されている。前記光ファイバと補強材は、さらに低弾性係数を有するポリマーによって被覆され、前記補強材の両端部に位置する光ファイバに集中応力が作用するのを低減するようになっている。かかる歪み隔離用のパッケージは複雑な構造となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、コンパクトで安価な構造を有し、複合材料部材を成形するためのツールに役立つ温度センサを提供し、アレイ状に配置された温度センサを提供し、上記のような温度センサ又はアレイ状に配置された温度センサを組み入れたツールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様は、光ファイバと歪み隔離用ハウジングとを備えた装置を提供している。かかるハウジングは、キャビティを有し、キャビティへの入口およびキャビティからの出口を有している。光ファイバは入口からハウジングに入り、出口からハウジングを出るように構成されている。また、この光ファイバは、前記入口に位置する第一の固定箇所においてハウジングに固定されているとともに、前記出口に位置する第二の固定箇所においてハウジングに固定されている。かかる光ファイバは、ブラッグ格子を前記ハウジング内に有しているとともに、交差することのない通路に沿って、前記キャビティへの入口と前記キャビティからの出口との間を延びている。前記通路は、前記ハウジングの外方の光ファイバに加えられた歪みから前記ブラッグ格子が形成されている部分を前記ハウジング内に実質的に隔離するように、また、実質的に温度変化のみが前記ブラッグ格子に影響を与えるように、少なくとも一つの固定されていない弧状部を有している。
【0008】
前記構成により、簡単に製造することができ、コンパクトにすることができ、かつ、構造体の所望の位置に容易に設けて温度測定が可能となるシンプルな構成を得ることができる。前記ハウジングは、センサやアレイ状に配置されたセンサのいかなる個々の用途に対しても適合性を有するいかなる適正な材料から作られてもよい。前記ハウジングは、該ハウジングの外方のファイバに加えられる歪みから前記格子を隔離することにより、ハウジングの外方のファイバに歪みを生じさせないという状態を確保することを必要とすることなく(前記ファイバの破損を回避するのを除いて)、より正確な温度検出を可能とするとともに、装置の簡単なセットアップを可能とする。
【0009】
また、本発明の一つの態様は、このような装置を組み入れたツール又は他の構造体を提供している。
【0010】
本発明のさまざまな態様が、本明細書に添付した独立形式のあるいは従属形式の請求項に記載されている。本発明の他の態様は、記載されている実施形態の構成要件、添付の従属形式の請求項に記載されている構成要件および/又は独立形式の請求項に記載されている構成要件のあらゆる組み合わせをも含むものである。したがって、本発明は、単に添付の請求項に明確に記載されている組み合わせに限定されるものではない。
【0011】
本発明の実施例は単なる例示であって、これらは添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、複合材料部材を成形するためのツール上に配置された温度検出のための本発明にかかるアレイ状に配列されたブラッグ格子を示す概略図である。
【図2】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングの一例を水平方向に沿って断面して示した概略図である。
【図3】図2の歪み隔離用ハウジングの一例を略式に示した分解斜視図である。
【図4】図2の歪み隔離用ハウジングを鉛直方向に沿って断面して示した概略図である。
【図5】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングの他の一例を水平方向に沿って断面して示した概略図である。
【図6】図5の歪み隔離用ハウジングの一例を略式に示した斜視図である。
【図7】図4の歪み隔離用ハウジングの一例を鉛直方向に沿って断面して示した概略図である。
【図8】図2の歪み隔離用ハウジングの他の構成を鉛直方向に沿って断面して示した概略図である。
【図9】図2の歪み隔離用ハウジングのさらに他の構成を鉛直方向に沿って断面して示した概略図である。
【図10】図4の歪み隔離用ハウジングの他の構成を鉛直方向に沿って断面して示した概略図である。
【図11】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングのさらなる一例を示す水平方向に沿って断面した概略図である。
【図12】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングの他の一例を示す水平方向に沿って断面した概略図である。
【図13】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングのさらなる一例を示す水平方向に沿って断面した概略図である。
【図14】光ファイバの一部にブラッグ格子が設けられている、歪み隔離用ハウジングの他の一例を略式に示した斜視図である。
【図15】本発明に従って加熱素子とアレイ状に配列されたブラッグ格子を有する、複合材料部材を成形するためのツールを示した概略図である。
【図16】本発明にかかるアレイ状に配列されたブラッグ格子を有する構造体を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は種々の形態で実施することができ又その一部を置換することができるものであり、以下にそのうちの幾つかの例を挙げて図面を参照してより詳細に説明する。しかし、これら例示された実施例や図によって本発明が限定されて解釈されるものではなく、反対に、本発明は、発明の精神や範囲に従って、本発明の実施例と均等するあるいは置き換えられたものまで含むものと理解されたい。
【0014】
本発明の実施例を、高分子樹脂内に予め含浸させた強化ファイバの積層材料を例に挙げて、複合材料からなる部材を成形するためのツールを参照して、説明する。
【0015】
積層された材料の各薄層は、ファイバの複数の層を含むこともできる。これらのファイバは、例えば、炭素繊維であってもよいし又はケブラーであってもよい。一連の薄層のファイバは、当該技術分野において公知になっているように、異なる向きを有していてもよい。複合材料部材の成形のプロセスには、内部に埋め込まれ得る一又は複数のヒータにより加熱されるツールが必要となる。このツールの温度は、少なくとも監視され、そして、好ましくは制御されることが必要である。このため、アレイ状に配列された温度センサが設けられている。本実施例では、前記のアレイ状の配列は、一本の光ファイバ上に複数のセンサが配置されたものとなっている。
【0016】
前記ツールは、成形される複合材料と相性の良い材料でできている。例えば、既に述べた実施例では、前記ツールに複合部材と同一の材料が用いられている。
【0017】
前記光ファイバは、いかなる適切な材料でつくられてもよい。ここに記載の実施例では、前記光ファイバは、ガラス製又はシリカ製の光ファイバであり、かかる光ファイバは、典型的な炭素繊維複合部材の硬化された一層の厚みと同等の直径をしており、ここで、典型的な厚みは、0.250mm(250ミクロン)である。ガラス製の光ファイバは、炭素製ファイバと比べて剛性が低いものの、複合材料およびその加工性との相性がよい。かかる光ファイバは、ツールの複合材料の表面から適切な深さに埋め込むことができる。別の実施例では、前記光ファイバが他の材料で作られていてもよい。
【0018】
図1を参照すると、複合材料部材を成形するためのツール12内には、それぞれが光ファイバ16の一部を含んでいる複数のハウジング14が埋め込まれている。前記ハウジング14は、前記ツール12の表面より下(内部方)に埋め込まれることによって一体となっている。例えば、前記ツールが薄層で構成されている場合、前記ハウジングは該ツール表面上の最上面の薄層の真下に位置付けされる。
【0019】
前記ファイバ16のうちのハウジング14内に位置する部分は、それぞれブラッグ格子18を該ファイバ上に有している。かかる格子18を、公知の方法によって、前記ファイバ上に書き込むことができる。ブラッグ格子プロセッサ20、例えばファイバ・センサ・インターロゲータは、前記ファイバ16に沿って前記格子に適切な波長のレーザ光を伝達するよう構成されている。各格子は、前記プロセッサ20によって、波長分割マルチプレックス(TDM)技術又は時分割マルチプレックス(WDM)技術を用いてアドレスされるようになっているが、両者とも当該技術分野において良く知られた技術であるので、これ以上詳しいことはここでは説明しない。温度の変化については、当該技術分野において公知のように、格子18により前記プロセッサ20へ戻された信号を適切に処理することにより検知することができる。図1の実施例では、前記アレイ状に配列されたセンサによって検出された温度を解析すべく適切な解析ソフトウェアを実行するようにコンピューター22を配置することができる。図15を参照しつつ下記に述べられている如く、検出された温度に応じて一又は複数の加熱素子を制御することができる。
【0020】
下記に記載されているように、ハウジング14の各々は、ハウジングの外方のファイバに対して加えられる歪みからハウジング14内の格子18を隔離するためにファイバ16の一部を収容するようになっている。前記ファイバ16に対しては、ハウジング14内では軸方向の歪みをできるだけ少なく抑え、理想的には軸方向の歪みを無くすことが望ましい。前記ハウジング14内の歪みは、一定の基準レベル内にあり、このことから、温度の変化により引き起こされる歪みを検出することができる。前記光ファイバ16のうちのハウジング14内に位置する部分は、それぞれ少なくとも一つの弧状部又は湾曲部を有するように形成されている。このことは、このファイバ16がハウジング14の入口点とハウジング14の出口点との間でより長い経路をとることによって歪みから実質的に隔離され得るようになっていることを意味している。なお、入口若しくは入口点又は出口若しくは出口点と記載されているが、このことは移動を示しているのでもなければ入口と出口の機能を示しているのでもなく、これらの用語は、光ファイバが貫通する歪み隔離用ハウジングのポート又は開口部を表すために用いられているに過ぎない。光ファイバ16のうちの、ハウジング14とハウジング14との間にある部分は、ツールの材料内に埋め込まれている。ファイバ16のうちのハウジング14とハウジング14との間の部分は歪みを受けることになるが、ハウジング14が当該ハウジング14内の格子18をその歪みから隔離しているため、かかる格子18は正確に温度のみを検出することができる。
【0021】
図2は、図1に示されている歪み隔離用ハウジング14のうちの一つに対応する歪み隔離用ハウジング30の一例を水平方向に沿って断面して表した概略図である。図3は、図2の歪み隔離用ハウジングを略式に示す分解斜視図である。図4は、図2の歪み隔離用ハウジング30を光ファイバ16の経路をたどって且つ鉛直方向に沿って断面して表した概略図である。なお、本明細書における水平および鉛直という記載は絶対的な方向ではなく相対的な方向を指定するためのものであり、絶対的な方向は、ハウジングの向きに応じて変わるものである。
【0022】
図3および図4に示されているように、歪み隔離用ハウジングは、ベース部34とカバー部44とを備えている。図2、図3および図4に示されている実施例では、歪み隔離用ハウジング30は、タイルのようなほぼ矩形形状を有している。複合部材用のツールへの使用を意図する一つの実施例では、ハウジングの外寸法は、約25mm×20mm×3mm(長さ×幅×高さ)である。個々の用途に応じて、他のサイズのハウジングを用いることができる。前記ベース部34は、ベース部内にキャビティ36を形成するために底壁31と周壁32とを有しており、前記カバー部44は、このキャビティ36を覆うためのほぼ平坦な部材である。凹部46、48が、周壁において間隔をおいて相互に位置する二つの部位(本実施例では、ほぼ対向する部位46、48)に設けられることにより、光ファイバのためのハウジング30の入口38およびハウジング30の出口40が形成されている。光ファイバ16が、周壁の凹部46、48を貫通しており、また、ハウジング30の入口38とハウジング30の出口40において、適切な位置に樹脂42を用いて固定又はシールされている。すなわち、周壁32の凹部が詰められることによってシールされている。これに用いられる樹脂はツールが加熱される温度に対し耐えることができるようないかなる適切な樹脂であってもよい。カバー部44にベース部34を接合する適切な樹脂の一例として、「Duralco 4525-1、高温用の樹脂」を挙げることができる。また、この同一の樹脂をハウジングの壁の穴を詰めるためのシールに用いることができる。センサを埋め込みうる複合材料用のツールを形成する複合材料内の炭素繊維を結合するために、異なるエポキシ樹脂を用いることができる。
【0023】
本実施例では、光ファイバ16は、周壁32の凹部46、48内の樹脂により、ハウジング30の入口38およびハウジング30の出口40で支持(保持)され、キャビティ36を自由に貫通するようになっている。光ファイバ16は、凹部内の樹脂によりハウジング30内に固定されており、光ファイバ16の長さが、ハウジング30の入口38とハウジング30の出口40との間の直線距離よりも長いため、光ファイバ16が少なくとも一つの弧状部17を呈するようになっている。本実施例では、ブラッグ格子18は、ハウジング30内の弧状部17の途中に形成されている。少なくとも一つの弧状部17が存在するのは、ファイバの配置される経路がハウジング30の入口38とハウジング30の出口40との間の直線経路よりも長いからである。例えば、直線経路の長さが25mmであると仮定すると、ハウジング中で25.6mmの長さの光ファイバは、33mmの弧半径に対して45度の弧角度を形成することになる。
【0024】
光ファイバ16の曲率により規定される弧角度および半径は、ハウジング内のファイバを歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、ファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。例えば、前記弧は、緩やかな弧であり、ファイバのフルループよりも相当下回り、すなわち光ファイバがそれ自体と交差すべくとり得る経路を相当下回るようなものであるように選択される。規定された弧角度は、例えば10〜90度の範囲内であり、より有利には30〜60度の範囲内にある。上述の一つの実施例では、弧は45度程度であり、曲率半径は33mmである。
【0025】
このことは、光ファイバにそれ自体に対する損傷を回避させ且つブラッグ格子18の良好な動作を担保させることを可能とする曲率内に含まれ、且つあまり多くのスペースをとらないような緩やかな湾曲を採らせることにより、ハウジング内の光ファイバをハウジングの外方の歪みから実質的に隔離することができるということを意味している。ブラッグ格子18を、例えば光ファイバのうちのハウジング内に位置する弧形状を有する部分に設けることができる。
【0026】
図5は、図1に示されている歪み隔離用ハウジングのうちの一つに対応する歪み隔離用ハウジング50の他の一例を示す、水平方向に沿って断面した概略図である。図6は、図5の歪み隔離用ハウジングを略式に示す分解斜視図である。図7は、図5の歪み隔離用ハウジング50を光ファイバ16の経路をたどって且つ鉛直方向に沿って断面したものを示す概略図である。図6および図7に示されているように、歪み隔離用ハウジングはベース部52とカバー部56とを備えている。図5、図6および図7に示されている実施例では、歪み隔離用ハウジング50は、タイルのようなほぼ矩形形状を有している。ベース部52はチャネル54から形成されており、このチャネルは、光ファイバ16を受けるために弧状の経路をたどることができるようなキャビティを形成している。本実施例では、チャネル54は光ファイバの断面よりも大きな断面を有しているので、光ファイバは、チャネル54内に完全かつ自由に受けられ、チャネル54の摩擦による拘束を受けない。光ファイバ16は、ハウジング50の入口38からハウジング50の出口40までチャネル54を貫通して延びている。本実施例では、光ファイバ16は、樹脂42を用いて周壁32の凹部を充填させることで、チャネル内のハウジング50の入口38の領域とハウジング50の出口40の領域とにおいて保持(固定)されている。図2および図3に示されている実施例と同様に、用いられる樹脂は、前記したように、ツールを加熱する温度に耐えることができるいかなる適切な樹脂であってもよい。
【0027】
本実施例では、光ファイバ16は、樹脂42により、ハウジング50の入口38の領域およびハウジング50の出口40の領域で支持され、チャネル54を自由に貫通するようになっている。光ファイバ16は、樹脂42によりハウジング50内に実質的に取り付けられており、チャネル50をたどる光ファイバ16の長さは、このチャネルがハウジング50の入口38とハウジング50の出口40との間の直線経路をたどる場合の直線距離よりも長くなっている。したがって、光ファイバ16は少なくとも一つの弧状部17を有している。本実施例では、ブラッグ格子18は、ハウジング50のチャネル54内の弧状部17の途中に形成されている。少なくとも一つの弧状部17が存在するのは、ファイバによってとられた経路およびチャネル54の経路がハウジング50の入口38とハウジング50の出口40との間の直線距離よりも長くなっているからである。
【0028】
前記チャネル54の経路は、図2〜図4を参照して記述されているように、光ファイバ16の曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング内のファイバを歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、ファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。
【0029】
図2〜図4の実施例をさらに参照すると、図8は、ハウジング30と類似しているものの、図4に示されているハウジングとは幾分異なる構成を有している他のハウジング60を示す鉛直断面図である。光ファイバ16を完全に受けるキャビティ36を有したベース部34と、ほぼ平坦なカバー44とを備えた、ハウジング30というよりは、図8の例示のハウジング60では、ベース部62およびカバー部64は、光ファイバ16を受けるためのキャビティ66の一部を形成するような形状に形成されている。図8に示されているように、ベース部62は、キャビティ66のうちの一部を形成するための周壁63を有しており、カバー部64は、キャビティ66のうちのさらなる一部を形成するための周壁65を有している。これらの周壁63、65には、ハウジング60の入口38およびハウジング60の出口40において凹部が形成されている。光ファイバ16は、ベース部62およびカバー部64の周壁63、65の入口38および出口40凹部の各々により部分的に保持され、図2〜図4に記載されているように、凹部を詰めてシールするための樹脂42を用いて凹部にシール(固定)されている。また、この樹脂を、ベース部62をカバー部64に接合するためにも用いることができる。
【0030】
本実施例では、図2〜図4に示された実施例と同様に、光ファイバ16は、周壁63、65の凹部内の樹脂42により、ハウジング30の入口38およびハウジング30の出口40で支持され、キャビティ66を自由に貫通するようになっている。また、図2〜図4の実施例と同様に、光ファイバ16は、凹部内の樹脂によりハウジング60内に固定されており、光ファイバ16の長さが、ハウジング60の入口38とハウジング60の出口40との間の直線距離よりも長いため、光ファイバが、図2〜図4に記載されたような少なくとも一つの弧状部を呈し、光ファイバ16の弧状部の途中に形成されたブラッグ格子を有するようになっている。
【0031】
図9は、ハウジング60と類似しているものの、図8に示されているハウジングとは幾分異なる構成を有している、さらに他の形態のハウジング70の構成を示す鉛直断面図である。ハウジング70のベース部72は、光ファイバを部分的に受けるキャビティ66を形成する周壁73を有している。ハウジング70のカバー部74はほぼ平坦になっており(すなわち、それは周壁を有していない)、しかし代わりに、それには、光ファイバ16を部分的に受けるためのチャネル75が形成されている。チャネル75は、光ファイバ16を受けるための弧状の経路をたどるようにカバー内に形成されている。本実施例では、チャネル54は光ファイバ16の直径よりも大きな幅寸法を有しているので、光ファイバは、チャネル75内に部分的にかつ自由に受けられ、チャネル75との摩擦による拘束を受けないようになっている。光ファイバ16は、ハウジング70の入口38からハウジング70の出口40までチャネル75を貫通して延設されている。本実施例では、光ファイバは、前述したような樹脂42を用いて、ハウジング内のうちの、ハウジング70の入口38の領域とハウジング50の出口40の領域において固定されている。前述した実施例と同様に、用いられる樹脂はツールが加熱される温度に耐えることができるいかなる適切な樹脂であってもよい。例えば、「Duralco 4525-1、高温用の樹脂」を用いて、ベース部34をカバー部44に接合し、ハウジングの周壁内の穴を詰めてシールすることが可能である。チャネル75の経路は、図2〜図4を参照して記述されているように、光ファイバ16の曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング70内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。ブラッグ格子18は、光ファイバ16の弧状部の途中に形成されている。
【0032】
図10は、ハウジング50と類似しているものの、図7に示されているハウジングとは幾分異なる構成を有している、さらに他の形態のハウジング80の構成を示す鉛直断面図である。この場合、ベース部82にはチャネル83が形成されており、カバー部84にはチャネル85が形成されている。これらのチャネル83、85は、カバー部84がベース部82に接合されたとき、該チャネル83、85が組み合わされてチャネル86を形成し、このチャネル86が、光ファイバ16を受けるための弧状の経路をたどるキャビティを形成するように構成されている。本実施例では、チャネル86は光ファイバの断面よりも大きな断面を有しているので、光ファイバは、チャネル86内に完全かつ自由に受容され、チャネル86との摩擦による拘束を受けないようになっている。光ファイバ16は、ハウジング80の入口38からハウジング80の出口40までチャネル86を貫通して延びている。本実施例では、光ファイバは、チャネル86を充填する樹脂42を用いて、チャネル内のうちの、ハウジング80の入口38の領域とハウジング80の出口40の領域とにおいて保持(固定)されている。前述したその他の実施例と同様に、用いられる樹脂はツールが加熱される温度に耐えることができる、いかなる適切な樹脂であってもよい。前記チャネル86の経路は、図2〜図4に記載されているように、光ファイバ16の曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。ブラッグ格子18は、光ファイバ16の弧状部の途中に形成されている。
【0033】
前述したすべての実施例において、光ファイバ16の位置決めは図2〜図4に記載されているのと実質的に同様におこなわれ、単一の湾曲を有しているということを前提としている。しかしながら、他の多くの可能性が存在する。
【0034】
図11には、図2〜図4のハウジングに類似したハウジング90に基づいた、一つの可能な他の形態の構成が示されている。しかしながら、図11に示されているように、ハウジング90は、周壁92のほぼ対角線上に対向した位置関係にある入口38と出口40とを有している。本実施例では、入口38と出口40との間の距離よりも長い光ファイバ16が、入口38と出口40とにおける周壁の凹部に詰め込まれた樹脂42により、ハウジング90のベース部94の周壁92内に形成されているキャビティ96内に保持されている。本実施例では、光ファイバの追加の長さは、「S」状又は曲がりくねった形状、この場合には二つの弓状のものが相互に反対向きになって並んだ形状(形態)に形成されている。ブラッグ格子18は、曲がりくねった部分に設けられている。ファイバ16の弧状部と弧状部との間に設けられてもよいし、又は、弧状部上に設けられてもよい。先に述べた実施例と同様に、光ファイバ16のハウジング90は、図2〜図4に記載されているように、光ファイバの曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。
【0035】
上述した実施例では、ハウジング14はほぼ正方形状又は矩形形状を有している。しかしながら、他の実施例では、他の形状が用いられてもよい。
【0036】
例えば、図12には、菱形状のハウジング100が示されており、この菱形状のハウジング100は、図2〜図4に例示されたハウジングに類似している。かかるハウジング100は、このハウジング100のベース部104のほぼ両端における周壁102内に入口38と出口40とを備えている。この入口38と出口40との間の距離よりも長い光ファイバ16が、入口38と出口40における周壁の凹部に詰め込まれた樹脂42により、ハウジング100のベース部104の周壁102内のキャビティ106内に、保持(固定)されている。本実施例では、光ファイバがより長い長さを有することにより、弧状又は「C」形状が形成されている。本実施例の弧状部内にブラッグ格子18が設けられている。前述した実施例と同様に、光ファイバ16のハウジング100は、図2〜図4に記載されているように、光ファイバの曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。
【0037】
図13には円状のハウジング110が示されており、この円状のハウジング110は、その他の点では、図2〜図4に例示されているハウジングに類似している。ハウジング110は、ハウジング110のベース部114の周壁112に、ほぼ対向した入口38および出口40を備えている。入口38と出口40との間の距離よりも長い光ファイバ16が、入口38と出口40における周壁の凹部に詰め込まれた樹脂42により、ハウジング110のベース部114の周壁112内のキャビティ116内に、保持(固定)されている。本実施例では、光ファイバの追加の長さが、弧状又は「C」形状を形成している。この実施例の弧状部にブラッグ格子18が設けられている。先の実施例と同様に、光ファイバ16とハウジング110は、図2〜図4に記載されているように、該光ファイバ16の曲率により規定される弧角度および半径が、前記ハウジング内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。
【0038】
前述した実施例では、ハウジングは平坦な上側面および下側面を有している。しかしながら、他の実施例としてのハウジングは他の外部形状を有していてもよい。例えば、図14には、ほぼ円筒形状をしたハウジング120の一例が示されている。本実施例は、ハウジング上部122とハウジング下部124とから形成されている。チャネル128の入口38がハウジング120の一方の端部に設けられており、チャネル128の出口がハウジング120の他方の端部に設けられている。前記チャネル128は、入口38と出口40との間の直線距離より長い湾曲した経路をたどるように、ハウジング124の二つの部分122、124の各々の一部に形成されている。光ファイバ16は、前記チャネル128内に受容され、ハウジング120内のうちの、ハウジング120の入口38の領域および出口40の領域においてシールされている。本実施例では、ブラッグ格子18は、光ファイバ16の弧状部の途中に形成されている先の実施例と同様に、光ファイバ16とハウジング120は、図2〜図4に記載されているように、光ファイバの曲率により規定される弧角度および半径が、ハウジング内のファイバ16を歪みから実質的に隔離させることを可能とするとともに、そのファイバの光学パラメータを満たし、ハウジングの寸法をできるだけ小さく維持するように選択されている。
【0039】
なお、ハウジングのさまざまな実施例は、歪み隔離用ハウジングの形状および構成の具体例を表すために選択的に記載されたものである。いうまでもなく、これらの実施例は、例示することのみを意図したものであり、さまざまな実施例の特徴がいかなる適切なコンビネーションで組み合わせられいてもよい。例えば、ハウジングの形状は、記載された実施例ならびに/又は直線の壁および/若しくは湾曲した(例えば、半円状、多角形状の)壁を組み合わせたものを有するハウジングの他の実施例のうちのいずれの形態をとってもよく、これらのハウジングは、図4、図7、図8、図9、図10、図14のうちの一又は複数を、参照して記載されているように構成されていてもよい。
【0040】
図15には、複合材料部材を形成するためのツール132用の温度センサを形成するための、歪み隔離用ハウジングの例示の用途が示されている。この例示のツール132は、例えば抵抗性加熱素子たる複数の電気ヒータ134をその内部に埋め込んだものである。各ヒータ134はツールのあるゾーン(領域)を加熱するようになっている。図15に示されているように、各ゾーンは、図2〜図14に例示のみを意図して記載されているように、ブラッグ格子18が設けられた光ファイバ16の弧状部を収容しているハウジング14を含み得る。図15に示されている実施例では、光ファイバ16の両端がファイバ・センサ・インターロゲータ20に接続されている。ファイバ16の両端をファイバ・センサ・インターロゲータに接続させることの利点は、ファイバが途中で損傷した場合であっても、今までどおりブラッグ格子18にアクセスすることができるということである。ファイバ・センサ・インターロゲータ20は、それらの格子18により検出された温度を求めるためにTDM又はWDMの技術を用いてブラッグ格子18をアドレスするようになっている。コンピューター22は、格子18からの温度信号を処理し、次いで、本実施例では、ヒータコントローラ136に温度データを送信し、このヒータコントローラ136は、ハウジング14内において格子18により検出された温度に応じて個々のヒータ134を制御し、ツール132の各領域の温度を制御するようになっている。
【0041】
例示の実施形態では、光ファイバ16およびハウジング14は、ツール上又はツール内のいかなる適切な位置に設けられてもよい。例えば、加熱素子134と所望の関係に従って位置決めされもよい。光ファイバ16およびハウジング14は、上述の実施例に記載されているようにツールの材料に埋め込まれていてもよいし、又は、例えばツールが中空である場合、光ファイバおよび/又はハウジングは、そのツールの内面に固定されていてもよい。
【0042】
図1および図15に記載されているような光ファイバセンサのアレイ配列は、ツール全体にわたる温度を簡単に監視および/又は制御することが可能である。光ファイバ上には複数の格子を設けることができる。例えば、100以上の格子およびそれらに対応するハウジングを設けることができる。さらに、ハウジング内に設けられた格子付きの複数のファイバが一つのツール上に設けられてもよいし、複数のファイバ・センサ・インターロゲータ2が設けられてもよい。また、一又は複数のヒータコントローラが設けられてもよい。
【0043】
ブラッグ格子18を有しているファイバ16(又は、複数のファイバ)およびハウジング14は、組立てる工程およびツールから部材を取り外す工程で損傷を受けることは通常ない。したがって、光ファイバおよびハウジングは、ツールから取り外され、また、新しいツールに再利用されることにより、時間および材料の消耗を低減し、生産費を削減することができる。
【0044】
光ファイバ上の温度センサ(ハウジング内の格子により形成される)は、最初に使用する前に校正される。しかしながら、校正の後、これらのセンサは、形成される部材に適用可能な品質管理基準に従い、続く次の部材形成処置のために再校正される必要はない。したがって、このようなツールの一部の用途、例えば重要ではない部材の製造では、格子を使用毎に再校正する必要はない。しかしながら、重要な部材が、それに関連する品質管理基準を有し得る場合、センサを再校正する必要がある。したがって、このツールの一部の用途、例えば重要な航空機用の部材の製造においては、品質管理および/又は監督機関が、再校正を要求する場合がある。
【0045】
前述した実施例では、ツールは複合材料から形成されており、このツールの複合材料内に光ファイバを埋め込むことが可能である。また、この複合材料内にハウジングも埋め込んでもよい。しかしながら、他の実施例では、このツールが他の一又は複数の材料から作られていてもよい。一つの実施例では、このツールが成型材料、例えばプラスチックからなっていてもよく、成型プロセス中に、ファイバおよびハウジングが材料内に埋め込まれていてもよい。
【0046】
上述のハウジングは、複合材料であってもよいし、又は、ツールと相性のよい他の材料であってもよい。他の実施例では、ハウジングは、当該ハウジングの外方のファイバに加えられる歪みから当該ハウジング内のファイバを実質的に隔離するために、ファイバおよびブラッグ格子を実質的に自由にハウジング内に収容することによって、実質的に温度の変化のみがブラッグ格子に対して影響を与えるという限りにおいて、例えば金属の如き他の材料から作ることが可能である。
【0047】
上述の用途の具体例は、成型ツールの温度の検出に関するものである。しかしながら、上述のようにハウジング内に収容されるブラッグ格子を有する光ファイバの他の用途には、成型するツール以外の構造体の温度を検出することが含まれ得る。このような構造体の例としては、宇宙船、航空機、船および自動車を含む乗り物;パイプライン;化学プラントなどの産業プラント;建物、トンネル、道、橋梁、鉄道および他の土木構造体等が挙げられる。
【0048】
本発明は、さらに、医学又は獣医学、例えば人又は動物の温度の監視に用いられてもよい。
【0049】
図16には、光ファイバを備えた装置152が示されており、この光ファイバ上のハウジング14内に位置する部分にはブラッグ格子18が設けられ、各ハウジング14は、当該ハウジング14の外方のファイバ16に加えられた歪みからファイバを隔離するためにハウジング14内にファイバ16およびブラッグ格子18を実質的に自由に収容することにより、実質的に温度の変化のみがブラッグ格子18に対して影響を与えるようになっている。これらのハウジングは前記した通りのものであってもよい。温度検出用のブラッグ格子18に加えて、ファイバ16は、上述のようなハウジング14内には設けられておらず、温度以外の変数を検出するように動作可能な少なくとも一つのブラッグ格子154、156を有していてもよい。例えば、ファイバ16上の一又は複数の格子154、156は、適切な信号プロセッサ160と一緒に動作して、歪み、化学種および/又は他の変数若しくは物性を検出できるようになっていてもよい。
【0050】
図16の装置152は構造体を備えており、この構造体の具体例としては、宇宙船、航空機、船および自動車を含む乗り物;パイプライン;化学プラントなどの産業プラント;建物、トンネル、道、橋梁、鉄道および他の土木用構造体等が挙げられる。装置152は温度と化学種を検出するために用いられてもよい。
【0051】
例えば、図16の装置が構造体152上に設けられ、上述のようなツールになるような場合、格子154、156は、ツール上で実行される複合材料の硬化プロセス中の例えば硬化品質を検出するために用いることができる。
【0052】
例えば、構造体152が土木用構造体又は乗り物である場合、例えば構造体152の温度および歪みを監視するように図16に図示する装置を構成することができる。例えば、構造体152が航空機又は他の乗り物である場合、構造体の疲労の開始を予測および/又は監視するために、その乗り物の構造体の部品の歪みおよび温度変化を監視することが望ましい場合もある。構造体が例えば橋梁である場合、本装置は、例えば橋梁上の道路の温度に加えて、例えば橋梁に作用する負荷を監視することができる。
【0053】
本装置を、歪み、温度および化学種を監視するために用いることが可能である。このことは、上述のようなツール上で硬化サイクルを監視する際に有益な場合もあれば、又は、化学プラント又は道路のトンネルの内部におけるとりわけ汚染物質の蓄積を監視するのに有益な場合もある。
【0054】
図16に示されているように、光ファイバ16はプロセッサ160に接続されている。このプロセッサ160は、ブラッグ格子プロセッサ、例えば図1又は図15に記載されているようなファイバ・センサ・インターロゲータを備えている。プロセッサ160は、将来分析するために、格子18、154、156により検出されたデータを記録する、参照番号「162」で示されたデータ記録装置を、さらに備えていてもよい。これに加えて、又はこれに変えて、プロセッサ160は、例えば温度のような検出された変数を制御するためのプロセスコントローラを備えていてもよい。プロセッサ160は、遠隔のプロセッサ164と通信するデータ発信機を備えていてもよい。この遠隔のプロセッサは、それ自体が、データ記録装置および/又はプロセスコントローラを有していてもよい。
【0055】
以上のように、光ファイバを有した温度センサ・アレイが記載されている。複数のブラッグ格子が光ファイバ上の間隔をあけて並んだ部位に形成されている。光ファイバのうちのブラッグ格子を有している部分をハウジング内に収容し、このハウジングが、当該ハウジングの外方のファイバに加えられた歪みから格子を実質的に隔離して自由にその部分を収容することにより、温度の変化のみがその部分のブラッグ格子に影響を与えるようになっている。このアレイは、とりわけ複合材料部材を形成するためのツールの、温度を検出して制御するためなどに用いることができる。
【0056】
前記した実施形態は相当に詳細に記載されているが、いったん前記開示内容が完全に理解されたならば、多数の変更および修正が当業者にとって明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、
歪み隔離用ハウジングとを備えており、
前記ハウジングには、キャビティが形成され、また、該キャビティへの入口および該キャビティからの出口が形成されており、
前記光ファイバが、前記ハウジングの前記入口から入り前記ハウジングの前記出口から出るように構成されており、前記光ファイバが、前記入口の領域の第一の固定位置と前記出口の領域の第二の固定位置で前記ハウジングに固定されており、
前記光ファイバが、前記ハウジング内にブラッグ格子を有し、固定されていない少なくとも一つの弧状部を有し且つ交差していない経路に沿って前記入口と前記出口との間を延び、該ブラッグ格子が形成されている部分が前記ハウジングの外方の前記光ファイバに加えられた歪みから、前記ハウジング内で隔離されており、実質的に温度の変化のみが前記ブラッグ格子に影響を与えるように構成されている、装置。
【請求項2】
前記ブラッグ格子が前記少なくとも一つの弧状部に形成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ハウジングが第一の部分と第二の部分とを有しており、かかる第一の部分と前記第二の部分が該第一の部分および前記第二の部分の少なくとも周縁部において接合されており、前記入口および前記出口が、前記第一の部分および前記第二の部分の周縁部の接続部分の第一の位置および第二の位置に、それぞれ対応して形成されてなる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第一の部分および前記第二の部分の各々の周縁部が直線状をしており、前記第一の位置および前記第二の位置が、前記第一の部分および前記第二の部分の直線状をした前記周縁部の異なる各側に形成されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記ハウジングが矩形状である、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記ハウジングが管状である、請求項4記載の装置。
【請求項7】
前記第一の部分および前記第二の部分の各々の周縁部が湾曲しており、前記第一の位置および前記第二の位置が、前記第一の部分および前記第二の部分の前記周縁部上にほぼ対向して形成されている、請求項3記載の装置。
【請求項8】
前記第一の部分および前記第二の部分のうちの少なくとも一つの周縁部が周壁を有しており、前記第一の部分および前記第二の部分が前記周壁で接合されている、請求項3乃至7のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項9】
前記第一の部分および前記第二の部分の両方の周縁部が周壁を有しており、かかる第一の部分および第二の部分が該第一の部分および第二の部分の前記周壁で接合されている、請求項3乃至7のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項10】
前記第一の部分および前記第二の部分が開かれたキャビティを形成し、該キャビティ内に前記光ファイバが前記入口と前記出口との間で自由に延びている、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記第一の部分が、第一のチャネルを具備した第一の面を有し、かかる第一のチャネルは、交差していない経路をたどり前記光ファイバを受容するべく前記入口と前記出口との間に延設されている、請求項1乃至7のいずれ1の項に記載の装置。
【請求項12】
前記第二の部分が、前記第一の面と接する第二の面を有する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記第二の面が、第二のチャネルを有し、かかる第二のチャネルは、前記第一のチャネルと同じような経路をたどって前記入口と前記出口との間に、延設されている、請求項12記載の装置。
【請求項14】
複数の歪み隔離用ハウジングをさらに備えており、前記光ファイバに間隔をおいて前記ハウジング内に位置するようにブラッグ格子を有しており、各ブラッグ格子はそれに対応するハウジング内に設けられている、請求項1乃至13のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項15】
前記光ファイバがシングルモードのファイバである、請求項1乃至14のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項16】
前記ブラッグ格子うちの一つ又は各ブラッグ格子により検出された温度を求めるように構成されたプロセッサをさら備えてなる、請求項1乃至15のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項17】
前記光ファイバが、温度以外の変数を検出するように動作可能な少なくとも一つのさらなるブラッグ格子を有している、請求項1乃至16のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも一つのさらなるブラッグ格子が前記光ファイバの歪みを検出するよう動作可能に構成されている、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも一つのさらなるブラッグ格子が化学種を検出するよう動作可能に構成されている、請求項17記載の装置。
【請求項20】
前記プロセッサが、前記少なくとも一つのさらなるブラッグ格子により検出される前記温度以外の変数を求めるようにさらに動作可能に構成されている、請求項16に従属する前記請求項17乃至19のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項21】
前記プロセッサが、波長分割マルチプレックスを用いて、一又は複数の前記ブラッグ格子をアドレスするように動作可能に構成されている、請求項16又は20に記載の装置。
【請求項22】
前記プロセッサが、時分割マルチプレックスを用いて一又は複数の前記ブラッグ格子をアドレスするように動作可能に構成されている、請求項16又は20に記載の装置。
【請求項23】
複合材料部材を形成するためのツールであって、
少なくとも一つの熱源と、
請求項1乃至22のいずれか1の項に記載の装置を備えており、
前記装置の各ハウジングが前記ツールの前記材料内に埋め込まれ、各ハウジングが前記ツールの前記材料と相性がよい材料から作られている、ツール。
【請求項24】
前記熱源のためのコントローラをさらに備えており、該コントローラが、前記装置により測定された一又は複数の温度に応答して前記熱源を制御するように構成されている、請求項23記載のツール。
【請求項25】
前記熱源が、前記ツール内に埋め込まれている一又は複数の加熱装置を含んでいる、請求項24記載のツール。
【請求項26】
ブラッグ格子を収容している少なくとも一つのハウジングが各加熱装置に関連付けされている、請求項25記載のツール。
【請求項27】
請求項1乃至22のいずれか1の項に記載の装置を備えてなる構造体。
【請求項28】
乗り物、産業プラント又は土木用構造体の形態を有する、請求項27記載の構造体。
【請求項1】
光ファイバと、
歪み隔離用ハウジングとを備えており、
前記ハウジングには、キャビティが形成され、また、該キャビティへの入口および該キャビティからの出口が形成されており、
前記光ファイバが、前記ハウジングの前記入口から入り前記ハウジングの前記出口から出るように構成されており、前記光ファイバが、前記入口の領域の第一の固定位置と前記出口の領域の第二の固定位置で前記ハウジングに固定されており、
前記光ファイバが、前記ハウジング内にブラッグ格子を有し、固定されていない少なくとも一つの弧状部を有し且つ交差していない経路に沿って前記入口と前記出口との間を延び、該ブラッグ格子が形成されている部分が前記ハウジングの外方の前記光ファイバに加えられた歪みから、前記ハウジング内で隔離されており、実質的に温度の変化のみが前記ブラッグ格子に影響を与えるように構成されている、装置。
【請求項2】
前記ブラッグ格子が前記少なくとも一つの弧状部に形成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ハウジングが第一の部分と第二の部分とを有しており、かかる第一の部分と前記第二の部分が該第一の部分および前記第二の部分の少なくとも周縁部において接合されており、前記入口および前記出口が、前記第一の部分および前記第二の部分の周縁部の接続部分の第一の位置および第二の位置に、それぞれ対応して形成されてなる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第一の部分および前記第二の部分の各々の周縁部が直線状をしており、前記第一の位置および前記第二の位置が、前記第一の部分および前記第二の部分の直線状をした前記周縁部の異なる各側に形成されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記ハウジングが矩形状である、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記ハウジングが管状である、請求項4記載の装置。
【請求項7】
前記第一の部分および前記第二の部分の各々の周縁部が湾曲しており、前記第一の位置および前記第二の位置が、前記第一の部分および前記第二の部分の前記周縁部上にほぼ対向して形成されている、請求項3記載の装置。
【請求項8】
前記第一の部分および前記第二の部分のうちの少なくとも一つの周縁部が周壁を有しており、前記第一の部分および前記第二の部分が前記周壁で接合されている、請求項3乃至7のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項9】
前記第一の部分および前記第二の部分の両方の周縁部が周壁を有しており、かかる第一の部分および第二の部分が該第一の部分および第二の部分の前記周壁で接合されている、請求項3乃至7のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項10】
前記第一の部分および前記第二の部分が開かれたキャビティを形成し、該キャビティ内に前記光ファイバが前記入口と前記出口との間で自由に延びている、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記第一の部分が、第一のチャネルを具備した第一の面を有し、かかる第一のチャネルは、交差していない経路をたどり前記光ファイバを受容するべく前記入口と前記出口との間に延設されている、請求項1乃至7のいずれ1の項に記載の装置。
【請求項12】
前記第二の部分が、前記第一の面と接する第二の面を有する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記第二の面が、第二のチャネルを有し、かかる第二のチャネルは、前記第一のチャネルと同じような経路をたどって前記入口と前記出口との間に、延設されている、請求項12記載の装置。
【請求項14】
複数の歪み隔離用ハウジングをさらに備えており、前記光ファイバに間隔をおいて前記ハウジング内に位置するようにブラッグ格子を有しており、各ブラッグ格子はそれに対応するハウジング内に設けられている、請求項1乃至13のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項15】
前記光ファイバがシングルモードのファイバである、請求項1乃至14のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項16】
前記ブラッグ格子うちの一つ又は各ブラッグ格子により検出された温度を求めるように構成されたプロセッサをさら備えてなる、請求項1乃至15のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項17】
前記光ファイバが、温度以外の変数を検出するように動作可能な少なくとも一つのさらなるブラッグ格子を有している、請求項1乃至16のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも一つのさらなるブラッグ格子が前記光ファイバの歪みを検出するよう動作可能に構成されている、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも一つのさらなるブラッグ格子が化学種を検出するよう動作可能に構成されている、請求項17記載の装置。
【請求項20】
前記プロセッサが、前記少なくとも一つのさらなるブラッグ格子により検出される前記温度以外の変数を求めるようにさらに動作可能に構成されている、請求項16に従属する前記請求項17乃至19のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項21】
前記プロセッサが、波長分割マルチプレックスを用いて、一又は複数の前記ブラッグ格子をアドレスするように動作可能に構成されている、請求項16又は20に記載の装置。
【請求項22】
前記プロセッサが、時分割マルチプレックスを用いて一又は複数の前記ブラッグ格子をアドレスするように動作可能に構成されている、請求項16又は20に記載の装置。
【請求項23】
複合材料部材を形成するためのツールであって、
少なくとも一つの熱源と、
請求項1乃至22のいずれか1の項に記載の装置を備えており、
前記装置の各ハウジングが前記ツールの前記材料内に埋め込まれ、各ハウジングが前記ツールの前記材料と相性がよい材料から作られている、ツール。
【請求項24】
前記熱源のためのコントローラをさらに備えており、該コントローラが、前記装置により測定された一又は複数の温度に応答して前記熱源を制御するように構成されている、請求項23記載のツール。
【請求項25】
前記熱源が、前記ツール内に埋め込まれている一又は複数の加熱装置を含んでいる、請求項24記載のツール。
【請求項26】
ブラッグ格子を収容している少なくとも一つのハウジングが各加熱装置に関連付けされている、請求項25記載のツール。
【請求項27】
請求項1乃至22のいずれか1の項に記載の装置を備えてなる構造体。
【請求項28】
乗り物、産業プラント又は土木用構造体の形態を有する、請求項27記載の構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−517028(P2010−517028A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546808(P2009−546808)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000248
【国際公開番号】WO2008/090348
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509016575)ジーケイエヌ エアロスペース サービシイズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000248
【国際公開番号】WO2008/090348
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509016575)ジーケイエヌ エアロスペース サービシイズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】
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