説明

温度検知による燃焼器逆火/保炎の検出

【課題】温度検知による燃焼器逆火/保炎の検出について開示する。
【解決手段】本燃焼器は、複数の燃焼ゾーンを有する燃焼チャンバ(46、140)を形成した燃焼器ハウジング(12、40、120)を含む。複数の温度検出器(60、180)が、燃焼チャンバと導通状態で配置される。複数の温度検出器は、複数の燃焼ゾーン内の温度を検出する。複数の温度検出器と通信状態になった制御装置は、複数の温度検出器からの信号に基づいて複数の燃焼ゾーン内における保炎状態又は逆火状態の発生を判定するようにプログラムされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサを使用して燃焼器逆火/保炎を検出することに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンでは、1以上の燃焼器内で圧縮機によって生成された空気と共に燃料を燃焼させるようになっており、燃焼器は、燃焼ゾーン(主燃焼ゾーン)の上流に設置された予混合ゾーン内で燃料及び空気の予混合を行なうように構成された1以上の燃料ノズルを有する。ガスタービン燃焼器は本質的に、大量の燃料及び空気を混合しかつ得られた混合気を燃焼させるのに使用する装置である。水又は蒸気噴射を使用しないでNOxエミッションを40ppm以下のレベルまで低減するように設計された燃焼システムを備えたガスタービンは、燃焼過程に先立って燃料を空気と一様に混合するような燃焼過程を採用している。予混合ゾーン内において、燃料及び空気の着火が、時々発生する。その原因には関係なく、このような事象は、「逆火」と呼ばれる。大半の予混合システムの設計によると、予混合セクション内における燃料及び空気の燃焼は通常、構成要素に重大な損傷を引き起こす。様々な理由から、低NOx燃焼器を予混合セクション内における火炎で満足に作動するように設計することは、多くの場合に実用的でない。
【0003】
これ迄は、逆火/保炎は、保炎マージンを有すること及び燃焼を発生するおそれがあるタイプの燃料を制限することによって防止されてきた。燃料ノズル(及び可能性がある下流のあらゆるガスタービンハードウェア)に対する壊滅的な損傷は、逆火の発生を検出することによってかつ是正措置を迅速に取ることによって回避することができる。さらに、逆火検出センサを使用することにより、燃料自由度が可能になり、より高次炭化水素燃料及び/又は純粋水素を一部含有する燃料を燃焼させることができるようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6429020号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの例示的な実施形態では、燃焼器は、複数の燃焼ゾーンを有する燃焼チャンバを形成した燃焼器ハウジングを含む。複数の温度検出器が、燃焼チャンバと導通状態で配置される。複数の温度検出器は、複数の燃焼ゾーン内の温度を検出する。複数の温度検出器と通信状態になった制御装置は、複数の温度検出器からの信号に基づいて複数の燃焼ゾーン内における保炎状態又は逆火状態の発生を判定するようにプログラムされる。
【0006】
別の例示的な実施形態では、ガスタービンは、空気を加圧するように構成された圧縮機を含み、話題の燃焼器は、圧縮機と流れ連通状態になっている。燃焼器は、圧縮機から加圧空気を受けかつ燃料流を燃焼させて、燃焼器流出ガス流を生成する。
【0007】
さらに別の例示的な実施形態では、燃焼器は、燃料及び空気を気体予混合物に混合しかつ該気体予混合物を燃焼チャンバ内に導入する予混合装置と、燃焼チャンバと導通しかつ該燃焼チャンバ内の温度上昇を監視する複数の温度検出器と、複数の温度検出器と通信しかつ該複数の温度検出器からの信号に基づいて燃焼チャンバ内における保炎状態又は逆火状態の発生を判定するようにプログラムされた制御装置とを含む。複数の温度検出器は、予混合装置の上流の温度を監視する配向で配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ガスタービンの概略図。
【図2】図1のガスタービンシステムで使用する予混合装置を有する燃焼器の概略図。
【図3】燃焼器の関連部分を示す側面及び断面図。
【図4】燃焼器を作動させる方法を示すフロー図。
【図5】望ましい逆火検知及び適応についてのシーケンス/タイミング図式。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に説明する例示的な実施形態は、燃料ノズルの経路内に位置しかつ例えば燃料ノズルの出口の近くに配置された温度センサによって行なった温度検知により、ガスタービン燃料ノズル内における逆火/保炎を検出しかつ是正する構造を含む。火炎/壁温度を監視することにより、消炎又は逆火を含むあらゆる異常を検出することが可能になる。保炎/逆火が検出された場合には、適切な措置を取りかつガスタービンに対する損傷を防止することが望ましい。
【0010】
図1を参照すると、燃焼器12を有するガスタービン10を示している。ガスタービン10は、周囲空気16を加圧するように構成された圧縮機14を含む。燃焼器12は、圧縮機14と流れ連通状態になっており、圧縮機14から加圧空気18を受けかつ燃料流20を燃焼させて、燃焼器流出ガス流22を生成するように構成される。ガスタービン10は、燃焼器12の下流に設置されたタービン24を含み、タービン24は、燃焼器流出ガス流22を膨張させて発電機26のような外部負荷を駆動するように構成される。この図示した実施形態では、圧縮機14は、タービン24が発生した動力によってシャフト28を介して駆動される。燃焼器12は、ガスタービン燃焼チャンバ内における保炎/逆火を検出しかつ適切な措置を取ってガスタービンに対する損傷を防止するように構成された温度検出装置及び制御装置を採用している。
【0011】
図2は、図1のガスタービンシステム10で使用する温度検出装置60を有する燃焼器12の例示的な構成40の概略図である。図示するように、燃焼器40は、燃料20及び空気18を混合して気体予混合物44を形成するように構成された予混合装置42を含む。燃焼器40は、気体予混合物44を燃焼させて燃焼器流出ガス流22を形成するように構成された燃焼チャンバ46を含む。燃焼器流出ガス流22は、タービン24(図1参照)のような下流プロセス48に導かれて、外部負荷26(図1参照)を駆動するようにする。予混合装置42はさらに、燃料20及び/又は空気18に旋回運動を与えて燃料20及び空気18の混合を可能にするように構成された複数のスワーラベーン50を含むことができる。例示的な実施形態では、燃焼器40は、予混合装置42及び燃焼チャンバ46のいずれか又は両方に結合しかつそれらと導通状態になることができる温度検出装置60を含む。温度検出装置60は、それに限定されないが熱電対又光高温計を含み或いは光ファイバなどを使用した通信による記載の目的に適したあらゆるそのような装置とすることができる。
【0012】
燃焼器40はまた、温度検出装置60に結合された制御装置65を含む。制御装置65は、燃焼チャンバ46内における保炎/逆火に対応する信号を温度検出器から受ける。制御装置65はさらに、空気18及び燃料20の供給源と通信状態になっている。本明細書にさらに説明するように、燃焼チャンバ46内に保炎/逆火が存在することを示す信号を制御装置65が受けた場合には、制御装置65は、適切な措置を取ってガスタービンに対する損傷を軽減することができる。制御装置65が取ることができる適切な措置には、燃焼チャンバへの燃料及び空気流の停止或いは空気及び燃料流量の一部修正を行なって、保炎/逆火を減少させるか或いは消滅させることが含まれる。
【0013】
図3は、複数の温度検出器180を備えた例示的なガスタービン100を示している。このガスタービンの実施例では、該ガスタービンの燃焼チャンバ140に結合され、該燃焼チャンバ140と導通状態になっておりかつ該燃焼チャンバ140内の温度を検出するように構成された温度検出器を示している。
【0014】
図1と同様に、ガスタービン100は、周囲空気を加圧するように構成された圧縮機110を含む。1以上の燃焼器缶120が、ディフューザ150を介して圧縮機110と流れ連通状態になっている。燃焼器缶120は、圧縮機110から加圧空気115を受けかつ燃料ノズル160からの燃料流を燃焼させて、燃焼チャンバ140を通ってタービン130に移動する燃焼器流出ガス流165を生成するように構成される。タービン130は、燃焼器流出ガス流165を膨張させて外部負荷を駆動するように構成される。燃焼器缶120は、外部ハウジング170を含み、外部ハウジング170は、それに取付けられた一連の温度検出器180を含む。温度検出器180は、燃焼チャンバ140及び燃焼器流出ガス流165に結合されかつそれらと導通状態になっている。
【0015】
制御装置65は、複数温度検出器(例えば、温度検出器180)からの信号応答を検出しかつ選定(voting)アルゴリズムを実行して、保炎/逆火状態に応答して該制御装置65が取る措置のタイプを決定する。例えば、3つの検出器180のうちの2つが、逆火状態が存在していると判定した場合には、制御装置65は、燃焼器缶120に対する燃料を遮断するか又は減少させる。同様に、1つの検出器180のみが逆火を検出した場合には、制御装置65は、検出器180が別の測定値を示すまで、燃料を継続するように決定することができる。検出器180に対応して、エンクロージャ内に複数検出器素子を設けることができる。これら複数検出器素子は、燃焼器缶120内で検出された信号を集約するように多重化することができる。このようにして、集約信号を使用して選定アルゴリズムの結果を判定することができる。
【0016】
図4は、例示的な実施形態による、燃焼器を作動させる方法700を示すフロー図である。ブロック705において、燃料ノズル(例えば、図3の参照符号160)は、予混合装置(例えば、図2の参照符号42)内に燃料を導入し、また圧縮機(例えば、図3の参照符号110)は、予混合装置内に空気を導入する。ブロック710において、予混合装置は、気体予混合物を形成する。ブロック715において、燃焼器(例えば、図3の燃焼器缶120)は、燃焼チャンバ(例えば、図3の参照符号165)内で予混合物を燃焼させる。ブロック720において、燃焼チャンバ内の温度が、監視される。温度検出器が、保炎/逆火を明確に示す状態を検出した(ブロック725において、「はい」の)場合には、ブロック730において、制御装置は、予混合装置内への燃料流量を修正するか又は本明細書に記載したその他の適切な措置を取ることができる。温度検出器が、そのような状態を検出しない(ブロック725において、「いいえ」の)場合には、プロセスは、ブロック705に戻る。
【0017】
図5は、望ましい逆火検知及び適応についてのシーケンス/タイミング図式である。逆火事象が発生した時、センサ及び制御装置が3秒以内にその事象を検出しかつ制御装置が次の3秒以内に措置を取ることが望ましい。軽減措置は、1/4秒よりも短い時間で行なうべきあり、また逆火事象は、次の1/4秒以内に消滅させるべきである。数値は、例示としてのものであり、確実にハードウェア損傷及び故障警報を回避するように調整されることになる。
【0018】
例示的な実施形態は、燃焼器缶120の燃焼チャンバ140内における保炎/逆火を検出することについて説明してきた。熱放射は、本システム内のほかの場所、例えば燃料ノズル160(図3参照)で検出することができる。燃料ノズル160からの熱放射を監視することによって、燃料ノズル160内に火炎が存在する場合には、熱放射は、燃料ノズル160内に想定しているものよりも高い温度を示すことになるので、本システムは、燃料ノズル160内に火炎が存在するか否かを判定することができる。保炎/逆火を示す熱放射は、スワーラベーン、バーナチューブ又は燃料ノズル160の拡散チップ、或いは燃焼器のようなその他の下流構成部品において測定することができる。温度検出器180は、燃料ノズル160又は燃料ノズル回路に隣接して配向するのが好ましい。予混合回路からの燃料は、その全体又は一部を別の燃料回路に向け直すか、或いは拡散火炎回路のような使用していない燃料回路に排出することができる。さらに、光高温計検出器180は、各検出器180が燃料ノズル160の1つとその通視方向を共有するように間隔を置いて配置することができる。従って、検出器のうちの2つが、保炎/逆火事象が存在することを示した場合には、制御装置65は、それ故に燃料ノズル160のいずれが事象の影響を受けているか識別する。このようにして、制御装置は、1つの事象発生燃料ノズル160に対して燃料を減少させるか又は燃料を遮断する。燃焼器缶120は、制御装置65が単一の燃料ノズル160のみに対して措置を取った場合には、最小限の破損だけを受けることが可能になることを理解されたい。従って、事象発生燃料ノズル160は、次の定期保修停止時に整備することができる。
【0019】
ガスタービン内に戦略的に配置した温度センサを備えることによって、望ましくない保炎/逆火を検出することができ、かつ是正措置を迅速に取ることによって、燃料ノズルに対する壊滅的損傷を回避することができる。さらに、所定の位置に配置した検出器により、燃料自由度が増大して、保炎/逆火による損傷のリスクなしにより高次炭化水素燃料及び/又は純粋水素を一部含有する燃料を使用することが可能になる。
【0020】
現時点で最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明してきたが、本発明が開示した実施形態に限定されるべきものではなく、逆に、特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内に含まれる様々な変更及び均等な構成を保護しようとするものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0021】
10 ガスタービン
12 燃焼器
14 圧縮機
16 周囲空気
18 加圧空気
20 燃料流
22 流出ガス流
24 タービン
26 発電機
28 シャフト
40 燃焼器
42 予混合装置
44 気体予混合物
46 燃焼チャンバ
48 下流プロセス
50 スワーラベーン
60 温度検出装置
65 制御装置
100 ガスタービン
110 圧縮機
115 加圧空気
120 燃焼器缶
130 タービン
140 燃焼チャンバ
150 ディフューザ
160 燃料ノズル
165 流出ガス流
170 外部ハウジング
180 温度検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器であって、当該燃焼器が、
複数の燃焼ゾーンを有する燃焼チャンバ(46、140)を形成した燃焼器ハウジング(12、40、120)と、
前記燃焼チャンバと導通状態で配置されかつ前記複数の燃焼ゾーン内の温度を検出する複数の温度検出器(60、180)と、
前記複数の温度検出器と通信状態になった制御装置(65)と
を備えており、前記制御装置が、前記複数の温度検出器からの信号に基づいて前記複数の燃焼ゾーン内における保炎状態又は逆火状態の発生を判定するようにプログラムされる、燃焼器。
【請求項2】
前記複数の温度検出器(60、180)が、熱電対及び光高温計の少なくとも1つを含む、請求項1記載の燃焼器。
【請求項3】
前記燃焼チャンバ(46、140)の上流で燃料及び空気を気体予混合物(44)に混合する予混合装置(42)をさらに含み、前記制御装置(65)が、前記複数の燃焼ゾーン内における保炎状態又は逆火状態の発生時に、前記予混合装置に供給される燃料の量を修正するようにプログラムされる、請求項1記載の燃焼器。
【請求項4】
前記燃焼器ハウジング(12、40、120)が、複数の燃料ノズル(160)を含み、前記複数の温度検出器(60、180)が、前記複数の燃料ノズル内に配置されて、該複数の燃料ノズルからの熱放射を測定する、請求項1記載の燃焼器。
【請求項5】
ガスタービンであって、当該ガスタービンが、
空気を加圧するように構成された圧縮機(14、110)と、
前記圧縮機と流れ連通状態になっており、該圧縮機から加圧空気(18、115)を受けかつ燃料流(20)を燃焼させて、燃焼器流出ガス流(22、165)を生成する燃焼器(12、40、120)と
を備えており、前記燃焼器が、
複数の燃焼ゾーンを有する燃焼チャンバ(46、140)を形成した燃焼器ハウジングと、
前記燃焼チャンバと導通状態で配置されかつ前記複数の燃焼ゾーン内の温度を検出する複数の温度検出器(60、180)と、
前記複数の温度検出器と通信状態になった制御装置(65)と
を備えていて、前記制御装置が、前記複数の温度検出器からの信号に基づいて前記複数の燃焼ゾーン内における保炎状態又は逆火状態の発生を判定するようにプログラムされる、ガスタービン。
【請求項6】
前記複数の温度検出器(60、180)が、熱電対及び光高温計の少なくとも1つを含む、請求項5記載のガスタービン。
【請求項7】
前記燃焼チャンバ(46、140)の上流で燃料及び空気を気体予混合物(44)に混合する予混合装置(42)をさらに含み、前記制御装置(65)が、前記複数の燃焼ゾーン内における保炎状態又は逆火状態の発生時に、前記予混合装置に供給される燃料の量を修正するようにプログラムされる、請求項5記載のガスタービン。
【請求項8】
前記燃焼器ハウジング(12、40、120)が、複数の燃料ノズル(160)を含み、前記複数の温度検出器(60、180)が、前記複数の燃料ノズル内に配置されて、該複数の燃料ノズルからの熱放射を測定する、請求項5記載のガスタービン。
【請求項9】
燃焼器であって、当該燃焼器が、
燃料及び空気を気体予混合物(44)に混合しかつ該気体予混合物(44)を燃焼チャンバ(46、140)内に導入する予混合装置(42)と、
前記燃焼チャンバと導通しかつ該燃焼チャンバ内の温度上昇を監視する複数の温度検出器(60、180)と、
前記複数の温度検出器と通信する制御装置(65)と
を備えており、前記制御装置が、前記複数の温度検出器からの信号に基づいて前記燃焼チャンバ内における保炎状態又は逆火状態の発生を判定するようにプログラムされ、前記複数の温度検出器が、前記予混合装置の上流の温度を監視する配向で配置される、燃焼器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−286232(P2010−286232A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125436(P2010−125436)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】