説明

温度異常検出方法および装置

【課題】 複数の対象箇所における温度異常の発生を検出でき、かつ、温度異常が発生している箇所を特定できる温度異常検出方法を提供する。
【解決手段】 PTC素子1とこれに並列接続する抵抗器2とを含むモジュール10を少なくとも2つ直列接続する。モジュール10は通常の温度状態では低抵抗値(PTC素子1のロー状態の抵抗値)を示し、温度異常状態では互いに異なる高抵抗値(抵抗器2の抵抗値)を示すようにPTC素子1により切り換え可能である。PTC素子1を所定の対象箇所に熱的に結合させて各モジュール10を配置する。直列接続されたモジュール10に電流を流して両端電圧を測定し、全てのモジュール10が低抵抗値を示すときを基準として、いずれか1つが高抵抗値を示すことにより両端電圧が変動して温度異常の発生を検出したときに、高抵抗値を示しているモジュール10を両端電圧の値から特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTC素子を用いることにより、複数の対象箇所において温度異常を検知する方法およびそのための装置に関する。
【0002】
尚、「PTC素子」とは、電気/電子回路技術の分野において知られているように、正の温度係数(Positive Temperature Coefficient)を有するサーミスタを言う。PTC素子は、比較的低い温度条件下(例えば常温時)ではその電気抵抗は低いが、ある温度(以下、トリップ温度と言う)を超えると電気抵抗が急激に増加する。本明細書において、PTC素子の前者の状態をロー状態、後者の状態をハイ状態とも言うものとする。PTC素子のこのような温度依存抵抗特性(または抵抗変化)は可逆的である。
【背景技術】
【0003】
近年、対象物の温度異常を検出するためにPTC素子が用いられるようになって来ている。特に、温度異常の発生を複数の対象箇所にて同時に検出することが所望される場合、その箇所毎にPTC素子を取り付け、各PTC素子の抵抗変化を調べることにより温度異常の検出を個々に行なうこともできるが、より簡素化された方法もまた当該技術分野において知られている。
【0004】
このような従来の温度異常検出方法の一例として、直列接続された複数のPTC素子を、温度異常検出が所望される複数の対象箇所にそれぞれ接触して配置し、これらPTC素子全体の抵抗変化を調べる方法がある(例えば特許文献1を参照のこと)。より具体的には、図2に示すような、複数のPTC素子61を直列接続し、これにオーム計(抵抗測定器)62を直列接続して電気回路(閉ループ)としたものを温度異常検出装置70として用い、これらPTC素子61を温度異常を検出したい所定の対象箇所に(例えば複数の電池毎に)それぞれ接触して配置し、直列接続された複数のPTC素子61全体の抵抗値をオーム計62で測定している。このような方法によれば、PTC素子61を接触配置した複数の対象箇所のうちのいずれか1箇所でも温度異常をきたした場合に、温度異常の発生を検出することが可能である。
【0005】
【特許文献1】特開平10−270094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来の温度異常検出方法および装置では、複数の対象箇所全体での温度異常の発生を検出することができるものの、温度異常が発生している箇所を特定することはできない。即ち、複数の対象箇所のうち少なくとも1つの箇所にて温度異常をきたした場合、複数の対象箇所に接触配置されたPTC素子のオーバーオールな抵抗変化を調べることによって、温度異常の発生の「有無」を知ることはできるが、検出対象である複数の対象箇所のうち、どの箇所にて温度異常が生じているかを知ることまではできない。
【0007】
例えば、製造されたPTC素子の温度依存抵抗特性を調べてスペック毎に分類するPTC抵抗ソータなどでは、装置の抵抗測定部位モニターや、その周囲のメカニカル動作により昇温する部位およびモニター動作付近において、複数の対象箇所において温度異常を検知し、かつ温度異常箇所を特定することが必要とされる。このような装置では、上記のような従来の温度異常検出装置を適用することはできず、その箇所毎に温度異常検出装置を設けて、個々に温度異常を検出しているのが現状である。また、複数の対象箇所において温度異常を検知し、かつ温度異常箇所を特定することに対する要望は、温度異常が問題となるようなその他のモニターシステムにおいても存在し得る。
【0008】
本発明は、複数の対象箇所における温度異常検出を指向したものであり、本発明の目的は、温度異常の発生を検出した場合に、温度異常が発生している箇所を特定することの可能な簡素化された温度異常検出方法およびそのための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの要旨によれば、PTC素子と該PTC素子に並列接続された抵抗器とを含むモジュールであって、各モジュールは通常の温度状態では(または所定温度以下、例えば常温、具体的には約0〜70℃では)低抵抗値を示し、温度異常状態では(または所定温度を超える温度、例えば約90〜120℃では)高抵抗値を示すようにPTC素子により切り換え可能であり、該高抵抗値はモジュール間で相互に異なる値であるモジュールを少なくとも2つ直列接続し、PTC素子が所定の対象箇所に熱的に結合するように各モジュールを配置し、直列接続された少なくとも2つのモジュールに実質的に一定の電流を流して、直列接続されたモジュールの両端電圧を測定し、全てのモジュールが低抵抗値を示すときの両端電圧の値を基準値として、いずれか1つのモジュールが高抵抗値を示すことによって両端電圧の測定値が基準値から変動したときに、高抵抗値を示しているモジュールを両端電圧の測定値から特定する、温度異常検出方法が提供される。尚、通常の温度状態と温度異常状態とは、本発明が適用される用途に応じて予め決定される所定温度を基準として区別されるものである。
【0010】
尚、本発明において「低」抵抗値および「高」抵抗値とはこれら抵抗値の相対的な大きさを言うものである。低抵抗値と高抵抗値とは、例えば1個のPTC素子中で約10Ω程度またはそれ以上のオーダーの差がある。低抵抗値は、例えば約10Ω以下であり得る。高抵抗値は、低抵抗値と有意に区別し得る程度に大きければ特に限定されないが、例えば約1kΩ以上であり得る。低抵抗値は、好ましくはモジュール間で相互に実質的に等しい値であるが、本発明はこれに限定されずモジュール間で相互に異なる値であってもよい(但し、異なる場合であっても、高抵抗値間の差に比べて無視し得る程度とする)。
【0011】
このように、高抵抗値は低抵抗値に比べて十分に大きいため、低抵抗値がモジュール間で相互に異なっていても、高抵抗値のモジュール間における差に比べて無視できるため、全てのモジュールについて得られる、各モジュールが単独で高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示す場合の直列接続されたモジュールの全抵抗(合成抵抗)は実質的に高抵抗値にのみ依存して変化する。特に、低抵抗値が全てのモジュールで実質的に等しければ、該直列接続されたモジュールの全抵抗(合成抵抗)は厳密に高抵抗値のみに依存して変化する。
【0012】
よって、このような構成によれば高抵抗値がモジュール間で相互に異なるため、全てのモジュールについて得られる、各モジュールが単独で高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示す場合の直列接続されたモジュールの全抵抗、ひいては両端電圧の値は各場合毎に固有の値となり、一致しない。
【0013】
このような本発明の方法によれば、モジュールのPTC素子が熱的に結合されている所定の対象箇所が通常の温度状態から温度異常状態に移ると、該モジュールは高抵抗値を示し、実質的に一定の電流下において、両端電圧の測定値が基準値から変動(より具体的には増大)するので、温度異常の発生を検出することができる。加えて、この高抵抗値はモジュール毎に異なるので、いずれか1つのモジュールが高抵抗値を示すことにより温度異常の発生を検出した場合、両端電圧の測定値からいずれのモジュールが高抵抗値を示しているか、即ち、どの箇所で温度異常が発生しているかを特定することができる。
【0014】
より具体的には、全てのモジュールについて得られる、各モジュールが単独で高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示す場合の両端電圧(直列接続されたモジュールの両端電圧)の値からなる群(換言すれば、ある1つのモジュールのみが高抵抗値を示し、かつ、残りの全てのモジュールが低抵抗値を示す場合の両端電圧を、全てのモジュールについて各場合毎に得た値からなる集合)から、両端電圧の測定値に実質的に等しい値を見つけ出すことによって、高抵抗値を示しているモジュールを特定できる。上記の両端電圧の値からなる群は、温度異常検出を行なうに際し、理論計算および実測のいずれでもよいが、予め求めておくことが好ましい。
【0015】
理解を容易にするために、直列接続された3つのモジュールA、BおよびC(この順に直列接続されているものとする)を用いる場合を一例として説明する。この場合、これらの高抵抗値(それぞれR、RおよびRとする)は「モジュール間で相互に異なる」ように設定され、互いに相違する(即ち、いずれの2つの値も互いに相違する)。
【0016】
また、「全てのモジュールについて得られる、各モジュールが単独で高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示すときの直列接続されたモジュールの両端電圧の値からなる群」とは、全てのモジュールA、BおよびCから1つのモジュールを選択するあらゆる場合について得られる、モジュールA〜Cの両端電圧の値からなる群(または集合)を意味する。即ち、モジュールAのみが高抵抗値を示し、残りのモジュールBおよびCが低抵抗値を示す場合におけるモジュールA〜Cの両端電圧(以下同様)の値(Vとする)と、モジュールBのみが高抵抗値を示し、残りのモジュールAおよびCが低抵抗値を示す場合における両端電圧の値(Vとする)と、モジュールCのみが高抵抗値を示し、残りのモジュールBおよびAが低抵抗値を示す場合における両端電圧の値(Vとする)とからなる群{V,V,V}を意味する(表1の場合1〜3を参照のこと)。R、RおよびRが互いに相違するため、各場合において、モジュールA、BおよびCの全抵抗(合成抵抗)も相違し(上記の説明を参照のこと)、よって、両端電圧値V、V、およびVも互いに相違する。これら両端電圧値は理論値によっても実測値によってもよい。尚、全てのモジュールA、BおよびCが低抵抗値を示す場合における両端電圧の基準値(Vとする)は、V、VおよびVのいずれの値よりも小さく、好ましくははるかに小さい。
【0017】
次に、温度異常検出のために、モジュールA〜Cの両端電圧を実際に測定し(測定値Vとする)、上記の群{V,V,V}のうちから両端電圧の測定値Vに実質的に等しい値を見つけ出すことによって、どのモジュールが高抵抗値を示しているか(即ち、温度異常状態にあるか)を特定できる。例えば、両端電圧の測定値VがVに実質的に等しい場合には、両端電圧Vとなる場合1(表1を参照のこと)しかあり得ず、よって、場合1に対応するモジュールAが高抵抗値を示しており、該モジュールA(より詳細にはこれに含まれるPTC素子)を配置した箇所にて温度異常が発生していることがわかる。尚、温度異常が発生していない状態(即ち、全てのモジュールA、BおよびCが低抵抗値を示す場合)における両端電圧の測定値V(=V)は、V、VおよびVのいずれの値よりも小さく、好ましくははるかに小さいため、これら値と区別し得る。
【0018】
本発明のもう1つの要旨によれば、温度異常を検出するための装置であって、直列接続されて成る少なくとも2つのモジュールを含み、各モジュールは、所定の対象箇所に熱的に結合して配置されるPTC素子と該PTC素子に並列接続された抵抗器とを含み、通常の温度状態では(または所定温度以下では)低抵抗値を示し、温度異常状態では(または所定温度を超えると)高抵抗値を示すようにPTC素子により切り換え可能であり、該高抵抗値はモジュール間で相互に異なる値である装置が提供される。
【0019】
このような本発明の装置を用いれば、上記の本発明の方法を実施することができ、該方法と同様の効果を奏することができる。
【0020】
本発明の方法および装置において用いられるPTC素子は、温度異常の判定基準となる温度(所定温度)と実質的に等しいか、これに近いトリップ温度を有するものである。本発明に用いられる少なくとも2つのPTC素子は、温度異常の検出が所望される用途に応じて種々の温度依存抵抗特性を有し得、実質的に同じ温度依存抵抗特性を有していても、互いに異なる温度依存抵抗特性を有していてもよい。
【0021】
尚、本発明において、PTC素子が、所定の対象箇所に「熱的に結合」するとは、該箇所の温度影響下に置かれることを言う。例えば、PTC素子が、所定の対象箇所に少なくとも部分的に接触して、好ましくはこれに密着して配置されることを示す。本発明のように、PTC素子を所定の対象箇所に熱的に結合させることにより、該所定の対象箇所の温度に依存してPTC素子の抵抗を変化させることができ、該所定の対象箇所の温度異常を検知することができる。より具体的には、該所定の対象箇所がトリップ温度以下の温度であるときはPTC素子はロー状態にあり、低抵抗値を示すが、過熱等によりトリップ温度を超える温度となったときにPTC素子はハイ状態となり、その抵抗が急激に増大する。
【0022】
また、本発明においてPTC素子に並列接続して用いられる抵抗器は一般的な抵抗器であり得るが、抵抗器そのものでなくても、抵抗として実質的に機能するものであればよい。更に、抵抗器(または抵抗)は各モジュールにおいて必ずしも1つである必要はなく、複数の抵抗器(または抵抗)が、全体として、PTC素子に並列接続されるような構成であればよい。例えば、2つまたはそれ以上の抵抗器がPTC素子に並列接続されていてもよく、これら2つまたはそれ以上の抵抗器を全体として、PTC素子に並列接続された1つの抵抗器と見なし得る。
【0023】
本発明の好ましい態様においては、1つまたは2つ以上のモジュールが高抵抗値を示すことによって両端電圧の測定値が基準値から変動したときに、高抵抗値を示しているモジュールを両端電圧の測定値から特定できる。これは、(a)各モジュールの高抵抗値、および(b)2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて得られるそれら2つ以上のモジュールの高抵抗値の和からなる群(換言すれば、全てのモジュールから選択される1つまたは2つ以上のモジュールのあらゆる場合について得られる、該1つまたは2つ以上のモジュールの高抵抗値または2つ以上の場合にあっては高抵抗値の和からなる群)から選択されるいずれの2つの値も互いに相違するように、各モジュールを構成することにより実施可能となる。
【0024】
よって、このような構成によれば、高抵抗値がいずれの1つの値または2つ以上の和の値も相互に異なるため、全てのモジュールについて得られる、各モジュールが単独で高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示す場合および2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて得られる、該2つ以上のモジュールが高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示す場合の直列接続されたモジュールの全抵抗、ひいては両端電圧の値は各場合毎に固有の値となり、一致しない。
【0025】
従って、1つのモジュールのみが高抵抗値を示している場合だけでなく、2つ以上のモジュールが同時に高抵抗値を示している場合であっても、両端電圧の測定値から、どのモジュールが高抵抗値を示しているかを一義的に特定することができる。
【0026】
より具体的には、(i)全てのモジュールについて得られる、各モジュールが単独で高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示す場合の両端電圧(直列接続されたモジュールの両端電圧)の値、および(ii)2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて得られる、それら2つ以上のモジュールが高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示す場合(全てのモジュールが高抵抗値を示す場合を含む)の両端電圧の値からなる群(換言すれば、(i)ある1つのモジュールのみが高抵抗値を示し、かつ、残りの全てのモジュールが低抵抗値を示す場合の両端電圧を、全てのモジュールについて各場合毎に得た値からなる部分集合と、(ii)ある2つまたはそれ以上のモジュールのみが高抵抗値を示し、かつ、残りの全てのモジュールが低抵抗値を示す場合の両端電圧を、2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて各場合毎に得た値からなる部分集合とで構成される全体集合)から、両端電圧の測定値に実質的に等しい値を見つけ出すことによって、高抵抗値を示しているモジュールを特定できる。上記の両端電圧の値からなる群は、温度異常検出を行なうに際し、理論計算および実測のいずれでもよいが、予め求めておくことが好ましい。
【0027】
理解を容易にするために、上述の例の3つのモジュールA、BおよびC(高抵抗値はそれぞれR、RおよびR)を用いる場合の例について説明する。この場合、「(a)各モジュールの高抵抗値、および(b)2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて得られるそれら特定の2つ以上のモジュールの高抵抗値の和からなる群」とは、(a)各モジュールの高抵抗値からなる部分集合{R,R,R}と、(b)2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて得られるそれら特定の2つ以上のモジュールの高抵抗値の和からなる部分集合{R+R,R+R,R+R,R+R+R}とで構成される群(または全体集合)を意味する(表1を参照のこと)。この群(全体集合)から選択される「いずれの2つの値も互いに相違する」ように、換言すれば、どの2つを取っても一致しないように、高抵抗値R、RおよびRが設定される。
【0028】
【表1】

【0029】
また、「(i)全てのモジュールについて得られる、各モジュールが単独で高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示すときの直列接続されたモジュールの両端電圧の値、および(ii)2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて得られる、それら2つ以上のモジュールが高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示すときの直列接続されたモジュールの両端電圧の値からなる群」とは、全てのモジュールA、BおよびCから1つまたは2つ以上のモジュールを選択するあらゆる場合について得られる、モジュールA〜Cの両端電圧の値からなる群(または集合)を意味する。即ち、表1に示す場合1〜7のように、選択した特定の(i)1つのモジュールまたは(ii)2つ以上のモジュールのみが高抵抗値(温度異常)を示し、残りのモジュールが低抵抗値を示す(但し、全てのモジュールA、BおよびCが高抵抗値を示す場合には、当然、低抵抗値を示すモジュールは存在しない)場合について得られる両端電圧の値からなる群{V,V,V,V,V,V,V}を意味する(表1を参照のこと)。上述のように、R、R、R、R+R、R+R、R+RおよびR+R+Rが互いに相違するため、各場合において、モジュールA、BおよびCの全抵抗(合成抵抗)も相違し、よって、両端電圧値V〜Vも互いに相違する。これら両端電圧値は理論値によっても実測値によってもよい。
【0030】
次に、温度異常検出のために、モジュールA〜Cの両端電圧を実際に測定し(測定値V)、上記の群{V,V,・・・,V}のうちから両端電圧の測定値Vに実質的に等しい値を見つけ出すことによって、どのモジュールが高抵抗値を示しているか(即ち、温度異常状態にあるか)を特定できる。例えば、両端電圧の測定値VがVに実質的に等しい場合には、両端電圧Vとなる場合4(表1を参照のこと)しかあり得ず、よって、場合4に対応するモジュールAおよびBが高抵抗値を示しており、該モジュールAおよびB(より詳細にはこれに含まれるPTC素子)を配置した箇所にて温度異常が発生していることがわかる。
【0031】
尚、本明細書において「実質的に等しい(または実質的に同じ)」との用語は、完全に一致する場合だけでなく、本発明の目的を達し得る範囲で多少の差異があることを許容する趣旨で用いるものである。例えば、「実質的に等しい値」とは、電圧計などの装置の測定誤差や、環境的要因による誤差等を考慮しつつ、等しいと見なして差し支えない値を言うものである。
【0032】
また、本明細書において両端電圧の測定値に実質的に等しい値を「見つけ出す」とは、予め準備してある可能性のあるあらゆる両端電圧の値の群から、両端電圧の測定値に実質的に等しい値を何らかの手法により検索して抽出することを意味し、抽出した値をもたらすモジュール(1つまたは2つ以上の組み合せ)を調べることにより、温度異常モジュール(即ち、高抵抗値を示しているモジュール)を特定することができる。例えば、予め求めた両端電圧の値からなる群(例えば表1を参照のこと)のうちの1つの値と、両端電圧の測定値とを順次比較していくことにより(例えば両者の差の大きさを求めることにより)、両端電圧の値からなる群から両端電圧の測定値に実質的に等しい値を「見つけ出す」ことができる。
【0033】
本発明の1つの態様においては、直列接続されて成るn個(当然、nは2以上の整数、以下同様)のモジュールを用いる場合、モジュールの高抵抗値の比が、Z:Z:・・・:Z:・・・:Zn−1(Zは1より大きい所定の実数、mは1〜n−1の整数)により表されるように各モジュールを構成し得る。このように高抵抗値を選択すれば、(a)各モジュールの高抵抗値、および(b)2つ以上のモジュールからなるあらゆる組み合せについて得られるそれら2つ以上のモジュールの高抵抗値の和からなる群から選択されるいずれの2つの値も互いに相違し、どの2つを取っても一致することはない。
【0034】
しかし、上記の態様は本発明を実施する1つの態様に過ぎないことに留意されるべきである。即ち、本発明はこれに限定されず、各モジュールの高抵抗値および2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せにおける該2つ以上のモジュールの高抵抗値の和からなる群から選択されるいずれの2つの値も互いに相違する限り、どのような高抵抗値を選択してもよい。例えば、モジュールの高抵抗値の比を、Zx1:Zx2:・・・:Zxm:・・・(Zは1より大きい所定の実数)とし、xm(x1、x2、・・・)を任意の適当な実数としてよく、当業者であれば、各モジュールの高抵抗値および2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せにおける該2つ以上のモジュールの高抵抗値の和からなる群から選択されるいずれの2つの値も互いに相違するように、xmの値を適当に選択することができるであろう。また例えば、モジュールの高抵抗値は任意の適切な手法により、例えばトライアルアンドエラーや数学的(または数論的)アプローチにより,各モジュールの高抵抗値を決定してよい。
【0035】
本発明の1つの態様においては、モジュールの低抵抗値は該モジュールに含まれるPTC素子のロー状態の抵抗値と実質的に等しく、モジュールの高抵抗値は該モジュールに含まれる抵抗器の抵抗値と実質的に等しい。このような構成によれば、温度異常状態にあるモジュールを特定するためのパラメータとなる各モジュールの高抵抗値を、抵抗器の抵抗率を適切に選択することにより容易に決定することができる。
【0036】
例えば、直列接続されて成るn個のモジュールを用いる場合、モジュールの高抵抗値の比が、Z:Z:・・・:Z:・・・:Zn−1(Zは1より大きい所定の実数、mは1〜n−1の整数)により表されるように各モジュールを構成するには、モジュールに各々含まれる抵抗器の抵抗値の比がこのように表されるように各抵抗器を構成すればよい。
【0037】
しかし、本発明はこれに限定されず、モジュールは、PTC素子と該PTC素子に並列接続された抵抗器とを含み、通常の温度状態では低抵抗値を示し、温度異常状態ではモジュール間で異なる高抵抗値を示すようにPTC素子により切り換え可能であり、好ましくは各モジュールの高抵抗値および2つ以上のモジュールのあらゆる組み合せにおける該2つ以上のモジュールの高抵抗値の和からなる群から選択されるいずれの2つの値も互いに相違する限り、モジュールはどのような内部構成を有するものであってもよい。
【0038】
本発明の好ましい態様においては、PTC素子としてポリマーPTC素子が用いられる。本明細書において「ポリマーPTC素子」は、電気/電子回路技術の分野において一般的にそのようなものとして、あるいはPPTC素子またはポリスイッチ(商標)として知られている素子を言う。ポリマーPTC素子は、代表的には、導電性フィラーが分散されたポリマー層を2枚の金属電極箔で挟んだような構造を有するものである。ポリマーPTC素子は、他のPTC素子、例えばセラミックPTC素子(CPTC素子)に比べて、ロー状態の抵抗値とハイ状態の抵抗値との差が大きく、温度変化に対する抵抗の立ち上がりが急峻である。また、CPTC素子では、温度が低くなり過ぎると抵抗が上昇するようになる(即ち、温度係数が正から負に逆転する)が、ポリマーPTC素子ではそのような現象は起こらない。よって、本発明の目的を達するには、ポリマーPTC素子を用いることが特に適切である。
【0039】
尚、本発明の方法は、温度異常を検出するために、直列接続された複数のモジュールに、好ましくは実質的に一定の電流を流して、その両端電圧を電圧計で測定することによって実施され得る。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、直列接続された複数のモジュールの全抵抗をオーム計で測定するようにしてもよい。また、通常の温度状態における消費電力をより低くするという観点からは、本発明の概念を逸脱しない範囲内にてなるべく高い低抵抗値を有するPTC素子を選択して用い、モニター時の一定電流値を小さく設定することが好ましい。
【0040】
また、本発明において、温度異常の検出の対象となる複数の所定の対象箇所は、同一対象物におけるものであっても、2以上の対象物におけるもの(例えば対象物毎に1箇所)であってもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、複数の対象箇所における温度異常発生を検出すると共に、温度異常発生箇所を特定することが可能な温度異常検出方法およびそのための装置が提供される。本発明の方法および装置は、複数の対象箇所における温度異常を検出するために、各箇所に配置されたPTC素子の抵抗変化を個々に調べる手法と比較して簡素化されたシステム構成を可能にし、また、各箇所に配置された複数のPTC素子のオーバーオールな抵抗変化を調べて温度異常を検出する場合に不可能であった、温度異常箇所の特定を可能にするという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の1つの実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態において用いる温度異常検出装置20の電気回路図である。
【0043】
図1に示すように、温度異常検出装置20は、n個(nは2以上の整数)のモジュール10を直列接続し、これに定電流電源装置11を直列接続して成る電気回路(閉ループ)を有する。この電気回路には、直列接続されたn個のモジュール10の両端電圧を測定するため、電圧計12がこれらモジュール10に並列に挿入されている。
【0044】
各モジュール10は、図示するように、PTC素子1とPTC素子1に並列に接続された抵抗器2とを含んで成り、モジュール10に流れる電流がPTC素子1および/または抵抗器2に流れるようになっている。PTC素子1には、ポリマーPTCを用いることが好ましい。特に好ましいポリマーPTC素子は、カーボンブラックが分散したポリエチレンがNiメッキされたCu箔および無メッキのCu箔の一対の電極により挟まれた構造のポリマーPTC素子である。抵抗器2には、市販の適当な固定抵抗器を用い得る。定電流電源装置11および電圧計12は、当該技術分野において一般的なものであるので説明を省略する。尚、定電流電源装置11および電圧計12は、本実施形態においては直流電源および直流電圧計としている。
【0045】
PTC素子1のトリップ温度は、温度異常の判断の基準となるものであり、温度異常の判断基準とする所定温度と実質的に同じか、それに近い温度とされる。トリップ温度は、例えば約90〜120℃の範囲で用途に応じて適当に選択され得る。
【0046】
モジュール10の抵抗は、PTC素子1および抵抗器2の合成抵抗CRとして求められる(CR=P・R/(P+R)、式中、PはPTC素子1の抵抗値、Rは抵抗器2の抵抗値である)。
【0047】
PTC素子1のロー状態における抵抗値(Plow)およびハイ状態における抵抗値(Phigh、一般にハイインピーダンス状態とも呼ばれる)ならびに抵抗器2の抵抗値(R)は、各モジュール10の低抵抗値および高抵抗値がそれぞれPlowおよびRに実質的に等しくなるように適切に選択される。より具体的には、例えばRがPlowの100倍以上、Phighの1/100倍以下(Plow×100≦R≦Phigh×1/100)となるように、PTC素子1および抵抗器2が構成され得る。RがPlowの100倍以上であれば、通常の温度状態(PTC素子1はロー状態)において、モジュール10の抵抗は実質的にPlowに等しいと見なせる(Plow+R≒RよりCR≒Plow)。また、RがPhighの1/100倍以下であれば、温度異常状態(PTC素子1はハイ状態)において、モジュール10の抵抗は実質的にRに等しいと見なせる(Phigh+R≒PhighよりCR≒R)。Rは、Plowの例えば約10〜1000倍、好ましくは約100〜1000倍であり、Phighの例えば約1/10〜1/1000倍、好ましくは約1/100〜1/1000倍とされる。
【0048】
モジュール10間において、抵抗器2は互いに異なる抵抗値を有する。本実施形態では、n個のモジュール10に各々備えられる抵抗器2の抵抗値の比が(換言すれば、モジュール10の高抵抗値の比が)、Z:Z:・・・:Z:・・・:Zn−1(Zは1より大きい所定の実数、mは1〜n−1の整数)により表されるように構成される。即ち、抵抗器2の抵抗値の大きさは、一般的にkZ(kは正の比例定数)で表される。このような構成により、各モジュール10の高抵抗値(kZ,kZ,・・・,kZ,・・・,Zn−1)および2つ以上のモジュールからなるあらゆる組み合せについて得られるそれらモジュールの高抵抗値の和(kZ+kZ,kZ+kZ,・・・,kZ+kZ,・・・,kZ+Zn−1;kZ+kZ,・・・,kZ+kZ,・・・,kZ+Zn−1;・・・・・・・・・;kZ+kZ+・・・+Zn−1)からなる群から任意に選択されるいずれの2つの値も互いに相違し、一致しないことは、当業者には容易に理解されるであろう。尚、n、Zおよびkの大きさは、抵抗器2のうちの最大の抵抗値(kZ)との関係上、PTC素子1のPhighの値を考慮して制限される(kZ≦Phigh×1/100)のみならず、後述するように測定精度によっても制限される点に留意すべきである。
【0049】
他方、PTC素子1は、本実施形態では、モジュール10間において実質的に同じ温度依存抵抗特性を有し、よって、実質的に同じPlowおよびPhighを有するものとするが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
直列接続されたn個のモジュール10の全抵抗(合成抵抗)は、各モジュール10の抵抗の総和として求められる。よって、本実施形態では、全抵抗は、通常の温度状態ではn×Plowとなり、温度異常状態では、例えば1個のモジュール(m)にて温度異常状態を検出している場合には(n−1)×Plow+kZとなる。温度異常状態におけるn個のモジュール10の全抵抗は、どのモジュール10(1個または2個以上)において温度異常が発生しているかにより、全ての場合につき異なる値となる。この結果、温度異常状態において示す両端電圧の値もまた、どのモジュール10(1個または2個以上)において温度異常が発生しているかにより、全ての場合につき異なる値となる。
【0051】
各モジュール10は、例えば樹脂モールドやフィルムラミネーションなどで封止され得るが、これに限定されず、他の任意の適切な形態を有していてもよい。
【0052】
次に、上記のような温度異常検出装置20を用いる温度異常検出方法について説明する。
【0053】
まず、温度異常検出が所望される対象物(対象物自体は1つであるか、複数であるかを問わない)の所定の対象箇所(n箇所)に、上述のn個のモジュール10をPTC素子がそこに熱的に結合するようにしてそれぞれ配置する。例えば、ネジ止め、耐熱テープ、およびホットメルト材などを用いて、モジュール10を所定の対象箇所に密着して配置することができる。PTC素子10は該所定の対象箇所に熱的に結合されることにより、その温度影響下に置かれる。
【0054】
次に、温度異常検出装置20の定電流電源装置11を用いて所定の電流を、直列接続されたn個のモジュール10に流し、電圧計12によりn個のモジュール10の両端電圧を測定する。
【0055】
全てのモジュール10が通常の温度状態にあり、低抵抗値(Plow)を示すときの両端電圧の値(実測値または理論値)を基準値とする。対象物を試験に付す間または対象物を使用する間に亘って両端電圧を(例えば連続的または定期的に)測定する。モジュール10を配置した箇所が通常の温度状態から温度異常状態に移ると、該モジュール10のみが高抵抗値(R)を示し、この結果、両端電圧の測定値が基準値から変動する。このような変動が計測された場合、温度異常が発生していることがわかる。
【0056】
更に、上記の場合において、両端電圧の測定値から、高抵抗値(R)を示している(即ち温度異常状態にある)モジュールを特定する。各モジュール10の高抵抗値は互いに異なるので、いずれか1つのモジュール10が高抵抗値を示している場合に、いずれのモジュール10が温度異常状態にあるのかを、両端電圧の測定値から特定することができる。加えて、本実施形態においては、モジュール10の高抵抗値は、(a)それぞれ単独のモジュールにおける場合の値、および(b)2つ以上のモジュールからなるあらゆる組み合せにおける場合の各値の和からなる群から選択されるいずれの2つの値も互いに相違し、一致しないように設定されている。よって、いずれか1つだけでなく、2つ以上のモジュール10が同時に高抵抗値を示している場合であっても、どのモジュール10が温度異常状態にあるのかを、両端電圧の測定値から一義的に特定することができる。
【0057】
このような特定は、(i)全てのモジュールについて得られる、各モジュールが単独で高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示す場合の両端電圧の値、および(ii)2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて得られる、それら特定の2つ以上のモジュールが高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示す場合の両端電圧の値からなる群を予め求めておき、この群から、両端電圧の測定値に実質的に等しい値を見つけ出すことによって実施し得る。
【0058】
例えば、1つまたは2つ以上のモジュールのあらゆる組み合せについて、それら特定のモジュールが温度異常を検出したときに想定または実測される両端電圧の値と、温度異常モジュールを特定するための識別ラベル(例えば、アルファベットや数字などの番号)とを対応させたテーブル(例えば、表1の温度異常モジュールの欄と両端電圧値(各値は具体的数値となる)の欄とからなる表)を予め作成しておき、温度異常モジュールを両端電圧の測定値から特定するために用いることができる。このようなテーブルは、オペレータが利用するようにしてもよいし、例えば電子計算機などによるプログラムの実行によって利用するようにしてもよい。このような実施形態は、モジュールの数(n)が多い場合に特に有用である。
【0059】
温度異常状態にあるモジュール10を特定するためには、最小の抵抗値(kZ=k)を有する抵抗器2を含むモジュール10のみが温度異常状態にある場合における両端電圧の測定値と、n個全てのモジュール10が温度異常状態にある場合における両端電圧の測定値とを有意に区別し得る必要がある。よって、定電流電源装置11により定電流を流した状態における電圧計12の測定精度を考慮して、n、Zおよびkの値が制限される点に留意すべきである。nは例えば2〜10個、Zは例えば1より大きく、2以下の範囲の実数、kは例えば1〜100の範囲の実数、好ましくは約1とされ得る。
【0060】
本実施形態において、例えば、Plowが1Ω、Phighが100MΩ、トリップ温度が120℃でトリップ時の抵抗値が1MΩであるポリマーPTC素子を用い、抵抗値が1kΩ、2kΩ、・・・、2kΩ、・・・、2n−1kΩである抵抗器2(即ち、Z=2,k=1000)を用い、定電流電源装置11により約1mAの電流を流した場合、モジュールの数(n)は、例えば約2個以上、好ましくは約2〜8個とすることができる。しかし、少なくとも2個のモジュールを用いる限り、本発明はこれに限定されない。
【0061】
また、PTC素子1としては、本実施形態のようにポリマーPTC素子を用いることが好ましい。ポリマーPTC素子は、ロー状態での抵抗値(Plow)とハイ状態での抵抗値(Phigh)との差異(以下、単に抵抗値差と言う)が一般的に8桁程度存在するので、該差異が4桁程度であるセラミックPTC素子を用いる場合よりも抵抗器2の抵抗値の最小値から最大値までの幅を広くできる。また、ポリマーPTC素子は、温度変化に対する電気抵抗の立ち上がりが急峻で、かつ抵抗値差が大きいので、立ち上がりが比較的緩やかで、抵抗値差が小さいセラミックPTC素子を用いる場合よりも、両端電圧の測定値の信頼度が高く(換言すれば含み誤差が小さく)、測定精度を向上させることができる。よって、なるべく多くの箇所において温度異常を検出するには、ポリマーPTC素子が適する。
【0062】
以上のようにして、本実施形態によれば、複数の対象箇所における温度異常発生を同時に検出すると共に、温度異常発生箇所(または温度異常モジュール)の特定をすることが可能となる。特に、本実施形態によれば、モジュールに各々含まれる抵抗器の抵抗値(2つ以上の場合には各抵抗値の和)が、1つまたは2つ以上のあらゆる組み合せについて互いに異なるので、いずれか1つのモジュールにおいて温度異常が発生している場合はもちろん、2つ以上のモジュールにおいて同時に温度異常が発生している場合にも、どのモジュールが温度異常状態にあるかを一義的に特定することができる。
【0063】
以上、本発明の1つの実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、当業者には、本発明の概念を逸脱しない範囲で種々の改変がなされることが理解されるであろう。本発明の温度異常検出方法および装置は、複数の対象箇所における温度異常の検出が所望されるあらゆる用途、例えば電子部品等の生産設備等の対象物の局所的な温度異常の発生が懸念される製造設備や、電子部品の検査設備等の個々の対象物の温度特性を検査する検査設備、あるいは、多数の2次電池を用いるバッテリ等の個々の対象物を使用する際の過熱保護装置等の種々の用途において利用され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の1つの態様における温度異常検出装置の電気回路図である。
【図2】従来の温度異常検出装置の電気回路図である。
【符号の説明】
【0065】
1 PTC素子
2 抵抗器
10 モジュール
11 定電流電源装置
12 電圧計
20 温度異常検出装置
61 PTC素子
62 オーム計
70 温度異常検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度異常を検出する方法であって、
PTC素子と該PTC素子に並列接続された抵抗器とを含むモジュールを少なくとも2つ直列接続し、
各モジュールは通常の温度状態では低抵抗値を示し、温度異常状態では高抵抗値を示すようにPTC素子により切り換え可能であり、該高抵抗値はモジュール間で相互に異なる値であり、
PTC素子が所定の対象箇所に熱的に結合するように各モジュールを配置し、
直列接続された少なくとも2つのモジュールに実質的に一定の電流を流して、直列接続されたモジュールの両端電圧を測定し、
全てのモジュールが低抵抗値を示すときの両端電圧の値を基準値として、いずれか1つのモジュールが高抵抗値を示すことによって両端電圧の測定値が基準値から変動したときに、高抵抗値を示しているモジュールを両端電圧の測定値から特定する
ことを含む、方法。
【請求項2】
全てのモジュールについて得られる、各モジュールが単独で高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示すときの直列接続されたモジュールの両端電圧の値からなる群から、両端電圧の測定値に実質的に等しい値を見つけ出すことによって、高抵抗値を示しているモジュールを特定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各モジュールの高抵抗値、および2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて得られる該2つ以上のモジュールの高抵抗値の和からなる群から選択されるいずれの2つの値も互いに相違し、
1つまたは2つ以上のモジュールが高抵抗値を示すことによって両端電圧の測定値が基準値から変動したときに、高抵抗値を示しているモジュールを両端電圧の測定値から特定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
全てのモジュールについて得られる、各モジュールが単独で高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示すときの直列接続されたモジュールの両端電圧の値、および2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて得られる、該2つ以上のモジュールが高抵抗値を示し、かつ、残りのモジュールが低抵抗値を示すときの直列接続されたモジュールの両端電圧の値からなる群から、両端電圧の測定値に実質的に等しい値を見つけ出すことによって、高抵抗値を示しているモジュールを特定する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
温度異常を検出するための装置であって、
直列接続されて成る少なくとも2つのモジュールを含み、
各モジュールは、所定の対象箇所に熱的に結合して配置されるPTC素子と該PTC素子に並列接続された抵抗器とを含み、通常の温度状態では低抵抗値を示し、温度異常状態では高抵抗値を示すように該PTC素子により切り換え可能であり、
該高抵抗値はモジュール間で相互に異なる値である、装置。
【請求項6】
各モジュールの高抵抗値、および2つ以上のモジュールからなる全ての組み合せについて得られる該2つ以上のモジュールの高抵抗値の和からなる群から選択されるいずれの2つの値も互いに相違する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
直列接続されて成るn個のモジュールを含み、モジュールの高抵抗値の比が、Z:Z:・・・:Z:・・・:Zn−1(Zは1より大きい所定の実数、mは1〜n−1の整数)により表される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
モジュールの低抵抗値は該モジュールに含まれるPTC素子のロー状態の抵抗値と実質的に等しく、モジュールの高抵抗値は該モジュールに含まれる抵抗器の抵抗値と実質的に等しい、請求項5〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
直列接続されて成るn個のモジュールを含み、モジュールに各々含まれる抵抗器の抵抗値の比が、Z:Z:・・・:Z:・・・:Zn−1(Zは1より大きい所定の実数、mは1〜n−1の整数)により表される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
PTC素子がポリマーPTC素子である、請求項5〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれかに記載の装置を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−145478(P2006−145478A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339045(P2004−339045)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(592142669)タイコ エレクトロニクス レイケム株式会社 (14)
【Fターム(参考)】