温度補償型発振器、電子機器
【課題】高精度な温度補償を維持しつつ省電力化が可能な温度補償型発振器を提供する。
【解決手段】温度センサー20と、検出電圧に基づいて温度補償電圧を出力する温度補償回路22と、補償電圧に基づいて温度補償された発振信号を出力する電圧制御発振回路12を有する発振器10において、検出温度電圧の所望時間における電圧変化量の大きさと基準電圧との大小関係に基づいてオンオフ信号を出力する出力回路36と、オンオフ信号を受けて温度補償回路22への電力の供給を制御可能なスイッチ回路24と、オンオフ信号を受けて温度補償回路22と接続し温度補償回路22から出力された補償電圧を保持しつつ補償電圧を電圧制御発振回路12に出力する状態と、補償回路22との接続を遮断しつつ保持された補償電圧を発振回路12に出力する状態に切替制御可能なサンプルホールド回路28を備えた。
【解決手段】温度センサー20と、検出電圧に基づいて温度補償電圧を出力する温度補償回路22と、補償電圧に基づいて温度補償された発振信号を出力する電圧制御発振回路12を有する発振器10において、検出温度電圧の所望時間における電圧変化量の大きさと基準電圧との大小関係に基づいてオンオフ信号を出力する出力回路36と、オンオフ信号を受けて温度補償回路22への電力の供給を制御可能なスイッチ回路24と、オンオフ信号を受けて温度補償回路22と接続し温度補償回路22から出力された補償電圧を保持しつつ補償電圧を電圧制御発振回路12に出力する状態と、補償回路22との接続を遮断しつつ保持された補償電圧を発振回路12に出力する状態に切替制御可能なサンプルホールド回路28を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高精度な温度補償を維持しつつ省電力化が可能な温度補償型発振器、及びこれを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロコンピューターや携帯電話機等の電子機の基準クロック源として、周囲の温度や電気素子の固有の特性に左右されず、安定した発振回路として優れた温度補償型水晶発振器(Temperature Compensated Crystal Oscillator:TCXO)などの水晶発振器が使用されている。
【0003】
図11に特許文献1に記載の温度補償型水晶発振器を示す、図11に示すように、温度補償型発振器200は、発振回路202と温度補償回路206により構成されている。発振回路202は、発振源である水晶振動子204を包含する回路にスイッチSn(n:自然数)と容量Cn(n:自然数)との直列回路が複数接続された構成を有し、スイッチSnをオンオフすることにより、発振回路202内の容量を変化させ発振信号の発振周波数を制御することができる。一方、温度補償回路206は、温度センサー208により得られた温度の情報に基づいて、温度変化に伴う水晶振動子204の発振周波数の変化を抑えるように周波数を制御する補正値を選択し、補正値に応じたスイッチ制御用の信号を発振回路202に出力している。そして発振回路202では、入力されたスイッチ制御用の信号によってスイッチS1、・・・、Snを個別にオンオフすることになる。
【0004】
特許文献2に記載の温度補償型水晶発振器においては、特許文献1と同様に発振回路と温度補償回路により構成されているが、発振回路には印加される電圧に応じて容量が変化するバラクタダイオードが設けられ、温度補償回路は水晶振動子の温度変化に伴う周波数変化を抑えるようにバラクタダイオードの容量値を制御して周波数を可変させる制御信号を出力する。これにより発振回路は制御信号に対応する電圧をバラクタダイオードに印加している。
よって、特許文献1または2の温度補償型水晶発振器においては、発振回路内の容量が、水晶振動子の発振周波数の温度特性とは反対の温度特性を有することになる。
【0005】
したがって、特許文献1または2の温度補償型水晶発振器は、水晶振動子の発振周波数の温度特性の変化を発振回路内の容量変化に伴う周波数の変化により抑えて温度依存性の小さい温度特性となる発振信号を出力することができ、同様の技術は特許文献3にも開示されている。
【0006】
このような温度補償型発振器においては、高精度な温度補償を維持しつつ消費電力を抑えることが課題となっている。特許文献1及び4においては、温度変化が大きいときには温度補償電圧を生成するタイミングの時間間隔を短くし、逆に小さいときは長くする技術が開示され、特許文献3においては、発振信号の周波数が基準周波数を中心とした一定の許容範囲から外れた場合に温度補償回路を駆動させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−258551号公報
【特許文献2】特開昭62−38605号公報
【特許文献3】特開2007−208584号公報
【特許文献4】特開平2−141026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1、3の温度補償型水晶発振器においては、容量の変化が離散的であり、容量の変化に伴い周波数が急激に変化する問題や、温度補償の精度を高めるためには容量の個数を増やす必要がありコストがかかるといった問題がある。
また特許文献2の温度補償型水晶発振器は、実際の周波数変化をモニターして温度補償を行うか否かの判断を行なうため、周波数を検知するための構成が必要となりコストがかかるといった問題がある。
【0009】
さらに特許文献1、3、4では温度補償電圧の出力の時間周期は変更して省電力化が測られているが、温度補償回路が常時駆動しているため消費電力の低減には限界があるといった問題がある。
そこで本発明は、上記問題点に着目し、高精度な温度補償を維持しつつ簡易な構成で省電力化が可能な温度補償型発振器、及びこれを搭載した電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]温度に対応した検出温度電圧を出力する温度センサーと、前記検出温度電圧に基づいて温度補償電圧を出力する温度補償回路と、入力された前記温度補償電圧に基づいて発振周波数が温度補償された発振信号を出力する電圧制御発振回路と、を有する温度補償型発振器において、前記検出温度電圧の所望時間における電圧変化量の大きさと基準電圧との大小関係に基づいてオンオフ信号を出力する出力回路と、前記オンオフ信号を受けて前記温度補償回路への電力の供給をオンオフ制御可能なスイッチ回路と、前記オンオフ信号を受けて、前記温度補償回路と接続し前記温度補償回路から出力された前記温度補償電圧を保持しつつ前記温度補償電圧を前記電圧制御発振回路に出力する状態と、前記温度補償回路との接続を遮断しつつ保持された前記温度補償電圧を前記電圧制御発振回路に出力する状態と、に切替制御可能なサンプルホールド回路と、を備えたことを特徴とする温度補償型発振器。
上記構成により、温度補償を行なうか否かを温度センサーが検知した検出温度電圧の電圧変化量の大きさに基づいて判断し、電圧変化量の大きさが基準電圧より大きい場合には、温度補償回路を駆動して温度補償電圧を電圧制御発振回路に出力するとともに温度補償電圧をサンプルホールド回路において保持し、電圧変化量の大きさが基準電圧より小さい場合には、温度補償電圧の駆動を停止しサンプルホールド回路で保持された温度補償電圧を電圧制御発振回路に出力することができる。したがって、高精度な温度補償を維持しつつ簡易な構成で省電力化が可能な温度補償型発振器となる。
【0011】
[適用例2]前記出力回路は、前記検出温度電圧が入力されるローパスフィルターと、前記温度センサーの出力と前記ローパスフィルターの出力とを差動増幅することにより前記電圧変化量に対応する電圧を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力の絶対値となる電圧を出力することにより前記電圧変化量の大きさに対応する電圧を出力する絶対値回路と、前記絶対値回路の出力と前記基準電圧の大小関係を表す信号を前記オンオフ信号として出力するコンパレーターと、を有することを特徴とする適用例1に記載の温度補償型発振器。
上記構成により、ローパスフィルターは、現在より一定時間前の検出温度電圧を出力することになるので、絶対値回路では現在の検出温度電圧と現在より一定時間前の検出温度電圧との差分の大きさ、すなわち検出温度電圧の電圧変化量の大きさを算出することができる。したがって、簡易な構成で検出温度電圧の電圧変化量の大きさを算出しつつオンオフ信号を出力することができる。
【0012】
[適用例3]前記出力回路は、一定周期で駆動信号を出力するタイマーと、前記駆動信号を受けて、前記温度センサーと接続し前記検出温度電圧を保持しつつ前記検出温度電圧を出力する状態と、前記温度センサーとの接続を遮断しつつ保持された前記検出温度電圧を出力する状態と、に切替可能な第2サンプルホールド回路と、前記温度センサーの出力と前記第2サンプルホールド回路の出力とを差動増幅することにより前記電圧変化量に対応する電圧を出力する前記差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力の絶対値となる電圧を出力することにより前記電圧変化量の大きさに対応する電圧を出力する絶対値回路と、前記絶対値回路の出力と前記基準電圧の大小関係を表す信号を前記オンオフ信号として出力するコンパレーターと、を有することを特徴とする適用例1に記載の温度補償型発振器。
上記構成により、タイマーの周期を変更することにより、検出温度電圧の電圧変化量の大きさの算出間隔を任意に設定することができる。
【0013】
[適用例4]前記出力回路は、前記検出温度電圧が、予め設定された第1の閾値電圧と、予め設定され前記第1の閾値電圧より高い値の第2の閾値電圧との間の値である場合に前記オンオフ信号を遮断する遮断回路を有することを特徴とする請求項2または3に記載の温度補償型発振器。
上記構成において、例えば、第1の閾値電圧に対応する温度と第2の閾値電圧に対応する温度の間が、電圧制御発振回路の発振周波数の温度特性が殆どフラットな特性を有する領域(周波数温度特性の曲線の極値とその極値近傍の温度範囲であり、その間の周波数温度特性の変化幅が温度補償型発振器に求められる周波数温度特性の安定度以内である領域)となるように設定することにより、その温度領域においては温度補償電圧の更新は不要であるため、温度補償回路の駆動が不要となる。したがって、温度センサーが検知する温度が、その温度領域にある場合は温度補償回路の駆動を停止させ、消費電力を大幅に削減することができる。
【0014】
[適用例5]前記出力回路は、前記オンオフ信号が入力され、前記オンオフ信号の電圧変化を遅延させた遅延信号を出力する遅延回路と、前記オンオフ信号と前記遅延信号とのOR解となる信号を前記オンオフ信号として前記スイッチ回路に出力するOR回路と、前記オンオフ信号と前記遅延信号とのAND解となる信号を前記オンオフ信号として前記サンプルホールド回路に出力するAND回路と、を有することを特徴とする適用例2乃至4のいずれか1例に記載の温度補償型発振器。
上記構成により、サンプルホールド回路の駆動の立ち上がりは、温度補償回路の駆動の立ち上がりより遅くなり、サンプルホールド回路の駆動の立ち下がりは、温度補償回路の駆動の立ち下りより早くなる。よって温度補償回路はサンプルホールド回路が立ち上がるまでの間に温度補償電圧の出力を安定させることができ、温度補償回路が立ち下がる前にサンプルホールド回路が立ち下がるので温度補償電圧から出力される温度補償電圧の保持を確実に行うことができる。
【0015】
[適用例6]前記温度補償回路と前記サンプルホールド回路との間、または、前記サンプルホールド回路と前記電圧制御発振回路との間には第2ローパスフィルターが配置されたことを特徴とする適用例1乃至5のいずれか1例に記載の温度補償型発振器。
温度補償回路をオン状態にした直後は、サンプルホールド回路は、保持された温度補償電圧から新たに温度補償回路から入力された温度補償電圧に切り替えることになる。よって、この切り替え時に温度補償電圧が時間方向で不連続となり、電圧制御発振回路に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、上記構成とすることにより、新たに入力される温度補償電圧の時間変化をなだらかにして、電圧制御発振回路への負担を軽減することができる。
【0016】
[適用例7]適用例1乃至6のいずれか1例に記載の温度補償型発振器を搭載したことを特徴とする電子機器。
上記構成により、高精度な温度補償を維持しつつ簡易な構成で省電力化が可能な電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る温度補償型発振器の全体ブロック図である。
【図2】本実施形態に係る電圧制御発振回路の回路図である。
【図3】本実施形態に係るサンプルホールド回路の回路図である。
【図4】本実施形態に係る出力回路のブロック図である。
【図5】本実施形態に係る信号生成回路の回路図である。
【図6】本実施形態に係る遮断回路の回路図である。
【図7】本実施形態に係る分岐回路の回路図とタイムチャートを示す図である。
【図8】本実施形態に係る信号生成回路の変形例の回路図である。
【図9】本実施形態に係る温度補償型発振器の変形例であり、図9(a)は、温度補償回路とサンプルホールド回路の間にローパスフィルターを配置した図、図9(b)はサンプルホールド回路と電圧制御発振回路との間にローパスフィルターを配置した図である。
【図10】本実施形態の温度補償型発振器と変形例の温度補償型発振器の温度補償電圧の時間依存を示す図である。
【図11】特許文献1に記載の温度補償型発振器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0019】
図1に本実施形態の温度補償型発振器の全体ブロック図を示す。本実施形態の温度補償型発振器10は、温度センサー20、温度補償回路22、サンプルホールド回路28、電圧制御発振回路12、バッファー18の順に直列に接続した構成を有し、これらの構成要素と後述する出力回路36とに一定の電圧(電力)を供給するレギュレーター(定電圧出力回路)26を有している。さらに、レギュレーター26と温度補償回路22との間にはスイッチ回路24が接続され、スイッチ回路24に第1のオンオフ信号(SW1)を出力し、且つサンプルホールド回路28に第2のオンオフ信号(SW2)を出力する出力回路36を備えている。
尚、オンオフ信号とは、後述の通り、スイッチ回路24の入出力間のオンとオフとの切替、サンプルホールド回路28の入出力間のオンとオフとの切替を、それぞれ連続的に繰り返し行なうための切替制御信号である。
【0020】
図2に本実施形態に係る電圧制御発振回路12の回路図を示す。電圧制御発振回路12は、例えばコルピッツ型の発振回路であって、圧電振動子14を発振源とするものである。圧電振動子14は例えば水晶により形成された厚みすべり振動子や音叉型振動子を用いることができる。そして圧電振動子12に交流電圧を印加することにより所定の共振周波数(発振周波数)で発振信号を出力することができる。また電圧制御発振回路12には可変容量となるバラクタダイオード16が組み込まれている。電圧制御型発振回路12は、バラクタダイオード16に印加する電圧(温度補償電圧)を変化させることにより、バラクタダイオード16の容量が変化し、この容量変化により発振信号の発振周波数が変化する。なお、バッファー18は、入力インピーダンスが極めて大きな回路であり、電圧制御発振回路12から出力される発振信号の電圧のみを接続先の機器側に伝達することができる。これにより電圧制御発振回路12は接続先の機器の影響を受けることなく発振信号を出力することができる。
【0021】
圧電振動子14の共振周波数が温度変化により変化するため、発振信号の発振周波数は、圧電振動子14の共振周波数の温度特性を反映して、温度変化により変化し得る。このため、バラクタダイオード16には、この圧電振動子14の温度特性を相殺する(圧電振動子14の温度特性の影響により生じる発振周波数の変動幅を小さく抑える)ための温度補償電圧が印加されるので、発振信号の発振周波数は温度変化に対して圧電振動子14の温度特性よりも周波数偏差幅が小さく補償された温度特性になる。
【0022】
図1に示すように、温度センサー20は、測定される温度に対応する検出温度電圧(温度検出信号)を温度補償回路22に出力するものであり、ダイオード等により形成されている。温度センサー20をダイオードにより形成する場合は、ダイオードに順方向電流を流し、温度によって一次関数的に降下する検出温度電圧(V0)を温度補償回路22に出力する。
【0023】
温度補償回路22は、温度センサー20から検出温度電圧が入力され、その電圧に対応した温度補償電圧をサンプルホールド回路28に出力するものである。本実施形態の圧電振動子14が音叉型振動子であれば、その共振周波数の温度特性は二次関数的な曲線で描かれ、厚みすべり振動子であれば三次関数的な曲線で描かれる。よって温度補償回路22には、圧電振動子22の共振周波数の温度特性を近似するための、例えば、0次、1次、2次、3次等の温度係数の情報が予め入力されている。よって温度の情報を変数とし、温度補償回路22は、これらの温度係数を係数とするべき級数を算出することにより得られる圧電振動子14の測定された温度における共振周波数の情報を基にして温度補償電圧を算出してサンプルホールド回路28に出力する。
【0024】
スイッチ回路24は、レギュレーター26と温度補償回路22との間に接続され、温度補償回路22がレギュレーター26から受ける電力のオンオフ制御を行なうものである。スイッチ回路24は、出力回路36から第1のオンオフ信号(SW1)が入力されて温度補償回路22のオンオフ制御を行なうが、第1のオンオフ信号(SW1)の電圧がH(基準値より高電圧)のときはオン状態(導通状態)となり、L(基準値より低電圧)のときはオフ状態(非導通状態)となる。
【0025】
図3に第1実施形態に係るサンプルホールド回路の回路図を示す。サンプルホールド回路28は、温度補償回路22と接続して温度補償回路22から出力された温度補償電圧を保持しつつ温度補償電圧を電圧制御発振回路12に出力する状態(直接出力状態)と、温度補償回路22との接続を遮断しつつ保持された温度補償電圧を電圧制御発振回路12に出力する状態(サンプルホールド(S/H)出力状態)と、に切替制御するものである。
【0026】
サンプルホールド回路28は、スイッチ30、キャパシタ32、バッファー34から構成され、スイッチ30の出力側にバッファー34の入力端が接続され、バッファー34の入力端と接地との間にキャパシタ32が接続されている。スイッチ30は、出力回路36から供給される第2のオンオフ信号(SW2)により切替制御される。具体的には、スイッチ30は、第2のオンオフ信号(SW2)の電圧がH(基準値より高電圧)のときはオン状態(導通状態)とし、L(基準値より低電圧)のときはオフ状態(非導通状態)となる。よってサンプルホールド回路28は、オン状態のときは直接出力状態となり、オフ状態のときはサンプルホールド(S/H)出力状態となる。
【0027】
図4に、第1実施形態に係る出力回路のブロック図を示す。出力回路36は、第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(SW2)を生成するものであり、信号生成回路38、遮断回路54、起動回路84、分岐回路68等により構成される。
【0028】
信号生成回路38は、温度センサー20から入力される検出温度電圧(V0)の変化幅(電圧変化量の大きさ)が一定の値を超えた場合に電圧H(基準値より高電圧)となる信号(V1)を出力し、超えない場合は電圧L(基準値より低電圧)となる信号(V1)を出力するものである。
【0029】
遮断回路54は、温度センサー20から入力される検出温度電圧(V0)が一定の範囲内となる場合に電圧Lとなる信号(V2)を出力し、範囲外となる場合に電圧Hとなる信号を出力するものである。すなわち、遮断回路54は、温度センサー20により測定された温度が所望の温度範囲内にある場合には、電圧Lの信号(V2)を出力し、温度範囲外である場合は電圧Hの信号を出力するように設定されている。
【0030】
起動回路84は、本実施形態の温度補償型発振器10(たとえばレギュレーター26)を起動した場合に一定時間の間は電圧Hとなる信号(V3)を出力し、その後は電圧Lの信号(V3)を出力するものである。
【0031】
AND回路86は、信号生成回路38から出力される信号(V1)と遮断回路54から出力される信号(V2)とのAND解となる信号(V4)を出力するものである。
OR回路88は、AND回路86から出力される信号(V4)と起動回路84から出力される信号(V3)とのOR解となる信号(V5)を出力するものである。
【0032】
分岐回路68は、OR回路88から出力される信号(V5)が電圧Hのときに、電圧Hとなる第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(SW2)を出力し、逆に信号(V5)が電圧Lのときに、電圧Lとなる第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(SW2)を出力するものである。
【0033】
よって、本実施形態の温度補償型発振器10を起動して一定時間経過するまでは、信号(V5)は信号(V3)が電圧Hであるため電圧Hになる。さらに分岐回路68から出力される第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(SW2)は、信号(V1)、信号(V2)、信号(V4)に係わらず電圧Hとなる。よって、電圧Hの第1のオンオフ信号(SW1)を受けるスイッチ回路24がオン状態になるので温度補償回路22はレギュレーター26からの電力を受けて駆動し、電圧Hの第2のオンオフ信号(SW2)を受けるサンプルホールド回路28は直接出力状態となる。このように起動時から一定時間の間は、温度補償回路22を駆動させることにより、起動時から電圧制御発振回路12に温度補償電圧を出力して発振信号の温度補償が行えるとともに、サンプルホールド回路28に温度補償回路22から出力された温度補償電圧を保持させることができる。
【0034】
そして、一定時間経過後、信号(V3)は電圧Lとなる。しかし、信号(V1)、信号(V2)が電圧Hであれば、信号(V4)が電圧Hとなるため、信号(V5)は電圧Hとなり、第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(V2)は電圧Hとなる。一方、信号(V1)、信号(V2)の少なくともいずれか一方が電圧Lの場合は、信号(V4)は電圧Lとなるため、信号(V5)も電圧Lとなり、第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(V2)は電圧Lとなる。
【0035】
すなわち、温度センサー20で測定される温度が、遮断回路54が電圧Lを出力する条件として設定された温度範囲より外であり、かつ、温度センサー20で測定される温度の時間変化量(検出温度電圧の電圧変化量の大きさ)が信号生成回路38で設定された変化量(基準電圧)を超える場合には、信号(V5)は電圧Hとなる。一方、これ以外の条件となる場合には、信号(V5)は電圧Lとなる。
【0036】
図5に本実施形態に係る信号生成回路の回路図を示す。図5に示すように、信号生成回路38は、ローパスフィルター40、差動増幅回路46、絶対値回路47、コンパレーター48、電圧制御手段を有する。ローパスフィルター40は、例えば、抵抗42とキャパシタ44との直列回路から形成されるものである。そして、この直列回路に検出温度電圧(V0)が入力されると、キャパシタ44の両端に印加される電圧の電位差を信号(Va)として出力する。ローパスフィルター40から出力される信号(Va)は、キャパシタ44の容量に対応した時定数に従って検出温度電圧(V0)の電圧変化に対して一定時間遅延した電圧を有する。
【0037】
差動増幅回路46は、検出温度電圧(V0)と信号(Va)とを差動増幅した信号(Vb)を出力するものである。ここで、検出温度電圧(V0)、信号(Va)、信号(Vb)とは以下の関係を有する。
【数1】
【0038】
したがって、信号(Vb)は、リアルタイムな温度情報である現在の検出温度電圧(V0)と現在より一定時間前の検出温度電圧(Va)との差分を算出して得られるものであり、検出温度電圧(V0)の電圧変化量に対応する。また差動増幅回路46の出力端には、絶対値回路47が接続されており、差動増幅回路46の出力電圧の絶対値となる電圧を出力する。したがって絶対値回路47は、検出温度電圧(V0)の電圧変化量の大きさに対応する電圧を有する信号(Vb’)を出力することになる。
【0039】
コンパレーター48は、信号(Vb’)と基準電圧となる閾値電圧(Vth)との大小関係を示す信号(V1)を出力するものである。したがって閾値電圧(Vth)は、予め設定された検出温度電圧(V0)の電圧変化量の大きさに対応する。コンパレーター48は、Vb’がVthより高い電圧の場合は電圧Hの信号(V1)を出力し、Vb’がVthより低い電圧の場合には電圧Lの信号(V1)を出力する。
【0040】
電圧制御手段は、閾値電圧Vthを制御するものであり、例えばPROM(Programmable Read Only Memory)50と制御電源52により構成されている。
【0041】
制御電源52は、閾値電圧Vthを複数の離散的な電圧値で設定しており、各電圧値はPROM50に記憶するデータと対応づけられている。よって、制御電源52はPROM50から読み出されたデータに対応する電圧値となる閾値電圧Vthをコンパレーター48に出力することができる。よって電圧制御手段は、PROM50に記憶するデータを変更することにより、制御電源52が出力する閾値電圧Vthの値を調整することができる。
【0042】
したがって、信号生成回路38は、閾値電圧Vthを低く(高く)設定するほど、温度変化に敏感(鈍感)に反応して電圧Hの信号(V1)を出力することができる。またキャパシタ44の容量を変化させることにより、信号(Va)の遅延時間を調整することができる。
【0043】
図6に、本実施形態に係る遮断回路の回路図を示す。図6に示すように、遮断回路54は、コンパレーター56、コンパレーター58、AND回路60、NOT回路62、電圧制御手段により構成されている。
【0044】
コンパレーター56は、検出温度電圧(V0)と第1の閾値電圧(Vth1)との大小関係を示す信号を出力するものである。コンパレーター56は、V0がVth1より高い電圧の場合は電圧Hを出力し、V0がVth1より低い電圧の場合には電圧Lを出力する。
【0045】
コンパレーター58は、検出温度電圧(V0)と第2の閾値電圧(Vth2)との大小関係を示す信号を出力するものである。コンパレーター58は、V0がVth2より高い電圧の場合は電圧Lを出力し、V0がVth2より低い電圧の場合には電圧Hを出力する。
【0046】
また、AND回路60は、コンパレーター56の出力とコンパレーター58の出力とのAND解となる信号を出力し、NOT回路62はAND回路60の出力を反転させて得られる信号(V2)を出力する。
電圧制御手段は、上述同様にPROM64と制御電源66(Vth1、Vth2)により構成されており、Vth2がVth1より高くなるように設定されている。
【0047】
よって、検出温度電圧(V0)がVth1以下の場合は、コンパレーター56は電圧Lの信号を出力し、コンパレーター58は、電圧Hの信号を出力する。よってAND回路60は電圧Lの信号を出力するためNOT回路62が出力する信号(V2)は電圧Hとなる。同様に、検出温度電圧(V0)がVth2以上の場合は、コンパレーター56は電圧Hの信号を出力し、コンパレーター58は電圧Lの信号を出力する。よってAND回路60は電圧Lの信号を出力するためNOT回路62が出力する信号(V2)は電圧Hとなる。
【0048】
一方、検出温度電圧(V0)がVth1とVth2との間となる場合は、コンパレーター56は、電圧Hの信号を出力し、コンパレーター58は、電圧Hの信号を出力する。よってAND回路60は電圧Hの信号を出力するためNOT回路62が出力する信号(V2)は電圧Lとなる。
【0049】
圧電振動子14の周波数温度特性において、温度変化に対して周波数変化が極めて小さくなる領域(周波数温度特性の曲線の極値とその極値近傍の温度範囲であり、その間の周波数温度特性の変化幅が温度補償型発振器10に求められる周波数温度特性の安定度以内である領域)が存在する。よって上述の温度範囲においては温度補償電圧の更新は不要であるため、温度補償回路の駆動が不要である。また上述のように、温度センサー20は、温度上昇とともに検出温度電圧(V0)が一次関数的に単調に減少する傾向を有している。そこで、本実施形態では、第1の閾値電圧(Vth1)を上述の温度範囲の上限となる温度に対応する電圧に設定し、第2の閾値電圧(Vth2)を上述の温度範囲の下限となる温度に対応する電圧に設定する。このようにVth1、Vth2を設定することにより、遮断回路54は、温度センサー20が出力する検出温度電圧(V0)が上述の温度範囲に対応する電圧の範囲となる場合には、AND回路86を介して信号生成回路の信号(V1)を遮断して、温度補償回路22への電力の供給を停止させることができる。これにより、温度補償回路22の消費電力を大幅に削減することができる。
【0050】
本実施形態の温度補償型発振器10においては、全体で約1mAの電流を消費する。このうち、温度補償回路22で全体の1/3消費し、電圧制御発振回路12で1/3消費し、バッファー18で1/3消費する。したがって、温度補償回路22の駆動時間を短くすることにより温度補償型発振回路10全体の消費電力を削減することができる。なお本実施形態は、出力回路36を用いるため、消費電力は増えるが、使用する電流は数十μA程度であるので、温度補償型発振器10の全体の消費電力に影響を及ぼすことはない。
【0051】
ところで、本実施形態の温度補償型発振器10において、温度補償回路22は、スイッチ回路24により電力が投入されてから温度補償電圧を安定的に出力するまで所定時間を要する。このため、温度補償電圧が不安定な状態で、サンプルホールド回路28内のスイッチ30が接続されてしまうと、不安定な温度補償電圧が電圧制御発振回路12に出力され、発振信号が不安定になる虞がある。
【0052】
またサンプルホールド回路28内のスイッチ30が接続した状態で温度補償回路22からの温度補償電圧の出力が停止すると、サンプルホールド回路28内のキャパシタ32が放電してしまうため、正確な温度補償電圧を保持することが困難となる。よって、本実施形態においては、温度補償回路22が立ち上がって所定時間が経過したのちサンプルホールド回路28のスイッチ30が接続し、サンプルホールド回路28内のスイッチ30が切られてから温度補償回路22への電力を停止することが好適である。
【0053】
そこで、本実施形態においては、上述の順番による接続及び接続の解除ができるように、以下に説明する分岐回路68を用いて、スイッチ回路24に出力する第1のオンオフ信号(SW1)、サンプルホールド回路28に出力する第2のオンオフ信号(SW2)に時間差を与えている。すなわち、第1のオンオフ信号(SW1)のオン信号が発生するタイミングと第2のオンオフ信号(SW2)のオン信号が発生するタイミングとの間に時間差を与え、また第1のオンオフ信号(SW1)のオフ信号が発生するタイミングと第2のオンオフ信号(SW2)のオフ信号が発生するタイミングとの間に時間差を与えている。
【0054】
図7に、第1実施形態に係る分岐回路の回路図とタイムチャートを示す。図7においては信号(V5)が電圧H、電圧Lを交互に繰り返す場合(例えば温度変化が大きくなる場合と小さくなる場合を交互に繰り返す場合)のタイムチャートを記載している。図7に示すように、分岐回路68は、遅延回路70、OR回路80、AND回路82により構成される。遅延回路70は、抵抗72(R)とキャパシタ74(C)によるローパスフィルターの入力側及び出力側にインバータ回路としてバッファー76、78を接続したものである。ここで、信号(V5)が電圧Lのときはバッファー76の出力は電圧Hでキャパシタ74は充電され、バッファー78の出力、すなわち遅延信号(Vd)は電圧Lとなる。また信号(V5)が電圧Hのときはバッファー76の出力は電圧Lとなりキャパシタ74は放電され、バッファー78の出力、すなわち遅延信号(Vd)は電圧Hとなる。
【0055】
次に信号(V5)が電圧Lから電圧Hに立ち上がるときは、キャパシタ74はキャパシタ74の容量に対応した時定数に基づいて放電し、キャパシタ74に印加される電圧は時間経過とともに低電圧(ゼロ)に収束する。これにより遅延信号(Vd)は電圧Lから所定時間遅れて電圧Hに収束する。また信号(V5)が電圧Hから電圧Lに立ち下がるときは、キャパシタ74は前記時定数に基づいて充電し、キャパシタ74に印加される電圧は所定電圧に収束する。これにより遅延信号(Vd)は電圧Hから所定時間遅れて電圧Lに収束する。
【0056】
OR回路80は、信号(V5)と遅延信号(Vd)とのOR解となる信号を第1のオンオフ信号(SW1)としてスイッチ回路24に出力するものである。OR回路80は信号(V5)の電圧Lを電圧Lとして認識し、信号(V5)の電圧Hを電圧Hとして認識するものとする。一方、OR回路80は、遅延信号(Vd)の電圧が、遅延信号(Vd)の電圧Hと電圧Lとの間の電圧Vm、例えば(電圧H+電圧L)/2となる電圧Vmを上回った場合には遅延信号(Vd)を電圧Hとして認識し、Vmを下回ったときには遅延信号(Vd)を電圧Lとして認識するように調整されている。
【0057】
OR回路80は、信号(V5)及び遅延信号(Vd)のいずれか一方を電圧Hと認識した場合に、電圧Hとなる第1のオンオフ信号(SW1)を出力する。よって、信号(V5)が電圧Lから電圧Hに立ち上がった場合には、OR回路80は信号(V5)が電圧Hに立ち上がったと同時に、信号(V5)を電圧Hとして認識するため、電圧Hとなる第1のオンオフ信号(SW1)を出力することができる。
【0058】
一方、信号(V5)が電圧Hから電圧Lに立ち下がった場合には、OR回路80は、信号(V5)が電圧Lに立ち下がったと同時に、信号(V5)を電圧Lとして認識する。しかし、OR回路80は、遅延信号(Vd)の電圧がVm以下となるまでは、遅延信号(Vd)を電圧Hとして認識するため、引き続き電圧Hとなる第1のオンオフ信号(SW1)を出力する。そして、OR回路80は、遅延信号(Vd)の電圧がVm以下となったのちに、遅延信号(Vd)を電圧Lとして認識し、電圧Lとなる第1のオンオフ信号(SW1)を出力することができる。
【0059】
AND回路82は、信号(V5)と遅延信号(Vd)とのAND解となる信号を第2のオンオフ信号(SW2)としてサンプルホールド回路28に出力するものである。AND回路82は信号(V5)の電圧Lを電圧Lとして認識し、信号(V5)の電圧Hを電圧Hとして認識するものとする。一方、AND回路82は、遅延信号(Vd)の電圧が、遅延信号(Vd)の電圧Hと電圧Lとの間の電圧Vm、例えば(電圧H+電圧L)/2となる電圧Vmを上回った場合には、遅延信号(Vd)を電圧Hとして認識し、Vmを下回ったときには遅延信号(Vd)を電圧Lとして認識するように調整されている。
【0060】
AND回路82は、信号(V5)及び遅延信号(Vd)のいずれもが電圧Hであると認識した場合に、電圧Hとなる第2のオンオフ信号(SW2)を出力する。よって、信号(V5)が電圧Lから電圧Hに立ち上がった場合には、AND回路82は、信号(V5)が電圧Hに立ち上がったと同時に、信号(V5)を電圧Hとして認識する。しかし、AND回路82は、遅延信号(Vd)の電圧がVm以上となるまでは、遅延信号(Vd)を電圧Lとして認識するため、電圧Lとなる第1のオンオフ信号(SW1)を出力する。そして、AND回路82は、遅延信号(Vd)の電圧がVm以上となったのちに、遅延信号(Vd)を電圧Hとして認識し、電圧Hとなる第2のオンオフ信号(SW2)を出力することができる。
【0061】
一方、信号(V5)が電圧Hから電圧Lに立ち下がった場合には、AND回路82は、信号(V5)が電圧Lに立ち下がったと同時に、信号(V5)を電圧Lとして認識するため、遅延信号(Vd)の電圧に係らず、電圧Lとなる第2のオンオフ信号(SW2)を出力する。
【0062】
以上のような制御を行なうことにより、分岐回路68から出力される第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(SW2)においては、第1のオンオフ信号(SW1)は、第2のオンオフ信号(SW2)より先に立ち上がり、第2のオンオフ信号(SW2)より後に立ち下がることになる。なお、Vmの値、キャパシタ58の容量を変更することにより、第1のオンオフ信号(SW1)と第2のオンオフ信号(SW2)の立ち上がり、立下りの時間差を調整することができる。
【0063】
したがって、第1のオンオフ信号(SW1)により制御されるスイッチ回路24、即ちスイッチ回路24によりオンオフ制御される温度補償回路22は、第2のオンオフ信号(SW2)により制御されるサンプルホールド回路28が直接出力状態となる時間より一定時間前にON状態にすることができる。そして温度補償回路22は、サンプルホールド回路28がサンプルホールド(S/H)出力状態になってからOFF状態にすることができる。
【0064】
図8に、本実施形態に係る信号生成回路の変形例の回路図を示す。信号生成回路38の変形例としては、ローパスフィルター40の代わりに、タイマーとなる分周器90と、第2サンプルホールド回路92を適用することができる。
【0065】
分周器90は、電圧制御発振回路12の発振信号を分周して得られるパルス波を駆動信号として出力するものである。駆動信号は電圧Hと電圧Lの状態を繰り返す信号であるが電圧Hの継続時間が電圧Lの継続時間より十分短いものとする。
【0066】
第2サンプルホールド回路92は、サンプルホールド回路28同様にスイッチ94、キャパシタ96、バッファー98により構成されている。そして第2サンプルホールド回路92は、分周器90からの駆動信号を受けて、温度センサー20と接続し検出温度電圧(Va)を保持しつつ検出温度電圧(V0)を出力する状態(直接出力状態)と、温度センサー20との接続を遮断しつつ保持された検出温度電圧(Va)を出力する状態(サンプルホールド出力状態)と、に切替可能なものである。
【0067】
第2サンプルホールド回路92は、電圧Hの駆動信号を受けているときは直接出力状態となり、電圧Lの駆動信号を受けているときはサンプルホールド出力状態となる。そして第2サンプルホールド回路92が、直接出力状態のときは、検出温度電圧(V0)と、保持された検出温度電圧(Va)は一致する。一方、第2サンプルホールド回路92が、サンプルホールド出力状態であって、温度変化がある場合は、次の電圧Hの駆動信号が到来するまでは、検出温度電圧(V0)と保持された検出温度電圧(Vc)との間の差分が大きくなっていく。したがって、第2サンプルホールド回路92に接続された差動増幅回路46は、駆動信号の周期ごとに検出温度電圧(V0)の変化量を算出することができる。そして、分周器90は設定を変更することにより周期を選択することができるので、差動増幅回路46における温度変化の算出間隔を分周器の周期に対応して任意に調整することができる。
【0068】
図9に、本実施形態に係る温度補償型発振器の変形例を示し、図9(a)は、温度補償回路とサンプルホールド回路の間にローパスフィルターを配置した図、図9(b)はサンプルホールド回路と電圧制御発振回路との間にローパスフィルターを配置した図を示す。
【0069】
変形例に係る温度補償型発振器100は、基本的には、第1実施形態と共通するが、温度補償回路22とサンプルホールド回路28の間、またはサンプルホールド回路28と電圧制御発振回路12との少なくとも一方の間に第2ローパスフィルター102を配置している点で相違する。第2ローパスフィルター102は、ローパスフィルター40と同様の構成を有している。そして第2ローパスフィルターは、図9(a)、図9(b)のどちらの形態も適用できるが、図9(b)のように、サンプルホールド回路28の後段に配置することにより、サンプルホールド回路28の切替制御の際に発生する電気的ノイズを低減することができる。
【0070】
図10に第1実施形態の温度補償型発振器と変形例に係る温度補償型発振器の温度補償電圧の時間依存を示す。図10においては、温度補償型発振器10、100の周囲の温度が時間経過とともに単調増加することにより、温度補償電圧が時間経過とともに単調増加している場合を考える。第1実施形態において、温度補償回路22をオン状態にした直後は、サンプルホールド回路28は、保持された温度補償電圧から新たに温度補償回路22から入力された温度補償電圧に切り替えることになる。よって、この切り替え時に温度補償電圧が時間方向で不連続となり、電圧制御発振回路12に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、変形例の温度補償型発振器100のように第2ローパスフィルター102を配置することにより、新たに入力される温度補償電圧の時間変化をなだらかにして、電圧制御発振回路12への負担を軽減することができる。なおサンプルホールド回路28がサンプルホールド(S/H)出力状態のときに温度補償電圧が低下するのは、サンプルホールド回路28内のキャパシタ30が電荷を放電するためである。
【0071】
なお、いずれの実施形態においても、温度補償回路22の立ち上がり時から安定するまでの時間が極めて短く、またサンプルホールド回路28のキャパシタ32の容量が十分に大きい場合は、上述の分岐回路68は不要である。さらにいずれの実施形態においても、GPS受信器や携帯電話等に搭載することが可能であり、高精度な温度補償を維持しつつ省電力化が可能な電子機器を構築することができる。また電圧制御制御回路で用いる圧電振動子において、周波数温度特性の曲線が極値を複数有する場合には、使用温度範囲でいずれの極値を包含するかを判断し、使用温度に対応して遮断回路54で用いられる第1の閾値電圧、第2の閾値電圧を出力するためのPROM64のデータの書き換えを行なえばよい。
【符号の説明】
【0072】
10………温度補償型発振器、12………電圧制御発振回路、14………圧電振動子、16………バラクタダイオード、18………バッファー、20………温度センサー、22………温度補償回路、24………スイッチ回路、26………レギュレーター、28………サンプルホールド回路、30………スイッチ、32………キャパシタ、34………バッファー、36………出力回路、38………信号生成回路、40………ローパスフィルター、42………抵抗、44………キャパシタ、46………差動増幅回路、47………絶対値回路、48………コンパレーター、50………PROM、52………制御電源、54………遮断回路、56………コンパレーター、58………コンパレーター、60………AND回路、62………NOT回路、64………PROM、66………制御電源、68………分岐回路、70………遅延回路、72………抵抗、74………キャパシタ、76………バッファー、78………バッファー、80………OR回路、82………AND回路、84………起動回路、86………AND回路、88………OR回路、90………分周器、92………第2サンプルホールド回路、94………スイッチ、96………キャパシタ、98………バッファー、100………温度補償型発振器、102………第2ローパスフィルター、200………温度補償型発振器、202………発振回路、204………水晶振動子、206………温度補償回路、208………温度センサー。
【技術分野】
【0001】
本発明は高精度な温度補償を維持しつつ省電力化が可能な温度補償型発振器、及びこれを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロコンピューターや携帯電話機等の電子機の基準クロック源として、周囲の温度や電気素子の固有の特性に左右されず、安定した発振回路として優れた温度補償型水晶発振器(Temperature Compensated Crystal Oscillator:TCXO)などの水晶発振器が使用されている。
【0003】
図11に特許文献1に記載の温度補償型水晶発振器を示す、図11に示すように、温度補償型発振器200は、発振回路202と温度補償回路206により構成されている。発振回路202は、発振源である水晶振動子204を包含する回路にスイッチSn(n:自然数)と容量Cn(n:自然数)との直列回路が複数接続された構成を有し、スイッチSnをオンオフすることにより、発振回路202内の容量を変化させ発振信号の発振周波数を制御することができる。一方、温度補償回路206は、温度センサー208により得られた温度の情報に基づいて、温度変化に伴う水晶振動子204の発振周波数の変化を抑えるように周波数を制御する補正値を選択し、補正値に応じたスイッチ制御用の信号を発振回路202に出力している。そして発振回路202では、入力されたスイッチ制御用の信号によってスイッチS1、・・・、Snを個別にオンオフすることになる。
【0004】
特許文献2に記載の温度補償型水晶発振器においては、特許文献1と同様に発振回路と温度補償回路により構成されているが、発振回路には印加される電圧に応じて容量が変化するバラクタダイオードが設けられ、温度補償回路は水晶振動子の温度変化に伴う周波数変化を抑えるようにバラクタダイオードの容量値を制御して周波数を可変させる制御信号を出力する。これにより発振回路は制御信号に対応する電圧をバラクタダイオードに印加している。
よって、特許文献1または2の温度補償型水晶発振器においては、発振回路内の容量が、水晶振動子の発振周波数の温度特性とは反対の温度特性を有することになる。
【0005】
したがって、特許文献1または2の温度補償型水晶発振器は、水晶振動子の発振周波数の温度特性の変化を発振回路内の容量変化に伴う周波数の変化により抑えて温度依存性の小さい温度特性となる発振信号を出力することができ、同様の技術は特許文献3にも開示されている。
【0006】
このような温度補償型発振器においては、高精度な温度補償を維持しつつ消費電力を抑えることが課題となっている。特許文献1及び4においては、温度変化が大きいときには温度補償電圧を生成するタイミングの時間間隔を短くし、逆に小さいときは長くする技術が開示され、特許文献3においては、発振信号の周波数が基準周波数を中心とした一定の許容範囲から外れた場合に温度補償回路を駆動させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−258551号公報
【特許文献2】特開昭62−38605号公報
【特許文献3】特開2007−208584号公報
【特許文献4】特開平2−141026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1、3の温度補償型水晶発振器においては、容量の変化が離散的であり、容量の変化に伴い周波数が急激に変化する問題や、温度補償の精度を高めるためには容量の個数を増やす必要がありコストがかかるといった問題がある。
また特許文献2の温度補償型水晶発振器は、実際の周波数変化をモニターして温度補償を行うか否かの判断を行なうため、周波数を検知するための構成が必要となりコストがかかるといった問題がある。
【0009】
さらに特許文献1、3、4では温度補償電圧の出力の時間周期は変更して省電力化が測られているが、温度補償回路が常時駆動しているため消費電力の低減には限界があるといった問題がある。
そこで本発明は、上記問題点に着目し、高精度な温度補償を維持しつつ簡易な構成で省電力化が可能な温度補償型発振器、及びこれを搭載した電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]温度に対応した検出温度電圧を出力する温度センサーと、前記検出温度電圧に基づいて温度補償電圧を出力する温度補償回路と、入力された前記温度補償電圧に基づいて発振周波数が温度補償された発振信号を出力する電圧制御発振回路と、を有する温度補償型発振器において、前記検出温度電圧の所望時間における電圧変化量の大きさと基準電圧との大小関係に基づいてオンオフ信号を出力する出力回路と、前記オンオフ信号を受けて前記温度補償回路への電力の供給をオンオフ制御可能なスイッチ回路と、前記オンオフ信号を受けて、前記温度補償回路と接続し前記温度補償回路から出力された前記温度補償電圧を保持しつつ前記温度補償電圧を前記電圧制御発振回路に出力する状態と、前記温度補償回路との接続を遮断しつつ保持された前記温度補償電圧を前記電圧制御発振回路に出力する状態と、に切替制御可能なサンプルホールド回路と、を備えたことを特徴とする温度補償型発振器。
上記構成により、温度補償を行なうか否かを温度センサーが検知した検出温度電圧の電圧変化量の大きさに基づいて判断し、電圧変化量の大きさが基準電圧より大きい場合には、温度補償回路を駆動して温度補償電圧を電圧制御発振回路に出力するとともに温度補償電圧をサンプルホールド回路において保持し、電圧変化量の大きさが基準電圧より小さい場合には、温度補償電圧の駆動を停止しサンプルホールド回路で保持された温度補償電圧を電圧制御発振回路に出力することができる。したがって、高精度な温度補償を維持しつつ簡易な構成で省電力化が可能な温度補償型発振器となる。
【0011】
[適用例2]前記出力回路は、前記検出温度電圧が入力されるローパスフィルターと、前記温度センサーの出力と前記ローパスフィルターの出力とを差動増幅することにより前記電圧変化量に対応する電圧を出力する差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力の絶対値となる電圧を出力することにより前記電圧変化量の大きさに対応する電圧を出力する絶対値回路と、前記絶対値回路の出力と前記基準電圧の大小関係を表す信号を前記オンオフ信号として出力するコンパレーターと、を有することを特徴とする適用例1に記載の温度補償型発振器。
上記構成により、ローパスフィルターは、現在より一定時間前の検出温度電圧を出力することになるので、絶対値回路では現在の検出温度電圧と現在より一定時間前の検出温度電圧との差分の大きさ、すなわち検出温度電圧の電圧変化量の大きさを算出することができる。したがって、簡易な構成で検出温度電圧の電圧変化量の大きさを算出しつつオンオフ信号を出力することができる。
【0012】
[適用例3]前記出力回路は、一定周期で駆動信号を出力するタイマーと、前記駆動信号を受けて、前記温度センサーと接続し前記検出温度電圧を保持しつつ前記検出温度電圧を出力する状態と、前記温度センサーとの接続を遮断しつつ保持された前記検出温度電圧を出力する状態と、に切替可能な第2サンプルホールド回路と、前記温度センサーの出力と前記第2サンプルホールド回路の出力とを差動増幅することにより前記電圧変化量に対応する電圧を出力する前記差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力の絶対値となる電圧を出力することにより前記電圧変化量の大きさに対応する電圧を出力する絶対値回路と、前記絶対値回路の出力と前記基準電圧の大小関係を表す信号を前記オンオフ信号として出力するコンパレーターと、を有することを特徴とする適用例1に記載の温度補償型発振器。
上記構成により、タイマーの周期を変更することにより、検出温度電圧の電圧変化量の大きさの算出間隔を任意に設定することができる。
【0013】
[適用例4]前記出力回路は、前記検出温度電圧が、予め設定された第1の閾値電圧と、予め設定され前記第1の閾値電圧より高い値の第2の閾値電圧との間の値である場合に前記オンオフ信号を遮断する遮断回路を有することを特徴とする請求項2または3に記載の温度補償型発振器。
上記構成において、例えば、第1の閾値電圧に対応する温度と第2の閾値電圧に対応する温度の間が、電圧制御発振回路の発振周波数の温度特性が殆どフラットな特性を有する領域(周波数温度特性の曲線の極値とその極値近傍の温度範囲であり、その間の周波数温度特性の変化幅が温度補償型発振器に求められる周波数温度特性の安定度以内である領域)となるように設定することにより、その温度領域においては温度補償電圧の更新は不要であるため、温度補償回路の駆動が不要となる。したがって、温度センサーが検知する温度が、その温度領域にある場合は温度補償回路の駆動を停止させ、消費電力を大幅に削減することができる。
【0014】
[適用例5]前記出力回路は、前記オンオフ信号が入力され、前記オンオフ信号の電圧変化を遅延させた遅延信号を出力する遅延回路と、前記オンオフ信号と前記遅延信号とのOR解となる信号を前記オンオフ信号として前記スイッチ回路に出力するOR回路と、前記オンオフ信号と前記遅延信号とのAND解となる信号を前記オンオフ信号として前記サンプルホールド回路に出力するAND回路と、を有することを特徴とする適用例2乃至4のいずれか1例に記載の温度補償型発振器。
上記構成により、サンプルホールド回路の駆動の立ち上がりは、温度補償回路の駆動の立ち上がりより遅くなり、サンプルホールド回路の駆動の立ち下がりは、温度補償回路の駆動の立ち下りより早くなる。よって温度補償回路はサンプルホールド回路が立ち上がるまでの間に温度補償電圧の出力を安定させることができ、温度補償回路が立ち下がる前にサンプルホールド回路が立ち下がるので温度補償電圧から出力される温度補償電圧の保持を確実に行うことができる。
【0015】
[適用例6]前記温度補償回路と前記サンプルホールド回路との間、または、前記サンプルホールド回路と前記電圧制御発振回路との間には第2ローパスフィルターが配置されたことを特徴とする適用例1乃至5のいずれか1例に記載の温度補償型発振器。
温度補償回路をオン状態にした直後は、サンプルホールド回路は、保持された温度補償電圧から新たに温度補償回路から入力された温度補償電圧に切り替えることになる。よって、この切り替え時に温度補償電圧が時間方向で不連続となり、電圧制御発振回路に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、上記構成とすることにより、新たに入力される温度補償電圧の時間変化をなだらかにして、電圧制御発振回路への負担を軽減することができる。
【0016】
[適用例7]適用例1乃至6のいずれか1例に記載の温度補償型発振器を搭載したことを特徴とする電子機器。
上記構成により、高精度な温度補償を維持しつつ簡易な構成で省電力化が可能な電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る温度補償型発振器の全体ブロック図である。
【図2】本実施形態に係る電圧制御発振回路の回路図である。
【図3】本実施形態に係るサンプルホールド回路の回路図である。
【図4】本実施形態に係る出力回路のブロック図である。
【図5】本実施形態に係る信号生成回路の回路図である。
【図6】本実施形態に係る遮断回路の回路図である。
【図7】本実施形態に係る分岐回路の回路図とタイムチャートを示す図である。
【図8】本実施形態に係る信号生成回路の変形例の回路図である。
【図9】本実施形態に係る温度補償型発振器の変形例であり、図9(a)は、温度補償回路とサンプルホールド回路の間にローパスフィルターを配置した図、図9(b)はサンプルホールド回路と電圧制御発振回路との間にローパスフィルターを配置した図である。
【図10】本実施形態の温度補償型発振器と変形例の温度補償型発振器の温度補償電圧の時間依存を示す図である。
【図11】特許文献1に記載の温度補償型発振器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0019】
図1に本実施形態の温度補償型発振器の全体ブロック図を示す。本実施形態の温度補償型発振器10は、温度センサー20、温度補償回路22、サンプルホールド回路28、電圧制御発振回路12、バッファー18の順に直列に接続した構成を有し、これらの構成要素と後述する出力回路36とに一定の電圧(電力)を供給するレギュレーター(定電圧出力回路)26を有している。さらに、レギュレーター26と温度補償回路22との間にはスイッチ回路24が接続され、スイッチ回路24に第1のオンオフ信号(SW1)を出力し、且つサンプルホールド回路28に第2のオンオフ信号(SW2)を出力する出力回路36を備えている。
尚、オンオフ信号とは、後述の通り、スイッチ回路24の入出力間のオンとオフとの切替、サンプルホールド回路28の入出力間のオンとオフとの切替を、それぞれ連続的に繰り返し行なうための切替制御信号である。
【0020】
図2に本実施形態に係る電圧制御発振回路12の回路図を示す。電圧制御発振回路12は、例えばコルピッツ型の発振回路であって、圧電振動子14を発振源とするものである。圧電振動子14は例えば水晶により形成された厚みすべり振動子や音叉型振動子を用いることができる。そして圧電振動子12に交流電圧を印加することにより所定の共振周波数(発振周波数)で発振信号を出力することができる。また電圧制御発振回路12には可変容量となるバラクタダイオード16が組み込まれている。電圧制御型発振回路12は、バラクタダイオード16に印加する電圧(温度補償電圧)を変化させることにより、バラクタダイオード16の容量が変化し、この容量変化により発振信号の発振周波数が変化する。なお、バッファー18は、入力インピーダンスが極めて大きな回路であり、電圧制御発振回路12から出力される発振信号の電圧のみを接続先の機器側に伝達することができる。これにより電圧制御発振回路12は接続先の機器の影響を受けることなく発振信号を出力することができる。
【0021】
圧電振動子14の共振周波数が温度変化により変化するため、発振信号の発振周波数は、圧電振動子14の共振周波数の温度特性を反映して、温度変化により変化し得る。このため、バラクタダイオード16には、この圧電振動子14の温度特性を相殺する(圧電振動子14の温度特性の影響により生じる発振周波数の変動幅を小さく抑える)ための温度補償電圧が印加されるので、発振信号の発振周波数は温度変化に対して圧電振動子14の温度特性よりも周波数偏差幅が小さく補償された温度特性になる。
【0022】
図1に示すように、温度センサー20は、測定される温度に対応する検出温度電圧(温度検出信号)を温度補償回路22に出力するものであり、ダイオード等により形成されている。温度センサー20をダイオードにより形成する場合は、ダイオードに順方向電流を流し、温度によって一次関数的に降下する検出温度電圧(V0)を温度補償回路22に出力する。
【0023】
温度補償回路22は、温度センサー20から検出温度電圧が入力され、その電圧に対応した温度補償電圧をサンプルホールド回路28に出力するものである。本実施形態の圧電振動子14が音叉型振動子であれば、その共振周波数の温度特性は二次関数的な曲線で描かれ、厚みすべり振動子であれば三次関数的な曲線で描かれる。よって温度補償回路22には、圧電振動子22の共振周波数の温度特性を近似するための、例えば、0次、1次、2次、3次等の温度係数の情報が予め入力されている。よって温度の情報を変数とし、温度補償回路22は、これらの温度係数を係数とするべき級数を算出することにより得られる圧電振動子14の測定された温度における共振周波数の情報を基にして温度補償電圧を算出してサンプルホールド回路28に出力する。
【0024】
スイッチ回路24は、レギュレーター26と温度補償回路22との間に接続され、温度補償回路22がレギュレーター26から受ける電力のオンオフ制御を行なうものである。スイッチ回路24は、出力回路36から第1のオンオフ信号(SW1)が入力されて温度補償回路22のオンオフ制御を行なうが、第1のオンオフ信号(SW1)の電圧がH(基準値より高電圧)のときはオン状態(導通状態)となり、L(基準値より低電圧)のときはオフ状態(非導通状態)となる。
【0025】
図3に第1実施形態に係るサンプルホールド回路の回路図を示す。サンプルホールド回路28は、温度補償回路22と接続して温度補償回路22から出力された温度補償電圧を保持しつつ温度補償電圧を電圧制御発振回路12に出力する状態(直接出力状態)と、温度補償回路22との接続を遮断しつつ保持された温度補償電圧を電圧制御発振回路12に出力する状態(サンプルホールド(S/H)出力状態)と、に切替制御するものである。
【0026】
サンプルホールド回路28は、スイッチ30、キャパシタ32、バッファー34から構成され、スイッチ30の出力側にバッファー34の入力端が接続され、バッファー34の入力端と接地との間にキャパシタ32が接続されている。スイッチ30は、出力回路36から供給される第2のオンオフ信号(SW2)により切替制御される。具体的には、スイッチ30は、第2のオンオフ信号(SW2)の電圧がH(基準値より高電圧)のときはオン状態(導通状態)とし、L(基準値より低電圧)のときはオフ状態(非導通状態)となる。よってサンプルホールド回路28は、オン状態のときは直接出力状態となり、オフ状態のときはサンプルホールド(S/H)出力状態となる。
【0027】
図4に、第1実施形態に係る出力回路のブロック図を示す。出力回路36は、第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(SW2)を生成するものであり、信号生成回路38、遮断回路54、起動回路84、分岐回路68等により構成される。
【0028】
信号生成回路38は、温度センサー20から入力される検出温度電圧(V0)の変化幅(電圧変化量の大きさ)が一定の値を超えた場合に電圧H(基準値より高電圧)となる信号(V1)を出力し、超えない場合は電圧L(基準値より低電圧)となる信号(V1)を出力するものである。
【0029】
遮断回路54は、温度センサー20から入力される検出温度電圧(V0)が一定の範囲内となる場合に電圧Lとなる信号(V2)を出力し、範囲外となる場合に電圧Hとなる信号を出力するものである。すなわち、遮断回路54は、温度センサー20により測定された温度が所望の温度範囲内にある場合には、電圧Lの信号(V2)を出力し、温度範囲外である場合は電圧Hの信号を出力するように設定されている。
【0030】
起動回路84は、本実施形態の温度補償型発振器10(たとえばレギュレーター26)を起動した場合に一定時間の間は電圧Hとなる信号(V3)を出力し、その後は電圧Lの信号(V3)を出力するものである。
【0031】
AND回路86は、信号生成回路38から出力される信号(V1)と遮断回路54から出力される信号(V2)とのAND解となる信号(V4)を出力するものである。
OR回路88は、AND回路86から出力される信号(V4)と起動回路84から出力される信号(V3)とのOR解となる信号(V5)を出力するものである。
【0032】
分岐回路68は、OR回路88から出力される信号(V5)が電圧Hのときに、電圧Hとなる第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(SW2)を出力し、逆に信号(V5)が電圧Lのときに、電圧Lとなる第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(SW2)を出力するものである。
【0033】
よって、本実施形態の温度補償型発振器10を起動して一定時間経過するまでは、信号(V5)は信号(V3)が電圧Hであるため電圧Hになる。さらに分岐回路68から出力される第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(SW2)は、信号(V1)、信号(V2)、信号(V4)に係わらず電圧Hとなる。よって、電圧Hの第1のオンオフ信号(SW1)を受けるスイッチ回路24がオン状態になるので温度補償回路22はレギュレーター26からの電力を受けて駆動し、電圧Hの第2のオンオフ信号(SW2)を受けるサンプルホールド回路28は直接出力状態となる。このように起動時から一定時間の間は、温度補償回路22を駆動させることにより、起動時から電圧制御発振回路12に温度補償電圧を出力して発振信号の温度補償が行えるとともに、サンプルホールド回路28に温度補償回路22から出力された温度補償電圧を保持させることができる。
【0034】
そして、一定時間経過後、信号(V3)は電圧Lとなる。しかし、信号(V1)、信号(V2)が電圧Hであれば、信号(V4)が電圧Hとなるため、信号(V5)は電圧Hとなり、第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(V2)は電圧Hとなる。一方、信号(V1)、信号(V2)の少なくともいずれか一方が電圧Lの場合は、信号(V4)は電圧Lとなるため、信号(V5)も電圧Lとなり、第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(V2)は電圧Lとなる。
【0035】
すなわち、温度センサー20で測定される温度が、遮断回路54が電圧Lを出力する条件として設定された温度範囲より外であり、かつ、温度センサー20で測定される温度の時間変化量(検出温度電圧の電圧変化量の大きさ)が信号生成回路38で設定された変化量(基準電圧)を超える場合には、信号(V5)は電圧Hとなる。一方、これ以外の条件となる場合には、信号(V5)は電圧Lとなる。
【0036】
図5に本実施形態に係る信号生成回路の回路図を示す。図5に示すように、信号生成回路38は、ローパスフィルター40、差動増幅回路46、絶対値回路47、コンパレーター48、電圧制御手段を有する。ローパスフィルター40は、例えば、抵抗42とキャパシタ44との直列回路から形成されるものである。そして、この直列回路に検出温度電圧(V0)が入力されると、キャパシタ44の両端に印加される電圧の電位差を信号(Va)として出力する。ローパスフィルター40から出力される信号(Va)は、キャパシタ44の容量に対応した時定数に従って検出温度電圧(V0)の電圧変化に対して一定時間遅延した電圧を有する。
【0037】
差動増幅回路46は、検出温度電圧(V0)と信号(Va)とを差動増幅した信号(Vb)を出力するものである。ここで、検出温度電圧(V0)、信号(Va)、信号(Vb)とは以下の関係を有する。
【数1】
【0038】
したがって、信号(Vb)は、リアルタイムな温度情報である現在の検出温度電圧(V0)と現在より一定時間前の検出温度電圧(Va)との差分を算出して得られるものであり、検出温度電圧(V0)の電圧変化量に対応する。また差動増幅回路46の出力端には、絶対値回路47が接続されており、差動増幅回路46の出力電圧の絶対値となる電圧を出力する。したがって絶対値回路47は、検出温度電圧(V0)の電圧変化量の大きさに対応する電圧を有する信号(Vb’)を出力することになる。
【0039】
コンパレーター48は、信号(Vb’)と基準電圧となる閾値電圧(Vth)との大小関係を示す信号(V1)を出力するものである。したがって閾値電圧(Vth)は、予め設定された検出温度電圧(V0)の電圧変化量の大きさに対応する。コンパレーター48は、Vb’がVthより高い電圧の場合は電圧Hの信号(V1)を出力し、Vb’がVthより低い電圧の場合には電圧Lの信号(V1)を出力する。
【0040】
電圧制御手段は、閾値電圧Vthを制御するものであり、例えばPROM(Programmable Read Only Memory)50と制御電源52により構成されている。
【0041】
制御電源52は、閾値電圧Vthを複数の離散的な電圧値で設定しており、各電圧値はPROM50に記憶するデータと対応づけられている。よって、制御電源52はPROM50から読み出されたデータに対応する電圧値となる閾値電圧Vthをコンパレーター48に出力することができる。よって電圧制御手段は、PROM50に記憶するデータを変更することにより、制御電源52が出力する閾値電圧Vthの値を調整することができる。
【0042】
したがって、信号生成回路38は、閾値電圧Vthを低く(高く)設定するほど、温度変化に敏感(鈍感)に反応して電圧Hの信号(V1)を出力することができる。またキャパシタ44の容量を変化させることにより、信号(Va)の遅延時間を調整することができる。
【0043】
図6に、本実施形態に係る遮断回路の回路図を示す。図6に示すように、遮断回路54は、コンパレーター56、コンパレーター58、AND回路60、NOT回路62、電圧制御手段により構成されている。
【0044】
コンパレーター56は、検出温度電圧(V0)と第1の閾値電圧(Vth1)との大小関係を示す信号を出力するものである。コンパレーター56は、V0がVth1より高い電圧の場合は電圧Hを出力し、V0がVth1より低い電圧の場合には電圧Lを出力する。
【0045】
コンパレーター58は、検出温度電圧(V0)と第2の閾値電圧(Vth2)との大小関係を示す信号を出力するものである。コンパレーター58は、V0がVth2より高い電圧の場合は電圧Lを出力し、V0がVth2より低い電圧の場合には電圧Hを出力する。
【0046】
また、AND回路60は、コンパレーター56の出力とコンパレーター58の出力とのAND解となる信号を出力し、NOT回路62はAND回路60の出力を反転させて得られる信号(V2)を出力する。
電圧制御手段は、上述同様にPROM64と制御電源66(Vth1、Vth2)により構成されており、Vth2がVth1より高くなるように設定されている。
【0047】
よって、検出温度電圧(V0)がVth1以下の場合は、コンパレーター56は電圧Lの信号を出力し、コンパレーター58は、電圧Hの信号を出力する。よってAND回路60は電圧Lの信号を出力するためNOT回路62が出力する信号(V2)は電圧Hとなる。同様に、検出温度電圧(V0)がVth2以上の場合は、コンパレーター56は電圧Hの信号を出力し、コンパレーター58は電圧Lの信号を出力する。よってAND回路60は電圧Lの信号を出力するためNOT回路62が出力する信号(V2)は電圧Hとなる。
【0048】
一方、検出温度電圧(V0)がVth1とVth2との間となる場合は、コンパレーター56は、電圧Hの信号を出力し、コンパレーター58は、電圧Hの信号を出力する。よってAND回路60は電圧Hの信号を出力するためNOT回路62が出力する信号(V2)は電圧Lとなる。
【0049】
圧電振動子14の周波数温度特性において、温度変化に対して周波数変化が極めて小さくなる領域(周波数温度特性の曲線の極値とその極値近傍の温度範囲であり、その間の周波数温度特性の変化幅が温度補償型発振器10に求められる周波数温度特性の安定度以内である領域)が存在する。よって上述の温度範囲においては温度補償電圧の更新は不要であるため、温度補償回路の駆動が不要である。また上述のように、温度センサー20は、温度上昇とともに検出温度電圧(V0)が一次関数的に単調に減少する傾向を有している。そこで、本実施形態では、第1の閾値電圧(Vth1)を上述の温度範囲の上限となる温度に対応する電圧に設定し、第2の閾値電圧(Vth2)を上述の温度範囲の下限となる温度に対応する電圧に設定する。このようにVth1、Vth2を設定することにより、遮断回路54は、温度センサー20が出力する検出温度電圧(V0)が上述の温度範囲に対応する電圧の範囲となる場合には、AND回路86を介して信号生成回路の信号(V1)を遮断して、温度補償回路22への電力の供給を停止させることができる。これにより、温度補償回路22の消費電力を大幅に削減することができる。
【0050】
本実施形態の温度補償型発振器10においては、全体で約1mAの電流を消費する。このうち、温度補償回路22で全体の1/3消費し、電圧制御発振回路12で1/3消費し、バッファー18で1/3消費する。したがって、温度補償回路22の駆動時間を短くすることにより温度補償型発振回路10全体の消費電力を削減することができる。なお本実施形態は、出力回路36を用いるため、消費電力は増えるが、使用する電流は数十μA程度であるので、温度補償型発振器10の全体の消費電力に影響を及ぼすことはない。
【0051】
ところで、本実施形態の温度補償型発振器10において、温度補償回路22は、スイッチ回路24により電力が投入されてから温度補償電圧を安定的に出力するまで所定時間を要する。このため、温度補償電圧が不安定な状態で、サンプルホールド回路28内のスイッチ30が接続されてしまうと、不安定な温度補償電圧が電圧制御発振回路12に出力され、発振信号が不安定になる虞がある。
【0052】
またサンプルホールド回路28内のスイッチ30が接続した状態で温度補償回路22からの温度補償電圧の出力が停止すると、サンプルホールド回路28内のキャパシタ32が放電してしまうため、正確な温度補償電圧を保持することが困難となる。よって、本実施形態においては、温度補償回路22が立ち上がって所定時間が経過したのちサンプルホールド回路28のスイッチ30が接続し、サンプルホールド回路28内のスイッチ30が切られてから温度補償回路22への電力を停止することが好適である。
【0053】
そこで、本実施形態においては、上述の順番による接続及び接続の解除ができるように、以下に説明する分岐回路68を用いて、スイッチ回路24に出力する第1のオンオフ信号(SW1)、サンプルホールド回路28に出力する第2のオンオフ信号(SW2)に時間差を与えている。すなわち、第1のオンオフ信号(SW1)のオン信号が発生するタイミングと第2のオンオフ信号(SW2)のオン信号が発生するタイミングとの間に時間差を与え、また第1のオンオフ信号(SW1)のオフ信号が発生するタイミングと第2のオンオフ信号(SW2)のオフ信号が発生するタイミングとの間に時間差を与えている。
【0054】
図7に、第1実施形態に係る分岐回路の回路図とタイムチャートを示す。図7においては信号(V5)が電圧H、電圧Lを交互に繰り返す場合(例えば温度変化が大きくなる場合と小さくなる場合を交互に繰り返す場合)のタイムチャートを記載している。図7に示すように、分岐回路68は、遅延回路70、OR回路80、AND回路82により構成される。遅延回路70は、抵抗72(R)とキャパシタ74(C)によるローパスフィルターの入力側及び出力側にインバータ回路としてバッファー76、78を接続したものである。ここで、信号(V5)が電圧Lのときはバッファー76の出力は電圧Hでキャパシタ74は充電され、バッファー78の出力、すなわち遅延信号(Vd)は電圧Lとなる。また信号(V5)が電圧Hのときはバッファー76の出力は電圧Lとなりキャパシタ74は放電され、バッファー78の出力、すなわち遅延信号(Vd)は電圧Hとなる。
【0055】
次に信号(V5)が電圧Lから電圧Hに立ち上がるときは、キャパシタ74はキャパシタ74の容量に対応した時定数に基づいて放電し、キャパシタ74に印加される電圧は時間経過とともに低電圧(ゼロ)に収束する。これにより遅延信号(Vd)は電圧Lから所定時間遅れて電圧Hに収束する。また信号(V5)が電圧Hから電圧Lに立ち下がるときは、キャパシタ74は前記時定数に基づいて充電し、キャパシタ74に印加される電圧は所定電圧に収束する。これにより遅延信号(Vd)は電圧Hから所定時間遅れて電圧Lに収束する。
【0056】
OR回路80は、信号(V5)と遅延信号(Vd)とのOR解となる信号を第1のオンオフ信号(SW1)としてスイッチ回路24に出力するものである。OR回路80は信号(V5)の電圧Lを電圧Lとして認識し、信号(V5)の電圧Hを電圧Hとして認識するものとする。一方、OR回路80は、遅延信号(Vd)の電圧が、遅延信号(Vd)の電圧Hと電圧Lとの間の電圧Vm、例えば(電圧H+電圧L)/2となる電圧Vmを上回った場合には遅延信号(Vd)を電圧Hとして認識し、Vmを下回ったときには遅延信号(Vd)を電圧Lとして認識するように調整されている。
【0057】
OR回路80は、信号(V5)及び遅延信号(Vd)のいずれか一方を電圧Hと認識した場合に、電圧Hとなる第1のオンオフ信号(SW1)を出力する。よって、信号(V5)が電圧Lから電圧Hに立ち上がった場合には、OR回路80は信号(V5)が電圧Hに立ち上がったと同時に、信号(V5)を電圧Hとして認識するため、電圧Hとなる第1のオンオフ信号(SW1)を出力することができる。
【0058】
一方、信号(V5)が電圧Hから電圧Lに立ち下がった場合には、OR回路80は、信号(V5)が電圧Lに立ち下がったと同時に、信号(V5)を電圧Lとして認識する。しかし、OR回路80は、遅延信号(Vd)の電圧がVm以下となるまでは、遅延信号(Vd)を電圧Hとして認識するため、引き続き電圧Hとなる第1のオンオフ信号(SW1)を出力する。そして、OR回路80は、遅延信号(Vd)の電圧がVm以下となったのちに、遅延信号(Vd)を電圧Lとして認識し、電圧Lとなる第1のオンオフ信号(SW1)を出力することができる。
【0059】
AND回路82は、信号(V5)と遅延信号(Vd)とのAND解となる信号を第2のオンオフ信号(SW2)としてサンプルホールド回路28に出力するものである。AND回路82は信号(V5)の電圧Lを電圧Lとして認識し、信号(V5)の電圧Hを電圧Hとして認識するものとする。一方、AND回路82は、遅延信号(Vd)の電圧が、遅延信号(Vd)の電圧Hと電圧Lとの間の電圧Vm、例えば(電圧H+電圧L)/2となる電圧Vmを上回った場合には、遅延信号(Vd)を電圧Hとして認識し、Vmを下回ったときには遅延信号(Vd)を電圧Lとして認識するように調整されている。
【0060】
AND回路82は、信号(V5)及び遅延信号(Vd)のいずれもが電圧Hであると認識した場合に、電圧Hとなる第2のオンオフ信号(SW2)を出力する。よって、信号(V5)が電圧Lから電圧Hに立ち上がった場合には、AND回路82は、信号(V5)が電圧Hに立ち上がったと同時に、信号(V5)を電圧Hとして認識する。しかし、AND回路82は、遅延信号(Vd)の電圧がVm以上となるまでは、遅延信号(Vd)を電圧Lとして認識するため、電圧Lとなる第1のオンオフ信号(SW1)を出力する。そして、AND回路82は、遅延信号(Vd)の電圧がVm以上となったのちに、遅延信号(Vd)を電圧Hとして認識し、電圧Hとなる第2のオンオフ信号(SW2)を出力することができる。
【0061】
一方、信号(V5)が電圧Hから電圧Lに立ち下がった場合には、AND回路82は、信号(V5)が電圧Lに立ち下がったと同時に、信号(V5)を電圧Lとして認識するため、遅延信号(Vd)の電圧に係らず、電圧Lとなる第2のオンオフ信号(SW2)を出力する。
【0062】
以上のような制御を行なうことにより、分岐回路68から出力される第1のオンオフ信号(SW1)、第2のオンオフ信号(SW2)においては、第1のオンオフ信号(SW1)は、第2のオンオフ信号(SW2)より先に立ち上がり、第2のオンオフ信号(SW2)より後に立ち下がることになる。なお、Vmの値、キャパシタ58の容量を変更することにより、第1のオンオフ信号(SW1)と第2のオンオフ信号(SW2)の立ち上がり、立下りの時間差を調整することができる。
【0063】
したがって、第1のオンオフ信号(SW1)により制御されるスイッチ回路24、即ちスイッチ回路24によりオンオフ制御される温度補償回路22は、第2のオンオフ信号(SW2)により制御されるサンプルホールド回路28が直接出力状態となる時間より一定時間前にON状態にすることができる。そして温度補償回路22は、サンプルホールド回路28がサンプルホールド(S/H)出力状態になってからOFF状態にすることができる。
【0064】
図8に、本実施形態に係る信号生成回路の変形例の回路図を示す。信号生成回路38の変形例としては、ローパスフィルター40の代わりに、タイマーとなる分周器90と、第2サンプルホールド回路92を適用することができる。
【0065】
分周器90は、電圧制御発振回路12の発振信号を分周して得られるパルス波を駆動信号として出力するものである。駆動信号は電圧Hと電圧Lの状態を繰り返す信号であるが電圧Hの継続時間が電圧Lの継続時間より十分短いものとする。
【0066】
第2サンプルホールド回路92は、サンプルホールド回路28同様にスイッチ94、キャパシタ96、バッファー98により構成されている。そして第2サンプルホールド回路92は、分周器90からの駆動信号を受けて、温度センサー20と接続し検出温度電圧(Va)を保持しつつ検出温度電圧(V0)を出力する状態(直接出力状態)と、温度センサー20との接続を遮断しつつ保持された検出温度電圧(Va)を出力する状態(サンプルホールド出力状態)と、に切替可能なものである。
【0067】
第2サンプルホールド回路92は、電圧Hの駆動信号を受けているときは直接出力状態となり、電圧Lの駆動信号を受けているときはサンプルホールド出力状態となる。そして第2サンプルホールド回路92が、直接出力状態のときは、検出温度電圧(V0)と、保持された検出温度電圧(Va)は一致する。一方、第2サンプルホールド回路92が、サンプルホールド出力状態であって、温度変化がある場合は、次の電圧Hの駆動信号が到来するまでは、検出温度電圧(V0)と保持された検出温度電圧(Vc)との間の差分が大きくなっていく。したがって、第2サンプルホールド回路92に接続された差動増幅回路46は、駆動信号の周期ごとに検出温度電圧(V0)の変化量を算出することができる。そして、分周器90は設定を変更することにより周期を選択することができるので、差動増幅回路46における温度変化の算出間隔を分周器の周期に対応して任意に調整することができる。
【0068】
図9に、本実施形態に係る温度補償型発振器の変形例を示し、図9(a)は、温度補償回路とサンプルホールド回路の間にローパスフィルターを配置した図、図9(b)はサンプルホールド回路と電圧制御発振回路との間にローパスフィルターを配置した図を示す。
【0069】
変形例に係る温度補償型発振器100は、基本的には、第1実施形態と共通するが、温度補償回路22とサンプルホールド回路28の間、またはサンプルホールド回路28と電圧制御発振回路12との少なくとも一方の間に第2ローパスフィルター102を配置している点で相違する。第2ローパスフィルター102は、ローパスフィルター40と同様の構成を有している。そして第2ローパスフィルターは、図9(a)、図9(b)のどちらの形態も適用できるが、図9(b)のように、サンプルホールド回路28の後段に配置することにより、サンプルホールド回路28の切替制御の際に発生する電気的ノイズを低減することができる。
【0070】
図10に第1実施形態の温度補償型発振器と変形例に係る温度補償型発振器の温度補償電圧の時間依存を示す。図10においては、温度補償型発振器10、100の周囲の温度が時間経過とともに単調増加することにより、温度補償電圧が時間経過とともに単調増加している場合を考える。第1実施形態において、温度補償回路22をオン状態にした直後は、サンプルホールド回路28は、保持された温度補償電圧から新たに温度補償回路22から入力された温度補償電圧に切り替えることになる。よって、この切り替え時に温度補償電圧が時間方向で不連続となり、電圧制御発振回路12に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、変形例の温度補償型発振器100のように第2ローパスフィルター102を配置することにより、新たに入力される温度補償電圧の時間変化をなだらかにして、電圧制御発振回路12への負担を軽減することができる。なおサンプルホールド回路28がサンプルホールド(S/H)出力状態のときに温度補償電圧が低下するのは、サンプルホールド回路28内のキャパシタ30が電荷を放電するためである。
【0071】
なお、いずれの実施形態においても、温度補償回路22の立ち上がり時から安定するまでの時間が極めて短く、またサンプルホールド回路28のキャパシタ32の容量が十分に大きい場合は、上述の分岐回路68は不要である。さらにいずれの実施形態においても、GPS受信器や携帯電話等に搭載することが可能であり、高精度な温度補償を維持しつつ省電力化が可能な電子機器を構築することができる。また電圧制御制御回路で用いる圧電振動子において、周波数温度特性の曲線が極値を複数有する場合には、使用温度範囲でいずれの極値を包含するかを判断し、使用温度に対応して遮断回路54で用いられる第1の閾値電圧、第2の閾値電圧を出力するためのPROM64のデータの書き換えを行なえばよい。
【符号の説明】
【0072】
10………温度補償型発振器、12………電圧制御発振回路、14………圧電振動子、16………バラクタダイオード、18………バッファー、20………温度センサー、22………温度補償回路、24………スイッチ回路、26………レギュレーター、28………サンプルホールド回路、30………スイッチ、32………キャパシタ、34………バッファー、36………出力回路、38………信号生成回路、40………ローパスフィルター、42………抵抗、44………キャパシタ、46………差動増幅回路、47………絶対値回路、48………コンパレーター、50………PROM、52………制御電源、54………遮断回路、56………コンパレーター、58………コンパレーター、60………AND回路、62………NOT回路、64………PROM、66………制御電源、68………分岐回路、70………遅延回路、72………抵抗、74………キャパシタ、76………バッファー、78………バッファー、80………OR回路、82………AND回路、84………起動回路、86………AND回路、88………OR回路、90………分周器、92………第2サンプルホールド回路、94………スイッチ、96………キャパシタ、98………バッファー、100………温度補償型発振器、102………第2ローパスフィルター、200………温度補償型発振器、202………発振回路、204………水晶振動子、206………温度補償回路、208………温度センサー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に対応した検出温度電圧を出力する温度センサーと、
前記検出温度電圧に基づいて温度補償電圧を出力する温度補償回路と、
入力された前記温度補償電圧に基づいて発振周波数が温度補償された発振信号を出力する電圧制御発振回路と、を有する温度補償型発振器において、
前記検出温度電圧の所望時間における電圧変化量の大きさと基準電圧との大小関係に基づいてオンオフ信号を出力する出力回路と、
前記オンオフ信号を受けて前記温度補償回路への電力の供給をオンオフ制御可能なスイッチ回路と、
前記オンオフ信号を受けて、前記温度補償回路と接続し前記温度補償回路から出力された前記温度補償電圧を保持しつつ前記温度補償電圧を前記電圧制御発振回路に出力する状態と、前記温度補償回路との接続を遮断しつつ保持された前記温度補償電圧を前記電圧制御発振回路に出力する状態と、に切替制御可能なサンプルホールド回路と、
を備えたことを特徴とする温度補償型発振器。
【請求項2】
前記出力回路は、
前記検出温度電圧が入力されるローパスフィルターと、
前記温度センサーの出力と前記ローパスフィルターの出力とを差動増幅することにより前記電圧変化量に対応する電圧を出力する差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力の絶対値となる電圧を出力することにより前記電圧変化量の大きさに対応する電圧を出力する絶対値回路と、
前記絶対値回路の出力と前記基準電圧の大小関係を表す信号を前記オンオフ信号として出力するコンパレーターと、を有することを特徴とする請求項1に記載の温度補償型発振器。
【請求項3】
前記出力回路は、
一定周期で駆動信号を出力するタイマーと、
前記駆動信号を受けて、前記温度センサーと接続し前記検出温度電圧を保持しつつ前記検出温度電圧を出力する状態と、前記温度センサーとの接続を遮断しつつ保持された前記検出温度電圧を出力する状態と、に切替可能な第2サンプルホールド回路と、
前記温度センサーの出力と前記第2サンプルホールド回路の出力とを差動増幅することにより前記電圧変化量に対応する電圧を出力する前記差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力の絶対値となる電圧を出力することにより前記電圧変化量の大きさに対応する電圧を出力する絶対値回路と、
前記絶対値回路の出力と前記基準電圧の大小関係を表す信号を前記オンオフ信号として出力するコンパレーターと、を有することを特徴とする請求項1に記載の温度補償型発振器。
【請求項4】
前記出力回路は、
前記検出温度電圧が、予め設定された第1の閾値電圧と、予め設定され前記第1の閾値電圧より高い値の第2の閾値電圧との間の値である場合に前記オンオフ信号を遮断する遮断回路を有することを特徴とする請求項2または3に記載の温度補償型発振器。
【請求項5】
前記出力回路は、
前記オンオフ信号が入力され、前記オンオフ信号の電圧変化を遅延させた遅延信号を出力する遅延回路と、
前記オンオフ信号と前記遅延信号とのOR解となる信号を前記オンオフ信号として前記スイッチ回路に出力するOR回路と、
前記オンオフ信号と前記遅延信号とのAND解となる信号を前記オンオフ信号として前記サンプルホールド回路に出力するAND回路と、を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の温度補償型発振器。
【請求項6】
前記温度補償回路と前記サンプルホールド回路との間、または、前記サンプルホールド回路と前記電圧制御発振回路との間には第2ローパスフィルターが配置されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の温度補償型発振器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の温度補償型発振器を搭載したことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
温度に対応した検出温度電圧を出力する温度センサーと、
前記検出温度電圧に基づいて温度補償電圧を出力する温度補償回路と、
入力された前記温度補償電圧に基づいて発振周波数が温度補償された発振信号を出力する電圧制御発振回路と、を有する温度補償型発振器において、
前記検出温度電圧の所望時間における電圧変化量の大きさと基準電圧との大小関係に基づいてオンオフ信号を出力する出力回路と、
前記オンオフ信号を受けて前記温度補償回路への電力の供給をオンオフ制御可能なスイッチ回路と、
前記オンオフ信号を受けて、前記温度補償回路と接続し前記温度補償回路から出力された前記温度補償電圧を保持しつつ前記温度補償電圧を前記電圧制御発振回路に出力する状態と、前記温度補償回路との接続を遮断しつつ保持された前記温度補償電圧を前記電圧制御発振回路に出力する状態と、に切替制御可能なサンプルホールド回路と、
を備えたことを特徴とする温度補償型発振器。
【請求項2】
前記出力回路は、
前記検出温度電圧が入力されるローパスフィルターと、
前記温度センサーの出力と前記ローパスフィルターの出力とを差動増幅することにより前記電圧変化量に対応する電圧を出力する差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力の絶対値となる電圧を出力することにより前記電圧変化量の大きさに対応する電圧を出力する絶対値回路と、
前記絶対値回路の出力と前記基準電圧の大小関係を表す信号を前記オンオフ信号として出力するコンパレーターと、を有することを特徴とする請求項1に記載の温度補償型発振器。
【請求項3】
前記出力回路は、
一定周期で駆動信号を出力するタイマーと、
前記駆動信号を受けて、前記温度センサーと接続し前記検出温度電圧を保持しつつ前記検出温度電圧を出力する状態と、前記温度センサーとの接続を遮断しつつ保持された前記検出温度電圧を出力する状態と、に切替可能な第2サンプルホールド回路と、
前記温度センサーの出力と前記第2サンプルホールド回路の出力とを差動増幅することにより前記電圧変化量に対応する電圧を出力する前記差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力の絶対値となる電圧を出力することにより前記電圧変化量の大きさに対応する電圧を出力する絶対値回路と、
前記絶対値回路の出力と前記基準電圧の大小関係を表す信号を前記オンオフ信号として出力するコンパレーターと、を有することを特徴とする請求項1に記載の温度補償型発振器。
【請求項4】
前記出力回路は、
前記検出温度電圧が、予め設定された第1の閾値電圧と、予め設定され前記第1の閾値電圧より高い値の第2の閾値電圧との間の値である場合に前記オンオフ信号を遮断する遮断回路を有することを特徴とする請求項2または3に記載の温度補償型発振器。
【請求項5】
前記出力回路は、
前記オンオフ信号が入力され、前記オンオフ信号の電圧変化を遅延させた遅延信号を出力する遅延回路と、
前記オンオフ信号と前記遅延信号とのOR解となる信号を前記オンオフ信号として前記スイッチ回路に出力するOR回路と、
前記オンオフ信号と前記遅延信号とのAND解となる信号を前記オンオフ信号として前記サンプルホールド回路に出力するAND回路と、を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の温度補償型発振器。
【請求項6】
前記温度補償回路と前記サンプルホールド回路との間、または、前記サンプルホールド回路と前記電圧制御発振回路との間には第2ローパスフィルターが配置されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の温度補償型発振器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の温度補償型発振器を搭載したことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−244194(P2012−244194A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108762(P2011−108762)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]