説明

温度調節装置

【課題】圧縮機の起動負荷をともなうことなく、使用者の運転操作に応じて速やかに冷却あるいは加温動作をおこない快適な雰囲気制御を可能とした温度調節装置を提供する。
【解決手段】蒸発器で生成される冷気あるいは暖気を冷却あるいは加温対象物側に吹き出す循環ファンとを断熱壁体で形成された温調室内に収納し、この温調室に冷気あるいは暖気の吹き出し風路および戻り風路を設けるとともに、冷凍サイクル運転時には、蒸発器で生成された冷気あるいは暖気を循環ファンおよび吹き出し風路によって冷却あるいは加温対象物側に吹き出し、戻り風路へ戻すように循環させる温度調節装置において、冷凍サイクルの運転開始操作があった場合は、蒸発器の温度と冷却あるいは加温対象物側の温度とを比較し、その温度差が所定値以下のときには、圧縮機の起動保護時間中であっても圧縮機に通電しこれを起動させるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却あるいは加温対象物に冷気あるいは暖気を供給する温度調節装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックなどの自動車の運転台においては、キャビン内に睡眠をとるためのベッドルームが設けられ、随時横になって休息や睡眠ができるように構成されている。そして、夏場における高温多湿の熱帯夜などにおいて睡眠をとる場合は、カーエアコンを運転して室内を空調することで快眠を確保してきたが、エアコンの運転による部屋全体の空調では、大きな電力消費量となり、さらに、アイドリング運転が必要となって、電力消費のみでなく、膨大な炭酸ガスの排出にともなう地球温暖化への影響が大きいものであった。
【0003】
一方、図9に示すように、内部に人間(A)が横たわる空間(78)を形成した寝袋(56)内に、熱交換器(66)と送風装置(68)とを有する空気調和装置(52)からの空気を循環させることで前記空間内を冷房するようにし、これにより、冷凍機自体を小電力で作動させることで、エネルギー資源の浪費や環境汚染を抑えるようにした構成が特許文献1に示されている。
【0004】
また、図10に示す特許文献2には、自動車の運転台の後壁と運転席との間のフロア上に設けた水平で平坦に延びるマット(86)の長手方向の一端部に、熱交換器を備えて熱交換空気を供給し、供給された空気が通気性マット内(87)を流動して人間(A)に対して快適な感覚が得られるようにした空気循環式マット(81)の構造が記載されている。
【0005】
さらに、前記特許文献1に記載の寝袋や特許文献2に記載のマット装置に対して、本特許出願人らは、冷却あるいは加熱生成された吹き出し空気の温度をコントロールすることで、外部の雰囲気温度に拘わらずにトラックなどの車内での快適な睡眠環境を形成するようにした温調空気循環式寝具を発明し、特願2007−278523号として出願している。
【特許文献1】特開2007−098044号公報
【特許文献2】特開2007−105084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許出願に記載の温度調節装置は、使用者が操作パネルで冷却温度ほかの条件を設定して使用するものであり、冷気あるいは暖気を供給する冷凍サイクルおよびファンは、使用者が任意に運転操作することで駆動されるが、前記冷凍サイクルの運転を開始させた際には、瞬時停電後の起動による圧縮機のロックなどの起動不良を防いで圧縮機を保護することを目的とした起動保護装置により所定時間、例えば、3分間はその起動を遅延させる制御を採用していた。
【0007】
しかしながら、トラックや乗用車などの自動車の車内で仮眠する場合に、例えば、涼しい雰囲気で仮眠をとりたい使用者にとっては、保護機能とはいえ3分間に亙って冷凍サイクルの駆動が遅れ冷却動作が遅延することは、きわめて永い時間帯となるものであり、改善が求められていた。
【0008】
本発明は上記の事情を考慮してなされたものであり、圧縮機の起動負荷をともなうことなく、使用者の運転操作に応じて速やかに冷却あるいは加温動作をおこない快適な雰囲気制御を可能とした温度調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、圧縮機と凝縮器と蒸発器とを連結して形成した冷凍サイクルの前記蒸発器とこの蒸発器で生成される冷気あるいは暖気を冷却あるいは加温対象物側に吹き出す循環ファンとを断熱壁体で形成された温調室内に収納し、前記温調室に冷気あるいは暖気の吹き出し風路および戻り風路を設けるとともに、前記冷凍サイクル運転時には、蒸発器で生成された冷気あるいは暖気を前記循環ファンおよび吹き出し風路によって冷却あるいは加温対象物側に吹き出し、戻り風路へ戻すように循環させるようにした温度調節装置において、前記冷凍サイクルの運転開始操作があった場合は、前記蒸発器の温度と冷却あるいは加温対象物側の温度とを比較し、その温度差が所定値以下のときには、圧縮機の起動保護時間中であっても圧縮機に通電しこれを起動させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧縮機の過負荷による起動不良や故障を保護して円滑な起動を可能にするとともに、使用者の起動操作に応じて速やかに冷却あるいは加温動作をおこない快適な雰囲気制御を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。図1は、本発明の温度調節装置(1)を冷却装置として搭載した場合のトラック前部の概略側面図であって、前記温度調節装置(1)は、仮眠室として使用される運転席(3)の後部キャビン(4)に設置された冷却ユニット(2)と、この冷却ユニット(2)を駆動する蓄電池(5)から形成されている。
【0012】
後部キャビン(4)には、トラック背面側からの概略図である図2に示すように、助手席側の後部位置の外壁に沿って前記冷却ユニット(2)を配設し、この冷却ユニット(2)に対して車体の幅方向が長手方向となるように、使用者(A)が横臥するための冷却マット(6)を設置している。また、前記蓄電池(5)は、トラック用の蓄電池とは別に冷却ユニット(2)の駆動電源用として専用に設けられており、自動車エンジンの駆動時に充電されるものであって、後部キャビン(4)外の車体下部に配設している。
【0013】
前記冷却ユニット(2)は、斜視図を図3、正面から前面を破断して示す図4に示すように、薄鋼板製の外板(7)で箱体状の外郭を形成し、高さ方向のほぼ中央部を断熱仕切壁(8)で上下の空間に区分されているとともに、前記後部キャビン(4)の床面である車体底板上に図示しない架台を介してボルト固定されている。
【0014】
前記断熱仕切壁(8)の上方の空間は機械室(9)としており、前記図4および平面図である図5に示すように、冷凍サイクル(10)の一環をなす冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、吐出された高温高圧の冷媒を受けて放熱し凝縮する凝縮器(12)およびこれら凝縮器(12)などの高温部品を冷却する放熱ファン(13)などを剛性のある鋼板などで形成した仕切板(14)上に設置している。
【0015】
前記冷凍サイクル(10)は、図6に示すように、前記圧縮機(11)、凝縮器(12)、減圧器である毛細管(15)および蒸発器(16)を環状に連結し、前記蓄電池(5)による駆動で圧縮機(11)からの冷媒を循環し、蒸発器(16)で蒸発させることによって冷気を生成するものであり、前記圧縮機(11)は、前記仕切板(14)上の幅方向の一側に片寄らせて配置し、振動吸収用のクッション体を介して固着されている。
【0016】
前記凝縮器(12)は、蛇行曲げした冷媒管を多数のフィンに嵌入させて奥行き寸法を薄くした直方体状をなし、面積の大きなその前面を外板(7)の前面に形成した吸込み開口(17)に沿わせて立設させ、この吸込み開口(17)と凝縮器(12)との間には埃などを遮蔽するためにフィルター(18)を設けている。
【0017】
凝縮器(12)の背面には、前記圧縮機(11)の運転に同期して駆動する放熱ファン(13)を前記圧縮機(11)に対向する平面における1コーナーの底部に開口した排気口(19)の端縁に面して立設させており、駆動時には、外気を前面の開口(17)から内部に吸引して凝縮器(12)を冷却し、熱交換した空気を外板(7)の前記排気口(19)から下方の排気ダクト(20)に向けて放出するようにしている。
【0018】
このとき、前述したように、圧縮機(11)は機械室(9)内の側部に片寄らせているため放熱ファン(13)による冷却作用を直接受けないようにしており、過冷却による蒸発温度を低下を防いでいるとともに、片寄っている分奥行き方向で放熱ファン(13)と圧縮機(11)が重ならないように配置することで、機械室(9)の奥行き寸法の短縮化をはかっている。
【0019】
前記機械室(9)の上部には、PC基板上にDC−ACインバータを収納した幅方向に長い筒状の電装室(21)を区画して配設しており、その前面には、スイッチ操作により前記冷却ユニット(2)を駆動させる起動スイッチ(22)や、押圧することで冷却ユニット(2)を急冷モードにして連続運転させたり低温化させる急冷ボタン(23)を設けた操作パネル(24)を配置するとともに、蓄電池(5)で冷却ユニット(2)の運転を制御するようにしている。
【0020】
そして、前記断熱仕切壁(8)の下方空間には、前記断熱仕切壁(8)に連なるように同様の断熱材で形成された断熱側壁(25)を外板(7)の内面側に配設し、底部には剛性のある断熱壁(26)を設けることで内部を断熱空間とした温調室(27)としており、図7の横断面図で示すように、そのほぼ中央部から前方の部分には、前記凝縮器(12)からの冷媒を受けてこれを蒸発させることで低温化した冷気を生成する蒸発器(16)を温調室(27)の幅方向に亙って立設状態で配置している。
【0021】
この蒸発器(16)も前記凝縮器(12)と同様に、蛇行曲げした冷媒管と冷媒管に嵌着した多数のフィンとから所定の幅と高さ寸法を有して奥行き寸法を薄くした横長の直方体をなしており、前記蒸発器(16)の一端側の温調室(27)の側部、すなわち、図7中の左側には、シロッコファンからなる循環ファン(28)を蒸発器(16)の長手方向に直交するように、温調室(27)の奥行き方向に亙って並置させている。
【0022】
前記蒸発器(16)の下面に対応する温調室(27)の底面には、一側に向かって下方傾斜させた露受け樋(29)を形成しており、この露受け樋(29)によって、冷却運転時に蒸発器(16)に付着する霜の融解水を集めるようにしている。集められたドレン水は、露受け樋(29)の傾斜下端部から連通している前記排気ダクト(20)を流入し外部に流出する。
【0023】
温調室(27)における前記循環ファン(28)の設置部の前方には、ファンケーシングによって連結され、冷却対象物、例えば、前記図2に示す冷却ユニット(2)の前面側スペースにおける車体底板上に配置した空気循環式の冷却マット(6)の空洞内部に冷気を導入するように、その冷気取り入れ口(6a)に連結した円筒状の吹き出し風路(31)を外方に突出させている。また、この吹き出し風路(31)の幅方向の反対側に位置する前記蒸発器(16)の前面には、戻り風路(32)を前記吹き出し風路(31)と同様に突出させて設けており、前記冷却マット(6)内を循環冷却した冷気を戻り口(6b)から前記戻り風路(32)を介して温調室(27)内の前記蒸発器(16)の一端側に流入させるようにしている。
【0024】
冷却ユニット(2)は、上記のように、温調室(27)を機械室(9)の下方に配設したので、温調室(27)からの冷気の吹き出し風路(31)や戻り風路(32)の位置が冷却ユニット(2)の下方部となり、特に、冷却対象物が前記空気循環式の冷却マット(6)などのように床面近傍に配置するものの場合は、その接続構成がきわめて容易となり、熱損失が少ないので冷気の伝達効率を向上させることができる。また、床面近傍に設置した冷却マット(6)の冷気取り入れ口(6a)や戻り口(6b)と前記冷気の吹き出し風路(31)や戻り風路(32)とを直接連結することができるので、長尺のダクト部材が不必要になり、ダクトスペースを削減できるばかりか、部品数やコストアップを抑制でき、ダクト部材が突出しないので外観を良好に保つことができる。
【0025】
以上の構成により、冷却ユニット(2)における圧縮機(11)を運転した場合には、凝縮器(12)からの冷媒を蒸発させることで蒸発器(16)を低温化して温調室(27)内の空気を冷却し、生成された冷気を循環ファン(28)によって吹き出し風路(31)から冷却対象物である冷却マット(6)側の冷気取り入れ口(6a)から循環風路(6c)に吹き出して冷却マット(6)内を冷却するものであり、循環風路(6c)の循環後は、戻り口(6b)を介して戻り風路(32)から温調室(27)内の蒸発器(16)に流入させ、再び冷却して吹き出す冷気循環を繰り返す。
【0026】
そして、前記蒸発器(16)の戻り風路(6b)に対応する箇所には、温度センサー(33)を配設している。この温度センサー(33)は、冷却マット(6)の循環風路(6c)内を流れて戻り口(6b)に至った空気が流入する蒸発器(16)部の温度を検知するものであり、この検知温度によって冷却ユニット(2)における圧縮機(11)の運転を制御し、冷却された空気を循環風路(6c)内に供給して、冷却マット(6)内を使用者(A)の希望する温度に冷却させるものである。よって、外気による冷却マット(6)の外面からの熱漏洩や使用者(A)の体温による発熱負荷など様々な負荷変動があっても循環風路(6c)内を流れて蒸発器(16)に至る冷気の温度をも的確に検出して就寝空間内を常に快適な温度状態にコントロールする。
【0027】
なお、前記温度センサー(33)は、前記冷却マット(6)から冷却ユニット(2)への冷気の戻り口(6b)に配設して、蒸発器(16)に戻る空気温度を検知して、冷凍サイクル(10)を制御するようにしてもよい。また、前記冷却ユニット(2)の電装室(21)の外表面には室温を検出する室温センサー(34)を取り付けている。
【0028】
しかして、夏季などで、前記温度調節装置(1)を搭載したトラックで長距離輸送をおこなっている場合における仮眠の際には、冷却ユニット(2)の起動スイッチ(22)の操作により冷却ユニット(2)を駆動させて圧縮機(11)を起動させ、生成された冷気を循環ファン(28)より吹き出して冷却マット(6)に供給し冷却するものであるが、このとき、図8の制御フローチャートを示すように、前記温度センサー(33)と室温センサー(34)との検出温度を比較し、その温度差が5deg以下の場合には、通常の、圧縮機(11)を保護することを目的とした起動保護装置による所定時間の遅延制御をおこなわずに、冷凍サイクル(10)における圧縮機(11)を即起動させるようにする。
【0029】
すなわち、使用者が、仮眠をとるべく後部キャビン(4)に移動し、冷却ユニット(2)の起動スイッチ(22)を入れ(ステップ1、以下(S1)と称す)、さらに、速やかに冷却できる急冷モードにすべく、前記急冷ボタン(23)を押圧操作した場合(S2)には、電装室(21)では、蒸発器(16)の戻り風路(6b)に配置した前記温度センサー(33)と冷却マット(6)の設置部近傍の温度を検知する前記室温センサー(34)との検出温度値を比較し(S3)、その温度差が所定値、例えば、5deg以下の場合には(S4)、あらかじめ設置されている起動遅延タイマーをオフして圧縮機(11)を起動させるように制御する(S5)。なお、この場合、起動遅延タイマーの設定時間を短縮させるように制御してもよい。
【0030】
前記制御の際の温度センサー(33)と室温センサー(34)との温度差を5deg以下としているのは、運転中の冷凍サイクル(10)が停止した直後には、圧縮機(11)の吐出圧力と吸込み圧力とがバランスしておらず、起動するには未だ負荷が大きく、起動不良を生じる可能性が高いためであり、この時点でにおける蒸発器(16)の温度は低温であって、この蒸発器の近傍に位置する温度センサー(33)の温度も低温度を検出することから室温との温度差が大きくなるためである。
【0031】
しかしながら、例えば、時間経過により、温度センサー(33)の検知温度が28℃で、室温センサー(34)が33℃を検出したような場合には、その温度差は5degであり、概ね前記各圧力はバランスしており起動負荷が小さくなっていると見做すことができることによる。
【0032】
前述の操作において、使用者が、急冷ボタン(23)を操作せず、また、温度センサー(33)と室温センサー(34)との温度差が6deg以上であれば、通常の圧縮機(11)の起動保護制御によって圧縮機(11)の遅延タイマーが動作し、所定時間、例えば、3分間は圧縮機(11)の起動を遅延させるよう制御する(S6)ものであり、所定時間後に起動させた後には、通常のオンオフ運転制御によりコントロール運転をおこなう。
【0033】
上記により、使用者が希望する場合で、圧縮機(11)が起動可能な状態であれば、急冷ボタン(23)を押圧操作することで、起動遅延タイマーの設定を解除して圧縮機(11)を起動させるものであり、冷凍サイクル(10)が駆動することで、蒸発器(16)は冷気を速やかに生成し、温調室(27)から吹き出す冷気により冷却マット(6)は急速に冷却されることになり、トラックや乗用車などの自動車の車内で仮眠する場合に、使用者は、圧縮機(11)の起動保護装置による起動の遅延でいらつくことなく、起動操作と同時に、速やかに冷風による涼しい雰囲気が得られ、快適に仮眠をとることができる。
【0034】
前記により、圧縮機(11)の起動遅延タイマーをオフさせ、即時に冷却運転をおこなって冷気を冷却マット(6)に供給するように制御した場合は、オンオフ運転でコントロール制御される冷凍サイクル(10)のオフ温度、例えば、26℃を、所定温度、例えば、2deg下げ、この状態でその後30分間に亙って冷却運転をおこなうように制御する(S7)。
【0035】
この制御によって、やや低い温度の冷風を所定時間に亙って供給できるので、使用者にとって急冷効果の高い冷却運転をおこなうことができるものであり、30分経過後は通常の冷却運転をおこなうようにする(S8)。
【0036】
また、前記実施例による圧縮機(11)を起動させた後の所定時間内は、前記凝縮器(12)を冷却する放熱ファン(13)を高速回転して吐出されたガス冷媒の凝縮を助長するとともに、蒸発器(16)からの冷気を吹き出す循環ファン(28)を低速回転させるようにすれば、より冷凍サイクル(10)の効率が高くなって蒸発器(16)の温度が低下し、急冷運転時における供給冷気の温度を下げることができるものである。
【0037】
そしてまた、前記実施例においては、冷凍サイクル(10)を圧縮機(11)のオンオフ運転でコントロール制御する方式について説明したが、これに限らず、圧縮機(11′)をインバータ駆動によるものとし、急冷ボタン(23)の操作により冷凍サイクル(10′)を駆動させた後の所定時間内は、圧縮機(11′)の運転周波数を所定値高くした高ヘルツ運転をおこない、および循環ファン(28′)の回転数を所定値高くして駆動するようにしてもよいものであり、この構成により、前記実施例と同様の急冷効果を得ることができる。
【0038】
なお、上記各構成における冷却対象物としての前記冷却マット(6)は、内部の空洞内に冷気を導入することにより、その上部や内部に入る人体を冷却するものであるが、冷却対象物はこれに限るものではなく、その形態や設置スペースから、冷却ユニット(2)と冷却対象物とが一体化できない構成のものであればよい。
【0039】
また、上記各実施例については冷却ユニット(2)で冷気を生成し、これを冷却対象物である冷却マット(6)側に吹き出す構成を説明したが、前記冷気とは逆に暖気を生成し、この暖気に吹き出しにより対象物を加温するようにしてもよく、その場合には、特に図示しないが、前記冷凍サイクル(10)における圧縮機(11)の上流側と下流側とを連結するように四方弁を設け、冷媒流路を切り換えることで前記蒸発器(16)を高温側の熱交換器である凝縮器として使用し、この高温となった蒸発器(16)による暖気を吹き出すようにすればよい。
【0040】
そしてまた、上記各実施例においては、トラックなどの車内で使用する温度調節装置(1)について説明したが、本発明は、前記車載用に限らず、家庭における個人用や病院用としても活用できるものであり、屋外用としても広く展開して使用できるものである。そして、これらの対象物から電源は電池に限らず交流電源を使用するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の1実施形態の温度調節装置を設けたトラックの側面図である。
【図2】図1の温度調節装置を示すトラック背面側からの概略図である。
【図3】図2における冷却ユニットの斜視図である。
【図4】図3の冷却ユニットの前面を破断した正面図である。
【図5】図4の機械室部の平面図である。
【図6】図3に配設した冷凍サイクルの概略構成図である。
【図7】図3における温調室の横断面図である。
【図8】図1の温度調節装置の制御を示すフローチャートである。
【図9】本発明の従来例の寝袋を示す断面図である。
【図10】本発明のさらに他の従来例を示す空気循環式マットの断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 温度調節装置 2 冷却ユニット 3 運転席
4 後部キャビン 5 蓄電池 6 冷却マット
6a 冷気取り入れ口 6b 戻り口 6c 循環風路
9 機械室 10 冷凍サイクル 11 圧縮機
12 凝縮器 13 放熱ファン 16 蒸発器
19 排気口 20 排気ダクト 21 電装室
22 起動スイッチ 23 急冷ボタン 24 操作パネル
27 温調室 28 循環ファン 29 露受け樋
31 吹き出し風路 32 戻り風路 33 温度センサー
34 室温センサー A 使用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と凝縮器と蒸発器とを連結して形成した冷凍サイクルの前記蒸発器とこの蒸発器で生成される冷気あるいは暖気を冷却あるいは加温対象物側に吹き出す循環ファンとを断熱壁体で形成された温調室内に収納し、前記温調室に冷気あるいは暖気の吹き出し風路および戻り風路を設けるとともに、前記冷凍サイクル運転時には、蒸発器で生成された冷気あるいは暖気を前記循環ファンおよび吹き出し風路によって冷却あるいは加温対象物側に吹き出し、戻り風路へ戻すように循環させる温度調節装置において、
前記冷凍サイクルの運転開始操作があった場合は、前記蒸発器の温度と冷却あるいは加温対象物側の温度とを比較し、その温度差が所定値以下のときには、圧縮機の起動保護時間中であっても圧縮機に通電しこれを起動させるようにしたことを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
蒸発器の温度と冷却対象物側の温度との温度差が5deg以下のときは、圧縮機の起動保護時間中であっても圧縮機を起動するようにしたことを特徴とする請求項1記載の温度調節装置。
【請求項3】
圧縮機の起動後の所定時間内は、冷却コントロール運転のオフ温度を所定温度低く設定することを特徴とする請求項1または2記載の温度調節装置。
【請求項4】
圧縮機の起動後の所定時間内は、凝縮器を冷却する放熱ファンを高速回転するとともに蒸発器からの冷気を吹き出す循環を低速回転させることを特徴とする請求項1または2記載の温度調節装置。
【請求項5】
圧縮機をインバータ駆動によるものとし、冷凍サイクル運転開始後の所定時間内は、圧縮機の運転周波数および循環ファンの回転数をそれぞれ所定値高くして駆動することを特徴とする請求項1または2記載の温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−101509(P2010−101509A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270659(P2008−270659)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】