説明

温水プールの濾過装置

【課題】多人数で使用される状態におけるプール水の白濁を少なくしながら、プール水を極めて清澄な状態に保持して、しかも濾過ポンプの消費電力を少なくしてランニングコストを低減する。
【解決手段】温水プールの濾過装置は、プール水が循環されて濾過する濾過器2と、この濾過器2にプール水を循環させる濾過ポンプ3と、この濾過ポンプ3で循環されるプール水に凝集剤を添加する凝集剤の添加機4と、プール水を設定温度に加温する加温機5とを備えている。温水プールの濾過装置は、濾過ポンプ3で循環されるプール水に添加機4で凝集剤を添加し、凝集剤の添加されたプール水を濾過器2で濾過してプール1に循環している。温水プールの濾過装置は、濾過ポンプ3の回転数を制御するインバータ7を備えており、このインバータ7で濾過ポンプ3の回転を制御して、プール水を濾過器2に循環させる循環水量をコントロールしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水プールのプール水を設定温度に加温すると共に、濾過器に循環して清澄に保持する温水プールの濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温水プールのプール水を濾過器に循環して清澄に保持する装置は開発されている。(特許文献1参照)
この公報の温水プールは、熱交換器でプール水を設定温度に保持すると共に、プール水を濾過ポンプで濾過器に循環して清澄な状態に保持している。この公報に記載される濾過装置は、温水プールを常に清澄な状態に保持できない欠点がある。温水プールを使用する人数が多くなると、プール水の循環水量が不足して白濁するからである。この状態でプール水が白濁するのは、殺菌のために添加している塩素濃度が低下して、塩素で不活性化されていた微生物が活性化され、さらに体表面に付着していた多量の汚濁物質が多く添加されるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−336901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温水プールが多人数で使用されるときに塩素濃度の低下するのを防止するために、濾過ポンプの循環水量を多くすることは有効である。ただ、プール水の循環水量を多くするには、濾過ポンプの消費電力を大きくする必要があってランニングコストが高くなる。さらに、濾過器を通過するプール水の流速が速すぎて、異物を清澄に濾過できなくなる。たとえば、25メートルの温水プールの濾過器として、一般的には、直径を約1.5メートルとする砂濾過器が使用される。この砂濾過器でプール水を清澄に濾過するのに最適な濾過ポンプは、消費電力を5.5kW〜7.5kWのモータで駆動されるものである。ところが、この濾過ポンプでプール水を濾過器に循環すると、一時に多人数で使用されるときにプール水が白濁する弊害を解消できない。この弊害を防止するために、11kWもの大きなモータで駆動される濾過ポンプを使用しているのが現状である。ところが、このように大きな濾過ポンプで濾過器に循環されるプール水は、濾過器で綺麗に濾過できず、使用人数が少なくときにおいても、高い透明度のプール水に濾過できない欠点がある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、多人数で使用される状態におけるプール水の白濁を少なくしながら、プール水を極めて清澄な状態に保持でき、しかも濾過ポンプの消費電力を少なくしてランニングコストを低減できる温水プールの濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の温水プールの濾過装置は、プール水が循環されて濾過する濾過器2と、この濾過器2にプール水を循環させる濾過ポンプ3と、この濾過ポンプ3で循環されるプール水に凝集剤を添加する凝集剤の添加機4と、プール水を設定温度に加温する加温機5とを備えている。温水プールの濾過装置は、濾過ポンプ3で循環されるプール水に添加機4で凝集剤を添加し、凝集剤の添加されたプール水を濾過器2で濾過してプール1に循環している。温水プールの濾過装置は、濾過ポンプ3の回転数を制御するインバータ7を備えており、このインバータ7で濾過ポンプ3の回転を制御して、プール水を濾過器2に循環させる循環水量をコントロールしている。
【0007】
以上の温水プールの濾過装置は、多人数で使用される状態におけるプール水の白濁を少なくしながら、プール水を極めて清澄な状態にでき、しかも濾過ポンプの消費電力を少なくしてランニングコストを低減できる特徴がある。それは、多人数で使用される状態にあっては、濾過ポンプの回転数を高くして循環水量を多くし、また、使用人数が少ない状態にあっては、濾過ポンプの回転数を少なくして濾過器で綺麗に濾過できるからである。多人数で使用するときに濾過ポンプの回転数を高くして循環水量を多くすると、より多くのプール水が濾過器に循環されると共に、多量に循環されるプール水に塩素を添加することで、温水プール内の塩素濃度を高くできる。このため、温水プール内で微生物が活性化されるのを防止して、白濁が防止できる。また、濾過器に循環されるプール水の水量が多くなることから、濾過器が微細な異物を除去する能力は低下するが、通過する水量が増加することから、凝集剤で大きく凝集された異物はより能率よく除去される。したがって、多人数で使用される状態では、使用人数が少ない状態に比べると透明度は多少低下しても、白濁することはなく、しかも、従来の濾過装置に比較すると極めてプール水を清澄に濾過できる特徴が実現される。ちなみに、本発明の濾過装置は、25メートルプールに、直径を1.5メートルの砂濾過器を使用し、11kWのモータで駆動される濾過ポンプを使用しながら、通常の使用状態にあっては、プール水の濁度を0.5以下と極めて高い透明度に保持でき、しかも、多人数で使用される状態においても、プール水の白濁を防止して、一般細菌の増加を阻止することができる。
【0008】
また、従来の温水プールの濾過装置は、多人数で使用される状態での白濁が解消されるのに極めて時間がかかることから、その後に使用人数が少なくなった状態でも清澄にできない欠点があった。このため、従来の装置は、たとえば、昼間の特定の時間に一時に多人数に使用されてプール水が白濁すると、その後に使用人数が少なくなってもプール水を清澄にできない欠点があったが、本発明の濾過装置は、多人数で使用される状態での白濁を有効に防止でき、しかも人数が少なくなった状態では濾過器で綺麗に濾過できることから、使用人数が少なくなると速やかにプール水を極めて清澄にできる特徴がある。また、濾過ポンプが循環水量を多くする時間帯が、使用人数が多くなるときに特定されることから、濾過ポンプが使用する消費電力を相当に少なくして、ランニングコストを著しく低減できる特徴が実現される。
【0009】
本発明の温水プールの濾過装置は、濾過器2の流入側の濁度を検出する濁度センサ12を備えて、インバータ7が濁度センサ12で検出される濁度で濾過ポンプ3の回転数をコントロールすることができる。
以上の濾過装置は、濾過器の流入側に設けている濁度センサで検出されるプール水の濁度でインバータが濾過ポンプの回転数を制御するので、使用人数が多くなって濾過器に流入されるプール水の濁度が大きくなると濾過ポンプが循環水量を多くして、濾過ポンプの回転数を手動でコントロールすることなく、常に温水プールの白濁を防止しながら、清澄に保持できる特徴がある。
【0010】
本発明の温水プールの濾過装置は、濾過器2の吸入側と排出側の濁度を検出する濁度センサ12を備えて、インバータ7が濁度センサ12で検出される濁度で濾過ポンプ3の回転数をコントロールすることができる。
以上の濾過装置は、濾過器の流入側と排出側に設けている両方の濁度センサで検出されるプール水の濁度でインバータが濾過ポンプの回転数を制御するので、濾過器の濾過状態と、使用人数によるプール水の濁度の両方を検出して、濾過ポンプの循環水量を最適値にコントロールできる。このため、濾過ポンプの回転数を理想的な状態にコントロールして、温水プールの白濁を防止しながら、極めて清澄に保持できる特徴がある。
【0011】
本発明の温水プールの濾過装置は、濾過器2を濾過ポンプ3の排出側に連結すると共に、濾過ポンプ3の排出側であって濾過器2の吸入側の圧力を検出する圧力センサ13を備えて、インバータ7が、この圧力センサ13と濁度センサ12の信号で濾過ポンプ3の回転数をコントロールすることができる。
以上の濾過装置は、濾過器の吸入側の圧力とプール水の濁度の両方を検出して、濾過ポンプの回転数をコントロールするので、濾過器の圧力損失、すなわち濾過器の目詰まり状態と濁度の両方で濾過ポンプの回転数を最適値にコントロールできる。このため、濾過器を洗浄した状態から、目詰まりした状態の両方でプール水を清澄にできる特徴がある。
【0012】
本発明の温水プールの濾過装置は、インバータ7が、濾過ポンプ3の回転数をコントロールする制御回路14を備えると共に、この制御回路14が、圧力センサ13と濁度センサ12の信号で濾過ポンプ3の回転数を特定する回転数情報を記憶するメモリ15を備えて、この回転数情報に基づいて圧力センサ13と濁度センサ12の信号で濾過ポンプ3の回転数をコントロールすることができる。
以上の濾過装置は、インバータの制御回路が、圧力センサで検出される圧力と、濁度センサで検出される濁度の両方から、記憶している回転数情報に基づいて濾過ポンプの回転数を最適値にコントロールする。このため、濾過器でもってプール水を理想的な状態で濾過して、最も綺麗な状態に保持できる特徴がある。
【0013】
本発明の温水プールの濾過装置は、濾過ポンプ3で循環される循環路9の途中に、プール水の殺菌装置6を連結することができる。この殺菌装置6は、プール水に塩を添加する塩添加機19と、この塩添加機19で塩の添加されたプール水を電気分解する電気分解槽20とを備えて、塩添加機19でが塩の添加されたプール水を電気分解槽20で電気分解して、循環されるプール水を殺菌することができる。
以上の濾過装置は、塩添加機と電気分解槽とでプール水の殺菌力をコントロールしながら、濾過ポンプで循環水量を最適値にコントロールできるので、多人数が使用される状態においても、温水プール内の遊離塩素濃度の低下を少なくできる。このため、多人数で使用される状態においても、微生物が活性化されてプール水が白濁するのをより有効に防止できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例にかかる温水プールの濾過装置の概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施例にかかる温水プールの濾過装置の概略構成図である。
【図3】本発明の他の実施例にかかる温水プールの濾過装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための温水プールの濾過装置を例示するものであって、本発明は温水プールの濾過装置を以下のものに特定しない。
【0016】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0017】
図1に示す温水プールの濾過装置は、プール水が循環されて濾過する濾過器2と、この濾過器2にプール水を循環させる濾過ポンプ3と、この濾過ポンプ3で循環されるプール水に凝集剤を添加する凝集剤の添加機4と、プール水を設定温度に加温する加温機5と、循環されるプール水を殺菌する殺菌装置6とを備える。この濾過装置は、プール水に添加機4で凝集剤を添加し、凝集剤の添加されたプール水を濾過器2で濾過し、さらに、濾過ポンプ3で循環されるプール水を殺菌装置6で殺菌してプール1に循環する。さらに、図の濾過装置は、濾過ポンプ3の回転数を制御するインバータ7を備えている。インバータ7は、濾過ポンプ3の回転を制御して、プール水を濾過器2に循環させる循環水量をコントロールする。
【0018】
濾過器2は、濾過タンク10に砂11を充填している砂濾過器で、上から下にプール水を通過させて凝集剤で凝集された凝集物を物理濾過して清澄にする。濾過タンク10の大きさは、温水プール1の大きさで調整される。たとえば25メートルの温水プール1のプール水を濾過する濾過タンク10は、直径を1.5m〜2mとし、高さを1m〜2mとして、内部には濾材の砂11を充填している。濾材の砂11は、たとえば1週間に1度の割合で逆洗浄して濾過した異物を除去する。逆洗浄は、濾過タンク10に逆向きに洗浄水を流して、すなわち、下から上に向かって洗浄水を流し、洗浄水で砂11を撹拌して付着する異物を除去する。逆洗浄に使用した洗浄水は、温水プール1に循環することなく外部に排水する。濾材を砂11とする濾過器2は、凝集剤で凝集された凝集物を物理的に濾過して綺麗にする。
【0019】
濾過ポンプ3は、吸入側をプール1の底に、排出側を濾過器2に連結している。濾過ポンプ3は、プール水を吸入して濾過器2に供給し、濾過器2で濾過されて綺麗になったプール水を、殺菌装置6を通過させた後にプール1に循環させる。濾過ポンプ3はタービンポンプや渦巻きポンプで、インペラを回転させるモータを備えている。この濾過ポンプ3は、モータに供給される電圧と周波数をインバータ7で制御して回転数をコントロールできる。モータは、インダクションモータなどの交流モータで、供給される交流電源の電圧と周波数とで回転数をコントロールできる。濾過ポンプ3の交流モータは、交流電力電源の電圧と周波数を低くして回転数を遅く、電圧と周波数を高くして回転数を高くできる。濾過ポンプ3のモータは、8コース、25mの温水プールで7.5kWとする。ただし、モータの回転数をインバータ7で制御するので、モータには5.5kW〜11kWのものも使用できる。小さいモータは、インバータで周波数と電圧を高くして回転数を高くし、濾過ポンプの流量を増加して大きなモータで駆動される濾過ポンプに匹敵する流量とすることができる。ただ、小さいモータを定格周波数の50Hzや60Hzよりも高い周波数で高速回転させると、モータと濾過ポンプの効率が低下するので、モータには、好ましくは大きいものを規定の回転数よりも低い回転数とするように使用する。
【0020】
添加機4は、PAC等の凝集剤を添加して、プール水の汚濁成分を凝集させる。添加機4がプール水に添加する凝集剤は、PACに限らず、プール水に含まれる汚濁成分を凝集できる全てのものが使用できる。添加機4は、濾過器2の吸入側に連結されて、濾過器2に供給されるプール水に凝集剤を添加する。添加機4は、濾過ポンプ3の吸入側又は排出側に凝集剤を添加して、プール水に含まれる汚濁成分を凝集させる。添加機4は、好ましくは500cc/日〜1000cc/日の割合でPACを凝集剤として添加する。したがって、添加機4は定流量ポンプを備えており、この定流量ポンプで一定流量の凝集剤をプール水に添加する。
【0021】
加温機5は、循環されるプール水を設定温度に、たとえば30℃に加温する。加温機5はボイラー17から供給される温水若しくは蒸気で加温される熱交換器16で、この熱交換器16をプール水の循環路9に配置して、プール水を設定温度に加温する。
【0022】
インバータ7は、濾過ポンプ3のモータに供給する交流電源18の電圧と周波数を調整して、濾過ポンプ3の回転数を最適値に変更する。インバータ7は、モータの回転数を高くするときに電圧と周波数を高くする。インダクションモータなどの交流モータは、電源の周波数を高くしてロータの回転数を高くできるので、モータの回転数を高くするときに周波数を高くする。電源周波数を高くしてロータの回転数を高くするときは、回転トルクも増加させる必要があるので、周波数と共に電圧も高くして、回転トルクを強くする。反対にモータの回転数を低くするときは、周波数と電圧を低くして、回転数を低くしながら回転トルクも低下させる。したがって、インバータ7は、モータに供給する周波数と電圧を一緒に制御して、モータの回転数をコントロールする。インバータ7は、手動で操作してモータの回転数をコントロールすることもできる。このインバータ7は、プール1が多人数で使用されるときに、モータに供給する周波数と電圧を高くして、濾過ポンプ3の回転数を高くし、使用人数が少なくときに周波数と電圧を低くして濾過ポンプ3の回転数を低くする。
【0023】
図1のインバータ7は、濁度センサ12で検出されるプール水の濁度で濾過ポンプ3の回転数を制御する。この装置は、濾過器2の流入側の濁度を検出する濁度センサ12を備えている。インバータ7は、濾過器2に流入されるプール水の濁度を濁度センサ12で検出して、検出される濁度で濾過ポンプ3の回転数をコントロールする。この濾過装置は、濁度センサ12で検出されるプール水の濁度が高くなると、濾過ポンプ3のモータに供給する周波数と電圧を高くして、濾過ポンプ3の回転数を高くする。
【0024】
さらに、図2の濾過装置は、濾過器2の流入側と排出側の濁度を検出する濁度センサ12を備えており、インバータ7は、両方の濁度センサ12で検出される濁度で濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧を制御して、濾過ポンプ3の回転数をコントロールする。このインバータ7は、流入側の濁度と、流入側と排出側の濁度の差の両方で、濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧をコントロールする。このインバータ7は、流入側の濁度が高くなり、あるいは流入側と排出側の濁度の差が大きくなるにしたがって、濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧を高くする。また、このインバータ7は、流入側の濁度と、流入側と排出側の濁度を加算した値が高くなるにしたがって、濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧を高くするように制御することもできる。
【0025】
さらにまた、図3の濾過装置は、濾過器2を濾過ポンプ3の排出側に連結すると共に、濾過ポンプ3の排出側であって濾過器2の吸入側の圧力を検出する圧力センサ13も備えている。このインバータ7は、圧力センサ13で検出される圧力と、濁度センサ12の信号の両方で濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧を制御して、濾過ポンプ3の回転数をコントロールする。
【0026】
このインバータ7は、濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧を制御する制御回路14を備え、この制御回路14に、圧力センサ13と濁度センサ12の信号で濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧を特定する回転数情報を記憶するメモリ15を備えている。メモリ15は、圧力センサ13で検出される圧力と、濁度センサ12で検出される濁度から、濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧を特定する回転数情報を関数として、あるいはルックアップテーブルとして記憶している。この制御回路14は、メモリ15に記憶している回転数情報に基づいて、圧力センサ13で検出される圧力と、濁度センサ12で検出される濁度から濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧を特定して、濾過ポンプ3の回転数を最適な状態にコントロールする。回転数情報は、圧力センサ13の検出圧力と、濁度センサ12で検出される濁度から、濾過ポンプ3を最適な回転数として、プール水を最も清澄にできる情報として記憶している。この回転数情報は、あらかじめ圧力と濁度からプール水を最も清澄にできる状態を検出してメモリ15に記憶される。たとえば、回転数情報は、濾過器2の流入側の圧力が高くなり、あるいは濾過器2の流入側の濁度が高くなり、あるいは又、流入側と排出側の濁度の差が多くなると、濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧を高くなるように制御する。ただ、圧力と濁度で濾過ポンプ3のモータに供給する電源周波数と電圧とを高くする割合は、回転数情報に基づいて特定する。
【0027】
さらに、濾過装置は、濾過ポンプ3で循環される循環路9の途中に、プール水の殺菌装置6を連結している。この殺菌装置6は、プール水に塩を添加する塩添加機19と、この塩添加機19で塩の添加されたプール水を電気分解してプール水を殺菌する遊離塩素を遊離する電気分解槽20とを備えている。塩添加機19は、プール水に塩を添加して、塩化物イオンの濃度を高くする。この塩化物イオンは電気分解によって、殺菌力のある遊離塩素となる。したがって、塩の添加量をコントロールして、塩化物イオン濃度、すなわち殺菌力のある遊離塩素濃度をコントロールできる。塩添加機19は、好ましくはプール水の遊離塩素濃度が1mg/L〜5mg/Lとなる量の塩を添加する。電気分解槽20は、プラス電極板21とマイナス電極板22を、イオンを透過させる絶縁膜23を介して対向するように配置している。プラス電極板21とマイナス電極板22は直流電源24に接続している。この電気分解槽20は、マイナスに電離している塩化物イオンを静電力でプラス電極板21に吸引し、塩化物イオンから電子を奪って殺菌力のある遊離塩素を遊離し、この遊離塩素でプール水を殺菌する。したがって、以上の殺菌装置6は、塩添加機19で塩の添加されたプール水を電気分解槽20で電気分解して、遊離する塩素で循環されるプール水を殺菌する。
【0028】
温水プール1は、一時に多人数で使用されるとプール水の遊離塩素濃度が低下する。以上の濾過装置は、多人数で使用されるときに濾過ポンプ3の循環水量を多くするので、濾過器2の循環路9に連結している殺菌装置6は、循環されるプール水の流量に比例した塩を添加することで、循環水の遊離塩素濃度を一定としながら、プール1内の遊離塩素濃度の低下を防止して、微生物の繁殖を有効に防止できる。このことを実現する殺菌装置6は、濾過器2に循環されるプール水の流量を検出する流量センサー25を備え、この流量センサー25で検出される流量で塩添加機19がプール水に添加する塩量をコントロールする。この塩添加機19は、循環される流量に比例する量の塩をプール水に添加して、遊離塩素濃度を一定に保持できる。なお流量センサー25と塩素添加機19が持つ機能を一体化した水流駆動式流量比例混合機を装備しても差し支えない。この濾過装置は、清澄に濾過して、温水プール1に供給するプール水の遊離塩素濃度を高くすることなく、すなわち、温水プール1の全体をより均一な遊離塩素濃度としながら、多人数で使用される状態にあっても、微生物の繁殖を効果的に防止できる特徴がある。このことは、温水プール1を使用するユーザーの健康保持に大切である。それは、多人数で使用するときに、温水プール1の遊離塩素濃度の低下を防止するために、多量の塩素を添加すると、部分的に遊離塩素濃度が高くなって、ユーザーの健康に悪い影響を与えるからである。
【符号の説明】
【0029】
1…プール
2…濾過器
3…濾過ポンプ
4…添加機
5…加温機
6…殺菌装置
7…インバータ
9…循環路
10…濾過タンク
11…砂
12…濁度センサ
13…圧力センサ
14…制御回路
15…メモリ
16…熱交換器
17…ボイラー
18…交流電源
19…塩添加機
20…電気分解槽
21…プラス電極板
22…マイナス電極板
23…絶縁膜
24…直流電源
25…流量センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プール水が循環されて濾過する濾過器(2)と、この濾過器(2)にプール水を循環させる濾過ポンプ(3)と、この濾過ポンプ(3)で循環されるプール水に凝集剤を添加する凝集剤の添加機(4)と、プール水を設定温度に加温する加温機(5)とを備え、
前記濾過ポンプ(3)で循環されるプール水に前記添加機(4)で凝集剤が添加され、凝集剤の添加されたプール水が濾過器(2)に濾過されてプール(1)に循環されるようにしてなる温水プールの濾過装置であって、
前記濾過ポンプ(3)の回転数を制御するインバータ(7)を備えており、このインバータ(7)で濾過ポンプ(3)の回転が制御されて、プール水を前記濾過器(2)に循環させる循環水量をコントロールするようにしてなる温水プールの濾過装置。
【請求項2】
前記濾過器(2)の流入側の濁度を検出する濁度センサ(12)を備えており、前記インバータ(7)が濁度センサ(12)で検出される濁度で濾過ポンプ(3)の回転数をコントロールする請求項1に記載される温水プールの濾過装置。
【請求項3】
前記濾過器(2)の流入側と排出側の濁度を検出する濁度センサ(12)を備えており、前記インバータ(7)が濁度センサ(12)で検出される濁度で濾過ポンプ(3)の回転数をコントロールする請求項1に記載される温水プールの濾過装置。
【請求項4】
前記濾過器(2)が前記濾過ポンプ(3)の排出側に連結されると共に、前記濾過ポンプ(3)の排出側であって濾過器(2)の吸入側の圧力を検出する圧力センサ(13)を備えており、前記インバータ(7)が、この圧力センサ(13)と前記濁度センサ(12)の信号で濾過ポンプ(3)の回転数をコントロールする請求項2又は3に記載される温水プールの濾過装置。
【請求項5】
前記インバータ(7)が、濾過ポンプ(3)の回転数をコントロールする制御回路(14)を備えており、この制御回路(14)が、前記圧力センサ(13)と前記濁度センサ(12)の信号で濾過ポンプ(3)の回転数を特定する回転数情報を記憶するメモリ(15)を備えており、この回転数情報に基づいて前記圧力センサ(13)と濁度センサ(12)の信号で濾過ポンプ(3)の回転数をコントロールする請求項4に記載される温水プールの濾過装置。
【請求項6】
前記濾過ポンプ(3)で循環される循環路(9)の途中に、プール水の殺菌装置(6)を連結しており、この殺菌装置(6)は、プール水に塩を添加する塩添加機(19)と、この塩添加機(19)で塩の添加されたプール水を電気分解する電気分解槽(20)とを備えており、塩添加機(19)で塩の添加されたプール水が、電気分解槽(20)で電気分解されて、循環されるプール水が殺菌されるようにしてなる請求項1に記載される温水プールの濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−38383(P2011−38383A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189511(P2009−189511)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(509034432)有限会社イシズチコーポレーション (2)
【Fターム(参考)】