説明

測位信号発信システム

【課題】 走行中の車両において位置を知ることを可能にするシステムを提供する。
【解決手段】 測位信号発信システムは、GPSアンテナ230,232,234を介してGPS信号を受信するGPS受信装置200,202,204と、アンテナ220,222,224を介して信号を送信するリピータ210,212,214とにそれぞれ接続されたGPS信号生成装置220,222,224を含む。各GPS信号生成装置は、GPS信号の入力を受け付ける通信I/Fと、GPS信号生成装置の内部の動作を制御するCPUと、メモリと、クロックと、GPS信号に基づいて擬似的なGPS信号を生成するGPS信号生成部と、擬似的なGPS信号を出力する出力I/Fとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置情報を生成するための信号を発信する技術に関する。より特定的には、本発明は、定められたルート上を運行する車両の位置の特定を可能にする信号を発信するための測位信号発信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
位置情報に対するニーズが高まってきている。位置情報を取得するための技術として、たとえば測位システムとして周知であるGPS(Global Positioning System)は、時刻情報が含まれる信号を送信可能な複数のGPS衛星により送出されるGPS信号に基づいて当該信号を受信する通信端末の位置を測位することにより実現される。通信端末は、GPS信号を受信可能な携帯電話機、カーナビゲーションシステムに含まれる受信機などを含む。ここで、GPSとは、アメリカ合衆国の運用によるGPSのみならず、現在欧州連合において運用が検討されているGalileo、ロシア共和国が運用しているGLONASS(Global Navigation Satellite System)その他の衛星航法システムを含むものとする。
【0003】
位置情報は、上記GPS信号を受信可能な端末において算出したり、あるいは、その信号を他の演算装置に送信して当該装置が算出することにより、取得される。したがって、通信端末がGPS信号を受信できる環境においては、通信端末の場所を特定することができる。
【0004】
なお、以上本発明についての従来技術を、出願人の知得した一般的な技術情報に基づいて説明したが、出願人の記憶する範囲において、出願前までに先行技術文献情報として開示すべき情報を出願人は有していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、GPS信号が発信されているエリアにおいても、位置情報の取得のために必要なGPS信号がすべて受信できない場合には、当該位置情報を取得できない場合がある。たとえば定められたルート上を運行する車両の位置を特定できない場合がある。また、ビル、その他の高層物によって、GPS信号の伝播が遮られたり、あるいは、いわゆるマルチパスと称される現象によって、位置情報が取得できなかったり、取得される位置情報の精度が低下する恐れがあった。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、定められたルート上を走行する車両の位置を特定するための測位信号発信システムを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、位置情報の取得をシームレスに実現することができる測位信号発信システムを提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、取得される位置情報の精度の低下を防止することができる測位信号発信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明のある局面に従うと、測位信号発信システムは、定められたルート上を運行する車両と、ルートに沿って配置されている複数の測位信号生成装置とを備える。各測位信号生成装置は、少なくとも3つの衛星から、測位のためのデータが含まれる第1の測位信号をそれぞれ受信する受信手段を含む。それぞれの第1の測位信号は、第1の測位信号を発信した衛星を識別するための第1の識別コードにより符号化されている。各測位信号生成装置は、第1の測位信号に基づいて、第1の測位信号と異なる第2の測位信号を生成する生成手段を含む。第2の測位信号は、第1の識別コードと異なる第2の識別コードにより符号化されている。測位信号生成装置は、第2の測位信号を発信する発信手段を含む。車両は、第2の測位信号を受信するための受信手段と、第2の測位信号に基づいて位置情報を算出する算出手段と、位置情報を発信する情報発信手段とを含む。
【0010】
この発明の他の局面に従うと、測位信号発信システムは、定められたルート上を運行する車両に向けて測位のための信号を発信するためのシステムである。車両は信号を受信して車両の内部に発信する。測位信号発信システムは、ルートに沿って配置されている複数の測位信号生成装置を備える。各測位信号生成装置は、少なくとも3つの衛星から、測位のためのデータが含まれる第1の測位信号をそれぞれ受信する受信手段を含む。それぞれの第1の測位信号は、第1の測位信号を発信した衛星を識別するための第1の識別コードにより符号化されている。各測位信号生成装置は、第1の測位信号に基づいて、第1の測位信号と異なる第2の測位信号を生成する生成手段を含む。第2の測位信号は、第1の識別コードと異なる第2の識別コードにより符号化されている。各測位信号生成装置は、第2の測位信号を発信する発信手段を含む。
【0011】
好ましくは、受信手段は、符号化された第1の測位信号を受信する。生成手段は、符号化された第1の測位信号を復号化する復号化手段と、第2の識別コードに基づいて復号化された信号を符号化することにより、第2の測位信号を生成する符号化手段とを含む。
【0012】
好ましくは、測位信号生成装置は、第2の識別コードを格納する記憶手段をさらに備える。符号化手段は、記憶手段に格納されている第2の識別コードに基づいて、第2の測位信号を生成する。
【0013】
好ましくは、受信手段は、4つの測位信号を受信する。生成手段は、4つの第1の測位信号の各々に基づいて、各第1の測位信号の各々に応じた4つの第2の測位信号を生成する。発信手段は、4つの第2の測位信号をそれぞれ発信する。
【0014】
好ましくは、車両は、定められたルートを走行する自動車である。各測位信号生成装置は、ルートに沿って配置されている柱に設置されている。
【0015】
好ましくは、車両は、予め定められた敷地におけるルート上を走行する車両である。
【0016】
好ましくは、車両は、鉄道の車両である。各測位信号生成装置は、鉄道の架線を支持するための柱に設置されている。
【0017】
好ましくは、鉄道の架線を支持するための柱は、屋外に配置されている。
【0018】
好ましくは、各測位信号生成装置間の距離は、発信手段により発信される信号が届く範囲を下回る。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る測位信号発信システムによると、定められたルート上を走行する車両は、測位信号を受信することにより、位置情報を取得することができる。したがって、当該位置情報に基づいて、車両の位置を特定することが可能になる。
【0020】
また、本発明に係る測位信号発信システムによると、車両は、定められたルート上においては位置情報の取得が可能になるため、走行する車両の位置情報をシームレスに取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0022】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る測位信号発信システムについて説明する。図1は、測位信号発信システムを実現するための測位信号発生装置の一態様であるGPS信号発生装置100,102,104の使用態様を表わす図である。なお、説明の簡略化のため、GPS信号発生装置100について説明するが、当該説明は、GPS信号発生装置102,104についても該当する。
【0023】
GPS信号発生装置100、102,104は、鉄道の架線の鉄柱に取り付けられている。具体的には、GPS信号発生装置100は、架線の鉄柱110のビームに取り付けられている。車両140は、たとえば鉄道の車両である。車両140は、GPS信号を受信できるアンテナ142を備える。したがって、本実施の形態においては、定められたルートとは、鉄道の路線に相当する。
【0024】
なお、定められたルート上を運行する車両は、鉄道の車両に限られない。たとえば、工場その他の敷地内を走行する公共輸送以外の目的に使用される車両であってもよい。あるいは、路線バスであってもよい。路線バスの場合、以下のGPS信号発生装置100はたとえば交差点の信号機の支柱その他の部位、すなわちGPS信号を恒常的に受信可能な部位に敷設される。
【0025】
GPS信号発生装置100は、GPS衛星150,152,154,156からGPS信号を受信する機能と出力する機能とを有するGPS受信装置(後述する)から、信号の入力を受ける。なお、GPS信号発生装置100が受信する信号は、図1に示されるように、4つの衛星から送信される信号とは限らない。GPS信号発生装置100は、たとえば3つの衛星から信号を受信してもよい。また、GPS信号発生装置100が受信する衛星は、いわゆる暦に応じて異なる。したがって、GPS信号発生装置100は、当該暦に応じて定められる受信可能な衛星の信号を受信する。当該暦をあらわすデータは、GPS信号発生装置100に予め格納されている。
【0026】
さらに、GPS信号発生装置100は、各GPS衛星から送信された信号を復号化するための識別コードを用いて復号化する。GPS信号発生装置100は、各GPS衛星についての識別コードとは異なる識別コードを用いて、復号化された信号を符号化することにより、GPS信号と同一の構成である信号(擬似的なGPS信号)を生成する(PRN35、PRN36、PRN37、PRN38)。GPS信号発生装置100が擬似的なGPS信号を出力すると、当該信号は、アンテナを介してそれぞれ発信される。
【0027】
GPS信号発生装置100による送信可能範囲は、図1において範囲120である。また、同様の構成および機能を有するGPS信号発生装置102による送信可能範囲は、範囲122である。ここで、GPS信号発生装置100,102のそれぞれの送信可能範囲は、たとえば架線の鉄柱110,112間の距離に基づいて定められる。すなわちこれらの鉄柱の間において、GPS信号発生装置100および102のいずれかにより発信された信号が受信できない範囲が生じない程度に、各装置による送信範囲は定められる。したがって、係る鉄柱の間に敷設された線路を走る車両140は、確実にいずれかのGPS信号発生装置により送信された信号を受信することができる。
【0028】
また、たとえばトンネル160がある場合、トンネル160の内部において同様に鉄柱114にGPS信号発生装置104を設置してもよい。この場合、GPS衛星からの信号が受信しにくい場合には、トンネル160の外側に受信装置を配置し、当該受信装置により受信された信号をトンネル160の内部に伝送してもよい。
【0029】
図1を再び参照して、PRNコード35,36,37,38は、それぞれ予め定められた識別コードにより符号化された擬似的なGPS信号を表わす。これらの信号は、GPS衛星150から156により送信されるGPS信号に含まれる識別コードとは全く異なるコードを有する。またGPS信号発生装置100,102,104は、それぞれ図1に示されるように擬似的なGPS信号を発信する。
【0030】
車両140は、擬似的なGPS信号を受信可能なように構成されたGPS受信装置(図示しない)を備える。このGPS受信装置は、擬似的なGPS信号を復調するために予め定められたコードパターンを記憶している。GPS受信装置は、当該コードパターンに基づいてアンテナ142により受信された信号を復調(再現)する。GPS受信装置は、復調された信号に基づいて、位置情報を算出する。この算出は、たとえばGPS受信装置が予め保有する位置データを用いて行なわれる。このように、車両140における位置情報は、本実施の形態に係るGPS信号発生装置100,102,104が有するコードと同一のコードを用いて実現される。なお、GPS受信装置のハードウェア構成は周知であるため、ここでは、その説明は繰り返さない。
【0031】
また、車両140が信号の中継器(いわゆるリピータ)と発信機を有する場合には、乗客に測位信号を提供することもできる。たとえば車両140に存在する端末(たとえば乗客が保有する携帯電話)が後述する機能を備える場合には、車両140の走行中に同一の識別コードを有する信号を継続して受信することができる。
【0032】
この場合、車両140の走行中であっても、当該端末は、位置情報をその信号に基づいて算出する。この場合、たとえば乗客が携帯電話を操作してダイヤル発信した場合に、発信信号に位置情報を付与して送信することができる。この信号を受信する相手は、受信信号に含まれる位置情報に基づいて、乗客の場所を特定することができる。また、走行中の車両140の携帯電話から、位置情報を有する信号が継続して発信される場合には、当該信号の受信者は、その携帯電話の位置をトラッキングすることができる。
【0033】
係る端末の動作は、上記の処理を実行するための回路を予め構成することによりハードウェアの動作として実現することができる。あるいは、各処理を実行するプログラムプロダクトをメモリに記憶させておき、端末が有するCPUに当該プログラムプロダクトを実行させることによっても実現することができる。
【0034】
図2を参照して、本実施の形態に係るGPS信号発生装置100,102,104の接続態様について説明する。図2は、各GPS信号発生装置とGPS受信装置との接続関係を概念的に表わす図である。
【0035】
GPS信号発生装置100は、GPS受信装置200に接続されている。GPS受信装置200には、GPSアンテナ230が接続されている。GPS信号発生装置100の出力側には、リピータ210が接続されている。リピータ210には、アンテナ220が接続されている。
【0036】
GPS受信装置200は、予め準備されたコードパターンに基づいて、GPS衛星から信号を受信する。コードパターンは、GPS信号を受信するためのデータとして予め定められたビット配列を有するコードをいう。このコードパターンは、たとえば予め入力されてもよいし、GPS衛星から最初に受信した信号から取得されてもよい。その信号は、GPS信号発生装置100に送出される。GPS信号発生装置100は、その信号と前述のコードパターンとは別のコードパターンを用いて符号化することにより、擬似的なGPS信号を生成する。GPS信号発生装置100は、その信号をリピータ210に送出する。
【0037】
アンテナ220は、供給される信号の強度に応じて予め定められた電波の送信可能範囲120を有する。したがって、GPS信号発生装置100がリピータ210を介して擬似的に生成したGPS信号を発信すると、その信号は、送信可能範囲120の間において伝播される。
【0038】
なお、GPS受信装置200とGPS信号発生装置100とリピータ200とアンテナ220とは、別々に構成されていなくてもよく、一体として構成されていてもよい。
【0039】
同様に、GPS信号発生装置102は、GPSアンテナ232が接続されたGPS受信装置202に接続され、GPS信号の入力を受ける。GPS信号発生装置102は、出力側に、リピータ212が接続されている。リピータ212には、アンテナ222が接続されている。GPS信号発生装置104の接続関係も同様である。
【0040】
図3を参照して、本実施の形態に係るGPS信号発生装置100について説明する。図3は、GPS信号発生装置100のハードウェア構成を概念的に表わす図である。
【0041】
GPS信号発生装置100は、入力I/F(Interface)820と、CPU(Central Processing Unit)900と、メモリ930と、GPS信号生成部300と、クロック842と、出力I/F130とを含む。
【0042】
入力I/F820は、外部からの信号の入力を受け付ける。たとえば、ケーブル(図示しない)が入力I/F820に接続されている場合には、入力I/F820は、そのケーブルを介して信号の入力を受ける。あるいは、入力I/F820が受信アンテナと信号受信装置とによって実現される場合には、入力I/F820は、電波の形で信号の入力を受けることになる。
【0043】
CPU900は、予め準備されたデータを格納するためのメモリ(図示しない)と、予め定められた処理を実行するためのプロセッサ(図示しない)とを含む。CPU900は、GPS信号発生装置100を構成する他の要素の動作を制御する。当該動作は、たとえばメモリ930へのデータの格納あるいはメモリ930からのデータの読み出し、外部からの信号入力を受けて当該信号に応じた処理の実行、GPS信号生成部300の動作等を含む。
【0044】
クロック842は、GPS信号発生装置100の内部時刻を計測して、時刻データをCPU900に出力する。CPU900が、外部から入力されるGPS信号に含まれる時刻データに基づいてクロック842の時刻を補正する機能を有する場合には、クロック842は、その時刻データに応じて補正される。
【0045】
GPS信号生成部300は、GPS信号発生装置100に入力されるGPS信号と予め格納されているデータとに基づいて擬似的なGPS信号を生成する。ここで擬似的なGPS信号とは、GPS衛星から送出される信号と同一の構成を有し、そして当該GPS信号に含まれる当該信号の送信元(たとえばGPS衛星)を識別するための識別番号とは異なる番号を有するものをいう。したがって、擬似的なGPS信号がGPS受信機能を有する装置(たとえば携帯電話)によって受信されると、その装置は、位置情報を算出するための処理を実行することができる。
【0046】
出力I/F130は、GPS信号生成部300から送出された信号の入力を受ける。出力I/F130は、通信ケーブル(図示しない)を介して、リピータ(図示しない)に接続される。当該リピータは、発信機を含む。したがって、擬似的なGPS信号が出力I/F130から送出されると、その信号は、リピータの発信機から発信される。
【0047】
メモリ930は、GPS信号発生装置100の動作を制御するためのプログラム、データ等を格納する。当該プログラムは、たとえばGPS信号発生装置100の作動状態を定期的に報告するための通信プログラム、あるいは、外部から入力される指令に応じて予め定められた処理を実行するプログラム等を含む。当該処理は、たとえば保守のための検査処理、後述するデータを更新するための処理等を含む。データは、たとえばGPS信号発生装置100の動作履歴等を含む。動作履歴は、たとえば受信した信号の送信元であるGPS衛星を識別する情報、受信日時、送信日時等を含む。識別する情報は、たとえばC/A(Coarse and Access)コードであるがその他の符号であってもよい。
【0048】
図4を参照して、本実施の形態に係るGPS信号生成部300の構成について説明する。図4は、GPS信号生成部300の機能的構成を表わすブロック図である。
【0049】
GPS信号生成部300は、入力部310と、メモリ400と、擬似信号生成部330と、出力部340とを含む。入力部310は、GPS信号発生装置100に入力されたGPS信号の入力を受け付ける。この信号は、メモリ400は、GPS信号生成部300の動作を制御するために必要なデータあるいは後述する擬似信号生成部330の処理に必要なデータを格納する。メモリ400は、たとえば不揮発性のメモリと揮発性のメモリとのいずれか、あるいはいずれをも含んでよい。メモリ400に格納されるデータについては後述する。
【0050】
擬似信号生成部330は、入力部310を介して入力される信号と、メモリ400から読み出されるデータとに基づいて、擬似的なGPS信号を生成する。すなわち、擬似信号生成部330は、実際のGPS信号と識別データとに基づいて擬似的なGPS信号を生成する。擬似的なGPS信号は、実際のGPS信号に含まれるGPS衛星を識別するためのデータと異なる識別データを有する。このようにすると、擬似的なGPS信号が受信装置によって受信されても、その信号は、実際のGPS衛星からの信号とは認識されない。したがって、受信装置による誤認を防止することができる。
【0051】
また、上記識別データは、予めGPS衛星の識別データとは異なるデータとして設定されるデータである。したがって、複数のGPS信号発生装置100を構成する際に予め初期データとして設定することにより、同一の当該識別データを複数のGPS信号発生装置100の各々に対して割り当てることができる。このようにすると、受信装置は、常に、同一の信号発信元から送出された信号として、当該擬似的なGPS信号を認識することができる。したがって、擬似的なGPS信号に基づいて算出される位置情報が当該受信装置によって発信される場合、その装置のトラッキングを容易にすることができる。
【0052】
出力部340は、擬似信号生成部330によって生成された信号を、GPS信号生成部300の外部に対して出力する。出力された信号は、配線により接続されている出力I/F130に送出される。
【0053】
GPS信号生成部300は、たとえば集積回路として1つの基板に形成される。あるいは、GPS信号生成部300は、各機能を実現するためのプログラムとデータとが格納されているメモリと、当該プログラムとデータとに基づいて後述する各処理を実行するためのCPUその他の演算装置とによって、実現してもよい。
【0054】
図5を参照して、GPS信号生成部300のデータ構造について説明する。図5は、GPS信号生成部300が備えるメモリ400におけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。
【0055】
メモリ400は、データを格納するためのデータエリア410〜470を含む。GPS信号発生装置100が設置されている位置の情報は、データエリア410に格納されている。GPS信号発生装置100の作動が開始された時刻情報は、データエリア420に格納されている。
【0056】
擬似信号生成部330が擬似的なGPS信号を生成するためのデータ、すなわち擬似航法メッセージは、データエリア430に格納されている。擬似航法メッセージは、たとばアルマナックデータを含む。ここで、擬似的なGPS信号とは、GPS衛星により送信されるGPS信号の構成と同様の構成を有する信号をいう。擬似航法メッセージとは、実際のGPS信号に含まれる航法メッセージと同様の構成を有するデータをいう。
【0057】
擬似的なGPS信号に含まれる送信元を識別するための各識別コードは、それぞれデータエリア440〜470に格納されている。たとえば第1の衛星の識別コードとして「PRN35」は、データエリア440に格納されている。同様に、第2の衛星の識別コードとして「PRN36」は、データエリア450に格納されている。第3の衛星の識別コードとして「PRN37」は、データエリア460に格納されている。第4の衛星の識別コードとして「PRN38」は、データエリア470に格納されている。
【0058】
なお、上記のデータはあくまで例示のためのものであって、識別コードはこれらに限られない。すなわち、データエリア440〜470に格納されるデータは、実際のGPS信号に含まれる識別コード(すなわちGPS信号を実際に送出する各衛星を識別するためのコード)と異なるデータであればよい。
【0059】
また、本実施の形態においては、4つの擬似的なGPS信号が生成される態様が説明されているが、生成される信号の数は、4つに限られない。たとえば3つであってもよい。この場合、3つの擬似的なGPS信号を生成するために必要な識別データは、3つとなる。
【0060】
図6を参照して、本実施の形態に係るGPS信号発生装置100が発信する信号について説明する。図6(A)〜(D)は、それぞれGPS信号生成部300により生成された擬似的なGPS信号の構造を概念的に表わす図である。
【0061】
GPS信号生成部300が擬似的なGPS信号の生成のために予め定められた信号生成処理を実行すると、実際のGPS衛星により送出される信号と同一の構成を有する信号が出力される。ここで、擬似的なGPS信号と実際の信号との相違は、前述のように、送信元を識別するためのデータとして、実際の衛星を識別するデータとは全く異なるデータが使用されていることである。各信号は、C/Aコードと、航法メッセージとを含む。航法メッセージは、たとえばアルマナックを含む。
【0062】
なお、図6に示される例は、4つの信号が含まれる場合を表わしているが、3つの擬似的な信号が生成されてもよい。
【0063】
図7を参照して、GPS信号発生装置100の制御構造について説明する。図7は、GPS信号発生装置100の擬似信号生成部330が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。当該手順は、たとえば、各処理を実行するための回路その他のハードウェアにより実現される。あるいは、各処理をソフトウェアの実行として実現してもよい。この場合、各処理は、たとえばCPUが当該ソフトウェアを実行することにより、実現される。
【0064】
ステップS710にて、擬似信号生成部330は、実際に受信されたGPS信号の入力を受け付ける。このGPS信号は、たとえば4つのGPS衛星からそれぞれ発信されたGPS信号が受信されたものである。
【0065】
ステップS720にて、擬似信号生成部330は、入力されたGPS信号に基づいて、擬似的なGPS信号を生成する。4つのGPS信号が入力された場合には、4つの擬似的なGPS信号が生成される。
【0066】
ステップS730にて、擬似信号生成部330は、それぞれの擬似GPS信号を出力する。各信号は、出力部340を介して信号発生装置300の外部に送出される。擬似GPS信号は、出力I/F130によって、ケーブルに接続されているリピータ210に送信される。リピータ210から送出される擬似的なGPS信号は、アンテナ220より発信される(図2)。
【0067】
これにより、たとえば列車がアンテナ220の送信可能範囲120を通過する場合、列車は、擬似的なGPS信号を受信して、位置情報を算出することができる。また、列車が送信装置(図示しない)を使用して、その位置情報を送信することにより、列車の運行を管理するための制御センタは、各車両の位置を容易に特定することができる。
【0068】
以上のようにして、本発明の実施の形態に係る測位信号発信システムによると、実際のGPS信号を受信してその信号に基づいて擬似的なGPS信号が生成され、その信号が発信される。擬似的な信号が発信される範囲は、予め定められたルート上を運行する車両(たとえば路線バス、あるいは鉄道(工場内を走行する鉄道等を含む)の線路を含む範囲である。擬似的なGPS信号は、実際のGPS衛星を識別するデータとは異なるデータを含む。
【0069】
このようにすると、走行中の車両は、当該範囲を走行する際に、擬似的なGPS信号を受信することができるため、その信号に基づいて場所を特定することができる。
【0070】
また、列車が、たとえばトンネル、高層建築物その他電波が反射しやすい場所以外を走行しているとき、当該列車は、マルチパスなどの影響を受けない測位信号を受信することができる。また、その信号の強度は、衛星から直接発信される信号よりも強く出力され得る。したがって、このような場合には、列車の位置情報の精度の低下を防止することができる。
【0071】
なお、上述の実施の形態においては、GPS受信装置200とGPS信号発生装置100とリピータ210とは別々に構成されているが(図2参照)、1つの装置として構成されてもよい。係る場合、測位信号発生装置100は、アンテナを介して実際のGPS信号を受信するための受信回路と、その信号に基づいて生成された擬似的な信号を発信するための発信回路とをさらに備えることになる。
【0072】
また、GPS信号発生装置100は、各鉄柱のすべてに設置されなくてもよい。たとえばGPS信号発生装置100から発信される電波の届く範囲が鉄道の路線上において漏れなく実現される場合には、GPS信号発生装置100は、数本の鉄柱おきに設置されてもよい。
【0073】
また、本実施の形態においては、GPS信号発生装置が設置される場所として鉄道用架線の鉄柱が示されているが、設置場所は、これに限られない。たとえば道路において、信号の鉄柱にGPS信号発生装置が設置されてもよい。特に、高層ビルが林立する都市部においては、各信号機に装着されているGPS信号発生装置による信号に基づいて位置情報を算出することができる。この場合も、その受信端末が発信動作を行なった場合に、位置情報を併せて送信することが可能になるため、たとえば緊急通報などにおいても、発信場所を確実に通知することができる。
【0074】
また、本実施の形態においては、GPS信号発生装置は実際のGPS信号が受信可能な場所に配置されているが、実際のGPS信号を直接受信可能な場所に配置されなくてもよい。たとえば地下鉄の路線に沿って配置されてもよい。この場合、実際のGPS信号を受信可能な受信装置から伝送された信号に基づいて、擬似的なGPS信号が生成されることになる。これにより、例えば地下鉄の線路上における位置を通知することができる。
【0075】
また、カーナビゲーションシステムを備える自動車において、携帯電話のGPS受信機能が走行中の自動車では使用できない場合には、当該カーナビゲーションシステムに、本実施の形態に係るGPS信号発生装置100を装着してもよい。このようにすると、たとえば走行中であっても、カーナビゲーションシステムからの情報に限られることなく、携帯電話の発信者の位置を通知することができる。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態に係る測位信号発信システムを実現するGPS信号発生装置の使用態様を表わす図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るGPS信号発生装置とGPS受信装置との接続関係を概念的に表わす図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るGPS信号発生装置のハードウェア構成を概念的に表わす図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るGPS信号生成部の機能的構成を表わすブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るGPS信号生成部が備えるメモリにおけるデータの格納の一態様を概念的に表わす図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るGPS信号発生装置が発信する信号の構造を概念的に表わす図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るGPS信号発生装置の擬似信号生成部が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
100,102,104 GPS信号発生装置、110,112,114 鉄柱、130 出力I/F、150,152,154,156 GPS衛星、140 車両、142 アンテナ、160 トンネル、200 GPS受信装置、144,210,212 リピータ、220,222 アンテナ、300 GPS信号生成部、310 入力部、330 擬似信号生成部、340 出力部、820 入力I/F、842 クロック、900 CPU、930 メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定められたルート上を運行する車両と、
前記ルートに沿って配置されている複数の測位信号生成装置とを備え、各前記測位信号生成装置は、
少なくとも3つの衛星から、測位のためのデータが含まれる第1の測位信号をそれぞれ受信する受信手段を含み、それぞれの前記第1の測位信号は、前記第1の測位信号を発信した前記衛星を識別するための第1の識別コードにより符号化されており、
前記第1の測位信号に基づいて、前記第1の測位信号と異なる第2の測位信号を生成する生成手段を含み、前記第2の測位信号は、前記第1の識別コードと異なる第2の識別コードにより符号化されており、
前記第2の測位信号を発信する発信手段を含み、
前記車両は、
前記第2の測位信号を受信するための受信手段と、
前記第2の測位信号に基づいて位置情報を算出する算出手段と、
前記位置情報を発信する情報発信手段とを含む、測位信号発信システム。
【請求項2】
定められたルート上を運行する車両に向けて測位のための信号を発信するための測位信号発信システムであって、前記車両は前記信号を受信して前記車両の内部に発信し、前記測位信号発信システムは、前記ルートに沿って配置されている複数の測位信号生成装置を備え、各前記測位信号生成装置は、
少なくとも3つの衛星から、測位のためのデータが含まれる第1の測位信号をそれぞれ受信する受信手段を含み、それぞれの前記第1の測位信号は、前記第1の測位信号を発信した前記衛星を識別するための第1の識別コードにより符号化されており、
前記第1の測位信号に基づいて、前記第1の測位信号と異なる第2の測位信号を生成する生成手段を含み、前記第2の測位信号は、前記第1の識別コードと異なる第2の識別コードにより符号化されており、
前記第2の測位信号を発信する発信手段を含む、測位信号発信システム。
【請求項3】
前記受信手段は、符号化された前記第1の測位信号を受信し、
前記生成手段は、
前記符号化された第1の測位信号を復号化する復号化手段と、
前記第2の識別コードに基づいて前記復号化された信号を符号化することにより、前記第2の測位信号を生成する符号化手段とを含む、請求項2に記載の測位信号発信システム。
【請求項4】
前記測位信号生成装置は、前記第2の識別コードを格納する記憶手段をさらに備え、
前記符号化手段は、前記記憶手段に格納されている第2の識別コードに基づいて、前記第2の測位信号を生成する、請求項3に記載の測位信号発信システム。
【請求項5】
前記受信手段は、4つの測位信号を受信し、
前記生成手段は、4つの前記第1の測位信号の各々に基づいて、各前記第1の測位信号の各々に応じた4つの前記第2の測位信号を生成し、
前記発信手段は、4つの前記第2の測位信号をそれぞれ発信する、請求項2に記載の測位信号発信システム。
【請求項6】
前記車両は、前記ルートを走行する自動車であり、
各前記測位信号生成装置は、前記ルートに沿って配置されている柱に設置されている、請求項2に記載の測位信号発信システム。
【請求項7】
前記車両は、予め定められた敷地における前記ルート上を走行する車両である、請求項2に記載の測位信号発信システム。
【請求項8】
前記車両は、鉄道の車両であり、
各前記測位信号生成装置は、前記鉄道の架線を支持するための柱に設置されている、請求項2に記載の測位信号発信システム。
【請求項9】
前記鉄道の架線を支持するための柱は、屋外に配置されている、請求項8に記載の測位信号発信システム。
【請求項10】
各前記測位信号生成装置間の距離は、前記発信手段により発信される信号が届く範囲を下回る、請求項2に記載の測位信号発信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−177904(P2006−177904A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374144(P2004−374144)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【出願人】(503107484)測位衛星技術株式会社 (15)
【Fターム(参考)】