説明

測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラム

【課題】測位の命令を受けてから測位を完了するまでの時間を短縮することができる測位装置等を提供すること。
【解決手段】位置情報衛星からの位置関連信号に基づいて、現在位置の測位を行う測位装置40であって、通信基地局を介して通信するための通信手段と、接続中の通信基地局である接続中基地局を判断する接続中基地局判断手段と、接続中基地局が変更したか否かを判断する接続中基地局変更判断手段と、接続中基地局変更判断手段の判断結果に基づいて、位置関連信号を受信する接続中基地局変更時位置関連信号受信手段と、接続中基地局変更時位置関連信号受信手段によって受信した位置関連信号に基づいて、位置情報衛星の衛星軌道を示す衛星情報を生成する衛星情報生成手段と、衛星情報を格納する衛星情報格納手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報衛星からの信号を利用する測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星航法システムである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている。
このGPS受信機は、GPS衛星の軌道を示す衛星情報(概略衛星軌道情報:アルマナック、精密軌道情報:エフェメリス)に基づいて、GPS衛星からの信号を受信し、各GPS衛星とGPS受信機の距離(擬似距離)を算出する。そして、GPS受信機は、算出した擬似距離に基づいて、GPS受信機の位置を測位するようになっている。
従って、GSP受信機による測位のためには、上述の衛星情報が必要である。そして、
衛星情報を取得するための時間を短縮するために、GPS受信機自身がGPS衛星からの信号から衛星情報を取得するのではなくて、衛星情報を保持する外部装置から衛星情報を取得する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−74826号公報(図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のシステムにおいては、GPS受信機は、測位のたびに衛星情報を取得する必要があるため、GPS受信機が測位の命令を受けてから測位を完了するまでの時間が長くなる場合があるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、測位の命令を受けてから測位を完了するまでの時間を短縮することができる測位装置、測位装置の制御方法、測位装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、位置情報衛星からの位置関連信号に基づいて、現在位置の測位を行う測位装置であって、通信基地局を介して通信するための通信手段と、接続中の前記通信基地局である接続中基地局を判断する接続中基地局判断手段と、前記接続中基地局が変更したか否かを判断する接続中基地局変更判断手段と、前記接続中基地局変更判断手段の判断結果に基づいて、前記位置関連信号を受信する接続中基地局変更時位置関連信号受信手段と、前記接続中基地局変更時位置関連信号受信手段によって受信した前記位置関連信号に基づいて、前記位置情報衛星の衛星軌道を示す衛星情報を生成する衛星情報生成手段と、前記衛星情報を格納する衛星情報格納手段と、を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記接続中基地局変更判断手段によって、前記接続中基地局が変更したか否かを判断することができる。
そして、前記測位装置は、前記接続中基地局変更時位置関連信号受信手段によって、前記位置関連信号を受信することができる。
さらに、前記測位装置は、前記衛星情報生成手段によって、前記接続中基地局変更時位置関連信号受信手段によって受信した前記位置関連信号に基づいて、前記位置情報衛星の衛星軌道を示す衛星情報を生成することができ、前記衛星情報格納手段に前記衛星情報を格納することができる。
【0007】
すなわち、前記測位装置は、測位を行うか否かにかかわらず、前記接続中基地局が変更した場合には、前記位置情報衛星から前記位置関連信号を受信して前記衛星情報を生成する。そして、その新たに生成した最新の前記衛星情報を前記衛星情報格納手段に格納する。
したがって、測位を行うときには、前記衛星情報格納手段に格納している前記衛星情報を使用して測位を行うことができる。
このため、測位時に、衛星情報を更新する必要性を判断したり、衛星情報を外部から取得する必要がない。
これにより、測位の命令を受けてから測位を完了するまでの時間を短縮することができる測位装置を提供することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記接続中基地局の位置を、測位のための初期位置情報として格納する初期位置情報格納手段を有することを特徴とする測位装置である。
【0009】
第2の発明の構成によれば、前記接続中基地局の位置を、測位のための初期位置情報として前記初期位置情報格納手段に格納する。前記接続中基地局は、前記測位装置が現在接続中の前記通信基地局であるから、他の前記通信基地局の位置よりも、前記測位装置の実際の位置に近い。このため、前記接続中基地局の位置を前記初期位置情報として使用する合理性は大きい。
そして、上述のように、前記接続中基地局変更判断手段によって、前記接続中基地局が変更したか否かを判断することができるから、前記接続中基地局が変更した場合には、その変更後の前記接続中基地局の位置を前記初期位置情報として格納する。
このため、前記測位装置は、測位を行うか否かにかかわらず、前記初期位置情報を常に最新の情報に更新して前記初期位置情報格納手段に格納している。
これにより、前記測位装置は、測位時に新たに前記初期位置情報を取得することなく、最新の前記初期位置情報を使用して、測位の精度を向上させることができる。
【0010】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記位置情報衛星が前記位置関連信号を発信する発信周波数と、前記位置情報衛星と前記測位装置との相対移動によって生じるドップラー周波数と、前記接続中基地局変更時位置関連信号受信手段によって受信した前記位置関連信号の受信周波数とに基づいて、前記測位装置の同期周波数のずれであるドリフトを示すドリフト情報を生成するドリフト情報生成手段と、前記ドリフト情報を格納するドリフト情報格納手段と、を有することを特徴とする測位装置である。
【0011】
第3の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記ドリフト情報生成手段によって前記ドリフト情報を生成することができ、前記ドリフト情報格納手段に前記ドリフト情報を格納することができる。ここで、前記ドリフト情報は、最低1個の前記位置情報衛星からの前記位置関連信号と、その前記位置情報衛星と前記測位装置との相対移動によって生じるドップラー周波数と、その前記位置情報衛星からの前記位置関連信号の前記受信周波数に基づいて生成することができる。そして、前記ドリフト情報は、前記測位装置側の同期周波数のずれであるから、すべての前記位置情報衛星からの前記位置関連信号を受信するために適用することができる。
そして、前記測位装置は、前記接続中基地局が変更したと判断した場合に前記ドリフト情報を生成するから、前記測位装置は、測位を行うか否かにかかわらず、前記ドリフト情報を常に最新の情報に更新して前記ドリフト情報格納手段に格納している。
これにより、前記測位装置は、測位時に新たに前記ドリフト情報を生成することなく、最新の前記ドリフト情報を使用して、迅速に前記位置関連信号を受信することができる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明の構成において、前記ドリフト情報生成手段は、少なくとも3個以上の前記位置情報衛星からの前記位置関連信号に基づいて、前記測位装置の現在位置を測位するドリフト情報生成用測位手段を含むことを特徴とする測位装置である。
【0013】
上述のように、前記ドリフト情報は、1個の前記位置情報衛星から前記位置関連信号を受信することで生成することができる。
ただし、前記測位装置の現在位置を測位して、その測位位置に基づいて前記ドップラー周波数を算出すると、前記測位装置の例えば、前回の測位位置等の概略位置に基づいて前記ドップラー周波数を算出する場合に比べて、前記ドップラー周波数の精度が向上するから、前記ドリフト情報の精度も向上させることができる。
この点、第4の発明の構成によれば、前記ドリフト情報生成手段は、少なくとも3個以上の前記位置情報衛星からの前記位置関連信号に基づいて、前記測位装置の現在位置を測位するドリフト情報生成用測位手段を含むから、前記ドリフト情報の精度を向上させることができる。
これにより、前記測位装置は、測位時には、前記位置関連信号を一層迅速に受信することができる。
【0014】
前記目的は、第5の発明によれば、位置情報衛星からの位置関連信号に基づいて、現在位置の測位を行う測位手段と、通信基地局を介して通信するための通信手段と、を有する測位装置が、接続中の前記通信基地局である接続中基地局を判断する接続中基地局判断ステップと、前記測位装置が、前記接続中基地局が変更したか否かを判断する接続中基地局変更判断ステップと、前記測位装置が、前記接続中基地局変更判断ステップにおける判断結果に基づいて、前記位置関連信号を受信する接続中基地局変更時位置関連信号受信ステップと、前記測位装置が、前記接続中基地局変更時位置関連信号受信ステップにおいて受信した前記位置関連信号に基づいて、前記位置情報衛星の衛星軌道を示す衛星情報を生成する衛星情報生成ステップと、前記測位装置が、前記衛星情報を格納する衛星情報格納ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法によって達成される。
【0015】
第5の発明の構成によれば、第1の発明の構成と同様に、測位の命令を受けてから測位を完了するまでの時間を短縮することができる。
【0016】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、位置情報衛星からの位置関連信号に基づいて、現在位置の測位を行う測位手段と、通信基地局を介して通信するための通信手段と、を有する測位装置が、接続中の前記通信基地局である接続中基地局を判断する接続中基地局判断ステップと、前記測位装置が、前記接続中基地局が変更したか否かを判断する接続中基地局変更判断ステップと、前記測位装置が、前記接続中基地局変更判断ステップにおける判断結果に基づいて、前記位置関連信号を受信する接続中基地局変更時位置関連信号受信ステップと、前記測位装置が、前記接続中基地局変更時位置関連信号受信ステップにおいて受信した前記位置関連信号に基づいて、前記位置情報衛星の衛星軌道を示す衛星情報を生成する衛星情報生成ステップと、前記測位装置が、前記衛星情報を格納する衛星情報格納ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る測位システム10を示す概略図である。
図1に示すように、測位システム10は、基地局20A,20B及び20Cを有する。基地局20A等は通信基地局の一例である。
【0019】
図1に示すように、測位システム10は、位置情報衛星である例えば、GPS衛星12a,12b,12c,12d及び12eからの位置関連信号である例えば、信号S1,S2,S3,S4及びS5に基づいて、現在位置の測位を行う測位装置である例えば端末40を有する。端末40は、端末GPS装置54によって、信号S1等を受信することができる。
また、端末40は、端末通信装置52によって、基地局20A等と接続し、基地局20A等を介して他の端末等(図示せず)と通信することができるようになっている。この端末通信装置52は、通信手段の一例である。
この端末40は例えば、携帯電話機、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistance等であるが、これらに限らない。
【0020】
基地局20A等はそれぞれのカバー範囲であるセルゾーンA,セルゾーンB,セルゾーンCにおいて、端末40等の通信の仲介を行うことができる。
例えば、端末40は、セルゾーンAに位置するときには基地局20Aと接続中であり、基地局20Aを介して他の端末等と通信を行う。
なお、本実施の形態とは異なり、GPS衛星12a等は、4個以下でもよいし、6個以上でもよい。
【0021】
(端末40の主なハードウエア構成について)
図2は端末40の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図2に示すように、端末40は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス42を有する。
このバス42には、CPU(Central Processing Unit)44、記憶装置46等が接続されている。記憶装置46は例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。
【0022】
さらに、このバス42には、各種情報等を入力するための入力装置48、端末通信装置52、端末GPS装置54、各種情報等を表示するための端末表示装置56が接続されている。
端末GPS装置54は、信号S1等(図1参照)と同期するための同期周波数の基礎となる周波数を生成する水晶発振器54aを含んでいる。この水晶発振器54aの振動数が、変化しないとすれば、端末GPS装置54が認識する信号S1等の受信周波数は、各GPS衛星12a等が信号S1等を発信する発信周波数と、各GPS衛星12a等と端末40の相対移動によって生じるドップラー周波数によって規定される。この発信周波数とドップラー周波数で規定される周波数を受信予定周波数と呼ぶ。
ところが、この水晶発振器54aの振動数は、温度によって変化する。そのため、発信周波数とドップラー周波数で規定される受信予定周波数と、端末40が認識する受信周波数のずれが生じる場合がある。このずれをドリフトと呼ぶ。
【0023】
(端末40の主なソフトウエア構成について)
図3は、端末40の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図3に示すように、端末40は、各部を制御する端末制御部100、図2の端末通信装置52に対応する端末通信部102、図2の端末GPS装置54に対応する端末GPS部104等を有する。
図3に示すように、端末40は、また、各種プログラムを格納する端末第1記憶部110、各種情報を格納する端末第2記憶部150を有する。
【0024】
図3に示すように、端末40は、端末第1記憶部110に、基地局判断プログラム112を格納している。基地局判断プログラム112は、端末制御部100が、接続中の基地局を判断するための情報である。すなわち、基地局判断プログラム112と端末制御部100は、接続中基地局判断手段の一例である。端末40が接続している例えば、基地局20Aは、接続中基地局の一例である。
端末制御部100は基地局判断プログラム112によって、例えば、接続中の基地局20Aを基地局20Aから送信される識別符号によって判断する。そして、端末制御部100は、基地局20Aを示す接続中基地局情報152を生成し、端末第2記憶部150に格納する。
【0025】
また、端末制御部100は基地局判断プログラム112によって、接続中の基地局である例えば、基地局20Aの位置を示す情報を、測位のための初期位置情報154として端末第2記憶部150に格納する。初期位置情報154は、初期位置情報の一例である。そして、端末第2記憶部150は、初期位置情報格納手段の一例である。
例えば、基地局20Aの位置は、基地局20Aからの信号に乗せられており、端末制御部100は基地局判断プログラム112によって基地局20Aからの信号を解析して、基地局20Aの位置を示す情報を取得する。
端末40が接続中の基地局20Aの位置は、端末40が接続していない基地局20Bや基地局20Cの位置よりも、端末40の実際の位置に近い。このため、基地局20Aの位置を端末40の概略位置を示す初期位置情報とする合理性は大きい。
【0026】
図3に示すように、端末40は、端末第1記憶部110に、基地局変更判断プログラム114を格納している。基地局変更判断プログラム114は、端末制御部100が、接続中の基地局が変更したか否かを判断するための情報である。すなわち、基地局変更判断プログラム114と端末制御部100は、接続中基地局変更判断手段の一例である。
端末制御部100は基地局変更判断プログラム112によって、例えば、端末40が接続している通信基地局が基地局20Aで継続しているか、基地局20Aから基地局20Bに変わったかを判断する。
なお、端末40が接続中の基地局20A等を判断することは、端末40が各基地局20A等のセルゾーンA等のいずれに位置しているかを判断することでもある。
【0027】
図3に示すように、端末40は、端末第1記憶部110に、衛星信号受信プログラム116を格納している。衛星信号受信プログラム116は、端末制御部100が上述の基地局変更判断プログラム114によって、接続中の基地局が変更したと判断した場合には、その判断結果に基づいて、GPS衛星12a等(図1参照)から信号S1等を受信するための情報である。すなわち、衛星信号受信プログラム116と端末制御部100は、接続中基地局変更時位置関連信号受信手段の一例である。
なお、接続中の基地局が変更した場合には、端末40は上述の接続中基地局判断プログラム112によって、その変更後の基地局を示す接続中基地局情報152及び変更後の基地局の位置を示す初期位置情報154を生成し、端末第2記憶部150に格納している。
【0028】
図3に示すように、端末40は、端末第1記憶部110に、衛星情報生成プログラム118を格納している。衛星情報生成プログラム118は、端末制御部100が上述の衛星信号受信プログラム116によって受信した信号S1等に基づいて、GPS衛星12a等の衛星軌道を示す端末側衛星情報156を生成するための情報である。端末側衛星情報156は、衛星情報の一例である。そして、衛星情報生成プログラム118と端末制御部100は、衛星情報生成手段の一例である。
端末制御部100は上述の衛星信号受信プログラム116によって信号S1等を受信すると、その信号S1等を解析して、測位システム10を構成するすべてのGPS衛星の概略の衛星軌道を示す情報(アルマナック)、及び、各GPS衛星12a等の精密な衛星軌道を示す情報(エフェメリス)を含む端末側衛星情報156を生成する。
端末制御部100は、生成した端末側衛星情報156を端末第2記憶部150に格納する。すなわち、端末第2記憶部150は、衛星情報格納手段の一例である。
【0029】
上述のように、端末40は、接続中の基地局が変更したか否かを判断することができるようになっている。
そして、端末40は、接続中の基地局が変更したと判断すると、信号S1等を受信することができるように構成されている。
さらに、端末40は、受信した信号S1等に基づいて、端末側衛星情報156を生成することができ、その端末側衛星情報156を端末第2記憶部150に格納することができるようになっている。
すなわち、端末40は、測位を行うか否かにかかわらず、接続中の基地局が変更した場合には、GPS衛星12a等から信号S1等を受信して端末側衛星情報156を生成することができるようになっている。そして、その新たに生成した最新の端末側衛星情報156を端末第2記憶部150に格納することができるようになっている。
したがって、測位を行うときには、端末第2記憶部150に格納している端末側衛星情報156を使用して測位を行うことができる。
このため、測位時に、端末側衛星情報156を更新する必要性を判断したり、衛星の軌道を示す情報を外部から取得する必要がない。
これにより、端末40は、測位の命令を受けてから測位を完了するまでの時間を短縮することができる。
【0030】
さらに、端末40は、接続中の基地局の位置を、初期位置情報154として端末第2記憶部150に格納する。そして、上述のように、端末40は、接続中の基地局が変更したか否かを判断することができるから、接続中の基地局が変更した場合には、その変更後の接続中の基地局の位置を初期位置情報154として格納する。
このため、端末40は、測位を行うか否かにかかわらず、初期位置情報154を常に最新の情報に更新して端末第1記憶部150に格納している。
これにより、端末40は、測位時に新たに初期位置情報を取得することなく、最新の初期位置情報154を使用して、測位の精度を向上させることができる。
【0031】
端末40は、測位時間を短縮するために、さらに以下の構成を有する。
すなわち、図3に示すように、端末40は端末第1記憶部110に、ドリフト情報生成プログラム120を格納している。ドリフト情報生成プログラム120は、端末制御部100が、各GPS衛星12a等が信号S1等を発信する発信周波数と、各GPS衛星12a等と端末40の相対移動によって生じるドップラー周波数と、上述の衛星信号受信プログラム116によって受信した各信号S1等の受信周波数とに基づいて、ドリフト情報158を生成するための情報である。すなわち、ドリフト情報生成プログラム120と端末制御部100は、ドリフト情報生成手段の一例である。
【0032】
ここで、例えば、GPS衛星12aの発信周波数は、約1.5ギガヘルツ(GHz)で既知であり、ドップラー周波数は、端末側衛星情報156に含まれるエフェメリスと初期位置情報154に示される端末40の概略位置によって計算できる。そして、発信周波数とドップラー周波数に基づいて、端末40が受信する例えば、信号S1の受信予定周波数を算出することができる。この受信予定周波数と、実際に端末40が信号S1を受信した受信周波数のずれを算出することによって、ドリフトを算出することができる。
【0033】
ドリフト情報158は、最低1個のGPS衛星12a等である例えば、GPS衛星12aからの信号S1と、そのGPS衛星12aと端末40との相対移動によって生じるドップラー周波数と、そのGPS衛星12aからの信号S1の受信周波数に基づいて生成することができる。このドリフト情報158は、端末40側の同期周波数のずれであるから、すべてのGPS衛星12a等からの信号S1等を受信するために適用することができる。
端末制御部100は、生成したドリフト情報158を端末第2記憶部150に格納する。
【0034】
上述のように、端末40は、ドリフト情報158を生成することができ、端末第2記憶部150にドリフト情報158を格納することができる。
そして、端末40は、接続中の基地局が変更したと判断した場合にドリフト情報158を生成するから、端末40は、測位を行うか否かにかかわらず、ドリフト情報158を常に最新の情報に更新して端末第2記憶部150に格納している。
端末40は、測位時には、上述の受信予定周波数に端末40のドリフトを加味した同期周波数で信号S1等を捕捉することができる。
これにより、端末40は、測位時に新たにドリフト情報158を生成することなく、最新のドリフト情報158を使用して、迅速に信号S1等を受信することができる。その結果、端末40は、測位の命令を受けてから測位を完了するまでの時間を短縮することができる。
【0035】
図3に示すように、端末40は端末第1記憶部110に、測位プログラム122を格納している。測位プログラム122は、端末制御部100が、端末側衛星情報156、初期位置情報154及びドリフト情報158に基づいて、端末40の現在位置の測位を行って測位位置情報160を生成するための情報である。
上述したように、端末側衛星情報156等は、端末40が測位を行うか否かに関わらず、端末40が接続中の基地局が変更したと判断した場合には、最新の情報に更新され、端末第2記憶部150に格納されている。
このため、端末40は、測位時には、端末第2記憶部150に更新しつつ格納されている最新の端末側衛星情報156等を使用して、迅速かつ精度良く、現在位置の測位を行うことができる。
端末制御部100は生成した、測位位置情報160を端末第2記憶部150に格納する。また、端末制御部100は、測位位置情報160を端末表示装置56(図2参照)に表示する。
【0036】
以上が本実施の形態に係る測位システム10の構成であるが、以下、その動作例を主に図4を使用して説明する。
図4は本実施の形態に係る測位システム10の動作例を示す概略フローチャートである。
図1に示すように、端末40は、基地局20Aと接続中であるという前提で、以下の説明をする。
【0037】
まず、端末40は、現在接続中の基地局20Aを判断する(ステップST1)。このステップST1は、接続中基地局判断ステップの一例である。ここで、端末40は、接続中の基地局20Aを示す接続中基地局情報152と基地局20Aの位置を示す初期位置情報154を生成し、端末第2記憶部150に格納する。
【0038】
続いて、端末40は、接続中の基地局20Aが、他の基地局に変更したか否かを判断する(ステップST2)。このステップST2は、接続中基地局変更判断ステップの一例である。
基地局40は、接続中の基地局20Aが他の基地局に変更していないと判断した場合には、引き続き、接続中の基地局20Aが他の基地局に変更していないかの判断を継続する。
これに対して、基地局40が、接続中の基地局20Aが他の基地局である例えば、基地局20Bに変更したと判断した場合には、GPS衛星12a等から信号S1等を受信する(ステップST3)。このステップST3は、接続中基地局変更時位置関連信号受信ステップの一例である。
【0039】
続いて、端末40は、端末側衛星情報156(図3参照)を生成する(ステップST4)。このステップST4は、衛星情報生成ステップの一例である。
続いて、端末40は、端末側衛星情報156を端末第2記憶部150(図3参照)に格納する(ステップST5)。このステップST5は、衛星情報格納ステップの一例である。
【0040】
続いて、端末40は、ドリフト情報158(図3参照)を生成し(ステップST6)、そのドリフト情報158を端末第2記憶部150に格納する(ステップST7)。
【0041】
上述のように、端末40は、初期位置情報154、端末側衛星情報156、ドリフト情報158を、接続中の基地局が変更するたびに更新している。
このため、端末40は、測位時に、端末側衛星情報156を更新する必要性を判断したり、衛星情報を外部から取得する必要がない。
これにより、端末40は、測位の命令を受けてから測位を完了するまでの時間を短縮することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態の測位システム10A(図1参照)について説明する。第2の実施の形態の測位システム10Aの構成は、上記第1の実施の形態の測位システム10と多くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0043】
図5は、第2の実施の形態の端末40Aの主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図5に示すように、端末40Aは、端末第1記憶部110に、ドリフト情報生成プログラム120Aを格納している。このドリフト情報生成プログラム120Aは、ドリフト情報生成用測位プログラム121を含む。ドリフト情報生成用測位プログラム121は、端末制御部100が、少なくとも3個以上のGPS衛星12a等(図1参照)からの信号S1等に基づいて、端末40Aの現在位置を測位するための情報である。すなわち、ドリフト情報生成用測位プログラム121と端末制御部100は、ドリフト情報生成用測位手段の一例である。
【0044】
上述のように、ドリフト情報158は、例えば、1個のGPS衛星12aから信号S1を受信することで生成することができる。
ただし、端末40Aの現在位置を測位して、その測位位置に基づいてドップラー周波数を算出すると、端末の概略位置に基づいてドップラー周波数を算出する場合と比べて、ドップラー周波数の精度が向上するから、ドリフト情報158の精度も向上させることができる。
この点、端末40Aの端末制御部100はドリフト情報生成用測位プログラム121によって、少なくとも3個以上のGPS衛星12a等からの信号S1等に基づいて、端末40Aの現在位置を測位する。そして、その測位位置に基づいて、各GPS衛星12a等からの信号S1等についてのドップラー周波数を算出する。このドップラー周波数は上述のように、端末の概略位置に基づいてドップラー周波数を算出する場合に比べて精度が高いから、ドリフト情報158の精度も向上させることができる。
これにより、端末40Aは、測位時には、信号S1等を一層迅速に受信することができる。
なお、端末40Aの端末制御部100がドリフト情報生成用測位プログラム121によって実施する測位は、ドリフト情報158を生成する目的であるから、端末表示装置56(図2参照)には表示しない。
【0045】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の接続中基地局判断ステップと、接続中基地局変更判断ステップと、接続中基地局変更時位置関連信号受信ステップと、衛星情報生成ステップと、衛星情報格納ステップ等を実行させるための測位装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような測位装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
【0046】
これら測位装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられるプログラム格納媒体は、例えばフロッピー(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Recordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewriterble)、DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスクあるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0047】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態の測位システム等を示す概略図である。
【図2】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図3】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図4】測位システムの動作例を示す概略フローチャートである。
【図5】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0049】
10,10A・・・測位システム、12a,12b,12c,12d,12e・・・GPS衛星、20A,20B,20C・・・基地局、40,40A・・・端末、54・・・端末GPS装置、54a・・・水晶発振器、112・・・基地局判断プログラム、114・・・基地局変更判断プログラム、116・・・衛星信号受信プログラム、118・・・衛星情報生成プログラム、120・・・ドリフト情報生成プログラム、121・・・ドリフト情報生成用測位プログラム、122・・・測位プログラム、152・・・接続中基地局情報、154・・・初期位置情報、156・・・端末側衛星情報、158・・・ドリフト情報、160・・・測位位置情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報衛星からの位置関連信号に基づいて、現在位置の測位を行う測位装置であって、
通信基地局を介して通信するための通信手段と、
接続中の前記通信基地局である接続中基地局を判断する接続中基地局判断手段と、
前記接続中基地局が変更したか否かを判断する接続中基地局変更判断手段と、
前記接続中基地局変更判断手段の判断結果に基づいて、前記位置関連信号を受信する接続中基地局変更時位置関連信号受信手段と、
前記接続中基地局変更時位置関連信号受信手段によって受信した前記位置関連信号に基づいて、前記位置情報衛星の衛星軌道を示す衛星情報を生成する衛星情報生成手段と、
前記衛星情報を格納する衛星情報格納手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記接続中基地局の位置を、測位のための初期位置情報として格納する初期位置情報格納手段を有することを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記位置情報衛星が前記位置関連信号を発信する発信周波数と、前記位置情報衛星と前記測位装置との相対移動によって生じるドップラー周波数と、前記接続中基地局変更時位置関連信号受信手段によって受信した前記位置関連信号の受信周波数とに基づいて、前記測位装置の同期周波数のずれであるドリフトを示すドリフト情報を生成するドリフト情報生成手段と、
前記ドリフト情報を格納するドリフト情報格納手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の測位装置。
【請求項4】
前記ドリフト情報生成手段は、少なくとも3個以上の前記位置情報衛星からの前記位置関連信号に基づいて、前記測位装置の現在位置を測位するドリフト情報生成用測位手段を含むことを特徴とする請求項3に記載の測位装置。
【請求項5】
位置情報衛星からの位置関連信号に基づいて、現在位置の測位を行う測位手段と、通信基地局を介して通信するための通信手段と、を有する測位装置が、接続中の前記通信基地局である接続中基地局を判断する接続中基地局判断ステップと、
前記測位装置が、前記接続中基地局が変更したか否かを判断する接続中基地局変更判断ステップと、
前記測位装置が、前記接続中基地局変更判断ステップにおける判断結果に基づいて、前記位置関連信号を受信する接続中基地局変更時位置関連信号受信ステップと、
前記測位装置が、前記接続中基地局変更時位置関連信号受信ステップにおいて受信した前記位置関連信号に基づいて、前記位置情報衛星の衛星軌道を示す衛星情報を生成する衛星情報生成ステップと、
前記測位装置が、前記衛星情報を格納する衛星情報格納ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項6】
コンピュータに、
位置情報衛星からの位置関連信号に基づいて、現在位置の測位を行う測位手段と、通信基地局を介して通信するための通信手段と、を有する測位装置が、接続中の前記通信基地局である接続中基地局を判断する接続中基地局判断ステップと、
前記測位装置が、前記接続中基地局が変更したか否かを判断する接続中基地局変更判断ステップと、
前記測位装置が、前記接続中基地局変更判断ステップにおける判断結果に基づいて、前記位置関連信号を受信する接続中基地局変更時位置関連信号受信ステップと、
前記測位装置が、前記接続中基地局変更時位置関連信号受信ステップにおいて受信した前記位置関連信号に基づいて、前記位置情報衛星の衛星軌道を示す衛星情報を生成する衛星情報生成ステップと、
前記測位装置が、前記衛星情報を格納する衛星情報格納ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−145245(P2006−145245A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332087(P2004−332087)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】