測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法
測定システムの1つ以上のパラメータを変更する方法が提供される。1つの方法には、システムを利用して、試料を分析し、システムの分類チャネルから、試料中の粒子集団に関する値を生成するステップが含まれる。この方法には、その集団に関する値が位置する、分類空間内の領域を識別するステップも含まれる。さらに、この方法は、その領域の1つ以上の特性を利用して、その集団に関する最適化分類領域を決定するステップも含まれる。この最適化分類領域には、所定のパーセンテージの前記集団に関する値が含まれる。最適化分類領域は、追加試料中の粒子の分類に利用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法に関する。実施態様のいくつかには、ある集団の粒子を分類するため、測定システムの1つ以上のパラメータを最適化する方法及びシステムに関するものもある。
【背景技術】
【0002】
下記の説明及び例は、このセクションに含まれているからという理由で、先行技術であるわけではない。
【0003】
一般に、フローサイトメータによって、フロー室を直線的に通過する際の、レーザで励起されたポリスチレン・ビーズの蛍光強度が測定される。システムによっては、4つの測定、すなわち、ビーズによって、励起光源に対して90度の角度で散乱される光のレベル測定、ビーズの「同一性」の確認または「分類」の決定を実施するために用いられる2つの蛍光測定、一般に、関心のある表面化学反応の検出及び/または定量化に用いられる第3の蛍光測定が行われる。3つの蛍光測定は、それぞれ、異なる波長で実施される。これらの及び他の任意の蛍光測定は、検出器と、その検出器に結合される他のコンポーネント(例えば、光学コンポーネント、電子コンポーネント等)を含む、システムの異なる「チャネル」(例えば、報告チャネル、分類チャネル)によって実施される。
【0004】
一例を挙げると、化学反応の蛍光測定は、光電子増倍管(PMT)の感光領域に、励起レーザの照射ゾーンを通過する際の、ビーズの像を光学的に投影することによって定量化される。PMTの出力は電流パルスであり、このパルスは、さらに、アナログ電子回路によって調整され、アナログ・ディジタル(A/D)変換器によってディジタル化される。A/D変換器から結果として得られたディジタル値は、さらに、ディジタル信号処理(DSP)アルゴリズムによって、ディジタル領域で調整される。ビーズ当りの最終結果は、ビーズ表面における化学反応にほぼ比例する単一の整数値である。
【0005】
テキサス州オースチンのLuminex Corp.製のLuminex 100システムのような、各フローサイトメータ・ベースのシステムによって、「典型的なフローサイトメータ計器」とはわずかに異なる方法で、粒子測定の結果(例えば、100領域LabMAP)が表示される。これらの表示の差は、ダイオード・レーザ、フォトダイオード、光フィルタ、データ処理に用いられる電子部品といった、システム・コンポーネントの多くに関する公差の累積結果である。すなわち、粒子は、粒子の分析中に発生した値と、分類空間(例えば、マップ)に配置された領域を比較することによって分類される。分類空間のある領域内に位置する値を有する粒子には、この領域に対応する分類が割り当てられる。従って、上述のシステムの累積公差を考慮に入れるため、さまざまな集団の分類に用いられる分類空間における領域のサイズは、さまざまな集団の値を含むのに必要なサイズより大きくされる。
【0006】
これらの領域を必要以上に大きくする結果、あるシステムと別のシステムとの間で粒子集団の分類が一致しなくなる。例えば、あるシステムでは、粒子集団の95%がある特定領域に属するものと分類され、その集団の0.5%が、別の領域に誤分類されることになるが、異なるシステムでは、この粒子集団の98%が正しく分類され、その集団が誤分類されるパーセンテージは少なくなる。従って、必要以上に大きい分類領域を利用すると、システム間の整合が悪くなる。しかし、例えば、生体試料の検定を実施する単一施設または機構において、複数の測定システムが利用される場合には、システム間の整合が望ましい。かくして、1つの測定システムを利用して得られた結果と異なる測定システムを利用して得られた結果を直接比較することが可能になる。
【0007】
明らかに、分類領域のサイズを縮小する方法の1つは、システムの累積公差を減少させることである。システムの累積公差を減少させる方法の1つは、極めて公差の制限されたコンポーネントを利用して、システムを製造することである。しかし、こうしたコンポーネントを用いると、これらのコンポーネントを調達する製造要員にかなりの重荷となる。さらに、厳しい公差の代償を払おうとして、綿密なアセンブリの試みを利用することも可能である。しかし、極めて公差の制限されたコンポーネントと同様、綿密なアセンブリの試みを利用すると、製造の複雑性及び困難性が増すことになる。従って、分類領域のサイズを縮小するために現在利用可能な方法によると、システムの製造時間が延長され、製造処理量が減少し、システムのコスト全体が増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、製造プロセスを複雑にし、製造時間を延長し、製造処理量を減少させ、システムのコスト全体を増大させることがないようにして、システムが、より高いシステム正確度とより高いシステム間均一性で粒子を分類できるように、分類領域のサイズを縮小することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法のさまざまな実施態様に関する下記説明は、決して、付属の請求項の内容を制限するものと解釈してはならない。
【0010】
本発明の実施態様の1つは、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法に関するものである。この方法には、測定システムを利用して試料を分析し、システムの分類チャネルから試料中の粒子集団に関する値を生成するステップが含まれている。この方法には、集団に関する値が位置する、分類空間内のある領域を識別するステップも含まれている。さらに、この方法には、その領域の1つ以上の特性を利用して、集団に関する最適化分類領域を決定するステップも含まれている。最適化分類領域には、所定のパーセンテージの集団に関する値が含まれている。最適化分類領域は、さらなる試料中の粒子の分類に利用することが可能である。
【0011】
実施態様によっては、最適化分類領域が、その領域の1つ以上の特性とは異なる、1つ以上の特性を有する場合がある。1つ以上の特性には、サイズ、形状、位置、または、それらのある組み合わせが含まれる。実施態様の1つにおいて、この方法には、分析ステップの前に、システムを較正するステップが含まれている。実施態様によっては、試料に、マップ較正試薬を含むことが可能である。それらの値は、線形単位または対数単位で表わすことが可能である。
【0012】
実施態様の1つにおいて、領域の1つ以上の特性に、その領域における値の平均、算術平均、ピーク、または、中央値と、その領域における値の標準偏差が含まれる。もう1つの実施態様では、最適化分類領域の中心が、その領域の値の中央値にいくつかの標準偏差を加えた値だけ中央値から離れた位置にくることになる。もう1つの実施態様では、最適化分類領域は、集団に関する値の中央値を取り巻く所定のサイズの境界によって形成される。実施態様によっては、最適化分類領域のサイズが、所定のパーセンテージの集団に関する値を含む最小サイズという場合もある。
【0013】
実施態様の1つでは、分類チャネルからの値に蛍光値が含まれる。異なる実施態様では、分類チャネルからの値に光散乱強度値が含まれる。他の実施態様では、分類チャネルからの値に粒子の体積測定値が含まれる。別の実施態様では、それらの値に、さまざまな値のある組み合わせ(例えば、蛍光値と光散乱強度値等)を含むことが可能である。
【0014】
場合によっては、試料に、1つ以上の追加粒子集団を含むことも可能である。こうした実施態様の1つでは、この方法は、1つ以上の追加集団に関して実施される。こうして、1つ以上の追加集団のそれぞれについて、最適化分類領域を決定することが可能である。もう1つのこうした実施態様では、この方法に、この集団と1つ以上の追加集団最適化領域を利用して、試料に含まれていなかった別の粒子集団に関する最適化分類領域を補間するステップを含むことが可能である。
【0015】
実施態様の1つでは、領域の1つ以上の特性に、上述のように、集団に関する値の平均、算術平均、ピーク、または、中央値を含み、かつ集団に関する標準偏差を含むことが可能である。こうした実施態様の1つでは、この方法に、1つ以上の特性のうちの少なくとも1つと、1つ以上の特性のうちのその少なくとも1つに関する所定の範囲を比較するステップを含むことが可能である。こうした実施態様には、比較ステップの結果に基づいて、システムの性能を評価するステップを含むことが可能である。領域の1つ以上の特性のうちの少なくとも1つが、所定の範囲外であれば、この方法の別のこうした実施態様には、システムに対して1つ以上の是正処置を施すべきか否かを判定するステップを含むことが可能である。
【0016】
もう1つの実施態様の場合、この方法には、最適化分類領域の1つ以上の特性と領域の1つ以上の特性を比較するステップを含むことが可能である。こうした実施態様の1つでは、最適化分類領域と、領域の1つ以上の特性に、サイズ、重心位置、領域内または最適分類領域内の値に対する最良適合線の勾配、最良適合線のオフセット、または、それらのある組み合わせが含まれる。もう1つのこうした実施態様では、この比較ステップの結果が所定の限界を超える場合、この方法に、システムが誤動作しているか否かを判定するステップを含むことが可能である。
【0017】
もう1つの実施態様の場合、最適化分類領域には、分類空間の一部が含まれており、粒子の値がこの分類空間の一部内に位置することになる確率は、所定の確率を超える。もう1つの実施態様の場合、最適化分類領域は、分類空間の一部が除外されており、粒子の値がこの分類空間の一部内に位置することになる確率は、所定の確率未満である。上述の方法には、それぞれ、本明細書に解説の他の任意のステップを含むことが可能である。
【0018】
もう1つの実施態様は、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための異なる方法に関連している。この方法には、システムを利用して試料を分析し、システムの分類チャネルから、試料内の2つ以上の粒子集団に関する値を生成するステップが含まれている。この方法には、分類空間内における2つ以上の領域を識別するステップも含まれている。2つ以上の領域のそれぞれには、2つ以上の粒子集団の一方に関する値が配置されている。さらに、この方法には、2つ以上の最適化分類領域を決定するステップが含まれている。2つ以上の最適化分類領域は、それぞれ、2つ以上の領域の一方に対応する。この方法には、さらに、2つ以上の最適化分類領域を利用して、試料に含まれていない別の粒子集団に関する最適化分類領域を補間するステップが含まれている。この実施態様には、本明細書に解説の他の任意のステップを含むことも可能である。
【0019】
もう1つの実施態様は、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するためのコンピュータで実施される方法に関連している。このコンピュータで実施される方法には、試料の粒子集団に関する値が位置する分類空間内の領域を識別するステップが含まれている。これらの値には、試料分析中に、システムの分類チャネルによって生成された値も含まれる。このコンピュータで実施される方法には、領域の1つ以上の特性を利用して集団に関する最適化分類領域を決定するステップが含まれる。この最適化分類領域には、所定のパーセンテージの集団に関する値が含まれる。最適化分類領域は、追加試料中の粒子の分類に用いられる。このコンピュータで実施される方法の実施態様には、本明細書に解説の他の任意のステップを含むことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の他の目的及び利点については、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0021】
本発明には、さまざまな修正や変更形態を受け入れる余地があるが、図面には、例示のため、特定の実施形態が示されており、本明細書において詳述される。しかし、云うまでもないが、図面とそれに対する詳細な説明は、本発明を開示の特定の形態に制限しようとするものではなく、逆に、添付された請求項によって規定される本発明の精神及び範囲内に含まれる、全ての修正、同等、代替実施形態を包含することを意図したものである。
【0022】
本明細書では、「粒子」という用語は、一般に、粒子、微小球体、ポリスチレン・ビーズ、微小粒子、金ナノ粒子、量子ドット、ナノドット、ナノ粒子、ナノシェル、ビーズ、マイクロビーズ、ラテックス粒子、ラテックス・ビーズ、蛍光ビーズ、蛍光粒子、着色粒子、着色ビーズ、組織、細胞、微生物、有機物、非有機物、または、当該技術において既知の他の任意の個別基質または物質を表わすために用いられる。粒子は分子反応のビークルとして機能してもよい。粒子については、参考までに、あたかもそっくりそのまま記載のように、本明細書において援用されている、Fultonに対する米国特許第5,736,330号、Chandler他に対する米国特許第5,981,180号、Fultonに対する米国特許第6,057,107号、Chandler他に対する米国特許第6,268,222号、Chandler他に対する米国特許第6,449,562号、Chandler他に対する米国特許第6,514,295号、Chandler他に対する米国特許第6,524,793号、Chandler他に対する米国特許第6,528,165号に例示されている。本明細書に開示の測定システムと方法は、これらの特許に解説の粒子のどれにでも利用することが可能である。さらに、xMAP微小球体と呼ぶことも可能な、LabMAP微小球体のようなフローサイトメトリで用いられる粒子は、Luminex Corporationから市場で入手することが可能である。「粒子」と「微小球体」という用語は、本明細書において同義的に用いられている。
【0023】
本明細書では、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法が解説される。すなわち、この方法は、より高い正確度である特定の集団からの粒子を分類することができ、かつ、粒子を誤分類する確率が低下するように、測定システムを「調整」するために利用可能である。本明細書において用いられる限りにおいて、「分類」という用語は、一般に、ある試料中における個々の粒子の同一性を確認することと定義される。同一性は、個々の粒子が属する集団に関連する。試料の分析が、単一実験で、複数の異なる粒子集団を用いて実施される場合が多いので、こうした分類は特に重要である。例えば、異なる粒子集団は、一般に、単一の実験で、試料内における異なる検体の存在を検出し、かつ、定量化ができるように、または、そのいずれかを行えるように、粒子に結合した物質のタイプ及び/または粒子に結合した物質の量といった、少なくとも1つの異なる特性を備えている。従って、測定結果を解釈するため、他の測定値と個々の粒子の特性を相関させることができるように、実験で用いられた個々の粒子の同一性が確認されるか、または、分類が決定される。
【0024】
本明細書に記載の方法を実施するように構成可能なシステムには、制限するわけではないが、Luminex100、Luminex HTS、Luminex100E、Luminex Corporationから入手可能なこの製品ファミリのさらなる任意の追加製品が含まれる。こうしたシステムの一般的な例の1つについては、本明細書において後述される。すなわち、本明細書に記載の方法では、フローサイトメータ・ベース・システムにおいて粒子を分類する「マップ方法」を利用して、フローサイトメータ・ベース・システムの1つ以上のパラメータを変更することが可能である。しかしながら、云うまでもないが、本明細書に記載の方法は、個々の粒子または他の個別物質の同一性を確認するか、または、その分類を決定するように構成された、任意の測定システムの1つ以上のパラメータを変更するために利用することも可能である。こうした測定システムの一例としては、蛍光イメージング・システムがある。さらに、本明細書に記載の方法は、粒子分類の正確度の向上させるための利用に制限されるものではない。例えば、本明細書に解説の方法は、制限するわけではないが、粒子に生じる反応性生物の同一性または量といった、他の分類パラメータの決定にも等しく適用することが可能である。さらに、本明細書には、これらの方法に利用可能なさまざまな値も記載されているが、もちろん、本発明に記載の方法は、粒子の1つ以上の特性を確認するために利用することができる、粒子の任意の測定可能パラメータに利用することが可能である。
【0025】
本明細書に提示のさまざまな実施形態の説明による恩恵を受けた通常の当該技術者には明らかなように、本明細書に記載の方法によれば、測定システムによって生成される値を分析するためのいくつかの利点が得られる。すなわち、本明細書に記載の方法によれば、測定システムの物理的パラメータを変更しなくても(例えば、測定システムのそれぞれのコンポーネントの累積公差を変更しなくても)、システム正確度が現在得られる正確度より向上する。従って、本明細書に記載の方法によれば、測定プロセスを複雑にし、製造時間を延長し、製造処理量を減少させ、システム全体のコストを増大させることなく、システム正確度が向上する。さらに、本明細書に記載の方法によれば、測定システムの正確度を低下させずに、ある粒子集団に対応する領域の分類空間を縮小することが可能になるので、現在得られるシステム間整合よりもシステム間整合が向上する。測定システムの物理的コンポーネントを変更することなく、システム間整合を向上させることができるので、本明細書に記載の方法によれば、測定プロセスを複雑にし、製造時間を延長し、製造処理量を減少させ、システム全体のコストを増大させることなく、システム間整合が向上する。
【0026】
図1には、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法の実施形態の1つが例示されている。図1に示すステップの多くは、本発明の実施にとって不可欠ではないという点に留意されたい。図1に例示の方法には、1つ以上のステップの省略または追加が可能であり、この方法は、それにもかかわらず、この実施形態の範囲内で実施することが可能である。さらに、この方法の1つ以上のステップを自動化することが可能であるという点に留意すべきである。こうして、測定システムのユーザによる監視または命令がなくても、この方法の1つ以上のステップを実施することが可能になる。代わりに、システムのオペレータ、現場技術者、または、製造要員といったユーザからの入力またはユーザとの対話に基づいて、この方法の1つ以上のステップを実施することも可能である。さらに、この方法の1つ以上のステップ、あるいは、この方法の全ステップでさえ、コンピュータで実施することが可能である。このようにして、これらのステップの1つ以上は、本明細書に記載のようなプロセッサ、または、当該技術において既知の他の任意のハードウェアまたはソフトウェアでこれらのステップの1つ以上を実行する働きが可能な、システムのプロセッサ、アルゴリズム、または、他のプログラム命令によって実施可能である。
【0027】
図1のステップ10に示すように、この方法には、オプションで、測定システムの較正ステップを含むことが可能である。この方法には、通常のまたは標準的な較正試薬と手順を利用して、システムを較正するステップを含むことが可能である。こうした較正手順の一例としては、Luminex Corporationから市販されているフローサイトメータ・ベースの測定システムで一般に用いられるマップ較正手順がある。例えば、フローサイトメータ・ベースの測定システムでは、粒子内部の、さもなければ、粒子に付着させられた2つ以上の色素の測定強度に基づいて、システムを通過する粒子が同定される。この同定技法は、全チャネル(報告及び分類の両方)において既知の量の蛍光強度を含む較正微小球体の同定に利用することも可能である。較正微小球体測定の実施後、試料微小球体測定結果に関して、報告チャネル及び/または分類チャネルに、精密な補正率を適用することが可能である。ステップ10に利用可能な較正技法の追加例については、その両方とも、そっくりそのまま記載されているかのように、参考までに本明細書で援用されている、Rothによって2003年8月13日に提出された、「Real Time System Calibration Method」と題する米国特許出願第60/494,824号に対する優先権を主張する、Roth他によって2004年8月12日に提出された、「Methods for Controlling One or More Parameters of a Flow Cytometer Type measurement System」と題する米国特許出願第10/918,647号に例示されている。このオプションの較正ステップでは、当該技術において既知の他の任意の較正技法を利用することが可能である。
【0028】
この方法には、ステップ12に示すように、試料を分析して、システムの分類チャネルから試料中の粒子集団に関する値を生成するステップが含まれる。実施形態の1つでは、試料には、マップ較正試薬を含むことが可能である。マップ較正試薬には、Luminex Corporationから100領域LabMAPとして市販されている製品グループからの染色微小球体の1つ以上の集団、あるいは、おそらくは、100領域LabMAPと同様の強度を備えるが、LabMAPの一部ではない微小球体の集団が含まれる。さらに、試料には、少なくとも1つの粒子集団を含む試料のような、当該技術において既知の他の任意の適合する試料を含むことが可能である。
【0029】
実施形態の1つでは、分類チャネルからの値に蛍光値が含まれている。異なる実施形態では、分類チャネルからの値に光の散乱強度値が含まれている。他の実施形態では、分類チャネルからの値に粒子の体積測定値が含まれている。実施形態によっては、値に、蛍光値、光の散乱強度値、粒子の体積測定値のある組み合わせが含まれる場合もある。これらの異なるタイプの値は、それぞれ、線形単位または対数単位で表わすことが可能である。
【0030】
さらに、この方法には、ステップ14に示すように、集団に関する値が位置する、分類空間内のある領域を識別するステップが含まれる。それらの値は、2つの軸のそれぞれに沿って異なる分類チャネルに関する値が配置される、2次元プロットのような当該技術において既知の任意の方法を用いて、分類空間内に編成することが可能である。フローサイトメトリ・ベースの計器に関して、こうしたプロットは、一般に、「マップ」と呼ばれる。集団に関する値が配置された分類空間内の領域の識別には、集団内のできるだけ多くの粒子からの値を含むが、集団の構成員ではない粒子は可能な限り排除した、一群の値のまわりに境界を形成するステップを含むことが可能である。従って、この境界によって、その領域に属する分類空間内の区域が識別される。こうした境界は、ユーザまたはプログラム命令によって生成可能である。
【0031】
この方法には、オプションにより、ステップ16に示すように、領域内に位置する集団の値の1つ以上の特性(領域の特性と呼ばれる)を確認するステップを含む。領域の1つ以上の特性には、領域内における値の平均、算術平均、ピーク、または、中央値を含み、かつ領域の標準偏差を含むことが可能である。こうした領域の特性は、当該技術において既知の方法を用いて確認することが可能である。領域の1つ以上の特性を利用して、いくつかの機能を実施することが可能である。例えば、実施形態の1つでは、この方法に、ステップ18に示すように、領域の特性の少なくとも1つとその少なくとも1つの特性に関する所定の範囲を比較するステップを含むことが可能である。実施形態によっては、所定の範囲は、システムの典型的な、許容し得る、あるいは、期待される性能を表わす場合もある。このようにして、この方法には、オプションにより、ステップ20に示すように、比較ステップで得られた結果に基づいて、システムの性能を評価するステップを含むことが可能である。換言すれば、領域の1つ以上の特性が、それらの特性に関する期待値から大幅に異なる場合、比較ステップによって、これらの大幅な相違を検出し、システム性能のモニタに利用することが可能である。もう1つの例では、特性の少なくとも1つが所定の範囲外にある場合、この方法に、オプション・ステップ22に示すように、システムに対して1つ以上の補正ステップを実施すべきか否かを判定するステップを含む。補正ステップには、例えば、較正、保守、修理、トラブルシューティング、リブート等を含むことが可能である。
【0032】
この方法には、ステップ24に示すように、領域の1つ以上の特性を利用して、集団に関する最適化分類領域を決定するステップが含まれる。最適化分類領域には、所定のパーセンテージの集団に関する値が含まれる。所定のパーセンテージは、実施形態によっては、測定システムの所望の正確度(例えば、98%、95%、90%等)を反映する。もう1つの実施形態では、領域内における値の分布といった領域内における値の特性や、上述の領域に関する他の特性に基づいて、所定のパーセンテージを決定することが可能である。最適化分類領域には、領域内における所定のパーセンテージの値だけしか含まれないので、最適化分類領域は、その分類領域におけるサイズが、必ずしもいつもというわけではないが、通常、分類空間における領域のサイズより小さい。一般に、最適化分類領域は、領域の1つ以上の特性とは異なる1つ以上の特性を備えている。1つ以上の異なる特性には、サイズ、形状、位置、または、それらのある組み合わせを含むことが可能である。実施形態の1つでは、最適化分類領域のサイズは、所定のパーセンテージの集団に関する値を含む最小サイズとすることが可能である。実施形態によっては、最適化分類領域の中心が、領域の値の中央値にいくつかの(例えば、2〜3つの)標準偏差を加えた値だけ中央値から離れた位置にくる場合もある。それらの値の中央値は、ある例では、経験的に求めることが可能である。もう1つの実施形態では、最適化分類領域は、集団に関する値の中央値を取り巻く所定のサイズの境界によって形成される。
【0033】
最適化分類領域は、追加試料中における粒子の分類に利用することが可能である。すなわち、他の試料の粒子に関して生成された分類チャネルの値は、この最適化分類領域、及び、おそらくは、他の最適化分類領域と比較することが可能である。ある粒子の値が、最適化分類領域の1つに含まれる場合、その粒子には、その最適化分類領域に関連した分類が割り当てられる。
【0034】
最適化分類領域によれば、粒子分類におけるシステム正確度が向上し、粒子分類に関するシステム間整合が向上するといった、他の分類方法に比べてかなりの利点が得られる。例えば、最適化分類領域には分類空間の一部が含まれる。最適化分類領域内における分類空間の一部は、上述のように、粒子の値が分類空間のその部分に位置する確率が、所定の確率を超えるように決定することが可能である。所定の確率は、粒子測定の期待される結果に関する統計的分析または他の数学的分析といった、いくつかのパラメータに基づいて決定することが可能である。また、最適化分類領域では、分類空間の一部が除外される。最適化分類領域から除外される分類空間の一部は、粒子の値が分類空間のその除外部分に位置する確率が、所定の確率未満になるように決定することが可能である。この所定の確率は、上述の確率とは異なることになるが、両方の確率とも、同様に決定することが可能である。
【0035】
実施形態によっては、この方法に、オプション・ステップ26に示すように、最適化分類領域の1つ以上の特性を確認するステップを含むことが可能である。しかしながら、最適化分類領域に関する1つ以上の特性が確認されていない場合でも、最適化分類領域を利用して、追加試料中の粒子を分類することが可能であるという点に留意すべきである。最適化分類領域の1つ以上の特性を利用して、いくつかの追加ステップを実施することが可能である。例えば、この方法には、オプション・ステップ28に示すように、最適化分類領域の1つ以上の特性と領域の1つ以上の特性を比較するステップを含むことが可能である。比較される最適化分類領域と領域の1つ以上の特性には、制限するわけではないが、サイズ、重心位置、領域内または最適分類領域内の値に対する最良適合線の勾配、最良適合線のオフセット、または、それらのある組み合わせを含むことが可能である。この比較ステップの結果を利用して、1つ以上の追加ステップを実施することも可能である。こうした例の1つとして、比較ステップの結果が所定の限界を超えると、この方法に、オプション・ステップ30に示すように、システムが誤動作しているか否かを判定するステップを含むことが可能である。所定の限界は、領域の典型的な、許容し得る、あるいは、期待される特性に基づくことが可能である。システムが誤動作していると判定される場合、この方法には、システムに対して上述のような1つ以上の補正ステップを施すべきか否かを判定するステップを含むことが可能である。
【0036】
ステップ12で分析される試料には、1つ以上の追加粒子集団を含むことが可能である。実施形態の1つでは、この方法は、オプション・ステップ32に示すように、1つ以上の追加集団について実施することが可能である。このようにして、この方法には、1つ以上の追加粒子集団のそれぞれについて、最適化分類領域を決定するステップを含むことが可能である。最適化分類領域は、本明細書に記載のように、追加集団について決定することが可能である。オプションで、試料中の全ての粒子集団について、最適化分類領域を決定することはできないという点に留意すべきである。ある試料について2つ以上の最適化分類領域を決定する場合、この方法には、オプション・ステップ34に示すように、2つ以上の最適化分類領域を利用して、試料に含まれていなかった別の粒子集団の最適化分類領域を補間するステップを含むことが可能である。さらに、このようにして、試料に含まれていない2つ以上の粒子集団に関する最適化分類領域を決定することが可能である。
【0037】
図1に示すさまざまなステップを組み合わせて、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法のさまざまな実施形態を生成ことが可能である。例えば、実施形態の1つには、ステップ12に関連して解説のように実施することが可能なシステムを利用して、試料を分析し、システムの分類チャネルから、試料中の2つ以上の粒子集団に関する値を生成するステップを含むことが可能である。さらに、この方法には、ステップ14に関連して解説のように実施することが可能な、分類空間内の2つ以上の領域を識別するステップが含まれる。2つ以上の領域のそれぞれにおいて、2つ以上の粒子集団の1つに関する値の位置が突き止められる。この方法には、ステップ32に関して解説のように実施することが可能な、2つ以上の最適化分類領域を決定するステップを含むことが可能である。2つ以上の最適化分類領域のそれぞれが、2つ以上の領域の1つに対応する。この方法には、さらに、ステップ34に関して解説のように実施することが可能な、2つ以上の最適化分類領域を利用して、試料に含まれていない追加粒子集団に関する最適化分類領域を補間するステップが含まれる。この方法のこの実施形態には、本明細書に解説の他のステップを含むことが可能である。
【0038】
もう1つの例では、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するためのコンピュータで実施される方法に関する実施形態の1つに、ステップ14に関連して解説のように実施することが可能な、試料の粒子集団に関する値が位置する分類空間内の領域を識別するステップが含まれる。それらの値には、システムの分析中にシステムの分類チャネルによって生成された値が含まれる。このコンピュータで実施される方法には、また、ステップ24に関連して解説のように実施することが可能な、領域の1つ以上の特性を利用して、集団に関する最適化分類領域を決定するステップも含まれる。本明細書において後述するように、最適化分類領域には、所定のパーセンテージの集団に関する値が含まれる。最適化分類領域は、本明細書に解説のように、追加試料中の粒子の分類に利用することが可能である。コンピュータで実施される方法に関するこの実施形態には、本明細書に解説の他の任意のステップを含むことが可能である。
【0039】
最適化分類領域を決定するステップの一例には、図2〜図6に例示のデータを生成することが可能な、下記ステップを含むことが可能である。図2〜図6に例示のデータが、本明細書に記載の方法の典型的な例または制限的な例となるように意図されたものではないという点に留意されたい。そうではなく、このデータは、ただ単に、本明細書に解説の方法の理解を深めるためだけに提示されたものである。図2には、蛍光の2つの色を用いて粒子が同定される、フローサイトメータに似た装置から得られたデータが例示されている。蛍光の2つの色は、2つの異なる分類チャネルCH1とCH2を用いて検出された。集団の構成員ではない粒子は可能な限り排除し、集団内のできるだけ多くの粒子からの蛍光データを含む、一群の値のあつまりのまわりに境界が画される。データ・ポイントまわりの白領域は、手描きの境界線によって境界が示されているが、これには、集団に関する値が十分に含まれているが、集団の構成員が蛍光を示す可能性のない余分な空間も含んでいる。この領域は、この余分な空間の一部を排除することによって最適化することが可能であり、その結果、試料に、この集団の構成員ではない他の蛍光粒子が含まれている状況において、最適化分類領域によってそれらを容易に弁別することが可能になる。
【0040】
この集団に最良に適合する線の勾配を得るため、図2に示すデータに線形回帰が適用される。「集団」は、従って、CH1とCH2の中央値の25%内の任意のデータを含むもの(すなわち、Median_CH1+25%、Median_CH1−25%によって両側が境界づけられ、Median_CH2+25%、Median_CH2−25%によって上部と下部が境界づけられたボックス)と定義される。この勾配の決定後、CH1′とCH2′の新しい座標の最良の適合線がほぼ水平になるように(図3に示すように)、全データ・セットが回転させられる。この回転したデータ・セットを用いて、CH1′とCH2′次元における集団に関する中央値と標準偏差が求められる。
【0041】
図4に示すように、その中心が、CH1′とCH2′における中央値であり、その長軸と短軸(必ずしもその順番とは限らないが)が、CH1′とCH2′における標準偏差のある定数C倍である楕円が生成される。この定数は、楕円に所望のパーセンテージの集団内の粒子が含まれるまで調整される。この例の場合、Cの値を3にすると、集団の98.9%を包囲する境界が生成される(図4に示すように)。最後に、図5に示すように、楕円内のデータ・ポイントの集合が回転させられて、CH1とCH2のもとの次元に戻されるが、もとの次元に結果として生じる楕円は、最適化分類領域である。さらに図5に示されるように、最適化分類領域のサイズは、もとの分類領域よりはるかに小さい。
【0042】
さらに、分類領域よりも多い数の標準偏差に対応する軸を備えた楕円を生成することによって、領域まわりにもっと大きい境界を生成することが可能である。このより大きい境界内に配置される他の分類領域(他の集団に関する)がなければ、所定のパーセンテージのこの領域からの粒子だけが、誤って他の領域に分類されることになる。他の粒子集団について、やはり、同様の境界が生成された場合には、この逆も真になる。この例では、分類境界は、両方の軸において集団の重心から標準偏差の3倍だけ離れている。より大きい境界は、標準偏差の5倍だけ離れることが可能であり、この場合、集団内にある96の粒子の100%を包囲するようになる。図6には、もとの領域(白領域)、データ・ポイントの集団、より小さい境界(より小さい楕円)によって形成された第1の最適化分類領域の境界と、回転した座標軸の両方における標準偏差の5倍に基づくより大きい境界(より大きい楕円)によって形成された最適化分類領域が示されている。
【0043】
2つ以上の領域を最適化するステップの一例には、図7−図8に例示のデータを生成することが可能な、下記のステップを含む。図7−図8に例示のデータが、本明細書に記載の方法の典型的な例または制限的な例となるように意図されたものではないという点に留意されたい。そうではなく、このデータは、ただ単に、本明細書に解説の方法の理解を深めるためだけに提示されたものである。図7には、蛍光染色粒子の4つの異なる集団を含む試料の分析中に、フローサイトメータに似た装置によって生成されたデータが例示されている。上記例に解説のように、集団の1つに対応する各領域毎に、最適化楕円領域が生成されたが、最適化分類領域がデータ・ポイントと異なって見えるように、標準偏差の5倍の長軸と短軸を備えた楕円が利用された。実際には、おそらく、もっと小さい分類領域が最適になるであろう。
【0044】
実際には、別の集団に関するデータがなくても、4つの最適化分類領域を利用して、その新しい集団に関する追加最適化分類領域を生成することが可能である。追加最適化分類領域の生成に利用されるパラメータは、CH1とCH2座標によるその位置である。試料の分析によって生じた実際のデータ値から作成された4つの最適化分類領域からモデルが生成されるが、このモデルの入力パラメータも、CH1とCH2座標における領域位置である。従って、実際には、特定の最適化分類領域に関する測定データがなくても、CH1−CH2空間のどこであろうと、追加最適化分類領域の補間が可能である。
【0045】
図7に示す4つの領域に関して、表1に領域座標が示されている。
【0046】
【表1】
【0047】
これらの座標は、もとの分類領域の重心位置を表わしている(図7の白領域によって示される)。
【0048】
重心位置の座標に基づいて、下記統計値が各領域毎に計算される。
1.CH1における重心シフト(CH1におけるもとの領域の重心とCH1における最適化分類領域の重心をつなぐベクトル)、
2.CH2における重心シフト(CH2におけるもとの領域の重心とCH2における最適化分類領域の重心をつなぐベクトル)、
3.集団に関する値を通る最良適合線の勾配、
4.CH1′とCH2′(回転)座標における集団に関する標準偏差、
5.所望のパーセンテージの各集団の粒子に関する値を包囲するのに必要な標準偏差数。
表1に示すCH1とCH2座標の関数としてこれら5つの統計値のそれぞれに関するモデルを生成するため、回帰モデルが作成される。例えば、このデータの場合、統計値3に関する式の形式は、下記の式であった。
勾配=0.515+(CH1*0.00205)+(CH2*0.00165)
【0049】
CH1とCH2の任意の座標対について、これらの5つの統計値が計算されると、その対をなす数だけを利用して、最適化楕円領域を自動的に生成することが可能になる。図8には、図7からのもとの4つの領域に加えて、矢印で表示されたもとの領域について生成された第5の最適化楕円領域が示されている。このプロセスは、複数回数にわたって反復可能であり、その結果、図7に示すように、もとの4つの集団から収集したデータだけを利用して、多くの新しい最適化領域を生成することが可能になる。
【0050】
外部誤差要因を考慮して、ある特定の領域を拡大するステップの一例には、図9−図10に例示のデータを生成することが可能な、下記のステップを含むことが可能である。図9−図10に例示のデータが、本明細書に記載の方法の典型的な例または制限的な例となるように意図されたものではないという点に留意されたい。そうではなく、このデータは、ただ単に、本明細書に解説の方法の理解を深めるためだけに提示されたものである。経験から明らかなように、古い較正試薬のような他の誤差要因によって、所望のパーセンテージの各領域における粒子を捕捉する(上記例において解説のように実施可能である)境界のサイズが拡大される可能性がある。ある特定領域の重心が、これらの誤差要因に基づくある特定数の単位だけずれる可能性のあることが分っている場合、その量だけ、領域を拡大することが可能である。上述の最適化分類領域を決定するステップの例において、ユーザが、CH1軸に関して、いずれかの方向に2カウント分のシフトを考慮したいという場合には、CH1方向における領域の重心の右と左の境界を、両方とも、重心からその量だけシフトさせることが可能である(図9に示すように)。同様に、この方法は、同じ領域におけるCH2の方向または両方向に適用することが可能である。
【0051】
図11には、本明細書に記載の方法を実施するために利用可能な測定システムの一例が示されている。図11が、一定の比率で描かれているわけではないという点に留意されたい。すなわち、図の構成要素の一部の比率は、その構成要素の特徴を強調するため、大幅に誇張されている。測定システムの構成要素の中には、分りやすくするため、図に含まれなかったものもある。
【0052】
図11において、測定システムは、微小球体42が流れる、キュベット40の断面を通る平面に沿って示されている。一例を挙げると、キュベットは、標準的なフローサイトメータで用いられるような、標準的な石英キュベットである。しかしながら、分析用の試料の供給には、任意の他の適合するタイプの視検室または供給室を利用することも可能である。測定システムには光源44が含まれる。光源44には、レーザのような、当該技術において既知の任意の適合する光源を含むことが可能である。光源は、青色光または緑色光のような、1つ以上の波長を備えた光を放出するように構成される。光源44は、微小球体を、それらがキュベットを流れる際に照射するように構成される。この照射によって、微小球体が、1つ以上の波長または波長域を備えた蛍光を放出する。実施形態によっては、システムに、光源からの光を微小球体または流路に集束させるように構成された1つ以上のレンズ(不図示)を含むことも可能である。システムには、2つ以上の光源を含むことも可能である。実施形態の1つでは、光源は、波長または波長域の異なる光(例えば、青色光と緑色光)で微小球体を照射するように構成することが可能である。実施形態によっては、異なる方向に微小球体を照射するように、光源を構成してもよい。
【0053】
微小球体から前方に散乱する光は、折りたたみミラー48または別のこうした光方向づけコンポーネントによって検出システム46に送られる。代わりに、検出システム46を前方散乱光の光路内に直接配置することが可能である。こうして、システムに、折りたたみミラーまたは他の光方向づけコンポーネントを含まないようにすることも可能である。実施形態の1つにおいて、前方散乱光が、図11に示すように、光源44による照射方向から約180度の角度に微小球体によって散乱する光である。前方散乱光の角度が、照射方向から正確に180度ではなくて、光源からの入射光が検出システムの感光表面に入射できないといった場合もある。例えば、前方散乱光は、微小球体によって、照射方向から180度未満または180度を超える角度で散乱する光(例えば、約170度、約175度、約185度、または、約190度の角度で散乱する光)でもよい。
【0054】
微小球体によって照射方向から約90度の角度で散乱する光を集めることも可能である。実施形態の1つでは、この散乱光は、1つ以上のビーム・スプリッタまたはダイクロイック・ミラーによって、2つ以上の光ビームに分割することが可能である。例えば、照射方向に対して約90°の角度で散乱する光は、ビーム・スプリッタ50によって2つの異なるビームに分割することが可能である。ビーム・スプリッタ52、54によって、2つの異なる光ビームをもう一度分割し、4つの異なる光ビームを生じさせることができる。光ビームは、それぞれ、1つ以上の検出器を含むことが可能な異なる検出システムに送ることが可能である。例えば、4つの光ビームのうちの1つは、検出システム56に送られる。検出システム56は、微小球体による散乱光を検出するように構成可能である。
【0055】
検出システム46及び/または検出システム56によって検出される散乱光は、一般に、光源によって照射される粒子の体積に比例する。従って、検出システム46の出力信号及び/または検出システム46の出力信号を利用して、照射ゾーンまたは検出ウィンドウ内にある粒子の直径及び/または体積を求めることが可能である。さらに、検出システム46及び/または検出システム56の出力信号を利用して、くっついた、または、ほぼ同時に照射ゾーンを通過する2つ以上の粒子を同定することが可能である。従って、こうした粒子は、他の試料微小球体や較正微小球体から区別することが可能である。さらに、検出システム46及び/または検出システム56の出力信号を利用して、試料微小球体と較正微小球体を区別することが可能である。
【0056】
他の3つの光ビームは、検出システム58、60、62に送られる。検出システム58、60、62は、微小球体によって放出される蛍光を検出するように構成される。検出システムは、それぞれ、異なる波長または異なる波長範囲の蛍光を検出する。例えば、検出システムの1つは、緑色蛍光を検出する。検出システムのもう1つは、橙黄色蛍光を検出し、もう1つの検出システムは赤色蛍光を検出する。
【0057】
実施形態によっては、検出システム58、60、62に、それぞれ、スペクトル・フィルタ64、66、68が結合されている。これらのスペクトル・フィルタは、検出システムが検出するように構成された波長以外の波長の蛍光を阻止する。さらに、検出システムのそれぞれに、1つ以上のレンズ(不図示)を光学的に結合させてもい。レンズは、散乱光または放出蛍光を検出器の感光表面に集束させるように構成される。
【0058】
検出器の出力電流のそれぞれが入射する蛍光に比例し、電流パルスとなる。電流パルスは、電圧パルスに変換され、低域フィルタリングされ、A/D変換器でディジタル化される。変換、フィルタリング、ディジタル化は、当該技術において既知の任意の適合するコンポーネントを用いて実施できる。測定システムはプロセッサ70を含む。プロセッサ70は、1つ以上の伝送媒体、及び、オプションにより、プロセッサと検出器の間に挿入された1つ以上のコンポーネントによって、検出器に結合される。例えば、プロセッサ70は、伝送媒体72によって検出システム56に結合される。伝送媒体は、当該技術において既知の任意の適合する伝送媒体を含み、「有線」部分と「無線」部分を含むこともできる。一例として、プロセッサは、パルスの下の領域を積分し、蛍光の強度を表わす数を提供するDSPを含むことが可能である。プロセッサは、本明細書に記載の実施形態の1つ以上のステップを実施するように構成されてもよい。
【0059】
実施形態によっては、微小球体から発生する出力信号を利用して、微小球体の同一性を確認し、微小球体の表面に生じる反応に関する情報を把握するようにしてもよい。例えば、検出システムのうちの2つのシステムの出力信号を利用して、微小球体の同一性を確認し、他の検出システムの出力信号を利用して、微小球体の表面に生じる反応を把握することができる。従って、検出器とスペクトル・フィルタの選択は、微小球体に取り込まれるか、または、結合された色素のタイプ、及び/または、測定される反応(すなわち、反応に関与する反応物質に取り込まれるか、または、結合された色素)によって異なる。
【0060】
検出システム46、56、58、60、62によって生じる値は、本明細書に記載の方法に利用される。特定の実施形態の1つでは、分類空間において、検出システムのうちの2つのシステムによって生じる微小球体に関する値と、上述のように決定される1つ以上の最適化分類領域を比較する。微小球体の分類は、それらの値が位置する最適化分類領域に割り当てられた分類として決定される。
【0061】
試料微小球体の同一性を確認するために用いられる検出システム(例えば、検出システム58、60)は、アバランシェ・フォトダイオード(APD)、光電子増倍管(PMT)、または、別の光検出器とすることが可能である。微小球体の表面に生じる反応を識別するために利用される検出システム(例えば検出システム62)は、PMT、APD、または、別の形態の光検出器とすることが可能である。
【0062】
図11のシステムは、図示のように、異なる色素特性を有する微小球体間における識別を行うため、2つの異なる検出ウィンドウを備えた2つの検出システムを含んでいるが、もちろん、3つ以上のこうした検出ウィンドウ(すなわち、3つの検出ウィンドウ、4つの検出ウィンドウ等)を含むことも可能である。こうした実施形態の場合、このシステムには、追加ビーム・スプリッタと、他の検出ウィンドウを備えた追加検出システムを含む。さらに、追加検出システムのそれぞれに、スペクトル・フィルタ及び/またはレンズを結合させることが可能である。もう1つの実施形態では、このシステムに、微小球体の表面で反応するさまざまな材料の識別を行うように構成された2つ以上の検出システムを含ませてもよい。さまざまな反応物質材料は、微小球体の色素特性とは異なる色素特性を備えることが可能である。
【0063】
本明細書に記載の方法の実施に利用可能な測定システムの追加例が、本明細書にそっくりそのまま記載されているかのように、参考までに援用されている、Chandler他に対する米国特許第5,981,180号、Chandlerに対する米国特許第6,046,807号、Chandlerに対する米国特許第6,139,800号、Chandlerに対する米国特許第6,366,354号、Chandlerに対する米国特許第6,411,904号、Chandler他に対する米国特許第6,449,562号、Chandler他に対する米国特許第6,524,793号に例示されている。本明細書に記載の測定システムは、さらに、これらの特許に記載のように構成することも可能である。
【0064】
本明細書に記載の方法を実施するプログラム命令は、搬送媒体によって伝送するか、あるいは、搬送媒体に記憶させることが可能である。搬送媒体は、ワイヤ、ケーブル、または、無線伝送リンクといった伝送媒体、あるいは、こうしたワイヤ、ケーブル、または、リンクに沿って進行する信号とすることが可能である。搬送媒体は、読み取り専用メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、磁気または光ディスク、または、磁気テープのような記憶媒体とすることも可能である。
【0065】
実施形態の1つでは、プロセッサは、プログラム命令を実行して、上記実施形態によるコンピュータで実施される方法を実施する用に構成される。プロセッサは、パーソナル・コンピュータ・システム、メインフレーム・コンピュータ・システム、ワークステーション、ネットワーク・アプライアンス、インターネット・アプライアンス、携帯端末(「PDA」)、テレビジョン・システム、または、他の装置を含むさまざまな形態とすることができる。一般に、「コンピュータ・システム」という用語は、記憶媒体からの命令を実行する、1つ以上のプロセッサを備えた任意の装置を包含するように広義に定義される。
【0066】
プログラム命令は、とりわけ、手順ベース技法、コンポーネント・ベース技法、及び/または、オブジェクト指向技法を含む、さまざまな方法の任意の1つで実現される。例えば、プログラム命令は、ActiveXコントロール、C++オブジェクト、Java(登録商標)Beans、Microsoft Foundation Class(「MFC」)、または、他のテクノロジまたは技法を用いて実現される。
【0067】
本開示の恩恵を受けた当該技術者には明らかなように、本発明は、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法を提供するものである。この解説に鑑みて、当該技術者には、本発明のさまざまな形態のさらなる修正と変更実施形態が明らかになるであろう。従って、この解説は、単なる例示とみなすべきであり、本発明を実施する一般的なやり方を当該技術者に教示するためのものである。もちろん、本明細書に示され、解説された本発明の形態は、現在のところ望ましい実施形態である。全て、本発明のこの解説の恩恵に浴した後の当該技術者には明らかなように、本明細書例示され、解説されたものの代わりになる要素及び材料を用いることもできるし、部品及びプロセスを逆にすることもできるし、本発明のいくつかの特徴を単独で利用することも可能である。付属の請求項に記載の本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に解説の要素に変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法に関する実施形態の1つを例示したフローチャートである。
【図2】単一染色粒子集団に関する2パラメータ蛍光データを備えたフローサイトメータ・データを例示したプロットである。
【図3】回転させた、最良適合線を備える図2のデータを例示したプロットである。
【図4】回転座標において図3のデータの境界を示す3標準偏差楕円を例示したプロットである。
【図5】最適化楕円分類領域、図2のもとの領域、及び、粒子集団に関する値を例示したプロットである。
【図6】図5の最適化分類領域まわりのより大きい境界を例示したプロットである。
【図7】異なる粒子集団に関して、それぞれ、4つの異なる領域を備えた、2パラメータ蛍光プロットにおけるフローサイトメータ・データを例示したプロットである。
【図8】新しいパラメータに基づいて生成された最適化分類領域を備える、図7の4つのもとの領域を例示したプロットである。
【図9】CH1方向に拡大された領域を例示したプロットである。
【図10】CH1とCH2方向に拡大された領域を例示したプロットである。
【図11】本明細書に解説の方法を実施するために利用可能な、フローサイトメータ・ベースの測定システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0069】
40 キュベット、42 微小球体、44 光源、46 検出システム、48 折りたたみミラー、50 ビーム・スプリッタ、52 ビーム・スプリッタ、54 ビーム・スプリッタ、56 検出システム、58 検出システム、60 検出システム、62 検出システム、64 スペクトル・フィルタ、66 スペクトルフィルタ、68 スペクトル・フィルタ、70 プロセッサ、72 伝送媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法に関する。実施態様のいくつかには、ある集団の粒子を分類するため、測定システムの1つ以上のパラメータを最適化する方法及びシステムに関するものもある。
【背景技術】
【0002】
下記の説明及び例は、このセクションに含まれているからという理由で、先行技術であるわけではない。
【0003】
一般に、フローサイトメータによって、フロー室を直線的に通過する際の、レーザで励起されたポリスチレン・ビーズの蛍光強度が測定される。システムによっては、4つの測定、すなわち、ビーズによって、励起光源に対して90度の角度で散乱される光のレベル測定、ビーズの「同一性」の確認または「分類」の決定を実施するために用いられる2つの蛍光測定、一般に、関心のある表面化学反応の検出及び/または定量化に用いられる第3の蛍光測定が行われる。3つの蛍光測定は、それぞれ、異なる波長で実施される。これらの及び他の任意の蛍光測定は、検出器と、その検出器に結合される他のコンポーネント(例えば、光学コンポーネント、電子コンポーネント等)を含む、システムの異なる「チャネル」(例えば、報告チャネル、分類チャネル)によって実施される。
【0004】
一例を挙げると、化学反応の蛍光測定は、光電子増倍管(PMT)の感光領域に、励起レーザの照射ゾーンを通過する際の、ビーズの像を光学的に投影することによって定量化される。PMTの出力は電流パルスであり、このパルスは、さらに、アナログ電子回路によって調整され、アナログ・ディジタル(A/D)変換器によってディジタル化される。A/D変換器から結果として得られたディジタル値は、さらに、ディジタル信号処理(DSP)アルゴリズムによって、ディジタル領域で調整される。ビーズ当りの最終結果は、ビーズ表面における化学反応にほぼ比例する単一の整数値である。
【0005】
テキサス州オースチンのLuminex Corp.製のLuminex 100システムのような、各フローサイトメータ・ベースのシステムによって、「典型的なフローサイトメータ計器」とはわずかに異なる方法で、粒子測定の結果(例えば、100領域LabMAP)が表示される。これらの表示の差は、ダイオード・レーザ、フォトダイオード、光フィルタ、データ処理に用いられる電子部品といった、システム・コンポーネントの多くに関する公差の累積結果である。すなわち、粒子は、粒子の分析中に発生した値と、分類空間(例えば、マップ)に配置された領域を比較することによって分類される。分類空間のある領域内に位置する値を有する粒子には、この領域に対応する分類が割り当てられる。従って、上述のシステムの累積公差を考慮に入れるため、さまざまな集団の分類に用いられる分類空間における領域のサイズは、さまざまな集団の値を含むのに必要なサイズより大きくされる。
【0006】
これらの領域を必要以上に大きくする結果、あるシステムと別のシステムとの間で粒子集団の分類が一致しなくなる。例えば、あるシステムでは、粒子集団の95%がある特定領域に属するものと分類され、その集団の0.5%が、別の領域に誤分類されることになるが、異なるシステムでは、この粒子集団の98%が正しく分類され、その集団が誤分類されるパーセンテージは少なくなる。従って、必要以上に大きい分類領域を利用すると、システム間の整合が悪くなる。しかし、例えば、生体試料の検定を実施する単一施設または機構において、複数の測定システムが利用される場合には、システム間の整合が望ましい。かくして、1つの測定システムを利用して得られた結果と異なる測定システムを利用して得られた結果を直接比較することが可能になる。
【0007】
明らかに、分類領域のサイズを縮小する方法の1つは、システムの累積公差を減少させることである。システムの累積公差を減少させる方法の1つは、極めて公差の制限されたコンポーネントを利用して、システムを製造することである。しかし、こうしたコンポーネントを用いると、これらのコンポーネントを調達する製造要員にかなりの重荷となる。さらに、厳しい公差の代償を払おうとして、綿密なアセンブリの試みを利用することも可能である。しかし、極めて公差の制限されたコンポーネントと同様、綿密なアセンブリの試みを利用すると、製造の複雑性及び困難性が増すことになる。従って、分類領域のサイズを縮小するために現在利用可能な方法によると、システムの製造時間が延長され、製造処理量が減少し、システムのコスト全体が増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、製造プロセスを複雑にし、製造時間を延長し、製造処理量を減少させ、システムのコスト全体を増大させることがないようにして、システムが、より高いシステム正確度とより高いシステム間均一性で粒子を分類できるように、分類領域のサイズを縮小することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法のさまざまな実施態様に関する下記説明は、決して、付属の請求項の内容を制限するものと解釈してはならない。
【0010】
本発明の実施態様の1つは、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法に関するものである。この方法には、測定システムを利用して試料を分析し、システムの分類チャネルから試料中の粒子集団に関する値を生成するステップが含まれている。この方法には、集団に関する値が位置する、分類空間内のある領域を識別するステップも含まれている。さらに、この方法には、その領域の1つ以上の特性を利用して、集団に関する最適化分類領域を決定するステップも含まれている。最適化分類領域には、所定のパーセンテージの集団に関する値が含まれている。最適化分類領域は、さらなる試料中の粒子の分類に利用することが可能である。
【0011】
実施態様によっては、最適化分類領域が、その領域の1つ以上の特性とは異なる、1つ以上の特性を有する場合がある。1つ以上の特性には、サイズ、形状、位置、または、それらのある組み合わせが含まれる。実施態様の1つにおいて、この方法には、分析ステップの前に、システムを較正するステップが含まれている。実施態様によっては、試料に、マップ較正試薬を含むことが可能である。それらの値は、線形単位または対数単位で表わすことが可能である。
【0012】
実施態様の1つにおいて、領域の1つ以上の特性に、その領域における値の平均、算術平均、ピーク、または、中央値と、その領域における値の標準偏差が含まれる。もう1つの実施態様では、最適化分類領域の中心が、その領域の値の中央値にいくつかの標準偏差を加えた値だけ中央値から離れた位置にくることになる。もう1つの実施態様では、最適化分類領域は、集団に関する値の中央値を取り巻く所定のサイズの境界によって形成される。実施態様によっては、最適化分類領域のサイズが、所定のパーセンテージの集団に関する値を含む最小サイズという場合もある。
【0013】
実施態様の1つでは、分類チャネルからの値に蛍光値が含まれる。異なる実施態様では、分類チャネルからの値に光散乱強度値が含まれる。他の実施態様では、分類チャネルからの値に粒子の体積測定値が含まれる。別の実施態様では、それらの値に、さまざまな値のある組み合わせ(例えば、蛍光値と光散乱強度値等)を含むことが可能である。
【0014】
場合によっては、試料に、1つ以上の追加粒子集団を含むことも可能である。こうした実施態様の1つでは、この方法は、1つ以上の追加集団に関して実施される。こうして、1つ以上の追加集団のそれぞれについて、最適化分類領域を決定することが可能である。もう1つのこうした実施態様では、この方法に、この集団と1つ以上の追加集団最適化領域を利用して、試料に含まれていなかった別の粒子集団に関する最適化分類領域を補間するステップを含むことが可能である。
【0015】
実施態様の1つでは、領域の1つ以上の特性に、上述のように、集団に関する値の平均、算術平均、ピーク、または、中央値を含み、かつ集団に関する標準偏差を含むことが可能である。こうした実施態様の1つでは、この方法に、1つ以上の特性のうちの少なくとも1つと、1つ以上の特性のうちのその少なくとも1つに関する所定の範囲を比較するステップを含むことが可能である。こうした実施態様には、比較ステップの結果に基づいて、システムの性能を評価するステップを含むことが可能である。領域の1つ以上の特性のうちの少なくとも1つが、所定の範囲外であれば、この方法の別のこうした実施態様には、システムに対して1つ以上の是正処置を施すべきか否かを判定するステップを含むことが可能である。
【0016】
もう1つの実施態様の場合、この方法には、最適化分類領域の1つ以上の特性と領域の1つ以上の特性を比較するステップを含むことが可能である。こうした実施態様の1つでは、最適化分類領域と、領域の1つ以上の特性に、サイズ、重心位置、領域内または最適分類領域内の値に対する最良適合線の勾配、最良適合線のオフセット、または、それらのある組み合わせが含まれる。もう1つのこうした実施態様では、この比較ステップの結果が所定の限界を超える場合、この方法に、システムが誤動作しているか否かを判定するステップを含むことが可能である。
【0017】
もう1つの実施態様の場合、最適化分類領域には、分類空間の一部が含まれており、粒子の値がこの分類空間の一部内に位置することになる確率は、所定の確率を超える。もう1つの実施態様の場合、最適化分類領域は、分類空間の一部が除外されており、粒子の値がこの分類空間の一部内に位置することになる確率は、所定の確率未満である。上述の方法には、それぞれ、本明細書に解説の他の任意のステップを含むことが可能である。
【0018】
もう1つの実施態様は、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための異なる方法に関連している。この方法には、システムを利用して試料を分析し、システムの分類チャネルから、試料内の2つ以上の粒子集団に関する値を生成するステップが含まれている。この方法には、分類空間内における2つ以上の領域を識別するステップも含まれている。2つ以上の領域のそれぞれには、2つ以上の粒子集団の一方に関する値が配置されている。さらに、この方法には、2つ以上の最適化分類領域を決定するステップが含まれている。2つ以上の最適化分類領域は、それぞれ、2つ以上の領域の一方に対応する。この方法には、さらに、2つ以上の最適化分類領域を利用して、試料に含まれていない別の粒子集団に関する最適化分類領域を補間するステップが含まれている。この実施態様には、本明細書に解説の他の任意のステップを含むことも可能である。
【0019】
もう1つの実施態様は、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するためのコンピュータで実施される方法に関連している。このコンピュータで実施される方法には、試料の粒子集団に関する値が位置する分類空間内の領域を識別するステップが含まれている。これらの値には、試料分析中に、システムの分類チャネルによって生成された値も含まれる。このコンピュータで実施される方法には、領域の1つ以上の特性を利用して集団に関する最適化分類領域を決定するステップが含まれる。この最適化分類領域には、所定のパーセンテージの集団に関する値が含まれる。最適化分類領域は、追加試料中の粒子の分類に用いられる。このコンピュータで実施される方法の実施態様には、本明細書に解説の他の任意のステップを含むことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の他の目的及び利点については、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0021】
本発明には、さまざまな修正や変更形態を受け入れる余地があるが、図面には、例示のため、特定の実施形態が示されており、本明細書において詳述される。しかし、云うまでもないが、図面とそれに対する詳細な説明は、本発明を開示の特定の形態に制限しようとするものではなく、逆に、添付された請求項によって規定される本発明の精神及び範囲内に含まれる、全ての修正、同等、代替実施形態を包含することを意図したものである。
【0022】
本明細書では、「粒子」という用語は、一般に、粒子、微小球体、ポリスチレン・ビーズ、微小粒子、金ナノ粒子、量子ドット、ナノドット、ナノ粒子、ナノシェル、ビーズ、マイクロビーズ、ラテックス粒子、ラテックス・ビーズ、蛍光ビーズ、蛍光粒子、着色粒子、着色ビーズ、組織、細胞、微生物、有機物、非有機物、または、当該技術において既知の他の任意の個別基質または物質を表わすために用いられる。粒子は分子反応のビークルとして機能してもよい。粒子については、参考までに、あたかもそっくりそのまま記載のように、本明細書において援用されている、Fultonに対する米国特許第5,736,330号、Chandler他に対する米国特許第5,981,180号、Fultonに対する米国特許第6,057,107号、Chandler他に対する米国特許第6,268,222号、Chandler他に対する米国特許第6,449,562号、Chandler他に対する米国特許第6,514,295号、Chandler他に対する米国特許第6,524,793号、Chandler他に対する米国特許第6,528,165号に例示されている。本明細書に開示の測定システムと方法は、これらの特許に解説の粒子のどれにでも利用することが可能である。さらに、xMAP微小球体と呼ぶことも可能な、LabMAP微小球体のようなフローサイトメトリで用いられる粒子は、Luminex Corporationから市場で入手することが可能である。「粒子」と「微小球体」という用語は、本明細書において同義的に用いられている。
【0023】
本明細書では、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法が解説される。すなわち、この方法は、より高い正確度である特定の集団からの粒子を分類することができ、かつ、粒子を誤分類する確率が低下するように、測定システムを「調整」するために利用可能である。本明細書において用いられる限りにおいて、「分類」という用語は、一般に、ある試料中における個々の粒子の同一性を確認することと定義される。同一性は、個々の粒子が属する集団に関連する。試料の分析が、単一実験で、複数の異なる粒子集団を用いて実施される場合が多いので、こうした分類は特に重要である。例えば、異なる粒子集団は、一般に、単一の実験で、試料内における異なる検体の存在を検出し、かつ、定量化ができるように、または、そのいずれかを行えるように、粒子に結合した物質のタイプ及び/または粒子に結合した物質の量といった、少なくとも1つの異なる特性を備えている。従って、測定結果を解釈するため、他の測定値と個々の粒子の特性を相関させることができるように、実験で用いられた個々の粒子の同一性が確認されるか、または、分類が決定される。
【0024】
本明細書に記載の方法を実施するように構成可能なシステムには、制限するわけではないが、Luminex100、Luminex HTS、Luminex100E、Luminex Corporationから入手可能なこの製品ファミリのさらなる任意の追加製品が含まれる。こうしたシステムの一般的な例の1つについては、本明細書において後述される。すなわち、本明細書に記載の方法では、フローサイトメータ・ベース・システムにおいて粒子を分類する「マップ方法」を利用して、フローサイトメータ・ベース・システムの1つ以上のパラメータを変更することが可能である。しかしながら、云うまでもないが、本明細書に記載の方法は、個々の粒子または他の個別物質の同一性を確認するか、または、その分類を決定するように構成された、任意の測定システムの1つ以上のパラメータを変更するために利用することも可能である。こうした測定システムの一例としては、蛍光イメージング・システムがある。さらに、本明細書に記載の方法は、粒子分類の正確度の向上させるための利用に制限されるものではない。例えば、本明細書に解説の方法は、制限するわけではないが、粒子に生じる反応性生物の同一性または量といった、他の分類パラメータの決定にも等しく適用することが可能である。さらに、本明細書には、これらの方法に利用可能なさまざまな値も記載されているが、もちろん、本発明に記載の方法は、粒子の1つ以上の特性を確認するために利用することができる、粒子の任意の測定可能パラメータに利用することが可能である。
【0025】
本明細書に提示のさまざまな実施形態の説明による恩恵を受けた通常の当該技術者には明らかなように、本明細書に記載の方法によれば、測定システムによって生成される値を分析するためのいくつかの利点が得られる。すなわち、本明細書に記載の方法によれば、測定システムの物理的パラメータを変更しなくても(例えば、測定システムのそれぞれのコンポーネントの累積公差を変更しなくても)、システム正確度が現在得られる正確度より向上する。従って、本明細書に記載の方法によれば、測定プロセスを複雑にし、製造時間を延長し、製造処理量を減少させ、システム全体のコストを増大させることなく、システム正確度が向上する。さらに、本明細書に記載の方法によれば、測定システムの正確度を低下させずに、ある粒子集団に対応する領域の分類空間を縮小することが可能になるので、現在得られるシステム間整合よりもシステム間整合が向上する。測定システムの物理的コンポーネントを変更することなく、システム間整合を向上させることができるので、本明細書に記載の方法によれば、測定プロセスを複雑にし、製造時間を延長し、製造処理量を減少させ、システム全体のコストを増大させることなく、システム間整合が向上する。
【0026】
図1には、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法の実施形態の1つが例示されている。図1に示すステップの多くは、本発明の実施にとって不可欠ではないという点に留意されたい。図1に例示の方法には、1つ以上のステップの省略または追加が可能であり、この方法は、それにもかかわらず、この実施形態の範囲内で実施することが可能である。さらに、この方法の1つ以上のステップを自動化することが可能であるという点に留意すべきである。こうして、測定システムのユーザによる監視または命令がなくても、この方法の1つ以上のステップを実施することが可能になる。代わりに、システムのオペレータ、現場技術者、または、製造要員といったユーザからの入力またはユーザとの対話に基づいて、この方法の1つ以上のステップを実施することも可能である。さらに、この方法の1つ以上のステップ、あるいは、この方法の全ステップでさえ、コンピュータで実施することが可能である。このようにして、これらのステップの1つ以上は、本明細書に記載のようなプロセッサ、または、当該技術において既知の他の任意のハードウェアまたはソフトウェアでこれらのステップの1つ以上を実行する働きが可能な、システムのプロセッサ、アルゴリズム、または、他のプログラム命令によって実施可能である。
【0027】
図1のステップ10に示すように、この方法には、オプションで、測定システムの較正ステップを含むことが可能である。この方法には、通常のまたは標準的な較正試薬と手順を利用して、システムを較正するステップを含むことが可能である。こうした較正手順の一例としては、Luminex Corporationから市販されているフローサイトメータ・ベースの測定システムで一般に用いられるマップ較正手順がある。例えば、フローサイトメータ・ベースの測定システムでは、粒子内部の、さもなければ、粒子に付着させられた2つ以上の色素の測定強度に基づいて、システムを通過する粒子が同定される。この同定技法は、全チャネル(報告及び分類の両方)において既知の量の蛍光強度を含む較正微小球体の同定に利用することも可能である。較正微小球体測定の実施後、試料微小球体測定結果に関して、報告チャネル及び/または分類チャネルに、精密な補正率を適用することが可能である。ステップ10に利用可能な較正技法の追加例については、その両方とも、そっくりそのまま記載されているかのように、参考までに本明細書で援用されている、Rothによって2003年8月13日に提出された、「Real Time System Calibration Method」と題する米国特許出願第60/494,824号に対する優先権を主張する、Roth他によって2004年8月12日に提出された、「Methods for Controlling One or More Parameters of a Flow Cytometer Type measurement System」と題する米国特許出願第10/918,647号に例示されている。このオプションの較正ステップでは、当該技術において既知の他の任意の較正技法を利用することが可能である。
【0028】
この方法には、ステップ12に示すように、試料を分析して、システムの分類チャネルから試料中の粒子集団に関する値を生成するステップが含まれる。実施形態の1つでは、試料には、マップ較正試薬を含むことが可能である。マップ較正試薬には、Luminex Corporationから100領域LabMAPとして市販されている製品グループからの染色微小球体の1つ以上の集団、あるいは、おそらくは、100領域LabMAPと同様の強度を備えるが、LabMAPの一部ではない微小球体の集団が含まれる。さらに、試料には、少なくとも1つの粒子集団を含む試料のような、当該技術において既知の他の任意の適合する試料を含むことが可能である。
【0029】
実施形態の1つでは、分類チャネルからの値に蛍光値が含まれている。異なる実施形態では、分類チャネルからの値に光の散乱強度値が含まれている。他の実施形態では、分類チャネルからの値に粒子の体積測定値が含まれている。実施形態によっては、値に、蛍光値、光の散乱強度値、粒子の体積測定値のある組み合わせが含まれる場合もある。これらの異なるタイプの値は、それぞれ、線形単位または対数単位で表わすことが可能である。
【0030】
さらに、この方法には、ステップ14に示すように、集団に関する値が位置する、分類空間内のある領域を識別するステップが含まれる。それらの値は、2つの軸のそれぞれに沿って異なる分類チャネルに関する値が配置される、2次元プロットのような当該技術において既知の任意の方法を用いて、分類空間内に編成することが可能である。フローサイトメトリ・ベースの計器に関して、こうしたプロットは、一般に、「マップ」と呼ばれる。集団に関する値が配置された分類空間内の領域の識別には、集団内のできるだけ多くの粒子からの値を含むが、集団の構成員ではない粒子は可能な限り排除した、一群の値のまわりに境界を形成するステップを含むことが可能である。従って、この境界によって、その領域に属する分類空間内の区域が識別される。こうした境界は、ユーザまたはプログラム命令によって生成可能である。
【0031】
この方法には、オプションにより、ステップ16に示すように、領域内に位置する集団の値の1つ以上の特性(領域の特性と呼ばれる)を確認するステップを含む。領域の1つ以上の特性には、領域内における値の平均、算術平均、ピーク、または、中央値を含み、かつ領域の標準偏差を含むことが可能である。こうした領域の特性は、当該技術において既知の方法を用いて確認することが可能である。領域の1つ以上の特性を利用して、いくつかの機能を実施することが可能である。例えば、実施形態の1つでは、この方法に、ステップ18に示すように、領域の特性の少なくとも1つとその少なくとも1つの特性に関する所定の範囲を比較するステップを含むことが可能である。実施形態によっては、所定の範囲は、システムの典型的な、許容し得る、あるいは、期待される性能を表わす場合もある。このようにして、この方法には、オプションにより、ステップ20に示すように、比較ステップで得られた結果に基づいて、システムの性能を評価するステップを含むことが可能である。換言すれば、領域の1つ以上の特性が、それらの特性に関する期待値から大幅に異なる場合、比較ステップによって、これらの大幅な相違を検出し、システム性能のモニタに利用することが可能である。もう1つの例では、特性の少なくとも1つが所定の範囲外にある場合、この方法に、オプション・ステップ22に示すように、システムに対して1つ以上の補正ステップを実施すべきか否かを判定するステップを含む。補正ステップには、例えば、較正、保守、修理、トラブルシューティング、リブート等を含むことが可能である。
【0032】
この方法には、ステップ24に示すように、領域の1つ以上の特性を利用して、集団に関する最適化分類領域を決定するステップが含まれる。最適化分類領域には、所定のパーセンテージの集団に関する値が含まれる。所定のパーセンテージは、実施形態によっては、測定システムの所望の正確度(例えば、98%、95%、90%等)を反映する。もう1つの実施形態では、領域内における値の分布といった領域内における値の特性や、上述の領域に関する他の特性に基づいて、所定のパーセンテージを決定することが可能である。最適化分類領域には、領域内における所定のパーセンテージの値だけしか含まれないので、最適化分類領域は、その分類領域におけるサイズが、必ずしもいつもというわけではないが、通常、分類空間における領域のサイズより小さい。一般に、最適化分類領域は、領域の1つ以上の特性とは異なる1つ以上の特性を備えている。1つ以上の異なる特性には、サイズ、形状、位置、または、それらのある組み合わせを含むことが可能である。実施形態の1つでは、最適化分類領域のサイズは、所定のパーセンテージの集団に関する値を含む最小サイズとすることが可能である。実施形態によっては、最適化分類領域の中心が、領域の値の中央値にいくつかの(例えば、2〜3つの)標準偏差を加えた値だけ中央値から離れた位置にくる場合もある。それらの値の中央値は、ある例では、経験的に求めることが可能である。もう1つの実施形態では、最適化分類領域は、集団に関する値の中央値を取り巻く所定のサイズの境界によって形成される。
【0033】
最適化分類領域は、追加試料中における粒子の分類に利用することが可能である。すなわち、他の試料の粒子に関して生成された分類チャネルの値は、この最適化分類領域、及び、おそらくは、他の最適化分類領域と比較することが可能である。ある粒子の値が、最適化分類領域の1つに含まれる場合、その粒子には、その最適化分類領域に関連した分類が割り当てられる。
【0034】
最適化分類領域によれば、粒子分類におけるシステム正確度が向上し、粒子分類に関するシステム間整合が向上するといった、他の分類方法に比べてかなりの利点が得られる。例えば、最適化分類領域には分類空間の一部が含まれる。最適化分類領域内における分類空間の一部は、上述のように、粒子の値が分類空間のその部分に位置する確率が、所定の確率を超えるように決定することが可能である。所定の確率は、粒子測定の期待される結果に関する統計的分析または他の数学的分析といった、いくつかのパラメータに基づいて決定することが可能である。また、最適化分類領域では、分類空間の一部が除外される。最適化分類領域から除外される分類空間の一部は、粒子の値が分類空間のその除外部分に位置する確率が、所定の確率未満になるように決定することが可能である。この所定の確率は、上述の確率とは異なることになるが、両方の確率とも、同様に決定することが可能である。
【0035】
実施形態によっては、この方法に、オプション・ステップ26に示すように、最適化分類領域の1つ以上の特性を確認するステップを含むことが可能である。しかしながら、最適化分類領域に関する1つ以上の特性が確認されていない場合でも、最適化分類領域を利用して、追加試料中の粒子を分類することが可能であるという点に留意すべきである。最適化分類領域の1つ以上の特性を利用して、いくつかの追加ステップを実施することが可能である。例えば、この方法には、オプション・ステップ28に示すように、最適化分類領域の1つ以上の特性と領域の1つ以上の特性を比較するステップを含むことが可能である。比較される最適化分類領域と領域の1つ以上の特性には、制限するわけではないが、サイズ、重心位置、領域内または最適分類領域内の値に対する最良適合線の勾配、最良適合線のオフセット、または、それらのある組み合わせを含むことが可能である。この比較ステップの結果を利用して、1つ以上の追加ステップを実施することも可能である。こうした例の1つとして、比較ステップの結果が所定の限界を超えると、この方法に、オプション・ステップ30に示すように、システムが誤動作しているか否かを判定するステップを含むことが可能である。所定の限界は、領域の典型的な、許容し得る、あるいは、期待される特性に基づくことが可能である。システムが誤動作していると判定される場合、この方法には、システムに対して上述のような1つ以上の補正ステップを施すべきか否かを判定するステップを含むことが可能である。
【0036】
ステップ12で分析される試料には、1つ以上の追加粒子集団を含むことが可能である。実施形態の1つでは、この方法は、オプション・ステップ32に示すように、1つ以上の追加集団について実施することが可能である。このようにして、この方法には、1つ以上の追加粒子集団のそれぞれについて、最適化分類領域を決定するステップを含むことが可能である。最適化分類領域は、本明細書に記載のように、追加集団について決定することが可能である。オプションで、試料中の全ての粒子集団について、最適化分類領域を決定することはできないという点に留意すべきである。ある試料について2つ以上の最適化分類領域を決定する場合、この方法には、オプション・ステップ34に示すように、2つ以上の最適化分類領域を利用して、試料に含まれていなかった別の粒子集団の最適化分類領域を補間するステップを含むことが可能である。さらに、このようにして、試料に含まれていない2つ以上の粒子集団に関する最適化分類領域を決定することが可能である。
【0037】
図1に示すさまざまなステップを組み合わせて、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法のさまざまな実施形態を生成ことが可能である。例えば、実施形態の1つには、ステップ12に関連して解説のように実施することが可能なシステムを利用して、試料を分析し、システムの分類チャネルから、試料中の2つ以上の粒子集団に関する値を生成するステップを含むことが可能である。さらに、この方法には、ステップ14に関連して解説のように実施することが可能な、分類空間内の2つ以上の領域を識別するステップが含まれる。2つ以上の領域のそれぞれにおいて、2つ以上の粒子集団の1つに関する値の位置が突き止められる。この方法には、ステップ32に関して解説のように実施することが可能な、2つ以上の最適化分類領域を決定するステップを含むことが可能である。2つ以上の最適化分類領域のそれぞれが、2つ以上の領域の1つに対応する。この方法には、さらに、ステップ34に関して解説のように実施することが可能な、2つ以上の最適化分類領域を利用して、試料に含まれていない追加粒子集団に関する最適化分類領域を補間するステップが含まれる。この方法のこの実施形態には、本明細書に解説の他のステップを含むことが可能である。
【0038】
もう1つの例では、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するためのコンピュータで実施される方法に関する実施形態の1つに、ステップ14に関連して解説のように実施することが可能な、試料の粒子集団に関する値が位置する分類空間内の領域を識別するステップが含まれる。それらの値には、システムの分析中にシステムの分類チャネルによって生成された値が含まれる。このコンピュータで実施される方法には、また、ステップ24に関連して解説のように実施することが可能な、領域の1つ以上の特性を利用して、集団に関する最適化分類領域を決定するステップも含まれる。本明細書において後述するように、最適化分類領域には、所定のパーセンテージの集団に関する値が含まれる。最適化分類領域は、本明細書に解説のように、追加試料中の粒子の分類に利用することが可能である。コンピュータで実施される方法に関するこの実施形態には、本明細書に解説の他の任意のステップを含むことが可能である。
【0039】
最適化分類領域を決定するステップの一例には、図2〜図6に例示のデータを生成することが可能な、下記ステップを含むことが可能である。図2〜図6に例示のデータが、本明細書に記載の方法の典型的な例または制限的な例となるように意図されたものではないという点に留意されたい。そうではなく、このデータは、ただ単に、本明細書に解説の方法の理解を深めるためだけに提示されたものである。図2には、蛍光の2つの色を用いて粒子が同定される、フローサイトメータに似た装置から得られたデータが例示されている。蛍光の2つの色は、2つの異なる分類チャネルCH1とCH2を用いて検出された。集団の構成員ではない粒子は可能な限り排除し、集団内のできるだけ多くの粒子からの蛍光データを含む、一群の値のあつまりのまわりに境界が画される。データ・ポイントまわりの白領域は、手描きの境界線によって境界が示されているが、これには、集団に関する値が十分に含まれているが、集団の構成員が蛍光を示す可能性のない余分な空間も含んでいる。この領域は、この余分な空間の一部を排除することによって最適化することが可能であり、その結果、試料に、この集団の構成員ではない他の蛍光粒子が含まれている状況において、最適化分類領域によってそれらを容易に弁別することが可能になる。
【0040】
この集団に最良に適合する線の勾配を得るため、図2に示すデータに線形回帰が適用される。「集団」は、従って、CH1とCH2の中央値の25%内の任意のデータを含むもの(すなわち、Median_CH1+25%、Median_CH1−25%によって両側が境界づけられ、Median_CH2+25%、Median_CH2−25%によって上部と下部が境界づけられたボックス)と定義される。この勾配の決定後、CH1′とCH2′の新しい座標の最良の適合線がほぼ水平になるように(図3に示すように)、全データ・セットが回転させられる。この回転したデータ・セットを用いて、CH1′とCH2′次元における集団に関する中央値と標準偏差が求められる。
【0041】
図4に示すように、その中心が、CH1′とCH2′における中央値であり、その長軸と短軸(必ずしもその順番とは限らないが)が、CH1′とCH2′における標準偏差のある定数C倍である楕円が生成される。この定数は、楕円に所望のパーセンテージの集団内の粒子が含まれるまで調整される。この例の場合、Cの値を3にすると、集団の98.9%を包囲する境界が生成される(図4に示すように)。最後に、図5に示すように、楕円内のデータ・ポイントの集合が回転させられて、CH1とCH2のもとの次元に戻されるが、もとの次元に結果として生じる楕円は、最適化分類領域である。さらに図5に示されるように、最適化分類領域のサイズは、もとの分類領域よりはるかに小さい。
【0042】
さらに、分類領域よりも多い数の標準偏差に対応する軸を備えた楕円を生成することによって、領域まわりにもっと大きい境界を生成することが可能である。このより大きい境界内に配置される他の分類領域(他の集団に関する)がなければ、所定のパーセンテージのこの領域からの粒子だけが、誤って他の領域に分類されることになる。他の粒子集団について、やはり、同様の境界が生成された場合には、この逆も真になる。この例では、分類境界は、両方の軸において集団の重心から標準偏差の3倍だけ離れている。より大きい境界は、標準偏差の5倍だけ離れることが可能であり、この場合、集団内にある96の粒子の100%を包囲するようになる。図6には、もとの領域(白領域)、データ・ポイントの集団、より小さい境界(より小さい楕円)によって形成された第1の最適化分類領域の境界と、回転した座標軸の両方における標準偏差の5倍に基づくより大きい境界(より大きい楕円)によって形成された最適化分類領域が示されている。
【0043】
2つ以上の領域を最適化するステップの一例には、図7−図8に例示のデータを生成することが可能な、下記のステップを含む。図7−図8に例示のデータが、本明細書に記載の方法の典型的な例または制限的な例となるように意図されたものではないという点に留意されたい。そうではなく、このデータは、ただ単に、本明細書に解説の方法の理解を深めるためだけに提示されたものである。図7には、蛍光染色粒子の4つの異なる集団を含む試料の分析中に、フローサイトメータに似た装置によって生成されたデータが例示されている。上記例に解説のように、集団の1つに対応する各領域毎に、最適化楕円領域が生成されたが、最適化分類領域がデータ・ポイントと異なって見えるように、標準偏差の5倍の長軸と短軸を備えた楕円が利用された。実際には、おそらく、もっと小さい分類領域が最適になるであろう。
【0044】
実際には、別の集団に関するデータがなくても、4つの最適化分類領域を利用して、その新しい集団に関する追加最適化分類領域を生成することが可能である。追加最適化分類領域の生成に利用されるパラメータは、CH1とCH2座標によるその位置である。試料の分析によって生じた実際のデータ値から作成された4つの最適化分類領域からモデルが生成されるが、このモデルの入力パラメータも、CH1とCH2座標における領域位置である。従って、実際には、特定の最適化分類領域に関する測定データがなくても、CH1−CH2空間のどこであろうと、追加最適化分類領域の補間が可能である。
【0045】
図7に示す4つの領域に関して、表1に領域座標が示されている。
【0046】
【表1】
【0047】
これらの座標は、もとの分類領域の重心位置を表わしている(図7の白領域によって示される)。
【0048】
重心位置の座標に基づいて、下記統計値が各領域毎に計算される。
1.CH1における重心シフト(CH1におけるもとの領域の重心とCH1における最適化分類領域の重心をつなぐベクトル)、
2.CH2における重心シフト(CH2におけるもとの領域の重心とCH2における最適化分類領域の重心をつなぐベクトル)、
3.集団に関する値を通る最良適合線の勾配、
4.CH1′とCH2′(回転)座標における集団に関する標準偏差、
5.所望のパーセンテージの各集団の粒子に関する値を包囲するのに必要な標準偏差数。
表1に示すCH1とCH2座標の関数としてこれら5つの統計値のそれぞれに関するモデルを生成するため、回帰モデルが作成される。例えば、このデータの場合、統計値3に関する式の形式は、下記の式であった。
勾配=0.515+(CH1*0.00205)+(CH2*0.00165)
【0049】
CH1とCH2の任意の座標対について、これらの5つの統計値が計算されると、その対をなす数だけを利用して、最適化楕円領域を自動的に生成することが可能になる。図8には、図7からのもとの4つの領域に加えて、矢印で表示されたもとの領域について生成された第5の最適化楕円領域が示されている。このプロセスは、複数回数にわたって反復可能であり、その結果、図7に示すように、もとの4つの集団から収集したデータだけを利用して、多くの新しい最適化領域を生成することが可能になる。
【0050】
外部誤差要因を考慮して、ある特定の領域を拡大するステップの一例には、図9−図10に例示のデータを生成することが可能な、下記のステップを含むことが可能である。図9−図10に例示のデータが、本明細書に記載の方法の典型的な例または制限的な例となるように意図されたものではないという点に留意されたい。そうではなく、このデータは、ただ単に、本明細書に解説の方法の理解を深めるためだけに提示されたものである。経験から明らかなように、古い較正試薬のような他の誤差要因によって、所望のパーセンテージの各領域における粒子を捕捉する(上記例において解説のように実施可能である)境界のサイズが拡大される可能性がある。ある特定領域の重心が、これらの誤差要因に基づくある特定数の単位だけずれる可能性のあることが分っている場合、その量だけ、領域を拡大することが可能である。上述の最適化分類領域を決定するステップの例において、ユーザが、CH1軸に関して、いずれかの方向に2カウント分のシフトを考慮したいという場合には、CH1方向における領域の重心の右と左の境界を、両方とも、重心からその量だけシフトさせることが可能である(図9に示すように)。同様に、この方法は、同じ領域におけるCH2の方向または両方向に適用することが可能である。
【0051】
図11には、本明細書に記載の方法を実施するために利用可能な測定システムの一例が示されている。図11が、一定の比率で描かれているわけではないという点に留意されたい。すなわち、図の構成要素の一部の比率は、その構成要素の特徴を強調するため、大幅に誇張されている。測定システムの構成要素の中には、分りやすくするため、図に含まれなかったものもある。
【0052】
図11において、測定システムは、微小球体42が流れる、キュベット40の断面を通る平面に沿って示されている。一例を挙げると、キュベットは、標準的なフローサイトメータで用いられるような、標準的な石英キュベットである。しかしながら、分析用の試料の供給には、任意の他の適合するタイプの視検室または供給室を利用することも可能である。測定システムには光源44が含まれる。光源44には、レーザのような、当該技術において既知の任意の適合する光源を含むことが可能である。光源は、青色光または緑色光のような、1つ以上の波長を備えた光を放出するように構成される。光源44は、微小球体を、それらがキュベットを流れる際に照射するように構成される。この照射によって、微小球体が、1つ以上の波長または波長域を備えた蛍光を放出する。実施形態によっては、システムに、光源からの光を微小球体または流路に集束させるように構成された1つ以上のレンズ(不図示)を含むことも可能である。システムには、2つ以上の光源を含むことも可能である。実施形態の1つでは、光源は、波長または波長域の異なる光(例えば、青色光と緑色光)で微小球体を照射するように構成することが可能である。実施形態によっては、異なる方向に微小球体を照射するように、光源を構成してもよい。
【0053】
微小球体から前方に散乱する光は、折りたたみミラー48または別のこうした光方向づけコンポーネントによって検出システム46に送られる。代わりに、検出システム46を前方散乱光の光路内に直接配置することが可能である。こうして、システムに、折りたたみミラーまたは他の光方向づけコンポーネントを含まないようにすることも可能である。実施形態の1つにおいて、前方散乱光が、図11に示すように、光源44による照射方向から約180度の角度に微小球体によって散乱する光である。前方散乱光の角度が、照射方向から正確に180度ではなくて、光源からの入射光が検出システムの感光表面に入射できないといった場合もある。例えば、前方散乱光は、微小球体によって、照射方向から180度未満または180度を超える角度で散乱する光(例えば、約170度、約175度、約185度、または、約190度の角度で散乱する光)でもよい。
【0054】
微小球体によって照射方向から約90度の角度で散乱する光を集めることも可能である。実施形態の1つでは、この散乱光は、1つ以上のビーム・スプリッタまたはダイクロイック・ミラーによって、2つ以上の光ビームに分割することが可能である。例えば、照射方向に対して約90°の角度で散乱する光は、ビーム・スプリッタ50によって2つの異なるビームに分割することが可能である。ビーム・スプリッタ52、54によって、2つの異なる光ビームをもう一度分割し、4つの異なる光ビームを生じさせることができる。光ビームは、それぞれ、1つ以上の検出器を含むことが可能な異なる検出システムに送ることが可能である。例えば、4つの光ビームのうちの1つは、検出システム56に送られる。検出システム56は、微小球体による散乱光を検出するように構成可能である。
【0055】
検出システム46及び/または検出システム56によって検出される散乱光は、一般に、光源によって照射される粒子の体積に比例する。従って、検出システム46の出力信号及び/または検出システム46の出力信号を利用して、照射ゾーンまたは検出ウィンドウ内にある粒子の直径及び/または体積を求めることが可能である。さらに、検出システム46及び/または検出システム56の出力信号を利用して、くっついた、または、ほぼ同時に照射ゾーンを通過する2つ以上の粒子を同定することが可能である。従って、こうした粒子は、他の試料微小球体や較正微小球体から区別することが可能である。さらに、検出システム46及び/または検出システム56の出力信号を利用して、試料微小球体と較正微小球体を区別することが可能である。
【0056】
他の3つの光ビームは、検出システム58、60、62に送られる。検出システム58、60、62は、微小球体によって放出される蛍光を検出するように構成される。検出システムは、それぞれ、異なる波長または異なる波長範囲の蛍光を検出する。例えば、検出システムの1つは、緑色蛍光を検出する。検出システムのもう1つは、橙黄色蛍光を検出し、もう1つの検出システムは赤色蛍光を検出する。
【0057】
実施形態によっては、検出システム58、60、62に、それぞれ、スペクトル・フィルタ64、66、68が結合されている。これらのスペクトル・フィルタは、検出システムが検出するように構成された波長以外の波長の蛍光を阻止する。さらに、検出システムのそれぞれに、1つ以上のレンズ(不図示)を光学的に結合させてもい。レンズは、散乱光または放出蛍光を検出器の感光表面に集束させるように構成される。
【0058】
検出器の出力電流のそれぞれが入射する蛍光に比例し、電流パルスとなる。電流パルスは、電圧パルスに変換され、低域フィルタリングされ、A/D変換器でディジタル化される。変換、フィルタリング、ディジタル化は、当該技術において既知の任意の適合するコンポーネントを用いて実施できる。測定システムはプロセッサ70を含む。プロセッサ70は、1つ以上の伝送媒体、及び、オプションにより、プロセッサと検出器の間に挿入された1つ以上のコンポーネントによって、検出器に結合される。例えば、プロセッサ70は、伝送媒体72によって検出システム56に結合される。伝送媒体は、当該技術において既知の任意の適合する伝送媒体を含み、「有線」部分と「無線」部分を含むこともできる。一例として、プロセッサは、パルスの下の領域を積分し、蛍光の強度を表わす数を提供するDSPを含むことが可能である。プロセッサは、本明細書に記載の実施形態の1つ以上のステップを実施するように構成されてもよい。
【0059】
実施形態によっては、微小球体から発生する出力信号を利用して、微小球体の同一性を確認し、微小球体の表面に生じる反応に関する情報を把握するようにしてもよい。例えば、検出システムのうちの2つのシステムの出力信号を利用して、微小球体の同一性を確認し、他の検出システムの出力信号を利用して、微小球体の表面に生じる反応を把握することができる。従って、検出器とスペクトル・フィルタの選択は、微小球体に取り込まれるか、または、結合された色素のタイプ、及び/または、測定される反応(すなわち、反応に関与する反応物質に取り込まれるか、または、結合された色素)によって異なる。
【0060】
検出システム46、56、58、60、62によって生じる値は、本明細書に記載の方法に利用される。特定の実施形態の1つでは、分類空間において、検出システムのうちの2つのシステムによって生じる微小球体に関する値と、上述のように決定される1つ以上の最適化分類領域を比較する。微小球体の分類は、それらの値が位置する最適化分類領域に割り当てられた分類として決定される。
【0061】
試料微小球体の同一性を確認するために用いられる検出システム(例えば、検出システム58、60)は、アバランシェ・フォトダイオード(APD)、光電子増倍管(PMT)、または、別の光検出器とすることが可能である。微小球体の表面に生じる反応を識別するために利用される検出システム(例えば検出システム62)は、PMT、APD、または、別の形態の光検出器とすることが可能である。
【0062】
図11のシステムは、図示のように、異なる色素特性を有する微小球体間における識別を行うため、2つの異なる検出ウィンドウを備えた2つの検出システムを含んでいるが、もちろん、3つ以上のこうした検出ウィンドウ(すなわち、3つの検出ウィンドウ、4つの検出ウィンドウ等)を含むことも可能である。こうした実施形態の場合、このシステムには、追加ビーム・スプリッタと、他の検出ウィンドウを備えた追加検出システムを含む。さらに、追加検出システムのそれぞれに、スペクトル・フィルタ及び/またはレンズを結合させることが可能である。もう1つの実施形態では、このシステムに、微小球体の表面で反応するさまざまな材料の識別を行うように構成された2つ以上の検出システムを含ませてもよい。さまざまな反応物質材料は、微小球体の色素特性とは異なる色素特性を備えることが可能である。
【0063】
本明細書に記載の方法の実施に利用可能な測定システムの追加例が、本明細書にそっくりそのまま記載されているかのように、参考までに援用されている、Chandler他に対する米国特許第5,981,180号、Chandlerに対する米国特許第6,046,807号、Chandlerに対する米国特許第6,139,800号、Chandlerに対する米国特許第6,366,354号、Chandlerに対する米国特許第6,411,904号、Chandler他に対する米国特許第6,449,562号、Chandler他に対する米国特許第6,524,793号に例示されている。本明細書に記載の測定システムは、さらに、これらの特許に記載のように構成することも可能である。
【0064】
本明細書に記載の方法を実施するプログラム命令は、搬送媒体によって伝送するか、あるいは、搬送媒体に記憶させることが可能である。搬送媒体は、ワイヤ、ケーブル、または、無線伝送リンクといった伝送媒体、あるいは、こうしたワイヤ、ケーブル、または、リンクに沿って進行する信号とすることが可能である。搬送媒体は、読み取り専用メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、磁気または光ディスク、または、磁気テープのような記憶媒体とすることも可能である。
【0065】
実施形態の1つでは、プロセッサは、プログラム命令を実行して、上記実施形態によるコンピュータで実施される方法を実施する用に構成される。プロセッサは、パーソナル・コンピュータ・システム、メインフレーム・コンピュータ・システム、ワークステーション、ネットワーク・アプライアンス、インターネット・アプライアンス、携帯端末(「PDA」)、テレビジョン・システム、または、他の装置を含むさまざまな形態とすることができる。一般に、「コンピュータ・システム」という用語は、記憶媒体からの命令を実行する、1つ以上のプロセッサを備えた任意の装置を包含するように広義に定義される。
【0066】
プログラム命令は、とりわけ、手順ベース技法、コンポーネント・ベース技法、及び/または、オブジェクト指向技法を含む、さまざまな方法の任意の1つで実現される。例えば、プログラム命令は、ActiveXコントロール、C++オブジェクト、Java(登録商標)Beans、Microsoft Foundation Class(「MFC」)、または、他のテクノロジまたは技法を用いて実現される。
【0067】
本開示の恩恵を受けた当該技術者には明らかなように、本発明は、測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法を提供するものである。この解説に鑑みて、当該技術者には、本発明のさまざまな形態のさらなる修正と変更実施形態が明らかになるであろう。従って、この解説は、単なる例示とみなすべきであり、本発明を実施する一般的なやり方を当該技術者に教示するためのものである。もちろん、本明細書に示され、解説された本発明の形態は、現在のところ望ましい実施形態である。全て、本発明のこの解説の恩恵に浴した後の当該技術者には明らかなように、本明細書例示され、解説されたものの代わりになる要素及び材料を用いることもできるし、部品及びプロセスを逆にすることもできるし、本発明のいくつかの特徴を単独で利用することも可能である。付属の請求項に記載の本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に解説の要素に変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】測定システムの1つ以上のパラメータを変更するための方法に関する実施形態の1つを例示したフローチャートである。
【図2】単一染色粒子集団に関する2パラメータ蛍光データを備えたフローサイトメータ・データを例示したプロットである。
【図3】回転させた、最良適合線を備える図2のデータを例示したプロットである。
【図4】回転座標において図3のデータの境界を示す3標準偏差楕円を例示したプロットである。
【図5】最適化楕円分類領域、図2のもとの領域、及び、粒子集団に関する値を例示したプロットである。
【図6】図5の最適化分類領域まわりのより大きい境界を例示したプロットである。
【図7】異なる粒子集団に関して、それぞれ、4つの異なる領域を備えた、2パラメータ蛍光プロットにおけるフローサイトメータ・データを例示したプロットである。
【図8】新しいパラメータに基づいて生成された最適化分類領域を備える、図7の4つのもとの領域を例示したプロットである。
【図9】CH1方向に拡大された領域を例示したプロットである。
【図10】CH1とCH2方向に拡大された領域を例示したプロットである。
【図11】本明細書に解説の方法を実施するために利用可能な、フローサイトメータ・ベースの測定システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0069】
40 キュベット、42 微小球体、44 光源、46 検出システム、48 折りたたみミラー、50 ビーム・スプリッタ、52 ビーム・スプリッタ、54 ビーム・スプリッタ、56 検出システム、58 検出システム、60 検出システム、62 検出システム、64 スペクトル・フィルタ、66 スペクトルフィルタ、68 スペクトル・フィルタ、70 プロセッサ、72 伝送媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定システムの1つ以上のパラメータを変更する方法であって、
前記システムを利用して、試料を分析し、前記システムの分類チャネルから前記試料中のある粒子集団に関する値を生成するステップと、
前記集団に関する値が位置する分類空間内の領域を識別するステップと、
ある所定のパーセンテージの前記集団に関する値に基づき、前記領域の1つ以上の特性を利用して、前記所定のパーセンテージの前記集団に関する値を含むように、前記集団に関する最適化分類領域を決定するステップとを含み、前記最適化分類領域が、追加試料中の粒子の分類に利用されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記最適化分類領域の1つ以上の特性が前記領域の前記1つ以上の特性と異なり、前記1つ以上の特性に、サイズ、形状、位置、または、それらのある組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記分析前に、前記システムを較正するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料にマップ較正試薬を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記領域の1つ以上の特性に、前記領域における値の平均、算術平均、ピーク、または、中央値を含み、さらに前記領域における値の標準偏差を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記最適化分類領域の中心が、前記集団に関する値の中央値にいくつかの標準偏差を加えた値だけ前記中央値から離れた位置にくることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記最適化分類領域が、前記集団に関する値の中央値を取り巻く所定のサイズの境界によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最適化分類領域のサイズが、前記所定のパーセンテージの前記集団に関する値を含む最小サイズであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分類チャネルからの値に蛍光値を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分類チャネルからの値に光散乱強度値を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記分類チャネルからの値に前記粒子の体積測定値を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記試料に1つ以上の追加粒子集団を含み、前記方法が、さらに、前記1つ以上の追加集団に関する方法を実施するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記試料に、1つ以上の追加粒子集団を含み、前記方法が、さらに、前記1つ以上の追加集団に関する方法を実施するステップと、前記集団と前記1つ以上の追加集団の前記最適化分類領域を利用して、前記試料に含まれていなかった別の粒子集団に関する最適化分類領域を補間するステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記領域の1つ以上の特性に、前記集団に関する値の平均、算術平均、ピーク、または、中央値を含む、さらに前記集団に関する値の標準偏差を含み、前記方法が、さらに、前記領域の1つ以上の特性のうちの少なくとも1つと、前記領域の1つ以上の特性のうちの前記少なくとも1つに関する所定の範囲を比較するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記比較結果に基づいて、前記システムの性能を評価するステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記領域の1つ以上の特性のうちの前記少なくとも1つが前記所定の範囲外である場合、前記方法が、さらに、前記システムに対して、1つ以上の補正ステップを施すべきか否かを判定するステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記最適化分類領域の1つ以上の特性と前記領域の1つ以上の特性を比較するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記最適化分類領域及び前記領域の前記1つ以上の特性に、サイズ、重心位置、前記領域または前記最適化分類領域内の値に対する最良適合線の勾配、前記最良適合線のオフセット、または、それらのある組み合わせを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記比較結果が所定の限界を超えると、前記方法が、さらに、前記システムが誤動作しているか否かを判定するステップを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記最適化分類領域に、前記分類空間の一部を含み、前記粒子の値が前記分類空間の前記一部に位置する確率が、所定の確率を超えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記最適化分類領域において前記分類空間の一部が除外され、前記粒子の値が前記分類空間の前記一部に位置する確率が、所定の確率未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記値が線形単位または対数単位で表わされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
測定システムの1つ以上のパラメータを変更する方法であって、
前記システムを利用して、試料を分析し、前記システムの分類チャネルから前記試料中の2つ以上の粒子集団に関する値を生成するステップと、
それぞれ、前記2つ以上の粒子集団の1つに関する値が位置する、分類空間内の2つ以上の領域を識別するステップと、
それぞれ、前記2つ以上の領域の1つに対応する、2つ以上の最適化分類領域を決定するステップと、
前記2つ以上の最適化分類領域を利用して、前記試料に含まれていない追加粒子集団に関する最適化分類領域を補間するステップと
を含む方法。
【請求項24】
測定システムの1つ以上のパラメータを変更する、コンピュータで実施される方法であって、
試料の分析中に前記システムの分類チャネルによって生成される値を含む、前記試料の粒子集団に関する値が位置する、分類空間内の領域を識別するステップと、
ある所定のパーセンテージの前記集団に関する値に基づき、前記領域の1つ以上の特性を利用して、前記所定のパーセンテージの前記集団に関する値を含むように、前記集団に関する最適化分類領域を決定するステップとを含み、前記最適化分類領域が、追加試料中の粒子の分類に利用されることを特徴とする方法。
【請求項1】
測定システムの1つ以上のパラメータを変更する方法であって、
前記システムを利用して、試料を分析し、前記システムの分類チャネルから前記試料中のある粒子集団に関する値を生成するステップと、
前記集団に関する値が位置する分類空間内の領域を識別するステップと、
ある所定のパーセンテージの前記集団に関する値に基づき、前記領域の1つ以上の特性を利用して、前記所定のパーセンテージの前記集団に関する値を含むように、前記集団に関する最適化分類領域を決定するステップとを含み、前記最適化分類領域が、追加試料中の粒子の分類に利用されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記最適化分類領域の1つ以上の特性が前記領域の前記1つ以上の特性と異なり、前記1つ以上の特性に、サイズ、形状、位置、または、それらのある組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記分析前に、前記システムを較正するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料にマップ較正試薬を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記領域の1つ以上の特性に、前記領域における値の平均、算術平均、ピーク、または、中央値を含み、さらに前記領域における値の標準偏差を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記最適化分類領域の中心が、前記集団に関する値の中央値にいくつかの標準偏差を加えた値だけ前記中央値から離れた位置にくることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記最適化分類領域が、前記集団に関する値の中央値を取り巻く所定のサイズの境界によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最適化分類領域のサイズが、前記所定のパーセンテージの前記集団に関する値を含む最小サイズであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分類チャネルからの値に蛍光値を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分類チャネルからの値に光散乱強度値を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記分類チャネルからの値に前記粒子の体積測定値を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記試料に1つ以上の追加粒子集団を含み、前記方法が、さらに、前記1つ以上の追加集団に関する方法を実施するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記試料に、1つ以上の追加粒子集団を含み、前記方法が、さらに、前記1つ以上の追加集団に関する方法を実施するステップと、前記集団と前記1つ以上の追加集団の前記最適化分類領域を利用して、前記試料に含まれていなかった別の粒子集団に関する最適化分類領域を補間するステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記領域の1つ以上の特性に、前記集団に関する値の平均、算術平均、ピーク、または、中央値を含む、さらに前記集団に関する値の標準偏差を含み、前記方法が、さらに、前記領域の1つ以上の特性のうちの少なくとも1つと、前記領域の1つ以上の特性のうちの前記少なくとも1つに関する所定の範囲を比較するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記比較結果に基づいて、前記システムの性能を評価するステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記領域の1つ以上の特性のうちの前記少なくとも1つが前記所定の範囲外である場合、前記方法が、さらに、前記システムに対して、1つ以上の補正ステップを施すべきか否かを判定するステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記最適化分類領域の1つ以上の特性と前記領域の1つ以上の特性を比較するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記最適化分類領域及び前記領域の前記1つ以上の特性に、サイズ、重心位置、前記領域または前記最適化分類領域内の値に対する最良適合線の勾配、前記最良適合線のオフセット、または、それらのある組み合わせを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記比較結果が所定の限界を超えると、前記方法が、さらに、前記システムが誤動作しているか否かを判定するステップを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記最適化分類領域に、前記分類空間の一部を含み、前記粒子の値が前記分類空間の前記一部に位置する確率が、所定の確率を超えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記最適化分類領域において前記分類空間の一部が除外され、前記粒子の値が前記分類空間の前記一部に位置する確率が、所定の確率未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記値が線形単位または対数単位で表わされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
測定システムの1つ以上のパラメータを変更する方法であって、
前記システムを利用して、試料を分析し、前記システムの分類チャネルから前記試料中の2つ以上の粒子集団に関する値を生成するステップと、
それぞれ、前記2つ以上の粒子集団の1つに関する値が位置する、分類空間内の2つ以上の領域を識別するステップと、
それぞれ、前記2つ以上の領域の1つに対応する、2つ以上の最適化分類領域を決定するステップと、
前記2つ以上の最適化分類領域を利用して、前記試料に含まれていない追加粒子集団に関する最適化分類領域を補間するステップと
を含む方法。
【請求項24】
測定システムの1つ以上のパラメータを変更する、コンピュータで実施される方法であって、
試料の分析中に前記システムの分類チャネルによって生成される値を含む、前記試料の粒子集団に関する値が位置する、分類空間内の領域を識別するステップと、
ある所定のパーセンテージの前記集団に関する値に基づき、前記領域の1つ以上の特性を利用して、前記所定のパーセンテージの前記集団に関する値を含むように、前記集団に関する最適化分類領域を決定するステップとを含み、前記最適化分類領域が、追加試料中の粒子の分類に利用されることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−518106(P2007−518106A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549434(P2006−549434)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/000509
【国際公開番号】WO2005/071389
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(504187249)ルミネックス・コーポレーション (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/000509
【国際公開番号】WO2005/071389
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(504187249)ルミネックス・コーポレーション (21)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]