説明

測定機の回転精度補正方法および測定機

【課題】位相差法の欠点を解消でき、かつ、既存の装置を改良することなく信頼性の高い測定データが得られる測定機の回転精度補正方法を提供する。
【解決手段】回転機構(回転テーブル3)を有する測定機1の回転精度補正方法であって、測定機の回転機構を使って予めデータ採取位置14の形状データが値付けされたマスターワークMWを回転させながら、そのマスターワークのデータ採取位置の形状を検出器7によって測定し、そのマスターワーク測定データから前記値付けされた形状データを差し引いて回転機構の回転精度データを求める回転精度データ算出工程と、前記測定機の回転機構を使ってワークを回転させながら、そのワークの形状を検出器によって測定し、そのワーク測定データを求めるワーク測定データ算出工程と、前記ワーク測定データから前記回転精度データを差し引いてワークの真値データを求めるワーク形状演算工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定機の回転精度補正方法および測定機に関する。たとえば、真円度測定機など、回転機構を有する測定機において、回転機構の回転精度を補正する測定機の回転精度補正方法および測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、真円度測定機など、回転機構をガイド(基準)として備えた測定機において、ワークを測定した際、その測定データは、ワークの形状データと回転機構の機械的精度(回転精度)が含まれたものであるから、真のワーク形状を抽出するためには、回転機構の回転精度を測定データから分離、除去する必要がある。
【0003】
従来、回転機構の回転精度を測定データから分離、除去する方法として、
(1)表面が滑らかな球状のマスターワーク、たとえば、半球状のマスターワーク(基準半球)を測定し、その測定データを回転精度としてワーク測定データから分離、除去する方法、
(2)基準半球を回転テーブルに対して一定ピッチずつ位相をずらしながら測定を行う位相差法、
などが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の(1)および(2)の方法では、次のような課題がある。
(1)の測定法では、基準半球の形状誤差の存在などがあることから、信頼性が低い。
(2)の位相差法では、基準半球を回転テーブルに対して一定ピッチずつずらしながら測定を行う必要があり、位相を正確にずらすには特殊な治具や熟練の技術が必要なうえ、ずらし量の分割数が多くなればなるほど測定工数もかかる。
【0005】
本発明の目的は、上述した従来の測定法、とくに位相差法の欠点を解消できるとともに、既存の装置などを改良することなく、信頼性の高い測定データが得られる測定機の回転精度補正方法および測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明の測定機の回転精度補正方法は、上記目的を達成するため、次の構成を採用する。
請求項1に記載の測定機の回転精度補正方法は、回転機構を有する測定機の回転精度補正方法であって、前記測定機の回転機構を使って予めデータ採取位置での形状データが高精度測定装置で値付けされたマスターワークを回転させながら、そのマスターワークのデータ採取位置の形状を検出器によって測定し、そのマスターワーク測定データから前記値付けされた形状データを差し引いて回転機構の回転精度データを求める回転精度データ算出工程と、前記測定機の回転機構を使ってワークを回転させながら、そのワークの形状を検出器によって測定し、そのワーク測定データを求めるワーク測定データ算出工程と、前記ワーク測定データから前記回転精度データを差し引いてワークの真値データを求めるワーク形状演算工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、回転精度データ算出工程において、測定機の回転機構を使って予めデータ採取位置での形状データが値付けされたマスターワークを回転させながら、そのマスターワークのデータ採取位置の形状を検出器によって測定し、そのマスターワーク測定データから値付けされた形状データを差し引いて回転機構の回転精度データを求める。また、ワーク測定データ算出工程において、測定機の回転機構を使ってワークを回転させながら、そのワークの形状を検出器によって測定し、そのワーク測定データを求める。ワーク形状演算工程においては、ワーク測定データから回転精度データを差し引いてワークの真値データを求める。
従って、回転精度データ算出工程においては、位相差法のように、マスターワークを回転機構に対して一定ピッチずつ、ずらす必要もないから、位相差法の欠点、つまり、熟練や工数を要するという欠点を解消できる。また、ワーク測定データに対して処理する手法であるため、測定機に対して特別な細工を行うことなく、信頼性の高い測定データを得ることができる。更に、回転精度データの算出や、ワーク測定データに対する回転精度データの補正処理については、測定機とは独立したアプリケーションで行うことができるから、たとえば、マスターワーク測定データの平均化処理(同位置を同測定条件で繰り返し測定して得られた複数のマスターワーク測定データからその平均値を求める処理)などのデータ処理を施すことにより、電気的ノイズや測定環境による測定データのバラツキを低減し、より高精度な補正を実現できる。
【0008】
請求項2に記載の測定機の回転精度補正方法は、回転機構を有する測定機の回転精度補正方法であって、前記測定機の回転機構を使って予めデータ採取位置での形状データが高精度測定装置で値付けされたマスターワークを回転させながら、そのマスターワークのデータ採取位置の形状を検出器によって測定し、そのマスターワーク測定データから前記値付けされた形状データを差し引いて回転機構の回転精度データを求める回転精度データ算出工程と、この回転精度データ算出工程で求められた回転精度データを保存する回転精度データ保存工程と、前記測定機の回転機構を使ってワークを回転させながら、そのワークの形状を検出器によって測定し、そのワーク測定データを求めるワーク測定データ算出工程と、このワーク測定データ算出工程で求められたワーク測定データを保存するワーク測定データ保存工程と、前記各保存工程で保存された前記ワーク測定データおよび回転精度データを読み出し、ワーク測定データから回転精度データを差し引いてワークの真値データを求めるワーク形状演算工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、請求項1に対して、回転精度データを保存する回転精度データ保存工程と、ワーク測定データを保存するワーク測定データ保存工程とが付加されているから、これらの回転精度データおよびワーク測定データを別々の時点で取得、保存しておき、任意時(必要時)に、ワーク測定データから回転精度データを差し引いてワークの真値データを求めることも可能である。
【0010】
請求項3に記載の測定機の回転精度補正方法は、請求項1または請求項2に記載の測定機の回転精度補正方法において、前記回転精度データ算出工程では、上面に半球状のマスターワークを有する円柱状の台座と、この台座またはマスターワークに一部が露出した状態で埋め込まれた原点設定用の基準球とを備えた測定用治具を用い、前記基準球の頂点に測定機の検出器を位置させて測定原点を設定したのち、検出器をマスターワークのデータ採取位置に位置させるとともに、回転機構によってマスターワークを回転させながらマスターワークを測定することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、上面に半球状のマスターワークを有する台座および原点設定用の基準球を備えた測定用治具を用い、まず、原点設定用の基準球に測定機の検出器を位置させて測定原点を設定したのち、検出器をマスターワークのデータ採取位置に位置させるとともに、回転機構によってマスターワークを回転させながらマスターワークを測定するようにしたので、マスターワークのデータ採取位置に検出器を正確に位置させることができるため、マスターワークの測定を高精度に行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の測定機は請求項1から請求項3のいずれかに記載された測定機の回転精度補正方法によって回転機構の補正を行うことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、真円度測定機の回転精度補正方法に適用した例である。
図1は本実施形態の真円度測定機1を示している。同真円度測定機1は、ベース2と、このベース2の上面一側(左側)寄りに垂直な軸(Z軸)を中心として回転可能に配置された回転テーブル3と、前記ベース2の上面他側(右側)寄りにZ軸と平行に配置されたコラム4と、このコラム4に沿って上下方向(Z軸方向)へ昇降可能に設けられたスライダ5と、このスライダ5に前記コラム4に対して直交する方向(X軸方向)へ進退可能に設けられたアーム6と、このアーム6の先端にY軸方向へ位置調整可能に取り付けられ先端に測定子7Aを有する検出器7とから構成されている。
【0014】
前記回転テーブル3の上には、図示省略のワークが載置されるようになっているとともに、測定用治具11を介してマスターワークMWが載置されるようになっている。
測定用治具11は、上面13にマスターワークMWを有する短円柱状の台座12と、この台座12の周面に半分が露出した状態で埋設された基準球15とを備えている。台座12の外径とマスターワークMWとは同心に配置されている。マスターワークMWは、半球形状に形成され、予め決めたデータ採取位置14、ここでは、直径が略最大径付近の外周上の形状データが別の高精度測定装置によって測定され、値付けされている。
【0015】
なお、回転テーブル3の回転角度データ、スライダ5の高さ位置(Z軸方向の位置データ)、アーム6の進退量(X軸方向の位置データ)、検出器7の調整量(Y軸方向の位置データ)などは、図示省略の検出手段によって検出できるようになっている。
また、回転テーブル3およびこれを回転駆動させる駆動機構(図示省略)によって、ワークまたはマスターワークMWをZ軸を中心として回転させる回転機構(ガイド)が構成されている。
【0016】
図2は真円度測定機1からの測定データを取り込んで処理するデータ処理装置21を示している。同データ処理装置21は、制御装置22と、記憶装置23と、表示装置24とから構成されている。
制御装置22は、予め記憶された処理プログラムに従って、図3〜図5に示す各工程(処理)を実行する機能を備える。つまり、真円度測定機1において、予めデータ採取位置14での形状データが値付けされたマスターワークMWのデータ採取位置14の形状が測定されたとき、そのマスターワーク測定データを取り込み、このマスターワーク測定データから前記値付けされた形状データを差し引いて回転機構の回転精度データを求める回転精度データ算出工程と、この回転精度データ算出工程で求められた回転精度データを保存する回転精度データ保存工程(図3参照)と、真円度測定機1において、ワークが測定されたとき、そのワーク測定データを求めるワーク測定データ算出工程と、このワーク測定データ算出工程で求められたワーク測定データを保存するワーク測定データ保存工程(図4参照)と、保存された前記ワーク測定データおよび回転精度データを読み出し、ワーク測定データから回転精度データを差し引いてワークの真値データを求めるワーク形状演算工程(図5参照)とを実行する機能を備える。
【0017】
次に、本実施形態の測定方法を説明する。
(回転精度データ算出工程および回転精度データ保存工程)
真円度測定機1を使って、予め決めたデータ採取位置14での形状データが値付けされた半球状のマスターワークMWのデータ採取位置14の形状を測定し、そのマスターワーク測定データから前記値付けされた形状データを差し引いて回転機構の回転精度データを求めたのち、その回転精度データを保存する。
具体的には、図3に示すように、ステップ(ST)1において、まず、マスターワークMWを測定する。即ち、図6(A)に示すように、マスターワークMWを有する測定用治具11を回転テーブル3上に載置し、基準球15と回転テーブル3の0°が一致するようにしながら、回転テーブル3の軸心と台座12の外径とが同心になるように調整する。こののち、検出器7の測定子7Aを基準球15に接触させ、測定子7Aが上下および前後とも基準球15の頂点を捕らえるように、検出器7の位置を調整したのち、高さカウンタ(Z軸方向の位置検出器)を「0」にセットする。
ついで、図6(B)に示すように、検出器7の測定子7AをマスターワークMWのデータ採取位置14に接触、位置決めし、この状態において、回転テーブル3を回転させて真円度測定を行う。すると、マスターワークMWの形状と回転テーブル3の回転精度によって検出器7の測定子7Aが変位するから、その変位量が各軸方向の位置データとともにデータ処理装置21の制御装置22に送られる。制御装置22は、スライダ5の高さ(Z軸方向位置)、アーム6の進退量(X軸方向位置)、検出器7の調整量(Y軸方向位置)および測定子7Aの変位量から、マスターワークMWのデータ採取位置14の形状を算出し、そのマスターワーク測定データを記憶装置23に書き込む。
【0018】
次に、ST2において、マスターワーク測定データから予め値付けされた形状データを差し引いて、回転精度データを求める。この際、マスターワークMWのデータ採取位置14の形状データについては、別の高精度測定装置によって計測され、予め、記憶装置23に格納されている。従って、記憶装置23からマスターワーク測定データとマスターワークMWの値付けされた形状データとを読み出し、マスターワーク測定データから形状データを差し引いて、回転精度データを求める。
次に、ST3において、求めた回転精度データを記憶装置23に保存する。
【0019】
(ワーク測定データ算出工程およびワーク測定データ保存工程)
真円度測定機1を使って、ワークWを測定し、そのワーク測定データを求めたのち、そのワーク測定データを保存する。
具体的には、図4に示すように、ST11において、まず、ワークWを測定する。ワークWを回転テーブル3上に垂直に立てて載置したのち、検出器7の測定子7AをワークWの測定面に接触させて、測定を行う(図7参照)。この場合、真円度や、円筒度などの測定を行う。
次に、ST12において、ワーク測定データを保存する。つまり、ST11において測定されたワーク測定データがデータ処理装置21へ送られてくるので、そのワーク測定データを記憶装置23に保存する。
【0020】
(ワーク形状演算工程)
各保存工程で保存されたワーク測定データおよび回転精度データを読み出し、ワーク測定データから回転度精度データを差し引いて、ワークの真値データを求める。
具体的には、図5に示すように、ST21において、記憶装置23からワーク測定データを読み出す。
次に、ST22において、記憶装置23から回転精度データを読み出す。
次に、ST23において、読み出したワーク測定データから回転精度データを差し引いて、ワークの真値データを求める。
次に、ST24において、求めたワークの真値データを記憶装置23に保存する。つまり、記憶装置23には、ワーク測定データ対して、回転機構の回転精度が補正処理されたワークの真値データが保存されるから、信頼性の高い測定データを得ることができる。
【0021】
以上述べた実施形態によれば、回転精度データ算出工程において、真円度測定機1を使って、予めデータ採取位置14の形状データが値付けされたマスターワークMWを測定し、そのマスターワーク測定データから値付けされた形状データを差し引いて真円度測定機1の回転機構の回転精度データを求め、これとは別に、ワーク測定データ算出工程において、真円度測定機1を使って、ワークWを測定し、そのワーク測定データを求め、これらの工程のあと、ワーク形状演算工程において、ワーク測定データから回転度精度データを差し引いて、ワークの真値データを求める。
【0022】
従って、回転精度データ算出工程においては、マスターワークMWを回転テーブル3に対して一定ピッチずつ、ずらす必要もないから、位相差法の欠点、つまり、熟練や工数を要するという欠点を解消できる。また、ワーク測定データに対して処理する手法であるため、測定機に対して特別な細工を行うことなく、信頼性の高い測定データを得ることができる。更に、回転精度データの算出や、ワーク測定データに対する回転精度データの補正処理については、測定機とは独立したアプリケーションで行うことができるから、たとえば、マスターワーク測定データの平均化処理(同位置を同測定条件で繰り返し測定して得られた複数のマスターワーク測定データからその平均値を求める処理)などのデータ処理を施すことにより、電気的ノイズや測定環境による測定データのバラツキを低減し、より高精度な補正を実現できる。
【0023】
さらに、回転精度データおよびワーク測定データをそれぞれ別々に記憶装置23に保存するようにしたから、これらの回転精度データおよびワーク測定データを別々の時点で取得、保存しておき、必要時に、ワーク測定データから回転精度データを差し引いてワークの真値データを求めることができる。
【0024】
また、半球上のマスターワークMWを有する台座12および原点設定用の基準球15を備えた測定用治具11を用いて、マスターワークMWを測定するようにしたので、常に、予め決めたマスターワークMWのデータ採取位置14の軌跡を測定することができる。つまり、測定用治具11の基準球15に検出器7の測定子7Aを接触させて高さ方向の原点を設定できるから、それを基準にデータ採取位置14まで検出器7を正確に移動して、測定子7AをマスターワークMWのデータ採取位置14に接触、位置決めできる。従って、常に、予め決めたマスターワークMWのデータ採取位置14の軌跡を測定することができる。
【0025】
なお、上記実施形態では、回転テーブル3の上にマスターワークMWを有する測定用治具11を載置し、この状態でマスターワークMWを測定するようにしたが、測定用治具11を用いることなく、回転テーブル3の上に直接、マスターワークMWを載置して測定するようにしてもよい。
【0026】
また、前述した実施形態において、回転精度データ算出工程とワーク測定データ算出工程とは、どちらを先に行ってもよい。たとえば、先にワークWを測定してワーク測定データを求めて保存しておき、後で、マスターワークMWを測定して回転精度データを求め、任意時に、ワーク測定データを回転精度データで補正するようにしてもよい。
また、ワーク測定データに対して、回転精度データを補正した補正結果(ワークの真値データ)をワーク測定データとは別ファイルとして保存する場合に限らず、ワーク測定データに対して、回転精度データを補正した補正結果(ワークの真値データ)をワーク測定データとして置き換えて保存してもよい。
【0027】
また、前述した測定用治具11では、台座12に原点設定用の基準球15を埋設したが、これに限らず、マスターワークMWに基準球を埋設するようにしても同様な効果が期待できる。
また、上述した実施形態は、真円度測定機について説明したが、これに限らず、回転機構を有する測定機一般に本発明は適用できる。
【0028】
更に、本発明は、次のような測定機の回転精度の経年変化の補正に応用することもできる。
一般に、マスターワークとして使用可能な半球基準(マスターワーク)は高価なため、測定機の校正用としてわざわざ備えておくことは、一般ユーザには困難である。
【0029】
そこで、最初の1回のみは本実施形態で示すマスターワークによって回転精度データ(これを回転精度データ1とする)を作成し、その直後に、一般に入手容易な半球基準(精度任意で値付けは不要:準マスターワーク)を用意し、これを測定してワーク測定データ(これをワーク測定データ1とする)を求め、これから回転精度データ1を差し引いて、この半球基準(準マスターワーク)の真値データを求めて記憶装置23に記憶しておく。つまり、
(ワーク測定データ1)−(回転精度データ1)=真値データ
を求めて記憶装置23に記憶しておく。
次に、一定期間(通常1年程度)経過後、前記半球基準(準マスターワーク)を再度測定し、このワーク測定データ(これをワーク測定データ2とする)から前記真値データを差し引いて、新たな回転精度データ(これを回転精度データ2とする)を求める。つまり、
(ワーク測定データ2)−(真値データ)=回転精度データ2
を求める。
このようにして求められた回転精度データ2を記憶装置23に記憶しておき、次回校正時点までの回転精度データとして使用する。
【0030】
このような方法によれば、高精度な半球基準を使用したマスターワークの測定は、最初の1回のみでよく、その後は安価な半球基準(準マスターワーク)によって、高精度な回転精度データを随時得ることができるから、測定機の定期回転精度校正を安価に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、たとえば、真円度測定機など、回転機構を有する測定機に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を示す真円度測定機の斜視図である。
【図2】同上実施形態のデータ処理装置を示すブロック図である。
【図3】同上実施形態における、回転精度データ算出工程および回転精度データ保存工程を示すフローチャートである。
【図4】同上実施形態における、ワーク測定データ算出工程およびワーク測定データ保存工程を示すフローチャートである。
【図5】同上実施形態における、ワーク形状演算工程を示すフローチャートである。
【図6】回転精度データ算出工程におけるマスターワークと検出器の測定子との関係を示す図である。
【図7】ワーク測定データ算出工程におけるにおけるワークと検出器の測定子との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 真円度測定機
3 回転テーブル(回転機構)
7 検出器
11 測定用治具
12 台座
13 ワーク載置面
15 基準球
MW マスターワーク
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機構を有する測定機の回転精度補正方法であって、
前記測定機の回転機構を使って予めデータ採取位置での形状データが高精度測定装置で値付けされたマスターワークを回転させながら、そのマスターワークのデータ採取位置の形状を検出器によって測定し、そのマスターワーク測定データから前記値付けされた形状データを差し引いて回転機構の回転精度データを求める回転精度データ算出工程と、
前記測定機の回転機構を使ってワークを回転させながら、そのワークの形状を検出器によって測定し、そのワーク測定データを求めるワーク測定データ算出工程と、
前記ワーク測定データから前記回転精度データを差し引いてワークの真値データを求めるワーク形状演算工程とを備えることを特徴とする測定機の回転精度補正方法。
【請求項2】
回転機構を有する測定機の回転精度補正方法であって、
前記測定機の回転機構を使って予めデータ採取位置での形状データが高精度測定装置で値付けされたマスターワークを回転させながら、そのマスターワークのデータ採取位置の形状を検出器によって測定し、そのマスターワーク測定データから前記値付けされた形状データを差し引いて回転機構の回転精度データを求める回転精度データ算出工程と、
この回転精度データ算出工程で求められた回転精度データを保存する回転精度データ保存工程と、
前記測定機の回転機構を使ってワークを回転させながら、そのワークの形状を検出器によって測定し、そのワーク測定データを求めるワーク測定データ算出工程と、
このワーク測定データ算出工程で求められたワーク測定データを保存するワーク測定データ保存工程と、
前記各保存工程で保存された前記ワーク測定データおよび回転精度データを読み出し、ワーク測定データから回転精度データを差し引いてワークの真値データを求めるワーク形状演算工程とを備えることを特徴とする測定機の回転精度補正方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の測定機の回転精度補正方法において、
前記回転精度データ算出工程では、上面に半球状のマスターワークを有する円柱状の台座と、この台座またはマスターワークに一部が露出した状態で埋め込まれた原点設定用の基準球とを備えた測定用治具を用い、前記基準球の頂点に測定機の検出器を位置させて測定原点を設定したのち、検出器をマスターワークのデータ採取位置に位置させるとともに、回転機構によってマスターワークを回転させながらマスターワークを測定することを特徴とする測定機の回転精度補正方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された測定機の回転精度補正方法によって回転機構の補正を行うことを特徴とする測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−284602(P2006−284602A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166742(P2006−166742)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【分割の表示】特願2000−8989(P2000−8989)の分割
【原出願日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】