説明

測定装置および測定方法

【課題】 物体の内部の微小な構造を検知することができる技術を提供する。
【解決手段】 被測定物の内部構造に関する特性値を計算する。まず、被測定物にパルス状の静磁場を印加する。その後、磁場の印加を停止する。そして、被測定物の異なる測定位置について、磁場の印加を停止した後の磁束の変化率を測定する。その後、異なる測定位置における磁束の変化率の過渡変化の違いに基づいて、被測定物の内部構造に関する特性値を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体に印加する磁束を変化させて、物体の内部の構造を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁性体の溶接部の内部構造を測定する方法として、微分磁束密度の過渡変化を利用するものがあった。この方法においては、まず、溶接部分に静磁場を印加し、その後、静磁場を遮断して、溶接部の各位置における磁束密度の過渡変化を測定する。そして、微分磁束密度の変化の時定数から溶接部の内部構造を特定する(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許3098193号公報
【0004】
しかし、上記の技術においては、欠陥などの物体の内部の微小な構造を検知することについては、考慮されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、磁束を変化させて物体の内部の構造を検知する技術において、物体の内部の微小な構造を検知することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、一態様として以下のような構成を採用する。すなわち、その態様とは、被測定物の内部構造を測定する測定装置である。この測定装置は、被測定物に磁場を印加することができる励磁部と、被測定物の異なる測定位置についてそれぞれ磁束の変化率を測定するための複数の検出要素と、励磁部を制御し検出要素の信号を処理する制御部と、を備える。
【0007】
被測定物の内部構造を測定する際には、まず、被測定物に磁場を印加する。その後、磁場の印加を停止する。そして、被測定物の異なる測定位置について、磁場の印加を停止した後の磁束の変化率を測定する。その後、異なる測定位置における磁束の変化率の過渡変化の違いに基づいて、被測定物の内部構造に関する特性値を計算する。
【0008】
物体の内部構造の違いは、磁場の印加を停止した後の磁束の変化率の過渡変化の初期の部分に表れる。よって、上記のような態様とすれば、磁束の変化率に基づいて、物体の内部の微小な構造を検知することができる。なお、本明細書においては、物体の「内部」とは、物体の表面から所定の深さよりも深い部分のみならず、物体の表層をも含む。すなわち、物体の「内部」は、物体の表面からの深さを問わず、その物体を構成する各部分を含む。
【0009】
なお、励磁部は、被測定物にパルス状に静磁場を印加することができることが好ましい。そして、制御部は、励磁部を制御することによって、静磁場のパルスの波形を制御することができる態様とすることが好ましい。すなわち、制御部は、パルス駆動の波形形状を制御できることが好ましい。
【0010】
なお、特性値を計算する際には、二つの測定位置においてそれぞれ測定した変化率の差の積分の過渡変化に基づいて、特性値を計算することが好ましい。このような態様とすれば、二つの測定位置において共通する外乱をあらかじめ排除して、正確な処理を行うことができる。そして、二つの測定位置は、3以上の測定位置のうち、互いに隣接する測定位置とすることが好ましい。
【0011】
また、磁場の印加を停止した後の時間を、第1の時間区間と、第1の時間区間よりも後の第2の時間区間と、に分けたとき、以下のような処理を行うことが好ましい。すなわち、特性値を計算する際には、差の積分のうち第2の時間区間に対応する部分に基づいて、差の積分の近似式を計算する。そして、第1の時間区間内おける積分の値と近似式による計算値との違いに基づいて、特性値を計算する。第2の時間区間においては、渦電流に起因する磁束の変化率の違いは、第1の時間区間よりも小さくなる。よって、上記のような態様とすれば、そのような第2の時間区間における測定値に基づいて、第1の時間区間における渦電流に起因する磁束の変化率の違いを取り出すことができる。そして、その磁束の変化率の違いに基づいて特性値を計算することができる。
【0012】
なお、第2の時間区間は、その中に含まれる任意の第1の時刻の積分の値が、同じく第2の時間区間に含まれる時刻であって、第1の時刻から所定の時間が経過した後の第2の時刻の積分の値よりも大きい時間区間であることが好ましい。そのような全体として積分値が減少している時間区間においては、渦電流に起因する磁束の変化率の差異はほとんど無視できると考えられる。よって、そのような時間区間における測定値に基づいて近似式を計算することによって、渦電流に起因する磁束の変化率の差異を排除した成分について、正確な近似式を得ることができる。よって、被測定物の内部構造を正確に検知することができる。
【0013】
なお、複数の検出要素は、励磁部による磁場の磁束密度が互いにほぼ等しくなる位置に設けられている複数の検出コイルであって、互いにほぼ等しい面積を有する検出コイルであることが好ましい。このような態様とすれば、複数の検出コイルを使用してほぼ等しい環境下で磁束の変化率を測定することができる。このため、物体の内分構造を計算する際の処理が容易である。
【0014】
また、各検出コイルは、コイルの軸方向から見たときに、少なくとも一部が、隣接する検出コイルの少なくとも一部と重なるように配されていることが好ましい。このような態様とすれば、各検出コイルが互いに離れて配されている態様に比べて、検出コイルを近接して配することができる。よって、そのような互いに近接して配された複数の検出コイルによって、各検出コイルが互いに離れて配されている態様と比べて、より微小な構造を検知することができる。
【0015】
なお、複数の検出コイルは、各検出コイルがコイルの軸方向について異なる位置に設けられており、コイルの軸方向について投影したときに互いに接するように設けられていてもよい。また、各検出コイルが囲む領域が隣接する検出コイルが囲む領域と一部重複するように、複数の検出コイルが配されている態様とすることもできる。
【0016】
なお、測定装置は、複数の検出コイルが設けられた基板を備える態様とすることができる。そのような態様において、各検出コイルは、一巻きのコイルであって、基板の表面に設けられた第1の部分と、基板の裏面に設けられた第2の部分と、第1および第2の部分を接続する第3の部分と、を備えることが好ましい。そして、複数の検出コイルは、第1の部分の少なくとも一部が、隣接する検出コイルの第2の部分の少なくとも一部と重なるように配されていることが好ましい。
【0017】
このような態様とすれば、各検出コイルの軸方向の位置を互いに等しくした状態で、検出コイルを近接して配することができる。よって、各検出コイルの測定条件をより均等にすることができる。なお、第3の部分は、基板を貫通するスルーホール内に設けることができる。また、基板の端部において第1と第2の部分を接続するワイヤで構成することもできる。
【0018】
なお、複数の検出コイルは、検出コイルの第1の部分のうち所定の長さを有する部分が、隣接する検出コイルの第2の部分と重なるように配されている態様とすることができる。また、複数の検出コイルは、基板の厚さ方向に投影したときに、検出コイルの第1の部分が、隣接する検出コイルの第2の部分と交差するように配されている態様とすることもできる。
【0019】
なお、複数の検出コイルは、それぞれ捲き数が10以下のコイルであることが好ましい。そのような態様とすれば、各検出コイルを近接させて配することができる。また、交流電流によって磁束を変化させた場合の磁束の変化率の違いに比べて、静磁場の印可を停止した後の磁束の変化率の違いは内部構造によって大きく変動する。このため、そのように捲き数の少ないコイルであっても、内部構造の検出に使用することができる。
【0020】
また、複数の検出コイルは、一列に配された第1の検出コイル群と、第1の検出コイル群に対して平行に一列に配された第2の検出コイル群と、を含むことが好ましい。そして、第2の検出コイル群の検出コイルは、第1の検出コイル群の検出コイルに対して、列の方向についてずらして配されていることが好ましい。
【0021】
このような態様とすれば、測定装置と被測定物との相対位置を検出コイルの列と交わる方向にずらして測定を複数回行うことにより被測定物内部を測定する場合に、検出コイル同士の間隔以上に近接した測定位置について、測定を行うことができる。
【0022】
なお、特性値を計算する際には、同一の検出コイル群に含まれる二つの検出コイルでそれぞれ測定した磁束の変化率の過渡変化の差を使用せずに、以下のような処理を行うことが好ましい。すなわち、第2の検出コイル群の検出コイルと、第2の検出コイル群の検出コイルに最も近い第1の検出コイル群の検出コイルとによってそれぞれ測定した磁束の変化率の過渡変化の差を使用して、被測定物の内部構造に関する特性値を計算する。このような態様とすれば、一直線上にない、異なる測定位置における測定値に基づいて、処理を行うことができる。その結果、処理の負荷を小さくしつつ、内部構造の高精度な検出を行うことができる。
【0023】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、測定方法および測定装置、測定装置の制御方法および制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
A.第1実施例:
A1.測定装置の構成:
図1は、本発明の実施例である測定システムの構成を示す説明図である。この測定システムは、センサ部10と、制御部20と、データ処理部30と、ロボットアーム40と、を備える。
【0025】
センサ部10は、その先端面16asを、被測定物たとえば鉄鋼板IPに押しあられて、鉄鋼板IPを測定する機器である。制御部20は、パーソナルコンピュータであるデータ処理部30に装着される制御基板である。この制御部20は、センサ部10およびロボットアーム40を制御し、かつ、センサ部10から受け取った信号を処理する。
【0026】
データ処理部30は、CPU31、ディスプレイ32、キーボード33およびメモリを備えたパーソナルコンピュータである。データ処理部30は、制御部20が処理した信号に基づいて鉄鋼板IP内の欠陥DFの形状を推定し、その画像をディスプレイ32に表示する。
【0027】
ロボットアーム40は、並進関節41と、曲げ関節43,45,47と、ねじり関節42,44,46とを備えている。各関節は制御部20の機能部であるセンサ制御部20aによって制御され、センサ部10は、任意の位置にある鉄鋼板IPに対して任意の位置および角度で配されることができる。
【0028】
図2は、センサ部10の先端部分16の構造を示す透視図である。センサ部10は、先端部分16に励磁部11と、検出コイルアレイ12と、を備えている。励磁部11は、静磁場の印加および遮断を行うためのフェライト入りの励磁コイルである。検出コイルアレイ12は、励磁部11に対してさらにセンサ部10の先端側に設けられている。そして、検出コイルアレイ12は、励磁部11のコイルの中心軸Ca1近傍の位置に設けられている。このため、励磁部11が発生させる磁束の磁束密度の大きさは、検出コイルアレイ12が設けられている領域においては、ほぼ均質である。
【0029】
検出コイルアレイ12は、直線状に並んで配された第1の検出コイル列Lcd1と、第1の検出コイル列Lcd1に並行に配された第2の検出コイル列Lcd2を有している。第1の検出コイル列Lcd1は、検出コイルCd1〜Cd6によって構成され、第2の検出コイル列Lcd2は、検出コイルCd7〜Cd12によって構成される。検出コイルCd1〜Cd12のコイルが囲む領域の面積は互いに等しい。また、各検出コイルCd1〜Cd12の捲きの軸方向Ca2は互いに平行である。各検出コイルCd1〜Cd12の捲きの軸方向Ca2は、励磁コイルの軸Ca1と平行であり、測定時に被測定物に押し当てられるセンサ部10の先端面16asに対して垂直である。
【0030】
図3は、検出コイルアレイ12における各検出コイルの配置を示す平面図である。各検出コイルは、それぞれほぼ長方形の形状を有する1捲きのコイルである。コイルの形状は、たとえば、検出コイル列の方向Syに沿った寸法を0.5mmとし、検出コイル列に垂直な方向Sxに沿った寸法を1.8mmとすることができる。そして、検出コイル列内の検出コイルの中心間隔は、たとえば0.5mmとすることができ、第1と第2の検出コイル列の中心間隔は、たとえば2.0mmとすることができる。
【0031】
各検出コイルCd1〜Cd12は、それぞれ検出コイルアレイ12が設けられている基板12sの表面側に設けられている第1の部分p1f〜p12fと、基板12sの裏面側に設けられている第2の部分p1b〜p12bと、基板12sのスルーホール内に設けられ第1の部分と第2の部分を接続する第3の部分p1t〜p12tと、をそれぞれ有している。なお、基板12sの「表面」とは、基板の2面のうち、測定時に被測定物から遠い側に位置する面である(図2参照)。また、基板12sの「裏面」とは、基板の2面のうち、基板12sの「表面」とは逆の側の面であり、測定時に被測定物に近い側に位置する面である(図2参照)。図2および図3においては、裏面側に設けられた第2の部分p1b〜p12bを破線で示す。そして、図2においては、図面が煩雑になるのを防止するため、検出コイルCd7〜Cd11の第2の部分p7b〜p11bについては表示を省略する。
【0032】
第1の検出コイル列Lcd1と第2の検出コイル列Lcd2とは、列の並びの方向Syについて、各列内の検出コイルの間隔の1/2だけ、互いにずらして配されている。すなわち、第2の検出コイル列Lcd2の各検出コイルは、第1の検出コイル列Lcd1の各検出コイルと並ぶ位置から0.25mmだけ、列の並びの方向Syにずらして配されている。このため、検出コイルの列の並びに対して垂直な方向Sxについて測定位置をずらして繰り返し測定を行うことで、方向Syについて検出コイルの間隔の1/2の間隔を有する測定位置について、測定値を得ることができる。
【0033】
図2および図3に示すように、各検出コイルの、検出コイル列内において隣接する両側の検出コイルのうち一方の検出コイルに近い側(図2および図3において左側)の部分は、基板12sの表面に設けられている。すなわち、当該部分は、第1の部分である。そして、各検出コイルの、検出コイル列内において隣接する両側の検出コイルのうち他方の検出コイルに近い側(図2および図3において右側)の部分は、基板12sの裏面に設けられている。すなわち、当該部分は、第2の部分である。
【0034】
検出コイル列内の各検出コイルは、基板12sの裏面に設けられた第2の部分の一部が、隣接する検出コイルの第1の部分の一部と重なるように設けられている。たとえば、図3の検出コイルCd5、Cd6を例に説明すると、検出コイルCd5の第2の部分p5bの一部p5blは、検出コイルCd6の第1の部分p6fの一部p6flと重なっている。本実施例においては、そのように隣接する検出コイルの互いに重複する部分は、各検出コイルが構成する長方形の一辺である。
【0035】
このような構成とすることで、検出コイル列内の各検出コイルを互いに離して配する態様に比べて、検出コイル列内の各検出コイルを近接させて配することができる。すなわち、検出コイルCd1〜Cd12で測定する被測定物内の測定位置pc1〜pc12を互いに近接させることができ、その結果、素材内部の微小な構造を検知することができる。なお、検出コイルCd1〜Cd12で測定する被測定物内の測定位置pc1〜pc12は、各検出コイルの中心位置に等しい。各検出コイルCd1〜Cd12の中心位置pc1〜pc12を、図3において「x」で示す。
【0036】
検出コイル列内の各検出コイルにおいては、第1および第2の部分の両端部のうち、他方の検出コイル列に近い方の端部(図3において上下方向の中央近辺に位置する端部)が、基板のスルーホール内に設けられた第3の部分p1t〜p12tによって互いに接続されている。そして、第1および第2の部分の両端部のうち他方の検出コイル列から遠い他方の端部(図3において上側または下側に位置する端部)には、それぞれリードワイヤLf1〜Lf12,Lb1〜Lb12が接続されている。リードワイヤLf1〜Lf12が、基板の表面に設けられたリードワイヤであり、各検出コイルCd1〜Cd12の第1の部分p1f〜p12fに接続されるリードワイヤである。リードワイヤLb1〜Lb12が、基板の裏面に設けられたリードワイヤであり、各検出コイルCd1〜Cd12の第2の部分p1b〜p12bに接続されるリードワイヤである。
【0037】
本実施例では、各検出コイル列の検出コイルに接続されるリードワイヤは、他方の検出コイル列と向かい合う側とは逆の側に設けられている。このため、第1と第2の検出コイル列Lcd1,Lcd2を、互いに近接して配することができる。また、リードワイヤの配置の設計が容易である。
【0038】
リードワイヤLf1〜Lf12,Lb1〜Lb12の先には、それぞれ抵抗を含む回路が接続されている。各検出コイルの誘導起電力Vdは、この抵抗(たとえば、図2においてRd5で示される)の両端の電位差として検出される。誘導起電力Vdは、磁束Φの変化率(dΦ/dt)に比例する。すなわち、各検出コイルによって、磁束の変化率を測定することができる。なお、図2においては、図面が煩雑になることを防止するため、検出コイルCd5に接続された回路のみを示し、他の検出コイルに接続された回路は図示を省略する。
【0039】
A2.測定:
図4は、被測定物内の内部構造を求める際の手順を示すフローチャートである。被測定物の内部構造を測定する際には、まず、ステップS10で、センサ制御部20aがロボットアーム40を制御して、センサ部10を被測定物である鉄鋼板IPの所定の位置に押し当てる(図1参照)。たとえば、最初に押し当てられる位置は、鉄鋼板IPの測定対象とする領域Adの角(図1において左奥角)である。そして、ステップS20では、センサ部10の励磁部11によって鉄鋼板IPに磁界が印加される。
【0040】
一定の時間が経過した後、ステップS30では、制御部20のセンサ制御部20aが、磁場を遮断する。そして、ステップS40において、各検出コイル列Cd1〜Cd12で磁束密度の変化率dΦ/dt(以下「微分磁束密度」ともいう)の過渡変化を測定する。制御部20の機能部である信号処理部20bは、各時刻におけるセンサ部10の検出信号CdSをデジタルデータに変換して、データ処理部30のCPU31に渡す。CPU31は、それらのデータをメモリ34に格納する。
【0041】
ステップS50では、鉄鋼板IPの測定対象とする領域Ad(図1参照)のすべての測定位置についてステップS10〜S40の処理が行われたか否かを判定する。まだ全範囲についてステップS10〜S40の処理が行われていない場合は、ステップS10に戻る。ステップS10では、前回のセンサ部10の位置に対して、各検出コイル列内の検出コイルの中心間隔の1/2に等しい寸法、すなわち0.25mmだけ、検出コイル列の方向に垂直な方向Sxにずれた位置に、センサ部10が押し当てられる。そして、ステップS10〜S40の処理が行われる。
【0042】
その後も、ステップS50の判定結果がNoであるときには、同一方向についてセンサ部10の位置をずらして、順次、ステップS10〜S40の処理が繰り返される。そして、測定対象とする領域Adの端まで測定が行われると、次のステップS10では、検出コイル列内の検出コイルの間隔(0.5mm)に検出コイル列内の検出コイルの数(6個)を掛けた寸法、すなわち3.0mmだけ、検出コイル列の方向Syにずれた位置に、センサ部10が押し当てられる。
【0043】
そして、さらにその次のサイクルでステップS10の処理を行う際には、検出コイル列の方向に垂直な方向であってそれまでとは逆の方向に0.25mmずれた位置にセンサ部10が押し当てられる(図1の矢印Sp参照)。そのようにして交互に逆の向きに走査が行われ、測定対象とする領域Adのすべての測定値についてステップS10〜S40の処理が行われる。このように測定を行うことで、検出コイル列の方向Sy、および検出コイル列の方向に垂直な方向Sxに沿って均等の間隔(0.25mm)を有する複数の測定位置について、測定値を得ることができる。
【0044】
そのようにして、鉄鋼板IPの表面の測定対象の領域Adのすべての測定位置についてステップS10〜S40の処理が行われ、ステップS50の判定結果がYesとなると、ステップS60において、CPU31は、メモリ34に格納されたデータ、すなわち、微分磁束密度の過渡変化に基づいて、内部欠陥DFなどの被測定物の内部構造の形状を計算する。その後、処理は終了する。
【0045】
図5は、図4のステップS60において内部欠陥の形状を計算する処理を示すフローチャートである。ステップS62では、CPU31は、隣り合う検出コイルCdi,Cdjの出力信号Vdi,Vdj(i,jは、隣り合う検出コイルの番号)の差を計算する。検出コイルCdiの出力信号VdiとCdjの出力信号Vdjとの差をΔVijで表す。なお、検出コイルの番号を特定せずに出力信号の差などの各特性値を記述する場合には、コイル番号を省略して、たとえば、ΔVと表記することがある。
【0046】
本実施例では、隣り合う検出コイルのうち、方向Syのより上流(図3においてより左側)に位置する検出コイルを検出コイルCdiとし、方向Syのより下流(図3においてより右側)に位置する検出コイルを検出コイルCdjとする。そして、ΔVijは、上流の検出コイルCdiの信号Vdiから下流の検出コイルCdjの信号Vdjを引いて得られる(VdiーVdj)であるものとする。
【0047】
検出コイルの出力信号の大きさは、被測定物とセンサ部10(各検出コイル)の間の距離や、相対角度によって変動しうる。しかし、隣接する二つの検出コイルCdi,Cdjにおいては、被測定物から距離はほぼ等しく、被測定物の各測定位置に対する角度もほぼ等しい。本実施例では、そのような隣接する二つの検出コイルCdi,Cdjの出力信号Vdi,Vdjの差に基づいて、欠陥検出の処理を行う。よって、本実施例では、被測定物とセンサ部10との距離や、相対角度による信号の大きさの変化などの外乱を排除して、被測定物の内部欠陥に起因する出力信号の変化のみを取り出して、欠陥検出の処理を行うことができる。このため、正確な欠陥検出が可能となる。言い換えれば、微細な欠陥を検出することができる。
【0048】
各検出コイルの出力信号には、静磁場遮断後の鉄鋼板IP近傍における磁気エネルギーの減衰特性と、静磁場遮断後の鉄鋼板IP内における渦電流損失の減衰特性の両方が反映されていると考えられる。磁気エネルギーの減衰特性が反映された出力信号成分が、たとえば検出コイルの両端において正の電圧を有するとする。その出力信号成分は、静磁場の遮断後から指数的に減少する。
【0049】
一方、渦電流の減衰特性が反映される出力信号成分は、負の電圧、すなわち、磁気エネルギーの減衰特性が反映される出力信号成分とは逆の向きの電圧を有する。磁場が遮断された直後の渦電流の出力信号成分は、磁気エネルギーの減衰特性の出力信号成分と同じ大きさを有し、逆向きの符号を有する。そして、渦電流の減衰特性が反映される出力信号成分は、静磁場遮断後、磁気エネルギーの減衰特性が反映される出力信号成分よりもさらに急激に0に近づく。
【0050】
よって、磁気エネルギーの減衰特性の成分と渦電流損失の減衰特性の成分とが合成された結果となる検出コイルCdi,Cdjの出力信号Vdi,Vdjは、図5のステップS62の左側に示すように、静磁場が遮断された時刻t0からある時間まで増大し、その後減少する。なお、磁気エネルギーの減衰特性が反映された出力信号成分と、渦電流の減衰特性が反映される出力信号成分とは、理論上は、いずれも指数関数で表すことができる。
【0051】
図5のステップS62内の例は、検出コイルCdiが欠陥に近い部分に位置し、検出コイルCdjが検出コイルCdiよりも欠陥から遠い部分に位置している場合の例である。被測定物内の割れなどの欠陥がある部分においては、渦電流の流れが阻害される。このため、渦電流の減衰特性が反映される出力信号成分は、欠陥がある部分においては、欠陥がない部分に比べてより急速に0に近づく。このため、検出コイルCdiの出力信号Vdiは、検出コイルCdjの出力信号Vdjにくらべて、静磁場が遮断された時刻t0からより急速に増大する(ステップS62の左側のグラフ参照)。
【0052】
図5の例では、ΔVijを得る際に、欠陥に近い部分に位置する検出コイルCdiの出力信号Vdiから、検出コイルCdiよりも欠陥から遠い部分に位置する検出コイルCdjの出力信号Vdjを引いている。このため、ΔVijは、はじめのうちは正の値をとる(ステップS62の右側参照)。なお、二つの検出コイルCdi,Cdjがいずれも欠陥がない部分に位置する場合は、出力信号Vdi,Vdjの過渡変化はほとんど同じとなるため、差ΔVijは各時刻において0に近い値をとる。
【0053】
ステップS64では、CPU31は、検出コイルCdiの出力信号VdiとCdjの出力信号Vdjとの差ΔVijを積分して、SVijを得る。図5のステップS64内に示すグラフは、差ΔVijを積分して得られたSVijの過渡変化である。
【0054】
各検出コイルCdi,Cdjの出力信号である誘導起電力Vdi、Vdjは、磁束Φの変化率(dΦ/dt)に比例する。よって、各検出コイルCdi,Cdjの出力信号を、時刻t0から無限大時間まで積分すれば、各検出コイルCdi,Cdjが時刻t0まで受けていた磁束の大きさΦi、Φjが得られる。
【0055】
ところで、各検出コイルは、磁束密度が一定である励磁部11のコイルの中心軸Ca1の近傍に配されている(図2参照)。そして、各検出コイルは、互いに等しい面積を有している。このため、各検出コイルが時刻t0まで受けていた磁束の大きさは互いに等しい。このため、各検出コイルCdi,Cdjの出力信号を、時刻t0から無限大時間まで積分した値は、互いに等しくなる。よって、ステップS64で計算される検出コイルCdi,Cdjの出力信号Vdi,Vdjの差ΔVijの積分SVijは、図5に示すように、最終的には0に近づく。なお、二つの検出コイルCdi,Cdjがいずれも欠陥がない部分に位置する場合は、Svijは各時刻において0に近い値をとる。
【0056】
なお、検出コイルCdiとCdjのグラフVdi,Vdjが交差する時刻t1(ステップS62参照)が、たとえば時刻t0から1μsec後であるとき、積分SVijがいったん正または負の値をとった後、ほぼ0となる時間は、たとえば時刻t0から数msec後である。すなわち、両者の間には数千倍の大きさの違いがある。しかし、図5においては、理解を容易にするために、時間軸方向についてグラフを修正して示している。すなわち、図5のグラフおいては、横軸上の各位置は、正確な時刻を示しているものではない。
【0057】
静磁場が遮断された時刻t0から後の時間を、第1の時間区間tp1と第2の時間区間tp2に分ける。第1の時間区間と第2の時間区間の境界の時刻t2は、たとえば、t1が磁気を遮断した時刻t0から1μsec経過後であるとき、t0から2μsec経過後とすることができる。そして、第2の時間区間tp2の終了時刻t3は、たとえば、時刻t0から20μsec経過した時刻とすることができる。
【0058】
図5のステップS66では、CPU31は、SVijのうち第2の時間区間tp2の部分について、指数関数による近似式を計算する。具体的には、SVijのlogをとって単回帰分析を行うことによって近似式を得る。得られた近似式のグラフを図5のステップS66において、SVaijで示す。
【0059】
渦電流の減衰特性が反映される出力信号成分は、磁気遮断後、磁気エネルギーの減衰特性が反映される出力信号成分よりも急激に0に近づく。このため、第2の時間区間tp2においては、渦電流の減衰特性が反映される出力信号成分は、ほぼ0となっている。よって、第2の時間区間tp2のSVijに基づいて得られた近似式は、渦電流の減衰特性は反映されず、磁気エネルギーの減衰特性が反映された出力信号成分を表していると考えられる。
【0060】
CPU31は、第1および第2の時間区間tp1,tp2について、SVijと、近似式による計算値SVaijとの差SVmijを求める。このSVmijは、渦電流の減衰特性が反映される出力信号成分を表していると考えられる。
【0061】
ステップS68では、CPU31は、第1の時間区間tp1内の所定の時間区間についてSVmijの平均値Pijを求める。この平均値Pijを、検出コイルCdiとCdjの組合せに対応づけられた特性値Ppとする。図5の例では、SVmijが負の値を有するので、特性値Ppも負の値となる。この特性値Ppは、検出コイルCdiの中心位置と検出コイルCdjの中心位置との中間の地点に対応づけられて、メモリ34に記憶される。
【0062】
なお、以上では、Sy方向について上流に位置する検出コイルCdiが欠陥により近い部分に位置する検出コイルであり、下流の検出コイルCdjが欠陥からより遠い部分に位置する検出コイルである例を使って説明をしてきた。しかし、検出コイルCdiが欠陥から遠い部分に位置する検出コイルであり、検出コイルCdjが検出コイルCdiよりも欠陥に近い部分に位置する検出コイルである場合には、ΔVij,SVij,SVaij,SVmij,Ppの符号は、以上で図5の各グラフを使用して説明した場合とは逆になる。
【0063】
図6は、検出コイルCdi,Cdjがともに、欠陥に対して方向Syの下流にある場合の、Vdi,Vdj,ΔVij,SVijのグラフを示す図である。本実施例では、隣り合う検出コイルのうち、方向Syのより上流に位置する検出コイルCdiの出力信号Vdiから、より下流に位置する検出コイルCdjの出力信号Vdjを引いて、ΔVijを得ていた(図5のステップS62参照)。このため、検出コイルCdi,Cdjがともに、欠陥に対して方向Syの下流にあるときには、各検出コイルの出力信号Vdi,Vdjは、以下のようになる。
【0064】
すなわち、より上流側の検出コイルCdiの出力信号Vdiは、静磁場が遮断された時刻t0から所定の時間区間においては、より下流側の検出コイルCdjの出力信号Vdjよりも大きな値をとる(図6の下段、左側参照)。よって、その所定の時間区間においては、ΔVijは当初、正の値をとり、その後、負の値をとる(図6の下段、中央参照)。その結果、図5の例と同様に、SVijは当初、正の値となり、時間が経過するにつれて0に近づく(図6の下段、右側参照)。そして、SVmijは負の値となる(図6において図示せず)。よって、特性値Ppも負の値となる。
【0065】
図7は、検出コイルCdi,Cdjがともに、欠陥に対して方向Syの上流にある場合の、Vdi,Vdj,ΔVij,SVijのグラフを示す図である。検出コイルCdi,Cdjがともに、欠陥に対して方向Syの上流にあるときには、各検出コイルの出力信号Vdi,Vdjは、以下のようになる。
【0066】
すなわち、より上流側の検出コイルCdiの出力信号Vdiは、静磁場が遮断された時刻t0から所定の時間区間において、下流側の検出コイルCdjの出力信号Vdjよりも小さな値をとる(図7の下段、左側参照)。よって、その所定の時間区間においては、ΔVijは当初、負の値をとり、その後、正の値をとる(図7の下段、中央参照)。その結果、図5の例とは逆に、SVijは当初、負の値となり、時間が経過するにつれて0に近づく(図7の下段、右側参照)。そして、SVmijは正の値となる(図6において図示せず)。よって、特性値Ppも正の値となる。
【0067】
図5のステップS70では、CPU31は、隣り合う所定の組合せの検出コイルについて、すべてステップS62〜S68の処理を行ったか否かを判定する。そして、判定結果がNoである場合は、再びステップS62に戻る。一方、判定結果がYesである場合は、ステップS72で、鉄鋼板IP内の欠陥等の構造を計算する。
【0068】
ステップS62〜S68の処理を行う隣り合う検出コイルの組合せは、以下のような検出コイルの組合せである。すなわち、ある検出コイルCdpと組み合わせられるのは、その検出コイルCdpとは異なる検出コイル列に含まれる検出コイルであって、最も近い検出コイルCdqである(p、qは、検出コイルの番号)。たとえば、図3の例では、検出コイルCd1と組み合わせられるのは、検出コイルCd7である。検出コイルCd4については、検出コイルCd9との組合せに関してステップS62〜S68の処理が行われる。また、検出コイルCd9と並んで最も検出コイルCd4に近い検出コイルCd10との組合せに関しても、ステップS62〜S68の処理が行われる。
【0069】
ステップS62〜S68の処理は、検出コイルCd1とCd7の組合せから検出コイルCd6とCd12の組合せまで、11組の組合せについて行われる(図3参照)。ステップS62〜S68の処理の結果、11組の検出コイルの組合せについて得られる特性値Ppijは、それぞれ2個の検出コイルの中心位置の中央の位置pb1〜pb11(図3において白丸で示す)に対応づけられて、メモリ34に格納される(図3参照)。以下、これらの位置pb1〜pb11を「測定点」と呼ぶ。
【0070】
測定点pb1〜pb11は、検出コイル列の方向に、互いに0.25mmの間隔を有している。図4のステップS50およびS10において説明したように、検出コイル列の方向に垂直な方向Sxに沿って0.25mmずつセンサ部10をずらしてステップS62〜S68の処理を繰り返し行うことで、互いに垂直な2方向Sx,Syについて0.25mmの間隔を有する複数の測定点について、特性値Ppが得られる。
【0071】
図8は、各測定点の特性値Ppの絶対値である絶対特性値Ppaを各測定点と対応づけて表した棒グラフである。図8では、1回目の測定(ステップS10〜S40の処理)で得られる各特性値の絶対特性値Ppa(1,1)〜Ppa(1,8)から5回目の測定で得られる各特性値の絶対特性値Ppa(5,1)〜Ppa(5,8)までを示している。なお、絶対特性値Ppaに付された最初の数値は、測定の回数を示し、次の数値が測定点の番号を示す。
【0072】
図8の例においては、鉄鋼板IP内部の欠陥DFの射影をDFpで示す。欠陥DFの近傍においては、隣り合う検出コイルのうち、欠陥に近い検出コイルの出力信号と、欠陥から遠い検出コイルの出力信号と、の間で差ができる(図5のステップS62の左側参照)。よって、絶対特性値Ppaは有意な値を有する。図6の例では、Ppa(2,5),Ppa(2,6),Ppa(3,4),Ppa(3,5),Ppa(4,5),Ppa(4,6),Ppa(5,3),Ppa(5,4)は、有意な値を有している。
【0073】
これに対して、欠陥DFから遠い位置にある検出コイル同士の間では、出力信号の差が生じない。このため、絶対特性値Ppaは0に近い値を有する。図6の例では、たとえば、Ppa(1,1),Ppa(1,8),Ppa(5,1),Ppa(5,8)は、0に近い値を有している。よって、絶対特性値Ppaが所定のしきい値よりも大きい測定点の近傍には、欠陥が存在すると推定することができる。さらに、絶対特性値Ppaの大きさに基づいて、たとえば欠陥の一種である割れの空隙の大きさを推定することができる。
【0074】
図5のステップS72においては、CPU31は、このような方法で、各測定点の特性値Ppに基づいて欠陥の位置を特定する。メモリ内に蓄積された特性値Ppに基づいて被測定物の内部構造を計算する機能は、CPU31の機能部としての構造決定部31bが奏する。
【0075】
以上で説明したように、第1実施例によれば、静磁場の印加を遮断した後の各測定点における磁束の変化率の過渡変化の違いに基づいて、磁性体の内部の微小な構造を検知することができる。
【0076】
B.第2実施例:
図9は、第2実施例の検出コイルアレイ12bにおける各検出コイルの配置を示す平面図である。第2実施例においては、検出コイルアレイ12bにおける各検出コイルの配置が第1実施例とは異なっている。他の構成および処理は、第1実施例と同じである。図9においては、第1実施例の構成に対応する第2実施例の構成は、同じ符号を付して示している。
【0077】
第2実施例では、検出コイル列内の各検出コイルCdは、互いに、コイルが囲む領域の一部が隣接する検出コイルが囲む領域と重なるように配されている。すなわち、検出コイル列内で隣接する検出コイルCdi,Cdjのうち、方向Syの上流側に位置する検出コイルCdiの長方形の下流側の辺を構成する部分は、方向Syの下流側に位置する検出コイルCdjの長方形の上流側の辺を構成する部分よりも、下流側に位置する。
【0078】
たとえば、検出コイルCd5の下流側の辺p5blは、検出コイルCd6の上流側の辺p6flよりも下流側に位置する。そして、検出コイルCd5の一部p5bsと、検出コイルCd6の一部p6fsとは、重複している。なお、検出コイルCd5の一部p5bl,p5bsは、基板12sの裏面に設けられており、検出コイルCd6の一部p6fl,p6fsは、基板12sの表面に設けられている。
【0079】
このような様な態様としても、隣接する検出コイルCdiと検出コイルCdjとは、被測定物上において異なる領域の磁束を受ける。すなわち、互いに異なる測定位置の磁束の変化率を測定することができる。このため、それらの検出コイルの出力信号Vdp,Vdqの差に基づいて処理を行うことで(図5のステップS62参照)、被測定物内の欠陥の検出を行うことができる。
【0080】
そして、第2実施例のような態様とすれば、第1実施例に比べて検出コイル列内の検出コイル同士をより近くに配することができる。このため、隣り合う検出コイルの中心点の中央に位置する測定点pb1〜pb11を、より近接させることができる。その結果、被測定物内の微細な欠陥についてより正確な検出を行うことができる。
【0081】
C.第3実施例:
図10は、第3実施例において、制御部20が励磁部11としての励磁コイルに電圧を印可した後に励磁コイルに流れる電流Iを示すグラフである。第1実施例では、電流Iが十分に安定した後の時刻t0において、励磁部11への電圧の印可を停止し、その結果、励磁部11による磁界の印可を停止する。しかし、第3実施例においては、電流Iの大きさ、すなわち磁界の強さが安定する前の、磁界の強さが変化している間の時刻t01,t02においても、励磁部11による磁界の印可を停止することができる。第3実施例の他の処理および構成は、第1実施例と同じである。
【0082】
磁界の変化によって生じる渦流の磁性体内の深さ方向の位置は、励磁部11によって被測定物に磁界をかけている時間が長いほど、磁界遮断後、被測定物内のより深い位置となる。そして、磁界の強さが変化している間の時刻t01,t02において磁界を遮断した場合には、被測定物内のより浅い位置において渦電流が生じる。この渦電流が生じる位置は、磁界を遮断した時刻における磁界の強さの増加率、すなわち、励磁コイルに流れる電流の増加率が大きいほど浅くなる。なお、図10においては、時刻t01における電流の増加率をθ1で示し、時刻t02における電流の増加率をθ2で示す。また、時刻t0における電流の増加率をθ0で示す。θ0は、ほぼ0である。
【0083】
第3実施例の制御部20およびデータ処理部30は、第1実施例と同じく、磁界遮断後の被測定物内の渦電流による検出信号の変化に基づいて、被測定物内部の構造を計算する。よって、第3実施例のように、磁界を遮断する時刻を調整することで、生じる渦電流の位置を調整することができる。その結果、第3実施例によれば、被測定物内の異なる深さの構造を検知することができる。
【0084】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0085】
D1.変形例1:
図11は、変形例1の検出コイルアレイ12における各検出コイルの配置を示す平面図である。図11においては、第1実施例の構成に対応する構成は、図3と同じ符号を付して示している。第1実施例および第2実施例では、検出コイルは長方形の形状を有する一巻きのコイルであった。しかし、検出コイルは、図8のような6角形や8角形等の他の多角形の形状や円形など、他の形状とすることもできる。そして、捲き数は、1捲き以外にも、2捲き、3捲きなど、他の捲き数とすることができる。
【0086】
ただし、検出コイルの捲き数は、10捲き以下であることが好ましい。また、検出コイルの捲き数は、5捲き以下であることがより好ましく、3捲き以下であることがさらに好ましい。コイルがほぼ同一平面内で巻かれている態様においては、コイルの捲き数を上記のようにすることで、コイルの平面内における大きさを小さくすることができる。よって、検出コイルを互いに近接させて配することができ、その結果、微小な欠陥を正確に検出することができる。また、コイルが、捲きの軸方向に重ねて捲かれている態様においては、上記のような捲き数とすることで、捲きの軸方向についての厚みを少なくすることができる。
【0087】
各検出コイルは、コイルの軸の方向に投影したときに、隣接する検出コイルとの間で、コイルが囲む領域が一部重なるように配されていることが好ましい。たとえば、各検出コイルは、図11のように、コイルの巻き線が交差するように配することもでき、また、図9のように、コイルの巻き線の一部が重なるように配することもできる。
【0088】
また、各実施例においては、一つずつの検出コイルの一部が基板の表面に設けられ、他の一部が基板の裏面に設けられていた。しかし、たとえば、検出コイル列内の検出コイルを交互に基板の表面と裏面に設けるなど、各検出コイルをコイルの軸方向について異なる位置に設けることもできる。そのような態様においても、各検出コイルが囲む領域が一部重複するような配置とすることができる。検出コイルをそのような配置とすることで、各検出コイルの測定位置を近接させることができ、被測定物内の微小な構造を検出することができる。
【0089】
なお、本明細書においては、コイルの巻き線が交差する態様(図11参照)と、コイルの巻き線の一部が重なるような態様(図3および図9参照)との両方を含めて、「検出コイルの一部が重なる」と表記する。
【0090】
なお、欠陥を検出する処理は、隣接する検出コイルの出力信号の差に基づいて行われる(図5参照)。このため、隣り合う検出コイルが囲む領域が重なる態様(図9および図11参照)においては、そのように重なった領域内に欠陥が位置する場合には、その欠陥が検出信号の差として表れにくくなる可能性がある。しかし、第1実施例のように、隣り合う検出コイルが囲む領域が重ならない態様においては、そのような問題は生じない。
【0091】
なお、複数の検出コイルに含まれる各検出コイルが囲む領域の面積は、互いにほぼ等しいことが好ましい。ここで、「各検出コイルが囲む領域の面積がほぼ等しい」とは、各検出コイルが囲む領域の面積の最小値が、最大値の85%以上であることをいう。なお、各検出コイルが囲む領域の面積の最小値は、検出コイルが囲む領域の面積の最大値の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0092】
D2.変形例2:
複数の検出コイルは、磁束密度がほぼ等しい領域に配されることが好ましい。ここで、「磁束密度がほぼ等しい」とは、各検出コイルの中心位置における磁束密度の最小値が、最大値の85%以上であることをいう。なお、各検出コイルの中心位置における磁束密度の最小値は、検出コイルの中心位置における磁束密度の最大値の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0093】
D3.変形例3:
上記第1実施例では、検出コイル列は、第1の検出コイル列Lcd1と第2の検出コイル列Lcd2の2列であった。そして、第1の検出コイル列Lcd1と第2の検出コイル列Lcd2とは、互いに検出コイルの間隔の1/2だけ列の方向にずらして配されていた。しかし、検出コイル列は他の態様とすることもできる。ただし、複数の検出コイル列を設け、各検出コイル列が、互いに列の方向について、検出コイルの間隔の1/n(nは正の整数)だけずらして配される態様とすることが好ましい。そのような態様によれば、列に垂直な方向に測定位置をずらしてn回、測定を行うことで、列方向について検出コイルの間隔の1/nの間隔を有する測定位置の測定値を得ることができる。
【0094】
D4.変形例4:
上記実施例では、磁界の強さの変化を測定する検出要素は、コイルCd1〜Cd12であった。しかし、磁界の強さの変化を測定する検出要素は、ホール素子など、他の構成とすることができる。ホール素子は、磁束の大きさを測定することができる。よって、ホール素子を使用する態様においては、測定によって得られた磁束の大きさのデータから、まず高周波成分を除いて変化をなだらかにし、その後、微分することによって、磁束の変化率を得ることができる。その後の処理は、第1実施例における図5のステップS62以降の処理を同じである。
【0095】
ただし、コイルを使用する態様においては微分の処理を行うことなく、最初から磁束の大きさの変化率のデータを得ることができる。このため、より誤差の少ない測定結果を得ることができる。
【0096】
D5.変形例5:
上記実施例では、励磁部11は、フェライト入りの励磁コイルであった。しかし、励磁部は、空芯の励磁コイルなど、他の態様とすることができる。なお、励磁部は、自らの中に渦流が発生しないような態様で構成されることが好ましい。
【0097】
D6.変形例6:
上記第1実施例では、積分SVijの近似式を求める際の基礎となる部分は、積分SVijのうち、時間区間tp2に相当する部分であった(図5のステップS66参照)。そして、その時間区間tp2の開始時刻t2は、時刻t0から2μsec経過後の時刻であった。また、時間区間tp2の終了時刻t3は、時刻t0から20μsec経過後の時刻であった。しかし、時間区間tp2は、他の時間区間とすることができる。時間区間tp2の開始時刻t2は、たとえば、t1の1.5〜4倍の時間が時刻t0から経過した時刻とすることができる。そして、第2の時間区間tp2の終了時刻t3は、たとえば、t1の5〜100倍の時間が時刻t0から経過した時刻とすることができる。
【0098】
なお、積分SVijの近似式を求める際の基礎となる部分は、積分SVijが単調減少となっている部分であることが好ましい。ここで、「単調減少となっている部分」とは、任意の時刻ts1における値が、その時刻ts1から所定の時間Δtが経過した時刻ts2(ts2=ts1+Δt)の値よりも常に大きい時間区間である。たとえば、Δtは、1μsecや0.5μsecとすることができる。
【0099】
また、上記実施例では、積分値SVijと近似式による計算値SVaijとの差SVmijは、第1および第2の時間区間tp1,tp2について計算されていた。しかし、SVmijは、第1の時間区間tp1に含まれる一部の時間区間についてのみ求めることとしてもよい。そのような態様においては、SVmijを計算した時間区間におけるSVmijの平均値を特性値Ppとすることができる。
【0100】
また、上記実施例では、特性値Ppは、所定の時間区間についてのSVmijの平均値であった。しかし、特性値Ppは、所定の時間区間についての積分値や、時刻に応じて定められた重みを付して計算した重み付け平均、所定の時刻におけるSVmijの値など、他の計算方法で得られた値とすることもできる。すなわち、特性値は、異なる測定位置における磁束の変化率の差の積分に基づいて定めることができる。
【0101】
D7.変形例7:
上記第1実施例では、各絶対特性値Ppaは、各測定点と対応づけられて解析された。しかし、欠陥の位置や大きさを検出する際には、他の方法を使用することもできる。たとえば、ある測定点の特性値Ppが負の値を有する場合は、欠陥は、測定点pbに対して、隣接する検出コイルのうちSy方向の上流側に位置する検出コイルの方向に位置すると考えられる。一方、ある測定点の特性値Ppが正の値を有する場合は、欠陥は、測定点pbに対して、隣接する検出コイルのうちSy方向の下流側に位置する検出コイルの方向に位置すると考えられる。たとえば、図3において、測定点pb1の特性値Pp1が負の値を有する時には、欠陥は、測定点pb1に対して、検出コイルCd1側に位置すると考えられる。そして、測定点pb1の特性値Pp1が正の値を有する時には、欠陥は、測定点pb1に対して、検出コイルCd7側に位置すると考えられる。
【0102】
よって、たとえば、図6のグラフにおいて、絶対特性値Ppaの棒グラフの位置を、特性値Ppの符号に応じて、上流または下流のいずれかの検出コイルの方向にずらして、そのずらした位置と対応づけて解析して、欠陥の位置および大きさを解析することもできる。たとえば、図8の例においては、Ppa(2,5)は、図3のpb5に対応する位置に示されている。しかし、Pp(2,5)が負の場合には、位置pb5に対して上流側のコイルCd3の中心位置pc3寄りの位置(たとえば、pb5とpc3の中間位置)に対応づけて、絶対特性値Ppa(2,5)を処理することが好ましい。また、Pp(2,5)が正の場合には、位置pb5に対して下流側のコイルCd9の中心位置pc9寄りの位置(たとえば、pb5とpc9の中間位置)に対応づけて、絶対特性値Ppa(2,5)を処理することが好ましい。このような態様とすれば、より正確に欠陥の位置を検出することができる。
【0103】
D8.変形例8:
上記実施例では、測定対象の物体は鉄鋼板IPであった。しかし、測定対象の物体は、アルミニウム、チタンなど、他の素材で構成された物体であってもよい。また、直方体や、加工された結果、複雑な構造を有する物体など、板状の構造以外の構造を有する物体を測定対象とすることもできる。ただし、測定対象とする物体は導電性のある物質を含むものであることが好ましい。
【0104】
D9.変形例9:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、制御部20(図1参照)の機能の一部をデータ処理部30であるコンピュータが実行するようにすることもできる。
【0105】
このような機能を実現するコンピュータプログラムは、フロッピディスクやCD−ROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供される。ホストコンピュータは、その記録媒体からコンピュータプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送する。あるいは、通信経路を介してプログラム供給装置からホストコンピュータにコンピュータプログラムを供給するようにしてもよい。コンピュータプログラムの機能を実現する時には、内部記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがホストコンピュータのマイクロプロセッサによって実行される。また、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをホストコンピュータが直接実行するようにしてもよい。
【0106】
この明細書において、コンピュータとは、ハードウェア装置とオペレーションシステムとを含む概念であり、オペレーションシステムの制御の下で動作するハードウェア装置を意味している。コンピュータプログラムは、このようなホストコンピュータに、上述の各部の機能を実現させる。なお、上述の機能の一部は、アプリケーションプログラムでなく、オペレーションシステムによって実現されていても良い。
【0107】
なお、この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施例である測定システムの構成を示す説明図。
【図2】センサ部10の先端部分16の構造を示す透視図。
【図3】検出コイルアレイ12における各検出コイルの配置を示す平面図。
【図4】被測定物内の内部構造を求める際の手順を示すフローチャート。
【図5】内部欠陥の形状を計算する処理を示すフローチャート。
【図6】検出コイルCdi,Cdjがともに、欠陥に対して方向Syの下流にある場合の、Vdi,Vdj,ΔVij,SVijのグラフを示す図。
【図7】検出コイルCdi,Cdjがともに、欠陥に対して方向Syの上流にある場合の、Vdi,Vdj,ΔVij,SVijのグラフを示す図。
【図8】各測定点の特性値Ppの絶対値である絶対特性値Ppaを各測定点と対応づけて表した棒グラフ。
【図9】第2実施例の検出コイルアレイ12bにおける各検出コイルの配置を示す平面図。
【図10】第3実施例において、制御部20が励磁部11としての励磁コイルに電圧を印可した後に励磁コイルに流れる電流Iを示すグラフ。
【図11】変形例1の検出コイルアレイ12における各検出コイルの配置を示す平面図。
【符号の説明】
【0109】
10…センサ部
11…励磁部
12,12b,12c…検出コイルアレイ
12s…基板
16…先端部分
16as…先端面
20…制御部
20a…センサ制御部
20b…信号処理部
30…データ処理部
31…CPU
31b…構造決定部
32…ディスプレイ
33…キーボード
34…メモリ
40…ロボットアーム
41…並進関節
42,44,46…ねじり関節
43,45,47…曲げ関節
Ad…鉄鋼板IPの測定対象とする領域
Ca1…励磁部11のコイルの中心軸
Ca2…検出コイルの軸
Cd,Cd1〜Cd12…検出コイル
CdS…検出信号
DF…被測定物内部の欠陥
I…電流
IP…鉄鋼板
Lcd1…第1の検出コイル列
Lcd2…第2の検出コイル列
Lb1…基板12sの裏面側に設けられたリードワイヤ
Lf1…基板12sの表面側に設けられたリードワイヤ
SVij…隣り合う検出コイルの出力信号の差ΔVijの積分
SVmij…SVijと、近似式による計算値SVaijとの差
Sp…センサ部10の走査方向を示す矢印
Sx…検出コイル列の並びの方向に垂直な方向
Sy…検出コイル列の並びの方向
Vd…検出コイルの出力信号(誘導起電力)
Vdi…検出コイルCdiの出力信号(誘導起電力)
Vdj…検出コイルCdjの出力信号(誘導起電力)
p1b〜p12b…検出コイルCd1〜Cd12の基板12sの裏面側に設けられた第2の部分
p1f〜p12f…検出コイルCd1〜Cd12の基板12sの表面側に設けられた第1の部分
p1t〜p12t…検出コイルCd1〜Cd12の基板12sのスルーホール内に設けられた第3の部分
p5bl…検出コイルCd6の一辺と重なる検出コイルCd5の一辺
p6bl…検出コイルCd5の一辺と重なる検出コイルCd6の一辺
p5bs…検出コイルCd6の一部と重なる検出コイルCd5の一部
p6fs…検出コイルCd5の一部と重なる検出コイルCd6の一部
pb,pb1〜pb11…測定点
pc1〜pc12…検出コイルCd1〜Cd12の中心位置
t0…磁気を遮断する時刻
t01,t02…磁気を遮断する時刻
t1…検出コイルCdiとCdjのグラフVdi,Vdjが交差する時刻
t2…第2の時間区間の開始時刻
t3…第2の時間区間の終了時刻
tp1…第1の時間区間
tp2…第2の時間区間
ΔVij…検出コイルCdiの出力信号VdiとCdjの出力信号Vdjとの差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の内部構造を測定する測定装置であって、
被測定物に磁場を印加することができる励磁部と、
前記被測定物の互いに異なる測定位置についてそれぞれ磁束の変化率を測定するための複数の検出要素と、
前記励磁部を制御し、前記複数の検出要素の信号を受け取って、前記磁場の印加を停止した後の、前記異なる測定位置における磁束の変化率の過渡変化の違いに基づいて、前記被測定物の内部構造に関する特性値を計算する制御部と、を備える測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置であって、
前記励磁部は、前記被測定物にパルス状に静磁場を印加することができ、
前記制御部は、前記励磁部を制御することによって、前記静磁場のパルスの波形を制御することができる、測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の測定装置であって、
前記制御部は、さらに、前記複数の検出要素のうち二つの検出要素でそれぞれ測定した前記変化率の差の積分の過渡変化に基づいて、前記特性値を計算する、測定装置。
【請求項4】
請求項3記載の測定装置であって、
前記磁場の印加を停止した後の時間を、第1の時間区間と、前記第1の時間区間よりも後の第2の時間区間と、に分けた場合に、
前記制御部は、さらに、
前記積分のうち前記第2の時間区間に対応する部分に基づいて、前記積分の近似式を計算し、
前記第1の時間区間内における前記積分の値と前記近似式による計算値との違いに基づいて、前記特性値を計算する、測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の測定装置であって、
前記第2の時間区間は、前記第2の時間区間内の任意の第1の時刻の前記積分の値が、前記第1の時刻から所定の時間が経過した後の第2の時刻の前記積分の値よりも大きい時間区間である、測定装置。
【請求項6】
請求項1記載の測定装置であって、さらに、
前記複数の検出要素は、
前記励磁部による磁場の磁束密度が互いにほぼ等しくなる位置に設けられている複数の検出コイルであって、互いにほぼ等しい面積を有する検出コイルである、測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の測定装置であって、
前記各検出コイルは、少なくとも一部が、隣接する検出コイルの少なくとも一部と重なるように配されている、測定装置。
【請求項8】
請求項7記載の測定装置であって、さらに、
前記複数の検出コイルが設けられた基板を備え、
前記各検出コイルは、一巻きのコイルであって、前記基板の表面に設けられた第1の部分と、前記基板の裏面に設けられた第2の部分と、(前記基板を貫通し)前記第1および第2の部分を接続する第3の部分と、を備え、
前記複数の検出コイルは、前記第1の部分の少なくとも一部が、隣接する検出コイルの前記第2の部分の少なくとも一部と重なるように配されている、測定装置。
【請求項9】
請求項1記載の測定装置であって、
前記複数の検出コイルは、それぞれ捲き数が10以下のコイルである、測定装置。
【請求項10】
請求項1記載の測定装置であって、
前記複数の検出コイルは、
一列に配された第1の検出コイル群と、
前記第1の検出コイル群に対して平行に一列に配された第2の検出コイル群と、を含み、
前記第2の検出コイル群の検出コイルは、前記第1の検出コイル群の検出コイルに対して、前記列の方向についてずらして配されている、測定装置。
【請求項11】
被測定物の内部構造に関する特性値を計算する方法であって、
被測定物に磁場を印加する工程と、
前記磁場の印加を停止する工程と、
前記被測定物の互いに異なる測定位置について、前記磁場の印加を停止した後の磁束の変化率を測定する工程と、
前記異なる測定位置における前記磁束の前記変化率の過渡変化の違いに基づいて、前記被測定物の内部構造に関する特性値を計算する工程と、を備える方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、
前記特性値を計算する工程は、
二つの前記測定位置においてそれぞれ測定した前記変化率の差の積分の過渡変化に基づいて、前記特性値を計算する工程を含む、方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、
前記磁場の印加を停止した後の時間を、第1の時間区間と、前記第1の時間区間よりも後の第2の時間区間と、に分けた場合に、
前記積分の過渡変化に基づいて前記特性値を計算する工程は、
前記積分のうち前記第2の時間区間に対応する部分に基づいて、前記積分の近似式を計算する工程と、
前記第1の時間区間内における前記積分の値と前記近似式による計算値との違いに基づいて、前記特性値を計算する工程と、を含む、方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、
前記第2の時間区間は、前記第2の時間区間内の、任意の第1の時刻の前記積分の値が、前記第1の時刻から所定の時間が経過した後の第2の時刻の前記積分の値よりも大きい時間区間である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−218801(P2007−218801A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41355(P2006−41355)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(599009019)株式会社マグネグラフ (8)
【Fターム(参考)】