説明

測距用画像選択機能を有する測距装置

【課題】赤外線光量の小さい環境や、赤外線の反射率の低い対象物の場合、赤外線ステレオカメラによる測距はテクスチャ情報が少ないため測距精度が低くなる。この場合、可視光量は多く、可視光線の反射率は高い対象物であれば、可視光ステレオカメラを用いることでテクスチャ情報が増加し、精度の高い測距が可能になる。一方、赤外線光量が多く、赤外線の反射率の高い対象物であり、可視光量は少なく、可視光線の反射率は低い対象物であれば上記と逆の状況になる。
【解決手段】赤外線ステレオカメラ(3)と可視光ステレオカメラ(5)とを両方具備し、周辺の光量もしくは相関演算の一致度評価値に応じて上記2つのカメラを切替えることにより、周辺光量の変化による測距精度のばらつきが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載、監視、ロボット、ゲーム、CG画像作成用途などに用いられる、複数の異なる視点の画像から対象物の距離もしくは形状を推定する測距装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、所定の位置から所定の物体までの距離を正確に測定する要求が強くなってきている。例えば自動車用途では、自動車の周辺にある物体までの距離を正確に測ることで、より安全な自動車の走行や駐車を可能にできる。また歩行ロボット用途では、ロボット周辺の物体の距離を正確に測定することにより、ロボットの進行のより適切な方針決定が可能になる。また、歩行ロボットから周辺の物体の表面の距離を正確に測ることにより、周辺の物体の三次元形状を推測することができるため、物体が何であるかの推定がより正確になり、例えば片付けなどロボットの適切な作業が可能になる。
【0003】
所定の位置から所定の物体までの距離を測る方法としては、電磁波や超音波の反射を用いた方法や、レーザとカメラを用いた方法(レーザースキャナ)や、設置位置の異なる2つのカメラつまりステレオカメラを用いた方法がある。図12に示すように所定の位置Aから所定の物体上の点Bまでの方向と平行な方向にZ軸を定義し、Z軸と垂直な平面上において互いに直交するX軸、Y軸を定義する。電磁波や超音波の反射を用いた方法は、測距のリアルタイム性が高く、Z軸方向の測距精度は高いが、XY平面の空間解像度が低い。レーザースキャナはZ軸方向の測距精度が高く、XY平面の空間解像度も高いが、レーザを所定の物体上の点もしくは線で照射するため、物体全体の距離を測定するのに時間がかかり測距のリアルタイム性が低い。ステレオカメラを用いた方法は、Z軸方向の測距精度が高く、XY平面の空間解像度が高く、リアルタイム性も高い。したがって、ステレオカメラを用いた測距方法は近年測距装置として要求が高まっている。
【0004】
ステレオカメラを用いた測距装置の従来例としては例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1では異なる二つの赤外線画像を用いて撮像手段から対象物までの距離を求めており、対象物の距離を少ない演算量でかつ高精度に求めることができる。つまり、Z軸方向の測距精度が高く、撮像装置(カメラ)を用いているためXY平面の空間解像度が高く、少ない演算量のためリアルタイム性も高い。
【特許文献1】特開2003−028635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のステレオカメラ方式を用いた測距装置では、異なる視点の2つの赤外線画像の相関演算を用いて対象物の距離を求めている。したがって、赤外線の反射率の小さい対象物の距離を求めたい場合は、測距装置に受光する対象物の赤外線量が少ないため、赤外線画像中に対象物の像が写りにくくなる。この場合、対象物の像はノイズ等の影響を受けやすくなり、相関演算の計算精度が低くなり正確なZ軸方向の距離を算出することが難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の撮像装置は、赤外線を入射して異なる視点の2つの赤外線画像を出力する赤外線撮像手段と、可視光を入射して異なる視点の2つの可視光画像を出力する可視光撮像手段と、赤外線撮像手段から出力される2つの赤外線画像、もしくは可視光撮像手段から出力される2つの可視光画像に基づき、赤外線撮像手段もしくは可視光撮像手段から対象物までの距離である対象物距離を算出する距離算出手段と、異なる視点の2つの赤外線画像に基づき対象物距離を算出するか、異なる視点の2つの可視光線画像に基づき対象物距離を算出するかを選択する測距用画像選択手段とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、状況に応じて測距計算時に赤外線画像と可視光画像を切替えるため、状況に応じて正確なZ軸方向の距離を算出可能となる。例えば、測距装置に受光する赤外線量が少ない対象物であっても、赤外線よりも可視光の反射率が高いことなどに起因して測距装置に受光する可視光量が多い対象物であれば、2つの可視光画像の相関演算を用いることによって、赤外線画像のみの場合よりZ軸方向の距離を正確に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。本発明による測距装置は、赤外線画像と可視光画像の両方を撮影することができ、状況に応じて測距計算時に赤外線画像と可視光画像を切替えるため、状況に応じて正確なZ軸方向の距離を算出可能となる。
【0009】
実施の形態1では、赤外線画像及び可視光線画像のうちのそれぞれ一つの画像の特徴量の比較によって、赤外線画像を用いて測距演算を行うか、可視光線画像を用いて測距演算を行うか選択する。
【0010】
実施の形態2では、赤外線画像を用いた測距演算での一致度評価値と、可視光画像を用いた測距演算での一致度評価値とを比較して、測距精度の高いと思われる測距演算結果を選択する。
【0011】
実施の形態3では、照明スイッチの状態に応じて、赤外線画像を用いて測距演算を行うか、可視光線画像を用いて測距演算を行うか選択する。
【0012】
実施の形態4では、照度センサの状態に応じて、赤外線画像を用いて測距演算を行うか、可視光線画像を用いて測距演算を行うか選択する。
【0013】
以下、それぞれの実施形態について詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1に本実施の形態の測距装置の構成を図示する。
【0015】
まず、図1の測距装置の構成を説明する。図1において、1は赤外線を放射する複数のLEDから構成される赤外線放射部である。2は赤外線集光用に設計された2つの赤外線レンズ、3は2つの異なる赤外線画像を出力する赤外線ステレオカメラ、4は可視光線集光用に設計された2つの可視光レンズ、5は2つの異なる可視光画像を出力する可視光ステレオカメラである。赤外線ステレオカメラ3は赤外線を各赤外線レンズ2を介してそれぞれに対応する撮像素子に受光し、異なる2つの赤外線画像を出力する。可視光ステレオカメラ5は可視光を各可視光レンズ4を介してそれぞれに対応する撮像素子に受光し、異なる2つの可視光画像を出力する。6は赤外線ステレオカメラ3から出力された2つの赤外線画像のうち少なくとも1つの赤外線画像の特徴量と、可視光ステレオカメラ5から出力された2つの可視光画像のうち少なくとも1つの可視光画像の特徴量を算出し、その2つの特徴量の差異から、測距演算に用いる画像を2つの異なる赤外線画像にするか、もしくは2つの異なる可視光画像にするかを選択する撮像装置選択部、7は撮像装置選択部6で選択された異なる2つの赤外線画像もしくは異なる2つの可視光画像の相関演算から、赤外線ステレオカメラ3もしくは可視光ステレオカメラ5から対象物までの距離を算出する測距演算部である。
【0016】
次に撮像装置選択部6の処理を詳しく説明する。前述のように撮像装置選択部6は赤外線ステレオカメラ3から出力された2つの赤外線画像のうち少なくとも1つの赤外線画像の特徴量と、可視光ステレオカメラ5から出力された2つの可視光画像のうち少なくとも1つの可視光画像の特徴量を算出し、その2つの特徴量の差異から測距演算に用いる画像を2つの異なる赤外線画像にするかもしくは2つの異なる可視光画像にするかを選択する。赤外線ステレオカメラ3から出力される1つの赤外線画像が10ビットの輝度諧調を持ち、画像サイズが横方向640画素、縦方向480画素、露光時間Tiの場合、この赤外線画像の輝度総和(特徴量)は(数1)で表される。
【0017】
【数1】

【0018】
ここでIi(x,y)は赤外線画像の各画素の輝度を表し、xは横方向、yは縦方向のアドレスを表す。可視光ステレオカメラ5から出力される1つの可視光画像も10ビットの輝度諧調を持ち、画像サイズが横方向640画素、縦方向480画素、露光時間Tvの場合、この可視光画像の輝度総和(特徴量)は(数2)で表される。
【0019】
【数2】

【0020】
ここでIv(x,y)は可視光画像の各画素の輝度を表し、xは横方向、yは縦方向のアドレスを表す。このとき、赤外線画像と可視光画像の明るさの差は(数3)で表される。
【0021】
【数3】

【0022】
撮像装置選択部6はDiv≧0の場合は赤外線画像の方が可視光画像よりも多くの光量を受光していると判断し、赤外線ステレオカメラ3の異なる2つの赤外線画像を選択し測距演算部7に出力する。Div<0の場合は可視光画像の方が赤外線画像よりも多くの光量を受光していると判断し、可視光ステレオカメラ5の異なる2つの可視光画像を選択し測距演算部7に出力する。
【0023】
次に測距演算部7の処理を詳しく説明する。前述のように測距演算部7は撮像装置選択部6で選択された異なる2つの赤外線画像もしくは異なる2つの可視光画像の相関演算により、赤外線ステレオカメラ3もしくは可視光ステレオカメラ5から対象物までの距離を算出する。ここでは赤外線ステレオカメラ3の場合の測距演算方法を説明する。可視光ステレオカメラ5の場合も同様の測距演算方法により距離を算出することができる。図2に赤外線ステレオカメラ3の断面図及び対象物上の点8との位置関係を示し、赤外線ステレオカメラ3から対象物上の点8までの距離算出原理を説明する。図2の2L、2Rは赤外線レンズ、9は赤外線透過フィルタ、10L、10Rは撮像素子、11L、11Rは赤外線レンズ2L、2Rの光軸、12Lは対象物上の点8から撮像素子10Lへの主光線、12Rは対象物上の点8から撮像素子10Rへの主光線である。対象物上の点8は赤外線レンズ2Lの光軸上にあるとする。対象物上の点8と赤外線レンズ2L及び赤外線レンズ2Rの光学中心との距離Dを対象物距離、赤外線レンズ2L及び赤外線レンズ2Rの光学中心と撮像素子10L、10Rとの距離を焦点距離f、光軸11Lと光軸11Rとの間隔を基線長Bとする。主光線12Rと撮像素子10Rとの交点と、赤外線レンズ2Rの光軸11Rと撮像素子10Rとの交点との距離は視差Pとなり(数4)で表されるように対象物上の点8の距離により変動する。
【0024】
【数4】

【0025】
したがって、視差Pを検出することにより、対象物距離Dつまり赤外線ステレオカメラ3と対象物8との距離を求めることができる。図3に図2の撮像素子10L、10Rから出力される異なる二つの赤外線画像13L、13Rを示し、視差Pの算出方法を説明する。視差Pの算出方法には様々な方法があるがここではその一例を示す。なお、赤外線画像13L、13Rは歪曲などの内部パラメータ及び外部パラメータが、図1の測距演算部7の校正処理によりあらかじめ校正されているものとし、エピポーラ線が図2の赤外線レンズ2L、2Rの光軸11L、11Rと撮像素子10L、10Rとの交点を結ぶ直線上となっているものとする。図3の14L、14Rは対象物上の点8が赤外線画像13L、13R上に写像された位置を示す。15は対象物上の点8が無限遠の位置にある場合に写像されるべき位置を示す。16L、16Rは赤外線画像13L、13Rの相関演算を行うブロック単位を示し、16Lは対象物上の点8が含まれるブロックを示している。ブロックサイズは横方向16画素、縦方向16画素とする。図3のブロックサイズは説明しやすくするために実際の赤外線画像との相対的な大きさより大きく書いている。赤外線画像13L中のブロック16Lの位置は固定とし、赤外線画像13R中のブロック16Rは図3の位置から1画素ずつ図3の左方向に移動していき、それぞれの位置での一致度評価値Eiを(数5)のSAD(差分絶対値総和)で算出する。
【0026】
【数5】

【0027】
ここでIibl(xb,yb)は赤外線画像13Lのブロック16L内の各画素の輝度、Iibrは赤外線画像13Rのブロック16R内の各画素の輝度を表す。abs()は絶対値を演算することを示す。図4にブロック16Rのずらし量と一致度評価値Eiの推移を示す。ずらし量Zの時に一致度評価値Eiが最小となっており、このときのブロック16Rの位置は図3の17Rであり、ブロック16Lとブロック16Rの画像の相関が最も高い。したがって、このずらし量Zを視差と決定する。更にサブピクセル精度の視差演算を行ってもよいが、本実施例ではピクセル単位での視差計算とする。撮像素子10L、10Rの画素ピッチをgとすると、(数4)の視差Pとずらし量Zuとの関係は(数6)となるため、(数7)から対象物距離Dつまり赤外線ステレオカメラ3と対象物8との距離を求めることができる。
【0028】
【数6】

【0029】
【数7】

【0030】
図5に可視光ステレオカメラ5の断面図及び対象物上の点8を示す。図5の4L、4Rは可視光レンズ、18は可視光線透過フィルタ、19L、19Rは撮像素子、20L、20Rは可視光レンズ4L、4Rの光軸、21Lは対象物上の点8から撮像素子19Lへの主光線、21Rは対象物上の点8から撮像素子19Rへの主光線である。撮像装置選択部6が可視光ステレオカメラ5を選択した場合も、赤外線ステレオカメラ3同様の原理により距離を算出することができる。
【0031】
測距結果はブロック単位で算出されるため、例えば赤外線ステレオカメラ3の測距結果は、図7に示すように画像13Lを横方向40ブロック、縦方向30ブロックのそれぞれのブロックに対して算出される。赤外線画像及び可視光画像の端周辺のブロックは相関演算のための画像情報が不十分なために適切な演算ができない場合があり、その場合はエラーを出力する。
【0032】
以上のように、本発明の測距用画像選択機能を有する測距装置は、測距装置に受光する赤外線量が可視光線と比較して多いと予想される対象物の場合は赤外線画像を用いて測距演算を行い、赤外線量が可視光線と比較して少ないと予想される対象物の場合は可視光線画像を用いて測距演算を行う。これにより、対象物の赤外線反射率が可視光反射率よりも低い場合や、赤外線よりも可視光の光量が多い場合などは、赤外線画像のみの場合よりZ軸方向の距離を正確に算出することができる。
【0033】
なお、本実施の形態では輝度総和(数3)を撮像装置選択の基準にしているが、赤外線画像と可視光線画像の各画素の輝度より演算される特徴量を比較するものであればよく、輝度総和(数3)を選択の基準に限るものではない。
【0034】
なお、例えば(数8)、(数9)のように赤外線画像と可視光線画像の微分を特徴量として、撮像装置選択の基準にしてもよい。この場合は微分絶対値総和が大きい画像の方が画像の特徴点が多く測距演算精度が高いとみなし、赤外線画像と可視光線画像のうち微分絶対値が大きい方を選択する。
【0035】
【数8】

【0036】
【数9】

【0037】
また、例えば(数10)、(数11)のように赤外線画像と可視光線画像の2回微分を特徴量として、撮像装置選択の基準にしてもよい。この場合は2回微分絶対値総和が大きい画像の方が画像の特徴点が多く測距演算精度が高いとみなし、赤外線画像と可視光線画像のうち2回微分絶対値が大きい方を選択する。
【0038】
【数10】

【0039】
【数11】

【0040】
また、赤外線画像と可視光線画像の分散を特徴量として、撮像装置選択の基準にしてもよい。この場合は分散が大きい画像の方が画像の特徴点が多く測距演算精度が高いとみなし、赤外線画像と可視光線画像のうち分散が大きい方を選択する。
【0041】
また、赤外線画像か可視光線画像かのいずれかの特徴量に閾値を設け、その閾値より大きいか小さいかによって撮像装置選択の基準としてもよい。この場合は赤外線画像の特徴量か、可視光画像の特徴量かのいずれかを常に算出すればよいため、赤外線と可視光線の両方の画像を常に取り込む必要が無くなる。
【0042】
なお、撮像素子は各赤外線レンズ、各可視光レンズごとに別個に設置してもよいし、同一撮像素子で各レンズごとに異なる領域を用いてもよい。また、図2及び図5では、測距原理の説明の簡略化のために赤外線透過フィルタ9及び可視光透過フィルタ18は十分薄いとみなして説明しているが、厚みが問題になる場合は適切に考慮する必要がある。また、画像サイズ、ブロックサイズ、画素ピッチ等は本実施の形態に記載の値に限られないことは言うまでもない。本実施の形態は、本発明を具現化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0043】
(実施の形態2)
図6に本実施の形態の測距装置の構成を図示する。
【0044】
まず、図6の測距装置の構成を説明する。図6の1から5は実施の形態1と同じため説明を省略する。22は、赤外線ステレオカメラ3から出力される2つの異なる赤外線画像と、可視光ステレオカメラ5から出力される2つの異なる可視光画像のそれぞれの相関演算から、赤外線ステレオカメラ3から対象物までの距離と可視光ステレオカメラ5から対象物までの距離を算出する測距演算部である。23は、測距演算部22で行った相関演算で算出される一致度評価値に基づき、異なる2つの赤外線画像から求めた測距結果を採用するか、異なる2つの可視光画像から求めた測距結果を採用するかを選択する撮像装置選択部である。
【0045】
次に測距演算部22の処理を詳細に説明する。測距演算部22は実施の形態1の図1の測距演算部7と同様にSAD(差分絶対値総和)を用いて一致度評価値を算出する。それぞれの赤外線画像及び可視光画像の画像サイズは横方向640画素、縦方向480画素とし、相関演算を行う単位となるブロックサイズを横方向16画素、縦方向16画素とすると、図7の赤外線画像の例に示すように横方向に40個、縦方向に30個のブロックが構成される。それぞれのブロックでのSAD(差分絶対値総和)を用いた一致度評価値は(数5)同様に求められ、一致度評価値が最小となるずらし量を各ブロックのずらし量Zuとして格納する。このときのそれぞれのブロックの一致度評価値の最小値も格納する。2つの異なる赤外線画像から算出した各ブロックの一致度評価値の最小値はEi_minとして格納し、2つの異なる可視光画像から算出した各ブロックの一致度評価値の最小値はEv_minとして格納する。
【0046】
次に撮像装置選択部23の処理を詳細に説明する。撮像装置選択部23は測距演算部22で算出された、赤外線画像の各ブロックでの一致度評価値の最小値Ei_minの総和Uiを(数12)により算出する。
【0047】
【数12】

【0048】
Ei_min(xe,ye)は赤外線画像の各ブロックでの一致度評価値の最小値を表す。また、可視光画像の各ブロックでの一致度評価値の最小値Ev_minの総和Uvも同様に(数13)より算出する。
【0049】
【数13】

【0050】
Ev_min(xe,ye)は可視光画像の各ブロックでの一致度評価値の最小値を表す。(数12)及び(数13)で求めた一致度評価値の総和UiとUvの大小関係がUi≦Uvの場合は、赤外線画像の方が画像相関性の高いブロックが多い、つまり赤外線ステレオカメラ3を用いた方が測距精度が高いとみなし、2つの異なる赤外線画像からもとめた測距結果を選択する。Ui>Uvの場合は、可視光画像の方が画像相関性の高いブロックが多い、つまり可視光ステレオカメラ5を用いた方が測距精度が高いとみなし、2つの異なる可視光画像からもとめた測距結果を選択する。対象物距離Dつまり、赤外線ステレオカメラ3もしくは可視光ステレオカメラ5と対象物8との距離は、実施の形態1と同様にずらし量Zuから(数7)を用いて求めることができる。
【0051】
以上のように、本発明の測距用画像選択機能を有する測距装置は、赤外線画像を用いて行った測距演算での一致度評価値と、可視光画像を用いて行った測距演算での一致度評価値を比較し、演算精度が高いと予想される方の測距結果を採用する。これにより、対象物の赤外線反射率が可視光反射率よりも低い場合や、赤外線よりも可視光の光量が多い場合などで赤外線画像による測距精度の低下が予想される場合であっても、赤外線画像のみの測距演算の場合よりZ軸方向の距離を正確に算出することができる。
【0052】
なお、一致度評価値Ei及びEvを(数5)のようにSAD(差分絶対値総和)で算出するのでなく、(数14)、(数15)のようにSSD(差分2乗総和)で算出してもよい。
【0053】
【数14】

【0054】
【数15】

【0055】
ここでIvbl(xb,yb)は2つの可視光画像の一方の画像のブロック内の各画素の輝度、Ivbrは可視光画像の他方の画像のブロック内の各画素の輝度を表す。この場合の各ブロックでの一致度評価値の最小値Ei_minの総和Ui、一致度評価値の最小値Ev_minの総和Uvの算出は(数12)、(数13)でよく、赤外線ステレオカメラ3の測距結果と可視光ステレオカメラ5の測距結果の選択基準も同様にUiとUvの大小関係でよい。
【0056】
なお、一致度評価値Ei及びEvを(数5)のようにSAD(差分絶対値総和)で算出するのでなく、(数16)、(数17)のように相互相関係数で算出してもよい。
【0057】
【数16】

【0058】
【数17】

【0059】
この場合は各ブロックでは一致度評価値Ei及びEvが最大となる時に相関性が最も高いため、一致度評価値Ei及びEvが最大となる時のずらし量をずらし量Zとして格納する。このときの各ブロックのEi及びEvの最大値もEi_max及びEv_maxとして格納する。赤外線画像の各ブロックでの一致度評価値の最大値Ei_maxの平均を(数18)により算出する。可視光画像の各ブロックでの一致度評価値の最大値Ev_maxの平均Uvを(数19)により算出する。
【0060】
【数18】

【0061】
【数19】

【0062】
(数18)及び(数19)で求めた一致度評価値の平均UiとUvの大小関係がUi≧Uvの場合は、赤外線画像の方が画像相関性の高いブロックが多い、つまり赤外線ステレオカメラ3を用いた方が測距精度が高いとみなし、2つの異なる赤外線画像からもとめた測距結果を選択する。Ui<Uvの場合は、可視光画像の方が画像相関性の高いブロックが多い、つまり可視光ステレオカメラ5を用いた方が測距精度が高いとみなし、2つの異なる可視光画像からもとめた測距結果を選択する。対象物距離Dつまり、赤外線ステレオカメラ3もしくは可視光ステレオカメラ5と対象物8との距離は、実施の形態1と同様にずらし量Zから(数6)、(数7)を用いて求めることができる。
【0063】
なお、画像サイズ、ブロックサイズ、画素ピッチ等は本実施の形態に記載の値に限られないことは言うまでもない。本実施の形態は、本発明を具現化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0064】
(実施の形態3)
図8に本実施の形態の測距装置の構成を図示する。図8の1から5、及び7は実施の形態1と同じため説明を省略する。
【0065】
撮像装置選択部24の処理を詳細に説明する。撮像装置選択部24には、対象物を照らす外部の照明機器に関する情報、例えば自動車のヘッドランプのスイッチなどの照明スイッチ25のオン、オフの情報が入力される。照明スイッチ25がオンの場合は、対象物から測距装置に受光される可視光の光量が少ないと見なし、より正確な測距演算が可能と予想される赤外線ステレオカメラ3の異なる2つの赤外線画像を選択し測距演算部7に出力する。照明スイッチ25がオフの場合は、対象物から測距装置に受光される可視光の光量が多いと見なし、より正確な測距演算が可能と予想される可視光ステレオカメラ5の異なる2つの可視光画像を選択し測距演算部7に出力する。
【0066】
以上のように、本発明の測距用画像選択機能を有する測距装置は、測距装置に受光する赤外線量が可視光線と比較して多いと予想される対象物の場合は赤外線画像を用いて測距演算を行い、赤外線量が可視光線と比較して少ないと予想される対象物の場合は可視光線画像を用いて測距演算を行う。これにより、対象物の赤外線反射率が可視光反射率よりも低い場合や、赤外線よりも可視光の光量が多い場合などは、赤外線画像のみの場合よりZ軸方向の距離を正確に算出することができる。
【0067】
なお、照明スイッチ25がオン、オフの2つの状態のみでなく、照明の光量の調整が可能な場合は、例えば照明の光量の閾値を設け、照明の光量が閾値以上の場合は対象物から測距装置に受光される可視光の光量が少ないと見なし、より正確な測距演算が可能と予想される赤外線ステレオカメラ3の異なる2つの赤外線画像を選択し測距演算部7に出力する。照明の光量が閾値より小さい場合は、対象物から測距装置に受光される可視光の光量が多いと見なし、より正確な測距演算が可能と予想される可視光ステレオカメラ5の異なる2つの可視光画像を選択し測距演算部7に出力する。つまり、照明スイッチ25の状態に応じて赤外線ステレオカメラ3か可視光ステレオカメラ5かを選択し、測距演算部7に出力すればよい。
【0068】
(実施の形態4)
図9に本実施の形態の測距装置の構成を図示する。図9の1から5、及び7は実施の形態1と同じため説明を省略する。
【0069】
撮像装置選択部26の処理を詳細に説明する。撮像装置選択部26は、照度センサ27により周辺の明るさに関する情報が入力される。そして、照度センサから入力される照度の閾値を設け、照度が閾値より小さい場合は対象物から測距装置に受光される可視光の光量が少ないと見なし、より正確な測距演算が可能と予想される赤外線ステレオカメラ3の異なる2つの赤外線画像を選択し測距演算部7に出力する。周辺の照度が閾値より大きい場合は、対象物から測距装置に受光される可視光の光量が多いと見なし、より正確な測距演算が可能と予想される可視光ステレオカメラ5の異なる2つの可視光画像を選択し測距演算部7に出力する。つまり、照度センサ27の状態に応じて赤外線ステレオカメラ3か可視光ステレオカメラ5かを選択し、測距演算部7に出力すればよい。
【0070】
以上のように、本発明の測距用画像選択機能を有する測距装置は、測距装置に受光する赤外線量が可視光線と比較して多いと予想される対象物の場合は赤外線画像を用いて測距演算を行い、赤外線量が可視光線と比較して少ないと予想される対象物の場合は可視光線画像を用いて測距演算を行う。これにより、対象物の赤外線反射率が可視光反射率よりも低い場合や、赤外線よりも可視光の光量が多い場合などは、赤外線画像のみの場合よりZ軸方向の距離を正確に算出することができる。
【0071】
なお、例えば自動車の周辺監視などの場合には、図10に示すように複数の赤外線ステレオカメラ3及び可視光ステレオカメラ5が設置される場合があるが、この場合も赤外線ステレオカメラ3と可視光ステレオカメラ5の選択方法として実施の形態1から4の方式を適用できることは言うまでもない。
【0072】
なお、オプティカルフローを用いる場合は1つのカメラで2つのカメラ(ステレオカメラ)の役割を果たすことができるため、図11に示すように、赤外線レンズ2が1つの赤外線ステレオカメラ3及び可視光レンズ4が1つの可視光ステレオカメラ5が設置される場合があるが、この場合も赤外線ステレオカメラ3と可視光ステレオカメラ5の選択方法として実施の形態1から4の方式を適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の測距装置は、車載、監視、ロボット、ゲーム、CG画像作成用途などに用いられる、複数の異なる視点の画像から対象物の距離もしくは形状を推定する測距装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態1に係る測距装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1に係る測距装置の測距原理の説明図
【図3】本発明の実施の形態1に係る測距装置の測距方法の説明図
【図4】本発明の実施の形態1に係る測距装置の測距方法の説明図
【図5】本発明の実施の形態1に係る測距装置の測距原理の説明図
【図6】本発明の実施の形態2に係る測距装置の構成図
【図7】本発明の実施の形態2に係る測距装置のブロック分割方法の説明図
【図8】本発明の実施の形態3に係る測距装置の構成図
【図9】本発明の実施の形態4に係る測距装置の構成図
【図10】本発明の実施の形態に係る測距装置のその他の構成図
【図11】本発明の実施の形態に係る測距装置のその他の構成図
【図12】従来例の説明図
【符号の説明】
【0075】
1 赤外線放射部
2 赤外線レンズ
3 赤外線ステレオカメラ
4 可視光レンズ
5 可視光ステレオカメラ
6 撮像装置選択部
7 測距演算部
8 対象物上の点
9 赤外線透過フィルタ
10 撮像素子
11 光軸
12 主光線
13 赤外線画像
14 対象物上の点が撮像素子に写像された位置
15 対象物が無限遠にあるときに撮像素子上に写像される位置
16 ブロック
17 相関が高いときのブロック位置
18 可視光線透過フィルタ
19 撮像素子
20 光軸
21 主光線
22 測距演算部
23 撮像装置選択部
24 撮像装置選択部
25 照明スイッチ
26 撮像装置選択部
27 照度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を入射して異なる視点の2つの赤外線画像を出力する赤外線撮像手段と、
可視光を入射して異なる視点の2つの可視光画像を出力する可視光撮像手段と、
前記赤外線撮像手段から出力される2つの赤外線画像、もしくは前記可視光撮像手段から出力される2つの可視光画像に基づき、前記赤外線撮像手段もしくは前記可視光撮像手段から対象物までの距離である対象物距離を算出する距離算出手段と、
前記異なる視点の2つの赤外線画像に基づき前記対象物距離を算出するか、前記異なる視点の2つの可視光線画像に基づき前記対象物距離を算出するかを選択する測距用画像選択手段と、を有することを特徴とする測距装置。
【請求項2】
前記測距用画像選択手段は、前記2つの赤外線画像のうちの少なくとも1つの赤外線画像の特徴量である赤外線画像特徴量と、前記2つの可視光画像のうちの少なくとも1つの可視光画像の特徴量である可視光画像特徴量との差異に基づき、前記異なる視点の2つの赤外線画像に基づき前記対象物距離を算出するか、前記異なる視点の2つの可視光線画像に基づき前記対象物距離を算出するかを選択することを特徴とする請求項1記載の測距装置。
【請求項3】
前記測距用画像選択手段は、前記赤外線画像の各画素の輝度に基づき前記赤外線画像特徴量を算出し、前記可視光画像の各画素の輝度に基づき前記可視光画像特徴量を算出することを特徴とする請求項2記載の測距装置。
【請求項4】
前記測距用画像選択手段は、前記赤外線画像の各画素の輝度の微分値に基づき前記赤外線画像特徴量を算出し、前記可視光画像の各画素の輝度の微分値に基づき前記可視光画像特徴量を算出することを特徴とする請求項2記載の測距装置。
【請求項5】
前記測距用画像選択手段は、前記赤外線画像の各画素の輝度の分散値に基づき前記赤外線画像特徴量を算出し、前記可視光画像の各画素の輝度の分散値に基づき前記可視光画像特徴量を算出することを特徴とする請求項2記載の測距装置。
【請求項6】
前記測距用画像選択手段は、前記2つの赤外線画像のうちの少なくとも1つの赤外線画像に基づく特徴量である赤外線画像特徴量と、前記2つの可視光画像のうちの少なくとも1つの可視光画像に基づく特徴量である可視光画像特徴量との少なくとも一つの特徴量と、所定の閾値との差異に基づき、前記異なる視点の2つの赤外線画像に基づき前記対象物距離を算出するか、前記異なる視点の2つの可視光線画像に基づき前記対象物距離を算出するかを選択することを特徴とする請求項1記載の測距装置。
【請求項7】
前記測距用画像選択手段は、前記2つの赤外線画像から前記対象物距離を算出する際の相関演算による一致度評価値である赤外線画像一致度評価値と、前記2つの可視光画像から前記対象物距離を算出する際の相関演算による一致度評価値である可視光画像一致度評価値との差異に基づき、前記異なる視点の2つの赤外線画像に基づき前記対象物距離を算出するか、前記異なる視点の2つの可視光線画像に基づき前記対象物距離を算出するかを選択することを特徴とする請求項1記載の測距装置。
【請求項8】
前記測距用画像選択手段は、前記2つの赤外線画像の差分絶対値総和に基づき前記赤外線画像一致度評価値を作成し、前記2つの可視光画像の差分絶対値総和に基づき前記可視光画像一致度評価値を作成することを特徴とする請求項7記載の測距装置。
【請求項9】
前記測距用画像選択手段は、赤外線画像の2乗値総和に基づき前記赤外線画像一致度評価値を作成し、可視光画像の2乗値総和に基づき前記可視光画像一致度評価値を作成することを特徴とする請求項7記載の測距装置。
【請求項10】
前記測距用画像選択手段は、赤外線画像の相互相関係数に基づき前記赤外線画像一致度評価値を作成し、可視光画像の相互相関係数に基づき前記可視光画像一致度評価値を作成することを特徴とする請求項7記載の測距装置。
【請求項11】
前記測距用画像選択手段は、対象物を照らす外部の照明機器の状態に関する情報に基づき、前記異なる視点の2つの赤外線画像に基づき前記対象物距離を算出するか、前記異なる視点の2つの可視光線画像に基づき前記対象物距離を算出するかを選択することを特徴とする請求項1記載の測距装置。
【請求項12】
前記測距用画像選択手段は、周辺の明るさに関する情報に基づき、前記異なる視点の2つの赤外線画像に基づき前記対象物距離を算出するか、前記異なる視点の2つの可視光線画像に基づき前記対象物距離を算出するかを選択することを特徴とする請求項1記載の測距装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−174854(P2009−174854A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129992(P2006−129992)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】