説明

測距装置

【課題】 本発明は、被写体までの距離を測定するAFセンサー等の測距装置付き撮像装置に係わり、小型化およびコスト削減を可能にする測距装置を提供する。
【解決手段】 本発明の測距装置であるAFセンサーユニットは、フレキシブル基板4に実装されたAFセンサー5と、被写体からの光を集光するAFセンサー5用のAFレンズ1と、AFセンサー5とAFレンズとの焦点距離を調整する為のピント調整用スペーサー3と、AFセンサー5とAFレンズ1とピント調整用スペーサー3を保持するAFホルダー2とで構成され、AFセンサーを実装したフレキシブル基板4にAFセンサー5の位置を調整するための把持部(切欠き部4a)を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体までの距離を測定するAFセンサー等の測距装置付き撮像装置に係わり、特に、測距装置の内部構成の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、被写体までの距離を測定する測距装置を搭載した撮像装置が広く用いられている。このような測距装置を搭載した撮像装置では、撮像光学系の外側に測距装置としてのAFセンサーユニットを配置し、撮像装置であるビデオカメラから被写体までの距離を測定する方式の開発が進んでいる。
【0003】
従来、このAFセンサーユニットは、一対の測距用レンズ(以下、AFレンズ)と一対の測距用撮像素子(AF用撮像素子、以下、AFセンサー)を用い、三角測量の原理で測定するパッシブAF方式(パッシブ測距方式)を採用したものがある。このAFセンサーユニットは、AFレンズとAFセンサーを内蔵し、AFセンサーは電気信号を所定の電気回路に接続するためのフレキシブル基板に取り付けられている。
【0004】
図5に、従来のAFセンサーユニットの分解斜視図を示す。図5(a)は、AFセンサーユニットを正面側からみた分解斜視図であり、図5(b)は、AFセンサーユニットを背面側からみた分解斜視図である。従来のAFセンサーユニットは、AFレンズ11、AFホルダー12、ピント調整用スペーサー13、AFセンサーホルダー16、フレキシブル基板14に実装されたAFセンサー15で構成されている。
【0005】
AFレンズ11はUV硬化接着剤によりAFホルダー12に接着固定され(図6、18の黒塗り丸部)、フレキシブル基板14に実装されたAFセンサー15はUV硬化接着剤によりAFセンサーホルダー16に接着固定され(図7、19の黒塗り丸部)、AFセンサー15を接着固定したAFセンサーホルダー16は、ピント調整用スペーサー13を介してAFレンズ11が設置されたAFホルダー12に設置する構成となっている(図8)。
【0006】
AFセンサー15はAFレンズ11の光軸上に合致するように位置調整する必要があり、位置調整する際はAFセンサーホルダー16の把持部(切欠き部16a)に調整工具ピン(不図示)を差し込み、図8に示す矢印X,Y,θの各方向について行われる。
【0007】
AFセンサーがAFレンズの光軸上に合致するように位置調整する方法で、類似の方法が、特許文献1で提案されている。測距センサーの背面を保持する保持部材を有し、保持部材には調整工具ピンを保持する2つの穴が形成され、2つの穴に調整工具ピンを挿入し、測距センサーが測距レンズ光軸に対して適正な位置に調整する測距装置について述べている。
【0008】
図8の状態でAFセンサー15の位置が適正に位置調整された後、その状態を保持したままAFセンサーホルダー16をAFホルダー12にUV硬化接着剤により接着部17に接着し(図9、矢印)、接着完了後に調整工具ピンをAFセンサーホルダー16の把持部(切欠き部16a)から抜いて位置調整が完了する。接着工程では、所定2箇所にUV硬化接着剤を塗布し、UV光を一定時間照射してUV硬化接着剤を固めた後、調整工具ピンを抜き取って作業を完了する。
【0009】
このとき、AFセンサー15を適正な位置に調整する方法は、例えばAFレンズ11から所定距離位置にチャートを置き、AFセンサー15の出力波形に基づいて調整する一般的な方法を利用することができる。
【0010】
AFセンサーホルダー16は、AFセンサー15を保持し、AFセンサー15の位置調整をするための把持部(切欠き部16a)を有し、さらに、AFセンサー15を遮光する役目を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−241161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の構成にあるAFセンサーホルダー16は、樹脂でできており、AFセンサー15の位置調整をするための把持部(切欠き部16a)を有したり、AFセンサー15との接着部(図7、19の黒塗り丸部)を確保するスペースを有したり、AFホルダー12との接着面を大きくしたり、AFセンサー15を遮光したりといった役目により、AFセンサーホルダー16自体が大きくなり、AFセンサーユニットが大型化してしまうといった問題点があった。
【0013】
そこで本発明は、AFセンサーホルダー16の役目を既存の他の構成部品に与え、AFセンサーホルダー16を廃止することでAFセンサーユニットの小型化を可能にするとともに、部品コストと接着工程作業コストの削減、AFセンサーホルダー16廃止による組立精度向上を可能にする測距装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の測距装置は、フレキシブル基板に実装された測距センサーと、被写体からの光を集光する測距レンズと、測距センサーと測距レンズとの焦点距離を調整する為の調整用スペーサーと、前記測距センサーと前記測距レンズと前記スペーサーを保持する保持部材とで構成された測距装置において、前記フレキシブル基板に把持部を備えることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の他の特徴とするところは、前記調整用スペーサーは、測距レンズからの光の遮光部を設けたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明のその他の特徴とするところは、前記フレキシブル基板に有する把持部は、前記測距センサーの短手側に設けることを特徴としている。
【0017】
また、本発明のその他の特徴とするところは、前記フレキシブル基板の延出方向は、前記測距センサーの長手方向と略直交する方向に配することを特徴としている。
【0018】
また、本発明のその他の特徴とするところは、前記測距センサーと前記保持部材との間に接着部を有し、接着部は前記フレキシブル基板の延出方向と略反対側に設けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、AFセンサーを実装するフレキシブル基板にはAFセンサーの位置調整をするための把持部(切欠き部)を設け、ピント調整用のスペーサーにはAFレンズから入射した外乱光等で誤動作しないように遮光部を設けた。それにより、従来のAFセンサーユニットの構成部品であるAFセンサーの位置調整把持部と外乱光等の遮光の役目を有していたAFセンサーホルダーを廃止することが可能となり、AFセンサーユニットを小型化にすることができた。また、AFセンサーホルダーを廃止することで、部品コストを削減することができ、AFセンサーとAFセンサーホルダーを接着していた作業工程も廃止することができたので、工程コストの削減をすることができた。さらに、AFセンサーホルダーの部品公差がなくなるので、特に厚み方向(AFレンズからAFセンサーまでの距離)の組立精度が向上し、寸法調整のために数種類の厚みのスペーサーを用意していたが、その削減も可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例における分解斜視図 (a)正面側視(b)背面側視
【図2】本発明の実施例におけるAFレンズとAFホルダーの正面設置図
【図3】本発明の実施例におけるAFセンサーとAFホルダーの背面設置図
【図4】本発明の実施例におけるAFセンサーとAFホルダーの接着部斜視図
【図5】従来例における分解斜視図 (a)正面側視(b)背面側視
【図6】従来例におけるAFレンズとAFホルダーの正面設置図
【図7】従来例におけるAFセンサーとセンサーホルダーの背面設置図
【図8】従来例におけるAFセンサーを固着したセンサーホルダーとAFホルダーの背面設置図
【図9】従来例におけるAFセンサーホルダーとAFホルダーの接着部斜視図
【図10】(a)従来のピント調整用スペーサー (b)本発明のピント調整用スペーサー
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図1〜図4および図10に基づいて説明する。
【0022】
図1に、本発明の実施形態であるAFセンサーユニットの分解斜視図を示す。図1(a)は、AFセンサーユニットを正面側からみた分解斜視図であり、図2(b)は、AFセンサーユニットを背面側からみた分解斜視図である。本発明のAFセンサーユニットは、AFレンズ1、AFホルダー2、ピント調整用スペーサー3、フレキシブル基板4に実装されたAFセンサー5で構成されている。
AFレンズ1はUV硬化接着剤によりAFホルダー2に接着固定され(図2、20の黒塗り丸部)、フレキシブル基板4に実装されたAFセンサー5は、ピント調整用スペーサー3を介してAFレンズ1が設置されたAFホルダー2に設置する構成となっている(図3)。ピント調整用スペーサー3の目的は、AFレンズ1とAFホルダー2が各々数個の取り個数で金型成形されるため、各部品の寸法のばらつきによりAFレンズ1からAFセンサー5までの焦点距離にばらつきが生じないように、数種類の厚みのスペーサーを用意し寸法調整をしている。
【0023】
AFセンサー5はAFレンズ1の光軸上に合致するように位置調整する必要がある。位置調整する際はAFセンサー5を実装しているフレキシブル基板4の把持部(切欠き部4a)に調整工具ピン(不図示)を差し込んでAFセンサーを把持し、図3に示す矢印X,Y,θの各方向について行われる。AFセンサー5を実装しているフレキシブル基板4は、AFセンサー5の背面側をガラエポ等の剛性のある素材で補強している。把持部に強度を持たせることで調整時にたわまないようにし、安定した調整ができるようにするためである。
【0024】
従来のAFセンサーユニットの構成部品であるAFセンサーホルダー16では、AFセンサー15の位置調整をするための把持部(切欠き部16a)は、上1箇所と下2箇所の計3箇所に設けていた。一方、本発明のAFセンサー5を実装しているフレキシブル基板4の把持部(切欠き部4a)は、AFセンサー5の短手側に一対(計2箇所)のみ設けた。短手側に配置することで把持部(切欠き部4a)の距離が確保できるため、十分安定した保持が可能となり、安定したX,Y,θの位置調整が可能である。
【0025】
図3の状態でAFセンサー5の位置が適正に調整された後、その状態を保持したままAFセンサー5をAFホルダー2にUV硬化接着剤により接着部7に接着し(図4、矢印)、接着完了後に調整工具ピンをAFセンサー5を実装しているフレキシブル基板4の把持部(切欠き部4a)から抜いて位置調整が完了する。
【0026】
このとき、AFセンサー5を適正な位置に調整する方法は、例えばAFレンズ1から所定距離位置にチャートを置き、AFセンサー5の出力波形に基づいて調整する一般的な方法を利用することができる。
【0027】
本発明では、従来のAFセンサーホルダー16が有していた位置調整用の把持部(切欠き部16a)の役目に対して、AFセンサー5を実装しているフレキシブル基板4に調整工具ピンを差し込み位置調整することができる把持部(切欠き部4a)を有することで、従来のAFセンサーホルダー16の把持部(切欠き部16a)の役目を担うことができる。
【0028】
本発明では、AFセンサー5を実装したフレキシブル基板4のフレキの延出方向をAFセンサー5の長手側と略直交するように延ばしている(本実施例ではフレキを下方に延出している(図3に示すY方向))。接着部7は、フレキの延出方向とは略反対方向に設けることで、接着工程における接着作業者はフレキの延出を気にすることなく容易に接着作業ができる。従来の構成では、AFセンサー15を実装したフレキシブル基板14のフレキの延出方向をAFセンサー5の短手側と略直交するように延ばしている(従来例ではフレキを横方向に延出している(図8に示すX方向))が、接着部17は図9に示すように上方から接着剤を塗布するように設けているため、接着作業者は横方向に延出しているフレキに誤って接着剤を塗布してしまったり、作業時は常に横方向に延出しているフレキに気を付けながら接着作業をしなければならなかった。それゆえ、本発明の構成では、そのような点に対しても改善を図ることができる。
【0029】
従来のAFセンサーユニットの構成部品であるAFセンサーホルダー16は、AFセンサー15を保持し、AFセンサー15の位置調整をするための把持部(切欠き部16a)を有するのみならず、AFレンズ11側からの入射光の中に存在するAFセンサーを誤動作させてしまう外乱光や、各受光部15aの一方に入射する光が他方に入射しないように、AFセンサー15の各受光部15aを遮光する役目も有していた。
【0030】
その役目については、図10に示すように、従来のピント調整用スペーサー13では1つの大きな開口部13aであったことに対して(図10a)、本発明のピント調整用スペーサー3では、中央に遮光部3bを設け、AFセンサー5の各受光部5aに各々の開口部3aを設けることで(図10b)、AFレンズ1側からの入射光の中に存在するAFセンサーを誤動作させてしまう外乱光や、各受光部5aの一方に入射する光が他方に入射しないように、AFセンサー5の各受光部5aを遮光することができる。それにより、従来のAFセンサーホルダー16の遮光の役目を担うことができた。
【0031】
以上により、本発明では、AFセンサーホルダー16を廃止することが可能となったため、AFセンサーユニットを小型化することができた。また、AFセンサーホルダー16を廃止することで、部品コストを削減することができ、それに伴いAFセンサー15とAFセンサーホルダー16を接着していた接着作業工程も廃止することができるので工程コストの削減をすることもできた。さらに、AFセンサーホルダー16が有する部品の公差がなくなるので、特に厚み方向(AFレンズからAFセンサーまでの距離)における精度が向上し、寸法調整のために数種類の厚みのスペーサーを用意していたが、その削減も可能となった。
【符号の説明】
【0032】
1、11‥‥AFレンズ
2、12‥‥AFホルダー
3、13‥‥ピント調整用スペーサー
3a、13a‥‥開口部
3b‥‥遮光部
4、14‥‥フレキシブル基板
4a‥‥切欠き部
5、15‥‥AFセンサー
5a、15a‥‥AFセンサー受光部
16‥‥AFセンサーホルダー
16a‥‥切欠き部
7、17‥‥接着部
18、19、20‥‥接着固定部(黒塗り丸部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板に実装された測距センサーと、被写体からの光を集光する測距レンズと、測距センサーと測距レンズとの焦点距離を調整する為の調整用スペーサーと、前記測距センサーと前記測距レンズと前記スペーサーを保持する保持部材とで構成された測距装置において、前記フレキシブル基板に把持部を備えることを特徴とする測距装置。
【請求項2】
前記調整用スペーサーは、測距レンズからの光の遮光部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記フレキシブル基板に有する把持部は、前記測距センサーの短手側に設けることを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項4】
前記フレキシブル基板の延出方向は、前記測距センサーの長手方向と直交する方向に配することを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の測距装置。
【請求項5】
前記測距センサーと前記保持部材との間には接着部を有し、接着部は前記フレキシブル基板の延出方向と反対側に設けることを特徴とする請求項1と請求項3と請求項4のうち何れか1項に記載の測距装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−98043(P2012−98043A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243336(P2010−243336)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】