説明

湾曲中空パイプの製造方法

【課題】3次元的に湾曲したパイプを成形する場合においても、良好なパイプを成形可能な湾曲中空パイプの製造方法を提供する。
【解決手段】平板である被加工材Wを複数の成形型により段階的にプレス加工することにより被加工材Wの2側辺を突き合わせて、3次元的に湾曲して伸延する湾曲中空パイプを製造する方法であって、プレス加工により、被加工材Wに面外方向へ押し出されるとともに面内にて湾曲して伸延する押出部13を形成しつつ、被加工材Wの押出部13を挟む両側に、互いに遠ざかって延在された延在部15を形成し、かつ延在部15の先端にプレス方向へ屈曲させた鍔部16を形成する工程と、延在部15と鍔部16の間の屈曲を維持しつつ、押出部13と延在部15の間の屈曲部17を逆方向へ屈曲させることにより、両鍔部16を互いに向う方向へ成形する工程と、鍔部16の先端を突き合せる工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲中空パイプの製造方法に関し、特に、サスペンションアームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のサスペンションアームのような湾曲した中空パイプを製造する方法として、例えば特許文献1の製造方法がある。この方法は、素材である平板を、複数の成形型を用いて段階的にプレス成形して最終的に2次元的に湾曲した中空パイプに成形する方法であり、中子を用いずに成形することができる。この方法では、まず平板に互いに遠ざかる方向に延在された鍔部を形成し、次に両鍔部が略平行となるようにプレス方向へ屈曲させ、この後、成形型の内壁に沿って両鍔部を突き合わせてパイプを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3114918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような方法によると、3次元的に湾曲したパイプを成形する場合には、両鍔部を略平行に屈曲させる際に、一部では鍔部が長くなりすぎ、また他の部位では鍔部が引き込まれて短くなりすぎ、良好なパイプを成形することが困難である。
【0005】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、3次元的に湾曲したパイプを成形する場合においても、良好なパイプを成形可能な湾曲中空パイプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記(1)〜(4)に記載の発明により達成される。
【0007】
(1)平板である被加工材を複数の成形型により段階的にプレス加工することにより被加工材の2側辺を突き合わせて、3次元的に湾曲して伸延する湾曲中空パイプを製造するための湾曲中空パイプの製造方法であって、プレス加工により、前記被加工材に面外方向へ押し出されるとともに面内にて湾曲して伸延する押出部を形成しつつ、前記被加工材の押出部を挟む両側に、互いに遠ざかって延在された延在部を形成し、かつ当該延在部の先端にプレス方向へ屈曲させた鍔部を形成する工程と、前記延在部と鍔部の間の屈曲を維持しつつ、前記押出部と延在部の間の屈曲部を逆方向へ屈曲させることにより、両鍔部を互いに向う方向へ成形する工程と、前記鍔部の先端を突き合せる工程と、を有することを特徴とする湾曲中空パイプの製造方法である。
【0008】
(2)前記鍔部を突き合せる工程は、前記鍔部を成形型の内壁に沿って滑らすことにより鍔部を突き合せることを特徴とする上記(1)に記載の湾曲中空パイプの製造方法である。
【0009】
(3)前記鍔部を突き合せる工程は、前記鍔部を成形型の内壁に沿って滑らすことにより鍔部を突き合せつつ、部分的に中子を用いた成形型により鍔部を突き合せることを特徴とする上記(1)に記載の湾曲中空パイプの製造方法である。
【0010】
(4)前記湾曲中空パイプの、断面寸法がプレス方向の長さに対してプレス方向と交差する方向の長さが長い部位に対応する位置に、部分的に中子を適用することを特徴とする上記(3)に記載の湾曲中空パイプの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)に記載の発明によれば、予め延在部と鍔部の間の屈曲を形成した後に、この屈曲を維持しつつ、押出部と延在部の間の屈曲部を逆方向へ屈曲させるため、3次元的に湾曲したパイプを成形する場合において、鍔部が長くなりすぎたり、または短くなりすぎることがなく、良好な湾曲中空パイプを成形することができる。
【0012】
また、上記(2)に記載の発明によれば、鍔部を成形型の内壁に沿って滑らすことにより鍔部を突き合せるため、3次元的に湾曲して伸延する湾曲中空パイプを、中子を用いずに成形することができる。
【0013】
また、上記(3)に記載の発明によれば、鍔部を成形型の内壁に沿って滑らすことにより鍔部を突き合せつつ、さらに部分的に中子を用いるため、中子がなければ成形できないような3次元的に湾曲して伸延する湾曲中空パイプであっても、成形することができる。
【0014】
また、上記(4)に記載の発明によれば、断面寸法がプレス方向の長さに対してプレス方向と交差する方向の長さが長い湾曲中空パイプを成形するために、部分的に中子を適用するため、従来の方法では成形できない上述の形状を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】湾曲中空パイプを示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線に沿う側面図、(C)は(A)のC−C線に沿う断面図、(D)は(A)のD−D線に沿う断面図である。
【図2】本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法の粗成形工程を示す断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法のトリミング工程を示す断面図である。
【図5】図4のIV−IV線に沿う断面図である。
【図6】本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法の屈曲工程を示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法の内曲げ工程を示す断面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図8のX−X線に沿う断面図である。
【図11】本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法のOプレス工程を示す断面図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】図11のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【図14】本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法の当接工程を示す断面図である。
【図15】図14のXV−XV線に沿う断面図である。
【図16】図14のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法の切断工程を示す断面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。
【図19】従来の湾曲中空パイプの製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は湾曲中空パイプを示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線に沿う側面図、(C)は(A)のC−C線に沿う断面図、(D)は(A)のD−D線に沿う断面図である。
【0018】
湾曲中空パイプ1は、例えば車両用部材として使用されるサスペンションアームであり、本実施形態では、平板をプレス加工することにより平板の2側辺を突き合わせて作成する。
【0019】
湾曲中空パイプ1は、図1に示すように3次元的に湾曲して伸延しており、一方の端部では円形断面を有し、他方の端部では矩形断面を有している。また、本湾曲中空パイプ1は平板から形成されるため、伸延方向にわたって溶接ライン2が形成されている。矩形断面で形成される矩形部3は、サスペンションアームのカラーが取り付けられる部位であり、円形のカラーを溶接等により取り付けるための切り込み部4が形成される。
【0020】
矩形部3の断面形状は、溶接ライン2が設けられる辺およびその反対側の辺の2辺の長さL1が、他の2辺の長さL2よりも長く設定されている。
【0021】
次に、本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法について説明する。
【0022】
図2は本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法の粗成形工程を示す断面図、図3は図2のIII−III線に沿う断面図である。
【0023】
まず、図2,3に示すように、第1成形型6により金属製の平板である被加工材Wを粗成形する(粗成形工程)。第1成形型6は、第1上型7と、第1上型7と対向して設けられる第1下型8およびブランクホルダ9とを有している。第1下型8には、第1上型7に向って突出すとともに第1上型7と対向する面にて伸延する凸部10が形成され、第1上型7には、第1下型8の凸部10に対応して窪んだ溝部11が設けられる。第1下型8の外周にはブランクホルダ9が設けられ、ブランクホルダ9と対向して、第1上型7にホルダ面12が形成される。ホルダ面12は、溝部11の外周に形成されて外周方向へ延在し、その外周においてブランクホルダ9方向へ傾斜している。また、ブランクホルダ9は、第1上型7のホルダ面12の形状と対応する形状で形成される。
【0024】
粗成形工程においては、まず第1成形型6内に被加工材Wを設置し、第1下型8を第1上型7から離隔した状態のままブランクホルダ9と第1上型7を近接させ、第1上型7とブランクホルダ9により被加工材Wを挟持する。この際に、被加工材Wの第1上型7とブランクホルダ9の間に挟持される部位が、ホルダ面12の形状にしたがって、外周方向へ延在しつつその先端がブランクホルダ方向へ傾斜して形成される。
【0025】
この後、第1下型8を第1上型7に近接させ、被加工材Wに、第1上型7の溝部11に対応して第1上型7方向に突出する押出部13が形成される。この押出部13は、被加工材Wの面外方向へ押し出されるとともに面内にて湾曲して伸延して形成される。
【0026】
この粗成形工程の際には、ブランクホルダ9により被加工材Wが挟持されているため、被加工材Wの流入の偏りが抑制され、しわ等の発生を防止できる。
【0027】
このように、粗成形工程により、被加工材Wには押出部13の外側の2側辺に、互いに遠ざかって延在する延在部15と、さらにその先端においてブランクホルダ方向へ屈曲した鍔部16が形成される。また、押出部13と延在部15の間には、第1上型7方向に屈曲した屈曲部17が形成される。
【0028】
次に、粗成形された被加工材Wの外周部の不要部分をトリミングする(トリミング工程)。
【0029】
図4は本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法のトリミング工程を示す断面図、図5は図4のIV−IV線に沿う断面図である。
【0030】
粗成形された被加工材Wは、図4,5に示すように、第2成形型20によりトリミングされる。この第2成形型20は、第2上型21と第2下型22とを有している。第2下型22は、第2上型21と対向する面の外周端に下型切断刃23が形成されている。第2上型21には、第2下型22と対向して設けられるとともに背面にバネが設けられて第2下型方向へ付勢されたホルダ部24と、ホルダ部24の外周に設けられて下型切断刃23と対となる上型切断刃25とが設けられる。このホルダ部24と第2下型22は、被加工材Wの形状に対応する形状を有している。
【0031】
トリンミング工程においては、まず第2成形型20内に粗成形された被加工材Wを設置し、第2上型21と第2下型22を近接させる。第2上型21のホルダ部24と第2下型22の間に被加工材Wが挟まれると、ホルダ部24がバネにより付勢されつつ後退する。ホルダ部24が後退すると、上型切断刃25と下型切断刃23の間に被加工材Wが挟まれ、被加工材Wの外周部が切り落とされる。この後、第2上型21と第2下型22を離隔させると、バネの反発力により第2上型21から被加工材Wが取り出される。
【0032】
次に、トリミングされた被加工材Wを屈曲させる(屈曲工程)。
【0033】
図6は本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法の屈曲工程を示す断面図、図7は図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【0034】
トリミングされた被加工材Wは、図6,7に示すように、上下が反転されて第3成形型30に設置され、屈曲される。第3成形型30は、被加工材Wが嵌る溝部33が形成された第3下型32と、溝部33に嵌合する凸部34を備える第3上型31とを有している。また、第3下型32には、溝部33から成形された被加工材Wを突き出すための突き出し部35が備えられている。
【0035】
屈曲工程では、まず第3成形型30内にトリミングされた被加工材Wを上下反転して設置し、第3上型31と第3下型32を近接させる。第3上型31の凸部34と第3下型32の溝部33の間に被加工材Wが挟まれると、延在部15と押出部13の間の屈曲部17が、溝部33に沿って逆方向(第3上型方向)に屈曲されて、押出部13の両側の延在部15が第3上型31方向に向って成形される。なお、溝部33と凸部34の側面の間には被加工材Wの厚さよりも広い空間が設けられており、第3成形型30が下死点(または上死点)に達した際に、凸部34の側面と被加工材Wの延在部15の間に隙間36が形成される。したがって、延在部15と鍔部16の間の屈曲は保持され、両鍔部16が対向する方向に成形される。
【0036】
第3成形型30により成形された被加工材Wは、溝部33から突き出し部35によって突き出される。
【0037】
次に、屈曲工程により屈曲された被加工材Wを更に屈曲させる(内曲げ工程)。
【0038】
図8は本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法の内曲げ工程を示す断面図、図9は図8のIX−IX線に沿う断面図、図10は図8のX−X線に沿う断面図である。
【0039】
壁形成工程により屈曲された被加工材Wは、図8〜10に示すように、第4成形型40に設置されて更に屈曲される。第4成形型40は、被加工材Wが嵌る溝部43が形成された第4下型42と、溝部43に嵌合する凸部44を備える第4上型41とを有している。また、第4下型42には、溝部43から成形された被加工材Wを突き出すための突き出し部45が備えられている。
【0040】
内曲げ工程では、まず第4成形型40内に被加工材Wを設置し、第4上型41と第4下型42を近接させる。なお、溝部43と凸部44の側面の間には、第3成形型30と同様に被加工材Wの厚さよりも広い空間が設けられており、第4成形型40が下死点(または上死点)に達した際に、凸部44の側面と被加工材Wの間に隙間46が形成される。したがって、延在部15と鍔部16の間の屈曲は保持されて成形される。
【0041】
第4成形型40の凸部44は、一方側では第3成形型30の凸部34よりも押圧方向に長く、かつ幅が狭く形成され(図9参照)、他方側では第3成形型30の凸部34よりも押圧方向に短く、かつ幅が広く形成されている(図10参照)。また、第4成形型40の溝部43も、凸部44に対応して一方側では第3成形型30の溝部33よりも押圧方向に長く、かつ幅が狭く形成され(図9参照)、他方側では第3成形型30の溝部33よりも押圧方向に短く、かつ幅が広く形成されている(図10参照)。したがって、成形される被加工材Wは、一方側では押出方向に長く成形され、他方側では幅広に成形される。
【0042】
第4成形型40により成形された被加工材Wは、溝部43から突き出し部45によって突き出される。
【0043】
次に、内曲げ工程により屈曲された被加工材Wを更に屈曲させ、両鍔部16を近接させる(Oプレス工程)。
【0044】
図11は本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法のOプレス工程を示す断面図、図12は図11のXII−XII線に沿う断面図、図13は図11のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【0045】
内曲げ工程により屈曲された被加工材Wは、図11〜13に示すように、第5成形型50に設置されて更に屈曲される。第5成形型50は、被加工材Wが嵌る上型溝部53が形成された第5上型51と、第5上型51と対向する第5下型52とを有している。
【0046】
第5下型52は、上型溝部53の一端側に対応して窪んで形成される下型溝部54と、上型溝部53の他端側に対応して突出して形成される下型突出部55とを備えている。下型溝部54は、内曲げ工程において被加工材Wが押出方向に長く成形された部位に対応して形成され、下型突出部55は、内曲げ工程において被加工材Wが幅広に成形された部位に対応して形成される。
【0047】
Oプレス工程では、まず第5成形型50内に被加工材Wを鍔部16が設けられる側を第5上型51に向けて設置し、被加工材Wの下型突出部55に対応する部位の内側に、断面が矩形形状の中子56を設置した後、第5上型51と第5下型52を近接させる。上型溝部53と下型溝部54の間では、被加工材Wが押出方向に長く成形されているため、第5上型51と第5下型52が近接することによって、両鍔部16の先端が上型溝部53の壁面に沿って移動しつつ接近する。
【0048】
上型溝部53と下型突出部55の間では、被加工材Wが幅広に成形されているため、第5上型51と第5下型52が近接することにより、両鍔部16の先端は必ずしも上型溝部53の壁面に沿って移動しないが、中子56によって鍔部16の内側方向への入り込みが防止される。
【0049】
次に、被加工材Wの先端を当接させる(当接工程)。
【0050】
図14は本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法の当接工程を示す断面図、図15は図14のXV−XV線に沿う断面図、図16は図14のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【0051】
Oプレス工程により両鍔部16の先端が接近した被加工材Wは、図14〜16に示すように、第6成形型60に設置されて、被加工材Wの先端が当接するまで屈曲される。第6成形型60は、被加工材Wが嵌る上型溝部63が形成された第6上型61と、第6上型61と対向する第6下型62とを有している。
【0052】
第6下型62は、上型溝部63の一端側に対応して窪んで形成される下型溝部64と、上型溝部63の他端側に対応して突出して形成される下型突出部65とを備えている。下型溝部64は、内曲げ工程において被加工材Wが押出方向に長く成形された部位に対応して設けられ、下型突出部65は、内曲げ工程において被加工材Wが幅広に成形された部位に対応して設けられる。
【0053】
当接工程では、まず第6成形型60内に被加工材Wを鍔部16が設けられる側を第6上型61に向けて設置し、被加工材Wの下型突出部65に対応する部位の内側には、Oプレス工程において設置した中子56を保持した状態のまま、第6上型61と第6下型62を近接させる。上型溝部63と下型溝部64の間では、被加工材Wが押出方向に長く成形され、かつ鍔部16が内側に屈曲されているため、第6上型61と第6下型62が近接することによって、両鍔部16の先端が上型溝部63の壁面に沿って移動しつつ接近し、最終的に突き合わされる。
【0054】
上型溝部63と下型突出部65の間では、第6上型61と第6下型62が近接することにより、被加工材Wが上型溝部63、下型突出部65および中子56の間で挟まれつつ被加工材Wの先端が接近し、最終的に突き合わされる。
【0055】
次に、被加工材Wの矩形部3に、円形のカラーを取り付けるための切り込み部4を形成する(切断工程)。
【0056】
図17は本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法の切断工程を示す断面図、図18は図17のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。
【0057】
当接工程により鍔部16の先端が当接した被加工材Wは、図17,18に示すように、中子56が引き抜かれて第7成形型70に設置される。第7成形型70は、被加工材Wの形状に対応して形成され、被加工材Wを挟持することが可能な第7上型71および第7下型72を有している。
【0058】
第7上型71には、カム機構によって被加工材Wの矩形部3に対して進退動可能な切断部73が設けられ、第7下型72には、切断部73が貫通可能な切断孔74が設けられる。なお、切断部73の進退動方向は、第7成形型70の押圧方向と異なっている。
【0059】
切断工程では、まず第7成形型70内に被加工材Wを設置し、被加工材Wの矩形部3に対して切断部73を前進させ、切断部73と切断孔74によって矩形部3の切断孔74と隣接する面を切断し、被加工材Wの矩形部3に円形のカラーを取り付けるための切り込み部4を形成する。この後、第7成形型70から被加工材Wを取り出し、両端部の不要部分を切り離して(不図示)、両鍔部16の突き合わされた先端同士を溶接して成形が完了する。
【0060】
このように、本実施形態に係る湾曲中空パイプの製造方法によれば、粗成形工程において延在部15の先端に屈曲した鍔部16を形成するため、3次元的に湾曲した湾曲中空パイプ1を成形することができる。すなわち、従来の湾曲中空パイプの製造方法を図19に示すが、従来は、まず平板100に互いに遠ざかる方向に延在された鍔部101を形成し(図19(A))、次に両鍔部101が略平行となるようにプレス方向へ屈曲させ(図19(B))、この後、成形型の内壁に沿って両鍔部101を突き合わせてパイプを形成している(図19(C))。この方法では、2次元的に湾曲した湾曲中空パイプを成形することはできるが、3次元的に湾曲した湾曲中空パイプを成形しようとすると、両鍔部101が略平行となるようにプレス方向へ屈曲させる際(図19(B)参照)に、鍔部101の一方が引き込まれて短くなったり、または長くなり過ぎたりするため、成形が困難である。しかし、本実施形態では、粗成形工程において延在部15の先端に屈曲した鍔部16を予め形成し、屈曲工程において延在部15と押出部13の間の屈曲部17を逆方向に屈曲されることで、両鍔部16を対向する方向に湾曲させることができるため、3次元的に湾曲した湾曲中空パイプ1も良好に成形できる。
【0061】
また、従来の方法では、中子を用いないため押圧方向の長さが短い幅広の中空部材(図1(D)参照)を形成することができなかったが、本実施形態では部分的に中子56を用いるため、部分的に押圧方向の長さが短い幅広の中空部材を成形することができる。
【0062】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。例えば、トリミング工程や切断工程を省くこともできる。また、湾曲中空パイプの形状によっては、中子も用いないで実施することもできる。また、例えばサスペンションアーム以外の湾曲中空パイプに適用することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 湾曲中空パイプ、
2 溶接ライン、
3 矩形部、
6,20,30,40,50,60,70 成形型、
13 押出部、
15 延在部、
16 鍔部、
17 屈曲部、
56 中子、
L1,L2 矩形部の断面側辺の長さ、
W 被加工材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板である被加工材を複数の成形型により段階的にプレス加工することにより被加工材の2側辺を突き合わせて、3次元的に湾曲して伸延する湾曲中空パイプを製造するための湾曲中空パイプの製造方法であって、
プレス加工により、前記被加工材に面外方向へ押し出されるとともに面内にて湾曲して伸延する押出部を形成しつつ、前記被加工材の押出部を挟む両側に、互いに遠ざかって延在された延在部を形成し、かつ当該延在部の先端にプレス方向へ屈曲させた鍔部を形成する工程と、
前記延在部と鍔部の間の屈曲を維持しつつ、前記押出部と延在部の間の屈曲部を逆方向へ屈曲させることにより、両鍔部を互いに向う方向へ成形する工程と、
前記鍔部の先端を突き合せる工程と、を有することを特徴とする湾曲中空パイプの製造方法。
【請求項2】
前記鍔部を突き合せる工程は、前記鍔部を成形型の内壁に沿って滑らすことにより鍔部を突き合せることを特徴とする請求項1に記載の湾曲中空パイプの製造方法。
【請求項3】
前記鍔部を突き合せる工程は、前記鍔部を成形型の内壁に沿って滑らすことにより鍔部を突き合せつつ、部分的に中子を用いた成形型により鍔部を突き合せることを特徴とする請求項1に記載の湾曲中空パイプの製造方法。
【請求項4】
前記湾曲中空パイプの、断面寸法がプレス方向の長さに対してプレス方向と交差する方向の長さが長い部位に対応する位置に、部分的に中子を適用することを特徴とする請求項3に記載の湾曲中空パイプの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−115905(P2012−115905A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19997(P2012−19997)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【分割の表示】特願2006−264969(P2006−264969)の分割
【原出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000253455)株式会社ヨロズ (22)
【Fターム(参考)】