説明

湿度インジケータとその製造方法

【課題】重金属を含まず、湿度上昇時の色相変化の視認性が良好で、且つ、湿度検知時の色相変化の速度が適度で取り扱いが容易であり、しかも、色相変化のメモリー性を有する湿度インジケータを提供する。
【解決手段】少なくとも、電子供与性呈色化合物、常温において固体である酸性化合物、潮解物質、及び水系樹脂エマルジョンとからなる水性塗料を担持体に付着させ、加熱して乾燥させて呈色組成物とした湿度インジケータにおいて、該担持体の塗料を付着させた側に透湿性を有する透明樹脂層を形成することにより、上記呈色組成物に接触する湿気を制限して変色速度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変色により湿度の上昇を容易に検知しうる湿度インジケータとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、商品包装に封入される乾燥剤として、シリカゲル入りの小袋が用いられており、この小袋内には、乾燥状態を把握するためのインジケータとして、青ゲルと呼ばれる塩化コバルト含浸シリカゲルが混入されていた。しかし、コバルトは重金属であるため、環境上、コバルトを含有しない湿度インジケータが望まれている。
【0003】
特許文献1には、粉状潮解性物質と潮解性物質の潮解液と接触することにより顕色化する粉状顕色剤との混合物の乾式成形体よりなる湿度インジケータが開示されている。しかし、特許文献1の湿度インジケータは、顕色剤として合成着色料のような水溶性色素やpH指示薬を用いるため、湿度上昇時の色相変化の視認性が十分ではないという問題があった。
【0004】
さらに、シート状等様々な形態の湿度インジケータが求められており、上記のような乾式成形体では適応しきれないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開平7−174704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決し、重金属を含まず、湿度上昇時の色相変化の視認性が良好で、且つ、湿度検知時の色相変化の速度が適度で取り扱いが容易であり、しかも、色相変化のメモリー性を有する湿度インジケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、少なくとも、電子供与性呈色化合物、常温において固体である酸性化合物、潮解物質、及び水系樹脂エマルジョンとからなる水性塗料を担持体に付着させ、加熱して乾燥させて呈色組成物とした後、該担持体の塗料を付着させた側に透湿性を有する透明樹脂層を形成することを特徴とする湿度インジケータの製造方法である。
【0008】
本発明の第2は、担持体と、少なくとも該担持体の表面側を覆う透湿性を有する透明樹脂層と、少なくとも該担持体と透明樹脂層との間において該担持体に担持された呈色組成物とを備え、
上記呈色組成物が、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、樹脂バインダーからなることを特徴とする湿度インジケータである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0010】
〔1〕本発明の湿度インジケータは、製造時に用いる塗料が水性塗料であるため、取り扱いが容易である。
【0011】
〔2〕本発明の湿度インジケータは、水性塗料を紙や樹脂フィルム、布、不織布などの担持体に付着させて乾燥させることで容易に得られるため、様々な形態の湿度インジケータを提供することができ、用途が広い。
【0012】
〔3〕本発明の湿度インジケータは、電子供与性呈色化合物を用いていることから、湿度上昇を示す色相の変化の視認性が良好であり、しかも色相の変化を保持するメモリー性を有する。さらに、加熱によって元に戻すことができ、再利用が可能である。
【0013】
〔4〕本発明の湿度インジケータ及び該湿度インジケータの製造に用いる塗料はコバルト等重金属を含んでいないため、環境上の問題がなく、一般家庭用ゴミと同様に廃棄することができる。
【0014】
〔5〕本発明の湿度インジケータは、乾燥時と湿潤時にそれぞれ呈する色を自由に選択することができ、色相の変化によって湿度レベルを検知することもできる。
【0015】
〔6〕本発明の湿度インジケータは、表面に透湿性を有する樹脂層を形成することで呈色組成物の変色速度が制御されているため、かかる湿度インジケータを包装体内に収納する際に急激に周囲の湿気を検知して変色する恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の湿度インジケータは、担持体と、該担持体に担持させた呈色組成物と、透湿性を備えた透明樹脂層(以下、速度調整樹脂層と言う)からなり、該呈色組成物が、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、樹脂バインダーからなる。また、本発明の湿度インジケータは、少なくとも、電子供与性呈色化合物、常温において固体である酸性化合物、潮解物質、及び水系樹脂エマルジョンとからなる水性塗料を担持体に付着させ、加熱して乾燥させ、次いで上記速度調整樹脂層を形成してなる。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明に用いられる速度調整樹脂層は、適度な透湿性を備えた透明樹脂からなり、該速度調整樹脂層側からの湿気の浸透速度を調整して担持体に担持された呈色組成物の変色速度を調整する層である。かかる樹脂層としては、樹脂素材を溶媒に溶解或いは分散させた樹脂塗料を、呈色組成物を担持した担持体に塗布して加熱乾燥させたり、担持体に樹脂シート或いはフィルムをラミネート等により積層することで形成される。
【0019】
かかる樹脂素材としては、樹脂層形成後に適度な透湿性と透明性を示すものであれば用いることができる。本発明において速度調整樹脂層の透湿性は、下記の測定法による透湿度(g/m2・day)で示す。
【0020】
厚さ12μmのPETフィルムの上に測定用の樹脂層を形成し、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製「PERMATRAN−W 3/33シリーズ」)により測定する。
【0021】
速度調整樹脂層の透湿度としては0.05〜1000g/m2・dayであれば速度調整作用が得られるが、好ましくは0.5〜200g/m2・dayである。透湿度が0.05g/m2・day未満では透湿性が低すぎるため湿気を検知しても変色速度が遅くなりすぎる。また、1000g/m2・dayを超えると透湿性が高すぎて梱包作業などにおいて周囲の湿気によって急激に変色してしまう恐れがある。
【0022】
具体的に樹脂素材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ブチラール樹脂、ポリエステルウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、スチレン化エポキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、塩化酢酸ビニル、アクリル樹脂、ニトロセルロースなどを用いることができる。
【0023】
本発明に用いられる担持体としては、紙や樹脂フィルム、布、不織布など水性塗料を付着させて加熱乾燥させることにより、該担持体の表面や内部に該塗料の成分を含む呈色組成物を担持させ得るものであればいかなる素材も用いることができる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのフィルム、或いはシートが好ましく用いられる。
【0024】
また、本発明においては、紙や布、不織布などの透湿性の高い担持体を用いた場合に、該担持体の裏面から浸透した湿気によって呈色組成物が急激に変色するのを防止するため、かかる担持体の裏面或いは表面に透湿性の無い、或いは低い樹脂層(以下、防湿樹脂層と言う)を形成しておくことが好ましい。かかる防湿樹脂層としては、上記速度調整樹脂層と同じ樹脂を用いることができる。かかる防湿樹脂層を担持体の裏面に設ける場合、担持体に呈色組成物を担持させた後に形成しても良く、後述する速度調整樹脂層と同時にドライラミネートや接着により形成しても良い。
【0025】
また、本発明の湿度インジケータが湿気によって消色した際に担持体の色が視認されるように、担持体の少なくとも一部を有彩色としても良い。例えば、乾燥時に青色を呈する電子供与性呈色化合物を用い、担持体を赤色とすることにより、乾燥時には青色、湿潤時には赤色で明確に湿度を検知することができる。従来用いられていた塩化コバルト系の湿度インジケータは、乾燥から湿潤への色相変化が青から赤であったため、本発明の湿度インジケータを同じ色相変化で構成することにより、従来品への代替による混乱を避けることができる。
【0026】
有彩色の担持体としては、担持体そのものが有彩色に着色されている形態と、担持体上に有彩色インク層を設けた形態が挙げられる。
【0027】
上記有彩色に着色された担持体としては、適当な着色剤を含有するPETやPP、PEなどの着色樹脂フィルム、或いはシートや、紙や樹脂フィルム、布、不織布などの基材を着色剤で着色したものが挙げられる。
【0028】
また、担持体上に有彩色インク層を設けた形態としては、呈色組成物を担持させる表面側に設ける場合と、裏面側に設ける場合があり、さらに、上記した防湿樹脂層を設けた担持体上にかかる有彩色インク層を設ける場合と、逆に、担持体上に有彩色インク層を設けた上にかかる防湿樹脂層を設ける場合とがある。
【0029】
いずれの場合においても、有彩色インク層、防湿樹脂層は次工程の影響を受けない素材で形成される必要がある。
【0030】
また、有彩色インク層と呈色組成物との間に介在する層は透明でなければならない。
【0031】
尚、本発明において担持体の有彩色である領域は担持体全面である必要はなく、基材の一部分を着色したり、有彩色インク層を基材の一部分に設けたり、或いは、有彩色インク層において有彩色の部分を一部分としても良い。より具体的には、有彩色の柄や字といった所定のパターンを表示しておくことにより、呈色組成物が湿潤により消色した際に、担持体の示す有彩色のパターン表示によって、より明確に湿度を検知することができる。
【0032】
本発明に用いられる電子供与性呈色化合物としては、酸により発色する化合物であれば特に限定されないが、具体的にはロイコ染料が好ましく用いられ、例えば、酸性で発色或いは色変化を起こすようなpH指示薬、トリアリールメタン誘導体、フルオラン誘導体等が使用される。具体的には、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−インドリノ−3−p−ジメチルアミノフェニル−6−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、2−(2−フルオロフェニルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2−フルオロフェニルアミノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−t−ブチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−ブチルアニリノフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)−フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−7−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−N−メチルシクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチルペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。
【0033】
本発明に用いられる水溶性の酸性化合物としては、常温において固体であれば特に限定されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸、ほう酸、p−トルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらのうちでも、水に対する溶解度が高いという点で、シュウ酸、マロン酸、p−トルエンスルホン酸が好ましい。
【0034】
本発明に用いられる潮解物質としては、潮解性を示す物質であれば特に限定されないが、好ましくは塩、より好ましくは金属塩である。潮解物質としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、臭化マグネシウム等が挙げられる。これらのうちでも、潮解性の温度依存性が少ない物質を使用すると、温度の変動によらず安定した湿度表示性能を発揮することができ、好ましい。潮解性の温度依存性が少ない物質としては、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0035】
本発明の湿度インジケータの製造に用いる塗料中における潮解物質と酸性化合物との混合割合は、重量比で、好ましくは潮解物質(水和物として):酸性化合物=200:1〜1:5であり、より好ましくは100:1〜1:2である。また、塗料中の電子供与性呈色化合物の含有量は好ましくは0.05〜20.0重量%、より好ましくは0.1〜10.0重量%である。
【0036】
本発明においては、上記した電子供与性呈色化合物、酸性化合物、潮解物質を樹脂エマルジョンに投入して十分に撹拌し、微分散及び/または溶解させて湿度インジケータ用の水性塗料とする。
【0037】
本発明において用いられる樹脂エマルジョンとしては、担持体に影響を及ぼさない程度の加熱乾燥によって固化し、上記成分を担持する樹脂バインダーとなり、潮解物質や酸性化合物と反応せず、また、これら成分の存在によって凝集しない水系エマルジョンであれば、特に限定されないが、好ましくはノニオンエマルジョン、具体的にはアクリル系エマルジョンが好ましく用いられる。また、その他にも弱アニオンエマルジョンなどを好ましく用いることができる。また、該樹脂エマルジョンは、適宜水で希釈して用いることができ、エマルジョン濃度を適宜選択することにより、湿度インジケータの発色の程度を調整することができる。
【0038】
本発明の製造方法においては、上記水性塗料がさらに、水に対する溶解度が5ml/100ml以上で加熱によって揮発する極性溶媒を含む構成を好ましい態様として含む。該極性溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブチルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、アセトン、アセトニトリルのうち1種、或いは少なくとも1種を含む混合溶媒が好ましく用いられる。
【0039】
かかる極性溶媒は、上記電子供与性呈色剤、潮解物質、酸性化合物、樹脂エマルジョンの合計100容量部に対して10000容量部以下の範囲で混合しても良く、好ましくは10〜1000容量部である。
【0040】
本発明においては、上記水性塗料を上記担持体に付着させ、加熱して乾燥させることにより、該塗料に含まれる電子供与性呈色化合物、潮解物質、酸性化合物、樹脂エマルジョン由来の樹脂バインダーからなる呈色組成物が該担持体に担持される。上記塗料を担持体に付着させる方法としては、所望量の塗料を担持体に付着させることができれば特に限定されず、例えば担持体を塗料に浸漬する方法、ワイヤーバーやロールコーター等で塗布する方法、スプレー等で吹き付ける方法、スプレー等で吹き付ける方法、グラビアやシルクなどの各種印刷方法など、担持体や塗料の組成に応じて適宜選択される。
【0041】
加熱方法としてはオーブンや赤外線乾燥装置などを適宜用いることができる。加熱温度及び加熱時間は担持体の素材や塗料の組成にもよるが、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜130℃で、好ましくは1〜2160秒間、より好ましくは2〜600秒間加熱する。また、塗料の付着と加熱乾燥を複数回繰り返して呈色組成物を所定量担持させることも可能である。乾燥後の湿度インジケータにおいて担持された呈色組成物の量は、例えばフィルムなどの平板の担持体において、0.1〜500g/m2程度が好ましく、より好ましくは0.3〜100g/m2である。
【0042】
この状態で、担持体に担持された呈色組成物は大気中に曝露された状態であり、該呈色組成物は大気中の湿気に反応し、急激に変色してしまう場合もあるため、本発明においては該呈色組成物を透湿性を有する樹脂層で覆うことにより、接触する湿気を制限して変色速度を調整する。
【0043】
本発明において、速度調整樹脂層は、担持体の水性塗料を塗布した側に形成する。かかる速度調整樹脂層の形成方法としては、前記したように、適当な溶媒に樹脂素材を溶解或いは分散させてワイヤーバーやロールコーター等で塗布し、加熱乾燥する方法や、樹脂シート或いはフィルムをラミネート等により積層する方法が挙げられる。
【0044】
上記のようにして得られた本発明の湿度インジケータは、担持体に担持された呈色組成物に含まれる潮解物質が、速度調整樹脂層を透過した湿気によって潮解し、これが電子供与性呈色化合物と反応し、変色することにより湿度上昇が検知される。
【0045】
本発明の湿度インジケータは、紙やフィルムなどの担持体に水性塗料を付着させ、速度調整樹脂層を形成して得られるため、大面積の担持体に呈色組成物を担持させた後に切断することにより、所望の大きさのインジケータを容易に量産することができる。
【0046】
また、本発明の湿度インジケータは、上記したように、潮解物質が樹脂エマルジョンの水系溶媒に溶解して担持体に供給されるため、該潮解物質が樹脂バインダー中に分子レベルで分散し、呈色組成物からなる塗膜表面にも微細に且つ均一に存在している。さらに、樹脂エマルジョンを用いたことにより、塗膜自体が湿度を吸収しやすい。よって、速度調整樹脂層を形成する前の状態では非常に鋭敏に空気中の湿気を検知することができるが、本発明においては、呈色組成物を速度調整樹脂層で覆うことにより、呈色組成物と湿気との接触を抑えて、呈色組成物の変色速度を遅らせることができる。よって、本発明の湿度インジケータの変色速度はかかる速度調整樹脂層の透湿性によって自在に調整することができる。
【0047】
また、上記したように、水への溶解度の高い酸性化合物を選択したり、電子供与性呈色化合物の塗料への分散性を高めることで、これらの成分を樹脂バインダー内に微分散させることにより、樹脂バインダーの濡れに対する強度や物理的な強度が高く、担持体からの塗膜の剥がれが生じにくい水分インジケータとすることができる。
【0048】
本発明の湿度インジケータにおいては、一旦消色した呈色組成物はその状態を維持するが、オーブン等で加熱することにより容易に変色前の色に戻すことができ、再利用が可能である。
【0049】
本発明の湿度インジケータは湿度管理が必要な各種用途に用いることができるが、特に、電子部品の包装体に好ましく用いられる。
【実施例】
【0050】
(実施例1〜3)
ロイコ染料「BLUE−63」(山本化成(株)製)1重量部、シュウ酸2水和物(和光純薬工業(株)製)1重量部、臭化マグネシウム6水和物(和光純薬工業(株)製)10重量部を、アクリルエマルジョン「DICNAL E−8203WH」(大日本インキ化学工業(株)製;固形成分45重量%)80重量部と2−プロパノール40重量部の混合液に加え、均一になるように攪拌した。この塗料を不織布(デュポン(株)製「タイベック1082D」)の表面にワイヤーバー♯20を用いて乾燥後の呈色組成物量が8g/m2となるように塗工し、80℃で1分間乾燥させ、青色の呈色組成物を不織布に担持させた。
【0051】
次いで、上記不織布の両面に、厚さ12μm、25μm、50μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製、エステルフィルム「E5100」)をドライラミネートし、表面に速度調整樹脂層を、裏面に防湿樹脂層を形成した。
【0052】
(実施例4〜17)
実施例1で用いた塗料を厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製、「コスモシャインA4300」)の表面にワイヤーバー♯20を用いて乾燥後の呈色組成物量が
8g/m2となるように塗工し、80℃で1分間乾燥させ、青色の呈色組成物を担持させた。
【0053】
その後、表2に示す樹脂成分を含む塗料をワイヤーバー♯20を用いて表2に示す塗布量(乾燥後の固形分)で塗布し、80℃で1分乾燥させて速度調整樹脂層を形成した。
【0054】
(評価)
上記実施例1〜17の各湿度インジケータを、常温、常圧、50%RH環境下に静置し、色の変化を目視で確認し、完全に消色するまでにかかった時間を計測した。結果を表1(実施例1〜3)、表2(実施例4〜17)に示す。
【0055】
表1、2から明らかなように、速度調整樹脂層を設けることによって、湿度インジケータの変色速度を調整することが可能であることがわかった。特に、ポリ塩化ビニリデンからなる速度調整樹脂層を設けた湿度インジケータにおいては、上記評価条件において空気中の湿気によって消色するまでに1800秒を経過している。よって本発明によれば、通常の電子部品などの包装作業において、かかる湿度インジケータが空気中に曝露された場合であっても、曝露時間の差によって包装体毎に目視で確認しうるような変色レベルの差を生じる恐れがない。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、電子供与性呈色化合物、常温において固体である酸性化合物、潮解物質、及び水系樹脂エマルジョンとからなる水性塗料を担持体に付着させ、加熱して乾燥させて呈色組成物とした後、該担持体の塗料を付着させた側に透湿性を有する透明樹脂層を形成することを特徴とする湿度インジケータの製造方法。
【請求項2】
担持体と、少なくとも該担持体の表面側を覆う透湿性を有する透明樹脂層と、少なくとも該担持体と透明樹脂層との間において該担持体に担持された呈色組成物とを備え、
上記呈色組成物が、少なくとも、電子供与性呈色化合物と、常温において固体である酸性化合物と、潮解物質と、樹脂バインダーからなることを特徴とする湿度インジケータ。

【公開番号】特開2008−111775(P2008−111775A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295992(P2006−295992)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】